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2013年7月10日 平成25年度第1回血液事業部会安全技術調査会

医薬食品局血液対策課

○日時

平成25年7月10日(水)14:00~16:00


○場所

厚生労働省 専用第23会議室(19階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○出席者

出席委員:(10名)五十音順、敬称略、○委員長

内田 恵理子 大戸 斉 岡田 義昭 杉浦 亙 新津 望
濱口 功 牧野 茂義 山口 照英 ○吉澤 浩司 脇田 隆字

欠席委員:(1名)敬称略

白阪 琢磨

参考人:

田所 憲治 (日本赤十字社) 日野 学 (日本赤十字社)
五十嵐 滋 (日本赤十字社) 佐竹 正博 (日本赤十字社)

○議題

1.日本赤十字社における平成24年度ヘモビジランスについて
2.シャーガス病に対する安全対策の進捗状況について
3.血小板製剤の病原体不活化技術導入に関する検討について
4.血漿分画製剤のウイルス安全対策について(非公開)
5.その他

○議事

○上田血液対策課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまから平成25年度第1回「血液事業部会安全技術調査会」を開催いたします。

 本日は、議題4を除き、公開で行うこととなっておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 なお、議題4につきましては、薬事分科会血液事業部会安全技術調査会規程の第8条に基づきまして、非公開とさせていただきます。

 まず、委員の交代をお知らせいたします。

 国立感染症研究所血液安全性研究部客員研究員であられました山口一成先生、並びに京都大学名誉教授であられました内山巌雄先生が委員を辞任されましたので、お知らせいたします。

 また、今回より、国立感染症研究所血液安全性研究部部長の濱口功先生が新たに就任されました。どうぞよろしくお願いいたします。

 濱口先生、一言よろしくお願いいたします。

○濱口委員 感染研の濱口です。

 山口元委員と同じ立場で今後も血液事業に尽力できればと思っております。

 どうぞよろしくお願いいたします。

○上田血液対策課長補佐 ありがとうございました。

 次に、本日の委員の出席状況をお知らせいたします。

 白阪琢磨委員から欠席との御連絡をいただいておりますが、11名中10名の委員に御出席をいただいております。

 また、本日の安全技術調査会においては、血小板不活化技術及び血漿分画製剤のウイルス安全性対策に関する審議があることから「平成20年3月24日薬事・食品衛生審議会薬事分科会申し合わせ、審議参加に関する遵守事項」に基づきまして、関連企業との利益相反の確認を行いました。その結果、審議及び議決への参加については、退室委員及び議決には参加しない委員はともになしであることをお知らせいたします。

 また本日は、日本赤十字社血液事業本部より、経営会議委員の田所参考人、副本部長の日野参考人、安全管理課長の五十嵐参考人、中央血液研究所副所長の佐竹参考人にお越しいただいておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、7月1日付で事務局の異動がございましたので、御紹介させていただきます。

 加藤にかわりまして、血液対策課長の浅沼でございます。

 丈達にかわりまして、血液対策企画官の野村でございます。

 最後に、課長補佐の笠松が異動となりまして、私、上田が血液対策課課長補佐として4月1日より着任しておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 カメラの頭撮りにつきましては、ここまででお願いいたします。

(報道関係者退室)

○上田血液対策課長補佐 それでは、この後の進行につきましては、吉澤委員長からよろしくお願い申し上げます。

○吉澤委員長 それでは、よろしくお願いいたします。

 まず、事務局のほうから資料の確認をお願いいたします。

○上田血液対策課長補佐 それでは、お手元の資料をごらんください。

 資料1、日本赤十字社における平成24年度ヘモビジランスについて「輸血後副作用・感染症報告 2012年まとめ」という資料がございます。

 資料2、シャーカス病に対する安全対策の進捗状況についてという2枚つづりの資料でございます。

 資料3、血小板製剤の病原体不活化技術導入に関する検討についての資料がございまして、こちらには資料3の1枚紙のほか、別紙1、別紙2がついてございまして、参考文献としまして、文献集がその後に続いております

 資料4、血漿分画製剤のウイルス安全性対策についての資料がございます。こちらにもクリップでとじてはございますが、後ろに別紙1、別紙2、別紙3、最後に参考という資料がついてございます。

 なお、資料4につきましては、委員限りの非公開資料とさせていただいております。

 資料の確認は以上です。不足等がございましたら、事務局まで御連絡いただけると幸いです。

○吉澤委員長 ありがとうございました。

 本日は、議題が5つとなっておりますが、議題4につきましては非公開ということで、議題1~3について始めさせていただきます。

 まず、議題1から入りたいと思います。

 事務局から、背景の説明をお願いいたします。

○上田血液対策課長補佐 それでは、議題1「日本赤十字社における平成24年度ヘモビジランスについて」でございますが、資料の内容に入る前に、今回、ヘモビジランスに関する報告を日赤にお願いしました経緯について、事務局から御説明したいと思います。

 皆さん御存じのとおり、日赤においては、これまでにも全国一元的な輸血関連副作用、感染症情報の収集を行ってまいっております。これらの血液安全性情報は、年1回の日赤ヘモビジランス会議において取りまとめられておりますが、運営委員会等で輸血関連感染症等のデータが提示され、専門家の皆様の御意見も交えた詳細な検討がなされてきているところです。

 そして、これらの検討結果は、血液安全性対策を講じる際の重要な情報として、これまでにも活用されてきております。

 こうした一連のヘモビジランス事業について、まとまった形で報告いただくのは、実は今回が初めてでございます。

 しかしながら、本日、この後に続きます最新技術の議論に関連し、いま一度、本邦における血液安全性の現状を整理しておくことは重要と考えるところから、今回、このような発表を日赤にお願いした次第です。

 それでは、資料1の内容につきまして、御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○日野参考人 日赤の日野でございます。よろしくお願いします。

 資料1を御用意ください。

 「輸血後副作用・感染症報告」に入る前に、2番目のスライドで、日本赤十字社の安全対策について、簡単に触れたいと思います。

 安全対策といいますと、検査主体に考えがちでございますけれども、日本赤十字社では、献血の受け入れから輸血後の情報という一連の流れの中でいろいろな対策を行っているところです。

 詳細につきましては割愛させていただきますけれども、それぞれ受け入れでは本人確認ということで、責任ある献血をしていただこうということから始まっているところです。

 最終的に、日赤で出荷された血液につきましては、医療機関側で副作用・感染症の報告が上がってくるわけですけれども、そういった報告につきましては、1993年から日赤では医薬情報活動をしておりまして、今に至っております。

 3番目のスライドをお願いします。

 先ほど、補佐からヘモビジランスに関しては簡単に御紹介があったところでございますけれども、ヘモビジランスといいますと、国によってその考え方、情報のとり方というのが少し違うところでありますが、血液の安全性につきましては、献血者から患者までの一連の流れの中で情報収集して評価をしていくということで、必要な対策を講じていく仕組みをヘモビジランスと言われています。

 日赤では、日赤ヘモビジランス会議という組織を構築しまして、その下に幾つか検討会がございますけれども、先ほどの医薬情報活動の中でいろいろな情報が得られるわけですが、感染症の報告とか副作用の報告とかをいただいて、検討会を開催し日赤の中で評価していきます。最終的に、日赤ヘモビジランス会議の中で、外部の先生方、例えば輸血・細胞治療学会とか肝臓学会の先生、国立感染症研究所の先生方にも意見を聞きながら、日赤の評価が適切であったかどうかということについても評価をしているところでございます。

 そのような評価の結果について、以降から、少し簡単に触れていきたいと思います。

 4番目のスライドをお願いします。

 こちらは、2000年以降、副作用・感染症報告の推移(件数)です。

 副作用・感染症報告につきましては、全国的な遡及調査を開始した2004年をピークに青色の棒グラフですが、感染症の疑い報告につきましては、少しずつ減少傾向にあります。これは輸血療法の実施に関する指針の中で輸血前後の検査の実施が、医療機関側で着実に行われていることにより、輸血前後での陽転というものを確認した上で、日赤のほうに報告してくださっている1つのあらわれだと思っております。

 また、数字では見にくいのですけれども、2000年以降、GVHDの確認症例といいますのは、日赤の血液においては、現在に至るまでございません。

 次は、非溶血性副作用に入ります。6番目のスライドになります。

2012年の非溶血性副作用報告症例の概要といたしましては、輸血を受けられる患者さんといいますのは、大体60歳以降の高齢者の方が非常に多いということもありまして、実際に副作用報告として上がってきますのは、中央値が66歳という年齢でございます。

 どのような副作用が報告されるかといいますと、左側のカラムにありますように、血漿タンパクが原因と思われるアレルギー反応のじんま疹とかアナフィラキシー等が主でございまして、白血球が主要因の発熱反応というものにつきましても10%程度、毎年見られる状況であるということがあります。

