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2013年8月6日 第15回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 議事録

職業安定局派遣・有期労働対策部需給調整事業課

○日時

平成25年8月6日(火)14:00~16:00


○場所

厚生労働省 共用第8会議室(6階)


○出席者

構成員

鎌田座長、阿部委員、小野委員、木村委員、竹内(奥野)委員、山川委員

事務局

岡崎職業安定局長、宮川派遣・有期労働対策部長、鈴木企画課長、富田需給調整事業課長
牧野雇用支援企画官、松原派遣・請負労働企画官、亀井需給調整事業課長補佐

○議題

労働者派遣制度の在り方について

○議事

○鎌田座長 それでは、定刻にほんの少し早いのですが、「第15回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」を開催いたします。事務局より委員の出欠状況と資料の確認をお願いいたします。
○亀井補佐 まず本日の委員の出欠状況ですけれども、奥田委員から御欠席との連絡をいただいております。また山川委員から、所用により遅れて参加されるとの連絡を先ほどいただいております。お手元の資料を確認させていただきます。議事次第のとおり3種類用意しております。資料1として本研究会の報告書の素案です。残り2つは参考1、2と題して、前回及び前々回の議事概要を配布しております。出欠の確認と資料の説明は以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。それでは議事に入ります。本日はお配りしている資料1の本研究会の報告書素案について御議論をお願いしたいと思っております。こちらは研究会で行ってきた議論やヒアリングを基に論点の整理を試みたものですが、個々の論点にとどまらず、派遣制度を検討するに当たって持つべき「基本的な視点」なども合わせて整理を試みたものです。かなりの分量があることから、進め方としては、全体を3つのパートに区切って、パートごとに事務局の説明、それを受けた議論というやり方を取りたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○鎌田座長 ありがとうございます。それでは事務局から説明をお願いいたします。
○亀井補佐 お手元の資料1、報告書素案につきまして説明をさせていただきます。目次を御覧ください。ただいま座長から説明がありましたように、全体を3つのパートに分けて順次説明させていただきます。1つ目としては第1~第3まで、2つ目としては第4の期間制限の在り方等、3つ目としては残りの第5~第8まで順次説明させていただきます。
 それでは中身の説明を、ポイントをかいつまんで説明させていただきます。まず「はじめに」と題して、第1段落でございますが、我が国における労働者派遣制度の位置付けについて、昭和60年~平成15年までの経緯が簡単にまとめております。昭和60年に労働者派遣制度は、専門性のある業務や雇用管理に特殊性のある業務に限った需給調整システムとして位置付けられて、制度化されました。この位置付けは平成11年の制度改正においても維持され、いわゆる専門26業務以外の自由化業務につきましても1年間という期間制限を付した上で認めることで、労働力の臨時的・一時的な需給調整システムという位置付けを維持しております。その後、平成15年にはこの1年間という期間制限の上限を3年間に延長するとともに、物の製造業務への派遣を解禁というところです。
 次の段落です。平成24年改正に至る経緯を簡単にまとめております。平成15年改正以降、労働者派遣制度を巡る様々な問題が顕在化したことを受け、平成20年にも「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」が設置されました。その報告書に基づき、30日以内の日雇派遣の原則禁止や、派遣元事業主のマージン率の情報提供等を内容とする改正法案がまとめられましたが、この法案につきましては、平成20年秋以降の世界金融危機などの中で廃案となっております。その後平成21年の政権交代により、この法案の中身もベースとしつつ、登録型派遣や製造業務派遣の原則禁止、また日雇派遣の原則禁止を2か月とした上で禁止する、更には労働契約申込みみなし制度等といった内容を加えた改正法案が国会に提出されましたが、国会における審議の過程で登録型派遣や製造業務派遣の原則禁止の削除、また、日雇派遣の原則禁止の範囲が30日以内に変更、更に例外の場合の追加といった修正を経て、平成24年3月に成立、10月に施行されました。
 次の段落ですが、今回の研究会の経緯ともなった平成24年改正法の附帯決議の中身を簡単に紹介しております。ここに挙げている論点について、改正法施行後1年を目途に労政審での議論を開始する、また、期間制限の在り方についても速やかに見直しの検討を開始するとされたことを受け、この研究会が設置され、平成24年10月から15回にわたる検討を行ってきたという経緯を述べています。
 次のページ、本報告書の目的です。今後の労働政策審議会における議論に資することを目的として、必要に応じて制度の根幹に関わる事項も含む多岐にわたる論点について、整理を行ったものであることを記しております。続いて、個別の論点に入る前に、第1として「労働者派遣制度の在り方の検討に当たっての基本的な考え方」を説明します。まず1番で現状、2番で課題を述べた上で考え方を整理するという構成を取っております。
 1番、現状の第1段落につきましては、派遣を取り巻く派遣元、派遣先事業所、派遣労働者の現在のデータを掲載しております。派遣労働者につきましては平成20年に202万人とピークを迎えた後は減少傾向にあります。第2段落です。我が国の労働市場全体における派遣労働者の状況ということで、派遣を含めた非正規雇用労働者自体は年々増加を続けておりますが、その中で派遣が占める割合は年々下がっているという状況を記しています。第3段落です。このように派遣労働という働き方は非正規雇用及び雇用者全体に占める割合は必ずしも大きくはありませんが、「派遣切り」問題に代表されるように、それに関わる問題が社会的に非常に大きく取り上げられ、関心を集めてきた経緯があることに触れております。
 次の段落です。そのような派遣労働者は、どのような方々がこの働き方を選択しているのかということに触れております。昭和60年の制度創設当初は、一時的に離職した女性が労働市場に復帰する際の受皿として機能することが期待されておりましたけれども、現在ではそうした方に限らず、新規学卒者や様々な事情で離職した方、あるいは柔軟な働き方を望む方も派遣労働という働き方を選択する。また、望んで派遣という働き方を選ばれる方と、不本意ながら派遣労働という働き方を選ばざるを得ないという方もそれぞれおられて、その実像は非常に多様であるとまとめております。
 次のページです。派遣労働者に求められるものとして、専門性や経験につきましては、そうしたことを必要としない業務に従事する方もおられれば、高度な専門性や経験を求められる方もいるということで、様々な観点から派遣労働者という方々は、非常にバリエーションに富んだ働き方であるということをまとめております。最後です。これまでは派遣という働き方が問題になった経緯もあって、日雇派遣に対するイメージ、すなわち低待遇・定型的な業務に従事するといったイメージが非常に強く、また世の中の関心もそうした方々に集まりがちで、こうした派遣労働という働き方の多様な実情を、全体として捉えた議論があまりされてこなかったという形で現状をまとめております。
 続きまして、課題です。労働者派遣制度につきましては、様々な方面から多様な課題が指摘されております。第1段落では、今後の制度の在り方の方向性に関するものとして3点に整理できるのではないかと。以下、それぞれの段落で整理しております。1点目は派遣労働者の保護をどう図っていくかということです。2点目は派遣労働者のキャリアアップを促進する仕組みが必要ではないかということです。3点目ですが、派遣制度はルールが複雑で分かりにくいとの指摘です。これらの課題に対する中身の説明は、後ほどまた重複する部分がありますので、ここでは省略させていただきます。
 このような現状と課題に対する認識を踏まえ、3番で制度の検討に当たっての基本的な視点を示しています。ここでは3つの視点から今後の労働者派遣制度の在り方を検討していくべきではないかと。1点目ですが、労働者派遣制度の労働力需給調整における役割を評価しながら派遣労働者の保護、雇用の安定を図っていくということ。2点目、派遣労働者のキャリアアップを推進していくということ。3点目、労使双方にとって分かりやすい制度とすること。この3つの視点から制度の在り方を検討していくべきではないかということをまとめております。
 次のページ、第2、「登録型派遣・製造業務派遣の在り方について」です。ここからは、今申し上げた基本的な視点に照らして、附帯決議に盛り込まれた様々な論点についての各論を取り上げております。まず第1段落、登録型派遣は、賛否両論あるということをまとめております。反対という立場からは、労働者派遣契約の終了が雇用の終了につながりやすく、雇用が不安定であるということが一番大きな声かと承知しております。後半部分では、賛成する立場として、実際にこうした働き方を希望する方が多数おられる、かつ、労働需要に対する迅速なマッチングシステムとしてニーズが大きいといった声もあることから、第2段落ですが、仮に登録型派遣という働き方を禁止した場合には、経済や雇用に及ぼす影響が大きい。また後半ですが、請負にシフトして、その結果偽装請負のような働き方が拡大するおそれもあるという指摘をいただいています。
 次の段落です。さはさりながら、これを仮に禁止しないとしても、登録型派遣という働き方が持つ雇用の不安定性には何らかの対応が必要である。そのため、後で詳しく述べる雇用安定措置を講じていくことが必要であると結んでおります。
