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2013年5月10日 第3回今後のがん研究のあり方に関する有識者会議議事録

○日時

平成25年5月10日(金)
10:00~13:00


○場所

全国都市会館 3階 第2会議室
(東京都千代田区平河町2-4-2)


○議題

1 開  会

2 議  題 
 (1)今後のがん研究のあり方について
 (3)その他

○議事

出席構成員:堀田座長、石井構成員、石川構成員、上田構成員、後藤構成員、小松構成員、白岩構成員、田村構成員、中釜構成員、西山構成員、野木森構成員、野田構成員、眞島構成員、道永構成員、宮園構成員、門田構成員、米倉構成員

 ○岡田がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第3回「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」を開催いたします。
 構成員の先生方の御出席状況について御報告をさせていただきます。
 本日は、上谷構成員、祖父江構成員、南構成員、米田構成員から御欠席との連絡をいただいております。
 そのほかの構成員の方々におかれましては、御出席いただける予定と伺っております。
 本日は、参考人といたしまして、国立がん研究センターから吉田輝彦独立行政法人国立がん研究センター研究所遺伝医学研究分野長。
 また、山本精一郎がん対策情報センターがん情報提供研究部医療情報評価研究室長に御出席をいただいております。
 続きまして、資料の確認をさせていただきます。お手元に配付しております資料の御確認をよろしくお願いいたします。
 座席表
 議事次第
 資料1 研究事業の実施体制の現状について
 資料2 がん研究の今後のあり方に関する研究(吉田参考人・山本参考人提出資料)
 資料3 次期がん研究戦略に向けて(上田構成員提出資料)
 資料4 バイオ医薬品関連政策の視点(経済産業省資料)
 また、構成員の皆様方の机上に、吉田参考人・山本参考人からの補足資料といたしまして、今後のがん研究のあり方に関する冊子の資料と、ホチキスどめの資料の2部の資料をお配りさせていただいております。
 そのほか前回会議の資料について、ファイルにとじた形でお配りをさせていただいております。こちらは今後資料の追加をさせていただきますので、会議終了後そのままの形で残しておいていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、資料に不足、乱丁等ございましたら事務局までお申し出ください。よろしいでしょうか。
 以上をもちまして、撮影のほうは御遠慮いただきますようよろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○岡田がん対策推進官 では、以後の進行を、座長よろしくお願いいたします。
○堀田座長 堀田でございます。
 それでは、早速ですが議事に入りたいと思います。
 第1回、第2回ではそれぞれ構成員の方々の立場からの御発表をいただき、それに基づいて意見交換いたしました。本日は「第3次対がん10カ年総合戦略」の事後評価に関する厚労科研、正式には厚生労働科学研究費補助金による指定研究のまとめと、今後のがんの研究のあり方に関する提言等につきまして研究班の報告を受けます。
 正確には10か年総合戦略といってもまだ終わっていませんので、その中間段階ではありますが、私が研究代表者として指定研究班をさせていただきました。これにつきまして実際の取りまとめの作業を中心的にやっていただいた吉田参考人、そして山本参考人から御発表いただくことを予定しております。
 続きまして、上田龍三構成員から文部科学省の「がん研究の今後の在り方に関する検討会」の現時点における論点整理を発表していただくとともに、上田構成員のこれまでの広いがん領域における経験を踏まえて、日本で開発された創薬事例についての御発表もいただく予定でございます。
 次に、事務局の経済産業省の立場から「バイオ医薬品関連政策の視点」ということで江崎生物化学産業課長からの御発表を予定しております。これをもとに本日の議論をしてまいりたいと思います。
 それでは、まず、事務局から前回出ました研究費の配分についての資料に関する照会事項につきまして報告をいただきますが、よろしくお願いいたします。
○宮嵜がん対策・健康増進課長 厚労省のがん対策・健康増進課長でございます。
 第1回、第2回の本会議におきまして、構成員の皆様方から御指摘、御照会をいただきました、がん研究における各省の分担や研究事業に対する評価、PDCAサイクルについて、あるいは各省のがん研究における課題採択と評価の仕組みなど、あるいは研究事業の部位別とかがん種別の予算がどうなっているかとか、高齢者を対象とした研究はどうなっているかというような御照会をいただきましたので、資料1に基づきまして、政府全体の部分と厚労省の部分について、まず、私から御説明させていただければと思います。
 資料1をおめくりいただきまして、政府におけるがん研究の全体像でございますが、各省における研究領域ということで一言で申し上げるのはなかなか難しいのですけれども、基本的な考え方として、厚生労働省におきましては疾病対策、臨床応用の視点からの研究を推進していく。文部科学省においては、大学を中心としたアカデミアによる知の創造という視点からの基礎研究を中心とした研究を推進していく。経済産業省においては、産業振興の視点から実用化支援を中心とした研究を推進していくというような整備となっております。
 その下のポンチ絵は、例えば創薬開発の場合についてですけれども、こういうようなそれぞれの3省の役割分担と連携になっているというような状況でございます。
 政府全体について、科学技術関係の予算がどういうふうに整備されて配分されているかというのがそこから下の図でございますが、全体の取りまとめコントロールタワーとして、総合科学技術会議が概算要求前にアクションプラン、目指すべき社会の姿とか解決すべき政策課題、それに基づいて重点的に取り組む課題等を提示して、それに向けて関係各省が予算要求をして、それをブラッシュアップして最終的に概算要求につなげていくという大きな流れになっております。
 下のほうにポンチ絵がございますが、総合科学技術会議(CSTP)において、こういうような流れを毎年行っているという絵でございますが、まず、アクションプランというものが策定されまして重点的に取り組む課題が提示されます。例えばということでその下に例がありますが、政策課題として、例えばがんの分野ですと、がん等の社会的に重要な疾患の予防改善及び罹患率の向上ということで、重点的な取り組みとしては、がんの革新的な予防・診断・治療法の開発というようなものなどが策定されて示されます。これに合致すると考えられる施策を各省で考えていく。
 その次の流れとして資源配分の方針が示されまして、それについて各省が必要な予算要求を検討する。その後、アクションプラン対象施策ということで各省から提案した施策をチェックしてCSTPのほうでブラッシュアップしていくというような作業になって、最終的に重複を排除して、あるいは連携がとれたような概算要求をつくっていくという仕組みになっております。
 その次のページでございますが、次からは厚労科研費の関係でございます。
 まず、厚労科研費の研究評価等の流れですけれども、厚労省の科研費は「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」等に基づいて研究評価を実施しております。
 この図の流れで御説明しますと、まず、公募課題の設定に当たりましては、政策課題等を踏まえて、あるいは有識者の意見を踏まえて公募課題を設定させていただいております。厚生科学審議会でも事前に審議をいただいているという状況でございます。それに基づいて公募させていただきまして、その公募課題に対して評価委員会「採択の事前評価」とありますが、事前評価委員会というものを開催してどの課題を採択するかということを評価・審査しているところでございます。
 また、この段階において、下の真ん中の枠のところに「『e-RADシステム』による管理」とございますが、類似研究の重複があるかないかとか、あるいはある研究者に集中していないかとか、あるいは過去に問題があったかどうかということも含めてチェックをかけているという仕組みでございます。
 また、この資料にはございませんけれども、公募課題を設定して公募するときには、この研究については文科省のこういう研究との役割分担、整理になっているとか、あるいはこの研究分野については経産省または文科省のこういう研究と整理がこのようになっているということも公募要領のほうに記載させていただいて公募している。あるいは評価に当たっても連携して行っているというところでございます。
 実際に研究費の交付をさせていただいて、厚労科研の場合はおおむね1年~3年のサイクルで採択させていただいていますが、3年の研究でも途中で中間評価あるいはその後の事後評価を行うということでございます。その後、また最終的に厚生科学審議会にもかけさせていただいて、研究成果については全て保健医療科学院のデータベースのほうに登録しまして、公表させていただいているというような流れでございます。
 実際の研究費がどうなっているかというのが4ページ目でございます。第3次対がん総合戦略の研究費の部分、まだ25年度予算案は国会で審議中ですので24年度まででまとめておりますが、総額で474億という数字になっております。
 右側に各年の推移を棒グラフで示させていただいておりますが、3次がん以外に赤いところが難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究ということで書かせていただいていますが、ここは主に創薬の部分が入っておりますけれども、予算要求上ちょっとこういう形で要求していますが、がん研究等の全体像としてはこういうふうになる。厚労省のがん研究の全体像としてはこういう数字になってございます。
 5ページ目、分野別でどうなっているかということで、がん臨床研究について2分野、それから3次がんの研究事業という名前の中には7分野ございますけれども、それぞれの分野がどのくらいの研究費総額になっているか、あるいは件数がどのぐらいかという表とグラフでございます。特に、がん臨床の分野2が件数、額とも多くなっているという状況でございます。
 6ページ目が、第3次対がん総合戦略(厚労省部分)の臓器別に研究費がどうなっているかということの図でございます。
 一番左側、一番高くなっているところが部位を特定しないとなっておりますが、いろいろ研究によっては横断的な部分がございますのでここに分類されるものがございますが、それ以外のところを臓器別に見ると、研究費の額、それから件数がこういうような状況になっているということでございます。
 7ページ目、高齢者に関係する研究がどうなっているのかという御照会がございましたが、研究課題名に「高齢」が含まれるものということで検索させていただいた研究が過去に3課題あるということで、このキーワードが入っていない研究でも高齢者を対象としたものがあるかと思うので、若干もうちょっと多いかと思いますが、今回はこういう形で検索させていただいて、このような状況になっているというところでございます。
 厚労省部分は以上です。
○岡村研究振興戦略官 
引き続きまして、文部科学省でございます。8ページと9ページをごらんいただければと思います。
 8ページ、まず「次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラムの研究評価の流れ」というのがございます。先ほど宮嵜課長が御説明をくださった3ページとあわせてごらんいただくとよろしいかと思いますが、基本的な流れ、これはもちろん「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」に従ってやっているわけでございますが、その上の評価の大綱というものは総合科学技術会議から出されておりますので、文科省、厚労省ともに共通したプロシージャーで評価をされております。ですので、ごらんいただきますと枢要なポイントというのは同じというふうに御理解をいただけると思います。ただし、文部科学省はこの紙の2ページ目で御説明をいただきましたように、出口をしっかり見据えながらでございますが、知の創造、基礎研究に軸足を置いておりますので、それに適した評価というものを導入しているということでございます。
 例えばこの次世代がんのプロジェクトでございますが、大変小さくて恐縮なのですけれども、標題の一番上の右側のところに「※2」と書いてある小さな図がございます。これは、このプロジェクトの推進のシステムなのでございますが、大きな権限と責任を持つプログラムリーダーをおき、そのもとに2つのグループリーダー、さらにそれぞれのグループリーダーのもとにチームリーダーを置いて、それぞれの段階で責任を持って施策を遂行していただきます。さらにこの皆さん方の全体の活動に対して外からアドバイスをするアドバイザリーボードをさらに設置しております。さらにそれ全体を役所としましては審議会で評価していくという流れになります。
 事前評価に関しましては、科学技術・学術審議会のライフサイエンス委員会で事前評価をし、その方向性を踏まえてアドバイザリーボードでプログラムの実施体制や公募要領、審査基準について御検討いただき御決定をいただく。公募の後は厚労省と同じでございます。各省を横断して類似研究費の重複等がないかということを「e-RAD」で確認をし、下のほうにアドバイザリーボードと課題選定委員会についてはちょっと注釈を書かせていただいておりますが、当該の研究分野における有識者の方々及び文科省におけるほかの関連するプロジェクト、さらには他省庁における類似のプロジェクト、このプロジェクトの成果を引き取っていただける可能性の高い厚労省のプロジェクトの参画者の方ですとかそこの評価委員、こういう方々にも入っていただいた課題選定委員会、アドバイザリーボード、こういうもので御承認をいただき研究を進めていく。本プログラムはまだ始まって3年目でございます。今年が中間評価でございますので、今後中間評価、そして5年終わったときには事後評価になります。
 しかしながら、こういった場も基本的には考え方は同じで、非常に専門性、ピア・レビュー要素の高い評価と、それから関連する活動の参画者の御協力をいただいた運営をしている。さらに一番下に書かせていただきましたが、事務局も関係省庁による共同事務局ということで内閣官房、内閣府、厚労省初め関係省庁で運営をさせていただいているという状況でございます。
 予算につきましては、次のページでございます。
 実は、「がんトランスレーショナル・リサーチ事業」の予算は下がってきておりますが、これが右側の「橋渡し支援推進プログラム」というものに引き継がれております。結果的にTRの観点におきましては、予算はこの10年間にわたり右肩上がりで進めさせていただいております。
 全体を足し合わせますと、実は「重粒子線がん治療研究」が建設の予算も入ってきますので総額はその建設費に左右されてしまいますが、ここでは一つ一つのカテゴリーでごらんいただいたほうがいいと思いまして、この3次がんに登録をされているがんに特定したプロジェクトとして登録されている施策について、こちらに予算額を出させていただいております。
 もちろんこのほかに、文科省におきましては多様な基礎研究、これらのプロジェクトを支える基礎シーズを出すものでございますのでそちらもございますが、とりあえず第3次対がん対応の施策としては、10年前は総計約60億から始まっているものが昨年度、今年度予算で100億超のペースで着実に推進させていただいているという状況でございます。
 それから高齢者ですとか部位別の予算でございますが、政策の方向性として高齢者とか部位別というものではプロジェクトを組んでおりません。当然ながら科研費の中に高齢者というキーワードのものでありますとか部位別のものはございますが、その点については結果的にそちらに配算されたということですので、今回、こちらの資料にはお出しをいたしておりません。
 以上でございます。

○覚道医療・福祉機器産業室長 経済産業省から、10ページ「NEDOにおける研究開発事業の評価体制」というところについて御説明をさせていただきます。
 まず、もともとそのプロジェクトを立ち上げるに当たっての、政府としての概算要求の確保のところにつきましてはもう既に厚生労働省さん、あるいは文部科学省さんからお話がありましたとおり、総合科学技術会議の指令のもと各省連携をしまして、経済産業省としては特に産業振興のところに重点を置くということで、財政当局と調整をしまして予算を確保するという形になりますけれども、それ以降実際のプロジェクトの実施に当たりましては、経産省につきましてはNEDOにおいてプロジェクトの実施をしているということでございます。
 大きく申しますと、外部評価をしっかりしているということと、プロジェクトの実施体制の中においても運営会議とか開発委員会でしっかりとその進捗の管理をしているということであります。
 まず、ラインに沿って御説明をしますと、経産省が予算を確保する際に設定をしたその課題に対しまして、それを具体的にNEDOが実施の形に移す場合に、まず公募することになります。具体的なそのプロジェクトの中身等をつくりまして、それに基づいて採択委員会という外部委員会で、これは工学系とか医学系の外部有識者により構成されている採択委員会ですけれども、そこで公募のプロセスを経まして、採択委員会の審査を経てプロジェクトが実際にその実施をするグループに採択をされるということになります。
 このがんのプロジェクトですと、ほかのこれまでのプロジェクトも大体5年ぐらいということでありますので、いずれも中間評価というものをいたします。中間評価につきましては、まさにその中間段階でプロジェクトが所期の目的に沿ってしっかりと進められているかということ、これも外部の有識者の方を中心に審査をいただくということになります。
 それから、実際にプロジェクトが終わった後、今、進めているがんのプロジェクトはまだ途中でありますので、昨年、中間評価をしたということでございますけれども、これまでに終えたようなもの、皆同様にNEDOでやっておりますプロジェクトは、プロジェクトが終わった時点で事後評価、同じく外部の評価を受けるということと、それから経産省の場合は特に産業として実用化されていくかというところを重視しているところがございますので、実際にプロジェクトが終わった後についても追跡調査という形で調査の実施をいたします。
 これらの中間評価、特に書いてございませんけれども、評価の視点は、技術的にしっかりと進められているかということと、その技術が将来的に実用化のところをきちんとにらんで進んでいるかと、そういう2面から評価をすることにしていまして、それぞれ5点、5点の配点で平均をして4.2点以上ないと優良なプロジェクトではないという位置づけになりまして、例えば中間評価で余りよくない評価になると、その後少しプロジェクトを縮小したりですとか、あるいはその後の予算を少し減らしていくというようなことにも反映をさせるということであります。
 こうした外部の評価を受けつつ、プロジェクトの実施体制側では運営会議とか開発委員会というものをテーマごとに設けまして、それぞれしっかりと進捗管理を行っていく。そういう形でプロジェクトの評価を進めているということでございます。
 予算につきましては、経産省の場合は必ずしも部位別に整理をしたりとかということがなかなかしづらいところもございますし、予算の経年の変化につきましてもプロジェクトものが多いものですから、その各プロジェクトで山谷があったりしまして、必ずしも年度ごとにきれいに整理ができるわけではありませんので、御参考としまして、第1回のときに提出をさせていただいた資料を再度11ページに掲載をさせていただいております。
 経産省からは以上であります。
○堀田座長 ありがとうございました。
 それぞれの省庁から宿題について発表していただきました。主に、研究課題の採択あるいはその評価のプロセスの問題と、研究費の配分の仕方あるいは高齢者についての取り組みはどうかという宿題があったわけですが、それぞれのところで発表していただきました。
 発表していただいた資料について、何か御質問や御意見がありましたら少し受けたいと思いますが、いかがでしょうか。
 野田先生。○野田構成員 宮嵜課長にお伺いします。
 これは堀田座長に伺ってもいいのかもしれませんが、第3次総合戦略の中にいわゆるがんセンターの予算というものが入っていないように見えるのですけれども、入っていないのかということ。運営費交付金ですけれども、それは研究費ではないから入っていないのかどうか、入らない理由というものをちょっと教えていただきたいのと、実際には運営費交付金はどのくらいでそれは研究には充てられていないのか。これは堀田座長にお聞きしてもいいかと思いますが、その辺をちょっと教えていただけますか。
○岡田がん対策推進官 まず、本日御説明させていただいたものは、いわゆる厚生労働科学研究費補助金の額でありまして、今、野田先生おっしゃったところの部分は含まれておりません。これは、第3次対がん総合戦略という考え方のもとの研究事業ということで、こういう形で本日はお示しさせていただいているというところになります。
○堀田座長 後半の部分につきましては、これはナショナルセンター全体の問題として運営交付金という形で研究を含めた補助が出ております。そのうちの研究費は、これは施設の中で決めることですが、総額で大体22億円くらいの年額を想定しています。運営交付金の中で研究費をどれだけ使うかはで決めることなのですが、全体として運営交付金が下がる中でも研究費についてはできる限り確保するということで、前年度並みの研究費は確保しています。運営費交付金ですので、その部分はこの3次対がんの科学研究費には入っていないません
○野田構成員 全体80億円を超える運営交付金の中の今、20数億円を研究に使われているということで、今、宮嵜さんのほうからお示しいただいたものを10年間あるいは9年間で割ると40億円足らずの平均値が出てくると思うのですけれども、この40億円足らずのことは3次がんの戦略として入っているけれども、そちらの20数億円、つまりその半分を超える額が全く違うところで、違うところと言うのも変ですけれども、つまり別枠であって統合されていないというところは、例えばここでポスト3次がんをやっても、それはこれからも今回の検討対象ではないということなのでしょうか。
 それは、課長のほうに。
○岡田がん対策推進官 まず、この戦略でどの研究費を対象に議論するかということそのものを検討いただくというよりは、今後のがん研究がどういう具体的な研究事項を御研究いただく必要があるかとか、それはどういう今後の社会、方向性のもとにやっていくかというあたりを御議論いただいて、これまでの戦略もそういう内容でつくってきているという部分がございますので、そういった御検討をいただければとに思います。
○野田構成員 3次がんのときは、振り返るとそこは分けてあったけれども、これからのディスカッションはとにかく全ての省庁の全てのがん研究に対して、いいと思うことをここでディスカッションをしていいということと考えてよろしいですか。
○岡田がん対策推進官 はい。
○堀田座長 きょう、議題としたいのは、今後を見通して次のがん研究についてどういう視点、どういう研究課題があるかということを全体として明らかにすることです。それをどういう研究費で対応するかというのはその後の話というふうに考えておきたいと思います。よろしいでしょうか。
 田村構成員。
○田村構成員 
高齢者のがんの関係についてお調べいただきまして、ありがとうございました。
 これは第3次がんの戦略の中、件数で1,131件研究課題があったということですが、高齢者というキーワードで調べたところ3件ということです。もちろんそれぞれの分野あるいはそれぞれの研究の中で高齢者が扱われていますけれども、高齢という切り口からきちんと研究されているのはどれぐらいあるかというのが重要で、いろいろな審査をさせていただいていてほとんど正面からとりくんでいる研究課題がないようですので、後からも話がたくさん出てくると思いますけれども、これからのがん総合戦略を考えるに当たっては、高齢者というキーワードはぜひ含めた形でやっていただければと思っていますし、そういう形で我々も研究を進めていきたいと思っています。