 近年、「輸血関連急性肺障害」「輸血関連循環過負荷」という副作用も挙がってきているところでございますけれども、こちらのほうにつきましては、後で少し詳細に触れたいと思います。

 7番目のスライドになります。

 こちらは、製剤供給数10,000本当たりの副作用報告の頻度をあらわしています。PCは血小板、FFPは新鮮凍結血漿、RCCは赤血球をあらわしておりますけれども、トータルの数字を見ていただきますと、PC、血小板につきましては10,000本当たり7.38ということで、他の血液製剤と比べまして、副作用の頻度が高くなっています。これは恐らく、血小板の輸血といいますのは、頻回に輸血されるということもありまして、血漿タンパクに対する抗体が産生された患者さんが出てきている可能性もあるということが、伺われるのかと思います。

 8番目のスライドをお願いします。

 こちらは、2004年~2012年までの非溶血性副作用報告の内訳をあらわしているものです。

 冒頭に御紹介しました安全対策のうち、2007年には200mL献血、400mL献血におきまして、白血球を除去した製剤というものを供給しております。その関係もありまして、発熱の反応につきましては、それまでよりも若干副作用の報告が減少していると思われます。

 9番目のスライドをお願いします。

 輸血関連の急性肺障害をTRALIといいますけれども、こちらは概念的には、輸血後6時間以内に急性の非心原性肺水腫を伴う呼吸困難を呈する重篤な非溶血性輸血副作用ということで、2004年に国際輸血学会の中で診断基準が定められました。その診断基準に基づいて日赤では、2004年以降、TRALIの評価を開始しました。

 これはTRALIの危険因子の中に、例えば誤嚥とか肺炎とかのようなリスクをもともと持っておられる患者さんにつきましては、possible TRALIという評価をしているところです。

10番目のスライドをお願いします。

TRALIpossible TRALIの評価結果をあらわしています。

2005年~2006年にかけて、評価の件数がふえていますけれども、こちらのほうは2005年9月に輸血療法の実施に関する指針の改定がなされまして、副作用の中にTRALIという記載が挙がってきたというのが一つと、日赤の添付文書におきましても、もともとTRALIの記載はありましたが、その症状について、より具体性を持った形で添付文書を改訂したということもあって、評価の件数が急激に上がり、今、右肩上がりになっているということがあります。

 白血球の除去等の関連を少しお話ししますと、もともとTRALIといいますのは、原因がはっきりわかっている副作用ではないのですけれども、白血球抗体が一部関与しているのではないかということもあって、白血球の少ない製剤というのは、一つの安全性を高める材料だと思うのですが、白血球抗体が患者さんに見られる割合というのは3分の1以下だということもあって、白血球除去製剤との関連性というのは、現在のところ、まだ不明であるということがあります。

 また、徐々に棒グラフのほうが減少してきていますのは、輸血医療に携わる先生方にTRALIという輸血副作用の周知が少しずつできておりまして、呼吸管理が適切にされてきている証拠だと考えております。

11番目のスライドを見てください。

TRALI症例に係る血液製剤の抗白血球抗体の内訳を示しております。

 白血球抗体を持っているドナーさんといいますのは、女性で30代の方が多いです。妊娠歴との関連もあるということで、こういった結果が出ています。日赤のほうでは、男性由来の新鮮凍結血漿をなるべく優先的に製造しようということで、一つのTRALIの対策もしているところです。

12番目のスライドをお願いします。

 こちらは、臨床症状的にはTRALIと非常に似ている輸血副作用でございますが、輸血関連循環過負荷、いわゆるTACOと言われているものですけれども、こちらのほうは心原性肺水腫の所見を認めることがあるところがTRALIと違うところでございます。

TRALIと同様に、国際輸血学会の中では、暫定的な診断基準として、そこにありますaからeについての項目のうち4つを満たせばTACOとすることになっておりますけれども、日赤のほうは13ページにありますように、現在のところ、5番目の血圧上昇と頻脈につきましては、その前後のデータがなかなかいただけないということもあって、参考値という程度の基準にしております。そういうこともありまして、赤線で囲んだところを満たすものについて、TACOと評価しているという現状です。

TACOにつきましては、昨年から新たに評価しておりますので、まだまだデータがそろっていないという状況ではありますけれども、14枚目のスライドにありますように、患者の内訳からいきますと、若干、女性のほうが多いということと、赤血球製剤が原因となっている割合が少し多いかもしれないということが少しずつわかってきました。

 次に、感染症関連の説明になります。

16番目のスライドをお願いします。

 病原体別の感染症報告の推移ということで、2004年からの数字をあらわしております。冒頭にも御説明しましたが、徐々に輸血前後の医療機関側での検査が行き届いてきているということもあって、報告数自体は減ってきております。

17番目のスライドをお願いします。

 日赤では、このような報告がなされたときに、献血と同時に1本、保管検体という検体を凍結保管しておきまして、それを取り出してきて、HBVとかHCVNAT(核酸増幅検査)をして、調査を行っています。

17番目のスライドをお願いします。

 昨年の病原体別因果関係の評価でいきますと、HBVが検体から検出されたものにつきましては、特定ということで6件、HEVに関しましては4件、細菌につきましては保管検体ではなくて、輸血に使用された血液バッグとか、いわゆる同時に採血された血漿というものがありますので、そちらを利用して、細菌感染疑いの評価をしていることになります。

18番目のスライドをお願いします。

 こちらは、保管検体からHBVHCVHIVのウイルスが検出された件数をあらわしています。水色がHBVのウイルスが検体から検出されたものですけれども、2004年に、それまでNATのスクリーニングは50プールでしたが、20プールに変更しております。また、2008年には、現在NATスクリーニングをやっております精度向上をさせた非常に高感度なNATを実施しているということもあって、HIVに関しましては、2004年以降、輸血で感染症例というのは確認されておりませんし、赤のHCVにつきましては、2010年に2つ見られますが、こちらの症例といいますのは、実は採血年は2006年の採血ということで、現在のスクリーニングNATでの感染例というのは、HCVにつきましても確認されていないことになります。しかしながら、この水色のバーが少し残っているという状況でした。

19番目のスライドをお願いします。

 こちらは、20p-NAT実施時期別の1年間当たりのHBV受血者感染症例ということで、原因血液の献血者感染状況がどうだったかということで、感染のごく初期であったのか、感染晩期での血液による輸血感染症なのかということをあらわしております。

 下の2階層、水色の部分につきましては、感染ごく初期のウインドウ期で個別NATが陽性のものと陰性のもの。上のピンク色の部分が感染既往で個別NATが陽性と陰性ということで、水色の部分は件数が減少していることが見てとれますけれども、ピンク色の部分に関しましては減少していないということがあって、感染既往の血液については、さらなる安全対策を導入する必要があるだろうということで、昨年の8月からHBのコア抗体の基準を厳格化しているという状況になります。

 コア抗体のスクリーニングにつきましては、1989年から実施しておりますけれども、それ以降、HBの劇症肝炎というものはなかったという状況がありました。さらに、今回のようにNATの精度向上をしたとしても、まだまだといいますか、まだ少しリスクが残ることがあって、コア抗体の基準の厳格化を図ったということになります。

 最後になりますけれども、細菌症例と解析結果です。

 細菌対策につきましては、一つは白血球を除去するということ。採血するときに万全を期して皮膚の消毒はしているところではございますが、皮膚の中には細菌がある確率で存在しているということがあって、採血の初めの初流血を除去して、それは製剤には使わないという、いわゆる初流血除去という操作を行っておりますが、そういった2種類の安全対策を実施しているところです。

 赤の部分が製剤から細菌が見つかった症例でございます。どのような菌が見つかったかということにつきましては、21ページの表に示しているところです。いずれも製剤は血小板製剤でございまして、医療機関側で見つかる細菌とは少し違うのかなということがあります。

 最後、日赤ヘモビジランスのまとめになります。

 1つ目は、輸血関連急性肺障害(TRALI)は、添付文書への記載以降(2006年)、減少傾向にあって、2011年以降では死亡例がないということ。

 2つ目は、輸血関連循環過負荷(TACO)については、今後添付文書への記載等も含めて、医療関係者に周知していく必要があるということ。

 3つ目は、輸血後のB型肝炎症例につきましては、昨年、コアの基準の厳格化を行いましたけれども、その評価につきましては、今後しばらく見ていく必要があるだろうということ。

 4つ目は、血小板輸血による細菌感染症例は、年に1例程度は発症しておりますが、過去には死亡症例はありましたが、先ほどの安全対策もあって、死亡例というのは現在なくなっております。また、保存前白血球除去導入後、エルシニアによる赤血球の汚染というのは無くなっており、赤血球製剤による細菌感染症例というのも現在はなくなってきているということがありました。