最後の段落の製造業務派遣ですが、こちらについては様々な登録型派遣と同様、課題が指摘されております。労働力需要の変動が大きいこと、安全衛生上の観点から問題があること、また現場での技術力の維持が困難になるということから禁止すべきという意見が主です。「しかし」の後に記しておりますように、これらはいずれも製造業という業態に付随する特徴で、派遣という働き方に固有の問題ではない。したがって派遣制度の中で、こうした課題に対応する理由に乏しいという形で結んでおります。更に雇用の不安定性という課題につきましては、登録型派遣と課題が共通しておりますので、製造業務のみ取り出すのではなく、登録型派遣を巡る課題の議論の中で併せて検討すべきであるという形でまとめております。
 続きまして第3、「特定労働者派遣事業の在り方について」です。第1段落において特定労働者派遣事業とは何かということと、その課題をまとめております。次のページで、どのような課題があるかです。実際には特定労働者派遣事業の派遣労働者の中には、「常時雇用される」という定義であるがゆえに、無期の方に限られるわけではなく、有期雇用で反復しているものも含まれている。そうした方々の雇用の不安定性、労働者保護が図られないおそれがあるという課題がある。次の段落で、そうした課題に対応するために、特定派遣の在り方については、全ての派遣労働者を無期雇用する派遣元に限定することが適当ではないかという形にまとめております。なお書きで記しておりますのは、届出により事業の運営が認められておりますけれども、一般派遣事業と同様、許可制とすべきではないかという意見があります。こうした意見につきましては、少なくとも有期と無期が混在しているという課題については、上で申し上げた対策によって対処が可能であることから、特定について許可制とすべきか否かは、制度の見直し後の状況も見据えて必要に応じて検討を行うことが適当であると結んでおります。第1から第3については以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。ただいま説明があった部分に関して御質問、御意見があればお願いしたいと思います。今まで私どもが発言した内容がコンパクトにまとまっているのかなと思います。よろしいですか。
○竹内(奥野)委員 ほかに意見がなければということで、大変つまらないことで恐縮です。3ページ目の現状というところの2段落目、非正規雇用労働者の割合、3行目ほどで32.8%となっていますけど、直感的に、この32.8という数字は変でないでしょうか。32.8、少なくとも数字が確認できればと思います。私も今すぐ数字が思いつかなくて恐縮ですけれども。それだけです。
○鎌田座長 この点について事務局から補足説明があればお願いします。
○亀井補佐 少し確認して、後ほど説明申し上げます。
○鎌田座長 それは後で、細かな数字のことですので、確認をしてから説明があると思います。よろしいですか。後で戻るのも何ら問題ありませんので、後の関連で、また御質問、御意見をいただければと思います。
 それでは次のパートに移りたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。
○亀井補佐 それでは、2つ目のパートである第4、「期間制限の在り方等について」、御説明させていただきます。これは現行制度の説明から入っております。「はじめに」で少し触れましたように、現在の派遣制度は「常用代替防止」を基礎となる考え方の1つとして設計されております。常用代替とは何かが説明されております。具体的に常用代替防止を図る施策として、第2段落ですが、現行制度では、対象となる業務は専門的知識や特別の雇用管理が必要であるので、派遣先の正規雇用労働者とは別の労働市場が形成されていると。こうした業務であれば、常用代替のおそれが少ない。それ以外の自由化業務についても期間制限を付すことによって、派遣先の正社員との代替を防ぐという形に現在の制度はなっております。3段落目で、こうした業務に着目した期間制限の在り方というのは、非常に我が国独自の規制であるとまとめております。
 2番ですが、業務と結び付いた期間制限の核である26業務の在り方について整理をしております。8ページですが、26業務を他と区分している専門的な知識、技術又は経験という考え方の当否について検討を行っております。まず、専門性というのは、時代とともに変化するので定義することが困難であると。したがって、基準として専門性、技術、経験というのを明確に定義するのは困難ではないかという形でまとめております。2段落目、業務と期間制限をセットにすることによって、現場においては自分たちが利用している、もしくは労働者の方では、自分が働いている業務が26業務に該当するのかどうかというのが非常に分かりにくいと。関係者ごとに理解が異なるケースが発生しています。更に26業務と併せて行なう付随的業務というものが、どこまで認められるのかも分かりにくいといった課題があることをまとめております。
 次の段落で、26業務を他の業務と区別する考え方として、専門性もしくは特別の雇用管理という考え方で仕切っております。そうした考え方で仕切れば、外部労働市場が形成されているので常用代替のおそれはないとされているわけですが、実際には、派遣先の正社員がやっている業務と交ざっているということで、法制定時の理念と現実との間で乖離が生じているのではないかといったように、非常に課題が多いと整理しております。
 次の段落ですが、26業務の基準については、課題の一方で、高度に専門的な人材を期間制限を受けずに活用する方法として、非常に重要であるという御意見も出されております。最後の段落で、26業務の在り方の見直しに当たっては、上述の問題を踏まえつつも、附帯決議において、「派遣労働者や派遣元・派遣先企業の方に分かりやすい制度となるよう」検討することが特に求められていることを念頭において、その廃止も含め、他の論点とともに、労政審で御議論いただくことが適当ではないかという形でまとめております。
 3番、26業務以外にも、現行の常用代替防止策の課題にはどのようなものがあるかをまとめています。(1)の第2段落、常用代替防止という考え方が、主に派遣先の常用労働者を保護するという考え方であり、派遣労働者の保護と必ずしも両立しない面があるということに触れております。実際に裁判例において、この常用代替防止という目的に照らして、派遣労働者側の訴えが認められなかった例を紹介しております。
 9ページ、「また」の段落ですが、日本の労働市場全体の観点から見て、現在の常用代替防止の考え方に不備があるという御意見もございます。具体的には、常用代替防止の目的は、正規雇用労働者の雇用を基本とする日本型雇用慣行を維持することにあると。しかし非正規労働者の状況に目を転じてみると、派遣労働者以外の非正規という働き方は、年々増加を続けている。そうした中で、派遣労働者のみを正社員との関係で常用代替防止の対象とし続けることには十分な整合性がないのではないかということです。更には、日本の労働市場全体で見たときに、この派遣という働き方をどのように評価し位置付けていくかという視点が欠けているということです。
 まとめですが、現在の常用代替防止の考え方は、現状で申し上げた派遣労働者が非常に多様であるという実情に十分に即していない。様々な待遇、動機であったり、多様な派遣労働者に対して、一律に抑制の対象とする仕組みであるので、そうしたことは適当ではないという形で結んでおります。
 (2)は、常用代替防止のための方策が抱える課題についてまとめております。いくつか、段落ごとに問題点をまとめました。1つ目に、最長3年で業務への派遣が終了となるため、それ以降の雇用については保障がない。これが雇用の不安定性を生んでいるということです。更に業務単位で期間制限を設けているために、必ずしも同じ業務3年間の中で、人が代われば、続いた方は残りの期間しか働けない。本人の納得感、キャリア形成の観点から問題があるのではないか。業務単位で期間制限を設けているために、運用面では「最小の指揮命令単位」、すなわち同じ係に属しているかどうかで見ています。このため、属する単位を変更することによって、同じ派遣労働者の方を使い続けられる仕組みとなっており、常用代替防止のための方策として妥当かということをまとめております。
 10ページ、4の派遣労働の考え方の整理で、こうした常用代替防止の考え方と方策について検討を行ったところ、様々な課題があることから、その在り方について根本から再検討することが必要ではないかということを提起しております。検討するに際し、派遣労働という働き方の特徴を明らかにするために、2つの観点で分析を行っております。それが(1)(2)に出てくる直接か間接かということと、無期か有期かです。(1)ですが、派遣という働き方は間接雇用の仕組みです。この間接という働き方の課題として、使用者責任が不明確になりがちであると。これについて現行制度は、基準法などにおける使用者責任を派遣元・派遣先に分担することで対応しました。
 次の段落、課題ですが、どうしても派遣先が派遣労働者を必要なときに容易に利用できる労働力として見る傾向が生じてしまうと。そういった傾向のために、他の非正規の働き方よりも利用が拡大しやすいのではないかという特徴がある。更に、課題として、派遣先が派遣労働者を安易に多用すれば、自社の中核的な技術・知識の維持、長期的な事業発展にマイナスの影響が及ぶ。派遣契約は、派遣就業することを前提としたものなので、その契約が終了すると、派遣元との労働契約も終了しやすい面があるということです。
 次に、無期と有期について検討を行っております。次のページです。派遣の中には、有期と無期の方がおられます。有期の場合は、間接雇用の問題ともあいまって、2つ課題があります。1つは雇用が不安定である。2つ目として、キャリア形成の機会が乏しいということを説明しております。更に有期派遣という働き方が、無期と比べ専門性や待遇が低い傾向にあるために、派遣先の立場からすれば、自社が有していない人材もしくは一時的な需要に対応するために派遣を使うというよりも、雇用主としての責任を避けるために派遣を使っている。そうした利用が起こりやすくなるのではないか。そうした利用の仕方は、非常に望ましくないと。