○堀田座長 ありがとうございます。
 それでは、後藤構成員。
○後藤構成員 2ページ目の「政府におけるがん研究」というところのキーワードは各省連携で、それを一番最後に連携を実施していると書いておると思います。ちょうど真ん中の、例えば創薬開発などの場合というところを見ますと、文科省の基礎研究あるいは応用研究としての創薬研究も踏まえて、医薬・医療技術の非臨床研究あるいは臨床治験、産業化のほうに向かって厚労省あるいは経産省のほうがつないでいくと読めます。ここら辺をもう少し連携がきっちりいっているということを言うためには、今やっている各施策の中でこの部分は例えば文科省で出てきたのが厚労省のほうに、あるいは経産省のほうに繋がって行ったというようなケースを挙げていって、これを今後のがん研究の在り方としてふやしていくというふうに言っていただくとインパクトがあると思いますので、よろしくお願いいたします。
○堀田座長 追加することありますか。
○岡田がん対策推進官 済みません、本日、そういう視点も含めまして、その3次がんでの成果を、研究班の先生にも御検討いただきましたので、お話をいただきたいというふうに考えております。
○堀田座長 この点につきましては、門田構成員に御願いします。
○門田構成員 今回こういう形でまとめていただいて、ひとまず宿題としてお願いした方向にしていただいてありがとうございましたと御礼申し上げます。今の後藤構成員の御意見に関連するのですけれども、先ほど厚労省あるいは文科省のほうからも、例えばダブりがあるかないかというのはe-RADを使うことによってができるようなシステムになっているというお話を伺いましたし、また、外部評価委員とか、あるいは評価委員の中には関係省庁に関係した委員が入って行われているということから、まずこのあたりは連携が図れるのではないかという表現になっていると思うのですが、実際そういうシステムが本当に稼働しているのかしていないのか、過去どうだったかということが最終的に評価の対象になると思うのですね。システムをつくっていますと言っただけではちょっと物足りない、実際それはどうだったか。あるいはそういうe-RADを使うことによって、幾つの件数の中で重複がこれだけあったものはこうしましたと、こういうふうなものを示していただきますと非常に具体化すると思うのですが、きょう急にと言っても無理かもわかりませんが、ぜひそういう結果を見せていただきたいと思います。
○堀田座長 それでは、眞島構成員。
○眞島構成員 
まず、この資料を制作していただきましてどうもありがとうございました。非常にわかりやすく出てきたので、これをもとにしていろいろ分析してみたいと思います。
 例えば6ページですが、こちらの表には厚労省の予算部分だけですが、研究費が臓器がん別にまとめられています。例えば膵臓がんを見ますと研究予算が十何億あると書かれています。結構な金額だなと思いました。ただ、上を見てみますと「これは8年分」だということなので、「十何億円を8で割らないと年間の研究予算がでてきません」。また、研究の本数だと思いますが、かなりの数があります。ということは、「8年分の十何億円をさらに研究本数で割らなければいけない」となると、ひとつのプロジェクトの研究費というのはかなり少ない額で、研究者の皆さん頑張っていらっしゃるのだなというような感じがいたしました。
 アメリカのNCIですと、膵臓がんの研究予算は単年度9900万ドルと、100億円近くの予算がついていることを考えますと、年間1億円ぐらいですと「アメリカの100分の1」ということがこれで見てとれます。日米で比較ができるということは非常に重要だと思います。
 それから2ページ目になりますが、先ほど門田会長もご指摘になられましたが、これをがん研究からベッドサイドの患者さんの手元に届くまでを1つのシステムとして考えますと、今までは省庁縦割りでもってさまざまな弊害もあり、うまくいかなかったところがあるとも言われています。そのシステムがどういうふうにこの図に反映されているのか、そういう観点から見てみますと、これは読み方によっては「総合科学技術会議のほうががん研究の戦略を練っていて、予算的なアドバイスもし、さらに全体の流れを統括している」と、何かそういうふうにも見てとれてしまいます。我々が一番危惧していますのは一括して本当に基礎研究から臨床サイド、患者さんの手元に届くまでのプロセスが、オールジャパンとして、きちんマネジメントされ、流れていく体制になっていないのではないかという点です。そこが一番危惧されるところです。この表を見てみると、一番上にCSTPと書いてありますが、ここに日本のがん研究についての総責任がもしかしたらあるのではないかと読めるような形に見えます。我々としては、例えばこの分野のがん研究はどこが責任を持って進め、がん研究の成果を患者さんの手元まで届けていただけるのかという、その責任者の顔が見えないということを前回お話しさせていただきました。この「総合科学技術会議」の位置づけ、それから厚生労働省のほうには「がん対策推進協議会」がありますが、そことの位置関係とか、やはり患者さんはこの図を見ていると余りそれらの関係がよくわからないのではないかなと思います。それぞれの役割について、ご説明いただければ幸いです。○堀田座長 その点についてはどなたか説明可能ですか。
 では、宮嵜課長。
○宮嵜がん対策・健康推進課長 済みません、先ほどちょっと言葉足らずだったかもしれないのですけれども、総合科学技術会議は政府全体の研究費の配分について、いろいろ先ほど申し上げました政策課題とか重点的に取り組む分野というのを御議論、検討していただいていて、例えばいろいろな分野がある中でライフが重要だからこういうふうにしなきゃいけない、ライフサイエンスの分野の中でどの分野がどのくらいどうしなければいけないというような基本的な考え方をいろいろ御議論いただいて、各省に提示いただいて、各省でそれに合わせた予算も含めてですけれども提案をさせていただいて、またそれに対してもっとこっちの分野のほうが評価されるべきだとかどうだとかというような御議論もいただいて、最終的に各省ごとの概算要求、それは予算要求上の問題ですので各省ごとに予算要求をしていくというような形になる。
 それに基づいて、各省が今度予算要求した後に予算ができ上がって、ではそれに基づいて、どういう分野のどの課題を採択していくかというのが先ほど厚労省、文科省、経産省からも御説明申し上げましたが、政府全体としては似たような仕組みですけれども、同じような仕組みで公募させていただいて審査をさせていただいている。それに当たって、公募するときに公募課題で重複がないようにということで、公募要領にもそういうようなことを記載させていただいていたり、あるいは実際に公募をいただいた後にe-RADでチェックしたり、あるいはそれぞれの評価委員会にも御専門の先生が入られていて、それぞれの省庁の評価の委員会も全く別の人ではなくて一緒に入られていると思いますけれども、そういう専門の先生方に評価をいただいたり、あるいは先ほど文科省のほうからもありましたけれども、全ての研究分野ではないのですが、それぞれの研究分野の事務局のほうも共同で運営したりということで調整させていただいているというのが現状です。それが十分かどうかというのはもちろん御議論の対象ですし、今までそういうところが弱かったからここ何年かそういう仕組みで変わってきたというところが現状でございます。
○堀田座長 ありがとうございます。
 いろいろまだ議論あろうかと思いますけれども、恐らく今後、全体としてのライフサイエンス研究をどうオールジャパンとしてやっていくかということは今国の別の会議体で動いています。その流れによって随分変わってくるのだろうと思います。一旦この議論はこれで終わらせていただきまして、研究課題の中身のほうに入っていきたいのですが、よろしいでしょうか。
 それでは、きょうは参考人として来ていただいております吉田参考人、それから山本参考人のほうから3次がんの評価とそれに基づく提言について、資料に基づいて説明していただきます。
 よろしくお願いします。○吉田参考人 
それでは、資料2をごらんください。
 平成24年度厚労科研費第3次対がんとして「がん研究の今後のあり方に関する研究」が指定研究として行われました。研究代表者は堀田先生です。
 その報告書が、構成員の方にはお手元のピンクの冊子で置いてあります。我々事務局から、その概要をかいつまんで御紹介いたします。スライドは右下に赤で♯で番号を振っておりますので、その番号で進めていきます。
 ♯2をごらんください。
 まず、ここでは上のほうに堀田班で設定された目的を述べています。つまり、第1に3次対がん全体のうち厚労省が担当した部分の事後評価を行うことです。ただし、先ほど座長が言われましたように、実際には平成24年度前半ぐらいまで、約8年半経過時点での評価です。
 それから第2に、その3次対がんの評価・分析に基づいて平成26年度以降のがん研究のあり方についての提言を述べること、以上の2つが目標として設定されました。
 ♯3、これは研究組織の一覧であります。
 ♯4、このスライドの一番下にあるのが3次対がんで、その標語、キャッチフレーズは「がんの罹患率と死亡率の激減を目指して」でありました。
 ♯5、これは堀田先生も第1回有識者会議で示された図ですけれども、3次対がんの主な研究分野の構成を示しています。
 左のほう、分野7にある実態把握から次の分野1・2などの基礎研究。さらに臨床研究、公衆衛生研究、標準治療の確立と均てん化、こういう流れを想定した研究が、右半分ぐらいの上のほうからあるように、予防、診断、治療等の各分野について展開をされました。分野1~7までをいわば狭義の3次対がんと呼ぶこともあり、それに加えて臨床試験や政策研究などを支援するがん臨床研究経費、この2つがあります。
 ♯6~8は、先ほど事務局のほうから御説明がありましたので省略いたします。
 ♯9は、このピンクの最終報告書の目次を示しています。この中心になるのは第5章の各分野ごとの評価と考察ですけれども、全体を通しての提言はこの報告書の冒頭の「Executive Summary」にまとめてあります。それはこの後半、御説明したいと思います。
 ♯10をおめくりください。このスライドと次のスライドで各分野の成果をごく簡単にまとめました。机上配付資料その1としてパワーポイントの2アップのものをお配りしておりますけれども、そちらにもう少し詳細に、箇条書きで成果が入っております。さらに詳細には、このピンクの報告書に書いてあります。
 この♯10をちょっと眺めていただきたいのですが、まず、分野1、これはがんの本態解明にかかわる研究で、各臓器がんについて、多段階発がん過程の分子機構の解明が進みました。
 分野2は、よりトランスレーショナル・リサーチ(TR)に軸足を移した研究で、例えばDNAチップを用いた診断法や新しい分子標的治療の開発を行いました。
 分野1、分野2ともにその成果の一部は臨床試験等の段階に進んでおります。
 分野3は予防の研究で、コホート研究などのエビデンスに基づいて日本人のためのがん予防法を提言しました。そのほか、日本人の子宮頸がんに関係するパピローマウィルスのワクチンの開発などを行いました。
 分野4は、新しい診断方法の開発研究で、新しいCTや内視鏡などの画像診断技術、プロテオーム解析によるバイオマーカーの開発などがなされました。3次対がんでは、検診の研究もこの分野で行われました。
 分野5は、新しい治療法の開発研究で、陽子線治療や外科療法に関する研究、あるいは新しい原理に基づく薬物療法の開発が行われました。
 ♯11をごらんください。
 分野6は、QOLの研究です。QOLは第2次対がんから独立した分野となって、治療における機能温存、食欲回復など、それから在宅医療・緩和ケアシステムまで、がん患者の生活の質の向上に関係する幅広い領域の研究を行いました。
 分野7は、がん情報に関する研究で、院内がん登録、地域がん登録の強化、改良と普及を進めました。また、診療ガイドラインや臨床試験に関する情報など、がんに関する多彩な情報を専門家向け、患者、国民向けにそれぞれ分けて発信をしました。
 がん臨床分野1は、政策分野に関する研究として「がん対策基本推進計画」に関するさまざまな調査研究が行われました。
 がん臨床分野2では、多くの第3相多施設共同臨床試験が推進され、標準治療の確立に貢献しています。
 以上が大変駆け足ですけれども、3次対がんの各分野の成果を概観しました。
 ♯12です。文字中心のスライドがあと2枚だけちょっと続きますのでおつき合いください。
 3次対がんは、このように多くの成果を上げたのですけれども、全体を通しての反省点が主として3つあります。第1に、既に以前から予測されていたにもかかわらず、少子高齢化によるがん多死社会に対する組織的な研究と対策が十分ではなかったことです。第2に、若手研究者の育成、特に臨床医学や病理学を背景に持ち、国際性豊かな若手研究者を育てるための支援が不足したことです。第3に、これも以前から指摘されていたことですが、我が国のがん研究全体を俯瞰し、研究全体を牽引する司令塔機能がまだできていないことです。
 ♯13では、3次対がんのキャッチフレーズについて考察をしました。
 キャッチフレーズは「がんの罹患率と死亡率の激減を目指して」でして、確かに年齢調整死亡率は多くのがんで減少しつつありますが、人口の高齢化により粗死亡率は増加の一途を続けています。罹患率もふえています。引き続き、やはり予防から診断・治療・社会復帰にわたる総合的な戦略が必要だと考えられました。
 #14、これも堀田先生が既に示されたものですけれども、3次対がんはこのように予防・診断・治療・QOLという軸と、基礎~臨床・公衆衛生~政策・情報という軸から構成されていて、これは主として研究者視点の構成であったと言えると思います。小児や高齢者を対象にした研究も個々には行われていましたが、研究の主な対象は壮年期の成人でありました。
 #15です。それに対して今後は、大人を標準とする研究から小児、働き盛り世代、高齢者等の各世代の特徴、各世代に特有な問題を初めからしっかりと踏まえて、各世代についてそれぞれこの2次元の研究を展開していく必要があります。これが第1回の会議で座長が打ち出されたライフステージの視点です。昨年6月にがん対策推進基本計画が改定されたときに、働く世代や小児へのがん対策の充実が追加されたことにも呼応すると思います。
 #16、以上の第3次対がんのレビューに基づいて、研究班としてまとめたがん研究の今後のあり方に関する10項目の提言を順に御説明したいと思います。
 まず、この赤字で書いてある「がん多死社会に備えて、予防と早期発見を推進する」ことが戦略の第1の目標と考えます。そのためには、まだまだ全貌が明らかになっていないがんの原因を究明し、かつ個々人の発がんリスクを評価して、個別化された予防を実現するということが必要と思われます。その際、がん以外の各ライフステージにおいて重要な疾患への配慮も欠かせません。また、医療や検診の提供体制も大切な検討ポイントであると考えます。
 #17、この第一の提言を説明する図を御参考までにつけていますが、これはリスクによって個別化された一次予防と早期発見の全体のイメージ像です。
 中央の上のほうの緑のところで個人のリスクを把握し、それを一次予防あるいは早期発見、二次予防につなげております。
 右のほうには、血液を使っての個人のリスクの層別化から早期発見のためのスクリーニング、それから画像診断による確定診断を行い、早期治療につなげる、こういうふうな考え方になります。
 #18は、血液を用いたリスク層別化と早期発見技術の研究のイメージ例です。例えばこのようにオミックスの新しい技術を駆使することで、予防や早期発見に役立つさまざまな情報を引き出せる可能性があると考えられます。
 #19、これは第2の提言で、予防、早期発見の努力だけでは及ばない、いまだ治せないがんに対する革新的な診断・治療の研究開発の継続です。これには、やはりがんや治療反答性の本態を解明し、その本態を突く治療法の開発、これが基本になります。
 そのイメージは#20、基本的なことなのですけれども、本態解明には左下にあるように実際の臨床試料、情報を徹底的に解析することも欠かせないわけですけれども、同時に左上に示したように生命科学以外も含めた幅広い分野の科学からの知識、発想、技術、これを取り込むことも重要です。両者が互いに補強し合うことで臨床的にインパクトの大きい研究が可能になって、ひいてはそれが革新的な診断・治療法に到達できると考えられます。
 #21、5年ぐらい前から次世代シーケンサーの普及が始まって、そのような技術及び情報の革新があって、がんの本態解明研究が大きく進んでいます。しかし、その中で右上のピンクで書きましたように、がん組織、がん細胞が高度な多様性と可塑性をさまざまなレベルで持っていることが明らかになってきています。このことは、がんの転移、浸潤、再発や治療抵抗性を克服するための研究の重要な鍵となると考えられます。
 次に、第3の提言、#22をごらんください。
 これも赤字で書いてあるように、早期に発見できたがんの多くは局所治療で根治が達成できます。今後は「外科療法・放射線療法等の根治性と機能温存性・QOLの調和を図る」ことが特に重要と考えています。例えば高齢者に最適な局所治療の技術と方針の確立や、再生医療などの新しい技術の導入などが取り組むべき課題と考えられます。
 #23は、外科治療の低侵襲化などの新しい技術あるいはIVR等の技術のイメージを示しています。
 #24、もう一つの局所治療の大きな柱、放射線治療については、この中央付辺にあるようにがんの細胞生物学的特徴を利用した分子イメージング、それから診断技術などを総合した放射線治療、これが放射線治療の今後目指すべき進歩の方向性と考えられます。
