ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 救急医療体制等のあり方に関する検討会> 第6回 救急医療体制等のあり方に関する検討会(議事録) (2013年7月17日)




2013年7月17日 第6回 救急医療体制等のあり方に関する検討会(議事録)

○日時

平成25年7月17日(水) 9:00~11:30


○場所

厚生労働省 省議室(9階)
東京都千代田区霞が関1-2-2


○議事

○田中救急・周産期医療等対策室長
 定刻となりましたので、ただいまから第6回「救急医療体制等のあり方に関する検討会」を開催させていただきます。本日は暑い中、先生方には御多忙のところ御出席を賜り、誠にありがとうございます。本日は全員出席と聞いておりますが、阿真委員と加納委員は少し遅れるとのことです。
 本日の議題に関連して、参考人として三重大学産婦人科教授の池田智明様、北九州市立八幡病院副院長の伊藤重彦様にお越しいただいております。また、関連省庁から、この夏の人事異動に伴い、消防庁救急企画室の海老原室長に替わり、齋藤室長に御参加いただいております。
 事務局にも人事異動がありましたので御紹介いたします。社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課こころの健康づくり対策官の河嶌です。以降の議事運営については有賀座長にお願いいたします。

○有賀座長
 資料の確認を事務局からお願いいたします。

○辻救急医療専門官
 冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきます。御協力のほどよろしくお願いいたします。資料の確認をさせていただきます。
 本検討会の議事次第、構成員名簿、本日の参考人の名簿、座席表、開催要綱が付いております。資料1「論点一覧」、資料2「論点整理」、資料3「中間取りまとめ(案)」です。参考資料1「母体救命事案における医療機関との連携について」、参考資料2「精神科救急の受入れについて」です。資料については以上です。資料の不足等がありましたら事務局までお申し付けください。

○有賀座長
 議事次第に沿って議論を進めていきます。資料1は「論点一覧」で、資料2は論点5と論点6に関することが書いてあります。多くの方は既にお分かりだと思うのですが、私自身の頭の整理も含めて発言させていただきます。資料3「中間取りまとめ(案)」があり、第1「はじめに」とあります。第2「救急医療の現状及び課題」とあります。第3「検討事項」とあり、1.メディカル・コントロール体制、2.救急医療体制の充実強化、3.救急患者の搬送等について、4.小児におけるとあり、その続きの5と6が、それぞれ母体救命事案と、緊急性の高い身体合併症の精神疾患うんぬんということです。本日の論点一覧の5と6というのは、資料3の中の5と6であります。「その他」というのもありますので、まだ先の議論がないわけではないのですが、どちらにしても、本日のメインテーマは論点にあるように5と6になります。
 本日の議題は論点5と論点6を先生方に議論していただき、それで中間取りまとめの全体像についてのことを事務局から説明していただく、というような形で全体を整理したいと思います。本日も2時間半の長丁場ですが、如何せん中身が前から申し上げていますように、広くて深いということになりますので、上手に時間を使いながら進めたいと思います。最初に、論点5の説明を事務局からお願いいたします。

○辻救急医療専門官
 資料2の論点整理の5「母体救命事案における救急医療機関との連携」について御説明いたします。第3回検討会で母体死亡の現状、診療施設の連携の現状について説明し、母体死亡の原因となり得る疾患への搬送基準の必要性、母体搬送システムの構築の必要性などを取り上げさせていただきました。ただ、前回は議論が搬送体制について集中しておりました。そこで、今回はその他のことについて御議論いただきたいと思います。
 参考資料1を併せて御覧ください。参考資料1の1ページでは、「母体死亡の原因疾患」について示しております。この資料は、第3回検討会で池田参考人より御報告いただいた資料です。母体死亡の半数近くが脳実質内出血やくも膜下出血といった間接死亡であることが示されております。そこで、今回の具体的な論点として、母体死亡の半数は産科以外の救急疾患であり、原因疾患に合わせた母体搬送基準の整備が必要ではないかと挙げさせていただきました。
 参考資料1の2ページでは、改めて「周産期医療体制」を示しております。総合周産期母子医療センターや、地域周産期母子医療センターが、地域の周産期医療施設と連携を取り、周産期医療ネットワークを構築しておりますが、前述のような重症な母体に対応するためには、3ページにあるように救命救急センター等、救急医療機関と周産期母子医療センターとが密な連携を取らなくてはいけません。そこで具体的な論点として資料2に戻り、救命救急センターと周産期母子医療センターは互いに連携を取り、母体救命に努めるべきではないかと挙げさせていただきました。
 参考資料1の4ページでは、「周産期医療情報センター」の説明をしております。周産期医療情報センターは、都道府県等が総合周産期母子医療センター等に設置し、総合周産期母子医療センター、地域周産期母子医療センター、その他の地域周産期医療関連施設等と通信回線等を接続し、医師の勤務状況や空床状況などの情報を関係者に提供するものです。平成22年周産期医療体制整備指針では、救急医療情報システムと連携し、周産期母子医療センターや、その他の周産期医療関連施設、救命救急センター、消防機関等が情報を共有できる体制を整備することが望まれるとされております。
 5ページでは、平成24年周産期医療体制調べにて、「周産期救急情報システムの現状」を示しております。周産期救急情報システムを導入している都道府県は37、導入していない都道府県は10、導入しているうち救急医療情報システムと連携を取っているのは約半数という状況です。
 6ページでは、周産期医療情報センターに搬送コーディネーターを配置し、受入れ調整等を行っている都道府県もあります。右下のグラフにあるとおり、まだ実施する都道府県は少ない状況です。
 資料2に戻って「具体的な論点」として、病院間、他の診療科間で円滑な連携を図るために、周産期搬送コーディネーターの活用や、周産期医療情報システムと、救急医療情報システムの連携が必要ではないかと挙げさせていただきました。また、周産期医療の現状と母体安全に関して、市民及び医療従事者に対する啓発が今まで以上に必要でないかとも具体的な論点で挙げさせていただきました。これらについて御議論いただきたいと思います。事務局からは以上です。

○有賀座長
 本日、池田先生からしばらくレクチャーを頂くとか、そういう予定ではないのですか。池田先生レクチャーされますか。

○池田参考人
 いいえ、それは。

○有賀座長
 具体的な論点を話の種にするなり、きっかけにするなりということで、関係者の方々からお願いいたします。

○久保構成員
 非常に大事なことで、池田先生の所で私も一緒に検討させていただいています。その症例の中で、単に連携というところだけではなくて、病院の中でも最初に本当はERで管理されれば救命できた母体死亡があります。以前医政局から説明されましたが、病院間の搬送依頼が産科は多いわけです。一次施設から三次の産科に来るものですから、重症の患者さんが分娩室に運び込まれてします。本当は救急医療が必要だったのです。その患者は、ERに行けば多分助かっていたかも分からないという症例が何例かあります。
 本来ならばその病院の中で、母体の救急でも一旦はERの方へ行って、そこに産科の医者が来て、そこから上体が良ければMFICUへ連れてくるみたいなことをちゃんとやればいいのではないか。それを実行している施設もあり、病院によってはきちんと連携を取ってやっています。だけど、多くの施設はそうではなくて、ERに行くのではなく産科の方へ重症妊婦が行ってしまう。
 それが徹底すれば今の日本の母体死亡50例か60例の中の1割でも助かる可能性があり、日本の妊産婦死亡は改善されます。単に連携を取るだけではなくて、その施設の中で、どうやってその患者さんの最善の動線を作るかみたいなところまで踏み込んでやっていただければ、多分良くなると思うのですが、池田先生どうですか。

○池田参考人
 久保先生のおっしゃるとおりです。妊産婦死亡が年間50例起こっているのですが、その3割は産科出血です。その産科出血を例に取っても、発症してから心停止まで4分の3が6時間以内に起こっています。ほぼ3時間以内に心停止が起こっているという、非常にアキュートな状態の救急だと思います。産婦人科医はその出血に対してちょっと鈍感になっていることもあり、そのリアクションが遅れぎみということ。どうしても救急医療、蘇生医療に産婦人科医は不慣れなところがあります。久保先生がおっしゃいましたように、産科的な止血操作は産婦人科がする。しかし、救命救急は救急のオーソリティでいらっしゃる救急の先生がすることを、うまくその施設内でやれれば、もっともっと多くの出血死がなくなるのだと思います。欧米に比べて日本の方が3倍多く、出血死がナンバーワンというのは、先進諸国では日本とフランスだけです。イギリスは10番目です。産科出血対策というのは、非常に喫緊の課題だと思います。

○久保構成員
 それから間接死亡もそうです。頭蓋内出血とか心臓というのも、やはり産科医が手を出せないところなので、そこに関しては救急で他科が入らないと、それが診療の遅れになってくるのだと思うのです。

○池田参考人
 妊産婦の脳出血や脳梗塞という、いわゆる脳卒中というのが日本では年間120例ぐらい起こります。3分の2が出血性脳卒中。脳実質内出血、くも膜下出血を合わせてですけれども、3分の1が脳梗塞、脳洞静脈血栓症ということで、これは欧米とは全く逆です。欧米では、妊娠と合併した脳梗塞が3分の2、出血性は3分の1です。出血性に対応することに関しては、やはり脳外科の先生にということなのですが、これも手遅れになってしまっている例があるということが分かってきました。脳外科の先生の所と連携を取るということが、今はほとんどできていないということです。

○行岡構成員
 今までは産科の先生方からの御発言でしたが、そういう意味では救急というのは急速に進歩してきたと思います。我々は、産科の先生は蘇生が苦手だとは思っていないです。逆に、救急はものすごく進歩したというのがあります。何が起こっているのか分からない。病名が確定していたら何を対処すればいいということなのですけれども、何が起こったか分からないことに対する対応は進んできたかと思います。
 よく言われるのは「情報共有」なのですが、ちょっと言葉としては滑っているかなと。もう一歩突っ込むと「見える化」というか、お互いに相手がどの立ち位置にいるのか。距離感がはっきり見えないとやはり分からない、情報が生きていないと思うのです。参考資料1の4ページで、周産期医療情報センターで、6ページの搬送コーディネーターがそこにいて、こういうことをしていると。私の理解では、東京都は消防庁の指令センターにあります。5ページを見ると有りが37で、無しが10と。恐らく救急側で周産期情報センターが自分の県にはこれがあって、そこにコーディネーターがいて、どういう仕事をしているかという、救急専門医は多分専門医試験に出したら余り正解率は良くないのではないか。
 何を言っているかというと、我々自身も十分理解していない。東京都の周産期情報医療センターを作る時だったと思うのですけれども、是非産科の先生方に、東京消防庁のディスパッチセンターへ行ってくれと。119番へ電話が掛かってくるのを聞いてくれと。病院に電話を掛けているのを聞いていただいたら、こんなに電話が掛かっているのですかと。その中の一部として入ってくるというのを御理解いただいたと思うのです。逆に、我々がコーディネーターが東京消防庁のディスパッチセンターへ行って、誰が周産期のコーディネーターかというのはよく知らない。我々も、これはもうちょっと勉強しないと、見える化ということが必要だと思います。
 今のがもう少し実際になると、院内での見える化、産科の先生が脳外科の人とどうする、救急とどうする、ルール上の見える化と、もっと地域全体の見える化。情報をもっと咀嚼した形での地域医療がキーワードだと。見える化による地域医療としての救急医療の実態化が、一番のキーワードかと思っております。