 有期はこのような課題があり、無期の派遣労働者については、雇用の不安定さ、キャリア形成の機会という課題について、有期と比べればこうした望ましくない利用が起こりにくいという形で整理しております。最後の「以上で検討したとおり」の部分で、派遣労働という働き方を間接か直接か、無期か有期かという観点から整理したときに、やはり有期雇用の派遣について様々な課題が多いことから、一定の制約を設けてその拡大を抑制していくことが望ましいのではないかと。その際、キャリアアップを図ることができるように、有期に固定されることを防ぐという観点と、労働市場全体から有期雇用派遣が拡大することを防ぐという、この2つの観点から常用代替防止の在り方を検討することが適当であるという形でまとめております。
 5番、常用代替防止の再構成です。こうした検討を踏まえ、具体的にどう再構成するかです。(1)は対象についての考え方です。無期については、有期に比べて様々な課題の面で優位にあることから、これまでの常用代替防止の考え方とは異なる扱いをしていくことが望ましいのではないかと。一方、有期については、先ほど申し上げたような課題があることから、引き続き常用代替防止の対象とすることが適当であるということです。対象を有期の派遣労働者に絞った上で、常用代替防止策の在り方をどうするかということですが、個人レベルと派遣先レベルの双方から図っていくことが適当ではないかとまとめております。
 1の個人レベルですが、2つ方法が書いてあります。1つは、有期雇用派遣という働き方に一定の制約を設けること。もう1つはキャリアアップや無期雇用化等のステップアップの仕組みを講じること。こうすることによって、労働市場全体でより良質な雇用が拡大していくことが期待されるのではないかと結んでおります。
 続きまして、個人レベルに加えて派遣先レベルにおける常用代替防止の仕組みも必要ではないかと。具体的な考え方として、第2段落にありますが、派遣を利用している事業所の実情は非常に様々であり、それぞれの実情に対応できる仕組みであることが望ましいと。もう1つ、常用代替防止と派遣労働者の保護のバランスを図るような仕組みが望ましいということで、考え方を示しております。
 次のページですが、常用代替防止の考え方、方策を再構成すると、派遣という働き方に対する考え方が変わるのではないかという印象を与えるかもしれない。しかし、そういうものではないということを次の段落でまとめております。派遣という働き方が派遣先において、ある業務があり、それを担うために派遣元が労働者を選定し従事させる。業務に対処するためにそれに対処できる人、それに業務対処できる人を選び提供するという仕組みであることは変わりはないことを説明しております。
 6で、このように基本的な考え方を再構成した上で、今後の常用代替防止の方策はいかにあるべきかということを具体的に検討しております。先ほど、個人レベルと派遣先レベルにおいて、それぞれ設定すべきであると申し上げました。(1)は個人レベルです。考え方としては、先ほど申し上げたように労働者個人が特定の仕事に固定されないようにするためには、ある労働者が同一の職場で就業できる期間に上限設定を設けるということです。このメリットについて、3点にまとめております。御本人が従事できる業務の幅が広がるためにキャリアアップの機会が増します。2点目として、派遣元にとっても派遣就労の期間が限定されているためにキャリアアップ措置を講じるきっかけとなる。
 次のページ、3点目です。業務は26業務か否か、付随的な業務はどこまでやっていいのかといったものがなくなるために、派遣先と派遣労働者の双方にとって分かりやすい制度となるということです。なお書きの部分です。上限期間を設ければ、当然その期間が終了すると雇用機会が失われる可能性があるが、そうした課題については、派遣元に雇用安定措置を講じさせることで対処すべしという内容になっております。次の段落ですが、今、申し上げた個人に期間の上限を設けるという方法は、労働契約法の無期転換ルールとも親和性があるのではないかということを述べております。
 続きまして、派遣先レベルの具体策ですが、ここでは3つ、研究会でも提起いただいた策について検討を行っております。1の業務単位での期間制限については、業務と期間制限をリンクさせるという今の考え方と同様です。メリットとして、派遣先が利用する際に実施しやすいということ。一方、ポツで課題をまとめておりますが、現在生じている課題と同様の課題があるということです。4ポツにありますが、仮に業務単位という区分を維持しつつ上限を課すこととなれば、これまで26業務は期間制限なく利用できていたので、非常に影響が大きいのではないかということを付け加えております。
 2として、もう1つの常用代替防止策として、均等待遇・均衡待遇について検討を行っております。均等待遇については、欧州諸国が採用している制度であることに触れた上で、均衡待遇の強化については、今後とも進めていくべきという方向を出しております。一方で、後ほど詳細に述べますが、均等待遇については、我が国の労働市場の実態が欧州とは異なるので、いろいろと課題が多いということを、後ろの方でまとめております。
 3として、派遣先の労使がチェックする方法です。具体的には、派遣先において派遣労働者を受け入れる際に、常用代替のおそれがあるかないかを派遣先の労使が判断するという仕組みです。こちらはドイツの事業所委員会の仕組みとして類似のものがあります。この方法のメリットとして3点挙げております。1つ目ですが、派遣先の多様な実情に対応できる。2つ目として、派遣先の常用労働者の意見が反映されやすい仕組みである。3つ目、仮に、期間制限の単位を業務から個人単位に改めた場合、労働者を交代させることで派遣を長期間にわたって利用することができますが、こうした派遣先の労使がチェックする仕組みを入れれば、そのような望ましくない派遣の利用があるときは、それぞれ判断して、必要に応じて利用を止めることもできるということです。
 この制度はドイツの例に倣っておりますので、なお書きではドイツにおいて行われている入口規制についての検討を行っております。ここでは、留意点だけまとめておりますが、2つあります。1点目、仮に入口規制を設けると、現行よりも厳しい規制になる。2点目、派遣労働者の雇用の安定等の観点から過剰な介入になるのではないかということです。
 次のページです。ここまで、常用代替防止という考え方の整理から期間制限の在り方についての検討を行ってきましたが、その上で今後の制度の考え方をまとめたのが7番です。12として、2つの観点から考えていくことが適当であると。1、26業務か否か。業務とリンクさせることなく、共通ルールとして労働者個人に同一の派遣先への派遣期間の上限を設定すること。2、個人単位で設定した場合、人を代えることで続けられる。そのような場合は望ましくない派遣の利用が起こる可能性があるので、派遣先の労使がチェックする仕組みを設けることで対応するという考え方です。12、いずれについても論点があります。1ですが、個人の派遣就業が継続しているか否かについては、契約の更新時に別の部署へ異動した場合にはどうするのかと。更に、継続しているか否かを何をもって判断するのかで様々な案が考えられるということです。2についても、個別の契約ごとに労使がチェックを行うのか、あるいは、労働者側の意見をどのように反映させるのかという仕組み方等、様々な案が考えられることを指摘しております。なお書きですが、個人単位で上限を設定する場合には、先ほど、常用代替防止のところで上限設定とキャリアアップという考え方を示しておりましたが、派遣元に雇用の安定とキャリアアップのための措置を講じさせることが適当であると結んでおります。
 このように12、ともに様々な案が考えられることから、具体的な制度は、それぞれの論点ごとにどう対応するかによって変わってくるわけですが、ここでは、1つの参考として制度のイメージということを例示しております。
ア、個人レベルでの派遣期間の制限を設ける場合には、有期の派遣に対して派遣先の組織・業務を単位として期間制限を行う。同一の有期雇用派遣労働者に対して、例えば3年間なら3年間の上限を設けた上で、それ以上の就労は不可とするということです。組織・業務単位をどのように設定するかで、非常に多くの選択肢があるということに触れております。イですが、個人の期間制限を設けた上で、その期間制限に達した方への雇用安定措置をどうするかということです。ここでは、派遣元が本人の希望を聴取した上で、3つのいずれかを講じることとしてはどうかと。いずれも例示です。1つは派遣先への直接雇用の申入れ、2として、新たな派遣就業先の提供、3として、派遣先で無期雇用化することという形の、いずれかを講じることとしてはどうかというイメージを挙げております。
 ウ、派遣先での期間制限の在り方です。派遣先の労使において、受け入れている有期雇用の派遣労働者が継続的に上限を超す場合に労使のチェックの対象とする。具体的には2つ、最後のところでまとめておりますが、上限年数を超える継続的な受入れであったり、労使の会議等の判断以降の一定期間の新たな受入れについては、この労使の会議が判断することによって受入れの可否を決定するという仕組みです。
 なお書きですが、ここまで期間制限について何年にすることが適当かには触れておりませんが、ここでは3年を中心に検討してはどうかということでまとめております。理由は、それぞれ個人レベル・派遣先レベルにおいて説明をしております。個人については、あまりに短期間とすればキャリア形成にマイナスがある。更に正社員の人事異動の周期を見ても3年程度が1つの目安ではないかと。更に契約法との関係。4つ目のポツで、現在の最長期間が3年であるので、これとそろえることが適当ではないかということです。
 次に派遣先レベルです。現在の受入れ期間の上限が3年とされていることから、これとそろえることが望ましいのではないか。2つ目として、原則3年として、この期間が長いゆえに常用代替防止のおそれがあるという場合には、労使の会議においてチェックすることで、必要に応じ期間を短縮することもあるのではないかということです。