 #25、このようなさまざまな治療法やその組み合わせについては、それらを質の高い臨床試験で評価し、明日の標準治療を更新していくことがゴールになります。このような臨床試験とその付随研究を支える人材の育成、確保が急務となっています。また、研究の国際化も非常に重要な課題です。
 #26です。この創薬過程の中での標準治療確立の位置を示しています。右のほうにピンクで示しているのが標準治療の確立・更新ですけれども、このような標準治療をつくる臨床試験の中で個別化医療の開発も進みますし、例えば予後の悪い集団などが同定されて新たな臨床開発の課題も明らかになります。明日の標準治療をつくるためには、ベッドからベンチへの、いわゆる逆TRの要素も今後ますます重要になると考えられます。研究と研究をつなぐというのがこの後も出てくるキーワードなのですけれども、例えばこの絵の中央付辺、上下緑の円筒で書いてあるバイオバンクとか、解析研究拠点、これはがん対策推進基本計画にも書かれている整備すべき研究基盤となっています。
 #27、ライフステージに注目した研究の一つとして第5の提言が、この赤字の「小児がん・希少がんに積極的に取り組む」です。
 これらのがんでは民間主体の治療開発が進みにくいなど、国ががん対策に特に積極的に取り組む必要があります。推進すべき研究課題は、既に第1回有識者会議で石井先生から詳しい御説明がありましたし、がん対策推進協議会の小児がん専門委員会報告書にも出ております。堀田班での議論もここに示すように、同様の提言が取り上げられております。
 #28では、そのイメージとして石井先生の発表資料の一部を再掲させていただいております。
 #29、提言の第6は、赤字の「がん患者・家族の生活の質を護る」です。
 がん患者及び患者経験者、いわゆるサバイバーが急増する中、それらの人々の生活の質も向上し、社会復帰に関する希望の実現を図る、そのためには広い範囲にまたがる対策と研究が求められています。
 #30、このQOL関係の課題には、患者の希望やライフスタイルに応じた終末期治療や緩和医療に関する研究も含まれます。また、患者の家族のケアも必要だと考えられます。
 #31、提言の第7は「高齢化社会におけるがん医療対策を急ぐ」です。
 既に多くの先生方がこの会議で指摘されております。堀田班でも当然ながら重要な提言の1つとして取り上げられました。個人差が大きいとしても、例えば超高齢者に最も適したがん治療、ケアとはそもそも何なのかといった治療概念までも含めた検討が必要だろうという議論がなされました。
 #32、ここから残りの8~10番目の提言は研究基盤関係で、基本的な項目としては既にがん対策推進協議計画で定められているものが多く含まれています。
 3次対がんの評価を行っている中で繰り返し指摘されたことの1つは、基礎研究と実用化研究の間、研究と政策との間、あるいは複数の診療や研究の拠点施設の間など、本来はきちんとつながっているべき研究の要素の間に、しばしばギャップや断絶があることです。
 具体的な施策としては、例えばがん診療連携拠点病院へのCRCの配備が挙げられます。研究と標準医療をつなぎ、さらに臨床から基礎につなぐため、そして臨床試験において拠点病院を1つの質が担保された共同研究体としてつなぐために、極めて重要な課題です。
 #33、これは人材育成です。
 この人材育成の努力を継続することの重要性は言うまでもありませんけれども、特に今後のがん研究、がん対策には多種多様な分野、職種の人材を結集することが求められています。研究者のみならず、研究支援者、技術者も研究の成否を決める重要な要因です。また、これらの人材については、国際的な舞台で活躍できるという点が重要なキーワードになります。若手研究者育成に当たっては、基礎と臨床あるいは基礎と公衆衛生領域の研究がつながる部分で活躍するトランスレーショナル・リサーチ・レジデント、TRRを新たに導入する必要があると考えられます。
 最後の10番目の提言、#34です。
 これは、赤字に書いてあるように「がんに関連する国全体の取り組みを把握し、調整し、推進する」その司令塔機能ということであります。
 これについて、本日も複数の先生方から指摘がありました。がん対策推進基本計画では司令塔という言葉は明記されていませんが、「より効率的に予算の活用を図る観点から、選択と集中の強化、各施策の重複排除と関係府省間の連携強化を図る」とされています。堀田班では司令塔機能を提言し、特に国際的な視野で我が国の研究戦略を考え、国際連携や貢献を図っていくということが重要であると考えました。
 最後の#35です。これは以上の10項目の提言を、がんにならない、がんに負けない、がんと生きるための研究とそれを支え、推進する基盤として、再度一覧にしてみました。
 以上です。
○堀田座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの発表につきまして質疑をしたいと思いますが、いかがでしょうか。あるいは山本参考人、何か追加するようなことがありましたら。よろしいでしょうか。
 石井構成員。
○石井構成員 ありがとうございました。
 非常にすばらしい内容になっていると思うのですけれども、1つお伺いしたいのは、やはり革新的な診断・治療法を開発するという場合に、それは国際的な流れとどのように合致しているのかということと、もう一つは、それとまた別に日本独自の社会構造等を反映した日本独自の形になっているのか、その辺の区分け、あるいは整合性、それをどのように考えているかということを教えていただきたいと思います。
○吉田参考人 
一つは、もともと日本において、あるいはアジアにおいて多いがん、日本が優位性を保っているがんがあると思います。例えば胃がんに関しては病理から内視鏡、外科、こういった非常に進んでいるところがあります。そういうところは自然に日本が強みを持つし、アジアの中での臨床試験に関してもリーダーシップをとれる。こういうふうなところは患者さんが多いからニーズもあるし、当然そこで研究も進んできた。それはますます強化をしていくべきだろう。
 一方、特に基礎研究においてはグローバル化した研究が進められている中で、日本の若者が、がんだけではないと思うのですけれども、もうちょっと外にどんどん積極的に出ていって人材交流をする、日本の若い人が単に勉強しに行くだけではなくて、世界の人が日本に来て研究をする。そのためには受け入れる側も特に言葉の問題が大きいとは思うのですけれども、国際化を図る必要がある。そのようにして、世界と一緒になってやっていく、そこの中で特に日本が強いところ、あるいは日本とアジアにニーズがあるところ、これが自然に強くなっていく。そのような方向性なのではないかと思うのです。○堀田座長 西山構成員、お願いします。
○西山構成員 一番最後の出口に近い、患者さんの手元に新しい新規の医療を届けるというところなのですけれども、現実に先生の御指摘にもありましたように、研究者の視点で組まれていて、現実には企業等との特許の問題もあれば、一緒に共同研究をするということ、治験に関しても企業治験と医師主導型治験、それらのところのうまいぐあいの接点というものを検討するような仕組みは実際に機能しているのか、あるのかというところについてちょっと教えてください。
○堀田座長 山本参考人。
○山本参考人 先生御存じのように、治療に関してはさまざまな段階があります。早期開発でまさにヒューマンなところからその後の新薬が認められてその後適用拡大したり、集学的治療という段階があって、皆さん御存じのように集学的治療の段階においては今の我が国の制度もありまして、なかなか適用拡大のような試験を研究者主導でやってきにくかったというようなこともあって、そこは少し分かれた形で研究者指導の臨床試験が行われていたということがあり、なかなかいろいろな施設で臨床試験を実施するという土台が育ってこなかったということがあります。
 現在のがん拠点病院で、連絡協議会においてその臨床試験部会というものを立ち上げて、その中でその臨床試験をがんの拠点病院の中でやっていくという流れを何とかつくっていこうということが行われていると思いますけれども、その中で集学的治療のようなものをするのか、それとも医師主導治験をするのかというのは、今後の課題として検討されているところだと思いますので、その流れに沿った形になると思いますけれども、今後は、我が国全体のがんの治療開発の流れの中で決まっていくことではないかと思います。
○堀田座長 よろしいですか。
○西山構成員 私の意見というのは、実際に1つの新薬ができるまで少なくとも100億~1,000億かかっている。こういうふうな段階の中でさまざまな研究費が分割されていて、つなぎ目つなぎ目で1つのまとまりがない。
 それからもう一つは、最終的なゴールのところで研究者だけで最後までゴールに行くのはとても難しいことなので、そうした場合にもう少しそうした人たちが途中から参入するような工夫や、要するに総力を挙げて研究を行うべき段階というものがあって、それを取り入れていかないと実際に最終的な出口に行かないのではないかということなのですが、そうしたものもちょっと考えた上で、どう研究の幅を広げてそうした部分を入れてもいいのではないかと思っております。
○堀田座長 米倉構成員、今の話題の関係でよろしいですか。
○米倉構成員 先ほどの、各省庁のところでも気がついて気になっているのですが、事前評価は非常によくやられます。ところが、事後評価のところがそこで完結をしてしまって、その各省庁がやるプログラムの中での次のサイクルには回っていくのですが、他の部分に回りにくいというところがあるように私は感じていまして、これをぜひ総合的な指令機能はもちろん必要なのですけれども、それぞれのところの事後評価が次のステップに回るような仕組みが必要なのではないかなということを今、感じました。
○堀田座長 ありがとうございました。
 野木森構成員。
○野木森構成員 今の米倉先生の質問に関連するのですけれども、今回のこの全体のプログラムで1,130ぐらいかかってきていますよね。その中で、これ原則3年ぐらいの周期で動いていると思うのですけれども、途中評価で落ちたものはどれぐらいあるのか。
 それと、終わった後の評価でさらに続けたものがどれぐらいあるのかというところで、大切なプログラムというのは当然続ける必要がございますので、リバイバルというのか、さらにもう一段高みになった研究というのが進められるというのが私の持論だろうということで、お伺いする次第です。
○堀田座長 これは吉田参考人コメントできますか。
 応募課題の中で採択されたものが、その後どうフォローされているかという話だと思うのですけれども。
○吉田参考人 NEDOのように今でも時々研究修了後の追跡調査が来るような形のものは3次がんの厚労科研費では行われていないと思うのですけれども、論文あるいはいろいろな学会などで、コミュニティーとしてはあの研究がどうなっているということは大体わかってきて、それが実際には次の応募のときの事前審査に付加されているということではあると思います。
 ただ、論文だけが出口ではないので、論文以外の、例えばガイドラインに反映されたかとか、特許が活用されたとか製品になった等の多角的な指標を的確に設定し、評価することが非常に難しいところだと思います。
○堀田座長 野田構成員。
○野田構成員 この初めのところから3次がんを振り返るわけではないのですけれども、大変に幅広く全てのところをきっちりやられていて、大事なものを全部カバーしているということではよくわかるのですけれども、恐らくそれを考えてこの次を考えるときには、司令塔といって上からどんでは何にも決まるものではないということはここで皆さんのあれだと思いますが、選択と集中をそれぞれが分担して、それの間の連携をとりながらそれぞれが得意なところを分担して選択、集中していくということが、やはりトータルとして透明性を高めて全体が機能するようになればということだと思うのです。
 それためにちょっとお聞きしたいのですけれども、全部おっしゃっていただいて、それぞれの成果が出たのはわかるのだけれども、多分9年間でやった410何億円は、この分野の1~7までに何億円ずつ配られているのですか。これが患者さんの期待を受けて疾患科学をやっている厚労省が、この10年間でどのように選択と集中をしてきたかということにもつながると思うんです。みんな切り捨てる必要のない重要な分野だとわかりますけれども、どこかこのピンクの中にそれが書いてありますか。
○堀田座長 それは、先ほど飛ばした部分だと思います。最初に事務局のほうから紹介された資料と同じです。
○野田構成員 そこをもう一回ちょっと言っていただけますか。
○堀田座長 では、かいつまんでお願いします。
○吉田参考人 #7のスライドをごらんください。
 これは、先ほどちょっと狭義の3次がんと言った分野1~分野7、それからがん臨床分野1と分野2がありますけれども、それらについて、24年度までなのですけれども、これらについて研究費が総額それぞれ幾らであったか、それから件数が赤で示されております。
 それと、これは分野1、分野2ということなので、もう一つ、このピンクの冊子がちょっとお手元にない方は申しわけないのですが、ピンクの冊子の90ページの7、海外の主ながん研究推進状況概観というものがあります。
 これは、2000年にNCIがCSOということを始めました。CSOというのは、左の90ページの箱の中の上から5行目ぐらいに出てくるのですが、Common Scientific Outlineというもので、がん研究の大きく分類をする方式なのですね。これがどういう内容かというのは、91ページ向かい側右側のほうに青が背景になっていまして、非常に単純な、CSOの1はBiology、2はEtiology、3はPrevention、4がEarly Detection Diagnosis Program System、5がTreatment、6がCancer Control Survivorship Outcome Research、7がScientific Model Systemとなっています。これの分類で、分野1分野2よりもこちらのほうがある意味大づかみでありますが、どのような分野の研究にこの厚労省の3次がんが供出されたかということを分析してみました。それが90ページの概要のちょうど真ん中辺にマル2という番号が出ているのがありますけれども、この8年間の3次対がん、厚労省部分ですけれども、約400億円のうち治療・診断の研究、CSOの5と6ですけれども、これに約56%が費やされております。厚労省の総合的がん研究事業として、我が国の臨床研究の重要な推進基盤となっているということがわかります。
 ところが、マル3海外のファンディングエージェンシーに比べて、がん対策、がん研究イシュー、アウトカム研究、CSO6に約21%が投入されているということが、これは一つのいい特徴なのだと思うのですが、一方、この分野の研究をちょっと分析してみると、非常にさまざまな研究、ある意味ばらばらに分散しているというところがもう一つの課題ではないかと思われました。
 それから4に書いてあるのですが、世界に類のない速度で高齢化が進み、がん死亡の急速な増加が予想されているのですけれども、CSO3、プリベンションの研究費の割合が6%なのです。これは、ICRPというのは、このCSOを用いて分類をしてデータを共有している欧米のファンディングエージェンシー、NCIとか、Cancer Research UKとか、INCAとかそんなふうなファンディングエージェンシー、57のグループなのですが、そこの分析によると、ほぼそういった値と同じ程度なのですね。しかも、日本ではこの分野が第3次対がん全体の中で、年次経過を追いますと少し減っている傾向もありましたので、これは大きな問題ではないかと。これはあくまでも厚労省部分なので、文科省部分が同じように精粗分離をすると、また少し違ったスペクトラムがあると思うのですが、こういった状況であります。
○野田構成員 ありがとうございます。
 先生の説明とうまくマッチしなかった理由は、狭義の3次がんにのっとって一つ一つしゃべられているだけなのか、そうするとがん臨床が非常に重いのですけれども、初めからこういうふうな比率で分けている狭義の3次がんはこれ見てもわかるように、広い分野で重要なものをみんなピックアップしてほとんど同じ資源配分がされているわけですよね。
 一方、それとは別枠でがん臨床というものがどんとあった。これの仕組みの整合性というか、あるいはこの説明の中にはどういうふうに含まれていたのか、その辺を教えていただきたいのです。
○吉田参考人 これは、きょうは狭義と言ったのですが、あくまでも大きなというか、全体を含めてお話をいたしました。がん臨床は先ほどちょっと言ったのですけれども、標準治療の確立、第3相臨床試験、ここに非常にお金がかかりますのでそこに主にサポートをされたのですね。なので、それも含めて今回提言という意味も含めましたし、レビューにも入っております。
○堀田座長 よろしいですか。
 そのほかの論点はいかがでしょうか。研究を進める上での仕組みの問題とかその配分の問題とかというのは重要であるのですけれども、3次がん全体を見渡しての評価と、それから次にどういう課題を研究していくべきかについて意見を求めたいと思います。課題はかなり網羅的にならざるを得ない部分はどうしてもあるのですけれども、その中でも、ではここはまだ足りないのではないか、あるいは強調すべきではないかと、あるいはここはもう課題はすでの解決したのじゃないかというようなことがありましたら、そういった視点からも御議論いただきたいと思います。