○久保構成員
 周産期医療協議会は全国にあるのですが、実質動いている所と動いていない所があって、これも問題なのです。私自身が思うのは、周産期連絡協議会とMC協議会が、少なくとも年に1回とか2回はコミュニケーションを持って、それでどうその地域の中でやっていくかみたいな議論がこれまで一切されていないと思うのです。そこをすると、その地域の中の医療体制がすごくできてくるのだろうという気がします。

○行岡構成員
 それは学会だけではなくて、何らかの情報発信をして進めるべきだと思います。まずそこから始めるべきかと思います。

○有賀座長
 行岡先生が、地域医療の仕組みとしてという形で御提案されたのは全くそのとおりなのだと思います。行岡先生も私は同じ世代で、救急医学の勉強をずっとしてきたことから見ると、これは欧米で勉強してきた許先生にフォローアップしていただきたいのですが、私たちの救急医療の歴史は、心臓にしろ、脳にしろ、外傷にしろ極めて急性期の厳しい部分を頑張らなくてはという人たちが救命救急センターを始めています。その当時から今に至るプロセスの中で、産科の先生方は妊婦さんに関する救急医療に関する限り、私たちに任せろという長い歴史があったことは否めない事実なのです。
 例えば、私が前の病院で救急部門を立ち上げて、地域医療の中で情報が上手に病院の中に入ってきて、そして各診療科が上手にそれに立ち上がるという仕組みを、救急の電話が入ってくるところから作るときに、象徴的なのは産科に関する電話は全部俺たちが受けるから、それはそれでやりますよと。それは、私たちが産科の救急医療に関して持っているイメージは、産科の救急に関する限り。先ほど死因のデータを最初のページで見せていただきましたが、このようなことですら、産科の先生たちから、こうなっているので一緒に頼むぜと言われると、確かに私たちは働いた覚えがあって、むしろそっちの方が多いです。
 そういう意味では、産科の先生たちに地域社会というか、その地域の救急医療の仕組みとして、救急医療の質が上手にシンクロするのは大事だよねという形で、その文化的な背景を少し上手に誘っていかなければいけないのではないか。
 私たちが産科の先生方の所に勉強に行って、妊婦さんたちがどんどん入ってこられるような仕組みを作ってもよかったのかもしれないのですが、実は今言ったように、私たちは私たちできちっとできるから、頑張りますからいいですと言われると、全くそのとおりだなと。許先生などが連携してきて、妊産婦さんたちの診療に当たったりすると、恐らくそのような文化的な背景に関しては、昔ながらの産科の先生からすると、余計なことはしなくても結構だということが多分あったのではないかと。そうですよね。

○許構成員
 御指名いただきましてありがとうございます。私が、先輩の先生方の御意見をお聞きしていて感じたことなのですが、確かにシステムとして救急側と産婦人科の先生方、救急医療と産婦人科医療との連携というのは、システムとしての枠組みのつくりはもちろん必要なのですが、それを生かそうとすると恐らく現場レベルの救急医で、救急医側から言うと産婦人科の知識だとか、トレーニングだとか、経験だとかは必要でしょう。産婦人科の先生方も、恐らく救急の蘇生のことであるとか、そういうものがないと連携の枠が作れましたと言っても、現場では浸透しないと思うのです。
 それに関して、歴史的には有賀先生がおっしゃられたようなことがあったのかとお聞きしていたのですが、今後はそういう現場レベルでも、それぞれの各救急医、各産婦人科の相手側のエリアの知識なり経験なり研修なりを広げていく必要があるのではないかと思います。
 実際に欧米の救急の場合は、ERでは妊産婦さんの救急も、まずはERにやってきて、救急医が性器出血であれ、全ての異常をまず診療して、これは私たちの所を超えるということであれば産婦人科の先生に来ていただきます。私がトレーニングしたのは大学病院で大きな病院でしたので、産婦人科の先生もおられてということで、すぐにバトンタッチできたのですが、もっとルーラルなエリアへ行くと、恐らくその搬送が問題になってくると思うのです。私もそこまでは見られていないので何ともコメントできません。最低限現場レベルでの、相手側の知識、経験等を広げていくことは必要なのではないかと思っています。
 先生に教えていただきたいのですけれども、日本では妊産婦の死亡が年50例ぐらいあって、欧米に比べて多いと。

○久保構成員
 少ないです。

○許構成員
 すみません、少ないのですか。間違えました。

○久保構成員
 日本は10万出生当たり5~6例です。アメリカは24例ですから、アメリカの5分の1です。世界で断然トップです。少ないのは少ないのですけれども、その50~60例をもっと下げたいというのが実際です。

○池田参考人
 産科出血が多いのです。出血死が多いのです。

○許構成員
 それはなぜ多いのか、その理由について先生の御意見はありますか、教えていただけますか。

○池田参考人
 産科出血で死亡が日本で多い理由として2点挙げられると思います。1点は、産科医療の構造上の問題です。いわゆる開業医という小規模な施設が点々としていて、年間200~300例という分娩施設が多い。アメリカやイギリスの場合には、1施設が最低3,000例とか1万例という所もあります。大きい分娩施設が多いということです。集約化と言ったらそうなのですけれども、そこにはあらゆる科の先生がおられて、救命救急も完備していたり、麻酔科の先生もそこに常在しているということがあります。
 日本の場合は散在しているのですけれども、そこはアクセシビリティの良さといいますか、町のお医者さん、地域のお医者さんということで、気軽にかかれることもあります。そして病診連携とか、診療所同士で協力していったりしています。全く分娩施設が欧米とは違います。広く分散しているものですから、いわゆる救命救急には弱いのです。一次から二次、二次から三次、救命の先生の一次、二次というのは重症度でということなのでしょうけれども、産婦人科救急でいう一次、二次というのは、一次は開業施設、二次は地域の周産期施設、三次は高度の施設ということで、救命救急の一次、二次、三次とはちょっと違うということがあります。
 2点目は先ほど申しましたように、日本人と欧米人とは凝固系の違いというのが大きくあると言われています。日本人は脳出血のほうが多い。凝固系に関しては、東洋人は欧米人とは同じように語れない。ワーファリンなどにしても、向こうの人は5mgぐらい飲んでいるのですが、日本人は1mgも飲めば行き過ぎるということもあります。こうした生物学的な問題、民族的な問題があると思います。

○久保構成員
 追加しますと、先ほどの一次、二次には血液の貯蓄がないのです。三次は血を持っているのです。

○有賀座長
 輸血という意味ですか。

○久保構成員
 輸血の血がない。血のない所でお産をしているところが問題なのです。もう1つ2点目の話で、欧米の場合は出血し出したらフィブリノゲンとかクリオというものが使えるのです。日本の場合はB型肝炎、C型肝炎、エイズなどの過去の医療事故があって、血液製剤自身が認可されていないのです。ですから、投与できるのはFFPぐらいなのです。だから、欧米のガイドラインに比べて日本のガイドラインはフィブリノゲン製剤などが使われない。アメリカで研修したら、産科出血の治療の1番としてクリオを使うのは当たり前だと思うのですが、それが日本ではできないのです。その2つが大きなところです。理屈は同じなのですが、そういうことです。

○石井構成員
 今の議論の方向って、おっしゃることはよく分かるのです。ただ、今この期に及んで欧米が優れていて、日本が劣っているという議論はないほうがいいのではないかと思います。

○久保構成員
 そんなこと言っていないです。

○有賀座長
 そんなことを言っておられるわけではないです。

○有賀座長
 日本国の様子に鑑みて、先生の意見を聞こうと思っていたのです。

○石井構成員
 基本的に我々はここまで進んだと、その上で改善点がまだあるのだとすべきです。その部分は欧米に学ぶべきところもあることは分かりますけれども、今ここで集約化して、戦艦大和みたいな物を造れば、全てが解決するというのは、日本が負けた前の大戦の教訓をよく思い出せば、そんな話にはならないと思っています。
その上で言うと、地域連携と病院の連携というのは、実は同じ傾向のアナロジーで対処できると思うのです。つまり、病院の中の風通しの悪い所は、その地域も風通しが悪いし、その逆もありだと思うのです。リソースが個々の医療機関では足りない場合であっても、それでは地域とかグループとかネットワークがどう対処できるかという、今まで培った文化の中で、もう1つやり様があるのではないかという議論のほうが非常に前向きではないかと思います。

○久保構成員
 先生が言うのはそのとおりです。私自身全国調査で、リスク群でどのぐらい一次施設での分娩が可能かどうかという調査をしたことがあります。基本的に日本の分娩の3分の2ぐらいは一次施設でできるのです。3分の1は高度施設が必要なのです。そういう意味で、日本では一般の開業医と病院は五分五分なのです。ただ、病院の中にも実は開業の病院があるので、それは5~6割が開業の病院か診療所なのです。3割ぐらいが公的な所なのです。ですから、そのリスクのディストリビューションと、今の分娩している施設のディストリビューションはほぼ同じなので、それを大きく変えるとか、そういう議論は全くないと思っています。

○横田構成員
 先ほどの久保先生と池田先生のお話で、日本のお産の特徴は、いわゆるマタニティのクリニックに分散してやっているのが特徴だとおっしゃいました。私は、母体の産科救急が非常に重篤になりやすいということを、そのお産に際して産科医がどれほど危機感を持って対応しているかというところに問題があるのではないかと思います。アメニティが高く、食事のおいしいサービスを提供する、というのはそれで結構です。99.9%はそれで満足されているのだと思うのです。しかし、本当に危機的なことが起こるということになったときに、事前にどういう対策を持って対応しているかということが大事なのかと思うのです。
 周産期救急の中で、新生児や胎児に焦点を当てた場合は、事前にある程度スクリーニングされて施設移動されていると思うのです。母体の救急というのは、一部分は初めから分かっているリスクの方もいるのでしょうけれども、恐らく突然どこで起こっても不思議ではないとすれば、産科の先生方が常日頃そういうことが起こったときに、どういう所にコンタクトを取って、あるいは母体急変が起こった場合はどうするのだ、子癇ではなくて、脳血管障害らしいことが起こったらどこへコンタクトを取って運ぶんだということを組織づくりしておかないと、これだけ頻度の少ない、恐らく一生に1回当たるか当たらないかというような状況だと、無理なのではないかという気がします。
 産科救急は非常に時間が短いという点では外傷病態に似ていますが、一般外傷は現場から救急車で救命救急センター等に行くことができます。産科救急の場合は、産科施設である程度抱えている時間があります。どの時点で血を止める先生に応援を求めるのか、どういう仕組みでコンタクトを取るのかなどは、やはり産科の先生方がもう少し組織化して考えておいたほうがいいのではないかと思います。