 次のページです。この新しい制度のイメージによって期待されることをまとめております。派遣元と派遣先に分けてそれぞれ論じております。派遣元は、派遣労働者個人に着目してキャリアアップを図ることができる。派遣先は組織・業務単位ごとに常用代替防止が生じていないかチェックを行うことを求められることになるということです。仮にこのように制度を見直すとしても、現在26業務として運用されている業務の派遣の方々については、いずれも長期的な技能の蓄積が必要であることから、今後は、無期雇用派遣によって行われていくことが望ましいのではないかと。最後のなお書きですが、このように、仮に制度を見直したとしても、必要な役務に対処するために、それを担える方を派遣元が選ぶという考え方まで変わるものではないということをまとめております。
 8として、期間制限に付随するいくつかの論点について検討を行っております。プロジェクト・高齢者・その他です。プロジェクト業務については、現在も常用代替防止のおそれがないと整理されていることから、この扱いを維持することが適当であると。更に期間は、現在、要領によって3年を上限とされておりますが、この上限設定の必要性がなくなるのではないかということで、この要領の規定の変更も考えられるということです。高齢者ですが、他の労働者の方々と比較して、雇用機会の確保の必要性が高いことから、期間制限を緩和することもあるのではないか。現在の制度において派遣期間の上限を超えた場合、派遣先に一定の場合の雇用契約申込義務等が課せられておりますが、仮に、今御説明したような見直しを行うのであれば、所要の整理が必要となるということです。以上、第4の御説明です。
○鎌田座長 ありがとうございます。御説明のあった部分について質問や御意見、あるいは確認を含めて、是非御発言をいただきたいと思います。
○竹内(奥野)委員 結構な数にわたってありますけれども、取りあえず許される範囲で申し上げます。1点目、11ページから12ページに関係することだと理解しております。「常用代替防止の再構成」という5の項目、(1)で説明されていることだとは思いますけれども、もし、より明確化が図れるならばということで、意見を申し上げさせていただきます。
 7ページにありますとおり、常用代替防止の在り方というのは、派遣先の常用労働者が派遣労働者に代替されることで、それを防止するというのが常用代替防止の現在の考え方だと理解できるかと思います。再構成する内容としては、派遣労働者によって派遣先の常用労働者が代替されることに代えて、有期の派遣による派遣先の常用労働者の代替を防止するコンセプトとして理解するというのが、ここまでの議論だったのではないかと理解しておりますが、そういうことの確認と、可能であれば、もし明確化できるのであれば、11ページから12ページの(1)の辺りでそういうように書き込めば、この報告書が出来上がる際も理解されやすいのではないかと思います。御検討いただければと思います。
○鎌田座長 今の発言は確認を含めての御発言だと思いますので、事務局から御説明いただけますか。
○富田課長 報告書の素案では、5の(1)は「対象」と書いており、(2)では「防止策の在り方」となっており、2つの視点で、今までの常用代替防止の在り方と違う再構成をしたほうがいいのではないかと申し上げております。対象については竹内先生がおっしゃるとおり、有期雇用の派遣労働者を対象としたほうがいいのではないかということです。これまでの常用代替防止というのは、派遣先の常用労働者を代替するということで、派遣先の視点が中心だったのですが、今後の在り方としては、確か研究会の中で山川先生が、労働市場全体という観点を入れるべきではないかとおっしゃっていました。ですから派遣先だけではなくて、個人が有期の派遣に固定化されること、労働市場全体でも良好な雇用形態が拡大するようにしていくことが必要ではないか、という観点も含まれております。不明確なところはございますけれども、できるだけ分かりやすくしたいとは思っております。
○鎌田座長 もし、また何かあれば追加的にお願いいたします。確認の意味でお聞きします。現行の常用代替防止というのは、いわゆる専門職型派遣の期間制限無しと自由化業務とに分けた上で、自由化業務については、期間制限を置くということで出来上がったのです。そこには有期・無期という区分けはないわけです。今もお話がありましたように常用代替防止、取り分け期間制限については、有期雇用の派遣労働者を対象とするということですから、いわゆる期間制限に関しては別な事項が出てきて、提案の内容に入っているわけです。有期の派遣労働者に関しては、個人単位での期間制限というのは1つ入っていて、派遣先の組織あるいは業務といった規制の観点もありますが、その辺を少し詳しく説明してもらえますか。
○富田課長 派遣先のレベルでも、派遣先の常用代替防止という観点は維持していこうということです。ただし、座長がおっしゃったとおり、これまでは有期・無期の関係なく、常用代替防止の対象にしていくというのを、今回は有期雇用に限定していこうということです。当然のことながら、仮に個人単位になるとしても、どうしても場所的な制限はする必要があります。その辺は論点の7、「今後の制度について」の16ページで少し触れております。結局、派遣就業が継続しているかどうかということを、どういう範囲で見ていくかということです。部署が異動した場合にどうなのか、今の係という単位を同じように見ていくのか、それとも下のほうの「制度のイメージ」では範囲を広く取っているけれども、事業所単位で見るのか、業種単位で見るのかということで、そこはむしろ今後どうしようかという御提案になっています。
○鎌田座長 何かあればどうぞ。
○山川委員 遅れてしまって申し訳ありません。16、17ページの「制度のイメージ」は、有期雇用派遣の受入れが上限年数を超す場合にチェックの対象になって、労使の会議等の判断によって受入れの可否を決定するという形ですけれども、15ページの3は、常用代替のおそれの有無等について、派遣先の労使が判断して、常用代替のおそれがある場合に制限を行うということでした。先ほどのお話にありましたように、一定の修正は施されることになりそうですが、派遣先での常用代替の防止という発想自体は残すということですので、17ページは、派遣受入期間についてどちらがデフォルトになるかは今後の検討に委ねるという書き方だと思います。
 一方で15ページの3は、常用代替のおそれがある場合には制限を課すという仕組みが挙げられております。ここはどちらをデフォルトと考えるかという点とも関わりがあります。何らかの原則的な派遣受入可能期間があって、労使の判断でそれを解除するという枠組みと、逆に、特にデフォルトとしては制限をしないで、常用代替のおそれがあると判断した場合に制限をかけるという枠組みとがある点で、結論的には違いがないことになる場合が多いかもしれませんg、理屈の上では違いがあるような気がします。
 その辺りの仕組み、あるいは労使の会議等の意味については、また今後検討するという形で、17ページのような記載になっていると思います。そうすると、15ページのほうも平仄を合わせた形で、ある意味でもっと単純化すると言いますか、常用代替のおそれの有無については、それがあるかどうかを判断する場合と、ないかどうかを判断する場合の2通りがあり得ますが、それについて派遣先の労使が判断して、例えば有期雇用派遣の受入れについて枠組みを設定するとか、どちらにも選択肢がなお有り得るような形のほうが、17ページとは整合性があるような感じがいたします。
○鎌田座長 今の点についていかがですか。
○富田課長 先生方の御議論次第ではありますが、私どもとしてはできるだけニュートラルな書き方にしたいと思っております。
○鎌田座長 今の点についても、あるいは違う点についても御意見をいただければと思います。
○竹内(奥野)委員 今の山川委員の御発言に関して、具体的な制度の設計として、デフォルトをどちらにするかということに関しては、必ずしもこの研究会で詰めて、どちらというように決め切ってはいないと思いますので、オープンに開けておいて、今後の議論の可能性を残しておくほうが、山川委員の御発言のとおり、望ましくていいかなと。そういう方向性で平仄を合わせておくのが望ましいかなと考えております。これが1点です。
 2点目は、今の話とは全く変わってしまいます。先ほどの常用代替の理解の仕方と関連して、この報告書では触れていないことですし、最終的には裁判所等における個々の紛争事例の判断なので、報告書に書かれる内容かどうかも分かりませんけれども、基本的に、この報告書では有期の派遣労働については利用を抑制する形にして、派遣であるとしても無期雇用で利用される形で、雇用の安定化等を図っていこうという考え方に立っていると思います。それが、この研究会の議論のこれまでの基本的な流れかと思います。
 他方で、この研究会の報告書の方向でも、例えば派遣労働者が希望している限りは、有期で派遣の働き方を続ける可能性は残っているかと思います。この制度設計としては,そういう派遣労働者について、仮に伊予銀行事件のようなケースが生じた場合に、有期労働者の雇止めなどについて、雇用の安定、雇用継続に対する合理的期待を、必ずしも否定するものではないという考え方であるという理解でよろしいでしょうか。
○鎌田座長 雇用安定措置にかかる上限で切られた派遣労働者に対する。
○竹内(奥野)委員 もちろん、一方で有期の派遣については、派遣元が責任を持っていろいろな措置をするという形です。念頭に置いているのは伊予銀行事件のようなもので、報告書の途中でも、保護と代替とは両立しないという例で、伊予銀事件のような場合が挙げられています。そういうケースは、制度設計のこの報告書の中身とはやや別かもしれませんが、現在の裁判例で下されているような派遣先における雇用継続、実際は就労継続ですけれども、その合理性をこの報告書として別段否定するものではないということでの確認です。
