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2013年8月20日 第2回日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会 議事録
健康局がん対策・健康増進課栄養指導室
○日時
平成25年8月20日(火)
14:00~16:00
○場所
厚生労働省専用第22会議室
○出席者
構成員<五十音順・敬称略>
宇野 薫 (株式会社タニタヘルスケア/ネットサービス推進部 管理栄養士) |
江頭 文江 (地域栄養ケア PEACH厚木 代表) |
岡村 智教 (慶應義塾大学医学部 衛生学公衆衛生学 教授) |
佐々木 敏 (東京大学大学院 医学系研究科 教授) |
幣 憲一郎 (京都大学医学部附属病院 疾患栄養治療部 副疾患栄養治療部長) |
鈴木 一十三 (株式会社ローソン マーケティングステーション 部長) |
高田 和子 (独立行政法人 国立健康・栄養研究所 栄養教育研究部 栄養ケア・マネジメント研究室長) |
高戸 良之 (シダックス株式会社 総合研究所 課長) |
武見 ゆかり (女子栄養大学 食生態学研究室 教授) |
田中 啓二 (公益財団法人 東京都医学総合研究所 所長) |
田村 隆 (つきぢ田村 代表取締役社長) |
中村 丁次 (神奈川県立保健福祉大学 学長) |
伏木 亨 (京都大学大学院 農学研究科 教授) |
藤島 廣二 (東京農業大学 国際食料情報学部 教授) |
藤谷 順子 (独立行政法人 国立国際医療研究センター病院 リハビリテーション科 医長) |
八幡 則子 (パルシステム生活協同組合連合 事業広報部 商品企画課 主任) |
渡邊 智子 (千葉県立保健医療大学 健康科学部 栄養学科 教授) |
事務局
佐藤 敏信 (健康局長) |
椎葉 茂樹 (がん対策・健康増進課長) |
河野 美穂 (栄養指導室長) |
芳賀 めぐみ (栄養指導室長補佐) |
○議題
1.開会
2.議題
(1)日本人の長寿を支える「健康な食事」について
<健康領域(疾病予防、超高齢化社会を見据えた高齢者の食事)>
(2)その他
3.閉会
○議事
○河野栄養指導室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより「第2回日本人の長寿を支える『健康な食事』のあり方に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様方には、御多忙のところ、またお暑い中、御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
まず、前回御欠席の構成員を紹介させていただきます。
京都大学大学院農学研究科教授、伏木亨構成員でございます。
○伏木構成員 伏木でございます。
前回は大学院の集中講義がありまして、やむなく欠席させていただきました。
私は、食べ物の嗜好性、あるいは食べ物の文化ということに大変興味がありまして、そういう研究を行っています。
最近は、食べ物も情報というのが大変大きなファクターになってきまして、極端なことがいっぱい起きてまいりますので、こういう委員会は大変大事だと思って、参加させていただきます。よろしくお願いします。
○河野栄養指導室長 なお、本日、大竹構成員、生源寺構成員、田中延子構成員、原田構成員におかれましては、御都合により御欠席です。
引き続き、7月の人事異動に伴い事務局にも交代がございました。
健康局長に新たに着任いたしました佐藤より一言御挨拶申し上げます。
○佐藤健康局長 皆さん、こんにちは。
ただいまお話がありましたように、7月2日付で前任の矢島の後を受けまして健康局長に参りました佐藤でございます。改めましてどうかよろしくお願いします。
本日は、夏の暑い中、またお忙しい中お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。
私自身も7月2日に来まして、1カ月以上も間があいて初めて御挨拶をさせていただく先生も多いかと思います。この検討会の内容につきまして担当からも聞いておりますけれども、新しい食生活のあり方、あるいは健康な食事、健康長寿との関係から見直すということで、大変野心的な内容ではないかと考えております。
ちょっとおくれて参上したかなという感じではございますが、その中で、きょうは各領域の構成員の方々からトピック的な話題提供をいただくと聞いておりまして、これから検討会がいよいよ本格化するものと思います。
限られた時間ではございますが、どうか御熱心に御討議いただきますようお願いをいたしまして、簡単ではございますが、私自身の挨拶とともに、冒頭の挨拶にかえさせていただきます。どうかよろしくお願いします。
○河野栄養指導室長 続きまして、資料の確認をさせていただきます。
お手元の配付資料でございますが、議事次第、座席表、構成員名簿をおめくりいただきまして、資料1が岡村構成員提供資料の「循環器疾患の予防の観点から、日本人の食事を考える」。
資料2としましては、幣構成員提供資料の「糖尿病の『発症予防』と『重症化予防』の観点から、日本人の食事を考える」。
資料3としまして、高田構成員提供資料の「超高齢化社会を見据えて、高齢者がよりよく生きるための日本人の食事を考える」。
資料4としまして、「日本人の長寿を支える『健康な食事』の概念整理に向けた枠組みと論点(案)」となってございます。
あわせて、構成員の先生方の机上には黄色の紙ファイルに第1回検討会の資料を置かせていただいております。このファイルにつきましては検討会終了後、回収させていただきます。
これ以降の進行につきましては中村座長にお願いいたします。
○中村座長 それでは、今回は、日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方について、健康領域から3名の構成員より話題提供をいただきます。岡村構成員、幣構成員、高田構成員の順にそれぞれ20分程度御発表いただき、その後、質疑、議論を行いますので、よろしくお願いいたします。
では、最初に、「循環器疾患の予防の観点から、日本人の食事を考える」というテーマで岡村構成員から御発表をお願いいたします。
○岡村構成員 それでは、よろしくお願いいたします。慶應大学の岡村と申します。
お手元の資料1をごらんください。まず最初のページを開いていただけたらよろしいかと思います。
一番最初にありますのは、1965年の日本人と日系アメリカ人における循環器疾患の頻度をあらわしています。
「JAPAN」と書いてあるのが日本に住んでいる日本人ですが、特徴的なのは、脳卒中が非常に多くて、心筋梗塞などの虚血性心疾患が少ないことです。
ハワイに行った日系人の方は、この比率がほぼ同数ぐらいになります。
「CALIFORNIA」と書いてあるのはサンフランシスコになりますが、そこに行っている日本人というのは虚血性心疾患と脳卒中が逆転しているということで、これは有病率の比較研究なのですが、この当時から日本人は脳卒中が多くて、アメリカ人は心筋梗塞などの虚血性心疾患が多いという状況があったということになります。
その後、御存じのように日本では脳卒中が非常に大きく減ってまいりました。減ってまいりまして、それが国際的にすごい低くなったかというと、そういうことにはまだなっておりませんで、その下に2000年前後の日本と、ヨーロッパの代表としてのフランスと、アメリカの脳卒中の死亡率の比較を持ってきておりますけれども、男女とも極端に高いということはないのですが、フランスやアメリカと比べると、脳卒中の死亡率というのはこの時点でも高い。ただ、これでも5分の1とか、かなり激減してこの状態になった。だから、それ以前はもっと脳卒中が多かったということに御留意いただきたいと思います。
日本人の脳卒中が減った理由というのは幾つかあります。
3ページの上に「日本人男性の年齢別収縮期血圧値の推移」というものを示しております。年代によって血圧は違いますので、30代、40代、50代、60代というふうに分けて平均血圧の推移を示していますが、これがどの年代で見ても2000年ぐらいまで右肩下がりにどんどん下がってきているということです。
脳卒中の一番多かった時代は、60代だと平均値が150mmHgを超えているような状態だったわけですが、それが今は数値としてはかなり低くなってくるということで、こういうトレンドで日本人の血圧というのが下がってきた。
その背景といたしましては、医療機関での治療が普及して、早目に血圧を下げることができるようになったという背景もあるのですが、もう一つおもしろいデータをお見せします。
下に示しましたのは、秋田県のほうで何十年にもわたって疫学研究をしている研究グループからのデータなのですが、同一年齢のときの親子の収縮期血圧値の相関というのを示したものです。「父」と書いているのがお父さんの血圧、「息子」と書いているのが息子さんの血圧なのですが、同じ40代のときに血圧値がどうなっているかという相関をとっているわけです。
見ていったらわかりますけれども、赤で囲んでおりますように、父親のほうがかなり血圧が高いほうにある。これは、年齢が同じで、かつこの分析には薬を飲んでいる人は入れていません。要するに、遺伝的な背景がかなり近しい人、左側が男の子と父親、右側が女の子と母親ということになるのですが、それで見ても、血圧が低いほうにシフトしているので、治療の影響だけではなくて、生活習慣がかなり変わったことによって血圧が下がってきたということを示しているだろうと思います。
次のページは、先ほど脳卒中の話をしましたけれども、今度は国別に心筋梗塞などの虚血性心疾患の死亡率を示したデータです。これも2000年ぐらいのデータになります。
とにかくOECDの加盟国、いわゆるディベロップドカントリーの中では、日本人の虚血性心疾患の死亡率は非常に低いほうに入るということがわかっていただけるかと思います。
ですから、もともと脳卒中が多くて、虚血性心疾患が少ない。その後、脳卒中はかなり減ってきて、虚血性心疾患が今まではふえていなかったということがありますので、これが長寿の要因として寄与しているところがあるのではないかということが各方面から言われているところであります。
一方、今後の動向を考えるときに、脂肪エネルギー比の推移というのをどう見ていくかということになるのですが、4ページの下が国民健康・栄養調査より作成しました「日本人の脂肪エネルギー比の推移」ということで、エネルギーのうち何%を脂肪からとっているかということを示しています。
見たらわかりますけれども、脳卒中の死亡率が一番高かった1965年くらいというのは、脂肪エネルギー比というのは、わずかに10%ぐらいしかなかったわけです。このときは塩分がものすごく多かったわけですが、この状態で脳卒中がすごく高かったという状態でした。1990年以降はほぼプラトーになっていることがわかりますが、1960年から1990年ぐらいにかけて脂肪エネルギー比がどんどんふえてきて、大体25%を少し超える状態で推移してきているというのが現状ということになるかと思います。
脂肪の摂取ということになりますと、当然コレステロールがどうなっているかということに思い至るわけですが、5ページの上に「日米の血清コレステロール値の推移」を示しています。これは国民健康・栄養調査とアメリカの同様の調査であるNHANESというもののデータを比べたものです。
ここに示しましたのは男性のデータです。下の数字は、「Age」と書いてありまして、30代、40代、50代、60代というのが入っています。縦の「TC」というのが総コレステロールの平均値ということになりますが、一番上がアメリカの1976年から1980年の血清総コレステロールの平均値です。ほぼ同じころの1980年の日本の平均値は一番下のところに入っていますので、このときは同じ年代だと、血液のデータの平均値で日米で30mg/dLぐらい差があったということになります。
その後10年たって、アメリカのほうは赤い直線が1段がたっと下がっておりますが、アメリカは死亡原因の第1位が心筋梗塞ということで、がんより多いわけなので、国を挙げてコレステロールの対策をやったわけです。それがありまして、アメリカというのは、各年代でコレステロールが平均値として10mg/dL以上下がってきている。その間、日本のほうは、1980年から1990年のところを見ていただけたらわかりますが、黒い線が逆に上のほうにシフトしたということになります。