○久保構成員
 それは池田先生がされていて、2010年、2011年、2012年と「母体安全への提言」というのを出して、各学会に示しています。正に先生がおっしゃるようなことが盛り込まれています。産科医もそうなのですが、産科医に関しては、そういう救急が起こると思っています。ただ、一般の人が思っていないのです。それが、「お産の安全神話」という訳の分からない言葉があって、それが産科の医療訴訟の一番のモチベーションになっています。
 産科医なら若い医者でも何かが起こるとは思っているのだけれども、一般の人はお産は安全だ、病院に行ったらどうにかしてくれるだろうと思っているところがあります。それが先行データで250人に1人が死にかけますというデータを出すと、講演に来た一般の人はみんな愕然とするのですが、それが日本の現状です。その辺のところは、私たちも一般の人にどうやってそれを知らせるかということがすごく大事だと理解しています。池田先生何か付け加えていただけますか。

○池田参考人
 これも阿真さんにお聞きしたかったことなのですが、先ほど石井先生は、欧米に見習うことの是非をおっしゃったのですが、わたしは、日本の産科システムの良さを再認識する必要があると思います。日本の分散化的なものが、いわゆる地域のお医者さんということが、日本の開業医がなさっておられて、今は女性の総合医的なことを、地域の産婦人科のいわゆる開業医はなさっておられます。この地域は私たちが診ますよ、というようなことで良き相談役になっている。女性を診るということは、そのバックグラウンドの家庭を診るということです。家庭を診るということは、社会を診ることだと私たちは思っています。日本の産婦人科医療というのはそういうことを、欧米とは違って、ただ単にお産をするのではなくて、その地域を診ているという総合医的な役割も果たしています。
 確かに母体の救命救急には弱いかも分かりませんけれども、この分散的にアクセシビリティの良さというものは非常に誇りに思っていて、この上で安全性を担保しようと考えているわけです。

○阿真構成員
 先ほど、欧米は年間3,000人ぐらい診ているとおっしゃったと思うのですが、3,000人の出生があることを考えると、相当遠くまで行って産んでいるということですよね。それを考えると、今の日本の状況というのはみんなが近くの、岩手ではそうでもない状況はあると思うのですが、東京とかいろいろな地域では本当に近くのお医者さんが、産婦人科の開業医の先生が診てくださっている、という状況に関してはとても安心です。かかっても1時間ぐらいの所で産めるのはとても良いシステムだと思います。
 一方で危険なことが起こるということの啓発、久保先生がおっしゃっていたことに関しては、伝えられる場所というのは病院でも母親学級をやっていますし、自治体でも母親学級をやっています。これは厚生労働省の部署とはちょっと違うと思うのですけれども、母親学級の場というのは、一般のお母さんたちをバッと集めて、一気に大切なことを伝えられる場所で、なかなかそういう機会はないので、とても良い機会だと思っています。
 病院の母親学級でも、自治体の母親学級でも、やっていることは赤ちゃんの沐浴とか、おむつの換え方とか、それは同じことを繰り返しやっているような状況なのです。赤ちゃんを産んだ後の産後の病院の中でも、まだ沐浴をやります。沐浴も大事だと思うのですが、母親学級のときに、こういった周産期医療の現状とか、危険が伴うということ、めったにないのですけれども、あるということをちゃんと認識してもらう場所としては、母親学級はとても良い場所ではないかと思います。
 #8000のことも、私は実際に子供を産んでいますので母親学級へ行っていますが、そういう救急医療の知識は一切母親学級で習うことはありません。せっかく行政で人を集めて、しかもその参加率がすごく高くて、これから産むというところではかなり知識的にも学ぼうという姿勢で来ている場所で、そういった情報が得られるのはとても良いことではないかと思うので、是非そこは進めていただきたいと思います。

○久保構成員
 先ほどの250分の1というのは、実は厚生労働省の研究でやって、その結果が出たときに出そうとしたら、逆にストップがかかったのです。なぜかというと、そういう怖いデータを出すと今の少子化がもっと進んでしまうと言われたのです。それが、例の大野病院とか、大淀病院とか墨東病院の話になって、担当課に言うと、これは仕方がない、どんどん発表してくださいという話になって、いろいろな所で講演をし出したということです。でも、講演をし出すときに、母性衛生学会とか、助産師学会からすると、そういう人たちはそうは思っていないし、そんなに危なかったらもうできないのではないかということで、少しネガティブなところがあります。
 ただ、産科医のほうはそれをよく知っていて、日本の250分の1というのは、世界全体の妊産婦死亡率なのです。だから、世界は医療がないから死んでしまっているのです。日本は100人のうち99人は助けているのです。そういう状況はあるのですが、危ないという話を私たちはどこでどうしていいのかというのは伝え方もすごく難しいのです。母親学級でも知らない人が、データだけ出すと混乱するのかという気はしているので、良い方法を教えてください。

○加納構成員
 墨東とか大野事件とか、ああいう高次の本当の救命の問題が、今のお話ではかなり改善されているかという感じがします。以前、奈良県から大阪へ救急搬送された症例が社会問題になりましたが、これなどは先ほどの#8000ではないですけれども、母親の問題が先にあったかと思うのです。今は救急現場ではあの様な症例は大分減ったのでしょうか。あのときは20何軒かの病院が不応需という形で、最後に大阪の病院が取りました。

○久保構成員
 池田先生の所です。

○加納構成員
 池田先生が取られたのでしょうか。高槻病院で取られて。

○久保構成員
 あとのほうの流産のほうです。

○加納構成員
 流産のほうです。あれは、もともと9か月ぐらいまで全くどこにも受診せずにいた母親だったと思うのです。

○久保構成員
 そうです。

○加納構成員
 かつ、その受け入れた高槻病院、具体的に病院名を言うと問題があるかと思うのですが、民間病院が受けたのですが、結局その母親は、支払いはせずに出られてしまったという形がありました。

○久保構成員
 はい。

○加納構成員
 ああいう問題は今は大分なくなったと解釈していいのでしょうか。本日は全く議論に出ないので。

○久保構成員
 あの話は出てすぐに消えたのは、マスコミが取材してすぐに分かって、夜中の2時半にコンビニで出血して、妊婦さんがいること自身がおかしい話なのです。なおかつ、彼女は1人目ではなくて、前にも流産をしていました。高槻病院では三つ子のお産をやっている最中に取ったので、先生がおっしゃったように未払いで帰っています。未受診の問題の一番の問題の3~4割は未払いだし、17%は子捨てなのです。子供も置いて帰ってしまう問題があります。だから、未受診の問題はちょっと別個の問題として取り上げる必要があると思います。ですから、あの話はマスコミがすぐに手を引いてしまって報道されませんでした。
 いろいろな問題を含んでいるみたいです。

○有賀座長
 今の後半で出たような問題は、お産という切り口で見たときの社会的な弱者というか、社会の仕組みを作っていても、究極的には生活を支えるような部分を何とかしないと、この手の俎上には乗りにくいだろうと。だから、それはそれで別かどうかは分かりませんけれども、東京で多くの病院が断るのは、例えば、救急医療の現場ではホームレスの人は勘弁してくれという話があります。だから、今言った社会的な背景の中に含まれる可能性が高いのですけれども、当面ここで議論しようとしていたのは、もうちょっと普通の妊産婦さんが、普通にお産をしようと思って急病に見舞われるというようなお話なので、その辺を少し深めておく。それから、今指摘されたような、そうだったんだという、私たちはこの点に関しては「お前はアホじゃないか」と言われるかもしれないけれども、そういう意味で私は普通の国民のレベルでしかありませんので、時間があればその辺を少し深めたらいいかと思います。
 資料1に出てきた、産科の先生と救急の私たちの構築してきた仕組みを上手にシンクロさせるという意味においては、東京では少し前へ進んだような気が、墨東などの事件を経て絵を見ながらそう思うのです。ただ、搬送コーディネーターを配置している都道府県有り12と書いてある6ページでも、もし有りのうちの質的な差が結構あって、先ほど行岡先生が、知らないことって結構あるのではないかとおっしゃいましたが、私も多分知らない人の中に入ります。そういう意味でこの辺は、無しを有りにすることは大事なのですが、有りでも本当にこういう意味での有機的な仕組みに成り立っているかどうかというのがよく分からないのです。その辺は事務局の方で何か把握されていますか。

○中林小児・周産期医療専門官
 年1回やっている調査の中で、周産期の医療協議会がどれだけ開催されているか、というところまでは調査をしており、全県で開催されていることは把握しております。ただ御指摘のとおりで、救急との連携がどうかとか、そういう詳細までには及ぶ調査はできていないのが実情ですので、必要に応じてその辺は都道府県と協力して今後検討したいと思います。

○有賀座長
 5ページの「周産期救急情報システムの現状」では、多くの都道府県がシステムを導入していることになっているのですが、この場合は厚生労働省からの何らかの支援によってこのシステムが誕生したという歴史があるのですか。

○中林小児・周産期医療専門官
 それについては、事業で都道府県に対して補助金を出しています。

○有賀座長
 そうすると、この無しの10は要らないという県があるわけですか。

○中林小児・周産期医療専門官
 システムを不要とする地域の内訳については、例えばその地域によって総合周産期が1か所で、ハイリスク症例についてはその病院に集約しているとか、地域のルールができていて、Web上のシステムはその地域としては不必要だといった内容が指摘されています。

○有賀座長
 要らないと。

○中林小児・周産期医療専門官
 それは、都道府県ごとに判断をお願いしております。

○行岡構成員
 今の議論を聞いていると、資料1の1ページで、問題は母体の肺梗塞であるとか脳卒中であるとか、要するに死の脅威をどのように更に減らしていくかと。我々が救急で一番最初にやったのは救命ということで、死を回避することで一生懸命やってきたシステムができています。その意味では、それをいかにアジャストしていくかに議論は尽きると思うのです。これも議論に出たことですけれども、1人の産科医と救急医が病院の中で孤立してしまって、コンタクトが取れないと、チームができていない。更に地域の中でも産院と救命センターとがうまく連携していないというのを見える化して、チーム化していく面としての医療という形へ持っていく会をやれば、本日の後半の議論よりも、こちらのほうが解決の道筋というか、ロードマップを割合取れるのではないかと思っています。
 先ほどもコメントがありましたが、MCという所で、今は東京のMCには産科の先生も入っていただいているので、それをどうシステム化していくかということです。このままでコーディネーターOK、システムを作れというだけがこの報告書で作っています、やっていますというだけでは、仏作って魂入れずみたいになってしまうので、これは進めると割合前へ進めるのではないかという印象を持っています。

○久保構成員
 本当にそのとおりで、だからどっちかだと思うのです。両方が共同して共催するか、先生がおっしゃるようにMC協議会の中に産科の先生を何人か入れていただくことを進めるのか、どちらかの方向だろうと思うのです。

○市川構成員
 久保先生にお聞きしたいのですけれども、NICUが満床で受け入れられないなどの新生児側の要素の比率は如何でしょうか?。そのために母体が駄目になるケースはかなり含まれているのですか。

○久保構成員
 それが一番あるのは常位胎盤早期剥離です。これは、お母さんの方の救急にもなるのですが、ただすごい不思議な話で、お腹の赤ちゃんが生きている間は受け入れないけれども、お腹の赤ちゃんが亡くなるとお母さんだけで受けて、それで対応することがあります。そこまでになることは少ないです。
 ただ、現実的にNICUは以前の厚生労働省の班会議で1.5倍になるということで設定されて、日本全体では設定値になっているのですが、まだ全国調査をしたらNICUは満床で搬送を受け入れないことが年間に200数十例あります。それは地域的に受け入れない所があるのだと思うのです。だから、日本全体のNICUがそうではなくて、各地域がそれだけのNICU数にしていかないといけないのです。今NICUの一番大きな問題は、NICUの中に長期入院者がどんどん増えていっていて、実際の稼働数は減っているのです。それも後の出口が出ないと、今のことは解決にはならないと思います。