○富田課長 そこは法学者の先生方の御意見を賜りたいと思っております。ここで書いている1つの思想としては、派遣元に、もっと雇用安定責任を果たしていただきたいというのがあるわけです。私の読み方が違うかもしれませんけれども、伊予銀スタッフサービス事件においては結局のところ、そこに常用代替防止という目的があるがために、派遣元についても、そんなことは余り考えなくてもいいということがありましたので、それに対しては派遣元も雇用安定措置を講じなければならないということで、一石を投じたという形になっているのではないかと思っております。
○阿部委員 今回のこの報告書では、主に常用代替防止に始まって、有期の労働者派遣について詳しく書いてあるのですが、実は無期の労働者派遣については、余り書かれていないような気がするのです。もちろん無期に全く問題がないわけではなくて、それはそれで派遣元の経営努力とか、教育訓練をするということで、大きな影響はないだろうということではあるのでしょう。ただ、分かりにくいだろうと思うのは、派遣先でどのように期限があるのかないのか、あるいは今ある雇入申込義務をどうするかという点が、何も触れられていないような気がしています。これをここでやるのか、この後どこかでやるのかは、また別の議論なのかもしれませんが、その辺りもしておかないと、後々混乱が起こる余地があるので、無期雇用の派遣についても少し触れたほうがいいのではないかという気はしています。
○鎌田座長 無期雇用の派遣についても、幾つか触れています。この後のキャリアアップの所でも触れていますが、今の御質問に対して先取りをしても結構ですので、御説明があれば、この報告書で触れている部分についていただきたいと思います。
○富田課長 無期雇用については、期間制限の所でも幾つか触れております。まず、対象をどうするかという先ほどの所です。無期雇用の派遣については、11ページの5の(1)の「再構成した常用代替防止規制の対象」で、「今後の常用代替防止においては、無期雇用の派遣労働については、派遣労働の中でも雇用の安定やキャリアアップの点で優位であること、また非正規雇用労働者が拡大する中で、労働市場全体として安定した雇用を確保していく必要性を踏まえ、必要な措置を講じることとしつつも、キャリアアップが可能な働き方の1つとして、これまでの常用代替防止の考え方からは異なる取扱いをしていくことが望ましい」と書いてあります。
 阿部委員がおっしゃるとおり、無批判に全部、無期雇用をいいと言っているわけではありません。12ページの2行目にありますとおり、「必要な措置を講じることとしつつ」ということで、ここは例えばキャリア形成の話や、均衡待遇を講じるといったことですので、無期雇用だからそのままということは、ここでは書いていないと考えております。
 雇用契約の申込義務がどうなるのかということについては、かなり簡単に書いております。例えば18ページの8の「その他」の一番下、最後のパラグラフです。これは注が40条の4だけになっていますけれども、3、4、5の3つと全号だと思います。「なお、現行制度において、派遣可能期間の上限を超えて派遣労働者を使用する場合等に義務付けられている派遣先の雇用契約申込みについては、上記見直しに伴い整理が必要となると考えられる」で触れております。ですから1行目に書いてありますように、上限を超えてということになりますから、無期については上限がかからなくなってきますので、事務局としてはこの義務から外れるというのが、1つの考え方かと思っております。
○鎌田座長 追加的にいかがですか。例えば、積極的にこういった提案ということでも結構です。
○阿部委員 「派遣可能期間の上限を超えて派遣労働者を使用しようとする場合」というのは、有期雇用の派遣労働者に限定されるので、無期雇用は要らないということになるのですけれども、それでいいかどうかというのも、どこかで議論をしたほうがいいのではないかという気もします。皆さんがこれで分かるのだったらいいのですが、私が読んだときには、無期雇用の場合はどうなるのだろうという疑問は持ちました。しかし、これで明らかになりましたので、それはそれでいいのかもしれません。
○鎌田座長 そうおっしゃらずに積極的に、こう考えたらどうかというものがあれば、また後でおっしゃってもいいです。キャリアアップというか、第5以降も残っていますし、議論としては、またもう一度全体に戻りますので。
○木村委員 18ページの2段落目です。「26業務の中に含まれている専門的な知識等」云々で、「無期雇用派遣によって行われていくことが望ましい」とありますけれども、少し丁寧に書いたほうがいいかと思います。これだけを読むと、現在26業務としてやっているものの後継者となる者が無期雇用派遣のように見えて、そうでないものは有期でいいという形に見えるのです。
 これに関する議論は、研究会の中でもいろいろありました。26業務の中で、特に高度な専門性が必要で、特定の派遣先に対してある程度長期間な派遣が必要な業務に関する議論です。長期間といっても、例えば業務に繁閑があったり、フルタイムで派遣するほどではなくて、複数の派遣先を3つぐらい、ずっと長期間にわたって派遣したりしているケースを想定している。そのような場合でしたら、派遣期間の制限をかけることが難しいので、派遣元で無期雇用をした上でという議論だったと思います。
 現在の文章のまま読みますと、26業務だとキャリアアップが必要ですから無期雇用ですが、これでいきますと専門性の低い業務から無期雇用をされて、キャリアアップをして徐々に26業務とか、より高度な専門性へとステップアップしていく派遣雇用のモデルを排除しているように見えてしまうのです。あとは製造部門などで無期雇用をしていくことの重要性といった辺りが、若干軽視されるような気がしますので、26業務イコール無期雇用派遣ではなくて、無期雇用派遣にも様々な形が有り得るとか、そういったことも併せて書かれたほうが誤解はないかと思います。
○鎌田座長 今の発言の中で、事務局に確認したいことはありますか。
○木村委員 今申し上げたようなことを、もう少し長く書いていただければ十分かと思います。26業務のその後が無期雇用に見えないようにという形です。
○竹内(奥野)委員 形的には作文と言ったら申し訳ないのですけれども、これはもう本当に報告書の文章の書き方によります。中身というか、形的なところに近いかもしれませんけれども、10ページから11ページにかけてです。例えば10ページの(1)の3段落目、「また、仮に」とか、11ページの「以上で検討したとおり」の3行目ほどで、経済活動や事業活動についての影響の点が触れられています。報告書としては「基本的な視点」という5ページ以降のところで、派遣労働者の保護や雇用の判定、キャリアアップ、あるいは分かりやすさという観点で書かれております。
 このような言及というのは、確かにこういう観点も有用だという形で書かれているかと思いますけれども、そもそもこの段落はなくてもよろしいのではないでしょうか。そのほうが、むしろ基本的な視点に沿って報告書が書かれていることが明確になります。また、そもそも労働法関連の立法で、こういうことに手出しできることではないのではないかというところもあります。ですから,個人的には「また、仮に」という段落とか、それに対する「経済活動に与える影響」という所は、削除してもいいのかなという気がいたしますので、御検討をよろしくお願いいたします。
○鎌田座長 確認を含めて、何か発言はありますか。
○富田課長 ここは先生方の御希望次第だと思っています。これは必ずしも労働者派遣の法律の論文とは思っておりません。やはり制度を見直すに当たって、経済活動への影響といった辺りは、当然考慮しなければいけないという意味で、なおかつ、派遣と言っても三者構成で、派遣元の話と派遣先の話がありますので、10ページの「また、仮に」という所については、派遣先の観点から書かせていただいているということです。委員の先生方が不適切だということであれば、もちろん削除いたしますが、そこは皆さんの御議論をお願いしたいと思います。
○鎌田座長 私はあってもいいのではないかという感じがしますけれども、検討させてもらいます。
○山川委員 先ほどの竹内委員からの御質問の件です。雇止め法理といいますか、現在で言うと労契法19条が、もし仮にこのような制度に変わった場合に、どういうように適用されるかという点です。先ほど課長がおっしゃったように、まず、派遣元に雇用安定措置を講じさせるということが採用されると、その影響が雇用継続への合理的期待のところで生じてくると思います。雇用安定措置の中身にもよりますが、新制度案のイメージ図ですと、例えば派遣先のほうに派遣元から直接雇用の申込みを行うというか、要請するということだと思いますが、それが直接契約上の効果を持つかについては、仕組み上、なかなか難しいように思います。
 雇用安定措置というのは、いわゆる措置義務として私法上の効力とは別であるのかなと想定します。そうだとすると、直接契約上の効果が生ずることはないのですけれども、例えば無期雇用というのも雇用安定措置に含まれます。いずれにしても雇用の安定を措置することが派遣元に対して義務付けられるという法政策を採用することが、雇用継続への期待へのインパクトとなる。あとは雇用形態というか、契約形態がどうなるかという個別的な事情によります。裁判所の判断することですから、何とも言えない部分はありますけれども、少なくとも雇用の継続への合理的期待を基礎づける、1つの根拠になり得るのではないかと予想されます。
○富田課長 今の観点で1つだけ申し上げます。雇用安定措置として3つ書いております。山川委員がおっしゃったとおり、派遣先に申入れをすることです。16ページの下、「制度のイメージ」のイの2行目から、「派遣先への直接雇用の申入れ、新たな派遣就業先の提供、派遣元での無期雇用化等のいずれかになっております。しかし直接雇用の申入れは、申し入れただけで終わってしまうと、雇用継続の期待がそれほど働かないおそれがあります。派遣先に「嫌だ」と言われれば、それで終わってしまいますので、ここは先生方の御了解を得られれば、その場合は新たな派遣就業先の提供か、派遣元での雇用化のほうに移るようにさせていただければと思っております。
○鎌田座長 よろしいですか。また戻りますが、次のパートについての御説明をお願いします。
○亀井補佐 続きまして、最後のパートについて御説明いたします。18ページ以降です。18ページの下、第5の「派遣先の責任の在り方について」です。この論点については、派遣先の責任の在り方として、派遣先に派遣労働者による団体交渉への応諾義務を課し、法律に明記すべきという御意見を頂いております。