それからさらに10年たって、アメリカの1999年から2000年のデータが一番下の赤い線、日本の2000年のデータが一番上の黒い線ということになりますが、要するに、40代ぐらいになると、日米のコレステロールの値には全く差がないという状態になっています。
それでは、先ほどの虚血性心疾患の死亡率となぜ結びつかないかという話になるのですが、病気を発症するのは60代以降ぐらいからがほとんどで、若い人はそんなに発症しません。ですから、高いコレステロールに暴露した方がこれから高齢化していくという状況が今の日本の置かれている状況である、そういうことをこのデータから読み解けるということになるかと思います。以上が疾病構造と危険因子の基本的な背景でございます。
今度は食生活のほうの話に入っていきますが、食生活の国際比較というのは非常に難しいのです。これは、調査法の統一をどうするかとか、何を基準にして調べるかということで、非常に大きな問題点がございます。私の知っている限り、きちんと精度管理されて、国際的に比較を可能にした研究の代表的なものとして、次のページにありますINTERMAP研究というのがあります。これはもともと血圧に及ぼす食事因子の解明ということを目的とした研究で、アメリカとイギリスと中国と日本における栄養摂取と血圧の関係を比べていくということを目的としているものでございます。特徴というのは、多様な食生活の影響を調べるために東洋または欧米の食習慣を有する4カ国を対象としていることと、調査法を国際的に標準化して比較可能にしたということです。
7ページのところでINTERMAP参加センターということで、日本が4カ所、中国が3カ所、イギリスが2カ所、アメリカが8カ所というふうに地図で示されていますけれども、要するに患者さんではない一般の住民の方に対して調査を行ったということになります。
方法の概要はその下に示したとおりで、40~59歳男女のランダムサンプルです。だから、調べたい人を調べたのではなくて、例えば住民票とかから対象者をランダムにピックアップして調査をお願いしているということです。4,680人の方に対する調査です。
血圧については、4回の訪問時に8回血圧をはかる。身長・体重は2回測定する。塩分とか電解質の摂取というのは、栄養調査で見るのは結構大変なので、国際的には、ナトリウムでなど24時間で尿から出てきたものから推定するというのが一般的な方法ですが、これは2回の24時間蓄尿をしています。栄養調査は、一番ぶれがなく調べられる方法というのが24時間思い出し法ということになるのですが、これを4回行っています。これを4カ国で実施しているということになります。
その結果ですが、今、細かい話をしている時間はないのでざっと飛ばしていきます。
8ページの上の肥満度、Body
Mass
Indexを見ていただけたらわかるのですが、例えば日本だと25kg/m2を超えると太っているよという言い方をされることになるのですが、日本人の男性、女性とも40代、50代は平均値が大体22とか23kg/m2ぐらいで、普通の集団だろうと思います。アメリカとイギリスの集団を見ていただけたらわかるのですが、Body
Mass
Indexの平均値が27とか28kg/m2という値になりますから、これは非常に太っている集団です。もちろん、このぐらいの方がいないことはないのですが、平均がこのぐらいということになると、半分の方はこれよりも多いということになりますので、非常に太っている集団というか、向こうはそうだということになるのですが、肥満度に大きな差があるということがわかります。
その下にエネルギーの摂取量というのがあります。これは、当然体格が違うので、日本人が一番小さくて、イギリス、アメリカの順に大きいというのが出ています。
栄養素のあらわし方にはいろいろな方法があるのですけれども、今回はわかりやすくするためにほとんどのところを摂取の絶対量で示しています。カロリーに占めるパーセントで示すとか、幾つか方法があるのですが、今回は一番シンプルな方法で示しておりますので、その辺は御了承ください。
9ページのほうに行きます。これは知らない方から驚かれるのですが、コレステロールにはいろんな摂取源があります。コレステロールを肉からだけとっていると思うのは大きな間違いなのです。日本人のコレステロールの摂取量は昔から決して低いほうではないということになるので、この3集団の中では日本人のコレステロールの摂取量は高いということがわかります。
次にこれは日本人の特徴になるかと思うのですけれども、その下の飽和脂肪酸の摂取量はほかの集団と比べて日本人は非常に少ないということが、これを見ていただけたらわかると思います。飽和脂肪酸とかコレステロールとかの話が出てきてややこしいのですが、例えば血中のコレステロールがどういう食事因子の影響を受けるかということで、幾つかの推定式というのがございます。よく使われているのが次のページにあるKeysの食事因子量というものです。そこに書いてある式であらわせる数値が大きいほど血中のコレステロールは高くなりやすいという考え方がございます。Sというのは飽和脂肪酸、Pというのが多価不飽和脂肪酸のエネルギー%です。つまり総摂取エネルギーに対して何%をここからとっているかということになります。Cというのがコレステロールの摂取量ということになります。コレステロールのところは1/2乗と入っていまして、ルートがかかっていますので、コレステロールがふえると、もちろん値は高くなるのですが、そんなに劇的には上がっていきません。要するにこの式を見ると、Sのところが大きくなると血液中のコレステロールが一番上がりやすいというのがわかると思うのですが、そういう意味がありまして、先ほどの日本人の飽和脂肪酸の摂取量が少ないということがこういうところに影響していると考えていただけたらいいかと思います。血液の物質と同じ名前なので、血液のコレステロールイコール食べ物のコレステロールというふうに一般の理解がされているのですが、むしろコレステロールの管理から重要なのは飽和脂肪酸の量であるということが言えるかと思います。
10ページの下のところは塩分摂取推定量で、これは1日尿中塩分相当量ということを尿中のナトリウム排泄量から推計したものになります。これは、青い棒で示しました日本人の塩分の摂取推定量が、どの年代で見ても男女ともイギリスやアメリカよりも高いということがわかります。11ページは、尿から排泄されているカリウムの量を示します。ナトリウムと異なりまして、カリウムは便からも少し排せつされますので、尿中量イコール摂取量ではない場合もあるのですが、おおむね横の比較をする分ではそのまま使えることが多いのですけれども、日本人は尿中のカリウムというのが少ない。したがって、その下にあるようにナトリウムとカリウムの比をとりますと、日本人は非常に高く出るということで、ナトリウムが多く、カリウムが低くなる。カリウムが低いというのは、日本人は思っているほど野菜とか果物を食べていないということが背景としてございます。
12ページのところではn-3系多価不飽和脂肪酸というのを示していますが、その中でもロングチェーン、長鎖n-3系と言いまして、主に魚から摂取される多価不飽和脂肪酸の摂取量を示したのがこの図です。日本人はこれが明らかに突出して高いということがわかりまして、魚からとる多価不飽和脂肪酸というのは、日本人はほかの国と比べて非常に多いのです。以上をまとめまして、このデータからの特徴ですが、日本人の食事の特徴というのは、飽和脂肪酸の摂取が少ない。長鎖n-3系脂肪酸の摂取量が多い。エネルギーの摂取量が少ない。そしてBMIが小さくて、やせている、ナトリウムの摂取量が多くて、カリウムの摂取量が少なく、ナトリウム/カリウム摂取量の比が大きい。一言で言うと、こういう特徴が日本人の食事であるということになります。
実際にナトリウム/カリウム比がどういうふうな影響を与えているかというのを次の13ページから示しております。これは、1994年から続いていますNIPPON DATAという研究班が、今、NIPPON
DATA2010として平成22年の国民健康・栄養調査に参加された方を対象に研究しているものです。約4,000人の方について、尿のナトリウム/カリウム比というものを調べて、まず地域分布がどうなっているかというのを出したのが13ページの下にあるものです。北関東から東北、要するに、色がピンクとか赤系のほうがナトリウム/カリウム比が高い。先ほど言いましたように、ナトリウムが多くて、カリウムが少ないというのは余りよくないわけですけれども、そういうところはピンク色のところが多い。これは実は現在の心臓病とか脳卒中の死亡率の高いところと比較的分布が一致するということで、ナトリウム/カリウム比の2010年のデータでもそういうものが推計できるということになります。
14ページの上は、実際にナトリウムとカリウムの摂取比と循環器疾患とか脳卒中の死亡率に関係があるかということを同じくNIPPON
DATAで示したもので、これは論文作成中なので学会発表のデータになります。Q1からQ5の数字が大きくなるほどナトリウム/カリウム比が大きくなるのですが、右に行くほど総死亡、循環器疾患死亡、脳卒中の死亡率が高くなっていくというデータが得られているということになります。
最後に肥満の話をしておきます。15ページの上に、先ほどの日米比較等を受けまして、40代の男性だと日米の血中コレステロールの差がほとんどないということで、40代の男性の動脈硬化の比較研究をERA-JUMP研究というのでやっています。ただ、40代の人の発症を待つと時間がすごくかかってしまいますし、結果がすぐ出るものではないので、実際の脳卒中とか虚血性心疾患の発症ではなくて、冠動脈のCTとか頸動脈の超音波の結果で日米を比べてみようという研究でございます。
16ページの上です。40代男性、例えば心臓の冠動脈に石灰化がある。石灰化があるほうが動脈硬化が進んでいるわけです。あと、首の頸動脈の内側が分厚くなっているかどうか。これは厚いほど動脈硬化が進んでいると考えられるのですが、日本と日系人とアメリカの白人の方を比べたデータを示しています。コレステロールのレベルが同じであっても、やはり日本人というのは動脈硬化の程度が少ないというのがわかります。比べまして、日系米国人というのは、ほぼ白人と差がなくなっているという状態がこの研究からわかりました。その違いは何かということになるのですが、16ページの下のところに古典的危険因子、例えばコレステロールとか血圧とかを示していますが、それは有意差が微妙にあっても、そんなに大きな差はございません。むしろ日本人男性の喫煙率が突出して高いのが目立つぐらいで、ここでは大きな差はないのですが、逆にこの3集団で何が一番違っているかといいますと、17ページの上のところに肥満関連の指標を集めてみました。
例えばBody
Mass
Indexが日本人は23.6kg/m2であるのに、日系米国人と白人は27.9kg/m2というのが平均値になって、肥満度が非常に違う。それに伴いまして、例えば血中のインスリンだとか、炎症をあらわす高感度CRPなどの値が全然違うし、血の固まりやすさの指標であるフィブリノーゲンの値も、向こうは高くて、日本人は低い。また魚介類由来のn-3系脂肪酸の値が日本人は非常に高くて、日系米国人と米国白人は低いということになります。
したがって、こういう研究からわかることは、日本人集団を肥満させてはだめでしょうということが1点です。魚の摂取量が多いという非常に特徴的なところがありますので、魚の摂取量は減らさないほうがいいだろうということがわかるということになります。
最後のところです。18ページで、実際に日本食パターンと死亡率の関係がどうなっているかというのをNIPPON