○市川構成員
 心配するのは、救命センターで救急医療を受けるといっても、Nが駄目だと予測して、生まれた赤ん坊が引き取れないからということで、病院全体としては断るということが生じるとダメですので、取りあえず、受けて対応することを前提とすべきです。そこまで考えたシステムを作らないといけないかと思います。

○久保構成員
 東京システムは常位胎盤早期剥離の場合は、ともかく受けて出す。それで、赤ちゃんを受け入れる所に新生児搬送しようと。そうしたら、お母さんと赤ちゃんを助けられないかということで、今年1月からスタートしています。まだ、うまくいったかどうかの検証はできていないです。

○有賀座長
 どちらにしても、救命救急センターが取りあえず一肌脱がないといけませんよね。その後の赤ちゃんについては、赤ちゃんの搬送ということでいえば、それも場合によってはMCの議論の中にいくらでも入り得ますよね。

○久保構成員
 NICUはNICUでいろいろな所で持っていますけれども、それもやはりMCに入っていけばいいと思います。

○嶋津構成員
 久保先生に確認させていただきたいのですが、2点あります。1点は、日本の産科の病院の特殊な構造ということがありました。結局、そういう危機的な出血が起こる発生場所としては、比較的小規模な産科の病院で発生する数のほうが多いという理解でよろしいのですか。

○池田参考人
 全くそういう危機的出血が起こることが集約化している施設に集中しているわけではなくて、日本の分娩施設の種類の分布と同じような頻度で起こっています。どこでも、いつでも起こるという状況です。

○嶋津構成員
 発生場所としては、むしろいろいろな所で起こっているということですね。

○池田参考人
 先ほど久保先生が言われましたように、日本のいわゆる診療所で半分の分娩が行われていて、病院で半分の分娩が行われていますけれども、それと同じような頻度で危機的出血は起こっています。

○嶋津構成員
 ということは、比較的小さな病院から大きな所に行くための道筋という問題が1つあると思うのです。

○池田参考人
 そうです。

○嶋津構成員
 それと、大きな病院の中での院内での協力というのは全く別の問題として捉える必要があるということですね。

○池田参考人
 そうです。

○嶋津構成員
 2点目は、周産期救急情報システムで、問合せをされるのはそのような小さな産院ということでよろしいのですか。

○池田参考人
 それがほとんどです。

○嶋津構成員
 分かりました、ありがとうございました。

○久保構成員
 情報システムは、やはり受ける所が問題なのです。だから、1個しかない所、私は高知にいたのですが、高知は大学が受けなかったらお母さんと赤ちゃんが死んでしまうので、満床であろうと何でも取ってしまうから問題ないのですが、東京、大阪、名古屋、福岡は受ける所がいっぱいありますから、情報システムがないと探せないのです。
 ただ情報システムの一番の問題点は、更新が本当に確実にオンタイムでできているかということだけです。ですから、実際に空いている所に電話をしても、空いていないというケースがあります。

○池田参考人
 周産期医療というのは、数値でその地域のクオリティ、結果が分かるものですから、各国の医療事情に母体死亡率や、周産期死亡率が使われることがあります。そういう意味で、県ごとにいわゆるお母さんの医療のレベル、母体死亡率、これは1例おったらこうなりますので、10年間ぐらい押し並べて計算しています。
 周産期死亡率というのは、赤ちゃんや胎児が亡くなっている率です。それを見ると非常に良い地域があります。これは瀬戸内地方で。広島、岡山、兵庫、香川、愛媛は非常に良いです。なぜそこが良いのかということなのです。実はコーディネーターが必要なく、もし起こったらそこしかないという所があります。もちろん大きな地域だったらコーディネーターが必要です。よくよく調べてみると、岡山大学の関連病院が分布しており、そのOBがそこに開業していたりするものですから、先輩が取れと言ったら、そこの周産期センターの後輩は絶対に取らなければいけないといった人的ネットワークのすごさが見えてきたのが1つの理由と考えています。

○有賀座長
 結果的に人的ネットワークは、それはそれでうまくいけばいいということですが、ここでは嶋津先生がおっしゃった、小規模な病院でもし出血というようなシチュエーションが起これば、産科の先生が遅れぎみではなく搬送するような仕組みを利用してもらえればいいということですよね。6時間とか3時間以内と言いましたけれども、横田先生のJATECでいけば、そんなものはアッという間に運べということになりますよね。

○横田構成員
 先ほど言いましたのは、一般外傷のような場合は受傷して行き着く所は救急部門ですので問題ないのですが、お産の場合は診療の経過中で起こっている問題なので、産科の先生たちが救急医たちに手放すタイミング、言葉は適切ではないかもしれませんが、要するに協力を求めるタイミングが非常に重要なのだろうかと思うのです。産科救急では時間的経過が急で、しかもその対応に多少難渋しやすいのであれば、事前に筋道をご自身のクリニックなり病院なりが立てて持っておくべきだろうと思います。当然その大きな枠の中では都道府県レベルで、救命救急センターと周産期医療センターとが連携できる構図があるというのが、大前提だとは思います。

○久保構成員
 結局そういうことがあるので、実は3年前に産科危険的出血のガイドラインを作らせていただきました。それを5学会で提言しました。それで、今はショックインデックスを使って、ショックインデックスで1の時点で搬送・輸血を考えよう、1.5だったら全部搬送だということを、今の若い産科の先生はほとんど周知されてきていますので、タイミングが早くはなってきています。

○高城構成員
 先ほど加納構成員から御指摘のあった件ですけれども、未受診の妊婦さんの問題です。この問題がなぜ起こったのかというと、そのルールがきちんとなかった、それから受皿がはっきりと決まっていなかったことがあります。こうしたことがありましたので、奈良県ではルールをしっかり作りました。あとは周産期母子医療センターというハード面をしっかり整備しました。
 基本的には妊娠していたらかかりつけ医にかかるのが大前提ですけれども、実際に今未受診の方が全くゼロかというと、実際のところはいらっしゃいます。そういう者については、今言った周産期母子医療センターの方で受けるルールが今はできておりますので、現状としては、未受診だからいろいろな所をグルグル回ってしまうというようなルールにはなっていません。その辺りのルールが徹底されることが1つ重要なのかなと。
 こういうルールを作ったことで、県外に搬送される事例は相当程度減ってきております。一方で救急搬送の数が年々増えてきています。その中には比較的軽症な人もいらっしゃるということで、救急車を利用する前の、先ほど来議論がありましたが、普及啓発が重要ではないかと思っています。

○有賀座長
 ついでに聞いてしまうのですが、その仕組みそのものはMC協議会は何らかのコミットをしているのですか。つまり本日のテーマでいうと、母体死亡の原因の中に、産科的な危機的な出血があるなどの件が出ていますので、未受診の話はそれはそれで別の問題として重要だよねという話になったのですが、MCとの関わりはいかがなのですか。

○高城構成員
 奈良県の状況を申し上げますと、MC協議会というのはあります。その他にMC協議会とは別の協議体なのですが、搬送ルールを議論する場が疾患ごとに決められております。周産期の搬送ルールについてはMC協議会ではなくて別の場で議論されてきています。

○有賀座長
 そこには救急医療は一緒に入っているのですか。

○高城構成員
 確かそこには入っていたと思います。

○有賀座長
 入っているということは、横田先生がおっしゃっているような仕組みになり得るということになるのですね。

○高城構成員
 周産期の搬送ルールを検討した際には、救急医療関係者が入っていたということです。

○有賀座長
 ですから、母体が急に調子悪くなったときに、救命センターへ運べという話を議論するような下地があるのですかという質問です。

○高城構成員
 それはありました。

○有賀座長
 分かりました。そのようなものを都道府県であれ、地域地域のMC協議会か二次医療圏か分かりませんが、そのような所で議論がされていけば、仕組みという形でいけそうだなと。

○久保構成員
 奈良県の弁護をするわけではないのですが、例の未受診の事件のときに、大学はがんの手術をやっていて、実際にそのときには当直医が入っていて、受けられない状態であったということもあって、私はすごく奈良医大はかわいそうだったと思うのです。未受診の統計を取ると、お産が終わってから母子手帳を取る人が全国で1%ぐらいいますので、100人に1人ぐらいはいるのです。1990年と1991年の長屋班で全ての妊産婦死亡を解析した。私は受診回数の検討をしたのですが、やはり受診回数が少ないほど妊産婦死亡は高いのです。そういう意味では受診回数を増やすということは大事になるのではないかと思います。どうしたらいいのかというと、確信犯の場合は不可能ですが、確信犯以外の人には考えなければいけないのです。
 最近すごく多いのは、外国人の問題で、中国人などが入ってきて、言葉の問題やいろいろな問題で、受診せずに飛び込み分娩に来る人もいますので、その辺の対策は別個に要るのではないかと思っています。

○有賀座長
 経済的な背景もあるのでしょうけれども、お腹の中の赤ちゃんを大事にしないお母さんというのは、自分のことも軽んじているとしか言いようがないですね。

○久保構成員
 だから子捨てをするのです。未受診の人の17%は子供も置いて、自分だけ帰ってしまいます。だから、大事にしていないのだろうと思います。でも、それは多分子捨てをせずに連れて帰った人は虐待するかもしれない、殺すかも分からないので、ある意味でその人の良心かも分かりません。

○有賀座長
 ここにいる人たちは、みんな命を大事にしようと思って集まっていますよね。何か辛い話ですね。最初に言いましたが、広くて深い話をしていますので、議題2のほうへ移ります。緊急性の高い身体合併症のある精神疾患の患者さんについての受入体制についてを事務局から説明をお願いいたします。