○商務情報政策局審議官 経産省でございますけれども、先ほど来、省庁間の連携からプロジェクトの接続というお話が出ておりますので、実際我々現場でどういうことが、うまくいかない言い訳ではないのですけれども、問題として認識しているかということを1つだけ指摘させていただきたいのですけれども、我々、NEDOを中心にして研究開発をしておりますと、これは非常に川下のほうにございますので、この先というのが市場に出てきます。この上というのは、厚労省さんの委託または文科省さんの成果ということを受け取っていくわけでございますけれども、その予算を、我々のようにプロジェクト型の予算でやろうとすると、前年の4月ないし7月に要求を立てないといけないわけです。
 ところが、その時点では先行する研究はまだ最終年度のオンゴーイングでございまして、成果が十分に出ていないのですよというケースがございます。この場合、最後までやってから予算要求をして我々が引き継ごうとすると、間に1年空白ができてしまうという、こういう予算上の制約が往々にして直面するものでございますから、これを一般論の形で解決できると非常に我々もありがたいと思っておりまして、何がしら御提言の中でも御検討いただけるとありがたいと思います。
○堀田座長 ありがとうございます。
 そのほかの御意見。
 山本参考人。
○山本参考人 先ほど、課題の継続のお話があったと思うのですけれども、基本的に厚労科研の場合には3年というふうなことになっていまして、その次の3年にどのような課題が出るかということはもちろんわからないので、その3年で研究が終わるようなものもあれば、臨床試験のように長く続くものもあるのですけれども、研究者の側は出している場合にこれがその後続くのかどうかというのはわからないということで、非常に不安を持ってされていました。
 それから先ほど説明にありました、がん臨床の分野2のほうは臨床試験フェーズ3をやるような研究費だったのですけれども、例えばそこでは広い枠で、例えば難治がんとかそういう形で募集されていたので、3年後もそれが恐らくあるだろうというような形で、先を思って研究をやることができたのですけれども、ほかの分野、特にがん臨床なんかに関しては始めたはいいものの続くかどうかわからないというようなこともあったり、続くときも課題名が変わっていったりするので、その報告書とか見てもこれは前の研究が続いているのかどうかということはなかなかちょっと外からは判断しにくいようなところがあって、そこも今後研究費配分の上で、継続と途中で終わるということは一つどういうふうに仕組みの中に組み込んでいくかということは重要な問題だと調査していいと思います。
○堀田座長 ほかにはいかがですか。
 どうしても提言としては、項目は8つぐらいなのですけれども、内容はかなり広がってしまっているのですね。
 はい、どうぞ。
○野田構成員 今も、堀田座長が一生懸命研究領域や目的に持って行こうとしても、必ず仕組みややり方になるというぐらい、そこに何かみんなちょっと問題があったのではないかということを意識しているのだと思うのですね。だから、これからの進め方のときに、ちょっとディスカッションの時間をきちっと分けて、幾ら立派な果物をこれから実らせようとしてもそれを考えるにつけて仕組みが問題になるという感じなので、やはり堀田先生のほうから、きょうこれだけ評価のことをちゃんと話していただいたので、評価をも含めて、そうしたら米倉委員のほうからは評価はその先に結びついてないじゃないかと。その仕組みのところの時間はこれからあるのかないのか、それであれば今、ゆっくり果物の話をするということもできるのではないかというふうに思うのです。
○堀田座長 流れとしては、きょうはますはじめに果物の味を吟味していただいて、それを進めるためにはどういう仕組みが必要なのかというそういう流れに持っていこうとしていたのですけれども、どうやら仕組みの問題のほうに移っていく傾向があるのですが、その時間は別途とりたいと思います。これは次回になるかもしれませんが、よろしくお願いします。
○野田構成員 よろしいですか。
 もうこれでどこまで具体性があるもの、あるいはどこまでそれぞれのアイテムを出すかはともかく、高齢化社会のがんに対する対応というものはもう全てのところから出ているので、やはりそれに関してのものをそれぞれの立場からもう一回資料で意見を抽出し直すのがいいのではないかというのが1つ。
 あともう一つは、高齢化社会のがんの、きょう吉田先生のほうの厚労省の見直しのところもありましたけれども、やはり予防への本格的な統合的取り組みというこの2つはもうあるので、これは皆さんからまた意見をそれぞれいただく、それ以外に、やはり次期に向けて、例えば臓器がんの話とかその辺を少し話したらいいのではないかなと。
○堀田座長 私の考えは今まで予防とか診断・治療、そして公衆衛生、そういった流れと基礎研究、開発研究、臨床研究といった二次元的な形で展開してきたのを、もう少し違う視点を入れないと今後の高齢がん多死社会は乗り切れないだろうという問題意識です。特に、今までの薬剤開発にしても、成人を対象にしています。高齢者とかあるいは小児、あるいは合併症を持った人は最初から対象から外れているわけです。しかし実際、日常診療でがんに対応する際には、むしろ高齢者のほうが多いわけですね。そういう対象に対して、では、我々はどういう医療を提供し、あるいは提供するための研究を行うかということになりますと、成人を中心にして開発されてきた薬剤が、高齢者にとっての使い方はどうなのか、小児にとってはどうなのかという視点が入ってこないとこれは展開できないわけですね。そのためには、小児特有あるいは高齢者特有の問題点は何なのか、それに見合った最適な治療は何かということを研究していかないと対応し切れないのではないかということを最初に申し上げたのです。そういう視点も含めていろいろ御意見をいただきたいと思います。
 米倉先生。○米倉構成員 よろしいですか。では、果物の中身の話を少し。
 私が抜けているかなと思う視点について少しお話したいと思いますが、先ほど来、お話があるように基本的には個別化医療というのがキーワードになっていると思うのですが、そのためには、例えばゲノムであったりオミックスであったりそういう非常に基礎的な研究がされている。それと、臨床との間のつなぎの部分に、私は非常に大事だなと思っているのは、やはり画像のバイオマーカーだと思うのですね。非常に不均一ながん細胞の集団を局所にいろいろなところにあるようなもの、これをそれぞれ特徴が違うものを見つけようと思うと、やはり画像診断しかないのではないか。今までの話の中で画像バイオマーカーというのは早期診断であったり、あるいは治療のためということに書かれてはきているのですけれども、この基礎と臨床をつなぐという視点での画像バイオマーカーという視点が少し抜けているかなということを感じました。これがやはりキーワードとして私は非常に重要ではないかなと思っています。
○野田構成員 上田先生のお話を聞いてからまとめて。
○堀田座長 この辺で1回議論を打ち切って、上田先生の報告を聞いてからまたこれに戻っても結構ですので、やりたいと思います。
 上田先生、お願いします。
○上田構成員 上田でございます。
 きょうは、最初座長から紹介ありましたように、文部科学省における「がん研究の今後のあり方に関する検討会」というものを設けております。これに関する論点整理を主体にお話をさせていただきまして、残り時間がございましたら、日本で開発された最近の創薬事例に関して、私なりの観点から簡単に御紹介をさせていただきたいと思います。
 ページをめくっていただきまして、4ページに行って「(1)背景」は言わずもがなでございます。こういう現実からも、いかにがん研究とかがん対策、がん治療が重要な国民的課題であるかということは、皆さん共通の認識であるという論点から入っていきたいと思います。
 最初に、「文科省におけるこれまでの研究開発の取り組み」に関しましては、先ほど文科省のほうからも御報告がありましたように、がん対策の対がん10カ年が始まった昭和56年から、一つの国家プロジェクトとして粒子線がん治療の研究などが始まっておりまして、それに対して文科省が中心になってサポートしてきたわけでございますけれども、平成16年から始まりました「第3次対がん10ヵ年総合戦略」の大きな文科省の取り組みといたしましては、がんのTR、いわゆる橋渡し研究、そして先ほどちょっと御紹介がありましたような次世代研究シーズの戦略的育成プログラムなどを推進しているのでございます。重粒子線の治療研究についてまとめたものが6ページでございます。
 御案内のとおり、我が国ではこの重粒子線に関しましては、世界に先駆けて治療技術を実現させて、日本が進んでいるということもあって、世界の主たる治療実績は日本が先行しています。これまでになかったがんの治療ができるとか、術後のクオリティオブライフの向上に繋がるなどの新しい観点から、またこの治療の国際的な応用というような視点での動きがでてきております。
 次の7ページ、「橋渡し研究の推進プログラム」についての進捗状況をまとめでございますけれども、実際問題で治験の届け出というものが18件出ておりまして、ライセンスアウトしたものが15件ございます。先進医療として承認されたものが7件ございます。それから製造販売申請に至ったものが4件、製造販売の承認をもう既に取ったものが3件あるという状況です。
 もう一つ、現在、精力的に進めておりますのが「次世代研究シーズの戦略的育成プログラム」でございます。これに関しましては、先ほどの文科省の岡村研究振興戦略官のほうからも御案内がありました。本当に基礎研究の進歩は、すばらしく進んでいますので、何がしかのシーズ的なものは幾らでも上がってくるのでございますけれども、それが現在の臨床に導入できるイノベーティブな分子標的と評価され、それが本当にトゥルーヒットになって、企業が真剣に臨床応用への橋渡し研究まで考えているものがこの次世代プログラムでどの程度あるかを創薬関係でまとめた数字です。新規の化合物、抗体、たんぱく質・核酸・ウィルス、診断などについて、アッセイ系まで進められるもの、ヒットし、それからヒットが単なるヒットではなくて、本当に臨床に使えるかもしれないというトゥルーヒットにまで至り、最終的にはきちんと企業への導出を目指して振興しているプロジェクトです。本当に患者のニーズに合うものをつくっていくというプロジェクトで「革新的がん医療シーズの育成」と「がん臨床シーズの育成」というこの2つの大型なプロジェクトを進めている。詳細、もう一度戻りたいと思います。
 9ページに行きたいと思います。
 現在、関連する政策や計画についての対応は最初のページに出ていたとおりでございまして、対がんの10カ年総合、それからがん対策基本計画などが出たことに関しまして、文科省が今、一番集中的に頑張っている部分としましては、この3番に書いております「革新的医薬品・医療機器の創出に向けた戦略的取組の必要性の高まり」について最近は強く軸点を置いているということでございます。これは「成長戦略の具現化」という意味合いもありますし、「医療イノベーション5か年戦略」に対しての文科省としての対応を進めているというのが現実でございます。
 これから、文科省におけるがんの研究戦略に関して、どういうことを検討してきたかということに関しまして「がん研究戦略作業部会」について紹介させていただきます。11ページです。平成16年度から6カ年の研究期間として発足したがんの特定領域研究という大型プロジェックトが平成21年度末でちょうど終了を迎えるという時期でございました。
 当時の経済状態が非常に悪化した状態であって、そのような背景のもと、がん研究独自のミッションを持ちながら長期的な視野でがん克服に向けてどういうふうにしたらいいかということで、しっかり考えなくてはいけないのではないかと持たれたのが、平成21年の7月にできた「がん研究戦略作業部会」でございました。そのときにも、るる議論をして現状分析から始まって、この将来の方向性ということで、そのときの現状認識での厳しい認識に関しての評価が1として、「がん研究をめぐる状況と評価」という格好で整理されました。そのときにも既に危機感は充満しておりました。皆さんからお話に出たとおりのことがここに○で4項書かれています。そこで抽出された問題としては、このがん研究開発が最近は失速しているのではないかという危惧がその当時問題にされました。また、がんの推進体制がなってはいないのではないか、それから研究の求心力が低下してきている。国際競争力の低下、がん克服へ向けた展望の途絶などがあげられました。12ページの図をお願いします。作業部会の報告にのっとりまして、先ほど申しました、早急に取り組むべき方策といたしまして、平成22年度から4年を目途にしまして、いわゆる「次世代がんの育成研究」などが具体的なものとして上がってきたのですが、その概念を図にまとめております。この方針で本当に基礎研究の実用化を加速する。
 そのときに一番問題になったのは、その左の図のところで黄色く丸く書いてあるところの谷間ですね、新しいツールやいろいろな研究成果が生まれ、基礎研究はどんどん進んできている。しかしながら、それらを本当に実用化する目的で、前臨床のTRとかリバースTRに持っていくには、この黄色の楕円のところの強化が非常に重要な部分であって、そこが日本ではこれまで徹底的に欠けている部分なのです。ここに対する基盤整備の欠如や支援体制の増強ということが強く望まれています。そこで、基礎的な革新的なシーズを臨床展開へシームレス進める方策として、右側のような図になっているわけでございます。ここに書いてあるとおりで、この○のところにキーワードがたくさんちりばめられていると思いますけれども、強力な研究組織の構築とか効率的ながんの研究ネットワーク、研究プラットフォームの整備、それからいわゆる革新的な研究の開発とか個別的な医療開発の基礎をしっかりする。何よりもこのトランスレーショナルリサーチをやって、いわゆるライフイノベーションの創出に対してもう少し貢献すべきであるということがそのときに提言され、現在これが進んでいるわけでございます。
 冒頭申し上げましたように、文科省としましては常設のがん研究のあり方をきちんと考える検討会というものがなかったわけですね。それで、昨年の10月に立ち上がったのが、この「がん研究の今後の在り方に対する検討会」です。13ページに検討事項、それから構成員が書かれておりますけれども、非常に幅広い分野からの方々にお集まりいただいておりまして、色々な分野のオピニオンリーダーの方がたくさん参画していらっしゃいますから、ここの有識者会議にも何人か同席していただいているかと思います。
 ここからは本検討会で議論されたことをもとに、かいつまんで現状の取り組みのポイントを御説明させていただきたいと思います。スライド14に移りたいと思います。
 まずは、大きく「基礎研究」と「基盤研究・整備」それから「臨床に向けた橋渡し強化」という3点に分けて説明したいと思います。15ページに進みます。
 まず、文科省に求められている取り組みのポイントとして重要なミッションは、「基礎・基盤研究により世界をリードする優れた知の創出を実現」することがまず第1の文科省のミッションであるし、また「ライフサイエンスをはじめとした広範な基礎研究から得られた知見に基づくイノベーティブな基礎研究シーズの創出と、それらシーズへの育成への取組を促進して、社会に貢献することが強く期待」されているという、この2大ミッションは車の両輪でありまして、いずれが欠けてもいけないというのがここの委員のメンバーの御意見であったということでございます。
 16ページには、その基礎研究に関しまして、右側によく最近使われているスライドでありますけれども、国別の優秀科学論文数の比較データです。日本の論文の発表数自体はさほど変化していません。しかしながら、新興国の研究成果の発表が物すごくふえております。そういうことで、相対的に低下しているのではないかというふうによく使われておりますけれども、日本の国際的評価の低下の危惧は十分あります。
 それから先ほど来、問題になっています、研究資金の母体そのものが余りにも脆弱ではないか、アメリカと直裁的に比べると非常に問題があるのですけれども、日米のライフサイエンス予算額を示しておるわけでございます。
 基礎研究に関して、要するにがんの本態に向けた抜本的な強化がやはり一番大事であって、日本発の医薬品や医療機器の開発に向けた取り組み、それから何しろ若手研究者をきちんと育てなければすぐ枯渇してしまう。やはりこれら3点に関して、もう少し文科省はきちんと力を入れるべきであるということが求められるということでございます。
 次に17ページ、基盤研究とその整備に関してでございます。
 右側には1つの例としまして、中村祐輔先生のスライドをお借りしましたけれども、本当にヒトゲノムの情報なんていうのは費用の問題、速さの問題、時間の問題、それから精度の問題からして、今や誰もが自分のゲノムの情報を簡単に利用できる時代が間近に来ようとしています。こういう大規模なゲノム解析の時代が展開しているときに、日本としてどう対応するかということは真剣に考えていかないといけないし、また、それをどういうふうにするべきかというようなことに関して、ここに・で5点ほどまとめておりますけれども、これらに関する倫理的な問題も含めまして、きちんとした課題として取り組み、真剣にやるべきことは早急にやらなくてはいけないということだと思います。
 次に18ページですが、先ほどの国がんの報告にもございましたけれども、「臨床に向けた橋渡しの研究の強化」のところなどは、今、文科省としましては、いろいろと橋渡し研究に関しての拠点の整備を少しずつではありますけれども、着実に進めております。この図の右下のところに、先ほどのデータをもう一回書いてありますが、この中で注目しているのは、医師主導の治験が現場でだんだんふえてきているということは確かでございまして、その辺に対してアカデミア発の創薬を期待するところもあるわけでございます。
 スライド19、そのような現状の取り組みのポイントから、今後さらに充実が求められている具体的な研究分野に関しての取り組みについて、簡単に御紹介をさせていただきたいと思います。4点に分けて紹介をさせていただきます。
 一つは、まずこの「予防・診断に向けた基礎・基盤研究」という項目でございますけれども、予防に結びつくような超早期とか早期な診断に加えて、病態を正確に把握するような的確な診断につながるような基礎の基盤研究が非常に重要であるということでございます。
 2番には、そういうことをするにも、いわゆるゲノムの解析がそういう点における重要な羅針盤とか物差しにきっとなる時代が来ている。そういう意味でのゲノム解析というのは、どうしても病態の正しい把握とか、今の医療で解決できないものとか難治など対して、ブレークスルーする1つの取っかかりであることは間違いないだろうというふうに思います。
 それから3番目としては、先ほどの米倉委員のお話にもございましたように、分子イメージングに関する医工連携で、新しいツールやいろいろな工夫が行われて、目で見えなかったものが見えるような時代になってきています。この辺に対しては、最近造語でございますけれども「Theranostics」なんていう言葉が、多分もう少しするとはやってくるのではないかと思いますけれども、これは蛇足でございますが、それぐらい皆さんが注目している分野であるということだけは強調しておきたいと思います。
 21ページをごらんください。今後求められる取り組みの中で、先ほどのことを少し具体的に書いております。
 「効果的ながん予防の推進」に関しましては、先ほど来、問題になっています今までの若年者のがんとか壮年期のがんに関してはがんという病態を見ればよかった。しかしながら、高齢者のがんがふえてきたときに、左下の図ですけれども、そのときには、祖父江先生からこの間の御報告にありましたように、その本人自身の自律機能の低下とか他の疾患との合併症対策などの新しいがん治療という観点が1つの治療のターゲットになります。予防と老化というようなものが重要なターゲットになるということを、ここに表記しているわけでございます。
 それから右側の「ゲノム解析を基盤としたがん研究の推進」に関しては、先ほど申し上げたとおりで、いわゆるゲノムから遺伝子発現、それからエピゲノムの変化、こういうものを統括したような新しい発想からくる診断・治療、病態の解明というのがますます進んでくるだろうということでございます。