DATA80の19年追跡で検討してみました。これは、1980年に循環器疾患基礎調査を受けられた9,000人ぐらいの方を19年間追跡して、1から7で日本食パターンというのを定義しました。この研究をしたときは、まだ国民健康・栄養調査のデータがくっついていなかったので、そのときやった非常に簡単な問診票だけでつくったスコアというのがそこになります。スコア0-2、スコア3、スコア4-7、要するに、何項目を満たしているかによって3グループに分けて、その人たちの実際の死亡率というのを検討してみました。それが19ページの上になります。この日本食パターンというのが普通の日本食パターンではなくて、「減塩日本食パターン」と書いていますが、塩が多いという特徴だけはいいこととはせずに、普通の日本食から塩を減らしたパターンというのをいい状態ということにして、日本食パターンの定義をしております。減塩日本食パターンの傾向が強いほど各疾患の死亡率が右肩下がりになっているということがわかります。
19ページの下は、初期条件がいろいろ違いますので、全てがそろうようにマッチさせて、2群に分けて比べたときの死亡率を示しています。そこでも明らかに違いがあるということで、減塩日本食パターンというのは死亡率の低下と関係しているということが示唆されたということになります。
まとめです。
いろんな研究から判断しまして、恐らく循環器疾患からは、古典的な日本食から減塩したタイプの食事が健康的だろうというふうに判断されるということです。先ほどは限られたデータしかなかったのですが、今、NIPPON
DATAの栄養調査のデータが全部つながっていまして、もうちょっと詳細な分析をしておりますので、この検討会が終わるまでには最終報告ができるのではないかと考えております。
減塩の推進等は非常に重要なので、最後に参考資料として国立循環器病研究センターの「かるしおレシピ」の紹介を示しますけれども、減塩というと、何となくおいしくなさそうと思われてしまうので、用語か何かもこれから変えていったほうがいいのかなということでこういう提案がされているのかなと考えております。
ちょっと時間が超過しまして申しわけありませんが、プレゼンテーションを終わらせていただきます。
○中村座長 ありがとうございました。
続きまして、「糖尿病の『発症予防』と『重症化予防』の観点から、日本人の食事を考える」というテーマで、幣構成員、お願いいたします。
○幣構成員 京都大学の幣と申します。よろしくお願いします。
まず、1ページ目です。「健康日本21(第二次)」には、「主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底」という項目が挙げられており、「糖尿病は、その発症予防により有病者の増加の抑制を図るとともに、重症化を予防するために、血糖値の適正な管理、治療中断者の減少及び合併症の減少等を目標とする」という非常に大きな目標が掲げられております。
私は、病院に勤務している関係で糖尿病を発症した患者の方々を診させていただくことが多く、糖尿病の発症予防という観点ではふだんお話しすることが少ないので、糖尿病治療という考え方に基づきまして、予防の観点まで順にお話を進めてみたいと思います。
前回、私がコメントをさせていただいた中で、日本人と欧米人の発症の過程で大きな違いがあり、欧米から発表されてくるようなエビデンスをそのまま持ち込むことについての問題点というお話を少しさせていただきました。
1ページ目の図にもありますように、日本人というものは、農耕民族として数千年前からの生活習慣があり、体の中から出てくるインスリン分泌というものは非常に少量で、これらの穀物やいろんなものの処理をしながら生活をしてきた環境があります。
数十年前から産業革命や飽食の時代ということで、非常に欧米化した食事が入ってくることによって、多量のインスリンを必要とする生活環境が生まれてきているということで、これは糖尿病発症にかなり大きな影響を及ぼしているということをあらわした図です。
狩猟民族であります欧米人は、もともと多くのインスリンが出せる非常に強い膵臓を持っておりますので、この人達と比較をしながら考えるというよりは、日本人なりの予防対策というものが求められていると考えます。
2ページ目は関西電力病院の清野裕先生からいただいたスライドですが、図によりますと日本人は欧米人と比べてインスリン分泌不全が非常に著しいことが理解いただけると思います。欧米人は糖尿病の予備軍、糖尿病患者さんの状態になってもインスリン分泌能は非常に強く、しっかりとインスリンが出せる状態にあるわけですが、日本人は、健康人の場合は欧米人と比較しても大して差がありませんが、インスリンの分泌が少しおくれて出てくるというか、最初に食事を食べたときにダイレクトにマッチして出てくる状態ではなく、インスリンの分泌不全というものは日本人にもともと備えられた遺伝因子ではないかなと考えています。
さらに、糖尿病予備軍、糖尿病となりますとどんどんインスリン分泌能が低下しますので、日本人の2型糖尿病患者の特徴としては非肥満例が多く、諸外国と比較してものすごく太っている患者さんは少なくて、小太りな患者さんが多いという特徴があります。インスリン抵抗性よりむしろ最初のインスリンの分泌が悪いというインスリン分泌機能の低下が多いことなどが特徴的であるということをご理解いただきたいと思います。
2ページ目の下の図は、「エネルギー摂取量と糖尿病患者数の変化」を表したもので、2つのグラフを合わせてみました。
1946年ごろは日本人のエネルギー摂取量も低かったわけですが、その後、1965年ごろから欧米化の影響を受け、エネルギー摂取量も多くなっていきました。そのころから比べますと、2000年に向かってどんどんエネルギー摂取量が少なくなってはいますが、1997年ぐらいから厚生労働省の糖尿病実態調査が入り、糖尿病患者数が非常に右肩上がりで増えています。ですから、日本人は単に総エネルギーの摂取量が多くなったから糖尿病が発症しているというわけではなく、その中身の影響が大きいであろうということがうかがえると思います。
では、3ページのほうに移りまして、3大栄養素のエネルギー比率というものを見てみたいと思います。
エネルギーの全体量というものを100に換算しておりますので、エネルギー摂取量が年々下がっていることは先に述べた通りですが、1946年ごろは、「炭水化物」と呼ばれる緑のグラフが、食事の中で80%ほどを占めていました。このころの糖尿病患者数は非常に少なく、脂質の割合は7%程度、たんぱく質は12.4%という比率で食生活が構成されています。
1960年代に入り、図内の写真にもありますように、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンというようなファストフードがどんどん入ってくるようになり、年々炭水化物量は減っているにもかかわらず、脂質の摂取量が多くなり、先ほど岡村先生のほうから御指摘のあった脂質の摂取量の問題というものが、糖尿病患者さんでも大きく問題になったということがうかがえます。
日本人の食生活の変貌ということで、少し門脇先生のお言葉をおかりしますが、明治、大正、それ以前の日本人は必ずしもお米を主食としてきたわけではなく、お米に麦とかアワ、ヒエ、こういったものをまぜて炊飯してきた生活習慣があります。
1960年代以降の高度経済成長を経て、精白米やパン、麺類が主食の中心となって、糖質の摂取量が急激に減少するとともに、副食も従来の野菜、魚介類、大豆製品に加えてお肉が入ってきますし、卵、乳製品が加わり、油脂類欠乏型の伝統的な日本料理から、洋風・中華風の油脂類増加型の食事に変貌してきたということがおわかりいただけると思います。
さらに加工、保存、調理の技術発展によって、食の社会依存傾向が強まって、これによる食品構成の変化は動物性脂肪の過剰摂取、いわゆるおいしさというものが加わって、非常に動物性脂肪が多くなり、食物繊維の不足も問題となっています。
食習慣で問題を挙げますと、朝食をとらない比率がふえるとともに、間食や夜食が増加して、夕食は21時以降といった食習慣、このあたりは食べ物の量ばかりでなく、習慣が大きな影響を及ぼしているということをご理解頂ければと思います。
では、日本食を見詰め直す研究ということで非常におもしろい都筑先生らのデータをお示しします。動物実験ではあるのですが、2005年の食事、そして15年ごとに90年、75年、60年とさかのぼっていくそれぞれの食事パターンにおいて、家庭の標準的な1週間の食事メニューというものを再現し、凍結乾燥して、マウスに均一化したものを食事として与え続けていくことによって、どのように体重や内臓脂肪が変わっていくかということを見ています。
2005年のデータを100とお考えいただいて、横には1960年、1975年、1990年とそれぞれの年代の割合を示しておりますが、2005年と比較しまして1975年の食事パターンは、体重が89%程度に抑制できています。1975年の食事というものは、御飯や魚介類、海草類が多いという特徴を持ち、欧米食の影響はわずかであったというふうに記載があります。
1965年ごろは食事中の食塩が濃いとか、新たな日本食の問題点というものも浮き彫りになるようなデータになっています。
もう一度表のほうに戻りますが、2005年と比較して内臓脂肪量も1975年のデータは46%。中性脂肪やコレステロール、また血糖値の管理におきましても、インスリン分泌量が少なく、さらに血糖値がちゃんと安定した値に保てているということが大きな特徴ではないかなということで、1975年ごろの食生活パターンが最も日本人に合っているというようなまとめ方をされています。
食事のパターンはこういうものが推奨されるというデータが出てまいりましたが、2型糖尿病患者さんの一次予防研究が世界的なレベルで行われています。DPP
studyというものを4ページの下の図で記載させていただきましたが、3つの群に分類し、調査研究が行われています。
「プラセボ群」、「お薬を投薬して血糖管理を行う群」、3番目は「生活習慣病改善群」に分類され、「生活習慣病改善群」はその横に記載しております生活改善の目標を達成するというグループです。
生活習慣病改善群の1番目の課題は、体重を現在よりも7%以上減らし、それを維持する。7%というのはそれほど大きな数字ではありませんが、7%程度という具体的目標を掲げています。2番目の課題は、脂肪の摂取量を25%以下。これも我が国の目標としているものにも合致します。最後は総摂取エネルギー量を1,200~1,800キロカロリー程度に管理し、中等度の運動を加えるということが生活習慣病改善群の目標となっています。
結果としまして、下のほうの図にありますが、3年間の推定糖尿病累積発症率におきましては、生活習慣病改善群が14.4%と発症予防が可能となっており、これはお薬と比べても値としてはかなり良い結果を示し、プラセボ群と比較した糖尿病の発症リスク減少率を見ましても、お薬のグループに比べ生活習慣病改善群は58%も発症予防ができたということですから、普段の生活習慣の改善というものが非常に大事になるという事を示しています。
続きまして、5ページです。肉類の摂取と糖尿病発症リスクという研究がありました。これは男性においてのみ有意な結果になりますが、肉類全体の摂取量が1日100グラム以上を摂取するグループで糖尿病発症リスクが高くなったという結果になり、摂取量が最も少ないグループに比べて最も多いグループでは1.36倍という高い結果になりました。
一方、女性では肉類と糖尿病の発症の関連は見られないというデータですので、男性においては、この特徴をもって肉類の摂取量に注意すべきというデータになっています。
先ほどからお話に出ております脂肪の摂取量が糖尿病の発症と関連しているのではないかということで、最近、インクレチン関連薬というお薬が非常に話題を持って巷に出ておりますが、インクレチンと呼ばれるインスリン分泌を促進する消化管ホルモンは、5ページ下の図にありますように、高脂肪食が腸管を通った際に、K細胞、L細胞と言われる腸管細胞のほうから分泌されるGIP、GLP-1というホルモン、それぞれがインスリン分泌を効率的に起こし、血糖値を調整してくれるホルモンなのですが、GIPと呼ばれるホルモンは脂肪組織にエネルギーを蓄える、いわゆる少し肥満を助長してしまうようなホルモンですので、高脂肪食を日本人が食べ続けることによってこういったホルモンの分泌量も多くなり、肥満が助長されるということですから、もともと糖質を食べてインスリン分泌が起こるという過程とはまた別なルートで高脂肪となることの問題というものをこの図で捉えていただければと思います。
では、続きまして、6ページのほうに移ります。