○辻救急医療専門官
 資料2の2ページ、6「緊急性の高い身体合併症があり、精神疾患を持つ患者の受入体制の構築について」、御議論いただきたいと思います。
 精神科救急については、第3回、第4回の検討会において事務局から現状のシステムについて、また、伊藤参考人、千葉構成員から臨床現場における問題点を説明していただきました。現状として、消防法改正後も搬送困難例が多いこと、精神科救急情報システム等が十分機能していないこと、救急体制等を検討する場に精神科救急側が参画できていないことが上がり、活発な御議論をいただきました。
 今回は、補足事項として参考資料2を付けていますので御覧ください。まず、「24時間精神医療相談窓口について」、説明いたします。都道府県等が、精神障害者及び家族等からの相談に対し原則24時間365日体制をとり、精神障害者等の症状緩和を図れるよう対応するとともに、必要に応じて医療機関の紹介や受診指導を行うものです。
 続いて、2ページを御覧ください。「精神科救急情報センターについて」、説明いたします。精神科救急情報センターは、緊急な医療を必要とする精神障害者等の搬送先となる医療機関との円滑な連絡調整機能を、原則24時間365日体制をとるとしています。ですが、以前もお話いたしましたが、実態としては3ページのとおり、平成24年10月現在、相談窓口を設置しているのは47都道府県中29、情報センター設置が40、両方設置が28、両方未設置が5と、全都道府県では設置されていない状況にあります。
 4ページを御覧ください。「精神科救急医療体制の整備に関する指針について(平成24年3月30日)」より「身体疾患を合併する精神疾患患者の救急受入体制について」を抜粋しています。これまでの議論でも御指摘いただいていますとおり、24時間精神医療相談窓口や精神科救急情報センターが十分機能していない状況があります。また、一部の身体合併症対応施設に患者が集中してしまうこと、救急医療機関と精神医療機関の連携が十分なされていいないこと、また、一般医療機関と精神科医療機関で協議会の開催や情報共有の取組、事例検討会を実施することになっていますが、実際には十分に取り組まれていない現状があります。
 資料2の3ページの「具体的な論点」に移ります。特に急性アルコール中毒や身体合併症を有する精神疾患患者、薬物中毒といったソフト(精神)救急の受入れが、地域の救急医療体制において大きな問題となっているため、行政機関、消防機関、医療機関(救急医療機関と精神科救急医療機関)は、地域の現状を把握し、搬送・受入れ実施基準等の改善や更なる連携強化を図るべきではないか。救急医療機関が自院精神科や精神科医療機関と連携しつつ、身体合併症を有する精神疾患患者を受け入れた場合の評価を充実するべきではないか。精神科救急を担う医師も地域の救急医療を担っていただくため、MC協議会に参画しやすい環境を作るべきではないか。精神医療相談窓口や精神科救急システムの周知を図るとともに、実効性のあるものになるよう、都道府県、医療機関は取り組むべきではないか。これらについて御議論いただきたいと思います。

○有賀座長
 産科の救急と一般救急の話がありましたが、精神科の救急と一般の救急とのコラボレーションの話になるのだと思います。では、口火を切ってください。

○伊藤参考人
 私は救急病院の立場でまいっております。8割は身体合併症がない救急の話をずっとしてきました。論点の大きいタイトルとして「身体合併症」のある患者対応から入ることに若干違和感がありますが、身体合併症のある患者の議論を乗り越えないと、身体合併症がない患者の対応に関する議論にはいっていただけないのだろうと思っています。この点も実は救急病院側と精神科の病院との間で大きな乖離があると認識していますので、ここをもう一度、整理させていただきたいと思います。
 まず、1つは、「身体合併症」というこの言葉です。いままでの会議で何度も言っていますが、救急隊員の判断レベルで、身体合併症をが有るか無いかを判断することは今のところ難しい。「受入れてもいいよ」と返事をくれる救急病院を搬送先に決めるとき、きちんと緊急度を診断して運ぶときと、「身体合併症有り」と言って送るほうが救急病院に受け入れてもらえるからというときと、この2種類の理由で救急隊は搬送しています。
 それから、身体合併症の内容については、精神科の先生と身体科の先生とで、重症度や緊急度の考え方が明らかに違います。精神科の先生にとっては、1針2針縫うこと自体、もうこれは大きな身体合併症だというお考えの先生もおられます。救急医にとってみると、1針2針縫ってガーゼを当てて帰る患者のなかには、アピール的なリストカットでリピーターの方もおられるかもしれませんが、帰って2時間後にまた自殺するかもしれないと心配な方もいます。この場合、救急医にとっては身体合併症は小さな問題であり、外来帰宅後が心配だという精神科の症状のほうが身体合併症より大きなウェイトを占めているのです。これを、精神科の先生方が普段から診察の適応を考えていただいているかが大切です。
 以前も意見を言いましたが、ほとんど縫うか縫わないというようなリストカットの方が、身体合併症があるからとの理由で救急病院に行くほうがいいのか、最初から精神科医療機関に行ったほうがいいのか、きちんと住み分けできる考え方が生まれたときが、恐らく、精神科医療機関と救急病院とがうまくやっていける、連携できる間柄になると思います。
 身体合併症に対しては、救急医よりも精神科医が心配されることが分かっています。精神科に最初に搬送されたが、身体合併症が心配と思われた場合は、どうぞ救急病院に送ってください、MCとしても救急病院が円滑に受け入れる体制を確実に作っていかなければいけないと思っています。しかし、一方で、先ほど述べたように、身体合併症があるということで救急病院に来た患者の中にも、身体合併症治療が外来で終わって、その日のうちに精神科に診てもらいたいという、身体合併症が小さくて精神科症状が大きい患者がいることを認識していただきたい。措置入院や医療保護入院ではない、外来対応で済むかもしれない患者をしっかり外来で受ける体制を、精神科側で作っていただけると、身体合併症の患者のやり取りが非常にうまくいくと思います。
 今まで検討され、策定されてきた身体合併症患者の救急医療体制は、身体合併症イコール身体科が診ることから全てがスタートしています。身体合併症の中身が大きい小さい、緊急度が高い低いといった議論はされていません。多くのシステムが、精神科が受入れた患者をどう救急病院に転送するかの実線の矢印による手順はありますが、救急病院が受入れた患者を精神科医療機関へ転送する実線で示すようなシステムはありまあせん。こうやって、せっかく救急病院の代表として私を呼んでいただき、この議論に参加させていただいているので、本日は是非とも、実線の矢印が精神科医療機関、救急病院の両方向になるような議論をしていただきたいと思います。これが私の本日の切り口です。

○鈴川構成員
 この6番は「緊急性の高い身体合併症があり」という題になっていますが、参考資料は「精神科救急の受入れについて」という題で、内容が少し違うのではないかと思います。緊急性の高い身体合併症がある場合には、例えばお腹から腸が出ているような割腹の患者さんは、救命センターは喜んで受け入れると思います。間違いなく受ける。今ここで議論していただきたいのは、そうではない身体合併症です。例えば、極端な例ですが、糖尿病がある患者さんは診ませんというようなもの。別に血糖値がどうだということが何もない、高血圧があると本人が言っている患者は、精神科の私たちの病院では受けませんというものが結構ある。
 栃木県で3か月間調査した400例、「精神科絡み」という大雑把な分け方ですが、そのうちの3分の2はいわゆる軽症、歩いて帰る人たちだったのです。そういうところで、実際に精神科の病院がどれだけ受けてくださっているかと言うと、全体の10%、400のうち40しか精神科の病院では受けていただけていない。実際には歩いて帰っている人が300人いるのです。そういう程度の「身体合併症」と言われている者、意識のよい中毒など、そういうものに関しては、精神科の病院とできちんと議論ができるような、診ていただけるような、そういうシステムを何とか構築する。それによって、以前から話題になっていますが、初期、二次、三次の身体科の体制の中で精神科の方々の診療で非常に苦労している点を何とかするような提言がほしいと思います。
 6番のタイトルでいったら、私たちはもう既にしっかりと受けていると思います。そうではない体制の議論ではないかと思ったので、先に発言させていただきました。

○有賀座長
 鈴川先生がおっしゃっているのは、例えば、資料3「中間取りまとめ(案)」の最後の6ページ、第4「その他」のすぐ上の6.緊急性の高い身体合併症があってうんぬんという、これであれば、もう今は救命センターで基本的には受けている。そういう意味では、今度は受け入れた後の問題です。

○鈴川構成員
 そうですね。

○有賀座長
 ですから、ここの題名がもう少し漠としたものになる。このような状況であれば、救命センターは今もう受けている。強いて言えば、その後の問題、またはその途中からの問題でしょうか。

○加納構成員
 以前、二次救急医療についても大分述べましたが、実際に急性アルコール中毒や薬物中毒のほとんど、9割以上だと私は思っていますが、二次救へ来て対応しているというのが実態だと思います。そこで、身体合併症というか、私たちから見ると精神合併症、精神合併症の強い人、身体よりも強い人が、暴れたりなど、いろいろなことで現場が混乱しているというのは事実です。そのときに、先生がおっしゃったように、私たちが相談するとか、対応に応需してくれるような精神科体制、システムを是非とも構築すべきだということが結論ではないかと思います。
 それと、もう1つは、実際に急性アルコール中毒や薬物中毒、また後で出てくる認知症の人などの対応というのは、現場に負担が掛かっています。それに対して、この前にお話があったように、精神科では、ある面で補助金的なものも出ているし、対応も出ている。そのような、応需した分に見合う経済的な対応を二次救急現場にも考えていただかなければ、このまま二次救でこのまま受けていると、負担だけ掛かっていて非常に厳しい状況が続いているということではないかと思っています。

○伊藤参考人
 私は参考人で来ていますので、鈴川先生に言っていただいたことを最初には言い切れませんでした。そもそも、私が第3回と第4回会議に来たときに、緊急性の高い身体合併症についてのお話は1回もした覚えがありません。これをクリアしなければいけないので、先ほど述べましたが、緊急性の高い身体合併症というのは、救急病院へ搬送されても2週間、3週間入院しますので、救急隊員も目をつぶっても搬送先は分かっていますし、救急病院へ搬送されます。私たち救急病院も何も問題なく、ただちに受け入れます。前々から言っていますように、身体合併症があるかどうかよくわからないような患者において、疑いを含めて、救急病院と精神科医療機関が連携できるような受入体制を作るということが、私が会議に呼ばれた目的だと思っています。報告書のなかの検討すべきタイトルを変更していただかないと、緊急性の高い身体合併症に関する検討であれば、1分で終わってしまう話だと思います。本日、このタイトルを見たときに、もう少し、いままでの話を反映していただきたいという思いがありますので、よろしくお願いします。