 「分子イメージング」のことは先ほどお話ししましたから省略しますが、22ページにそのモデルを出させていただいたわけでございます。
 23ページ、今度は「治療から予後に向けた基礎・基盤研究」がどうあるべきかということに関してでございますけれども、次、24ページに入りたいと思います。
 「次世代がん研究シーズの戦略的育成プログラム」において、新たな基礎・基盤研究の成果を活用し本当にそれを推進する。その出口に関して、きちんとした基礎研究にのっとった科学的な治療法を確立していくというものとして、このプロジェックトに期待しているわけでございます。
 2番目に「がん免疫療法の開発促進」があります。がん免疫療法というものが歴史的にもいろいろございました。やっと最近、いろいろ科学的にがん抗原とか作用機序がだんだんわかりつつあります。これは低侵襲性で持続性のある治療でありますし、高齢化社会でも需要が高まると思います。そういう意味からも、もう少しいわゆる理論的かつ科学的根拠に基づいた、また、治療経過や効果がモニタリングのできるような免疫研究が必須でございまして、今後この観点からの研究が大きな流れになっていくだろうと思います。
 25ページですが、先ほどもお話があった「がんの幹細胞とか、がんの微小環境、循環腫瘍の細胞」ですね、血中を回っているような腫瘍細胞、そういうものに対してのいわゆる生物学的な解析が今、物すごく進んでいます。ただ、それは今、学問として芽生えたところでございますから、今後どのような展開となるか難しい観点もございます。しかしながら、がん本態解明からも重要であるということは間違いないということで、こういうことこそきちんとがん生物学としてどんどん進めていって、難治がんを治していくというような方向にできる、根源的なものであるというふうに期待しているわけでございます。
 それから「次世代医療を目指した医療機器の研究強化」でございますけれども、医療工学とかIT技術ですね、この革新的な技術の導入が医療の分野にもますます導入されていくということは言を待たないわけでございまして、こういうものに対してどういう取り組みでこれをうまく進展させるかというのは、今後に求められた大きな課題であると思っております。
 26ページは飛ばしまして、27ページにその続きとしまして、5番の「放射線治療等における革新的な技術開発の推進と研究基盤の構築」でございます。
 先ほどのお話にもございましたように、放射線治療に関して治療分野でのニーズというものは非常に大きいのでございます。ですから、いわゆるそれに対する制度の問題、管理の問題ということ。それから困ったことに、こういうところの研究の人材が非常に枯渇しているのですね。それを何としても支援しないと、需要が大きくなるのに研究者やそのサポーターがいないということは、人的育成を担っている文科省に問われる問題だと思っております。
 もう一つは、先ほどのお話にありました粒子線ですね。陽子線とか重粒子線。こういう装置の小型化や治療の精度の高度化で、新しい有効な治療のツールとしての本当の日本発のすばらしいものを国策としてもグローバルな戦略の中にもこれを入れていくということは大事な問題ではないかと思います。
 28ページ「今後更に充実が求められている取組(3)」の中に、「新しく進展する学問領域との融合研究」に関しましてまとめております。御案内のとおり、今もてはやされていますiPS細胞、ゲノム医学、バイオマテリアル、DDS、これはドラッグデリバリーシステムですね、それから集団遺伝学など異分野で発展してきているものをいかにがん領域の新しい展開の中に包含できるか、まずそれが1つの重要なブレークスルーのもとであるということが第1点。
 第2点としては、こういうがん領域と関連するような異分野、または関連はないかもしれないけれどもというぐらいの異分野でも結構なのですけれども、そういう立場の異なる専門家と、学会や企業でのトップ同士が話し合って、融合しましょうという話はいつもあるのでございますけれども、本当にそういう融合研究ができるような領域や場を考えるということは、今後の新しいうねりをつくるもとであるというふうに思っております。
 最後にただ今、るる申し上げてまいりましたけれども、これらを支持し実現するためには当然ながら研究基盤の充実ですね、基盤研究の整備をきちんと整備しないで、やりなさいということはできないということでございます。
 それから研究成果に対する透明性の高い評価制度の確立・維持及び成果を国民に積極的に公開するという努力をもっともっとしなくてはならない。国際的ながん研究の情報収集と国際共同研究や情報交換の推進を進めていく。「学会やがん拠点病院との強調」で、いろいろと先ほどの国がんからの御発表にありましたように、そういう関連のところときちんとタイアップしてプロトコールの改正や改定に基礎の研究の成果がスムーズに入っていくようになるというようなことだと思います。
 以上、今後さらに充実が求められる取り組みを中長期的な立場から強力に推進していきたいと、この検討会では考えているということでございます。
 このあと3分か5分いただきまして、日本で最近開発されました創薬事例、私の個人的な経験も踏まえて簡単に御紹介させていただきたいと思います。
 31ページをごらんください。
 御案内の方も多いかと思いますけれども、私が開発に関係致しました抗体薬「抗CCR4抗体(ポテリジオ®)」を紹介させていただきます。ケモカインレセプターの1つにCCR4というものがございまして、これがATLという日本で非常に困っていた病気、九州や沖縄地方に多いウィルス感染で起こる白血病のそのがん細胞の表面にこの抗原が存在しているということがわかって、それに対する治療戦略として抗体療法の開発をして成功したという事例でございます。
 この開発研究の発端となった抗体は、1999年にマウスの抗体作製に成功しております。もう少し時間があるといろいろなお話をしたいのですけれども、当時の抗体作製技術では、いわゆる膜貫通型のこういう分子に対する抗体はなかなかとれなくて、3年ぐらいかかってやっと成功しました。現在ではこれを一週間でとれると言っているバイオベンチャーがもう日本にはあります。だから、物事、学問とか技術というものは飛躍的に進むということを強調しておきたいと思います。それがどうも白血病細胞でも陽性らしいということで、我々が白血病の研究をずっとしておりましたものですから、企業から相談を受けました。企業と共同研究が始まったのが2001年、赤で書いているところです。
 研究を始めますと、抗原発現が患者さんの予後に関係するというのが、我々の手でわかりました。ちょうどそのときに、今度はその企業の開発部で特殊な低フコース型の抗体をつくるという、これは日本で開発された技術革新に成功しまして、それを抗CCR4抗体に応用しました。そうすると、今まで治療法がなかったATLに関して、この抗体療法で実験系だけでなく患者さんでも見事に効くということが証明されました。この臨床治験フェーズ1のデータが出たときに、患者会の人たちがぜひこれを早く市場に出してほしいということで、そのときはちょうど舛添厚生大臣だったと思いますけれども、そこへ患者さんの会からの請願があった。そういう後ろ楯があって、そのときの首相が菅首相でしたが、「ATL特別プロジェクトチーム」というのをATL撲滅のために策定していただき、日の目を見たというのがまず第1点で、患者さんの力、それから行政の力、研究所の力、企業の力の結集があった。
 33ページ、今のATLという病気は「成人T細胞白血病リンパ腫」という日本語なのですね。この疾患概念というのは、当時京都大学におられた高月先生が1977年に、この右下ですね、特別な白血病だと新たな疾患概念を提言されてそれが世界で認められたのです。そのときの京大ウィルス研にいらっしゃった日沼教授が、この原因はウイルスによるものだと。そして、そのウイルス全塩基配列を吉田光昭先生、当時がん研ウイルス部長でございましたけれども、きちんと同定された。すなわち、発がんの原因から全てわかった。疫学研究により感染経路を、ここの右側の絵でございますけれども、母乳から子どもさんへの垂直感染が主体のためいつまで経っても撲滅できなかったということがわかった。だから、疫学的に左上に書いていますけれども、断乳すると乳児への感染率がすごく減った。こうして病態の全貌が明らかになったのですが、しかしながら治療法がなかった。
 そこにこの抗体療法が承認され、治療法の選択肢の一つが確立された。私が申し上げたいのは、こういう発生メカニズムの解明から予防、そして一貫したこういう研究があって初めてこの治療法ができたのであって、何もこのポテリジオとかいう抗体が簡単に出来て治療法に結びついたのではないということです。それを、創薬開発に関しての分子標的薬剤のプロセス、これは先ほどの吉田先生のお話の24ページにわかりやすい絵があったかと思いますが、そのシーズの開発からこの治療薬としてマーケットに出るまでにお金がすごくかかるとか、いろいろなプロセスが長いというお話がございました。
 35ページ、そのときに一番大事なことは、黄色い楕円形のことは先ほど強調しましたけれども、あのような仕事、すなわちトランスレーショナルリサーチをきちんとやって、いわゆる基礎の研究のあかし、成果を科学的に証明する、プルーフ・オブ・コンセプト(POC)を臨床試験で証明することが最も重要です。そうでないものをいくらどんどんやっても成功しない、ということでありまして、ここがいかに大事かということで、基礎と臨床の連携がいかに必要かということだと思います。
 今の経過をまとめなおしたものが36ページです。今のことを考えますと、このベーシックリサーチの部分が物すごい歴史的な力であって、そして初めてこの抗体ができてから13年。それから我々が臨床治験を始めてから4年。これはOrphan Drugでございましたから、いわゆる希少疾病、医薬品としてのstrategy、戦略を立てて開発しましたから、日本では破格のこの4年で上梓されました。それと、何よりも患者さんの協力がありましたから物すごく速く臨床試験には進んだというサクセスストーリーでございます。産官学が一緒に共同開発したことが、薬事の承認と同時に、このコンパニオン診断薬の成立にも成功したという日本の最初の例だというふうに思います。
 最後の話題でございますけれども、これは皆さん方よく御案内だと思います。東大の間野博行教授が2007年に、肺がんの中に特殊な転座をしている一群があるという画期的な発見をなさいました。これは肺がんの中でのアデノというもののまたその中のほんの一部なのですけれども、これはEML4-ALKという転座を起こしてできる肺がんがある。これは症例数こそ少ないけれども、このタイプの肺がんはユニークで治療が難渋しておりました。化学療法で普通では効きませんでした。これがまた、がん生物学的な見地からは、こういうALKというようなものが活性化しているからがん化しているということがわかったらその阻害剤を入れればいいということで、外国の大手の会社が今までほかのがん疾患に開発していた薬をここに導入して治験を行いました。見事にそれが治癒に結びついた。しかしながら、間野先生方は世界で最初にそれを提唱しただけでなく、動物モデルからいろいろな基盤的研究成果をあげられ、日本でもきちんとしたコンパニオン診断薬も同時に承認できたというサクセスストーリーだと思います。
 これは今までの分子標的療法では、その標的が見つかってからいわゆる承認までの世界最短なのですね。世界最短といっても4年かかっています。それを支えているこの転座とかいろいろなベーシックリサーチの長年の積み重ねがなければ創薬に結びつかないわけです。要するに、1つのそういう治療に使える本当のシーズでトゥルーヒットであれば現在では臨床開発組織をしっかり構築すればやっていける。それを日本でつくらなくてはいけないというのは皆さんが盛んにおっしゃっているとおりです。ただし、今の私としましては、ベーシックリサーチとこの創薬開発が両輪の輪でないと進んでいかない、というふうなことを痛切に感じているわけでございます。
 創薬は1,000とか万に3とかということをよくいわれます。この分母であるシーズの供給は持続的なイノベーションの必須要件でございまして、短絡的にきょうやればいいというような問題ではないということでございます。まずは、この本態解明を初めとした非常にすぐれた基礎研究の成果が、いわゆる戦略から生まれるものではございませんが、生み出されてすぐれた成果を国民に届けたり、臨床応用を目指した研究には、戦略が鍵を握っているというふうに思っております。
 この基礎研究と臨床研究を目指した研究というのが日本でうまく進むということ、その辺につきましても、文科省に関しましては、いわゆる広範な基礎研究とか基盤研究及び人材育成をもっともっと推進していただきまして、これまで得られたり、また、これから得られるいろいろな革新的な知見とかすぐれた人材を最大限に利用していただいて、我が国のがん対策に対しても積極的で責任のある取り組みをしていただきたいというふうに思っております。
 私が主査を務めております「がん研究の在り方に関する検討会」では、今後もこのような有識者会議を初めとした関連政策や戦略の議論、それから社会の要請を踏まえて議論をこれからも重ねていきたいと思いますし、今後も必要であればこのような場で議論の展開を御紹介したいと思っております。
 そういうことでございますから、今後ともよろしく御協力、御指導を賜ればということで、私の発言を終わらせていただきます。
○堀田座長 
ありがとうございました。
 上田先生が紹介していただいたこの在り方に関する検討会の構成としては基礎的な分野の先生方が大部分ですけれども、視点としてはかなり幅広い視点でまとめていただいています。したがって、先ほどの3次がんの事後評価とオーバーラップした部分もかなりありますが、それは当たり前の話かもしれませんね。いずれにしても、文科省としては知の創造という、いわゆる学問の発展の法則に基づいて知を集積していく、そういう視点が基盤にあってそこからどうやって戦略的にものを引き出してしていくかということであると思います。そのあたりがやはり欠けているとせっかくの基礎研究の成果があってもなかなか臨床に結びつかないという今までの反省もあったわけでありますから、今後研究の進め方ということを議論はしたいのでありますけれども、先ほどのところにちょっと戻りまして、上田先生から提案されたいろいろな研究テーマあるいは課題、そういったところで何か御意見をまずはいただければ幸いです。
 宮園先生。○宮園構成員 
この検討会は、私も上田先生と一緒に副主査をやらせていただいておりますので、重複になりますけれども、今の上田先生のお話に少し私からも御意見を申し上げたいのですが、文部科学省の場合、科学研究費と、それから次世代がんという最近新しく始まったもの、この2つが大きながんの研究の柱となっております。
 科学研究費というのは、新学術領域ですとか基盤研究といった研究者の興味を中心に研究をしているわけですけれども、がん研究の場合は長い間がん特定研究ですとか、がん重点研究として、谷口維紹先生、その前は鶴尾隆先生が中心となって大きな班をつくってやってきておりました。
 その後ボトムアップ型の研究で、研究者が新学術領域あるいは基盤研究でがん研究をやっていきましょうということになったわけです。そうしましたところ、やはりがん研究というのは、いろいろなバックグラウンドを持った方が集まって力を合わせてやることが非常に重要なのですけれども、それがなかなかうまくいかない。例えば臨床の研究者ですが、やはり臨床の方は過去の発表論文が少ないものですからなかなか競争で選ばれてこない。あるいは放射線基礎医学あるいは放射線治療の先生方は別の領域で出したほうが通りやすいという方もおられまして、こうしてこれまでせっかくつくってきたいろいろなバックグラウンドを持った方々がなかなかがん研究として集まってこなくなった。そうしますと、学会などで放射線基礎医学や臨床の先生と会うと非常に面白い、がん研究として重要なものがあるのですけれども、それが科学研究費でこれまでやってきたグループとの共同研究というのがなかなかしにくい状態になったというのが、一つの反省点ではなかったかと思います。
 その点では、次世代がんというのはある程度プロジェクト・オリエンテッドでやっていただきましたので、私個人としてはこれから大きく発展していくことを期待しているところであります。
 もう一つは、上田先生おっしゃいましたように、こういう基礎研究の中でも、日本独自のがん、成人T細胞性白血病ですとか、あるいは胃がんその他は欧米ではなかなか興味を持ってくれませんので、日本の基礎研究者がしっかり研究をして、それをTRまでつなげていかないと誰も基礎研究やってくれないということもあります。文科省の基礎研究といえども、がん研究に関してはある程度の方向性を、総括班というのがありましたけれども、そういったところでつくっていって、そして共同研究を進めていかないとなかなか大きな成果とはならないのではないかということが、今回私が感じたところであります。
 それからもう一つは、次世代シークエンサーあるいはスパコンを初め、非常に高価なもの、あるいは機器としてなかなか皆さんそう簡単には買えないもの、あるいは、上田先生がおっしゃいました最近注目されはじめた循環腫瘍細胞のようなものに関しましても、非常に先端的な機械が必要ですと、それを持っている人はできるけれども、それはないとなかなかできない。がんの特定研究などでは、例えばがんの細胞株を皆さんで共有したりとか、そういったリソースを共有してみんなで発展してきたということもありまして、がん研究というのは個別のアイデアというのは非常に重要ですけれども、それをみんなで総括班のようなものをつくって、方向性をある程度示しながら協力してやるというのがありました。がん研究はほかの研究とやはりそういったところは大分違うのではないかなというのが、私が感じたところであります。
 そういう意味で、次世代がんなどはかなりしっかりやっていただいているので、こういったものを含めて、もう一回検討しながらやっていければと思ったところであります。
 以上です。
○堀田座長 ありがとうございます。
 次世代がんのことがかなり言われていますけれども、私は今、厚労省の管轄下のナショナルセンターにいるのですけれども、どうしても似たような研究領域を文科省も厚労省も迫っているなと感じます。そういう状況もあってがん研究を統合したほうがいいという話になってくるのかなと思います。野田先生。コメントをいただけますか。
○野田構成員 自分の推進事業の話になるとちょっと今までと口調が変わるので、がん会の代表として来ているので広い視野のほうでお話をしたいというふうに思います。
 ちょっと戻って先ほどのフルーツのところで、やはり出てきているのは今、宮園先生の指摘されたゲノム科学だと思うのですね。宮園先生は機械とかそういうものが先進的でありお金がかかり、限られてしまうことが競争力を少し減衰させるということにもある、つまりそういうものをそろえることと、それを使うプロジェクトをみんなで選んでいくことと、やはりカップルさせてやらなくてはいけない。
 かつての政権のときに、何で2番じゃいけないのですか、というような話があって、ゲノム推進のときに、計算機のスピードを競うということがどういう意味があるかという話が出てきて、文科省が進めている計算機についての話がよく出てきたと思います。
 ただ、ゲノム研究は非常にそれがわかりやすくて、例えばゲノムのシークエンスのフルゲノムはアメリカが、それも国ではなくてベンダーのほうの企業が全部資本でしましたが、あれが一番出ないといけなかったか、日本は遅れたというのがあると思いますが、今やいわゆるクリニカルシークエンス、つまりシークエンス情報がそのまま患者さんの治療法に影響する時代があと5年間で来るというときになると、ゲノム情報というよりは、もう患者さんの予後を予測し診断を決める情報を外国任せにしていいのですかという時代にやはり今はなっているのだろうと思います。
 なので、10年と言わずに今後の戦略のまず5年のところの、要するにゲノム科学の国際的競争力を見直し、がん研究への積極的応用をするというのは、一つの果物としては重要な果物なのではないかと思います。
○堀田座長 ありがとうございました。
 中釜先生。
○中釜構成員 
上田先生の資料の11ページに「がん克服に向けた展望の途絶」という非常にインパクトのある表現が使われているわけですけれども、恐らくこの中には、思いとして先ほど来、議論されている基礎、TR、臨床への展開というシームレスな展開のところのつなぎの悪さというところが、一つの要因となっているかと思うのですね。