九州大学の溝上先生のデータをお示しします。日本での研究において、3群の食事パターンを設けて、それぞれが2型糖尿病の発症リスクとどのように関係をしていくかというものをあらわしたデータです。
3群の食事パターンの一つ目は1DFSAと呼ばれるグループに分類されますが、果物や野菜、乳製品、でん粉を多く摂取するバランスのいい食事というグループ構成になっています。
それぞれのグループの摂取したスコアというものは、下段の図のほうに示しておりまして、Q1と書かれたところが基準になっておりますので、1、2、3、それぞれの食事パターンに含まれる食材の量を見ていただければと思います。
2番目は、2動物性食品を多く摂取する食事ということでグループ化され、
3つ目は、3日本の伝統的な食品、大豆や海草、漬物、緑茶と野菜、魚を摂取する食事というものでグループ化されています。
これをそれぞれ比較していきますと、上の図の1のところをごらんいただければと思いますが、耐糖能異常(総合)の欄を確認しますと、非常に健康的なバランスのいい食事、DFSAと呼ばれるパターンで食事を摂取することにより、Q4と呼ばれるのは、このパターンが最も強く影響が出るように、例えば下の段の1のQ4のところを見ていただきますと、生野菜の摂取量を増やしたり、果物が多くなっている食事としてパターン化されたもので、この比較をしてみますと、2型糖尿病の発症リスクがこの段階で49%ほど低くなるという結果が出ておりますので、こういった果物、野菜、乳製品、でん粉を多く摂取しながらのバランスのよい食事というものが、2型糖尿病の発症リスクを予防できるという解析結果になっているかと思います。
その他の考察の一部ということで、果物や野菜の摂取量が2型糖尿病になるリスクに反比例することを示したデータであるということで、果物や野菜中に含まれる食物繊維やカロテノイド、マグネシウムがインスリンの抵抗性の抑制に影響しているというようなデータがまとめられていました。
乳製品の摂取も肥満とインスリン抵抗性の抑制に強く関与しているということですから、カルシウムはインスリン抵抗性を縮小させるということで、なかなか上がらない日本人のカルシウムの摂取量というものにも問題点を投げかけていると感じています。
では、合併症の予防の観点の話題に入りたいと思います。
7ページのところにありますように、私たちはふだんから、糖尿病の食事療法というものは治療の根幹であり、食べる楽しみとしての食事の観点と、治療としての観点での食事の両立が求められ、治療効果をしっかりと値を残さないといけませんので、この2つの目的を持って治療に当たっています。
8ページの上段の図をご覧ください。糖尿病患者は、発症早期から、もしくは耐糖能障害(IGT)と呼ばれる時期から動脈硬化が進んでおり、合併症のリスクが非常に高い疾患であるということをご認識いただきたいと思います。
データは、黄色いバーが健常人、赤いバーが耐糖能障害、そして2型糖尿病の患者さんは緑でそれぞれの図をあらわしておりますが、頸動脈の肥厚の値も、2型糖尿病患者だけでなく、耐糖能障害が起こっているときから肥厚が始まり、冠動脈疾患の相対危険度も耐糖能異常の段階から2倍、糖尿病になると3倍も高くなるということですから、非常に動脈硬化の問題に対しての観点をもって対応しなければならないという現状にあります。
平成24年度より「糖尿病透析予防」というチーム医療が進んでおりますが、透析予防の観点の大きなポイントの1つが、医療費の抑制ももちろんあるわけですが、透析導入をされた糖尿病腎症患者の5年生存率というものは54.5%、さらに10年の生存率は26.9%と慢性糸球体腎炎と比較して悪いわけですから、透析に入らないように、いかに対策をとっていくか。腎症も動脈硬化の観点からの大きな問題につながっていると考えています。
9ページは「海外のガイドライン・学術的動向」ということで、日本のガイドラインと比較したものを並べています。全ての比較説明は差し控えさせていただきますが、エネルギーとしては、身体活動量や標準体重に見合った適切なエネルギーの摂取を目指し、たんぱく質に関しては、体重当たり1~1.2g/kg/日ということで、エネルギー比率にしますと15%~20%を目標にする。これはどの国もほぼ類似する値になっています。
脂質に関しましては、炭水化物を50%以上60%未満、たんぱく質を15~20%、それぞれを引いた残りが脂質という形で構成され、その中には、先ほどお話がありました飽和脂肪酸の割合や多価不飽和脂肪酸の割合というものがガイドライン上、決められています。
炭水化物は、50~60%という幅を持たせ、柔軟に患者の食生活に合わせていくためにこの幅を持たせるということが非常に重要になるというふうに考えています。
10ページの上段の図で、脂質の種類に関してのお話を移します。
多価不飽和脂肪酸、特に魚油に含まれるEPAとかDHAの摂取量をふやすことによって、糖尿病患者で散見される脂質の問題としての中性脂肪の値を有意に減少させることができたというデータです。例えば脂質調整ということで、EPAやDHAをふやしたグループ(赤いグループ)になりますが、HDLコレステロールや、HDL:TC比を有意に改善できるという結果がありますので、魚の摂取というものも非常に重要になるかと思います。
ガイドライン、10ページの下の図の食物繊維も、エネルギー100キロ当たり10グラムという一般人の食事摂取基準の達成を推奨しながら、できれば食物繊維を有効活用するというふうにガイドラインに記載されています。
11ページのほうにお話を移します。
日本人の食物繊維の摂取量は、1947年ごろから年々少なくなり、以前は総摂取量として30グラム程度あったものが、現在では15グラム程度と非常に食物繊維の摂取量が下がっています。特に穀物からの摂取量が少なくなっているのは、上の図のほうをごらんいただければ、おわかりいただけると思いますし、豆やお野菜、いろんなものからの摂取量の減少というものが影響していることがおわかりいただけると思います。
11ページの下の図では、食物繊維の摂取量をふやしたグループと、アメリカの食事パターンというものを摂取したグループのデータがありますが、高食物繊維食にしたほうが、有意差を持ってコレステロールの値が下がり、中性脂肪やVLDLのコレステロールの値が下がるというデータがあり、やはり食物繊維の摂取量を増やしながら糖尿病治療に当たっていくということが非常に重要かと考えております。
では、12ページの上段の図に食物繊維のとり方を示すデータがあります。これは野菜の食べる「総量」だけではなくて、「食べる順番」というのも糖尿病患者さんにお伝えするすごく大事な因子になっていることを示しています。
この図の説明ですが、赤丸のグループが野菜サラダを先に摂取し、10分後に御飯を食べるグループ、白丸のグループは米飯を摂取し、10分後に野菜サラダを摂取するグループに分類しています。エネルギー量はどちらのグループも同量ですが、食べる順番が変わっただけで血糖値は低く管理でき、Bの図にあらわしますインスリンの分泌量も少なく管理できるということですから、糖尿病患者さんにとって、肥満の予防のためにも野菜の摂取順序を早くすることが非常に有効であるというデータになります。
先ほどから出ておりますように、果物の摂取も糖尿病患者さんにとっては非常に有用であるわけですが、糖尿病患者個々のインスリン分泌状態に応じた摂取のパターンを教育しなければならないということについて、1枚スライドを入れさせていただきました。
健常人の方たちは、果物を摂取しても血糖値はおよそ100~140mg/dLの幅でほとんど動かないわけですが、ここに示す2型糖尿病患者(お薬を使わず食事と運動だけで管理されている73歳の患者)は、果物を摂取すると血糖値はいきなり120mg/dLから220mg/dLまで急激に上昇し、120分をかけて緩やかに下がっていくという結果ですから、こういう患者には果物の増量や、間食はお勧めできないということになり、適量摂取を守り、空腹時の摂取には注意するなど患者さん個々への対応も非常に重要かと考えています。
13ページが最後のスライドになります。バランスよく食品を摂取するためには、厚労省が勧めておりますような「バランスガイド」、日本糖尿病学会が勧めております「食品交換表」というのは、それぞれのグループが適切に配分をされ、摂取量といったものについてもうまく構成されているので、私たちは両者をうまく活用しながら日々の糖尿病患者さんの治療に当たっています。
これまでのお話をまとめてみますと、糖尿病発症予防の観点からは、御飯、雑穀米やヒエとかアワ、といったものを常時使うか、いかに混ぜるかはさておいて、お魚、野菜、海草などを中心とした日本食の摂取が理想的であると考えています。
日本人の民族的な特徴を踏まえまして、糖尿病発症予防には総エネルギー量の適正化、いわゆる肥満の予防、そして脂質のエネルギー比が過剰とならないように配慮して、このエネルギー比だけではなくて、脂質の種類(動物性脂肪と魚介類の脂肪)といったものにも注意し、肥満予防を主とした生活改善が求められます。
糖尿病患者では、伝統的な日本食に加えて、さらに果物とか乳製品の摂取が推奨されるわけですが、食後の血糖値の変動や食事バランス、摂取順序などにも考慮していただき、合併症を有する患者さんでは、さらに減塩とかたんぱく質の制限、中性脂肪やコレステロールの管理など、症例ごとに対応しなければなりませんので、今回は糖尿病発症予防というところに力点を置いて「健康な食事のあり方」について、ディスカッションできればと考えております。
以上です。
○中村座長 ありがとうございました。
続きまして、「超高齢化社会を見据えて、高齢者がよりよく生きるための日本人の食事を考える」というテーマで、高田構成員のほうからよろしくお願いいたします。
○高田構成員 国立健康・栄養研究所の高田でございます。
私は、1枚目の上のスライドにありますような5つの観点から現在の高齢者の食事の状況を御紹介させていただきます。
最初に、御存じの方が多いかと思いますが、高齢者をめぐる社会の状況について簡単に御紹介いたします。
1ページ目の下にありますように、人口ピラミッドは近年大きく変化しており、2010年の実績では、65歳以上の方が23%程度ですが、2060年になると40%程度になると予想されております。
2ページ目の上は65歳以上の方の世帯の状況です。単身の世帯の方、夫婦のみの世帯の方が大変増えてきておりまして、平成22年では約54%、半数以上の方がほぼ高齢者のみで暮らしているという状況にあります。
また、下の図を見ていただきますと、国民医療費も近年どんどん増加しており、そのうち65歳以上の方が使っている医療費が55%を占めているという状況にあります。
3ページ目の上の図です。日常で負担を感じる支出を高齢者の方に伺っていきますと、医療費が最も高く、次いで食費が約30%程度を占めているという状況にあります。
続きまして、高齢者の栄養状態、または食事に関連する加齢の変化について御紹介をいたします。
まず、体格の変化です。国民健康・栄養調査の成績で見ますと、BMIは、男性では40から49歳、女性では75から79歳が最も高いところを示しておりまして、80歳以上では低くなっていきます。
また、やせの人の割合は、男性では85歳以上、女性では80歳以上で非常に増えてくるという状況にあります。
体の状況ですが、4ページのほうを見ていただきますと、一番左の図、久山町研究、長期にわたって観察をされている地域のデータでは、60歳以上の方の10年間の体格を見ていきますと、体重が男性も女性も有意に減少するという傾向があります。
右側のほうは、その中身がどう変わっていくか、こちらは断面的な研究ですが、除脂肪量、いわゆる体の中の脂肪量を除く筋肉、骨、内臓などの重量が、年齢が高い者で減っていく状況にあります。
また、体脂肪率は大きくなっていくという状態にあります。
続きまして、体力の変化を見ていきます。
左側の最大酸素摂取量というのは、最も頑張ったときに体がどのくらい酸素を取り入れることができるかという指標で、全身の持久力の指標になるものです。こちらは男性も女性も年齢が高くなるほど低下する傾向にあります。
また、握力について見てみましても、50代以降になりますと、男女ともどんどん減少していくという傾向にあります。