○千葉構成員
 いろいろと御意見を頂いてありがとうございます。まず、タイトルの件は、事務局側でお付けいただいたタイトルで、これは違うだろうという話は都度申し上げています。緊急性の高い部分については、現状でもう十分に診ていただいているという認識でいるのです。上りの部分には余り問題がないのではないかと思っています。
 少し整理をさせていただきます。上りの部分では、救急受診をされる方々、お願いする方は、現在精神科病院等で入院治療をしていて、当然、普通の人ですから、同じように疾患を発症した場合に、救急車等で搬送して診ていただくという場合があると思います。1針2針程度であれば、この頃は我々も処置できるものは行って、止血さえできれば明日まで待とうという世界ですが、病院の中でも自殺企図があり、先生方の所を頻回にお邪魔するような、ある意味、人格障害の重複診断になるような方々のリストカットとは違って、本気で死のうと思ってザックリやる方々があって、止められなくて止血をお願いするとか、そのような緊急性の高いものについてはお願いをしています。この場合には、情報提供等について我々も十分に対応できるので問題がない。
 もう1つは、外来でかかりつけをしている方が、在宅で何かがあって緊急受診をされるといった場合です。この方々については、多くの場合、精神科の病院であればデータ提供はできると思います。それができていないのだとすれば、少し情報の提供体制に問題があるだろうと思います。精神科の病院に掛かっている方はいい。問題は精神科の診療所です。これは、一般科でも、9~5時の診療をされて閉じてしまっている診療所は、一般科診療所でもデータが取れないことはあると思います。それと同様に、精神科においても、そういう診療所の先生方から情報が頂けなくて、どのような薬を飲んでいるのかさえ分からない。精神科救急の場面でも同じようなことが起こります。一番問題なのはここのところではないかと思います。
 それから、全くかかりつけがなくて、救急受診の側に行ったら、どうも精神的な問題がありそうだという方々、これも情報がないということになります。
 そうして見ますと、上りについては(緊急な傷病合併症については)問題はないのではないか。問題があるとすれば、救急隊あるいは救命センターのスタッフ向けの、精神疾患を合併する場合の対応等についての手順といいますか、標準手順、ガイドラインのようなものを提供する必要があり、それらを利用していただく必要があるだろう。この辺については、厚労科学研究等で精神科救急学会等も交えながら、きちんとしたものを提供して、それに従って診ていただく必要があるのではないかと思っています。
 問題なのは、下り側です。精神科的に緊急性が高いというのは、果たしてどの程度をどうなのかというのは我々側でも問題になるところです。一般の身体的な救急と違って、命の危険、生命に対する危険度はそれほど高くない。(生命に)直結するものが無くはありませんが、多くの場合、日中、普通の診療時間帯にきちんとした診療に乗っていただいている方々は、そうそう夜間あるいは休日等に受診しなければならない状態にはならないと思います。せん妄や自殺企図など、緊急性の高いものはもちろんありますが、一般的に精神科の疾患のベースとしては、きちんと治療ベースに乗っている方々は、夜間・救急に突発的に何かが起こるということは頻度としては少ないだろうと思います。また、直接的に本人の生命に影響を来すようなものの場合も少ないであろうと思います。
 ただ、緊急性の高いそういったもの、「自傷他害のおそれがある」と我々は言いますが、これについては精神保健福祉法・・・精神科は医療法・医師法のほかに精神保健福祉法という法律の下にありますので、これを使って保健所通報をしていただいて、いわゆる措置入院させる。このまま帰してしまうと、また首吊りそうだとか飛び込みそうだというようなおそれのある場合には、この法がありますので、これを十分に活用していただくしかないのではないか。あとは、精神科救急のシステムのほうへ流していただく。このためには、去年できたばかりでほやほやですが、情報センターをもう少しきちんとした形で整備して、連携の中核になるようにしていただかなければと思っています。
 問題は、(精神科診療の)必要はありそうだけれどもすぐではないという方々です。この方々をどうするかというと、これは受診勧告をしていただくしか方法がない。つまり、本人の任意性の問題なのです。本人が「掛かる(診てもらう)」と言わないと受診にならない。誰かが首に縄を付けてぐりぐりと引っ張って行って強制的に受診させるという話にはならない。
 ここに「急性アルコール中毒」と書かれているので、訂正してほしいと思います。急性アルコール中毒は精神科診療の範疇ではありません。これは身体科の範疇です。我々の範疇なのは、薬物依存としてのアルコール依存症が問題で、急性アルコール中毒はそのまま身体に直接影響して、よく学生コンパで飲み過ぎて死んでしまうというような話になりまして、精神疾患の問題ではありません。一般の方々の単純酩酊の話です。精神科の依存症治療の場合はアルコール依存症というもの、あるいは薬物依存です。場合によっては、麻薬や覚醒剤などということになります。この辺も、もしそうであれば(麻薬や覚醒剤の問題は)警察若しくは保健所通報という形で対応していただくことになります。
 アルコール依存症や単純な鎮痛剤などといった程度の依存の場合には、これも本人が治療する気にならなければ治療にならないのです。強制的に治療することができない。そのことだけでは措置入院や医療保護入院などの強制治療には乗らないのです。こう言うと何ですが、お酒を飲むのは本人の自由で、飲んだくれて死ぬのも本人の自由です。生活上に支障があって、「(本人が)何とか治したい」という場合に診ています。ですから、ニコチン中毒、タバコをやめられないのと同じレベルで考えていただくことになるだろうと思います。この方々がいろいろで、飲んでは救急を受診して、ぐだぐだとやって問題を起こすことがある。これは十分承知の上でお話しています。ただ、飽くまでもこの辺の疾患については、また、リストカットを繰り返す人たちにしても、本人が受診して治療するという任意性が必要で、誰かがそれを無理やり強制治療を行うことはできません。
 海外では、重篤な社会に問題を起こすような人については、強制治療や通院治療などの行政命令といいますか、司法命令によって治療を行うことがあるやに聞いていますが、そこまで出来るようなものでもないだろうと思います。この辺は、よく、精神科なので何でも診ろと言われていて、精神科医療現場の実際とややズレが出ているところではないかと思います。我々もできないことはある、門をくぐってくれなければしようがないということになります。
 3番目としての、問題行動についてです。暴力・暴行あるいは興奮していて、それから、お酒を飲んで酩酊。この辺は警察保護の話で、興奮したり、酒を飲んで暴れたりするから、イコール精神科だということにはなりません。一般の方々で病気がない方も酒を飲んで暴れたりします。わめきます。そうなりますと、そちらの方々は、まず警察に保護されているのが普通なのです。ところが、精神疾患がある、あるいは精神科の通院歴があるといった途端に、精神科に行かされてしまうのです。そこ(飲酒して酩酊)との因果関係が有ろうと無かろうと精神科になってしまいます。それが精神科の疾患がベースで興奮しているということがはっきりしない限りは、我々としても強制的に入院させることができないことになるわけです。一応、警察で保護して、24時間等の留置の中で観察をしていて、やはりこれは精神科的であって、お酒も醒めたのだけれど言っていることがおかしいなどという話になりますと、警察官通報で保健所を経由して、我々の鑑定になります。
 下り側をざっと整理するとそのような形になっています。この辺の部分を御理解いただくため、周知をする必要があると思います。
 一方で、情報センターの機能をもう少し拡充して、このような疾患なのだけれど、このような状態なのだけれどというときのコンサルテーションを、精神科の救急の情報センターがきちんとできなければいけないであろうと思っています。救命救急の側、救急病院の側からきちんと質問が投げかけられて、対応の相談がされて、そこで的確なトリアージができる、あるいはコンサルテーションができる、というのが本来の情報センターの役割として期待されています。その辺が、まだ去年できたばかりで十分ではない。これは是非担当課に頑張っていただきたい。予算措置は、大阪は大変頂いていますがほかの県は出していただいていませんので、その辺を十分に措置していただきながら、医師配置等を含めてやれるようにならないといけないと思っています。ざっとまとめさせていただきました。

○有賀座長
 ありがとうございます。引き続きお願いします。

○伊藤参考人
 受け入れるときの対象をいろいろ言われますと、恐らく精神科の先生は皆さん「緊急ではないよ」といつも言われます。私たち救急病院に来られた患者さんの8割が、入院の必要がないことを説得し、そのまま帰っていただくという現実があるということは、データとしてすでにお示ししました。ということは、入って来る時点で、8割が身体科の診察が必要な疾患ではないと分かっていても、救急病院は受け入れています。もしも自分たちが普段は精神科救急ではないと思っている患者のうち、かかりつけ患者を積極的に診ていただける体制ができれば、救急病院受入れの8割が軽症という比率は減るはずです。
 もちろん、搬送先を患者さんが選ぶこともあります。救急隊が搬送するときに、「かかりつけの何々先生の所へ行きましょう」と言うと、「いや、精神科はやめてください」と言う御家族や本人が多いことも知っています。家族や御本人の希望であれば仕方がありません。しかし、患者さんやご家族が「いいですよ」と言われても、かかりつけのクリニックの先生や病院の先生が「いやいや、身体合併症があったら困るから救急病院へ」と言われてしまうと、精神科病院に行ってもいいと同意された患者さんまでが救急病院に回されてしまいます。では、精神科ではどんな対象を診ていただけるのかということになるのです。私は、精神科医療機関にも相応の負担をしていただきたいとお願いしているのです。
 それと、現在救急隊も身体合併症や緊急度などの判断力を身につける努力を一生懸命やっていますが、精神科領域は非常に難しいのです。しかし去年・一昨年と、消防庁において緊急度判定について、ずっとみんなで取り組んでいますから、救急隊の様々な判断力が付いてくれば、緊急度判断に大きな違いはなくなります。また、救急搬送患者の8割は軽症ですから、精神科病院に行っても救急病院に行っても大丈夫です。救急隊が判断して「受入れをお願いします」と言ったら、まず受けていただけるのであれば、私たちとしても非常に助かると思っています。それが「適応ではない」と言われてしまうと、結局、すべて救急病院が受入れるという話になります。精神科の適用かどうかという話は、身体科としての適用のないところからスタートしているわけですから、そこは理解し、相応の負担をする気持ちがないと、協議会を作っても、恐らく話が進まないのではないかと思っています。

○有賀座長
 入院という方法論は治療の一環ですよね。ですから入院という判断をするときに、多分精神科の医者だけでは駄目で、患者ないし御家族の希望があるという話もそこそこ理解しますが、今の御意見は、少なくとも地域で起こっているそういう患者さんの診療に関して、診察していただける程度には参加してほしいという話だと私は理解します。東京都でも30年近く議論しているのは、急性期病院に来る患者さんを精神科の先生も一緒に診てくれというような素朴な話なのです。ですから仕組みといえば仕組みですけれども、そこら辺をどういうように地域地域でやっていけるのかということではないかと思います。

○千葉構成員
 十分にお話のところは同じです。我々精神科側からすると、とにかく身体疾患を診ていただいて、体が何ともなければ我々が診ますというのが当然の姿勢です。ただ、それが夜間・休日等にどこまで診療体制を張れるかということだと思うのです。夜間に入院治療を必要としている、あるいはその日に精神科の治療を必要としているという重要度の問題といいますか、必要度の問題ですよね。それが本当に必要であれば、先ほど申し上げたように、まだ十分に機能していないと言っている情報センターをきちんとさせながら、精神科救急に入れていけばいい。あるいは保健所を通して措置通報していけばいい。ハードの部分はそれでいくと思うのです。
 つまり、本日でなくても明日でもいい、明日、精神科を受診してちゃんとしてもらってくださいという人たちは、その日ではなく翌日受診、通常の診療時間帯に入ってくるだろうというように考えると、どうも先生のおっしゃっていることは、自分でお帰りになっている8割の方が、その日に必ずしもリアルタイムに精神科を受診しなければならないのかということですよね。そうではなくて、「翌日でも行ってください」、「行きます」と。問題は、紹介するシステムや情報を提供するシステムをもう少しして、上りも下りも両方でうまく流通すれば、そういう人が来るはずということで待って診療するという形が、もうちょっとうまく取れるのではないかと思っています。