 19ページ、この論点については、判例や中労委の命令において、一定の場合に雇用関係上の使用者でなくとも、この応諾義務の使用者性を認めたものがあるということを御紹介させていただいております。次の段落にあるように、雇用主以外の事業主に団体交渉の応諾義務があるかどうかということは、やはり、個別の案件ごとに判断することが必要であると。したがって、事例ごとに誰が団交応諾義務を負うのか否かは、労働委員会又は裁判所において判断がされるということから、最後の雇用主以外の使用者性については、これは派遣に特有の話ではないと。また、ここに挙げている親会社・子会社関係、更に下請け関係などにおいても類似の構造があることから、派遣法の範疇で対応すべきではなく、労組法の枠組みの中で考えていくことが適当であるということでまとめております。
 続きまして、第6の「派遣労働者の待遇について」です。まず1番として、均等・均衡待遇です。こちらは常用代替防止の方策としても先ほど触れておりましたが、ここで詳しく御説明いたします。
 まず、均等・均衡待遇について、欧州においては、均等待遇が採用されていることから、我が国においても導入すべきという御意見が各方面から寄せられております。しかしながら、欧州と我が国においては、様々異なる点がありまして、課題が多いということを述べております。大きくは、賃金の決定の在り方が違うと。欧州においては、外部において職種別賃金が決まっているが、我が国においては、内部労働市場で決定されている一方で、派遣は外部労働市場において料金が決定されると。そのために、大きく2つの課題があり、比較対象をどうするのかということと、派遣先と派遣労働者を比較した場合、同じ派遣元で雇われている派遣労働者の間で待遇の差が生じかねないなどの課題があるという留意点があります。
 一方、均衡待遇については、平成24年改正によって一定の措置がなされております。次のページですが、こちらについては、今申し上げたような課題を踏まえつつも、進めていくべきであるという方向です。均衡待遇を進めることによるメリットに触れておりますが、派遣労働者の方の待遇の改善につながることはもちろんですが、派遣先にとって、好ましくない安価な労働力であるからということでの利用を抑制する効果もあるということを挙げております。
 均衡待遇を進めていく上で必要な取組については、「一方で」の部分です。派遣先の更なる協力が必要であるということです。具体的には3点あります。賃金、教育訓練、福利厚生施設について、派遣先に更なる協力を求めてはどうかということを書いております。
 最後の段落、均衡待遇に配慮していただく1つの仕組みとして、パートタイム労働法にあるように、派遣労働者の方の待遇の決定においてどのようなことを考慮したか、という説明義務を派遣元に課すこともあるのではないかということでまとめております。
 2番、労働・社会保険の適用促進については、方向としては、他の非正規と比べて高い水準にあるが、一部には加入させずに派遣を行っている所もあることから、一層の加入促進が望ましいと。次のページ、具体的には派遣先が加入状況を確認する仕組みが有効であると。現在も指針にその旨の規定がありますが、これを法的に位置付けるという対策が適当であるということでまとめております。
 第7、「派遣労働者のキャリアアップ措置について」です。キャリアアップの定義について、4ページに一旦お戻りください。注6において、この報告書においてキャリアアップをどういう意味で使っているかという紹介をしております。
 ここでは職業能力の向上が図られることはもちろんですが、職業上の地位や賃金等の処遇の向上等が図られることも含めた概念として使っております。21ページ、キャリアアップ措置の必要性については、先ほど常用代替防止のところでも申し上げましたが、個人に対する防止策として、一定の制約を課すとともにキャリアアップを図っていくということを御説明しました。1段落目は、派遣労働という働き方が、入職のしやすさを中心として、キャリア形成上の良い面もあると。しかしながら、実際には活用されていないという問題意識にも触れた上で、今の仕組みのままでは、派遣元にも派遣先にも、労働者のキャリアアップに努めるインセンティブが働きにくい。したがって、何らかの仕組みを設けて、これを促すことが必要であるということです。
 具体的には、2番、キャリアアップの責任を主に誰に課すのかということですが、職業能力開発促進法に規定があるとおり、やはり、派遣元が負うことが基本であるということが第1段落目です。第2段落目に、具体的な取組を挙げておりますが、大きく許可要件に盛り込むことによって、取組を促すことが適当ではないかと。具体的には、許可要件の中に、派遣元がキャリアアップ措置を行う体制と計画の2点が整備されているかどうかということを盛り込むということです。こうすることによって、「例えば」で紹介しているように、キャリア・コンサルタントの資格を有する相談員を置くとか、相談に応じる体制、具体的な取組の展開が図られるようになるということです。
 一方、一般派遣事業者であれば許可制なので事前に確認できますが、特定においても、届出のみで事前の確認はできないのですが、キャリアアップの必要性については、特定を無期雇用にそろえるとすれば、より派遣労働者に対して長期的な視野に立ったキャリア形成を図るべきでありますので、事業報告などによって事後的にキャリア形成の取組の確認をすることが適当であるという形でまとめております。
 なお書きについては、これまで有期雇用について御説明してきましたが、無期雇用についても期間制限を課さないという形で常用代替防止のところで申し上げました。これは無期雇用というのが、雇用の安定はもちろんながら、キャリアアップも図られやすいという前提の下に期間制限を課さないとしている考え方ですので、派遣元事業主の責務としては、無期の方々についてどういったキャリア形成を図っていくのか、ということを労働者の方と相談しながら取り組んでいくことが望まれるということに触れております。
 ここからは派遣先の協力の話です。派遣労働者のキャリアアップを図っていく上で、派遣先に幾つか御協力いただくことが必要ではないかと。1つ目に、派遣労働者の職務遂行能力の評価です。この評価結果を派遣元に提供することによって、派遣元が対象労働者のキャリアアップにこれを活用する。また、評価に加えて、派遣先などにおける直接雇用の推進措置も講ずることが適当であると。具体策の例としては、派遣先において、直接雇用の募集が行われる場合には、他の就業中の方にそうした応募の機会をしっかりと提供することがあるのではないかということです。更に、現在ある紹介予定派遣という仕組みは、キャリアアップのツールとして有効に活用でき得ることから、周知・啓発によって更なる利用促進を図るべきであるという内容にしております。
 3番、国や業界団体の役割が重要であるということです。個々の企業においては、キャリアアップに取り組むインセンティブが少ないので、国や業界団体が個々の企業に共通するような仕組みの整備、支援などによってバックアップすることが必要であるということを述べております。
 最後の23ページです。「その他」の論点についての検討を行っております。1つ目の特定目的行為の在り方については、初めに、現在禁止されている理由を述べております。これは事前面接などを認めると、派遣先が派遣元の雇用主としての地位に関与することになるので、現在は禁止されているという説明です。しかし、派遣元で無期雇用されていれば、仮に事前面接を行ったとしても、もともとの派遣元との雇用関係には影響しないと考えられることから、派遣元で無期であれば、この対象から除外してはどうかということです。
 一方で、無期以外の有期の方々については引き続き認められるべきではないかと。なお書きについては、仮に無期の方にこうした事前面接を認めるとしても、一定のルールの下で適切に行うことが必要である。具体例としては、複数お招きして選ぶようなことは認められないとか、年齢や性別による差別、個人情報の取扱いなど、一定のルールが必要であるという内容です。
 指導監督の在り方については、派遣事業の健全な発展と派遣労働者の保護と雇用の安定を図っていく上では、良質な派遣事業者が増えることが必要である。更には、悪質な事業者が淘汰されることも必要であるという基本的な認識を示した上で、「一方で」の部分、現在の課題として、無許可・無届での悪質な事業者に対して、刑事告発以外に打つ手がないと。速やかに事業停止命令を発するということが現在できない。こうした無許可・無届の事業者に対する指導監督の強化、事業停止命令やその他の方法による監督を強めるといったことを検討してはどうかと。
 さらに、一般労働者派遣事業については、1回目の許可の更新の際に、許可する際に審査した事業運営体制についての実質を確認する方法もあるのではないかということです。なお書きの部分は、優良な事業者を伸ばしていくべきという話で、優良認定制度などを使って推奨していく、顕彰していくことが望ましいという内容です。
 24ページ、平成24年改正法による改正事項についての整理です。まず、1つ目の段落で、基本的な姿勢を示しており、平成24年10月施行の改正派遣法については、様々な仕組みが新たに設けられて、各方面から正に様々な意見が出されております。まずは円滑な施行に努めて、施行状況についての情報の蓄積を図ることが重要であるというのが基本的なスタンスです。
 労働契約申込みみなし制度については、期間制限違反と絡めた仕組みとなっておりますので、これまで申し上げてきたような期間制限の在り方が見直された場合には、その範囲で要件変更が必要ではないかということを述べております。日雇いの原則禁止のルールについては、賛否両論があると。労働市場の迅速なマッチング機能、こうした働き方を利用する方の雇用の機会を奪っているという意見もあれば、一方、日々紹介に移行することによって責任の所在がはっきりしたという肯定的な意見も出されております。このような様々な御意見があることを踏まえた上で、議論の必要性も含めて労政審において御判断いただくことが適当ではないかということでまとめております。以上です。