 簡単ではございますけれども、まとめをさせていただきました。

○吉澤委員長 どうもありがとうございました。

 では、ただいま報告をいただいたことにつきまして、委員の先生方から御意見、御質問がありましたらお願いいたします。

 杉浦委員、どうぞ。

○杉浦委員 スライドの4枚目ですけれども、感染症報告は確かに2004年以降減っているのですが、非溶血性副作用が2000年と比べると1.5倍ぐらいに上がっているのは、輸血の件数がふえているから、それに応じて上がっているのか、それとも比率で上がっているのですか。これは何か理由があるのですか。

○日野参考人 実は、日赤の医薬情報活動というのは、93年から実施しておりまして、徐々に上がってきているのです。その途中、初めの部分も削除しているというのがありますけれども、実際には、日赤の血液が危なくなっているとかという話ではなくて、副作用が出たときに医療機関側の先生方がきっちり日赤のほうに報告してくれているという理解をしております。

○杉浦委員 要するに、報告数がふえているということですか。

○日野参考人 そうです。

○杉浦委員 前は報告をしなかっただけだということですか。

○日野参考人 はい。

 ちなみに、これとは別に、私どもはこれを自発報告と言っていますけれども、直接PMDAのほうに報告するルートもありますので、そちらのほうでも報告されているものもあるということです。

○杉浦委員 わかりました。

○吉澤委員長 ほかにいかがですか。

 新津委員、どうぞ。

○新津委員 血液製剤を使わせていただいている立場から、血液疾患などでは、血小板輸血を頻回に行いますので、最初からステロイドホルモンを投与してから血小板輸血をすることが多く、ほとんどは血小板輸血前にステロイドホルモンを使用しております。ステロイドホルモンを投与した症例と投与していない症例でのじんま疹の出方の比較はありますのでしょうか。また、最近TRALIが少なくなったというのは、ステロイドを事前に投与するので少なくなっているのではないかと考えるのですが、なぜ少なくなっているかという考察はありますでしょうか。

○日野参考人 今、先生がおっしゃられたような投与前の予防薬の使用につきましては、今、手元にないですし、そういった見方を今まで余りしていなかったので、今後少し見ていきたいと思います。

 先ほど御説明したように、実は、TRALIに関しては、呼吸管理が一番のポイントだと思いますので、輸血をしたときにそういったTRALIという副作用も出てくるということも医療機関側の先生方でかなり認知されてきているのかと思います。そういう意味で、呼吸管理がかなり上手に、適切にやられているのではないかと思います。だから、少し死亡例がなくなってきているのかと思います。

○吉澤委員長 ありがとうございました。

 山口委員、どうぞ。

○山口委員 TRALIの話ですが、先ほど御説明が少しあったのですけれども、白血球除去フィルターが導入されたのは2007年からで、多分、2009年ぐらいまではTRALIの発症件数というのは余り差がなくて、割と最近非常に下がってきているという見方ができるかと思うのです。

 白血球除去フィルターを導入するに当たって、輸血科の先生方から、白血球除去とTRALIの発症が関連しているのではないかという御意見もかなりあったような気がするのです。

 先ほどの御説明にありますように、必ずしも白血球除去との関係は明確でない。どちらかというと、先ほど新津先生がおっしゃったみたいに、むしろ管理のほうがきちんとしてきたから下がってきている可能性も高いとすると、余り白血球除去フィルターとTRALIの関係というのは、むしろ明確でないというか、余り関係なかったような印象を私は持ったのです。

○吉澤委員長 どうぞ。

○田所参考人 TRALIにも抗体が関係しているのと、関係していないものがあるわけですけれども、抗体が関与している場合の主な機序としては、製剤側に白血球に対する抗体があって、患者さんの白血球を刺激して、そこでいろいろな反応が起きてくるというのが主な機序で、患者さんが例えばHLAや顆粒球に対する抗体を持っていて、そして輸血された白血球が活性化されてTRALIが起きるというものについては、実は余りはっきりとした実験的なものもなくて、臨床的にも確かにそれで起きたという例はそう多くはないということがあります。

 ですから、そういう意味では、製剤側の白血球を除去したことによって、劇的にTRALIが減るかというと、それは余り期待できないのではないかと考えています。

○山口委員 ありがとうございます。

○吉澤委員長 ドナーの抗体をチェックするのが大変なのでしょうね。

○田所参考人 ドナーの抗白血球抗体をチェックするというのは、一部の国でスクリーニングとしてやられています。日赤の内部でも、そのスクリーニング法について検討はしています。

 そういう白血球に対する抗体は、妊娠などを契機として女性が持っていることが多いわけですけれども、各国でやられている場合は、女性に妊娠歴を聞いて、妊娠歴のある方について抗体をはかるということをしているわけですが、一応、今、方法は検討しておりますが、日本では女性に対して妊娠歴を聞くという聞き方をしておりません。今後何らかの対策をとろうとすると、そういう問題も解決していかなければいけないと思っています。

○吉澤委員長 多少、難しい問題がありますね。

 レシピエント、受ける側の年齢、もしくは現病とTRALIの発生頻度というのは何か関係あるのですか。

○田所参考人 年齢あるいは性別という点で明らかなものはないと思いますけれども、一部はpossible TRALIということになるのですが、肺の感染症があるとか、あるいはほかのがんがあるとか、他の化学物質を吸ったとか、そういうことで患者さん側の白血球が事前に何らか刺激されているという状況があると、抗体が入ったときにtwo-hitといいますか、事前に刺激されているところにさらに抗体が来るので、さらに活性化しやすいということがあって、今、言ったような病態が起きやすいということが考えられています。

 ただ、そのような分類の仕方では、そういう危険因子のある方はpossibleに入れたりしますので、TRALIの中でどこに位置づけるかというのは、私たちのところでも、まだはっきりしたデータはありません。

○吉澤委員長 わかりました。

 ほかにいかがでしょうか。

 岡田委員、どうぞ。

○岡田委員 輸血による細菌感染の疑い症例で、5種類の菌が挙げられているのですけれども、諸外国の報告ですと、クレブシエラが大体4割を占めるという報告が出ています。これを見ると、全然クレブシエラが日本ではないので、これは今の日赤が行っている方法がクレブシエラを除くのに非常に適していたのか、それとももともと日本人には余りクレブシエラが採血部位とかに存在しているのが少ないために、そういう差が出たのか。どうなのでしょうか。

○田所参考人 事前に検査したときのものがありますね。あったことはあった。

○佐竹参考人 それは、ここに出ている例そのものが5例ですので、多いか少ないかと論ずるには、まだ数が足りないかと思います。

 別に我々の方法がクレブシエラを除きやすいという状況があるということは、特に何も考えられることはありません。ただ、我々のこれまでのいろいろなサーチでは、クレブシエラも出ておりますので、別に我々のところで少ないということはないかと思います。母数の違いかと思います。

○吉澤委員長 濱口委員、どうぞ。

○濱口委員 ヘモビジランスの活動というのは非常に重要な活動だと思っておりますし、日本赤十字社がこれまで地道にやってこられたことに関しまして、非常に敬意を表したいと思います。

 その上でお聞きしたいことがあるのですが、先ほど1993年から徐々に報告数がふえてきたということで、2004年のときに2,000例近くの報告があった後、若干、その後、プラトー状態に到達している。これはこれに対しての考え方としては、全国の情報が全部大体ここで集まっているというか、全ての医療機関、輸血を行っている医療機関からの情報が大体満遍なく日赤のほうに情報として上がってくるような状況に2004年の段階で到達していると考えてよろしいのでしょうか。

○日野参考人 そういう意味では、血液法ができたときとか、改正薬事法のときにいろいろな出来事がありまして、日本赤十字社のほうから、副作用、特に感染症報告につきましては遡及調査もかなりやってきているという状況がある中で、医療機関側はかなり報告体制があるということについては御理解していただいているのかとは思っています。

 ただ1点、私どもが情報収集しているというか、報告が上がってくるものは100%ではないと思いますし、特に軽微なものについては、医療機関側である程度精査されているのかと思います。そういう意味では、中等度以上のものがメーンに上がってきていて、非常に軽微なものについては日赤の今の活動の中では、情報収集できていないというところはあるかと思います。

○吉澤委員長 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

 山口委員、どうぞ。

○山口委員 先ほどのとおり非常に貴重な報告だと思うのですけれども、今回、初めてこういう報告の場を持っていただいたのですが、今後、定期的に年に一度ぐらいの報告をしていただけると考えてよろしいのでしょうか。

○吉澤委員長 それもよろしくお願いいたします。

 実際、日本で1年間に輸血を受ける人の数というのはどれぐらいとされているのでしょうか。

○日野参考人 日赤が情報収集して、供給したものについてはわかるのですけれども、その供給された血液が何人の患者さんに輸血されているかというのは、実はきっちり把握できていないと思います。