5ページ目は歩行の関係のデータになります。
左側の歩数は、年齢により多少増減がありますが、70歳以上になりますと男女とも非常に少なくなり、女性では5,000歩を下回るような値になってきます。
また、歩行の速度は、70歳以上のデータになりますが、年齢が高くなるほど遅くなる傾向が見られています。
続きまして、消化・吸収機能です。こちらのほうは非常にデータが限られております。消化・吸収機能を調べる指標というのは大変負担の大きいものが多いということもあって、高齢の方のデータが非常に少ない状況にあります。
左側は、炭水化物の吸収不良を示すものの割合を見ています。
対照群が20~64歳、高齢者が65~89歳です。呼気ガステストをして消化不良を示す人の割合が、対照群の若い方では、炭水化物の摂取量をどんどん増やしていっても消化不良を起こさないのですが、高齢者の群では、炭水化物の摂取量を増やせば増やすほど消化不良を起こす方が増えてきます。
右側は安定同位体を使用して小腸でのカルシウムの吸収を見たものですが、こちらも年齢が高いほうで吸収率が低くなるということが見られております。
6ページ目は口腔機能の変化になります。
一番左側の図は、1人の平均の現在の歯の数です。これは8020運動が非常に盛んになってから高齢の方でも歯の数が多くなってきています。
ですので、一番端の2011年のデータでいきますと、65~69歳の方の歯の数は、1957年のころの50~54歳ぐらい並みの歯の数があるような状態で、かなりよくなってきております。
ただし、85歳以上の方を見てみますと、2011年でも平均で10本を下回るような状況にあります。
右下の表で、このように歯の数が少ないということが食事の状況とどう関係するかというのを見ていきますと、炭水化物、カロテン、ビタミンCなどの摂取量が、歯の数が少ない方では非常に減ってきているという状況にあります。
また、上の図は舌圧の変化を見ているものです。20歳代以降80歳ぐらいまでの間で舌圧がどんどん減ってきます。ですので、年齢が高くなってくると、口の中の機能というのも悪くなっていくということがうかがわれます。
下の図は、国民健康・栄養調査で「何でもかんで食べることができる者の割合」が左側、右側が「食べ物や飲み物が飲みにくく感じたり、むせたりすることが全くない、またはめったにない者の割合」を示しています。
どちらも自覚的なものですが、70歳以上の方では、咀嚼や嚥下の状態が良好な方が減ってきています。
続きまして、7ページ目になります
上のほうは栄養状態の指標となります血清アルブミン値を見たものです。
一番左の図は、国民健康・栄養調査の時に測定されている血清アルブミン値を見ています。年齢が上がってくるとアルブミン値がかなり下がってくるという状況が見てとれます。
右側の2つの棒グラフは、地域在住高齢者の方のデータから見たものです。
同じ方の5年間の血清アルブミン値の変化率を見ていきますと、男女とも、80歳代、また90歳以上になってきますと、5年間でアルブミン値が非常に下がってくるような状況が見られます。
また、低アルブミン値、ここでは3.5g/dL以下にしておりますが、低アルブミンの状態にある者の割合も80代以降からだんだん増えてきまして、90歳以上では非常に高くなってくるという状況にあります。
7ページ目の下の図は、BMIや血清アルブミン値というのは体の栄養状態を示す指標になりますが、これらと死亡や介護認定のリスクの関係を見たものになります。
左側がBMIと総死亡のリスクを見たものです。BMIが20.0~22.9kg/m2という方での総死亡のリスクを1としたときに、それぞれのBMIで死亡のリスクがどのくらいあるかというものを見たものです。
やせるほうでももちろん死亡リスクは高くなるのですが、肥満傾向にある方、特に女性では30.0kg/m2以上の方で総死亡のリスクが少し高くなるということで、適正なBMIを保つということが健康長寿に必要な一つの栄養指標になります。
右側のほうは血清アルブミン値と介護認定、または死亡される方のリスクを見たものです。
アルブミン値が4.4g/dL以上の方での死亡または介護認定のリスクを1としたときに、それぞれのアルブミン値でのリスクを見ていきますと、アルブミンの値が低いほどそれらのリスクが高まるという状態にあります。
続きまして、8ページ目からは現在の高齢者の食事の実態について御紹介いたします。
初めのほうは国民健康・栄養調査成績から見たものです。国民健康・栄養調査成績では、高齢者の区切りが60~69歳から、それ以上が70歳以上という分け方になっております。
ここで見ていきますと、40歳代から比べると、60~69歳では男女とも比較的各種栄養素のとりぐあいがよくなってくるのですが、70歳以上になってきますと、たんぱく質、脂質、食物繊維等、各種の栄養素の摂取量が非常に減少してきます。
これは1,000キロカロリー当たりで計算したものがそれぞれ括弧内で示した値になるのですけれども、そちらで見ても減少してくるという傾向にあります。
下の表は食品群別の摂取重量を比べているものです。こちらでも60歳代の方では比較的いろいろな食品がとられているのですが、70歳以上では割と減ってくる傾向にあります。
ただし、豆類、緑黄色野菜、果実類、乳類などについては、70歳以上が最も高くなっている場合もありますし、非常によくとられている状況にあるかと思います。
9ページ目になります。こちらは先ほども紹介しました久山町研究から、同一の方で10年間に食事の内容がどのように変わるかというのを見たものです。
10年間の食事の内容を見ていきますと、*印がついているところが有意に変化したものになるのですが、米類、果実、緑黄色野菜、その他の野菜、卵などは減少する傾向にあります。
一方で、大豆・大豆製品、海草などは逆に摂取量が増えているという傾向が見られております。
続きまして、では、高齢者においてどのような食事をしている方が長寿であり、介護予防にかかわるのだろうかということを今あるデータから少し調べてみました。
まず、百寿者の方の調査の成績を示したものが9ページの下になります。
左側が全国の悉皆調査ですが、「百寿者が40歳頃から現在まで食事のとり方について、心がけていること」というのを聞いたものです。こちらでは、「1日3回規則正しく食べる」、「腹八分目を心がける」、あるいは「緑黄色野菜を食べる」、「魚肉・卵等を食べる」というあたりが食事の内容としては比較的高くなっている部分です。
右側は、東京在住の百寿者について、食事のパターンを「野菜の多い食事のパターン」「乳製品の多い食事パターン」「飲み物の多い食事パターン」「穀物の多い食事パターン」という4つのパターンに分けて、それぞれの生存期間を比べたものです。
こちらでは、「乳製品の多い食事のパターン」という方が百寿者の中でも最も長く生きているという様子が見られます。
続きまして、10ページ目です。
左側の図は、先ほどから出ております久山町研究の中で「認知症発症リスクと食事」の関係を調べたものです。
こちらでは、ちょっとわかりにくいのですが、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、ビタミンC、カリウム、カルシウム、マグネシウムが、これまでの文献上から比較的、認知症発症と関係あるということで、それらの摂取量が多くなるような食品群の摂取パターンをスコア化しています。
実際には大豆・大豆製品、緑黄色野菜、その他の野菜、海草、牛乳・乳製品の摂取が、これらの栄養素の摂取量に貢献していると見られております。
これらの食品群の摂取量が最も高い群での認知症発症のリスクを1とした場合に、Q2、3、4といくと、ここで示している食品群の摂取量が減ってくるのですが、Q4の最も摂取量が少ない群で認知症の発症が高くなっています。
また、右側のほうは、肉類、魚介類、卵類、牛乳、大豆製品、緑黄色野菜、海草、果物、芋、油脂などのそれぞれを「ほぼ毎日食べる」を1点としたときの合計点数から、食品摂取の多様性と高次生活機能の低下を見たものです。
これらの摂取頻度が非常に少ない総合得点1~3点における高次生活機能の低下を1としたときに、総合得点が4~8点が青い棒グラフ、9~10点が赤い棒グラフになりますが、どの程度高次生活機能の低下が起きたかというのを示したものです。
特に9~10点では高次生活機能の低下が非常に少ないということが見てとれます。
ただし、同じような食品多様性の得点とほかの要因との比較で2年間のアルブミンの低下、あるいは介護保険認定の有無との関係を検討した研究では有意な関係が見られておりません。
次に、近年、サルコペニアということで、筋肉の減少、あるいは骨が弱まるような状態のことが非常に強く言われています。これらと食事に関係する資料を探したのですが、直接的な関係を見たものが見当たりませんでした。変形性膝関節症の発症と食事の状況を見たものが日本人のデータで1つ見つかりましたので、御紹介します。
KLグレードというのが変形性膝関節症のランクを示したものですが、グレード3というのはかなり状態が悪いもの。グレード2も膝関節症があると判断されるものの割合です。
こちらは、1日のビタミンKの摂取量とグレード2以上、あるいはグレード3以上を示した方の割合を示したものです。
これで見ていきますと、最もビタミンKの摂取量の多い4th(highest)というグループでの発症が一番低くなっています。
ただし、このグループのカットラインというのは、ビタミンKの摂取量で286μgというもので、参考1に示してありますように、現在の食事の摂取基準や国民健康・栄養調査における摂取量と比べると、非常に高いものとなっております。
次は11ページになります。沖縄県は長寿県として長らく言われています。最近、少し順位が落ちてきましたが、男性は1985年で1位、女性は1975年から2005年に1位となっておりました。それを支える食事の要因がどのようなものかという研究報告が幾つかあります。
左側は、総死亡率の変化と食事の変化を比べたものです。日本全国での値と沖縄県での総死亡率とそれぞれの食事内容を比べてみますと、沖縄県の食事の特徴として、肉、豆類、緑黄色野菜の摂取量が多く、塩分の摂取量が少ないという特徴が見られます。
右側は、沖縄の食事と他の国で言われているいわゆるDASH食、あるいは地中海食、健康のためによいとされている食事の配合バランスとを比較したものです。
現在の長寿者の若いころの食事、1949年というところが伝統的沖縄食としていますが、この時点では炭水化物の摂取比率が非常に高く、ナトリウムの摂取量が少ない、カリウムの摂取量が多いというパターンですが、2005年の近代の沖縄食になると非常にバランスが変わってきています。
それでも、欧米の国で循環器疾患の予防のための目標とされるような食事の比率と比べると、ナトリウム摂取量が非常に多い、カリウムが少ないということはありますが、炭水化物、たんぱく質、脂質のエネルギー比率としては非常に近いものになっています。
最後に、高齢者の食事を取り巻く状況を幾つか御紹介させていただきます。
左側のほうは、昨年度、老人保健事業で行わせていただいたものですが、二次予防事業、少し自立度が落ちた方が参加している介護予防事業への参加者の方に聞いたものです。
こちらで見ますと、買い物や料理に困っている方というのは、女性では年齢が高くなるほど多く見られています。
「料理で困っていること」の中で、男性では「調理がわからない」、あるいは男女とも「献立を考えるのが大変」「レパートリーが少ない」が高くなっています。
また、「買い物で困っていること」の内容としましては、「重い物の買い物が困難」「階段・坂道がつらい」ということがあがってきています。
12ページの上「食料品店と住民の距離」ということを見ていきたいと思います。
国民健康・栄養調査の中で、生鮮食品の入手を控えたり、入手ができなかった理由として、年齢が高い方では、「距離が遠い」「交通の便が悪い」というのが非常に高くなっていますが、40~59歳の方では「店が開いていない」「生鮮食品の調理ができない」というほうが多くなってきています。
また、店舗から自宅の距離というのを推計した「食料品アクセス問題の現状と対応」という調査の中で見ますと、特に地方圏では店舗まで500メートル以上という65歳の方が非常に増えていること、また、特に生鮮食料品店までの距離が500メートル以上あるにもかかわらず、自動車等の移動手段を持たない方が多いという傾向にあります。