○鎌田座長 それでは、今、御説明があった部分について御質問、御意見をお願いいたします。
○竹内(奥野)委員 度々すみません。ここで1点申し上げます。18ページから19ページにかけて、第5「派遣先の責任の在り方について」と表題はなっているのですが、中身はもっぱら団体交渉との関係で,派遣先の労組法7条にいう使用者性があるかどうかという話ですので、表題を「派遣先の労組法7条における」とか、「団体交渉についての使用者性の在り方について」とか、中身と一致するように修正をいただければと思います。
 あと文章の中身で、19ページの上のほうですが、「近年の中労委命令においては、派遣労働者を受け入れている派遣先について一定の場合に使用者性を認めたものがある」という形でショーワ事件が書かれておりますが、これは一般論としてそういうふうな余地があり得ると言ったことを書いているという趣旨ですか。これは、同命令が,使用者性を結論としては否定していますので、そこは間違いのないようにお書きいただければと思います。以上です。
○富田課長 竹内委員のおっしゃることはもっともでございます。ただ、表題については工夫させてください。これは派遣先の責任の在り方は改正法の附則に、「これは検討せよ」と書いてあるので、その表題を使いつつ、括弧して、例えば使用者性の話とか、そういうことを書かせていただきたいと思います。
○竹内(奥野)委員 そこは工夫していただければと思います。
○富田課長 もう1つの点については、紛れがないように直したいと思います。
○鎌田座長 そうですね。おっしゃるように団交応諾に特化した形ですが、派遣先の責任については、この研究会もそうですし、前の平成20年の研究会でも議論されておりますし、少し加えたような形で整理をしたほうがいいかと思います。必ずしも派遣先の責任の在り方の議論というのは団交だけではないのです。ですから、そういったところも少し含めて。私の記憶は、はっきりしていないのですが、研究会で他の問題についてもどこかで触れたような気がします。それは確認しながら。あとほかにありますか。
○阿部委員 しつこいのですが、先ほどの続きで、22ページで無期雇用派遣について書かれていることはよく分かったのですが、第40条の4はなくてもいいというのはよく分かりましたし、それは一番最後の所にもそういうふうに書いてありますので、それはいいのですが、第40条の5をどうするか。これは引き続いてそのまま置いておくのか、それとも見直すのかというのは明確にはなっていないので、どうするかということです。厚生労働省のホームページでは、第40条の5は特定労働者派遣であっても、その派遣先企業で新たに雇用するというような場合には、既に働いている派遣労働者に雇用の申込みの義務があるということだったと思うのですが。
○宮川部長 この規定は、今回の無期・有期の問題とは一応別の発想で作っていたものですので、ここのところが決して有期雇用だから無期雇用だからという、もともとの発想で作ったものではないという趣旨からすると、まず、制度的な枠組みを決めなければいけないのです。制度的な枠組みに応じて、全体の条文のどこが影響を受けるのかというときに、今、阿部先生がおっしゃったように、第40条の5をどうするかは真剣に検討しないといけないかと思います。ですから、そういう意味で、今の時点では結論めいたことは申し上げませんが、ただ、そうは言っても、作ったときには有期・無期、関係なく作ったというのは間違いのない事実です。
○阿部委員 私は個人的な感想というか、意見を申しますと、これは皆さんであとで議論していただければと思うのですが、派遣という性格上、今、働いてもらっている部署で、新たに雇おうとするのであれば、やはり、その方に最初に声を掛けるべきではないかと思います。そうでないと、この人が派遣で来ているのに、何で新たに同じような仕事に就く人を雇わなければならないのか、という説明をしないといけないと思うのです。つまり、もう派遣ではなく、直用にしたほうがいいという判断がどこかであるからそういうことをするわけであって、その場合には雇入れの申込みがあっても然るべきではないかと思います。これは私の個人的な意見です。
○宮川部長 訂正いたします。その後、前回の改正で、無期労働者は外したということです。すみませんでした。
○阿部委員 そうでしたか。
○富田課長 第40条の5は但書がありまして、但し、当該同一の派遣労働者について別に通知があった場合、この人は無期雇用ですと通知があった場合には、新たに雇い入れるときの申込み義務は発生しないと書かれています。
○阿部委員 分かりました。ごめんなさい。混乱していました。派遣受入れ期間の制限のない業務は第40条の5ですよね。ですから、その人に期間があっても、受入れ期間の制限がない業務について申込み義務というのはあるので、企業側が3年を超えて雇っているということは、期限のない業務に就かせているわけであって、無期雇用の方たちはそれに該当するのではないかと考えたのですが、私の考えが間違いでしょうか。
○宮川部長 第40条の5を作ったときに、あまりそのときは有期・無期、関係なく作ったのですが、その後の議論で、元で無期にもかかわらず、新たな労働者を雇い入れたときには、当該労働者に対して労働契約の申込みをしなければならないという義務まで派遣先に課す必要があるのかどうかという議論がありまして、そこで無期労働者については、そういうものはもう必要ないだろうという形で、確か前回整理されたというところです。
○鎌田座長 報告書のレベルで、実はこの報告書の方向で考えるとなると、手を入れなければいけない条文というのは、結構たくさん出てくるのです。それは実を言うと、この段階では細かいことまでは考えずに、言わば大きなメインストリートというか、大きな方向性を考えようということでまとめています。今、阿部さんがおっしゃったのは、基本的には無期雇用が望ましくない利用のされ方をしないような形での、現在の法制度として何かないだろうか、例えば、第40条の5はどういうふうに考えたらいいのだろうかという、そういう問題提起として私は受け取っています。もしそうであれば、今度の細かな議論が、労働政策審議会の中でも恐らく出てくるかと思いますので、そこのところで幾つかの条文との整合性を図りながら議論していただければいいのかと私は思います。問題意識として受けたというか、何らかの形で文章に、もしできるようだったら反映させてもよろしいのですが。
○阿部委員 もちろんそうですが、混乱しているのですが、今回、私も整理し切れていないのですが、無期雇用は常用雇用の代替から外しているわけですが、その辺りをどう考えるのかと関連するのだろうと思っているのです。実は第40条の5というのは、もしかしたら常用雇用との代替を制限するために置かれているものであって、そのことをどう考えるかということは、無期雇用を外すのであれば、第40条の5を外しても構わない。いや、そうではないと。やはり、派遣先ではそういう考え方は残っているということであれば、第40条の5は今後も適用してもいいと思うのです。実際、今回、無期雇用・有期雇用とあるだけではなくて、人で考える部分と、仕事で考える部分と分かれてきているので、実はちゃんと整理がついていないのではないか。私の中では、少なくともまだその辺は混乱しているところです。
○宮川部長 もともとこの規定は何であるかというと、実は26業務を前提としての議論なのです。ですから、26業務を廃止してしまえば、第40条の5というのは、本来、拠って立つところがなくなるはずなのです。
○阿部委員 分かります。
○宮川部長 ですから、もともと第40条の5のようなもので、3年も受け入れている派遣先が誰かを雇おうとするときに、様々な労働条件があります。働き方も違いますし、派遣労働者がそれを受け入れるかどうかは分かりませんが、少なくとも契約の申込みだけは義務付けますよと。それを派遣労働者が受け入れるかどうかは派遣労働者の自由ですと、こういうセットの仕方をもともと15年改正のときにやらせていただいたのです。ただ、そんなことまで無期労働者についてはやる必要はないですよねという形で、前回の改正で、既に無期労働者は外している形になっているのです。ですから、いわゆる26業務の制度がなくなってしまえば、もともと拠って立つところのものがどうなるかというのは、正にこれを今後議論しなければならないという話になるのです。廃止するのか、それとも新たなものに作り変えるのか、今みたいなものを引き続きやるのか。そのときに無期労働者についてはどういう扱いをするのかということも併せて考えるべき問題ではないかと思います。
○阿部委員 人では無期雇用・有期雇用とあると。一方で、仕事のほうでは3年というのがあって、そこで従業員と使用者側が交渉するというような、簡単に言えばそうなのです。やはり、3年というのがあるような感じになっていて、しかし人の無期のところは外せるかと言ったときに、その辺りの人と仕事というのをどうするのか。
○宮川部長 そこのところは逆に言えば、派遣先における直接雇用ということを優先的に考えるかどうかというのが、今回、雇用安定化措置として3つの措置を提案しておりますが、そのうちの派遣先での直接雇用、それから派遣元での無期雇用、ほかの派遣先を探すという、この中に優先順位を付けるかどうか、要は派遣先での直接雇用が重要というのであれば、第40条の5みたいな規定を残しておきますし、更に言えば、もう1回無期労働者に適用すべきかどうかという議論は論理的には成り立つかもしれません。そういう意味で言えば、今回の26業務を廃止するという、大きな根本的なことをやった上で、それに派生してできていた制度をどうするかという問題ではないかと思います。
○鎌田座長 今のお話で整理していただいたことで、そのとおりなのです。ただ、阿部先生がおっしゃったのは、無期についても、直接・間接雇用の問題ということが、十分にそれで解決つかないのではないかという問題意識なのですね。一応、無期を切り離してみたけれども。
○阿部委員 はい。
○鎌田座長 この報告書の考え方としては、多様性を考えた場合に、常に派遣先に受け入れるのがあるべき姿というふうに整理できるかどうか、そこが問題ですよね。