 ただし、私どもが輸血情報の中で表記しているデータというのが1つありまして、それは毎年、東京都庁のほうで都内の医療機関側に対して輸血に関しての調査をしています。それをベースに、大体東京都で供給される本数といいますのは、全国の10%程度とありますので、かける10をして、大体100万人から120万人。

○吉澤委員長 概数ですね。

○日野参考人 多分、牧野先生が御存じかと。

○牧野委員 日本輸血・細胞治療学会で毎年、輸血アンケート調査というものを全国の輸血を実施しています全施設にアンケート調査をしまして、回収し、同種血輸血を使用しています患者さんの数をお聞きしているのですが、そのデータから概算しますと、やはり先ほど言われましたように、100万人前後というのが輸血の実施患者数ということでいいと思います。

○吉澤委員長 ありがとうございました。

 それだけの人が輸血を受けていて、副作用の発生数というのはここに挙げてあるぐらいですから、これはもちろんないにこしたことはないのですが、非常に安全性は確保されていると考えてよろしいわけですね。

 杉浦委員、どうぞ。

○杉浦委員 本当に貴重な報告をありがとうございます。

 質的なところでもう一度質問をさせていただきたいのですけれども、今、上がってきた報告ということで、実際、4ページ目に出ている副作用の件数というのは、あくまでも病院側が輸血と関連していると判断したものであって、実際、その後、日赤のほうで詳しい調査をして、その因果関係を調べたものではないわけですね。

○日野参考人 はい。

○杉浦委員 わかりました。

○日野参考人 その結果といいますのが、例えば肝炎関連であれば、18枚目のスライドということです。それが保管検体のほうからウイルスが検出された症例ということです。

○杉浦委員 それに関して特定できているということですね。

 あとは、先ほど中等度以上のものだろうとおっしゃったのですけれども、その辺のシビアなものから、副作用に関しては、軽微なものからさまざまなものがあるかと思うのですが、そういうクラス分けをして情報は収集されているのですか。

○日野参考人 それはきょうお持ちしておりませんけれども、報告様式の中に重篤か、非重篤かという分類がありますので、それである程度わかるかと思います。

 ただし、昔は中等度という欄もあったのですけれども、今はないので、重篤か非重篤かです。

○杉浦委員 実際、年間どのぐらい重篤なものがあるのかということに少し興味があったものですから、ありがとうございます。

○吉澤委員長 どうぞ。

○日野参考人 済みません、先ほどの私の説明の中で、コア抗体のスクリーニングですけれども、1989年から開始しておりますが、その中で劇症がなかったという話をしましたが、実は1件あったという報告で、少し訂正させていただければと思います。

○吉澤委員長 たしか劇症肝炎は80年代までですね。90年代に入ってからは、もうなくなったのではないですか。

○田所参考人 コア抗体陽性の献血血液による症例というのはないですけれども、ウインドウ期と思われる血液によって1例確認されていると思います。

○吉澤委員長 1例ということですね。

○田所参考人 一応、劇症肝炎は、pre-core部分に変異があるようなコア抗体陽性の血液が多いということで、その大多数はもう排除できておりますけれども、ウインドウでは1例あったということです。

○吉澤委員長 わかりました。

 ヘモビジランスについては、今回初めて報告をいただいたわけですが、今後もこれを円滑に進めていただいて、定期的に御報告をいただけたらと思います。

 それでは、議題2に移らせていただきます。

 議題2のシャーガスにつきまして、説明をお願いいたします。

○五十嵐参考人 それでは「シャーガス病に対する安全対策の進捗状況について」ということで、資料2をお願いいたします。

 安全対策といたしましては、平成241015日採血分より、2枚目にございます「中南米滞在歴等確認票」というものを全献血者にお示しをいたしまして、この中に書いてある1、2、3に該当する献血者からいただいた血液につきましては、原料血漿として使用させていただいているということを実施しております。

 実施状況ですけれども、平成25年6月4日現在、全採血者数が331万人余りですが、下の表にございますように、「1.中南米諸国で生まれた、又は育った」という方につきましては1,328人が対象となっております。献血者に対する比は0.04%です。この1の中には、1と2の両方に該当する人も1に含んでございます。

 「2.母親が中南米諸国で生まれた、又は育った」という分類の対象者が188人、0.006%です。

 「3.(1.に該当しない方)で中南米諸国に通算4週間以上滞在した」という方が3,909人、率にして0.12%。

 合計しますと5,425人、0.16%の方がこの安全対策の対象となっております。

 裏面をお願いいたします。

 引き続きまして、疫学調査を平成25年1月8日から実施しております。

 まず、愛知、岐阜、三重、静岡の4県で平成25年1月8日から開始。それに引き続きまして、平成25年4月23日からは全国で実施をしております。

 検査法は、日本では未承認ですけれども、FDA等で承認されているOrtho社のELISA法を用いて検査を実施しております。

 対象者は、先ほどの安全対策のときに同意が得られた献血者についてELISAの試験を行うという格好で実施をしております。その中で「中南米諸国で生まれた、又は育った」という対象者が、安全対策の対象者としては588人いらっしゃいましたけれども、疫学調査の対象者、同意を得られた方は448人で、応諾率は76.2%でございました。

 同様に「母親が、中南米諸国で生まれた、又は育った」という対象者が25人、献血者数にしますと71人、応諾率が35.2%。

 「(1.に該当しない方)で中南米諸国に通算4週間以上滞在した」方で、安全対策の対象が1,111人、そのうちの779人に試験を実施して、応諾率が70.1%です。

 合計しますと1,770人中1,252人に対してELISAを実施しました。

 検査状況につきましては、今までのところ全て陰性ということで、陽性の方は1人も出ていないという状況でございます。

 今後の予定でございますが、1.検査試薬の評価です。先ほど申しましたように、現在使用している試薬は、日本で承認されているものではございませんので、日本赤十字社としてこの試薬の評価をしたいと考えております。

 疫学調査につきましては、およそ5,000人分のELISA試験を実施した段階でデータを取りまとめて、今後の対応について検討させていただきたいと考えております。

 以上です。

○吉澤委員長 どうもありがとうございました。

 この件に関しまして、御質問、御意見をお願いいたします。

 岡田委員、どうぞ。

○岡田委員 該当した5,425人の中で、実際に検査を受けられた方は1,252人で、全て陰性だと。この陰性がわかった方は、次の献血に来られたときは、将来的ではなくて、今のところは原料血漿として使えるのですか。

○五十嵐参考人 そのとおりです。

○岡田委員 わかりました。

 将来的に、ある程度データがまとまってきて、試薬の評価とかが定まれば、またリエントリーというか、輸血用のものにも使うという考えはどうなのでしょうか。

○五十嵐参考人 私どもとしては、そうしていただきたいと考えております。

○岡田委員 わかりました。

○吉澤委員長 今、分画製剤の話が出ましたけれども、この病原体は分画製剤にしていく段階で不活化されてしまうものではないのですか。そうですね。

○田所参考人 はい。

○吉澤委員長 だから、そこは余り神経質にならなくてもよろしいわけですね。もちろん、そのまま野放しというわけにもいきませんけれども、そういうことでいいのですね。

○田所参考人 これまで実際に輸血による感染が起きたという症例は、血小板か、非常に新鮮な全血かによっています。ですから、新鮮凍結血漿についての報告はないわけですけれども、一応、まだ不明の領域は当面使わないということにしておいて、分画製剤では他の不活化法も入れているということで分画製剤原料にだけ、より安全性の高いものだけ当面は使おうという方針でやっております。

○吉澤委員長 慎重に対処ということですね。

 もう一つ伺ってもいいですか。血小板と全血の輸血で、中南米では輸血に伴う感染というのは結構多いものなのですか。その報告は余り把握されていないですか。

○田所参考人 中南米ではあります。

 ただ、最近の報告では、南米のものと中米では、抗体が陽性でも感染性というのが大きく違うという報告もあります。南米のほうが感染性は高いようです。

○吉澤委員長 そうですか。

 ほかにいかがですか。

 日本では今のところ出ていませんが、慎重に対処して、準備状態を整えておかなければいけないということですね。よろしいでしょうか。

 では、議題2につきましては終わりにさせていただきまして、その次に参りたいと思います。

 次は、議題3の「血小板製剤の病原体不活化技術導入に関する検討について」でございます。事務局から説明をお願いいたします。

○上田血液対策課長補佐 それでは、資料3をごらんください。まず、議題3の進め方を少し御説明いたします。

 「1.ミラソル選択の経緯」とございますが、背景を含めまして、こちらの部分を事務局から少し説明さし上げようと思います。

 その後、裏面にあります「2.ミラソルの低減化能の評価について」を別紙とあわせまして日赤から説明を加えていただきたいと思います。

 これらを踏まえまして、最後に「3.結論」のところですが、現時点におけるまとめということで、事務局のほうからお伝えするという形をとろうかと考えております。

 まず、ミラソル選択の経緯についてお話ししようかと思います。先ほど申しました資料3の「1.ミラソル選択の経緯」に相当する部分です。

 感染性因子低減化技術ミラソルは、御存じのように平成20年7月23日に開催されました薬事・食品衛生審議会血液事業部会運営委員会・安全技術調査会合同委員会において、導入に向けた議論が報告されました。