一方で、12ページの下のほうは台湾のデータですけれども、高齢者を対象とした調査では、調理や買い物をしている頻度が高い人では死亡率が低いことが指摘されています。
こちらについては、こういう人たちは活動量が多いとか、料理をするということが認知症予防に役立つのではないか、あるいは料理や買い物をよくしている方の食事内容がいいのではないかという考察がされておりまして、直接的な原因はわからないのですが、ある程度買い物、料理が継続できるということが必要かと思います。
13ページが最後の図になります。55歳以上の方が仮に自分で食事の用意ができなくなった場合に利用したい食事サービスを聞いた調査があります。
最も多いのが民間による配食サービスの希望で、全体で見ますと34%。次いで公的な配食サービスの利用が29.2%となっています。
その後に続いて、食材の宅配サービス、ホームヘルプサービスなどが出てきております。
13ページ目の下のところはまとめとなりますが、こちらのほうは、時間も過ぎましたので、読んでいただくことで割愛させていただきたいと思います。
以上です。
○中村座長 どうもありがとうございました。
それでは、まず本日の発表内容に関する議論を深めていただきたいと思うのですが、これから健康な食事の概念整理を行うに当たりまして、資料4として事務局から論点整理に向けた枠組み案が示され、本日の構成員の方々からの話題提供の要点を位置づけたものを整理しております。
また、3点ほど大きな論点も示されており、今回はこの3点を中心に、発表内容の質疑も含めながら御意見を頂戴したいと思っております。
まず論点1「『健康な食事』における日本人の食事パタンについて」と、論点2「『健康な食事』における食事パタンを支える視点や要素について」、議論していきたいと思っております。
食事のパターンは、本日御発表内容の共通点でした「健康な食事」のあり方を検討していく上で重要な視点となると思いますので、御発表いただいた先生方から、補足などを含めて再度御意見をお伺いしたいと思っております。
まず、岡村構成員のほうからいかがでしょうか。
○岡村構成員 私のほうは循環器疾患の予防という観点からの整理をさせていただきましたが、一つ言えるのは、現状の日本食というのはそんな捨てたものではない、非常にいいところがあるということを強調したいということであります。
ただ、1点、先ほど沖縄食の話もいろいろありましたけれども、ナトリウムが多いというか、塩分が多いところが、循環器の健康から見たら唯一の瑕疵があるのかなというところであります。もちろん、シンプルなのが一番大事なのですが、かけ離れた理想的なものを出しても誰もついていけないので、現状の状態で、ただ、塩分のところは何とかしたほうがいいのではないかというという整理です。
また特に循環器から強調したいのは、魚を食べる文化というのを大事にしていかなければいけないということと、あと、欧米人並みに太らないほうがいいだろうということ。恐らくここについて話している内容は、私の後に発表された構成員の先生方とそんなに変わっていないのかなと思っておりますが、シンプルに言うと、そういう論点かと思います。
○中村座長 とてもスマートに整理していただきまして、ありがとうございました。
続きまして、幣委員のほうからお願いいたします。
○幣構成員 健康な食事というのは私たちも目指しているものではありますが、今回お示しさせていただいたガイドラインとの比較などにもありますように、日本人ならではの炭水化物の摂取量の維持というものは、御議論の中でぜひとも御検討いただきたいなと思っています。
炭水化物量を減らしていきますと、高脂肪、高タンパクという形で大きな問題点につながっているというのが最近の動向ではないかなと思いますので、適切な炭水化物量を摂取した上で、その中身、食物繊維の摂取量をふやすとか、いろんな取り組みを入れていただきたい。
特に果物の話題も提供させていただきましたが、実際のところ果物の摂取量は、高齢者の方たちは結構とっているのですが、若い方たちは本当に果物離れというものがありまして、これから予防の話をしていく上では、果物とか野菜をいかに摂取させるかということも大きな課題になるのではないかなと考えます。
時間の関係で余りお話しできませんでしたが、溝上先生たちがいろいろやられた耐糖能異常発症予防の観点からも、日本人が摂取量として課題を持っている野菜、果物、乳製品等というのは、やはり大きな問題点になるのではないかなと思いますので、そのあたりをしっかりと議論していきたいと考えております。
○中村座長 ありがとうございました。
高田構成員、いかがでしょうか。
○高田構成員 私は、自立度をできるだけ維持した状態で長生きするための食事というのを考えてはきたのですが、エビデンスとしては非常に限られておりまして、これは長期のデータの蓄積がまだ非常に少ないということと、実際には何歳のころの食事がどう影響するかということや、元気で長生きされている高齢者の食事を見ても、それが世代間差なのか、そのことによって長生きしたのかなどの違いが検討しにくいという限界があります。
ただ、限られたデータの中から見ていきますと、大豆・大豆製品の摂取量や、乳製品、魚、野菜、海草あたりの摂取量の高いことというのが比較的共通して出てくる項目かなと感じております。
○中村座長 ありがとうございました。
ほかの先生方から御意見ございますか。では、どうぞ。
○伏木構成員 きょうは、最初の2題の発表のところで細かい、あるいはいろんなポイントがあるところを、ものすごくめり張りをつけて重要度を示していただけたという点で、私は大変すっきりした思いがいたしました。しかも、お二人のおっしゃっていることがすごく近くて、魚を食べる文化を大事にしようということと、脂肪の摂取は減らしたほうがいいだろう、全体のカロリーは低いほうがいいだろう、伝統的な食の中に何かいいものもあるだろうと。そういう意味では、ものすごくよくわかりましたし、納得できる話でした。
ただ、今、日本の伝統的な食というのがだんだん減ってきていまして、米の摂取量も、みそ、しょうゆ、みりん、全部右肩下がりになっておりまして、何とか伝統的な日本食が息絶え絶えながら、魚も食べている。
和食というのはどうしても塩分をとり過ぎるという指摘があります。しかし、きょうのお二人は、一番最初にそれをばかっと持ってくるわけではなくて、全体の中で捉えるという意味で、そこがものすごくわかりやすかったのです。
いわゆる伝統的な食というのは、どうしても御飯を中心にして、そしてちょっと濃い目の味つけのものというのが大事で、この辺を外してしまうと、全体の日本食ががたっとなってしまうという可能性をすごく危惧しております。
そういう意味で、魚を食べる、脂肪を減らす、伝統的なものを食べる、これは非常にいいことで、特に岡村先生にお聞きしたいのですけれども、今の日本食は割と捨てたものじゃないという御発言は、大変そのとおりだと思いました。さらに言えば、ちょっと塩を減らしたほうがいいだろう。この感覚はすごく正しいと思うのです。
専門家の立場としてお聞きしたいのは、どのくらいまで目をつぶれるかということ、そちら側のほうが現実的なような気がしています。すごく理想的に言ってしまうと、先ほど話が出ましたように、現実と離れてしまって、結局、誰もついてこられないということになってしまいますし、お二人のおっしゃったことは大変現実的で、僕はすごくいいなと思いました。
できればこのくらいまでは目をつぶれるという感じ、もちろん数字でなくて表現でも結構ですけれども、それを伺いたい。
○岡村構成員 非常に難しい御質問なのですが、医療関係でも非常に現実的な人からピューリタンの方までいらっしゃって、学会でも議論があるところなのです。
ただ、私個人の考え方で言いますと、日本人の食生活のもう一ついい点は、多種多様なもの、いろんな国のもの、いろんなところを起源にしたものが食べられるので、逆に毎日、日本食を食べろということには恐らくならないということで、日本食を食べる日はちょっと塩分が多いかもしれない。しかし翌日、別のものを食べたら、そこで塩分を調整しましょうと。一発だけとか、例えば動物実験みたいに同じえさをずっと食べるわけではなく、トータルとして調整できるところが日本の一つの強みではなかろうかと思うので、1食で見るというよりは、全体のバランスとして見ていくというのが非常に大事かなと。
先ほど言いましたように、では、調理するのが難しいとか、いろいろありますので、それは逆に供給面のほうでうまく提供できるようなシステムというのがあれば、いろんなものがチョイスできるということになってくるので、多様性を失わないということが一番大事ではないかなと思います。
答えになっているかどうかわからないのですが。
○伏木構成員 ありがとうございました。
○中村座長 幣先生、いいですか。
○幣構成員 治療の面からいきますと、欧米各国では6グラムという目標を全国民にすべきだというような御議論も出ているかと思いますが、日本人としては、ふだんから12グラム程度の食塩摂取量があって、6グラムに持っていくというのは、伏木先生がおっしゃるみたいに、極端なことを数字化するのは非常に難しいと思います。
患者さんを見ていますと、高血圧に陥られるような患者さんは、もともとの食塩摂取量が12グラムどころではなくて、少し多目な方が非常に多いということから考えますと、ふだんの生活から減塩ということをほんの数グラムやっていただくだけでも十分対応ができそうな気がします。僕自身は、極端な数字を持っていくよりは、病気をお持ちでない健康な方たちのためには、日本人なりの10グラムとか8グラムとか、少しの減塩で何か御議論していただくのがいいのかなと思っています。
○中村座長 ありがとうございました。
理想的には5グラムとか6グラムとか、先生方は卓上で議論されるのですが、現実的に日本人はまだその倍ぐらいは食べているわけでありまして、このあたりで実際の食事を提供される側からの御意見をお伺いしたいのです。
まず、タニタの宇野構成員、いかがですか。
○宇野構成員 タニタ食堂では、塩分に関して言いますと3グラム程度と言っているので、先生方の6グラム、7グラムという目標値からすると、かなり多目の設定になってしまうかなと思うのです。
○中村座長 1食が3グラムね。
○宇野構成員 1食が3グラムです。
○中村座長 だから、朝昼晩食べたら9グラムになるということですね。
○宇野構成員 9グラムになります。
ただ、毎日タニタ食堂の御飯なわけではないですし、それがいいか悪いかわかりませんけれども、1食ということと、あとは健常人の方に対してお出ししているので、そのぐらいで御容赦いただきたいなと。
○中村座長 というところですね。
では、ローソンの鈴木構成員、いかがですか。
○鈴木構成員 コンビニでも結構濃い味が売れまして、恐縮で、申しわけないのです。
ただ、多様化が進んでいるので、ターゲット別に商品を分類していって、これはどういうときに食べるのだということで、夜御飯で食べるタイミングでいろんな女性、社内のメンバーに食べてもらって、これは濃過ぎるねという話をちゃんと踏まえて、最終的な味を決めていくというのをやっています。
ビールのおつまみみたいなものは結構濃い味がまだまだ続いてしまっているのですけれども、物によって、ターゲット別に、濃過ぎないような味というのは社内でモニターをかけながら、最終的なジャッジをするのはある程度年のいった偉い者なのですが、その辺のモニターがきっちり通ったものを食べてもらって、最終的に判断をするようには変わってきています。
ただ、若干塩分が多目というのが続いているところは認めざるを得ないので、変えていきますというところです。
○中村座長 例えばマーケティングの観点から、食塩の濃度をこのぐらいにすると購買量が減るとかという研究はあるのですか。
○鈴木構成員 塩分によって販売数が減っていくというのは、同じものをずっと出し続けているわけではないので、実際はないです。
ただ、三十何年も前からローソンはあるのですけれども、調べていったら、だんだん減っていっているというのはあると思います。調べないとあれですけれども。
○中村座長 商品を開発されるときに減塩をしようという心がけとか、何か志向はあるのですか。