○阿部委員 そうですね。
○鎌田座長 一応、そういうことでこの報告書のベースとしては出来上がっているのかと私は思っています。
○阿部委員 ほかのところで議論するのかもしれませんが、可能性としては、個人が無期だったら、もうずっといいというふうにしておくということもあるかもしれませんが、それでもやはり3年という期限を切って、その無期雇用の人についても労使で相談するというのも、姿としてはあるかもしれません。それで、直接雇用がいいのか、間接雇用がいいのかというのをしっかり話し合って考えてもらう。
○鎌田座長 その場合の労使というのは、派遣先ですよね。
○阿部委員 派遣先の労使です。派遣元ではないです。
○鎌田座長 そうですよね。しかし、直接云々というのは、派遣労働者の利害が第1にくるのではないですか。
○阿部委員 もちろんそうです。
○鎌田座長 そうすると、労使の労というのは、やはり派遣労働者でないと平仄が合わない。
○阿部委員 ああ、そうか。
○鎌田座長 飽くまでも派遣先における常用代替防止の問題なのです。しかし、阿部さんがおっしゃっているように、第40条の5というのは、そういう趣旨で出来上がったものではないのですが、無期雇用労働者に関わって、別途新たな仕組みとして再編するというのはあり得るかと思います。ただ、それはいわゆる本体が変わった上での話なので、本体が変わらないところで細かな話をしても。
○阿部委員 議論してもしょうがない。
○鎌田座長 そうなのです。というふうに私は思っているのです。
○阿部委員 分かりました。
○鎌田座長 あとほかにありますか。
○小野委員 21ページからの「キャリアアップ措置」についてですが、今回の報告書の中では、法に反映させるという意味では画期的な部分というふうに私は思っております。非常によく書かれておりますし、2ページにわたっていますが、教育訓練、能力開発、あるいはキャリア形成というのは、フワフワしていて柔らかい感じがして、読めば快く耳に響くのですが、心にずしんとこないというのが1つのポイントでもあるのです。
 26業務が今回なくなって、いわゆる付髄的業務とか、ある意味派遣会社さんが、これまでものすごく時間をかけて苦しんでやってこられたようなパワーを、このキャリアアップのほうに注いでいただきたいのです。ですから、もう少し具体性を持たせた書きぶりにしていただければと思っております。
 特にキャリアアップ措置のところから、1ページほど割かれているのですが、私が読むと非常にきれいに書かれてはいるし、ポイントもついてはいるのですが、恐らく私がこういう仕事をしているので、なるほどと思うのですが、派遣会社や派遣労働者の方が読んだときに、もう少し具体的に書いてあったほうがよいかと思います。例えば、派遣元、派遣会社のやるべきことは、Off-JTになってくるので、そのOff-JTがどうあるべきかということです。
 また、22ページの3段落目の「一方で」というところで、派遣先の協力について書いてあるのですが、5行ぐらいしかありません。ですので、ここはもう少し書き込んでいただきたいと思います。というのは、これをもって派遣会社は、派遣先に協力してくれと言わなければいけなくなると思うのです。なぜ協力しなければならないのかという、派遣先の抵抗に対して、派遣会社がちゃんと応えられるような書きぶりにしてほしい。派遣先の協力がなければ実質的なキャリア形成はできないと思います。つまり、OJTがいかに派遣労働者にとって重要であるか。派遣先での仕事の与え方というのがいかに労働者のキャリアにつながってくるかというところを、もう少し書き込んでいただければと思います。
 ここには書いてないのですが、期間設定の話について、係ではなくて課を異動することによってその期間が継続する可能性も出てきます。キャリア形成というのは、正社員のキャリア形成もそうですが、部署を異動することによってキャリアが形成されていくということもありますし、職域が拡大することによってキャリアが形成されていくこともあります。今回の案の中には、職域の拡大が可能になるということを、キャリア的な視点で課を異動することによって、キャリアが形成できるように仕組んであるということについても、少し言及して書いていただければと思います。以上です。
○鎌田座長 多少書いてあるという認識でいるのですが、御説明をお願いします。
○富田課長 1点だけ確認したいところがあります。派遣先のキャリアアップにかかる責任については、職務遂行能力の評価の協力ということだけ書かせていただいていたのですが、それ以外にどこまで書くのかというと、実は、事務局的には少し悩んでいるところがあります。要するに、キャリア形成の責任というのは雇用主ではないかという気持ちもあるのです。派遣元の責任ではないのかと。それを派遣先がどこまでやるのかと。それで1つは均衡待遇というので、業務をやるときに、同じように業務ができるようにしようという観点での教育訓練というのはあると思うのですが、それを超えて派遣先が、この人はもっと伸ばしていかなければいけないから教育訓練をするというのが、ちょっとイメージが分からなかったので、もし具体的に、こういうのがあるのではないかというのを御教示いただければ書かせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○小野委員 ありがとうございます。恐らく評価をするということは面談をすることになるので、例えば、この人についてはこういう仕事をお互いにさせて、こういうキャリアを伸ばしていこうというような、派遣元と派遣先、そして派遣労働者の合意に基づいたキャリア形成の面談という感じですかね。期初と期末に三者で面談をして目標設定をして評価を行う。それぐらいは、派遣先にも協力してもらえるのではないかと思うのですが。ただどこまで具体的に書くかですね。
○木村委員 関連した話です。積極的に派遣先が何かをやるという話とは少し違うと思うのですが、例えば、期間制限があって、課を移るとか、部を移るというときに、その異動の理屈がキャリア形成しないまま横に動かすという形のものは駄目ですが、課が動くだけであっても、キャリア形成につながるようなことであればよいという、課とか組織体を考える1つのロジックとしてキャリア形成を入れ込むとか、そういったことで、派遣先が派遣労働者を育てるというわけではないのですが、派遣労働者の育成を邪魔しないとか、そういう視点もあるかと思います。
○山川委員 同じく関連して、これまでの研究会の中で26業務とそうでないものとの区別があることによって、キャリアアップへの支障が生じる場合があるというお話が出ていたかと思います。その辺りがもし事実であるとしたら、26業務かどうかの区別をしないようになることで、その1つのメリットとして、この区別が実際上使いにくいということに加えて、キャリアアップの機会も図り得るのではないか。これは7ページから8ページの「26業務の在り方について」に書かれていたのとは別の視点かもしれませんが、キャリアアップの機会も図れることになるという点を1つ挙げてもよいのではないかという感じもいたします。
○鎌田座長 よろしいですか。御意見を幾つかいただいております。既に全体を見通したような、全体に関わる御質問なり、御意見が出ていると思いますので、更に全体を戻ってみて御意見をいただければ有り難いです。
○竹内(奥野)委員 全体でも何でもなくて、最後のほうの点でもよろしいですか。これは具体的にここでどうしたら、こうしたらという話ではなく、全くの個人的な意見です。23ページの第8の1、「特定目的行為の在り方について」で、無期雇用についてはいろいろとルールを設けつつ認めるべきという話がありまして、ここで申し上げても全く個人的な意見ですし、具体的にこの報告書で対応をいただくことでもないかもしれませんが、認めるとしてもルールをどう設けるかについては相当慎重に議論をしたほうがいいというのが個人的意見です。
 例えば、「年齢や性別による差別の禁止」というのがありますが、これまでの実際上の問題視された事例を踏まえると、容姿による選別が適切かどうかといった点、また,それ以外にも,こんなのは駄目なのかとか、いろいろ考えていく必要があると思います。どういうふうな方向に進むかは今後の議論でしょうが、慎重に議論をする必要があるというのが,個人的な意見です。
○鎌田座長 ありがとうございます。これだけの内容ですので、恐らく言い尽くせないところ、更に、改めてこういう意見があるということもおありになると思いますので、次回は報告書を取りまとめるという方向で、次回までに先生方には言い足りなかった点、新たにお気付きになった点を事務局なり、私なりに御指示をいただくということでよろしいでしょうか。次回は、今ここに提示された素案をベースに最終報告書案を完成させたいと思っております。そのように進めてよろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○鎌田座長 それでは、そのように進めたいと思います。先生方から本日頂いた御意見、後ほどお示しくださるであろう御意見を基に、私と事務局で最終案を作成して、それは期日前にお送りする形で御意見を頂きたいと思います。そのようなことで、進めたいと思いますので御協力のほどよろしくお願いいたします。本日はこの辺りで終了といたします。次回の日程について事務局から連絡をお願いします。
○亀井補佐 次回は8月20日(火)15時から、場所は12階職業安定局第1・第2会議室を予定しております。なお、今、座長からお話がありましたように、次回までに御意見を更にお寄せいただくという作業の〆切等については、後日、御連絡をさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
○鎌田座長 御意見があれば、1週間以内ぐらいでいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、これをもちまして本日の研究会を閉会といたします。ありがとうございました。


(了)

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