 背景を少し補足説明いたします。

 本日最初の議題1でもありましたように、日赤では、これまで血液の安全性に対する対策としまして、製剤自体の品質に大きな影響のないような方法、すなわち献血者のスクリーニングですとか、渡航者の献血制限、凍結血漿の6カ月貯留保管あるいは初流血の除去、先ほど説明のありました白血球除去フィルター、そういったものの導入によって対策をとってきたと理解しております。

 また、これらの対策によって、血液製剤の安全性というものが非常に向上している最中にあるということは、先ほど確認したとおりでございます。

 一方、感染性因子不活化技術といいますのは、血液に不活化剤である薬剤を加えまして、多くは紫外線照射を組み合わせることによって、血液製剤の中に潜む可能性のある病原体を不活化する技術でございます。これによって血液製剤の安全性に上乗せの効果が期待できますけれども、その一方で、従来の安全性対策とは異なりまして、血液製剤の品質に影響を与える技術であるということから、血小板機能の低下なども懸念されるので、これまで運営委員会及び安全技術調査会などにおいて、その導入方法ですとか、使用方法などについて幾つか御議論をいただいているところでございます。

 代表的な技術には、ミラソルに代表されるリボフラビン法のほか、インターセプト等に代表されますアモトサレン法等があるわけですが、それぞれの利点、欠点等の検討を行い、加えまして、海外の状況視察などを踏まえまして、平成20年の合同委員会において、リボフラビンを用いる感染性因子低減化技術ミラソルのほうを選択するということがこの時点で了承されております。

 その理由として、ここに「選定の理由」がございます。1番~3番までが、先ほど申しました平成20年の合同委員会で日赤のほうから説明されております。

 簡単に要約いたしますと、1番目は、不活化技術導入の目的です。これは輸血感染が重篤になりやすい細菌感染症に対する感染であるということ。そして、その対象製剤が血小板製剤であるという点であると思います。

 議論1のところで、ヘモビジランスの結果として報告がありましたが、現状においても輸血後の細菌感染というのは散見されますし、因果関係の判定は非常に困難であるものの、いまだ解決されない問題の一つとして認識されておるところであると思います。特に常温保存されております血小板ついてはリスクが高いということも知られております。ゆえに、ミラソル導入の選択というのは、この血小板製剤の細菌感染予防の観点からなされているという経緯がございます。

 また、ほかの感染症に対しては、ここにありますように、今までにはスクリーニングNATを実施しておりますB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス及びHIV等にも一層の予防効果が期待されること、また、新興感染症、再興感染症などについても、ある程度の低減化の効果が期待されるものと位置づけられました。

 2番目からは、大まかに他の技術との比較になります。

 2点目にありますのは、添加する薬剤の安全性が高いことが挙げられます。リボフラビン法であるミラソルにおいては、添加する薬剤はビタミンB2でございます。ほかの技術で使用する薬剤に比較して、生体に対する安全性が高いと考えております。

 3点目、ミラソルは日赤の血小板製剤の採取・製造工程等をほとんど変更することなく血液事業に導入できるということが利点であります。そのため、ミラソルは血小板の安定供給に対する影響も最小限であると考えます。他方であるインターセプトなどを選択した場合、血漿置換を必要とすること、あるいは対応する単位の相違がある点など、現状の血液事業には即導入できないといった部分がございます。

 こうした状況から、ほかの技術を選択した場合には、これらの問題の解決に時間を要することが予測されます。これは危機管理的側面からも懸念がやや残るのではないかと考えられておりました。

 このような報告を受けまして、平成2412月の血液事業部会においては、リボフラビン法を重点的に評価していこうということが議論され、了承されております。同時に、ミラソルの技術に残された課題を再評価するべきであるという記録も残されております。

 そこで、この残された課題といいますのが、やや前後してしまいますが、資料3の「1.ミラソル選択の経緯」の上の部分にある文章でございます。

 昨年度の12月に開催された平成24年度第3回運営委員会において、日赤が自社で実施した感染性因子低減化能のデータが、ミラソル開発メーカーが公表したデータとの間に非常に差異がある。言いかえますと、公表されている文献よりもウイルス低減化能が劣る可能性が示唆されました。

 この結果については、後ほど詳しく説明いただきますが、別紙1にございますので、あわせてごらんください。

 簡単に申し上げますと、1番の「IBS」の欄がインターセプトでございます。「MIR」の欄がミラソルでございます。これらは企業が公表しているデータで、文献にその記載がございます。一番右「日本赤十字社」とございますのが、日赤が自社で実施したミラソルによる感染性因子低減化能の結果でございます。

 下のほうにございますDengueウイルスですとか、Chikungunya、こういったあたりでは、日赤によるミラソルのデータでは低減化能の低さといったものが指摘されます。

 また、BVDV、いわゆるC型肝炎ウイルス、モデルウイルス、あるいはWest Nile Virusのあたりの数字も見ていただきますと、これも公表文献データと日本赤十字社のデータの間に大きく差異があることが示されております。

 次のページからの細菌の結果においては、日本赤十字社のデータにおいても公表文献との大きな差異というのは認められず、ある程度の低減化能が認められているものの、1ページ目の先ほど申しましたウイルスの結果からは、ウイルス低減化能に疑問が残るのではないかという指摘がなされました。

 この議論を受けまして、日赤が自社データを踏まえた各感染性因子のリスク評価と低減化技術の効果についての評価を行っております。この部分は、資料3の裏面の「2.ミラソルの低減化能の評価について」と、別紙2「感染性因子のリスク評価と低減化技術の効果」になります。

 この内容について、日赤のほうから説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○五十嵐参考人 まず、別紙2をごらんください。

 「感染性因子のリスク評価と低減化技術の効果」ということで、感染性因子は数多くありますけれども、既知の感染性因子のうち、下に挙げる1~3のものを評価しています。

 1)現在スクリーニング検査をしているが、なお輸血感染のリスクが残っていると考えられるもの

 2)日本ではスクリーニングをしていないが、輸血による感染が証明されているもの

 3)輸血による感染がおこることが考えられるもの

 特に2、3の中には、多くの感染因子が含まれますが、その中で特に社会的影響が大きくなる可能性があり、また、輸血医療界で討議・検討がなされているものを中心に評価をいたしました。

 それらのリスクとミラソル(リボフラビン法)による低減化効果を評価した上で、下記の評価基準により総合的に判定をいたしました。

 総合判定といたしましては、

 A:現状の安全対策及び導入を予定している検査法で、ほとんどの感染を防止することができる。

 B:Mirasolの導入により、感染防止効果が期待できる。

 C:Mirasolでは感染防止効果が期待できない。NATの改良もしくは他の低減化法などの安全対策の導入を考慮する必要がある。

 こういうカテゴリーで判定をしております。

 2ページをお願いします。

 まず、細菌です。

 細菌汚染の頻度といたしましては、臨床的に意味のある細菌に汚染される頻度は、血小板5,400本に1本程度という結果が出ています。これは欧米の頻度とほぼ同等または半分のレベルということになります。

 敗血症のリスクとしては、細菌数は少なくとも105CFU/mL以上に増殖したごく一部の製剤が臨床的に問題となるということが報告をされています。

 さらに細菌の種類にもよりますけれども、一般に107CFU/mL以上になると症状は重篤となります。

 臨床の現場で同定された汚染PCの頻度は、この6年間に敗血症の原因となった、先ほどヘモビジランスのところで表が出ましたが、汚染PCは7製剤でございました。

 原因製剤の保存期間は、採血日をday0とした場合、day2の製剤が2例、day3(有効期間最終日)の製剤が5例でございました。

2007年以降、輸血感染による死亡例の報告はございません。それは初流血除去、白血球除去をしていることに加え、出庫時に外観、スワーリングの有無を確認し、諸外国よりも有効期間を1~2日短く規定していることによるものと考えております。

 スパイク実験による評価ですけれども、S.aureusを合計16本のPCにスパイクしまして、そのうちの8本を低減化したということです。

 低減化していない対照群では、8本中7本が106CFU/mL以上で、1本が104CFU/mL。低減化群では、8本中4本が陰性で、他の4本は105CFU/mL未満という結果でございました。

 開発企業データとしましては、1320株の細菌を20100CFU/バッグの濃度でPCに培養した結果、91%の細菌感染症に有効であるという結論が得られております。

Mirasolの導入により、細菌については完全な不活化ができるわけではありませんけれども、現在の有効期間内には臨床的に問題となる菌量に達しないことが予想されますので、感染防止効果は十分に期待できると考えておりまして、総合判定はBということにさせていただきました。