○鈴木構成員 あります。時々減塩の波、ブームが来て、ほかのものより売れなかったりすると、店からは消えていく。またしばらくすると、そういうブームがわっと来るというのがあって、その中で塩分だけなのかというところも我々はちょっと考えるところがあります。切り口がいろいろあって、野菜が多いほうがいいとか、そういう切り口が時々わっといろんなモードで来るので、その時々の求められるものを目にしてつくってしまっているというのはございます。
○中村座長 では、減塩のブームもつくらなければいけないということですね。
○鈴木構成員 皆さんでぜひつくっていければと思います。
○中村座長 では、シダックスさんの高戸さん、いかがですか。
○高戸構成員 給食のほうも、先ほどタニタさんのほうからありましたけれども、従来は3グラムを一つの目安にしてヘルシーメニューを構成しておりますが、どちらかというと味のインパクトの強いものが売れてしまって、ヘルシーメニューを選ぶのは女性や、血圧のことを心配される方など、ある程度病態をお持ちの方というふうに絞られてしまい、売れる量が限られてしまうというのが非常にネックになっております。メディカルの現場では、塩分がかなりコントロールされていますから、若い方も召し上がるのですけれども、一般の方々に向けて社員食堂等々で提供しますと、やはり味のインパクトの強いものを選ばれてしまうという傾向があります。味に対する慣れの問題もあるのかもしれませんが、提供する側からすれば、減塩というところがまだハードルが高いなと感じています。
ただ、提供する側としては、例えばみそ汁の水分量を半量にしながら野菜をふやしていくとか、いろいろな工夫を今も重ねながら提供させていただいておりますので、先ほどの野菜をたくさん食べるとか、あるいは豆をふやすとか、食材の中でコントロールできることは常にやっているつもりではおります。
あとは、周りの方々の認知を含めて、どうやって減塩に対する理解を深める環境をつくっていくのかというのは非常に重要かなと思っております。
○中村座長 ありがとうございました。
では、つきぢ田村の田村さん、いかがでしょうか。
○田村構成員 田村でございます。いつ来るか、いつ来るかと待っておりました。
先ほどの高田構成員の今後利用したい食事サービスの中に「料理屋」というのが入っていないのが非常に残念だったので、ぜひ皆さんで外食産業を盛り立てていただきたいという気持ちが非常にあります。
「外食」というのは、外の食事と書きますが、私のつき合っている糖尿病の先生に言わせますと、「害食」であるということで、すごい言い方をされます。
前回もお話ししたかと思いますけれども、糖尿病の患者さんの食事会を17年ぐらい前からしております。2カ月に1回しているので、今、ちょうど90回ぐらいになります。最初は1,444キロカロリーあったのです。それを半分残しましょうという会をする。40人の半分残すということは、20人の料理を捨てるということになりますので、それをいかに捨てないで、700キロカロリーぐらいを目指していくかということをやったところ、今はほぼ720~730でおさまるようになりました。
門前の小僧習わぬ経を読むというように、毎回毎回の繰り返しによって、あ、これはこのくらいのカロリーなのだ、海草というのはゼロなのだけれども、実はここにゴマをかけたり、ドレッシングをかけたりすると、それがすごくふえるのだと。当たり前のようなことなのですが、今まで調理人としてやっていた私たちが、料理人としてやらなければいけないという使命感をその先生にいろいろと教わったような気がいたしました。
三、四年前に木村玄次郎先生が団長になっておやりになった減塩プロジェクトという会の中で、マスメディア70名の方に塩分2グラムで弁当をつくってくれと。お吸い物も入れて2グラムで弁当をつくった。おわんのおだしから何から全部考えまして、集中攻撃になってはいけないので、2グラム以上は使わないという目標をきちっと立てて、白い塩は一切使わずに、塩のかわりに薄口じょうゆを使いました。薄口じょうゆが小さじ2杯で大体1.8グラムの塩分濃度になりますので、小さじ2杯だけを1人前のお弁当の中に入れて、濃い目のおだしを使ってお料理をさせていただきました。
皆さん、全部召し上がっていただいて、非常に満足していただいたわけです。
見たところ、同じようなお弁当なのですが、実はおだしを使わないでつくると、非常に塩分や糖分をたくさん要します。ちゃんとしたおいしい基本的なおだしをきちっと使えば、塩分はすごく少なくて済むわけです。
別にローソンのお弁当だとかそういうのがまずいから味を濃くしたとか、そういうことではない。僕も食べています。非常においしいです。
うな重と肝吸いというペアがあります。僕が若いころ料理学校へ行ったときに先生がうな重をとっていただいた。僕は、そのときにゴマ豆腐のおわんについて皆さんに講義をしたのです。日本料理のおわんというのは、一わんでお料理としてどうぞとお出しする。おわんのふたをあけて汁を飲むというのがお料理でございます。
ところが、そのときに、肝吸いは生臭くてしょっぱいから、僕がきょうつくった料理で食べようという生意気なことを言って、ウナギを食べまして、自分のおわんを飲んだところ、お湯みたいな感覚だったのです。
なぜかというと、うな重と肝吸いというのはそういう相乗効果で、油っぽくなった口をさらっと流してくれて、またウナギが食べたくなるということ。
ですから、その肝吸いをそのままうちのお料理として「おわんでございます」というふうにお膳に出したとすると、お膳をひっくり返されてしまうぐらいしょっぱく感じます。
何と食べるかということが非常に大事なことです。
今のタニタ食堂さんも、野菜のおかずの塩分、おつゆ、御飯、そのバランスというのは、濃い目の味ではなく、薄目の主菜があったら、おわんをちょっと濃い目にするとか、多分そういう工夫をなさって全体のバランスをおとりになっていると思います。
日本料理の場合も、例えばお刺身を食べるときは自分でしょうゆの加減をいたします。べちょっとつける人もいれば、ワサビを入れてワサビじょうゆとして食べる方もいらっしゃいますし、ちょっとしかつけない方もいらっしゃいます。個人個人、こちらから出した塩分とはまた違う摂取がございますので、その辺のバランスというのは非常に難しいと思います。
ただ、91歳まで元気でおりました私の祖父は、20種類の食べ物を食卓に並べようというのを目標にしておりました。それは例えば缶詰であったり、煮たお豆であったり、ノリであったり、梅干しであったり、そういう五色をそろえたりすることによってバランスをとっているのだということをよく言っておりました。
ついこの間、90歳以上の高齢者の合コンではなく、同窓会みたいなのがあったのですけれども、そのときにうちの女房がお座敷で聞いてきた話ですが、皆さん、どうしてこんなにお元気でいらっしゃるのですかと聞きましたら、食べ物もさることながら、まず風邪を引かない、転ばない、最後に義理を欠くということ、つき合いには全部乗らないというのが長寿の秘訣なのだということをよく言っておられたそうです。
ですから、私は今、57歳でございますけれども、まだ義理を欠きたくないので、これからどうなるかわかりませんが、できる限り長寿を目指していきたい。
おいしい料理というのは、塩分があっておいしいのと、うまみがあっておいしいのとは違うと思いますので、その辺のバランスもこれから考えていかなければいけない分野ではないかと思います。
○中村座長 ありがとうございました。
提供する側の最後のスピーカーになると思うのですが、パルシステムの八幡さん、いかがでしょうか。
○八幡構成員 大変興味深いお話をありがとうございました。
パルシステムは、まず素材としての食材の提供と、冷凍食品とかチルド品、加工品の提供と、今、お話を伺いながら思ったのですけれども、食材を使ってのレシピというのを毎週のカタログで提供しているのですが、現状としては塩分のところまではまだ配慮できていないという形です。組合員さんの中でも、とにかく子供に元気よくたくさん食べてほしいという世代に対しては、なるべく塩分量を抑えていきましょうという課題はまだまだ遠いのかなというところがあります。
お子様の手が離れた50代以上の世代の組合員さんにしても、自分でつくるときには、御自分の味覚の好みもあるでしょうから、今、食塩量を1食当たり何グラムにしていきましょうというほどのレシピは提供できていないという現状があります。今、お話を伺っていて、そこが課題かなと思いました。
加工品に関しては、組合さんからの要望の高まりもありまして、何年か前からカタログ上、食材を選んでいただく段階で塩分量とカロリーのほうは表記するようにしておりまして、そこは最近、組合員さんからもすごく要望の高まりがあるというのは感じております。
例えば食べてみたけれども、ちょっとしょっぱかったという御意見とか、塩分量を減らしてほしいという意見は多いのですが、もっと味を濃くしてほしいという意見は全く来ませんので、組合員さん、消費者のほうでも塩分に対する認識がすごく高まっているなというところは感じます。
今、お話を伺って思ったのですけれども、パルシステムも、だしの大事さを伝えたいというのは昔からやっておりまして、おだしのうまみでなるべく食塩量を減らすことができるという知恵、その辺は逆に若い方たちに伝えていかなくてはいけないかなと思いますし、だしのうまみというところ、伏木先生の学習会も実は行っておりまして、そこですごく共鳴する組合員さんが多いのです。
おだしで塩分量を効率的に減らす。減らすためにおだしをとるというわけではないのですけれども、おだしというところに一つ注目すると、塩分を効率的に減らすことができるとか、お酢の力、お酢を上手に使うと塩分が少なくて済むとか、組合員さんはそういう情報提供にはすごく敏感に響かれるところがありますので、若い組合員さんにはそういった情報提供を積極的にやっていく必要があるのかなと思っております。
○中村座長 ありがとうございました。
時間があれば総合的なパターンの議論をもう少し深めたいと思うのですが、今回3番目のスピーカーでありました高齢者の問題に関して少し議論しておきたいのです。高齢者の目指す姿について、皆さんから御意見をお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。
江頭委員はいかがですか。
○江頭構成員 今、先生方のお話を聞いていて、私は、ふだん在宅で療養されている高齢者の方、診療所に外来等で来られる高齢者の方、また、介護予防とかでいわゆる公民館とか公共施設に来られる高齢者の方など、いろんな高齢者の方と接している中で、恐らく理想というところでは、公民館とかそういったところに介護予防で来られて会食もできる方というのは、比較的バスに乗って駅前に来ることもできるような高齢者であり、高齢になっても自立して生活ができているというところが食とつながっている。そういったことができるということが一つ大事なのかなと思って聞いていました。
その中で、ちょっと論点がずれてしまうかもしれないのですが、先ほどの塩分のところで、実は高齢者の方は塩分を気にされているところがすごく多いのですが、実際に今までの食生活、副食が少ない、御飯とみそ汁と漬物といった粗食で生活されてきている中で、食生活には欠かせなくなっているものだということが一つ。
あと、実際に気にはなるのだけれども、例えばいろいろな食品の表記が、塩分表記ではなくてナトリウム表記になっている部分で、ナトリウムを塩分に換算するために2.54を掛けなければいけないとか、その単位はどうだという話までしていかなければいけないというところで、実は介護予防で話もしたりするのですが、それを一般の方々に理解していただくのはなかなか難しいかなと思います。
意識を統一化するというところで、そこの表記がもし統一化されれば、塩分であれば、食塩表示というところでいけば、また違う形での啓蒙になるのかなと思いました。
あと、高田先生の資料等を見ていて、高齢者は意外に乳製品をとっている、キープしているのだなというところが、現場の感覚では違っていてちょっと意外な感じがしています。乳製品を頑張ってとっていこうねという話をすることのほうが多かったので、データ的に見たときにはとれているのだなという感じがしました。