 上田先生の御発表では成長戦略という1つの切り口からそこをいかに進めることによって活性化し、この閉塞感みたいなものを打開するかという議論だと思います。最近の技術として、野田構成員がおっしゃったゲノム技術、クリニカルシークエンスということに関しては、特に日本に特徴的な疾患に力をつぎ込んでいく、しかもそこは国として基盤を整備し、拠点化するぐらいの覚悟でやるということは必要だと思うのですけれども、同時に幾らそういうクリニカルシークエンス、診療情報が蓄積されてきても、やはりそれを実際の診療、臨床に反映させようとすると、臨床側との非常に密な連携や臨床側の協力、パラメディカルな協力がどうしても必要となります。大きな体制が必要になってくると思うので、そのあたりを踏まえて仕組みの議論、つなぎ方の議論ということを同時に考えていかなければならないと思います。いかに最新の技術、ゲノム解析、技術であったとしても仕組みとしてのつなぎがスムーズに流れていかないと、やはり閉塞感が出る可能性はあるというふうに思います。
 同時に、成長戦略というところからの議論は、非常に重要だと思うのですけれども、がん医療、がん研究全体を考えたときに、必ずしも成長につながらない部分というのもあろうかと思うのですね。堀田委員長の戦略ライフステージというところにも関連するかと思うのですけれども、そのあたりをやはりきちっと区別をして議論していくことが必要かなと思います。
 もちろん、成長戦略、これは非常に日本にとっても活性化する起爆剤となるでしょうし、バイオロジーの領域において日本の成長を牽引するようなものが生み出されていく、その仕組みを議論するのは重要だと思うのですけれども、少し違った視点での議論も合わせてしていけばというふうに感じました。
○堀田座長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょう。
 石川先生。
○石川構成員 
先ほど上田先生の御発表の最後の37ページの間野先生のALKの話なのですけれども、これすばらしい発見で、非常に短い期間で有効な薬が患者さんに届くようになったのはすばらしいことだと思います。私は、近くで間野先生のこの発見に至るまでの過程を拝見する立場にありました。間野先生は、この2007年にこのEML4-ALKを発見されたということの基礎として、その前の15年から20年の間、このALKというのは、たんぱく質リン酸化酵素という酵素なのですけれども、その酵素の研究をずっとされていたというバックグラウンドがあって、はじめて成し遂げられた偉業だと思います。
 その酵素に関する間野先生の御研究というのは、当時、文科省がん重点、がん特定というのがありましたので、そのサポートによって行われていました。ですから、この図では、間野先生のご発見は2007年からスタートになっていますけれども、そのような基礎研究としての研究期間も入れると、四半世紀以上かかる仕事だったと思うのです。最初のスタートの研究が文科省がん重点、がん特定だったことを考えれば、そこの部分に相当するような基礎的研究の支援体制がなくなってしまうと、25年後に日本は玉なしになってしまうのではないかという心配が私は非常にあると思います。
 ですから、最終的に患者さんに届く医薬を届けるためには、やはり、特定の標的分子1つ、富士山1つではだめなのであって、八ヶ岳のように数多くのさまざまなシーズを持っていて、その中のほんの少しの部分が最終的にたどり着くのだと思います。その八ヶ岳のようにあちこちでいろいろなヘテロな研究を支援するシステムが、それは主に基礎研究だと思いますけれども、特に文科省においては必要で、それが25年後のすばらしい画期的な薬につながると私は思います。
○堀田座長 大変重要な指摘、ありがとうございました。
 まさに、そういうふうに裾野がしっかりあった上でピラミッドがというか、そのサミットが見えてくるという話だと思うのですね。問題は、今、成長戦略やいろいろなことで語られているのは、どうもこのサミットのところだけをすくいとって早くものにするという考えも一方ではもちろんそれは戦略的にあるのだけれども、それは上澄みをすくっているだけでは、そのうちに取るものがなくなっちゃうぞという警告としてはとても重要だし、がんだけではなくて、日本のライフサイエンス全体を見たときにそういう問題が指摘できると思いますね。ありがとうございます。
 そのほか。眞島構成員どうぞ。
○眞島構成員 ありがとうございます。
 先ほど、宮園先生が御指摘になった点についてコメントさせていただきたいのですけれども、やはり日本特有のがんの患者さんは、本当に日本の優秀な先生方に頑張っていただかないと世界をあてにしていても何も出てこないという状況がありますので、ぜひそこのところは「難治性がん、希少がんも含めてですけれども、積極的に研究をやっていただきたい」ということが一つ。
 それからもう一つは、ゲノム科学というお話がありました。これからますます遺伝子解析が進んで、病気になれば、「予後がわかる」。それからまた、「それが生涯の罹患率の予測にもつながって予防につながる」、あるいは「早期診断につながる」と、さまざまなことが出てくるだろうと言われています。患者としては本当に予防ができたらありがたいと思うわけですが、このゲノム科学に関しては、そのさまざまな横文字が並んでいることもあり、がん患者さんにはなかなかわかりづらい内容です。がん研究自体がブラックボックスというお話をさせていただきましたけれども、やはり、がん研究の恩恵を受ける患者さんに理解できるような形でもって、コミュニケーションをしっかり図っていただく必要があると思います。またがん患者団体は同じがん研究コミュニティの一員として、運命共同体ですので、できるところはぜひ支援したいと思いますので、先ほど上田先生がサクセスストーリーを1つ御紹介いただきましたけれども、ぜひそのような形で我々もがん研究を支援する活動に参加させていただければありがたいと思っております。
 以上です。
○堀田座長 ありがとうございます。そのほかの御意見。
 西山構成員。
○西山構成員 上田先生が、継続が大切と言われたので、最後に1つ御提言があるのかと思って待っていたのですが、研究機関の問題です。
 今、出ている研究が、例えば臨床研究であっても3年間で終了しようというふうな状態で最大限3年。この間に出せるというふうなことを、今のままの状態で本当にいいのかと、私個人では大変疑問に思っております。
 もちろん、短期間の間に成果が出るべきものとそうでないものとがあると思いますけれども、そうしたものをやはり振り分けていくというふうなことも研究の成果を求めて、充実を求めるのであれば必須だろうと思っています。
 そうした長期的な、長期的というのは比較的長い研究期間を持った研究を設けることも今後必須になってくるのではないかというふうに思っております。そうしないと、成果をすぐに求められますので、わずかな間にでもペーパーを書かなければいけないというふうなものの中で、本当にじっくりとした形の基礎の発展が芽生えるかどうかというようなことについては、少し疑問を持っております。そうしたことも、将来構想の中で考えていただければというふうに思っております。
○堀田座長 ありがとうございます。
 研究期間のこともありますし、文科省でも既にやっている基金化という動きもあります。厚労科研では基金化の動きが今のところはっきりしていないので、そういうことも含めて全体としてもう少し研究費がつながるような、あるいは弾力的に使えるような形になるということは、ぜひ提言していきたいと思います。
 そのほかいかがでしょうか。
 田村先生。
○田村構成員 臨床家なのでケースカンファレンスは毎日やっているのですけれども、上田先生のケースを検討できればと思います。特にトランスレーションリサーチの面で、サクセスストーリーとして上田先生がこの「Mogamulizumab」を開発されたのですけれども、患者側から確かにニーズがあって、そして検体が比較的簡単に手に入って、そして菅首相の肝いりでこれが進んできたという非常にある意味ではスムースにいったようには見えるのですけれども、多分抗CCR4抗体ができてそしてそれが製品化するまでにかなり大変な時期があったと思います。そこの部分を研究する研究者、いわゆるトランスレーションリサーチャーというのがもしあるとすれば、どういう人たちがしたのか、かなり地道な仕事されたと思うのですね。研究結果に関してなかなか論文化ができない。その人たちのプロモーションもなかなか難しいような部分もあるのではないかと思うのです。そういった観点から人材育成も含めて、先生が苦労された部分についてお話しいただけると(出席者のみなさんに)実感としてわかっていただけるではないかと思います。いかがでしょうか。
○堀田座長 上田先生、いかがですか。
○上田構成員 
そうですね。今のこの御質問に関しての答えは、非常に一般論でなかなか申し上げにくいですね、このときに、バイオロジーとかいろいろなことに関しましては、我々は臨床教室ですけれども、非常に白血病の発生機序とかそういうことに関してすごく興味を持っておりましたから、そういうウェットラボでの仕事としては非常にマインドのいい人たちがそろっていたということは一つございます。
 それで、企業とのいろいろな話し合いの中に、何回か企業のトップが開発をちゅうちょしていたときが何度もございました。というのは、要するにまずは希少がんであるため大した企業収益にはならないだろうというのが最初の発端ですね、それに開発には色々リスクが伴います、そのリスクを思うと前進できないというのが企業側の理事会としての見解です。それをブレークスルーするには、やはり患者さんのニーズと、それから我々がいかにラボで科学的なデータをきちんと表示できるかということだと思いますね。実際問題、ラボで患者さんの細胞がこの抗体できちんと死滅するという、それが今までのオートの、オートというのは患者さんの白血病の細胞が、患者さんのリンパ球できちんと死滅できるという証拠をえた、この興奮はわすれられません。これまでがん患者さんで証明できたことほとんどなかったわけですよ。このようなブレークスルーした事実を企業の全く異分野の人にもきちんと理解してもらうということが物すごく大事だというふうに思います。ですから、いかにラボがきちんとした情熱を持って、そういう科学的なデータを一般の企業人に、それから患者さんに御理解していただくということがすごく大事であろうかと思います。
 第2点で、この開発の経過表というか歴史の中で、32ページのところの2004年~2007年、実際問題では2002年くらいからか、これは臨床に使えると我々は踏んでいたのです。そこからの3から5年間というのは、いわゆる前臨床研究として我々はどちらかというとバイオロジーをどんどんやっていてその実験モデルをつくったりしていたのですけれども、その抗体が抗体薬として利用できるための安定性とか毒性実験いかかる時間がすごくかかりました。これ一生懸命、叱咤激励してこの速さでできたのであって、ここに物すごく時間が一般的にはかかるという。
 それに対して、例えばきょうここでそういう話をしていいのかどうか知りませんが、たくさんシーズがあるというときに、そのファーストスクリーニングのいわゆる本当にトゥルーヒットになるかどうかというところら辺、それからトゥルーヒットであれば、人に応用するために最低限のスクリーニングシステムなどは、本当は外国ではベンチャーがすぐやってくれるんですね。日本だとやはりそういうシステムをつくられて、企業でもいい開発ができたり、特に北海道から沖縄まである国立大学のラボとか研究所がいいシーズができたという際には、そのシーズのファーストスクリーニングぐらいはできるようなシステム、これがあると非常に良いと思います。このときの苦しみというのはアカデミアの人間にとっては耐えられない苦しみだったのです。
○堀田座長 いいですか。では、手短に。
○野田構成員 まさに次世代がんの今の後半の部分なのでちょっと御説明したいと思いますが、例えば2つのポイントがあるかと思います。
 分担は近年よくできていて、シーズからものが出て導出を目指しながら臨床試験も「臨床試験活性化5カ年計画」でサポートされているしというふうに見えるのですけれども、例えば今のシーズの話ですけれども、今、文科省は大変に立派なスクリーニング基盤をつくっていただいて、ライブラリーを持ってきてとにかくシーズではなく、標的ではなくいわゆる化合物のほうまでトランスレートするところまでをやれる。そこにはサイエンスが必要ですので非常にいいのですが、あの数十万化合物はみんな買い求めたものですので、あの中に幾ら立派なトゥルーヒットがあっても物質特許はとれません。というところに1つ川が流れていて、企業との間にまだ川があるのです。これが最適化して1つでも構造が新しいもので高い活性を持つものがとれれば、企業はかなり手をぐっと伸ばしてきますというそこが川です。
 それからもう一つのほう、それでもマーケットが少ないようながんの場合の有望なリード化合物はなかなか企業は手を出せません。なので、医師主導の治験になって厚労省はそのお金を出していただけるようにこの数年なってきたのでいいのですが、先ほどの西山先生の話です。それに、必ずそれで約束させられているのは、アカデミアレベルの、医師主導の治験のレベルの高機能化。そのために何が起こっているかというと、PMDAに必ず相談に行って了解を求めて治験をスタートする。そのために3年間のあれですが、例えばこの間の実用化研究で出てきたやつで、1年以内にPMDAの相談が終わったものは1件もありません。8件あって、みんな治験開始はその1年半後です。そして、残りはあと1年半しかないところでどうやって患者さんのエントリーを考えるのか。なので、その全てを入れかえる必要はなくて、やはり話し合いをして、そういうものを意識してやればより日本の強みは出てくるのだろうというふうに思う。そういうところの一部を次世代は文科省の中でやらせていただいていて、文科省が支えている研究者の方たちの意識と知識を随分変えているというふうに思います。
○堀田座長 ありがとうございました。
 時間の関係もありまして、今の多分創薬の関係、用意していただいた経済産業省のほうから「バイオ医薬品関連政策の視点」という資料がございますが、これを説明していただいてまた議論に戻りたいと思います。
○江崎生物化学産業課長 ありがとうございます。生物科学産業課長の江崎でございます。
本日は貴重な機会をいただきましてありがとうございます。
 文部科学省さんが知の蓄積ということでございましたので、経済産業省は国民の効用と富の拡大ということでございます。できればきょうの御議論に貢献したいということで、新しい視点ということでお話しをさせていただきます。
 特に経済産業省でございますけれども、バイオ医薬品、特にこれがんの治療薬になろうかと思いますが、産業的な観点から捉えるとどう見えるか。産業的というのは、もうけるかどうかということではなくて、自立的に継続できるかということが結構大事なことになると思います。
 もう一つは、どうやって日本から新しい薬が出てきてくれるのかと、非常に大きなテーマでございます。先ほど来ありましたように、政府としても前政権も含めてこの分野は非常に期待が高いのですけれども、他方で医療費の破綻問題というのもあって、これはどう捉えるかという新たな視点が要るかなと思っています。
 もう一点、先にお断りしておきますけれども、これはあくまで国の視点でございますので、個別の製薬メーカーさんとは違うということでお許しいただければと思います。
 まずは1枚めくっていただきまして、簡単にいきますけれども、まずは「1.創薬分野への期待」でございます。
 これはグラフをごらんいただければおわかりのとおり、これからこの国が生きていくために非常に付加価値の高い産業であるということ。それが右側の上ですけれども、景気に影響されない産業であるということ。そして右下にありますように、数少ない新薬開発国の1つであるということから左下にありますように、閣議決定でありますけれども、GDP押し上げ効果も高いし、雇用創出効果も非常に大きいということでございます。
 次のページ、今後の創薬分野におけます今後の流れということをざっくりとまとめておりますけれども、恐らくでありますがこれから医薬品の世界では低分子化合物からバイオ医薬のほうに行くでありましょう。それからポンチ絵で書いてありますけれども、左、通常疾患、重篤疾患、難病というふうに分けてありますけれども、これまで主として広がってきました化学薬品、副作用の問題でいろいろありますけれども、最も大きな問題はこれから探索が困難になってくるということ。それに対して緑のところでありますけれども、バイオ医薬については標的が定まりやすいと、副作用が少ないけれども非常につくり方が難しいということです。ただ、右のグラフにありますように、今後伸びていくところは、バイオであろうということで大変な期待がありますし、右下にありますこれまで治らなかったところの再生医療、新しいものがあります。これがきょうのテーマでありませんので簡単にいきます。
 ところが、次のページでございますけれども、これはちょっと野木森委員からのお叱りをいただくことになろうかと思いますけれども、国として見ると、やはり期待されている産業ですけれども大幅な輸入超過ということになっております。これは、もちろんあくまで国境を越えて入れたかどうかのことなので、企業さんから見れば黒字かどうかの問題には関係ないのですけれども、国から見るとこれによって雇用が非常に失われてしまっているという部分と、後で申し上げますけれども、研究開発は国内で行われていないということにつながってくるとこれは大変な問題。特に右のグラフにありますように、がんの治療薬、これから国民の大半ががんになる時代の中で、この国ではやはりがんの薬はできていないとういこと。これをどのように考えるか。
 もちろん企業さんの立場からすると、赤字といっても全体から少ないじゃないかとか、法人税が高いからそのとおり当然だとか、自動車も海外生産高いじゃないかというのはあるのですけれども、一遍、国の観点から次のページをごらんいただくとこの国の成り立ちというのを簡単にまとめましたけれども、資源のないこの国がどうやって生きているかといいますと、今、経常収支9.6兆円ですが貿易収支は残念ながら赤字であります。サービス収支も大したことありません。所得収支で少し入れておりますけれども、それでとんとん、何とか経常収支は黒字になっていますけれども、その縦にグラフが2つあります。マイナス1.6兆円の貿易収支の赤字の内訳なのですけれども、この国というのは資源を買って加工して付加価値を高めて輸出をしてという成り立ちの国なのです。そこからすると、確かに赤字のものは多いのですが、ほとんどが石油だったり、原料で、この国にないものなのですね。左にありますように、加工している製造業でお金を稼いで資源と食料を買っているこの国の中で、非常に付加価値の高い医薬品が何で右側にいるんだということが、ある意味我々としての一番大きなポイントでありまして、できればこれを左側にいっていただけるとありがたいという思いであります。
 それからもちろん海外展開で得た所得というのもあるのですけれども、日本国全体で2.6兆円しかありません。したがって、赤字で全部吹っ飛んでしまうということになりますので、何とかほかと同じように、法人税が高いのはほかの企業も一緒ですけれども、何とか日本のほうに戻ってきていただきたいという思いです。
 次のページ、実はそういうビジネス環境の問題ではなくて、もっと本質的なことがあるのではないかというのが、前回御議論いただきましたベンチャーの問題その他も含めて簡単にまとめておきました。
 実は、大きな問題かと我々が思っておりますのは、バイオ医薬品の開発コストでございます。これは、従来の開発手法ではどうしても行き詰まってしまっているというところが大きいかと思っております。特に、大手メーカーさんということで、お許しいただければ左側のところをごらんいただきますと、今までどうしても日本の製薬メーカーさん、低分子化合物が基本でございました。これがバイオになっていきますと大規模な投資、これまでの工場は使えませんので、これを投資回収するということになりますと、日本のマーケットは小さ過ぎます。したがって、恐らく海外のベンチャーを買うというのは、これは合理的なことなのだろうと思いますけれども、ただ、残念ながら製薬を海外でやってしまわれると国内に何も残らないということになっています。一応、内々ですけれども、各大手の企業さんの資金の流れを全部分析しておりますけれども、恐らくもう間もなく収益構造が低分子化合物型に寄っていますので、特許が切れるとほとんどは輸入商社になってしまうというのが我々のちょっと危惧しているところであります。そういう意味では、古い薬の延命で薬価の維持で食いつなぐという構造になっていますので、これを何とか転換をしないと国内から出ない。