 3ページをお願いします。

 次はウイルスで、HBVです。

HBc抗体判定基準を昨年8月から見直ししております。その結果、既往のオカルトHBV感染による感染はほぼなくなると考えております。

 近い将来、現行の20プールNATから新たな個別NATへ移行する予定でありまして、ここでも感度の増加が期待されております。

HBVのウインドウ期の長さは、PCの供給数などから、ID-NAT陰性のウインドウ期に存在し得るPCの数は1年間に11.5バッグと推定されます。ID-NATをすり抜けるHBV陽性1バッグに存在するHBVは、最大で約4,000コピーと推定されます。

 日赤が把握しているHBV感染確定例のうち、ID-NAT陰性の血小板を原因とするものは1年当たり0.9症例でございます。

 対策及び低減化技術の効果です。

 リスクを有するドナーに対する効果ということで、4,000コピーのバッグのPCMirasolを適用しますと、LRV2.3 Logでございますので、約20コピーは残ります。

 一方、PCに含まれるウイルス数がこのウインドウ期25日間亜急性毒性試験にviral loadの低いものから高いものまで均等に分布すると仮定しますと、約60%のものは完全に不活化される。

 残りの約40%については、一部不活化されないものが残ります。ただし、これらの少数のウイルスが残存したPCの感染性があるかどうかというのは不明ということになります。

ID導入後のリスクは、0.9症例/年となりますが、Mirasolによりその半数以上の防止が期待できるということで、これも判定としてはBにしています。

 次に、HCVです。

ID-NATが施行された状態で残るリスクは、pre-ramp up phase(感染後末梢血中のウイルス量が急激に増加するまでの期間)にある血液と、そこからID-NAT陽性までの期間にある血液ですが、前者につきましては感染性がほとんどないということが動物実験で示されております。

 また、後者の期間は極めて短く、その間にあり得る献血は1年当たり0.2例未満と推定されます。PCだけを考えれば0.3例未満/年となります。

 先ほどもありましたように、現行20プールNAT導入以降、4年間、輸血が原因と特定された感染例はございません。

 理論的には、ID-NAT下では30年に1例程度のHCV汚染PCが出ると推定されます。

 また、MirasolによるBVDVの低減化能は1.9ですけれども、ID-NATでも検出不可のごく微量のウイルスに対しては低減化効果が期待される。

HCVにつきましては、現行の20プールNAT導入以降、4年間輸血感染例はないということから、総合判定はAとしております。

 4ページをお願いします。

HIVです。

 感染から20プールNAT陽性までのウインドウ期は約11日で、この期間内に献血がされる例が1年当たり2例ぐらい存在すると推定されます。

ID-NATを導入しますと、ウインドウ期は多少減少しますけれども、リスクのある献血の数は大きく変わりません。このうちPCの陽性例は供給数から計算すると0.3例ほどになります。しかし、ID-NAT陰性の血液を原因とする感染は世界的にも報告されていないということです。

 また、ヘモビジランスの結果ですけれども、20プールNAT導入以降、輸血によるHIV感染例は報告がありません。

ID-NAT下で、3.3年に1例の汚染PCが出ると理論的には推定されます。ただし、感染例は今のところ報告されていないという状況です。

ID-NATでも検出不可のHIVPC中のviral loadは最大4,000コピーですけれども、これはMirasolで十分に不活化されるという状況があります。

HIVにつきましても、HCV同様に輸血による感染例がないということが、Aとさせていただきました。

 次に、ヒトパルボウイルスB19です。

B19につきましては、世界中どこの地域においても、成人の半数以上は感染の既往がございます。一方、急性感染の献血者の場合はほとんどが無症状ということになります。

 輸血感染を起こすと、リスクを有する患者(赤血球造血の盛んな患者、免疫抑制患者など)で一時的な骨髄無形成クリーゼを起こすことがございますけれども、回復する例が多い。上記の状態にない患者での輸血初感染では、軽度の貧血などが見られることがあります。

 著明なウイルス血症は通常2~3週間で終息しますけれども、低レベルのウイルス血症が長期間継続する場合がございます。特徴的なのは、ウイルス血症の極期で1012 という高いコピー数に達することがあるということです。

 日赤では、抗原スクリーニングを行っておりまして、感度は106 7 コピーで、それ以上の血液は排除されています。

 輸血感染を起こした血液製剤で、ウイルスレベルが判明しているもののうち最低のものは103 コピーであったことを論文にしております。

MirasolによるLRVは5Log以上とされています。107 コピーのPCを低減化しますと、102 コピーとなって、今のところ知られている最低感染濃度以下になります。

MirasolによるヒトパルボB19に対する安全性は高まると推定されることから、総合判定はBとしています。

 5ページをお願いします。

CMVです。

CMV感染が懸念される患者への抗体陰性血の輸血により、感染はほとんど予防されると推定されています。一方、日赤では全ての製剤に保存前白血球除去を導入しておりまして、その感染防止効果は抗体陰性血輸血と同程度とされております。

 ウインドウ期の血液が感染を起こす可能性が論じられていますけれども、日本でそのような報告はありません。

Mirasolの白血球とアソシエートしたCMVの低減化データはありませんけれども、cell freeCMVの低減化能は2.1 Logとされております。

 白血球除去を全製剤に導入しているということで、総合判定はAとしております。

HEVです。

HEVにつきましては、北海道で約8,500人に1人の割合でウイルス血症ドナーが見つかっております。ほとんどがgenotype3になります。

 輸血感染を起こした血液製剤でウイルスレベルが判明しているもののうち、最低のものは103 コピー/mLレベルでございました。

 本邦で輸血感染による死亡例は報告されていません。

Mirasolの低減化能はgenotype3については、まだ実験途中の段階ですけれども、3Log以上は低減化されるというデータがあります。

 過去4年間、HEV-NAT陽性献血のうち、96.4%を占める105 コピー/mL未満の製剤については、Mirasolをすることで感染例をほぼなくすことができるだろうということで、判定をBにしました。

 6ページをお願いします。

WNVです。

WNVにつきましては、High viremiaを呈するのは鳥類でありまして、日本でアウトブレイクが起こるには、感染した鳥が日本に来て、それを吸血した蚊が生き延びるということが条件になろうかと思います。蚊-ヒト-蚊の感染環は存在しないと考えられます。

 感染して発症するのは1520%、脳炎など重症に至るのはそのうちの1%未満とされています。

 米国でNAT導入前、28例の輸血感染例が報告されています。米国赤十字社では、NATにより少なくとも1,200人のウイルス血症の献血者が同定されています。最初はプールNATで開始されましたけれども、現在、感染の高浸淫地域・時期の時点ではID-NATが施行されています。

 ヒトでのviremiaのレベルは低く、時にID-NATを必要とする。

WNVは、先ほどの別紙1にありましたけれども、ヒト由来株とトリ由来株で低減化効果に違いがございました。

 ヒト由来株は3Logあるいは5Log以上の低減化が可能ですけれども、トリ由来株については1.31.5 Logという結果でございます。

WNVに対する対策としては、渡り鳥を除く感染媒体(人、蚊、野鳥)ごとに居住地域等による献血制限とNATの準備をしているところです。

 海外において現行ID-NAT体制下で輸血感染例は2010年に1例のみ報告されています。WNVにつきましては、既にNATを導入する準備ができているということで、判定はAといたしました。

 7ページをお願いします。

Dengueです。

Dengueにつきましては、日本のヒトスジシマカで媒介されますので、日本においてもアウトブレイクの可能性がございます。

 ヒトで高いviremiaを呈しますので、蚊-ヒト-蚊の感染サイクルができます。

 ただ、輸血症例は3事例5症例のみということになっています。

 輸血感染が少ないと考えられる理由としては、以下にある4つが考えられますけれども、浸淫地域ではDengue以上に大きな問題がありまして、よく調査されていないという実態でございます。

 ウイルス血症は105 109 コピー/mLとされておりまして、NAT試薬を商業ベースで開発中ということです。

Mirasolによる低減化は、日赤のデータでは0.4と低い。オーストラリア赤十字の結果も1.22.0 Logということでした。

Dengueにつきましては、低減化には非常に抵抗性が高く、また力価の高いウイルス血症であるため、低減化/不活化の対象となりにくいと考えております。むしろ当該地域居住者の献血制限や、NATによるスクリーニングが適していると考えられることから、Cと判定をいたしました。

Chikungunyaです。

 家畜、鳥類、爬虫類に感染するとの情報がございます。ウイルスの突然変異により、日本にもいるヒトスジシマカにも感染するようになったと言われています。

 ただし、201211月の時点において輸血感染例の報告はございません。

Mirasolの低減化能ですけれども、日赤データで1.7 LRVの低減化が可能ということです。感染doseは不明ですけれども、Mirasolによる低減化だけでは安全性は保証できないと考えております。