○横田構成員
 千葉構成員のお話を聞いて、それぞれの精神科医の立場がよく分かりました。よく分かったというのは、これは解決しないなということがよく分かりました。なぜかというと、リストカットもそうですが、あるいは興奮状態で入ってきて、ちょっと身体症が出ていて、いわゆる二次救急病院を中心とした所に来る患者さんは、精神的背景が増悪したために、身体を傷つけることが多いのです。精神科受診は翌日でいいではないかとおっしゃいますが、本当は精神科領域の先生たちのお仕事のカテゴリーではないかと思います。
 他の診療科から言うのは大変失礼ですけれども、身体症が発現する、リストカットをすること自身、精神疾患が増悪しているのだから、今介入しないと一層悪くなるというのが、本来の精神科医の考え方のあるべき姿だろうと思うのです。もし、そういうことに立脚すれば、その時点で一緒に診療しましょうということになろうかと思うのです。それを言いたかったというのが1つです。
 もう1つは、措置入院というのもありますけれども、日常の標榜診療科を精神科と他の身体診療科に分けていること自身、さらに病床も精神科と一般病床に分けていること自身が、夜中の2時、3時にこの両方を掛け持った患者さんが来るのをどこで診るのか、ということを解決できない原因となっているのです。これは医療制度そのものの問題です。この現状のまま現場でパッチワーク的に、救急医療で、あるいは精神科医療でやってくださいというのは、もう限界がきています。それぞれ精神科、一般病床というベッドの区割りもさることながら、そこは両者がもう少し融合できるような医療のシステムが必要でしょう。
 例を挙げますと、非常に大きな精神科病院があります。それは一般病床も持っています。しかも救急告示を取っています。しかしそこの救急部門の先生に聞くと、精神科病床側と身体病床側の病院には、そんなにコラボレーションがないと。晩の2時、3時に双方が出てきて診療できるかというとそうはなっていないと。開設者は同じだけれど院長は違うということで、結局はなかなかコラボレーションできていないということでした。ですから、精神科的なことはもう少し大きな枠で考えないと、何年経ってもなかなか解決しないのではないかというのが、私の個人的な意見です。

○千葉構成員
 私が言い足りなかったというか、説明が悪かったですね。現在のところで言えば、前の資料等にもありますように、精神科救急医療のシステムは、やっと構築が出来上がったところにあります。よって、本当に今日入院しなければならない、今日診療してもらわなければならないものは、当番制であれ何であれ、各地区で必ず診療を張っている病院があるはずです。ですから、そこの情報がきちんと伝わっていないということはあろうかと思います。
 救急隊にはその日の精神科救急の当番病院、あるいは常時対応型、つまり365日24時間対応している病院というのが、きちんと当番表が回って把握されているはずなのです。ですから、そこで診ないということはあり得ないと思います。そこで蹴られることはない。ただ、先生方と同じように、明日でもいい人に夜中に来てもらっても、それはそれで大変だという話をさせていただいたということで、了解をいただきたいと思います。夜であれ、一応各地区とも全国、そのシステムにあるはずだと思うのです。河嶌さん、どうでしょうか。精神科救急システムは、全国で穴はないと思うのですが。

○河嶌心の健康づくり対策官
 一応全自治体にあるのですけれども、やはり自治体間の差が大きいというのは確かです。医師が常時している自治体もありますが、ほとんどがPSWというソーシャルワーカーだけです。

○千葉構成員
 情報センターではなくて、精神科救急の当番病院のシステムです。

○河嶌心の健康づくり対策官
 参考資料2の4ページの最後に、並列モデル、縦列モデルというのがあります。並列モデルというのは、精神科が常時している総合病院をイメージしますけれども、なかなか施設が少なく、現状は減ってきているというところがあり、縦列モデルのほうが現実的に行っているということです。それで単科の精神科と一般救急の連携が大事になってくるところです。確かにこれも自治体間の差が大きいので、連携の取れている地域もありますし、なかなか連携の取りにくい地域もあるのが現状です。

○千葉構成員
 全国に精神科救急科システムは整備できているのですよね。診療する精神科病院がない日はないですよね。

○河嶌心の健康づくり対策官
 はい、一応現状ではあります。

○有賀座長
 そうすると、例えば東京都においては、今からある病院で精神科の診療を受けてもらいたいと思えば、その病院に行っていただいて、そこで精神科の先生のその日の見立てを得て、家へ帰れるのならそれでもいいし、そうでなければそうでないなりにという意見をもらうことができるということですか。

○河嶌心の健康づくり対策官
 一応現状ではそうです。

○有賀座長
 先生、東京もそうなっているのですって。

○行岡構成員
 私の理解では、本人が「行くのは嫌だ」と言えば、本人の意思を尊重して、無理矢理行かせることはできないのです。行きたくないというのは尊重しなくてはいけないので、我々が困るのはそこです。

○有賀座長
 ですから診察いただけるような仕組みというのは、「行け」ではないのですよ。患者さんがいる所に来てほしいわけです。

○行岡構成員
 そういうことなのです。正に我々の病院でも、「精神科を受診したくない」と言えば、精神科としての診察はできないのですけれども、来て診てほしいと。我々にサジェスチョンをして、帰していいか、これは希死念慮が強すぎるから帰さないほうがいいというのを言ってくれるというサービスはなかなか。診療家と言えばサービスですよね。そこまでまめに来てくれる人はいないわけではないのですが、これは個人的つながりになってしまいます。

○有賀座長 
個人的つながりでなくても、私たちで言えば、烏山病院には必ず精神科のドクターがいますので、いざとなればもちろん厚意でいいわけですけれども、そこまでしなくても日勤帯にちょっと来ていただいて、カルテそのものは内科のカルテでもいいですし、救急科のカルテでもいいから、そこに書き込むことで精神科の先生の御意見が反映されるというポイントが一番大事です。決して仕組みで精神科医療のハードルを越えろと言っているわけではないのですよね。

○千葉構成員
 話が2つになってしまいました。大学病院等が多いと思いますが、幾つかの病院では、精神科から救急に詰めている病院もだんだん出てきています。救命センターに精神科医が詰めるという形で、整備をしていただいている所もあります。もちろん精神科の当直が呼び出されて、そこに行って診るわけです。ただ多くの大学病院の中で、精神科の診療科は残すのですけれども、入院ベッドを持たなくなってきている所があって、そういう所は当直していないのです。これは院内のリエゾンの問題だと思います。その総合病院なり何なりに精神科がちゃんとあって精神科医がいれば、それはリエゾンとしてやっていただくことは必要なことだろうと思いますから、それはそこの設置母体の考え方といいますか、調整だろうと思います。
 今問題にされているのは救急救命の現場で、精神科がいない所において精神科の患者さんが来た場合に、この人は精神科に行かせなければならないだろうとか、精神科の診療が必要だということが判断された場合に、どのように下に流すかといいますか、精神科に診てもらうかということだと思います。精神科のほうでは先ほど来申しましたように、今は救急システムを張っていますので、少なくともそこへはアクセスできるはずです。それが機能していないと言われれば、もう少しきちんとした体制をとらなければならないということはあろうかと思います。
 本人が「行かない」と言った場合は、伊藤先生がおっしゃったように、もうどうしようもないのです。ただ、リストカットをされたりしている方々は、もし主治医があれば主治医へ連絡していただくことになります。当然、その翌日あるいは翌々日みたいな形になるかと思うのですが、そこでコラボレーションをするしかないと思うのです。それは現状でできると思うのです。ただ、アルコール依存といった方々の中には、実際には「行かない」と言う方々があります。それから、鬱で自殺企図を起こされる方々です。実は鬱で自殺企図をされる方々の4分の3が、自分は鬱病だと思っていないというデータがあります。ですから、そういうものは適切に家族等を説得していただいて、精神科の受診に結び付けていただくことはとても大切ですし、またやりそうだと思うのであれば、その日のうちに精神科救急のほうに回していただいていいと思うのです。
 ある意味、重症度です。最初に伊藤先生がおっしゃったように、重症度によって明日受診、あるいは本人への受診勧告、あるいは今日どうしても精神科に診てもらったほうがいいという方々で、本人が「行く」と言った場合は、精神科の救急のシステムのほうへ流していただく。それから、これはもう緊急的に強制治療が必要だということであれば、保健所に出動していただく。保健所も24時間通報を受けるということで、担当者が決まっておりますので。精神科側のほうに結び付けていくためのそういった情報が、きちんと救命救急のほうに行き届いていないという部分は、今回、先生方のお話を聞いていて感じました。

○行岡構成員
 救命救急センターの問題はそれほどではないと思うのです。精神科のドクターが常駐していない二次救のほうが、より過酷な問題だと思います。

○加納構成員
 千葉先生を責めるわけではないのですが、正しく二次救の現場で問題になっているのは、システム自身がまだ未成熟なのか、反応が悪いということです。もちろん反応のいいときもあるのですが、それは担当している病院が非常に頑張っている病院か、違う病院かという差があるのかもしれません。大阪は確かにある面、そういった形での補助金も出されているのですが、応需してくれないときがはっきりあるというのが現状ではないかと思うのです。現実的にそういうちゃんとした対応ができるシステムが動いていれば、私たちは困らないわけです。
 先ほどから議論になっていますように、例えば薬物中毒で、多量の向精神薬を飲まれた人が自殺未遂で来られたときの相談とか、救急で来られても興奮して暴れ回っていらっしゃって、もちろん全身傷だらけという方とか、明らかに精神的な治療を行っている方がいらっしゃったときに、夜中は相談する相手すらなかなかつかめないというのが現状であるのです。そこを何とかシステミックに成熟した形で提供していただきたいというのが、先生への希望なのです。

○千葉構成員
 一応代表して来ていますので、言っていただきたいと思います。実は、各地区でうまくやれている所もあれば、連携のところで十分なことをされていない所もあります。精神科救急のシステムは、精神科救急のシステム連絡協議会を設置することになっておりますので、どの自治体においても多分ブロックごと、そして県ごとということで、年に何回か協議会を開いているのです。その場には救急隊や警察の方等も入っています。地元の医師会の方々も入っているのですけれども、恐らくそこもMC協議会に精神科を入れている所が少ないというのと同じように、精神科救急システム側のほうの連絡協議会にも、一般救急側のほうから入ってきているのも少ないのかもしれません。この辺はやはり課題として、これからそういう話をお互いにぶつけ合う必要があるのではないかと思っています。

○鈴川構成員
 今の話もお聞きして、やはり解決はとても難しいと思います。栃木県の話を考えても、そういう協議会はありますし、いろいろな議論もしました。しかし全く解決していません。例えば私たち救急医の立場から見ると、精神科の先生が処方されて、お薬をまとめて飲んで意識がちょっとねむくなっていますと。そういう方は私たち身体科から言うと、自分が出した薬で患者さんが変になっている場合は、自分で何とか責任を取って、自分でどこかで何かしようという意識が働くのですけれども、「申し訳ないけど、それだったら救命センターに行ったらと精神科の先生に言われたから来ました」というのは、私たちの若い医者に対して非常にダメージがあるのです。
 それから救急車を呼んだ場合、救急車はどこかに運ばなくてはいけない。先生は「明日にしたら」とか、「今でなくてもいいですよ」でいいけれども、では、救急車で来た患者は明日までどこで診るのですか。それは別に救命センターなり二次病院で診なくても、「明日来ていいですよ」というように先生方から患者さんに言って診ていただけたら、きっともっとスムーズに行くのではないかと思うところがたくさんあるのです。

○久保構成員
 今の議論で、周産期の立場からです。すごく問題になるのが、妊娠をしている人を診ると、明らかに精神的な問題があるけれども、どこにもかかっていないというときです。そのときに相談窓口や情報センターに産科の医者が電話をして、「どこか探してください」と言えば、必ず探していただけるのですか。これがあるのだったら、すごく便利です。うちには精神科があるのでいいのですが、持っていない開業医の先生はいっぱいいるのです。そういう人たちがどこに行っていいか分からないということが、現場ではものすごく困惑することが多い。また、精神疾患合併妊婦がどんどん増えているのです。