 それから右側のベンチャーの話なのですけれども、前回申し上げましたアカデミックトラップでございますけれども、どうしても基礎研究、これシーズが悪いわけではないのですけれども、企業としてある程度まで育っていかないと今度は製薬メーカーさんとしても買いようがないという問題。ここを何とかやらないといけないのですが、グラフでごらんいただきますように、わっとできてわっと消えていったという、これは非常に大きなこの国の問題なのです。
 これはなぜかというのが次のページで分析をさせていただいておりますが、これは皆様方からすれば普通のことだと思うのですけれども、創薬事業のコストイメージなのですが、左側をごらんいただきますと、下から前臨床から臨床にいくというところなのですけれども、ここの場合は研究の場なのでどうしても下のほうの研究に注目がいってしまうのですが、フェーズ1以下のところ、これは10億、20億。我々行政としても予算を獲得して何とかできる世界なのですが、実際に製薬メーカーさんにとって一番辛いのはやはりフェーズ3のあたりで、これはかつて低分子化合物のころは約200億~300億だったのがバイオになったら500億~1,000億ということです。これは非常に辛い状況です。これは実は日本だけではなくて世界も同じです。
 したがって、世界は何が起きているかというと、メガファーマー同士が水平合併をして1,000億のお金を出せるような構造改革をした上で基礎探索がやはりできないので、前回申し上げたように基礎探索ができないからベンチャーが育つ環境が結果的にできてきた。もともと、低分子化合物時代はアメリカもベンチャーはありませんので、そういう意味ではこういう構造の中で日本が非常に辛いのは、日本の製薬メーカーではこの資金力が弱いのである程度育ったベンチャーしか買えない。したがって、アメリカ型のベンチャーを買うということになってしまいますし、今、最悪なシナリオだなと思っているのが日本のシーズを外国のベンチャーが買って、ある程度育った上で日本の製薬メーカーさんが高く買ってそれをアイブランドで成約してしまうという、日本に何も残らない構造になってしまっている。
 そういう意味では、ある意味国民皆保険で安定した薬価から守られた市場を提供しているだけの国になってしまう。これを何とか国内の中で製薬ができるようにするためにどういう戦いをしたらいいのかというのが次のポイントでございます。
 1枚おめくりいただきまして、ある意味市場環境、それから薬の使い方が変わっている中で1つチャンスがあるのかなというのが、この「5.ビジネスモデルの転換(低分子医薬からバイオ医薬等へ)」ということなのですけれども、繰り返しになりますが、従来はブロックバスター型ということで、成功し威信をかけても2,000億もうかればいいということだったのですが、こういった研究開発、低分子の探索がしにくくなったということと、バイオが非常にお金がかかるのでこれがやりにくくなったということですね。
 特に3つ目の○の後半にありますように、対象患者の規模が変わってきているという、先ほどの希少疾患もありましたけれども、1個当てれば物すごくもうかるというマーケットはもうなくなってきている。そういう中で開発の仕方を変えていかないと、恐らく変化に対応できない。これは世界でも同じなのですが、世界はどちらかというと資金力に物を言わせて従来型の開発をしているということなのですが、それもなかなか難しい。
 一番下に2つ、青から赤に矢印がありますけれども、左側一番下、開発目標はブロックバスター型から個別化医療型に変わらなければいけない。こういう中でグラフにありますように国内抗体はほとんど出ないという、ここをどう変えていくかというのは大きなポイントになろうかと思います。
 次のページ、先ほど来いろいろ先生方からも御提案がありますので我々も重複しておりますのでここは簡単にいきたいと思いますが、恐らくビジネスモデルを考えるために我々経済産業省的には2つのアプローチがありまして、まずは得意分野は何なのかということ。それからマーケットの性質を見極めるということですね。ただ、この医療の世界のマーケットというのは実は患者さんなのですけれども、ここの部分はほとんど出てこないですね。これはあえて出したらどうなるかというのが後半で、後ほど眞島先生に御指導いただきたいと思っておりますけれども、どうなるかという分析をしております。
 強みのほうから先にいきますと、何かといいますと、実はマル1にありますようにゼロからやるというのは本当にもう、お金間に合いません。したがって、技術力を活用しようではないかというもの。
 これは先ほどポテリジェントの話が出ておりました。まさにそのとおりだなと思っておりますけれども、製造技術のレベルが極めて高い世界、欧米にもできない。ポテリジェントのいいのは抗体の糖鎖の部分を改変するという、これを安定製造するという技術は多分世界でも日本ぐらいしかない。こういったものをうまく使うことによって薬をつくっていく。それによって効果が100倍になっていくという、そういった単純にシミラーをつくるのではなくて、ベターにしていくというような取り組みはどうでしょうか。2015年からは特許が切れていきますので、大負けしているところから転換できるかもしれない。
 それから2番目のところですが、スコープを広げるということでリポジショニングと。既に安全性の確認ができたものの中から探すということ。
 3番目が、これもまさに先ほど出ておりましたけれども、新たな武器を用意しましょうということでまさにスクリーニングをしていく、演繹的な論理的な絞り込みをする。これでいきなり薬ができるわけではないのですけれども、非常に大きな選択肢の中から絞り込むというツール、これは非常に大きいかなと思っております。
 4が、私もこれが一番大事だろうと思っておりますし、野木森会長からも御指摘がありました、上田先生からも御指摘ありました。これはルールの変更だと思っています。いわゆるコンパニオン医薬ですね。対象患者数が減ってくるという規模の問題だけではなくて、性質が変わっているので、それをターゲットにすることによって患者さん自身も自分に合った治療、後で言いますけれども、逆に合わない治療は苦しむだけという、これを排除できるというのと、今度は製薬メーカーさん側にとってもフェーズ3のあの莫大なコストを小さくすることができるかもしれない。これは私ども、2~3カ月かけて回りましたけれども、非常に悩ましい問題、誰も反対しないのですけれども、中途半端にやると製薬メーカーさんと医療機関の収益が下がるだけという問題になってしまいますので、これ一度PMDAさんもルール化しようとされて頓挫されているので、できればこういうものをベースにしたような薬のつくり方にしていくと日本の強みが出せるかなというのがあります。
 それから一番下にきょうの本題のテーマなのですけれども、ここに市場という概念を入れたらどうなるか。
 前回、白岩先生が御指摘いただきました、創薬分野に向ける社会的経済的視点というのがありましたが、もう一つ我々は利用者である患者の視点がちゃんと入れられないかなということを考えております。特に、先ほど申し上げました医療分野の特性というのを、マーケット、患者側の視点が弱い。これ実は普通のマーケットですと使った方のフィードバックがあって淘汰されていくのですけれども、がんの世界は使った方は大体亡くなられてしまうので、市場が撤退してしまえるので、その情報をうまくフィードバックしないといつまでたっても同じ治療が繰り返されてしまうというところがある。これを何とかバランスをとることで、何か手法が出せないかということを考えてみました。
 1枚おめくりいただきまして、これは前回の白岩先生のものからもいただいているのですけれども、上のほうは社会経済的視点です。端的に言いますと、治療した場合としなかった場合の社会的コストの大小で見る。これはヨーロッパを中心に議論されております。このように非常にわかりやすいところなのですが、我々ちょっと危険だなと思うのが、これだけだと患者の切り捨てにつながってしまう。要するに社会的に意味があるところしかお金を出さないよという議論だと危ないかなと。それで、実はその下の患者の視点ですね。QOL、これが正しいかどうかというのは今後の議論だと思っておりますが、とりあえずはそのHUIを使って機能がどれぐらい回復したかというのはよくある話なのですけれども、これに加えて、やはり患者にとって苦しかったかどうかということをちゃんと入れないといけないだろう。特に誤解のないように申し上げたいのですが、経済産業省は利益が出るかどうかで判断をしているということではなくて、資源がなかったら切るということよりも、今ある資源をいかに有効に使うかということが入れば、みんなハッピーになれるのではないかという、そういう視点を探したいということでございます。
 次のページ、これは計算の方式なので簡単にします。〈参考3〉は、単純な医療費用だけではなくて、介護、その他、逸失利益、それはその介護の方も含めた、これを治療した場合、しない場合両方計算して比較をするというものです。
 それから次のページでございますが、患者さんの視点ということでイギリスからお借りしてきているものなのですが、QOL尺度として何をもってはかるかというのは結構大事なのですけれども、ちょっと細かい表で大変申しわけないのですが、暫定版ということでお許しいただきたいのですが、視覚、聴覚、会話、感情、認知、器用さ、移動、それから疼痛といったこと、これは病気による疼痛で副作用ではないです。それをある程度これもお医者さん方にお話をお伺いしながら、比較していろいろな治療を縦横で比較するとどうなるかというのがその次のページでございます。
 12ページです。これはまだ非常に物議を醸す表なので暫定ということでお許しいただきたいのですが、これは縦軸に、その治療をすることによって社会的にポテンシャルがどう改善されるかという縦軸です。それから横軸が、患者御本人にとってその治療をしたことによって運動機能その他が回復したかどうかという軸です。これはよくあるところなのですが、これにもう一点、後ろの方申しわけないです、カラーではないので申しわけないのですが、これに色づけがしてあって、これは苦しかったかどうかということですね。まさに副作用の概念を入れたときにどうなるかということで置いたものです。
 これはちょっとデータが不足していますので、ぜひこれから皆様方に助けていただきたいと思っておるのですが、一応ざっくりつくってみた感じからすると、点線でクロスになっているゼロゼロのところ、これは治療してもしなくても全然変わらないというところであります。そこから右のほうにいけば御本人にとってはある意味その効果がある。特に見ていただければ、第1象限、小児がんのところですね。こういったものは世界的にも価値があるし本人にとってもいいと。ただ、ちょっと苦しいというものがあるのですが、こういったものを見たときに、これはもともと今後どの分野の薬のバイアスにリソースを投入すべきかと考えるためのベースなのですが、もうちょっと実はこの裏に日本が強いか弱いかというのが入っているのですけれども、この色を数値化できるとどうなるかというと、色が濃ければ濃いほど左側にずれていきます。つまり、この縦の線を左に抜けてしまうと、結果論でありますけれども、本人にとって治療しないほうがよかったということになります。
 ただ、これはあらかじめわかるわけではないので、ちょっと余り無責任な議論をしてはいけないと思うのですが、これをベースに実は前2回の先生方の御議論を聞いて材料をちょっと分解した作業をしてきました。何かというと、この中でがんだけ取り出してがんのステージ、それから年齢、これをがん種別に分けるとどういうことが言えるのかというのをつくってまいりました。
 13ページにありますように、これはがんの場合はHUIだと身体機能になってしまいますので、恐らくがんの患者さん誰も余り変わらないので、むしろQALYで前回白岩先生がやっていただいた、あちらのほうがいいかなということで資料は変えておりますけれども、その結果として出たものが14ページでございます。
 これは非常に特徴的なケースを3点つくってまいりました。「9.がん医療費マップ(肺がん)【暫定】」というものなのですが、まず、これを見ていただくと、イメージとしておわかりだと思いますが、ステージがすごく大事になります。つまり、ステージが早ければ、これは何かというと、輪の数は5歳ごとに年齢を区切っています。若いほうからお年寄りのほうと、左下に向かって大体動いていくと。社会的な効用とか本人にとっての効用ということなのですけれども、これ後ろの方申しわけないのですが、ステージ1、2はどちらかというと手術型になりますので副作用というのは余りないのですが、3、4になってくると薬を使ってくるものですから副作用が大きいということになってまいります。
 このデータ、我々がとれるのはウェブ検索で各病院がお出しになっておられるものを全部集めてきて、そして厚労省さんの統計と突き合わせてこれをつくっておりますので、きょうはプロの皆様方のデータをいただけるともっとちゃんとしたものができるかなということを思っておりますが、イメージだけというふうに見ていただきたいと思いますが、そうしますと、何がわかるかというと、肺がんの場合はやはりステージが進むと何をやってもだめだと。もっと言うと、これ色づけのところを数値化すると左にずれてしまう。これも先ほど申し上げました結果論なのですけれども、本当に治療するのであればステージが早いものを見つけてやらないと難しいということであります。これはシャチホコ型と我々呼んでいますけれども、こういう形になります。
 その次のページが乳がんなのですけれども、乳がんはこれが少しばらけます。クジャク型と呼んでおりますけれども、これは各ステージともに効用はどちらも個人から見ても社会から見ても高いのです。どちらかというと年齢のほうが大事ということが見えてまいります。
 したがって、こういったそのがんによってどういうふうな対応がより望ましいかというのが見えてきます。ちなみに、胃がんですけれども、胃がんはちょうどこの乳がん型と肺がん型の中間ぐらいになりそうです。今、計算をしております。
 それからもう一つ、次のページ、白血病です。白血病はこれはもう本当にきれいに出てしまって悲しいのですが、ステージ、これは骨髄性とリンパ性があるのであえてちょっとわかりやすく書いてありますけれども、とにかく若いことが大事ということで、ちなみに骨髄性白血病をステージで表現することはないのですが、一応便宜上つくってみました。とにかく年齢、特に若いころにやらないと、後は本当に何をやっても本人を苦しめるだけというようなことが見えてくる。
 ちなみに膵臓がんの場合は全部このゼロゼロのところに固まります。これはないのですけれども、今ちょっと計算していますが、そういったことを考えると、まさに前回、前々回先生方がおっしゃったとおり、がんというのはそれぞれのステージ、種類、年齢で分けて対応していかないと結構違うのだということが見えてまいります。
 それをまとめたのが次のページでございまして、これはまだモデル計算なのでこれが絶対ではありませんが、この左側の図をごらんいただきますと、まず青いところ、後ろの人見にくくて申しわけありませんが、ステージ1のほうにあるものだと思ってください。ここは、やはり社会的ポテンシャルも高いし本人にとっても治療効果が高いので、治療の優先度としては非常に高い分野であろうということです。それから緑色になるものについては、ちょっとケースバイケースということでどちらか結構迷うケースです。それから赤いところなのですが、これは本当にどちらも社会的ポテンシャルも低いし本人にとっても優先度も低いので、さらに悪いことに副作用が大きいと本当に患者にとって苦しかっただけということになるということです。
 この図から、ちょっとまだあくまで暫定なのですが、四角で囲みました3つのことが言えるのかと思います。社会経済的に言うと、実は社会的にも患者にとっても意義の低い治療に膨大な財政が費やされているということがわかります。
 それからもう一つ、これは議論があるところだと思いますが、60歳を過ぎると治療の意義が変わるのだなという。まさに前回御議論ありましたけれども、病気としての性質が変わるのだと見ないと、実は生物化学産業課長ですので生物学的に言うと、がん細胞自体が発生するのは、これ生物学的にとめられません。むしろ問題なのは、それを排除する機能が年をとってくると劣化していく、それによって通常であれば出なかったのが出るようになってしまう。若いころのがんというのは、その免疫を突破して出てくるやつであるという、それをどうするかということで対応の仕方を変えていかないと、先ほどまさに御議論あったように同じようなことをやっていてもお年寄りのところでは全然違う効果、むしろ害になっている部分が多いのでなはないかということが見えてきます。これはもっとちゃんと分析しないといけないと思っておりますが。
 そして、最後、これは治療に携わっている先生方にとって一番難しいと思われるところだと思います。我々も先生方やお医者さんを回って感じたのは、当然高齢やステージが進んでいても治る方があるのです。治る方はあるのですが、まさに今後研究でぜひお願いをしたいのが、どういう方が治ったのかというところに注力をしないと、実際、患者さんは1%でも望みがあればぜひやってくださいとおっしゃるのです。ただ、それが結果的にほとんどの方が苦しかっただけ、もっと言うと御家族に財政的な負担をかけただけで終わってしまっている。そうすると、その患者さんが尊い命をもって効果を示していただいたデータは、これはもう絶対に使わないと本当に許されないことだなという感じがします。その結果として研究すべきは、先ほどゲノムの情報ありました。どういう方がこの薬で治って、ステージが進んでいても治ったのかというところに注力してやっていかないと、まさに先ほどベッドからベンチへとありましたけれども、こういう観点でやっていただくことによって、何もお金をどんどんつぎ込まなくてもシフトさせるだけで、今ある資源だけでも相当患者さんが救えるのではないか。薬のつくり方もあるのではないかということが見えてくるかなと思っております。
 ただ、これは繰り返しになりますけれども、あくまで暫定的なデータなので、こういったものをもし御協力いただいて、ことし1年もう一回これをやり直そうと思っておりますので、ぜひお願いしたいと思います。
 最後のページでありますけれども、まさにこれからの方向性としては個別化に進んでいくのでしょう。特にコンパニオン医薬的なアプローチは必ず必要になっていくと思っております。
 それと、一番上の2つ目の○にありますように、やはりこの世界、患者サイドの情報格差をなくしていかないと、やはりマーケットを健全にしていくという意味においては非常にもったいないのかなと。ただ、先ほど最後にありましたけれども、再生医療、左側を先に申し上げましょう、制度は変わっていくのです。こういうふうに特性があるものについて今回薬事法の大改正とシンポができます。そのアナロジーで右側のバイオ医薬品、特にがん治療薬をごらんいただくと、やはり個々人により効果の差異が大きいということを全面に出したような、これは薬としての評価方法、審査方法を変えていかないと製薬メーカーさんにしてもやりようがないというか膨大なお金をかけているだけと。逆に言うと、統計処理、ランダム検査をやればやるほど薬にならなくなってしまうので、まさにそういう性質を考えた制度的アプローチがあると、日本から薬が出やすい環境は行けると思います。特に複雑になればなるほど持っておられる技術が生かせます。
 右下の一番下のところなのですけれども、そのルールの見直し、先ほどPMDAさんのガイドライン、これを続けていただきたいと思っておりますし、もう一つ最後に遺伝子検査、先ほどまさに野田先生がおっしゃったように、これが放っておいてもどんどん進んでいってしまいます。今、親子関係から、太る、はげるから将来医者になれるとか何とか画家になれるとかとんでもないものがあるのですけれども、あれがこれから進んでいく中で、むしろ患者さんにとっての重要なツールとして、これは診断をするどうこうではなくて、やはり自分としてこれはやるべきかどうかを判断していただくツールとして、大変重要なものだと思っております。これを育てていくことによって、全体としていい市場という言い方は適当ではないかもしれませんけれども、この研究の方向性やら産業の方向性やら、日本からやはり治療というものができる環境を整えられるのではないかということを我々は期待しているところでございます。