 蚊が媒介するため、感染地域が一気に拡大する可能性は低いことから、当該地域居住者の献血制限等が有効と考えております。

 最後、8ページをお願いします。

Babesiosisです。

 赤血球に寄生する原虫で、ネズミなどが自然のリザーバーで、ベクターはダニです。

 米国の調査では160例以上の輸血感染が確認されておりまして、最近5年間に赤血球製剤輸血によるバベジア感染死亡例が10例報告されています。

 血小板製剤では、赤血球の混入の数が少ないことから、感染を起こし得るとは考えていますけれども、死亡例の報告はないということです。

 米国では、地域による発生率に大きな差がありまして、その地域に限定した献血制限や検査などの対応が合理的だとされています。日本にも固有と思われるバベシア原虫が日本全国には存在しています。日本で発症が確認されたバベシア症例は、輸血を原因とする1例がございます。原因となった献血者血液中のDNAコピー数は5×103 コピー/mLということでございます。

 無症候の献血者血液中のDNAコピー数を102 コピー/20μLと仮定しますと、全血中には2×106 の原虫が存在することになります。この原虫はほとんど赤血球中に存在するということで、血小板中にはごくわずかな赤血球しか混入しないため、原虫の量は極めて少ないということで、Mirasolによる低減化は4Logとのデータが得られており、血小板製剤については感染防止効果が期待できると考えられることから、Bと判定いたしました。

 それでは、資料3に戻っていただきまして、検討結果の概要です。

 血小板製剤の細菌汚染に対しては、従前からの初流血除去及び白血球除去等の対策に加え、現在の有効期間を維持しながらミラソルを導入することで、より一層の感染防止効果が期待できると考えています。

 一方、地球温暖化による国内感染も懸念されるデングウイルスに対しては、ミラソルの低減化効果がほとんどないと考えられますが、そのような状況では、デングウイルスに対しては、赤血球製剤、血漿製剤についても対応をする必要がございます。したがって、国内のサーベイランス状況を注視しつつ、献血制限やNATによる地域限定的なスクリーニングの実施等の安全対策が必要と考えています。チクングニヤウイルス等の場合も同様と考えております。

 以上です。

○上田血液対策課長補佐 事務局のほうから補足をいたします。

 御議論をいただきたいために、結論のほうは簡潔に申します。

 「3.結論」の部分を見ていただきたいと思います。

 繰り返しになりますが、現時点での日赤の情報、事務局の考え方としましては、まず1番目、血小板製剤に対し感染性因子低減化技術を導入する主目的が細菌対策であるということ。そして、この細菌に対する一定の低減化効果というものがミラソルには期待できるということがございます。

 2番目ですが、先ほど背景のところで申し上げましたとおり、ミラソルの検討を中断し、他の技術に変更することになった場合、必要な機材・資材等を準備する時間、あるいはミラソルと同様に他技術の代表でありますインターセプト等も評価する必要などがございますので、技術の導入には少し時間がかかってしまうことになるといった点が挙げられます。

 また、最後に検討結果の概要のほうでも今、述べていただきましたけれども、ミラソルによる低減化能が期待できない感染症があるものの、それらについては他の製剤、赤血球ですとか血漿製剤等への対応も含めた対策を講じる必要があるということ。これらに対しては、今の別紙2で説明がありましたとおり、NATですとか、献血制限等の総合的な安全対策によって、全体の安全性を上げる必要もあり、これが評価できているということが3点目として挙げられます。

 以上より、ミラソル以外のほかの技術も含めまして、世界的な低減化技術の開発及び導入状況については注視していく必要はございますが、現時点では、ミラソル導入に向けて準備を継続していくことと考えております。この点につきまして、御議論をいただきたいと思います。

○吉澤委員長 ありがとうございました。

 では、委員の先生から御質問、御意見をお願いいたします。

 最初に伺っていいですか。低減化技術のところで、感染性の低減化ということをおっしゃっていますが、感染性が落ちるというのは、何を指標にして評価しているのでしょうか。例えば培養ができないウイルスとか、そういうものについて低減化率何Logというようにきちんとした数字で表現していますが、これは何を指標にして数値を出しているのでしょうか。

 ○佐竹参考人 全くおっしゃるとおりです。

 これは病原体によって感染系があるかどうか、実験条件があるかどうかなどが全く違いますので、それぞれについて別々の評価をしております。ですので、サイトパチーが見られるものについては、それを見るとか、あるいは最低感染価で見るしかないものはそれで見るとか、そのウイルスそのウイルスについて、それぞれの評価をせざるを得ない。そうでなければ、本当に実験動物について種々の濃度を投与するなどということは、全くできかねることですので、現実にはそのような実験系をそれぞれに用いているということです。

○吉澤委員長 そうすると、それぞれの実験系での相対値を表現しているわけであって、ここに書いてあるのは、それだけ感染性が落ちるということとはまた別のことと理解してよろしいですか。

○佐竹参考人 まったく別のことです。おっしゃるとおりです。

○吉澤委員長 脇田委員、どうぞ。

○脇田委員 まさにその問題で、B型肝炎の効果のところはかなり重要かと思うのです。2.3 Logの低減化能という数字がありますが、参考文献の表から見ましても(2.3)ということで、代替実験による低減化能ということが出ているのですが、どういった代替法でやっているのかということがわからないということと、最近の技術の進化で、以前議論したときと比べて、B型肝炎の感染能等も実験数的にはかなり評価できるようになってきたかというところで、実際のところ、もう少し現時点のところでわかるかなという気もするのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

○吉澤委員長 どうぞ。

○佐竹参考人 全くおっしゃるとおりです。

 実験系は、本当はHBVについては適当なものがありませんので、我々が評価しましたのは、Pseudorabies Virus(PRV)です。ときどきモデルウイルスとして使われますので、それを使ってのサイトパチーで低減化を評価したということです。

○吉澤委員長 脇田委員、どうぞ。

○脇田委員 実際には、最近、プライマリーのヘパトサイトとか感染感受性のある細胞というのは出てきていますので、そういったもので一度どういうことになるかということは見たいという気がします。

○佐竹参考人 それも手元にございますので、お金はいろいろかかりますが。

○吉澤委員長 そうですね。

 ほかにいかがでしょうか。

 大戸委員、どうぞ。

○大戸委員 結論の1番は、血小板製剤が主目的は細菌対策であり、一定の低減化効果が期待できるとありますが、そこまではまだ言えないのではないかと思います。

 というのは、日赤のデータを見ますと、最近のデータは少なくて、実際に日本人の血小板から検出されているストレプトコッカスのデータは全くないですし、諸外国で問題となるバシラスとかクロストリジウムとか、そちらのデータもまだないので、一定の低減化効果が期待できる とまでは言えなくて 、低減化効果が期待できる可能性があるということではないかと思っています。

○吉澤委員長 この件はよろしいでしょうか。佐竹先生、お願いします。

○佐竹参考人 確かにそうおっしゃられればそうなのですが、あらゆるバクテリアの種類を全部やっていかなければならないことになるわけですけれども、一応、文献上、あと我々日赤のデータ上で一番頻度の高いものとして、S.aureusを代表的にやってきたということがございます。

 それから、この開発企業においても、いろいろな菌種をかなり多くやっておりますが、その中で最もこのストラテジーに抵抗性があったのがS.aureusだということが会社の評価では出ていますので、そういったことでこれをやってきたということはありますが、おっしゃることはもっともですので、これから少し菌種を広げてやってみたいとは思っております。

○吉澤委員長 ほかにいかがでしょうか。

 山口委員、どうぞ。

○山口委員 結論の3点のところについては、それはそれで妥当な点も多いかと思うのですけれども、実際これを導入する際に、今の定常状態の安全対策を上乗せするのか、それとも、これはエマージェンシーなときとか、あるいは災害時とか、ウエストナイルが流行したときだけの対応というような、一般化した安全対策としてやるのかによっても大きく違ってくると思うのです。

 基本的には、今までの議論で通常の技術として導入してしまうよりも、それ自体がこんなに高い安全性効果の上乗せがあるわけではないと私は思うので、むしろ災害時とかそういうときのために技術を蓄積しておいていただく、あるいはそのための承認申請をしていただくほうがいいのかなと思うのです。

○吉澤委員長 いかがですか。

○田所参考人 私たちもそのように考えておりまして、やはり機能上劣化するという問題もありますし、供給上の問題も出てくるということもありますので、何らか問題があったときに、その対応策で得られる利益がそういう問題点を超えると判断されるときに使うということがいいかと思います。

 ただ、今までそのような承認事例というのがないので、そういう事例をこの製剤については考えるべきであるという御意見をぜひいただければと思っております。

○吉澤委員長 実際に今、日本の国にはない感染症を対象にして、技術の基礎的検討を行っているわけですから、基本的には今、おっしゃったような線での考え方だと思います。感染事例が生じたときに、何の準備もなければ困るわけです。そういう意味では、基礎的技術を積み重ねておくことが必要なのではないかと思います。