生活というところでは、先ほど買い物に関してとか、調理上困っていることというのがあったのですけれども、確かに買い物、食材の調達というところが非常に難しいということと、実際に何をどうつくったらいいというところでのレシピ等の意見もあるのですが、と同時に、一緒に食べる人がいない、孤食の問題というところで、自分一人だから食事も単一化してしまうとか、自分一人だから食が進まないとか、一緒に食べてくれる喫食者の有無といった問題も高齢者の生活というところではあるのかなと思いました。
いわゆる高齢者のひとり暮らしや老々夫婦、世帯が変わってきているというのが最初のデータであったと思うのですが、まさにそういったところが、食生活、食べ物というよりも、食べる環境というところにすごく影響しているなという感じがしています。
○中村座長 ありがとうございました。
高齢者の問題について、ほかに御意見ございますか。藤谷先生、いかがでしょうか。
○藤谷構成員 私は、皆様よりもさらに有病高齢者の方にお目にかかることが多いと思います。いろいろ感じるところはありますが、ともに食べるというのは非常に大事です。病院が個室化していますし、このごろは大部屋でもカーテンを閉めて食べるのです。また、高齢化して、大部屋でも4人でしゃべれるほど元気のない高齢者がふえているのです。耳が遠かったり、いろいろありまして、しゃべれないのです。そうすると、孤食だと食事量は少ないです。食堂に行ったほうが皆さんは食べますし、楽しければ減塩食であろうとも食べられるし、孤独であれば、多分味の強いものとか、刺激がないと食べなかったり、そういうことがあるのではないかと思います。
ですから、最終的に宅配食になるのかもしれないけれども、では、宅配食ならいいかというよりは、動けるうちはもう少し出て、それこそ外食ではないですが、各地でセントラルキッチンみたいな形で、ともに食べる機会が増えるといいと思います。在宅の方々を招いて、どこかで食事をするようなことをやっている事業も知っています。そういうところだと召し上がったり、しゃべりながら食べる、ともに食べる楽しみがあります。そういうときに一緒に食事の健康についてのお話を聞くようなこととか、いろんな角度で、最後の段階に行くまでにまだまだ防げることがいっぱいあるのではないかと思います。
実際に有病者の方は、若い方でも独居で職もなく糖尿病で、1人でむなしくて、ただ食事に気をつけ続けてもどうするのだと、投げやりになりがちな方がいます。食事で健康を守った先に楽しい生活があるかどうか、生き方全体の問題にもかかわってくるのではないかと思います。
○中村座長 ありがとうございました。
時間があと10分しか残されていないので、できるだけまだ発言されていない先生方からお願いしたいと思うのです。高齢者の問題に限らず、本日前半で議論がありました健康な食事に関する食事のパターンに関して、どういうパターン化がいいのかということも含めて議論していただければありがたいです。
前回発言された佐々木先生と武見先生から、本日の御発表について御意見をお伺いしたいと思います。
まず、佐々木先生、いかがでしょうか。
○佐々木構成員 食事のパターンというのを考えるときに、基本的に2つの考え方があると思います。
1つ目は、何らかの既にあるデータや調査結果、研究、歴史的な経緯、そういうものを踏まえてある一つのパターンをつくり、それが本当に健康的かどうかを検証するというタイプです。
もう一つのつくり方は、現在の食べ方からどのようなパターンがあるかを抽出してパターンをつくる。そのパターンが健康的かどうかを検証するという方法です。
これは全くつくり方が異なります。
きょう御発表いただいた中にダイエタリーパターンというのがありましたが、これは後者のタイプのものが多かったように思いました。私は、もとの論文をそのまま読んでいませんので誤りかもしれませんが、後者のタイプのように思いました。
その一方で、例えばアメリカのフードピラミッドや、最近のMy
Plates、日本の食事バランスガイド、地中海食のスコアというものは前者型であります。
両方を含めて最終的には食事のダイエタリー・クオリティーのインデックスとか、ダイエタリー・クオリティーのスコアというものに統一されていくものであろうと考えます。
大切なことは、今、日本人は何々が少ないからというのではなく、現状を客観的に観察し、それと健康との関係を見ていく必要があると考えます。
それだけにとどまらず、食べる楽しみとか、食料全体の問題とか歴史とかいうことを踏まえてつくられていくべきものだろう。少なくともこのダイエタリーパターン、きょうの御発表の中ではつくり方が2つあり、それによって解釈が少し異なるのだというところだけつけ加えておきたいと思います。
以上です。
○中村座長 ありがとうございました。
では、武見先生、いかがでしょうか。
○武見構成員 今の佐々木先生の御発言を受ける形ですが、今日の論点整理の資料4で言うと、1の何を食べていくかという内容の構成の食事パターンの要素に加えて、食べる楽しみとかいろいろなことを考慮する必要がある。先ほど藤谷先生からも一緒に食べるということが出たのですけれども、前回、佐々木先生が紹介してくださった地中海食に関するピラミッドの表現で、2010年に改定されたものがあります。
それはイラスト中央,ピラミッドの下にまさに人と一緒に食べることというのを位置づけているのです。それだけではなくて、例えば調理をすることとか、地域産物の考慮をすることとか、今日の資料4の下のほうにある「生活」とか「環境」とか、そうしたところに踏み込んだ内容の要素も取り込んで、地中海食というもののガイドラインとしています。これは,関連の協会とか、あるいはヨーロッパとかアフリカの栄養学会とか、いろんなところの大学が一緒になって2010年に改定したものです。
たまたまこれをモロッコの先生から紹介していただいて見たのですけれども、そういうことを考えると、食事パターン,プラス食事のあり方ということを考えて整理をしていく必要があるのかなと思います。
実際のガイドラインの説明にも、地中海食というのは、言うなれば、生活スタイルを提供する、生活の仕方そのものを提供していくものなのだという表現があって、そういうところの要素に、先ほどから出ているどう調理をしていくかとか、誰と一緒に食べるかとか、行動面や生活の面であるさまざまなことが加わっていくのかなと思います。
本検討会での論点整理もきょうは2回目なのですが、そうしたことについてもっと議論をしていく必要があるのかなと思いました。
以上です。
○中村座長 ありがとうございました。
参加されている全ての委員から御意見をお伺いしたいので時間があれなのですが、田中先生、お願いします。
○田中(啓)構成員 きょうは大変参考になりました。
私自身、きょう順天堂大病院に検査に行きましたら、糖尿病予備軍だと言われまして、それで、今、お話を伺っていますと、食事という形で健康ということを余り意識したことがなかったという反省もあり、外食産業の方々、あるいは料理を出される側の方々が相手方の健康ということに留意し、心がけているというお話を聞きまして、非常に感動いたしました。
私は生化学者ですので、その立場から1点だけ申しますと、健康で高寿命を維持できるポイントは何かと言ったら、学術的にはカロリーを制限するということであります。そのメカニズムとしてはクロマチンの構造を変えるなどいろんなことが言われていますけれども、短寿命の線虫にしろ、猿を用いた20年間、30年間の研究にしましても、カロリー制限をすることのみが、半端なカロリー制限ではないのですが、寿命を伸ばすための科学的に実証された唯一の事実であります。
そういうことと、先ほどからお話がありましたように、減塩ということを視野に入れますと、日本の食事がいいというのは、全く同感だなと思っております。
食事との関係でこのような健康ということを世界的に発信することはすごく重要だと思っているのですが、もう一点、私自身の食生活を考えますと、食事と飲酒ということが不可欠な要素になってきます。これとの関係を議論しなくていいだろうかというのが私の個人的な感想でありまして、飲酒が食事の質と量にすごく影響してくるということを、ここにおられるお酒を飲まれる方は感じておるのではないかと思いますので、この視点を一つ御議論していただければと思っております。よろしくお願いします。
○中村座長 ありがとうございました。
引き続きまして、藤島先生、どうぞ。
○藤島構成員 きょうは大変勉強になりました。ありがとうございました。
ただ、その中でよくわからないこととしては、例えば青果物をたくさんとるのは非常にいいことだというのは、私もそのとおりだと思っているのですが、例えば青果物にもいろいろなものがあります。ジュースもございますし、あるいは冷凍したものもありますし、乾燥したものもあります。その辺のところは全然考えなくてもよろしいものなのかどうか。同じものとして重量で計算できるものなのかどうか。そのところがわかりにくかった第1の点です。
あと一つは、この間もどなたかおっしゃったのですけれども、例えば野菜という場合に、芋類を別にするのはなぜなのだろうか、あるいはキノコ類を別にするのはなぜなのだろうか。それらを一緒に考えた中で、例えば芋類、キノコ類も入った野菜としてこれだけとればいいですよということはできないものなのだろうか。逆に分けておいたほうがずっといいのですよということになるのかどうか。私自身としては、その辺がわかるならば、それこそきょうのパターンなども理解しやすいかなと思っておりますので、そのあたりをお願いいたします。
○中村座長 ありがとうございました。
渡邊先生。
○渡邊構成員 きょうはとても良いお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
私は管理栄養士の養成施設に勤務しております。学校では、食事摂取基準をもとに学生が献立作成などを学んでいます。調理実習の基本調理実習では、どちらかと言えばおいしいということを優先します。ですから、塩分量は1食で3gとか、行事食の場合はもっと多くなることもあります。
学生は、献立を立てることで、食事摂取基準どおりに献立作成を行うことが、大変なことであり、それを目指さなければいけないということがよく理解できるようです。
現在の管理栄養士教育では、食事摂取基準を基準に食事パターンを教えています。お話を伺っていてここでも、食事摂取基準が基本になるのかなと思いました。食事摂取基準でも、数値の利用については1カ月を考えてということですので、塩分量については本日御発表くださった先生方もそういうお考えなので、よかったなと思いました。
今回ちょっと気になりましたのは、だしのことです。昆布とかつおでとれば、そこに含まれる塩のことは全然考えなくてもいいわけですが、インスタントのだしは、製品自体の約半分が食塩です。そうすると、インスタントだしを利用している方は、塩を入れているつもりでなくても、思わぬ食塩が食品に入ってしまうという場合もあります。そういったこともうまく啓蒙というか、伝えていくことができればいいかなと思いました。
最初の岡村先生の御発表なのですけれども、食品成分表は、国によってエネルギー換算係数が違ってくるので、同じデータでも、使っている成分表によってエネルギー値が変わってくる場合もあるので、その辺はどうなのかなと思いました。
○岡村構成員 INTERMAPは、調理済みの食品について、アメリカの中央センターで全部共通の成分表を作成して使っています。だから、各国のものを使っていないです。
○渡邊構成員 わかりました。ありがとうございました。
○中村座長 ジャスト4時でございまして、参加された先生方から全て御意見をいただきました。
最後に、事務局から御連絡をお願いいたします。
○河野栄養指導室長 次回の開催ですが、10月21日月曜日10時から12時を予定しております。詳細が決まり次第、開催案内のほうを送らせていただきます。また、御発表いただく先生方には事務局より改めて御連絡いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
○中村座長 きょうはお暑い中、御参加いただきまして、ありがとうございました。本日はこれで閉会といたします。
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