 私からは以上です。ありがとうございました。
○堀田座長 ありがとうございました。
 大変ユニークな切り口で発表していただいたのですが、ちょっと感情的に支持できないところが結構あるような気もします。
 野田先生。
○野田構成員 一番最後のところで、結論の1つで個別化に関して言われたところはよくわかるので、効く人効かない人を分ける必要があるというのはいいのですけれども、その前のところちょっと教えてほしいのだけど、この17のところで今の医療を詳しく分析してその医療の効果とかその社会経済性を分析するのは大事なことで、その結果これ3色になってきますよね。それで、江崎さんの進めるのは、こういう赤い、僕が何を言いたいかわかると思うのだけれども、今、薬がなくて困っている人が赤になっているのだけれども、あるいはつまり辛い薬しかない、治らない薬しかない人が赤になっていて、そこの研究をすべきだではなくて、江崎さんはここはしないでいいと言っているんだよね。
○江崎生物化学産業課長 逆です。これをすべきだと思っています。
○野田構成員 そういうふうに言ったのね。
○江崎生物化学産業課長 今の治療を続けてしまうとこういうことになりますというやつなのです。これマーケット分析ですから。したがって、この商品は本当はだめなのですよということなのです。
○野田構成員 そうすると今、みんなほとんど8割の人は逆に思っていたと思うんです。まず一つ。
 それから、あとこれはもっとシンプルなことで、ベンチャー論のところだけれども、一緒に考えてもらいたいのはベンチャー、やはり上がって消えていったのは3要素のヒト、カネ、モノ。今、モノのことはよく対象をシーズにすべきか技術を生かすべきかと、物のところは随分ここでディスカスされて。それから、金もどこを狙ってどのサイズでというのがよく書かれていたけれども、でも金は結局、今ここ数週間のバイオベンチャーの株価の上がりを見れば結局経済に影響されるので、大手企業が手を出さない限りはやはりそういう感じですよね。でも、一番ディスカッションがないのは人だと思うのですよ。僕たち人材育成というと、それをやる人が必要だと言うのだけれども、その人は自分の将来を見据えてそれをやる。例えば先ほどの文科省のTR育成にしても、TRのそこでやり続けることが大事ではなくて、そこで安定してものをつくり出せるというポジションがあるから自分はTRになろうとする。ベンチャーも同じで。やはり日本のベンチャーが非常にあれだったのは2つ理由があって、一つは成功事例がないからそこに居つく期間が非常に短かったのが一つと、あともう一つ、どうしてもやはり日本の文化がある。いわゆるその研究の社会貢献に対する、それが資本に変わったときに非常にネガティブなエフェクトがある。だから、この2つを打破するような成功事例をつくるもっと具体的なところを、経済産業省こそ我々に教えてくれるのが役目ではないかという感じがします。
○江崎生物化学産業課長 ありがとうございます。よろしいですか。
○堀田座長 はい。
○江崎生物化学産業課長 まさに、ベンチャーのところは前回も少し申し上げましたけれども、実は私も大学の理事をやっていて、先生まさにおっしゃるとおりで、人が育つのが、出口がないと来ません。したがって、幾らその瞬間だけお金があってもやはり続かないのです。かつて会津大学がノーベル賞の人を集めて半年でやめられちゃったという、あれはその出口を見せない限り無理ですし、実はこの国はベンチャーが起きないわけではなくて、ソニーもホンダもベンチャーなんです。マーケットがあるかどうかということになりますから、我々として今やらなければいけないと思っているのは、間をつなぐお金を出していっても、多分力尽きます。特に、先生おっしゃったようにマーケットに入った瞬間にお金の性質が変わるということに日本のベンチャーは耐えられないというか、それはある意味その文部科学省さんがやさしいので、多分オブリゲーションはそう厳しくないので、アメリカのベンチャーのときのお金のやり方の厳しさたるや、もう比ではないので、そういうものを訓練する環境を我々はつくらないといけないと思っています。
 ただ、逆に言うと、今、海外のベンチャー、大手が買いに来ているように、東大の大須賀先生がそうであるように、莫大なお金が入ってきていますよね。ああいうお金が入ってくるとベンチャーすぐつくれるのです。そうすると、先ほど来申し上げているように、ではお金はどこから持ってくるのだという、この国にはそうあるわけではないことからすると、ゲームのルールを変えることによって製薬メーカーさんが手を出しやすい環境をつくっていく。今までだと、それを買ってからまた1,000億投資しないといけないという環境だと、多分野木森さんなんかはそうだと思いますけれども、買いようがないというわけですね。そうではなくて、そこまで投資をしなくてもいいところまで来ない限り無理だということなのですが、ただこれが100億200億でできるようになったときには、では投資してみようかと。これは、マーケット絡むと因果関係が逆になるので、いいやつがあるから買うのではなくて、買いたい人がいるからいいやつが出てくるということになってきますから、そこの環境のために我々、特に厚労省さんと相談しながら今回制度をとにかく直そうということをやっているのは、そのほうがあくまでお金を入れるよりも効果としては大きいかなということでやっているということでございます。
○堀田座長 ありがとうございます。
 ちょっと時間の関係もありますし、それぞれの立場からの発表はきょうでまとめて次回に報告書の素案をまとめていかないともう時間的に間に合わないのですね。ですから、延々とやっているわけにはいかないということがあります。ただ、未消化なまま報告書をつくるわけにもいかないというところとの兼ね合いで進めたいと思います。
○野木森構成員 一言言わせていただきたいのですけれども。
○堀田座長 わかりました。私もその前に一言言わせていただければ、こういう産業開発的なことだけでがん対策が全部解決するわけではありませんから、そこのところをよく考えて発言していただきたい。
○野木森構成員 よろしいですか。
 今の、江崎さんの言うような説明で、一番私どもがありがたいなと思うところは、やはり今後の趨勢として、やはりよりテーラーメイド的なアプローチになってきますので、それに対応するようなレギュレーションというのを考えていかないといけないのだ、大モデルをつくるのだ、これは私もぜひやっていただきたいなと思います。
 それに加えまして、前のほうのところで結構異論がございまして、数字に出てきたものでそれ自体は別に私が否定するものではございませんけれども、例えば3ページの輸入超過のこのグラフですね。非常に過激に書いてありまして、何かいかにも悪いことをしているようなふうにも見えるのですけれども、必ずしも実態はそうではなくて、これは流れが一つありまして、やはり今の国内の情勢を見ていてもより外資系のウエートが高まってきている。外資系の企業というのはほぼ最終製品のところで入れてくる。結構高い価格のところでものを入れてくるという流れに1つなってきている。それと国内のメーカーが、これはサイズによって違いますけれども、私どもですとグローバルに一応ビジネスをやっているということになりますと、海外でつくったものを日本に持ってきて輸入している部分もあるといった部分。それから海外から海外へ輸出しているので、残念ながら日本からの輸出にカウントされないといった問題。それから割と小さいところとしたら、バルクで輸出するものですから、バルクで輸出する価格はどうしても小さくなる。全体的に過小評価されてしまう。だから余計ギャップが大きく見えて、そういう流れがあるということを見ていただきたいなと思います。実際は、必ずしもこういう形ではないということを考えていただきたい。
 それからその次の4ページのところで、医薬品が輸入のこの赤のところから輸出のグリーンのほうに移れということですけれども、これは確かにそうなりたいのですね。それには、やはり国内のいろいろな制度、これをもっと変えていく必要があるだろうと。例えば研究をとってみれば、昔は外資系の研究が日本でも研究所があったりしたのですけれどもほとんど撤退してしまっているということは、日本で研究してもしょうがないと見られてしまったということだろうと思うのです。日本の企業は、日本をベースに相変わらず研究しているわけですけれども、そういうものをもっとインセンティブを与えるとか、それから工場も外国でつくるよりは日本でつくったほうが絶対いいよというようなところの環境整備というものがいるのではないかと思います。
 少し余分なことを言わせていただきましたけれども、そういうことを考えてください。
○堀田座長 ありがとうございました。
 そろそろ締めに入りたいので、全体的な。
○門田構成員 ちょっとごめんなさい。
○堀田座長 この話題ですか。
○門田構成員 先ほど発言された部分ですね。例えば今、野木森構成員がおっしゃられたことをこういうデータだけで出されて、これしかないのですが、そのデータを加味されたものというのは我々見ることはできるのですか。
○野木森構成員 それを具体的に出すというのは非常に難しいです。というのは、個別企業の情報ですから、それを集積しないといけないわけです。
○堀田座長 経産省は示すことができるのですか。
○江崎生物化学産業課長 実は個別の企業さんのものを分解しているのですけれども、それは多分に発表しにくいなと思って公表データで今回はつくってきたのですけれども、大体はわかっております。その構造はほかの自動車産業でも全部一緒ですから、基本的には外はもちろんカウントしませんので、入ってきているものというのは全部わかっておりますが、残念ですが、海外で生産するとこれは全部あっちに行ってしまっている部分というのと、国内も外資系メーカーにやられてしまっている部分があるので、そこは非常にもったいないなということです。
○門田構成員 出るのであれば、この図と最後に見せていただいたほうを我々も、あるいは国民の皆さんも理解が変わってくると思いますね。
○堀田座長 わかりました。ありがとうございました。
 この話はちょっとここで一回切らせていただいて、最後、道永さんとかあるいは眞島さん含めてこういう開発研究なところとはちょっと離れた視点でもいいのですが、全体として今までの議論を聞いていて何を感じられるか、ちょっと言っていただければと思います。
○道永構成員 基礎研究がとても大事だということはすごくよくわかりますし、それを3年で切るというのは、やはりちょっと無理があるのかなと思いました。あと、せっかく基礎研究でこれだけいい結果が出ていて、それが臨床研究に結びつくことが余りなく、しかも創薬に結びつかないというのがやはり残念で、企業との連携というのはとても大事なのかなと、そういう枠を取っ払うことがこれからのがん対策だと思っております。
○堀田座長 創薬に限らずですね。がん対策全体としてどこを重点的に進めたらいいかという話が大切です。○道永構成員 全てが。だから、3省全部いろいろと研究されてお金を出しているということはよくわかりましたので、それを本当に国民、患者さんに対して、どのように伝えていくかということが一番のがん対策かなと思っております。
○堀田座長 そのほか、きょう御発言いただいていない方で全体の感想でも結構ですからどうぞ。
○小松構成員 米倉先生がお話になった画像バイオマーカーを探求するというのは非常に重要なことで、しかしこれは海外でのいろいろな探索も進んでおりまして、なるべく早い段階で、研究論文の前にやはり知的財産を獲得するということはとても大事で、知的財産さえあれば企業はそれをつくることは可能であるというふうに思いますので。そういう視点で少し。
○堀田座長 ありがとうございました。
 白岩先生。
○白岩構成員 ありがとうございます。
 一応、医療経済の視点から一言言わせていただきたいと思うのですが、この経産省のほうから出していただいた分析の妥当性についてはちょっと私のほう中をよく見ていないのでわからないのですけれども、もちろん経済的に社会的なメリットの大きいところに投資していくというのは一つの考え方ですし、一方でもちろんそれだけではないと、いろいろその公平性だとか資源配分のルールみたいなものもいろいろ考えていかないといけないというのもそれだけですので、もちろん経済性だけで決まるものではないというのは一応一言申し上げておきたいのと、ただ、そうはいってもやはり経済性というのは重要な要素ではありますので、その第3次対がんのところで、QOLとその患者さんにやさしい治療というそういうコンセプトがありましたけれども、患者さんにやさしいと同時に医療経済社会にもやさしいと、患者さんにやさしくて社会にもやさしいという、そういった治療なり技術なりというところを開発していくということは重要なのではないかなというふうに思います。
○堀田座長 ありがとうございます。
 田村先生、臨床家として患者さんを、実際臨床の現場でたくさん見ておられる立場から、全体のがん対策、がん研究という視点から見てどこをポイントとして進めるべきだというふうに思いますか。
○田村構成員 研究という方向性からすると、QOLとか先ほど患者さんにやさしいという言葉がありましたけれども、患者さんはよりQOLのいい状態で長生きをしたいというのが基本ですので、それに結びつくような研究をしていかないといけないということ。創薬も患者さんにやさしい、高齢者でも受けられるような薬をつくっていくというのが重要ではないかと思います。
○堀田座長 患者の代表としては眞島さんしかいないのだけれども、今までの流れを聞いていて、率直にどのような感想あるいはこういうところをもっと強めてほしいというような御意見ございますか。
○眞島構成員 やはり治りにくいがんを治るようにするということ、それから先ほど皆さんおっしゃっていましたけれども、やはりQOLを高めてがんに罹ってもずっと普通に生活ができるようにしてもらいたいということ、そのためにはやはり早期発見につながる診断ツールの開発が重要だろうということがあります。新しいゲノム解析の話も出てきましたけれども、がんの危険因子がわかるのであればぜひそれを予防につなげていただいて病気にならないようにしていただきたいと思います。日本の得意技というのは壊れない車をつくることですよね。人間、歳と共にがたがきてしまうのはしようがないのかもしれないですけれども、なるべくそれががたがこないような形に健康を維持できるような全体の仕組みを考えていただければありがたいかなと思います。
○堀田座長 ありがとうございます。
 全般にわたって何か御意見いただければ。
 門田先生、どうぞ。
○門田構成員 1つだけ、次回からまとめにかかるということなのであえて申し上げますと、きょう途中で座長おっしゃいましたけれども、ここに果実があるという果実の話もそっちのほうに行くということになってしまうとちょっと気になるので、今、過去いろいろなことをしてきて、きょうの発表の内容もいろいろ聞かせていただきました。だけど、そこの内容として出てこないところの、途中で出てきましたシステムというのですか、制度というのか、それが大きな弊害になっているというのは多分皆さん認識されておられると思うので、果実のところと同時に今のタイミングでは、これは絶対に避けて通れない。ということで、ぜひまとめのときには、やはりそこのところを強く強調したものを入れていただきたいというふうに思います。
○堀田座長 ありがとうございます。
○江崎生物化学産業課長 せっかくお時間いただいて誤解をされたまま終わってしまってはいけないのでちゃんと申し上げたいのですが、このインプリケーションは何かというと、グラフは後で見ていただくと、早期発見がいかに大事か。そうすると多分ここから厚労省さんのお仕事になると思いますけれども、例えば検診をすすめてもなかなか受けてくれないのですけれども、フェーズ1で見つかった人は、例えば治療費ただにしちゃうとかですね、そういうふうな形でやっていくことによって助かる人がふえていく。それを放っておいて4になるともう何ともしようがないのですよと。そのときに従来の治療をやっても苦しいのだったら、そこにこそおっしゃるようにほかの治療を考えるためにここの治療費の部分を何がしかに移して研究をしたほうがいいとか、だから従来型をずるずるやるということではないのだということが、ちゃんとメッセージが出るためにちょっと視点を提供したというのが我々の思いでありますので、ここを決して捨てろということではないということを御理解いただきたいと思います。
○堀田座長 わかりました。
 皆さんそのように理解し始めたところだと思います。
○野田構成員 今の門田先生の話には答えてやるのですか。
○堀田座長 それは次回、素案の形で出せれば、それを出した上でしすてむについても議論したいということです。
○野田構成員 吉田先生の中身すばらしかったので、中身を言うわけではないのだけれども、3次がんをこれだけやりましたという話の後だから、では、次何の果物をという話になるけれども、本当に期待するだけ果物はなったのかというのはやはり検討しないと、ならない畑にはリンゴがならなかったときに次に梨を植えたってならないわけだから、やはり畑のシステムのほう、門田先生言われたところをやはりもう一回ちょっとディスカッションをする機会があるといいと思うのですね。
 ただ、逆に最近ちまたで言われているように、それの何が悪いから畑を、今つくっている人間がいるところを全部取り壊して新しいものにすればいいんだという議論にはくみする必要は僕はないと思うのです。だって、植えた木は何年も経たないとやはり実はならないので、研究というのはそういう種類のものだということは絶対に意識しないといけない。
 それからあと1つだけ、ベンチャーに関しての文科省への今度は提案なのですけれども、1つスピンアウトがうまくいかない、経産省が考えているような意識をみんなが持てないところには、やはり研究の世界の国際化が完全に進んでいないというところも影響があるのだと思います。普通のアカデミアのレベルに国際化の本当に人材の交流があれば、スピンアウトも外国で行われるようなスピンアウトがもっともっと起こってくるのだろう。日本人特有の形のスピンアウトが多いということが、あるいは大学のTLOというその存在がやはりちょっと邪魔しているところがあるので、ぜひそこは経産省さんと文科省さんで話し合って連携をしていただければと思います。
○堀田座長 ありがとうございます。
 いろいろ御意見いただいて、やはりシステムの問題とかそういったところはきょう十分まだ議論できていません。皆さんの問題意識はかなり共通していると思うのですが、次回できればそこも含めて事務局で少し論点整理をしていただいて、それに基づいてその議論をもう一回いたしましょう。
 まだあと1回で終わるわけではありませんので、できるだけ詰めて議論したいと思います。
 事務局のほうで何かその辺に関して今後の予定等をお願いします。
○岡田がん対策推進官 ありがとうございます。
 システムのところは、もちろん我々も非常に重要だと思っておりますし、がん対策推進基本計画にも野田先生におまとめいただいた報告書の中にもシステムのところがいろいろな観点で記載いただいておりまして、今回その果実を、どういう果実を求めていくかを考えるに当たっては、やはりそのシステムのところをその研究事項ごとの論点というのがあるのかなというのもお聞きさせていただきながら感じましたので、ちょっとまた座長と相談させていただきながら、次回準備をさせていただきたいと思います。
 次回の日程でございますけれども、5月23日の午後2時からを予定しております。場所は厚生労働省を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上でございます。
○堀田座長 ありがとうございました。
 ちょっと不手際で、最後のほうで盛り上がってきたところで終了で申しわけありませんでした。また次回は最初からペースアップして議論していただければと思います。
 どうもありがとうございました。

 


(了)

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