 これに関して、いかがですか。

 岡田委員、どうぞ。

○岡田委員 通常の製造に使うのではなく、必要が生じたときに使うというのは、たしか事務局のほうで検討するというのは、以前、話をもう既にされていると思います。

 あと、この不活化技術ですけれども、効果が期待できるのは細菌感染だということですと、やはり災害時にフェレーシス由来の血小板が確保できないので、全血から血小板をつくらざるを得ないというときに、どうしても5人、6人とか10人のドナーから集めてつくるということになると、やはり細菌感染の率は上昇しますので、そういうときに備えて、不活化の技術の承認をとっておいて、しかも、これは今の日赤のシステムですぐに動くことが可能なものですので、通常の製造では使用しなくて、エマージェンシーに使うために承認を取る。ですから、フェレーシスの血小板だけではなくて、全血由来の血小板もぜひ承認をとるようにしたほうが、よりいいのではないかというのが私の考えです。

 以上です。

○吉澤委員長 田所先生、どうぞ。

○田所参考人 それができると大変よろしいとは思うのですが、現状の全血の分離方法では、血小板を取り除いてしまう方法を使っています。血小板については、成分献血のみでつくっているという現状がありまして、確かに将来的に血液が不足したことも含めて考えれば、全血由来の血小板をとる方法というのも、将来開発する必要があるとは思います。

 ただ、そのためには幾つかの条件があって、全血の採取方法を変える。今の分離方法ではない分離方法をする必要があるということが一つと、もう一つ、それぞれの製剤について白血球除去フィルターをつけるとなると、コストはかなり膨大なものになります。ですから、今、全血に対する白血球除去フィルターが血小板も残して、白血球を除去できるという方法が開発されつつあると聞いていますので、そういうものを待って、分離方法等も考えるということで、すぐというのではなくて、少し先を見ながら考えさせていただければと思います。

○吉澤委員長 杉浦委員、どうぞ。

○杉浦委員 不活化のことはわかったのですけれども、また副作用のことで教えていただきたいと思います。

 ビタミンだから副作用はないということですが、それがどのぐらいのドーズを入れて、実際に本当に何も無かったかということと、あと、今までの方法というのは、例えば病原体があれば、その血液は使わないということで取り除くのですけれども、不活化という方法は、病原体も入ったままそれを体内に入れるということで本質的に異なる事をやっている訳で、長い目で見たときに、例えばある人が今、不活化した製剤の輸血をし、将来また同じものを輸血したときに、先ほどいろいろと副作用の話が出ましたが、例えばショックのリスク等にも影響してくると思うのですが、現時点では災害時使用で常時は使わないということなのでいいかとは思うのですが、長期的に見たときにその辺はどんなふうにお考えですか。

○田所参考人 後で追加もお願いできればと思いますが、リボフラビンに照射してできた産物についての発がん性とかそういうことは言われていないということが第一。

 それで処理して、新たな抗原性が出て、新たな副作用が出るということも報告されていないということがあります。

 あと、病原体も含めて入れるということで言えば、細菌等が増殖した後では、エンドトキシン等が残るではないかという議論は当然あろうかと思いますけれども、採血後比較的早期にやりますので、エンドトキシン等、細菌に由来する毒素がふえて、それが入ってしまうのではないかということは考えなくてもよろしいかと思います。

○杉浦委員 ありがとうございます。

○吉澤委員長 濱口委員、どうぞ。

○濱口委員 それと関連してですけれども、先ほどの説明の中で、この低減化を行うときに、血小板の機能自体がかなり影響を受けるのではないかという話があったのです。もしこのミラソルを使った低減化というのを日本ではなくて、別の地域で実際にやられているという事案があって、もしくはそういうデータがあるとした場合に、血小板の必要なバック数がどのぐらいふえるのか。もしくは操作することによって、有効期限をどのぐらい短くしなければいけないのかというところの概算というか、そこら辺の見通しというのをもし検討しているのであれば、教えていただきたいと思います。

○五十嵐参考人 諸外国において、不活化、低減化を導入して血小板の使用量がふえたという報告は、今のところありません。

 ただし、諸外国は、日本で言うと15単位以上の血小板製剤を使うことが多い。それに対して、日本では10単位が主流ということで、10単位を低減化したときに使用量がふえるかというところのデータがまだないです。そういう状況だろうと思います。諸外国において、不活化、低減化を導入したことで使用量がふえたという明確なデータは、今のところありません。

○吉澤委員長 新津委員、どうぞ。

○新津委員 今の有害事象の話なのですが、血液疾患では抗がん剤、抗生物質、抗真菌剤などを使いながら血小板輸血を行うことが多いですが、これはビタミンB2なので、そういうものと一緒に使っても、有害事象がふえるという報告はないのでしょうか。

○佐竹参考人 その件ですけれども、恐らくそういうことはないだろうと思われます。

 先ほどもありましたように、Neoantigenecitycarcinogenicityのあたりについては相当詳しくやられていて、全く問題ないということが出ていますのと、実際にこのPC時に加えたときの濃度というのは、中心静脈栄養に入れる総合ビタミン剤がありますが、その濃度を少し上回るぐらいの濃度です。ですので、ああいう状態で中心静脈栄養をされていて、それで日光に照らされているというのと、現実的には非常に近い状態ではありますし、新生児での紫外線照射による黄疸の治療の場合にも、ビタミンBとかが血中にあるときに、そこで紫外線を照射しているわけですので、そこで何か有害事象が起こったということは、これに由来するものについては何も歴史上知られていませんので、そういうことからいいますと、安全性については、大きい問題はないのではないかと考えております。

○吉澤委員長 ほかにいかがでしょうか。

 1つわからないから伺うのですが、バクテリアをターゲットとしたガンマ線照射は世界的にはおこなわれてはいないのでしょうか。白血球にはガンマ線照射をしていますね。

○佐竹参考人 いろいろな実験がされていて、通常のガンマ線でバクテリアが死ねば、これほど実験をやりやすいことはないのですけれども、実際にはバクテリアは全く死にません。白血球はよく不活化されますが、その後、培養しますと、コンタミしたものは必ずふえてきますので、バクテリアは全くガンマ線ではキルされないですね。

○吉澤委員長 そうですか。

 ほかにいかがでしょうか。

 どうぞ。

○上田血液対策課長補佐 ありがとうございます。

 皆様の意見をいただきまして、事務局のほうで一旦引き取らせていただきたいと思うのですけれども、この議論は平成20年から非常に繰り返してなされている議論でございます。今回、皆様方の意見をいただきまして、大体共通している認識と私が理解しましたのは、こうした低減化技術、災害時ですとか、有事に使えるオプションとして、一つの開発の方向性を見出せるのではないかという意見が多かったと理解しております。

 この導入に関しては、先ほどの承認の問題ですとか、新興感染症はまだないウイルス、その他に対しての開発をどのように進めるかですとか、そういった問題がありますので、そういった問題点についても事務局のほうで引き取らせていただいて、今後検討を重ねていく。

 こうした検討をするに当たっての最低限の能力というものを、先ほどの日赤のデータから最低限は確保されているのではないかというところを確認したいのですけれども、その点に関しましては、今すぐ導入ということではなく、そのオプションとして持っていくという形の開発であれば、これで許容できるのではないかと、そういったことを皆さんに御意見として伺っておきたいのですが、その点はよろしいでしょうか。

○吉澤委員長 それについては、先ほど岡田先生がおっしゃった、2年ぐらい前の会議で、承認されていると理解しておりますけれども、それでよろしいですね。

○岡田委員 そうですね。

○上田血液対策課長補佐 ありがとうございます。改めて確認させていただきました。

 そうしましたら、今後とも、もし進展がございましたら、また報告をいただくとともに、開発の継続については、日赤のほうから定期的に連絡をして、共有していただくということでよろしいかと思います。

○吉澤委員長 時間が押しまして、申しわけありません。

 それでは、ここまでの議題を終わらせていただきまして、最後に議題4に入りたいと思いますが、その手順につきまして、事務局のほうから説明をお願いいたします。

○上田血液対策課長補佐 時間も押しておりますので、これから議題4に入りますが、冒頭にも申し上げましたとおり、本議題は薬事分科会血液事業部会安全技術調査会規程の第8条に基づきまして、非公開とさせていただいております。傍聴人の方は申しわけございませんが、御退席をお願い申し上げます。

 また、会場の準備のために、5分間ほど休憩とさせていただきますが、ちょっと時間が押しておりますので、時間どおりに5分ちょうどで始めようかと思います。よろしくお願いいたします。

(議題4は非公開で議論された)


(了)
<照会先>

医薬食品局血液対策課 課長補佐 上田(内線2905)・野田(内線2914)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(血液事業部会安全技術調査会)> 平成25年度第1回血液事業部会安全技術調査会(2013年7月10日)

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