○伊藤参考人
 まず、輪番制の当番施設名は、福岡県だけかもしれませんが、救急隊にも救急病院にも全く知らされません。これは教えていただけないということになっています。輪番制に入られている病院は分かりますが、何月何日にこの病院が当番をしているということは全くわかりません。
 それから、前回の会議で福岡県の精神科救急情報システムは5%ぐらいの調整率だと言いましたが、その5%の中のほとんどは、御家族とか御本人とか警察経緯の受入れの入院ばかりで、私たち救急病院や救急隊から外来対応の患者をお願いし、受けてもらう場合は、ほとんど入っておりません。それと今、救急情報システムの中で搬送受入れうまくいっているのは、スーパー救急病床を持たれている精神科病院との連携です。精神科救急情報システムの輪番制を使った外来機能の強化というお話が今出ました。これは、精神科救急医療体制を協議されている委員会では、以前より検討されている体制ですが、現場の医師から言いますと、絶対にやめたほうがいいです。外来で済む患者を受入れる体制には絶対になれないと思っていますので、輪番制は入院対応だけをしたほうがいいと思います。そして、輪番制以外で、スーパー救急を有する病院に特化した外来対応システムを作っていただくか、外来専門の精神科救急のセンターの整備などが救急医療側の要望です
 私たちがお願いしているのは、外来患者を診ていただきたいということです。先ほどから先生は、入院になったとき状況について言われていますが、私どもは入院判断に資格のある先生が1人要る、2人要るという救急をお願いしているわけではなくて、外来で済む方がほとんどですけれども、そういった患者も診ていただけますかというお願いなのです。外来対応していただけるようなシステムを検討していただきたいのです。今の精神科救急情報システムは、そこを所管している行政も、緊迫したような、精神科医が直ちに対応しないといけないような入院患者を対象としていると、いまだにはっきり言われています。メディカルコントロール協議会で定めた実施基準とは明らかに違う定義です。もし、精神科救急情報システムで外来を強化するのであれば、外来対応する患者の定義そのものを国のほうからしっかり通知していただかないと、恐らく受入れ状況は変わらないと思います。そこはしっかりと踏まえて、是非協議していただきたいと思います。

○千葉構成員
 分かりました。ただ、福岡の状況が私には分からないのです。私の所の青森のデータからいけば、輪番制の救急は入院の2倍の数の外来を診ているのです。相談も、同じく2倍ぐらいの電話相談があるのです。ですから輪番制の病院が入院しか診ないということについては、精神科救急システムとしてどうなのかというのが疑問になります。それから、どの病院がどこであるかというリストは、消防のほうで全部持っています。もちろん一般公開はしません。ただ医療機関から問合せがあればお答えする形になっていますので、全国的にはそちらのほうが主流だろうと思います。ですから福岡の形については、後で調べさせていただきたいと思います。

○有賀座長
 青森県を見ると相談窓口なし、相談センターなしですけれども、それなりにきちんと回っているという話がありますから。

○有賀座長
 私が言っているのは地場というか、その地域その地域できちんといろいろなことを考えながら、上手に連携しようというベクトルがうまく働いている所は、多分うまくいっているのだろうと想像することができる分、ここで議論しなくてはいけないのは、ベーシックな仕組みをどういう形で作っていくかとか、MCで議論される言葉に精神科のターミノロジーを上手に合わすことができるかなどで、これらがお国の仕事ではないかというような議論もあります。精神科の話はいつもそうですが、非常に奥が深いというか、もっと言うと根が深いですから、厳しい問題がいっぱいありますので、ほんのちょっぴりヒートダウンして、石井先生に一言いただいてから次へ行きたいと思います。石井先生、まとめて言ってください。

○石井構成員
 つまり今の話は、周産期もそうだったのですが、実は精神科の問題は法律が違う、部局が違う、予算が違う、したがって上から下まで全部タテに筋目が入って割れているのです。それをどうするかという話だったわけです。では、この話について今まで何もしていないかというと、そんなことはないわけです。まずはそれぞれを整備しましょうということから始まって、救命救急センターの位置付けや評価の中に、精神科との連携というのを入れてもらえましたし、MCのあり方の中にも同じように小児、周産期、精神科の方々と一緒にやったらどうかということは、毎年やっているわけです。ただ、筋目が残っているという話をしているのだと思います。それはまだ足りないので、まだやらなければいけない。
 やるにはどうするかというと、1つは国のレベルで情報を共有化したり、連携をもっと強化していくということがあると思います。もう1つ、やはり一番大事なのは、地域で連携が取れているかという話だと思うのです。その話をしますと、有賀先生はもともと日本臨床救急学会で、そういうときはこうすべしという「自殺未遂患者への対応 救急外来(ER)・救急科・救命救急センターのスタッフのための手引き」を作っていましたよね。結局、そういうことは救急側でも努力しているわけですから、それをどうやって共有化するかというのは、もう1回地元でやらなければいけないという考え方は、有賀先生のおっしゃるとおりだと思うのです。
 もう1つ、別な情報を提供します。いわゆる地域の情報連携をやらなければいけないということは、医師会としても考えています。1つは、ORCA(Online Receipt Computer Advantage(進化型オンラインレセプトコンピュータシステム))の電子カルテを含めた地域連携のモデルを、厚労省と一緒にやりましょうということです。何年か進めてきて、今は一段とその上のバージョンになり始めたのです。医師会が認証局というものを提供して、これを共有財産として使っていただいて、認証しながら情報を共有するのです。今言っていた話の大半は、それがうまくいかないという話だと思うのです。それを進める方向を提供する用意はあります。中身についてこれからどうやっていくかというのは、今日は無理だと思いますので、また別なタイミングで一緒に考えるときがあってもいいかと思います。
 医師会のいろいろな議論の中で出てきたのは、ある地域でリファレンス(照会)のモデルを診療報酬で手当てするということで、地域の医師会が行政ともお話をして、それでいいということになり運用してみたのです。そうしたら、非常に円滑に動くようになった、つまり往診なり外来受診も含めて、両方でその日算定していいということで、その地域で運用を始めたわけです。地域といっても都道府県単位です。うまくいっている実例がありますから、これは全国で共有したらどうかということで、前に一度情報提供しているのです。
 ただ御承知のとおり、ローカルルールが結構あって、それは地域地域で頑張っていただかないと、なかなか成立しないのです。そういうことを含めてハードルを低くして、夜中まで情報が共有化されているかどうか、もう一歩進める必要があると思います。MCのあり方も、医師会が混ざりながらやっていくしかないと思います。現場がまだ不十分だということは、今日十分出たと思いますので、そんなところでいかがでしょうか。

○千葉構成員
 認知症の流し方の下流の話で、1点だけ申し上げておきたいと思います。現在、認知症疾患医療センターという形で、認知症の診断治療とそれらの対応をするための国の委託事業、整備事業ということで、多くの場合は精神科病院にこれが設置されております。熊本等は大学病院に置いていますけれども。これが今、全国に200ほど整備されてきています。最終的には300ちょっとということで、各二次医療圏に1つ程度という形で設置していくことになっています。ですから救急の現場で認知症で困ったことがあるようであれば、認知症疾患医療センターへのアクセスをしていただくことが、その先の処遇や下りの判定には一番いいのではないかと思っております。ですから、その辺のところも御理解いただきたいと思います。

○有賀座長
 この検討会の議事次第のページを見ていただきますと、5番、6番の後に「中間取りまとめ(案)について」となっています。それは最初に全体を理解するために、資料3に「はじめに」とか、第2の「救急医療の現状及び課題」というのがあって、その5番と6番について今お話を賜ったということです。6番は奥も根も深いという話をしましたので、また十二分な時間を設定しながら、議論をし直すことが必要ではないかと思います。そういうことで資料3そのものについて、事務局から御説明をいただかないといけないと思いますのでお願いします。

○辻救急医療専門官
 それでは、資料3の「中間取りまとめ(案)」につきまして、時間も限られていますので、前回との修正点を中心に御説明させていただきます。まず1ページの第1ですが、「はじめに」という部分を記載させていただきました。内容については、今は割愛させていただきたいと思います。
 2ページの第3「検討事項」についてですが、1の(1)メディカルコントロール体制については、大きな変化はありません。(2)救急医療情報についてということですが、3ページの一番上の○です。御指摘を受けまして、「医療機関は救急患者の受入れ状況などの情報を地域でリアルタイムに共有できるように、速やかに更新を行うべきである」という部分を追記させていただきました。次の○は、医療機関の評価項目ということを書いていましたが、これを「医療機関の現状を把握し改善するための項目」とさせていただきました。続いて(3)#8000についてですが、大きな変更はありません。(4)院内トリアージについてですが、2つ目の○の部分を追記しました。
 続いて2「救急医療体制の充実強化について」という所ですが、前回、論点整理をいただいた部分です。(1)は、救命救急センターの充実強化ということで記載しています。具体例を追記したほかは、前回の論点整理と大きな修正はありません。4ページの(2)二次救急医療機関の充実強化についてですが、前回の宿題事項でありました、救急告示医療機関と二次救急医療機関の一元化について、追記をしています。こちらについても具体例の追加をした以外は、大きな修正はありません。続いて5ページの(3)初期救急医療体制の充実強化について、(2)について、前回は「病院併設型」としていた部分に関しては、「初期救急医療部門を併設」というように御指摘を受けまして、変更しています。
 大きな3の部分ですが、項目立てのことに関して御指摘をいただきました。こちらを新たに「救急患者の搬送等について」とし、新たな項目を立てまして、ドクターヘリや高次医療機関からの転院搬送等についてをこちらに移しています。ドクターカーについても、今後検討が必要ということでしたので、こちらに追記しています。
 6ページの大きな4ですが、「小児における救急医療機関との連携について」です。こちらも前回の論点整理の具体的な論点と、大きな変化はありません。5と6については、本日の内容等を記載したいと考えています。また、第4「その他」の部分に、前回御指摘をいただいた本検討会の検証・評価についても、こちらに記載しています。
 これらの中間取りまとめ(案)を受けまして、追加すべき事項、修正すべき事項等がありましたら、御発言、御議論をいただきたいと思います。事務局からは以上です。

○有賀座長
 どうもありがとうございました。素朴なことを聞いてしまうのですが、「中間取りまとめ(案)」の案を取った暁においては、例えば今は第3の1の(1)メディカルコントロール体制の充実強化についてということで、○が4つありますよね。この○が付いたような形での文章が、最終的には残るのですか。

○辻救急医療専門官
 それについては今後検討していきたいと思います。

○有賀座長
 例えば「はじめに」の所をそこそこ読めば、日本語として説明を受けて、ふむふむと読めるわけですよね。○がこう続いていると、その筋のプロは極めて分かりやすくていいのですが、恐らく阿真さんたちのような人が読むと、何だか一つひとつがぶち切れていて、場合によってはかえって理解しにくいかもしれないので、易しい日本語にしたほうがいいのかなと思いながら聞いていました。それはまたこれから考えるということでいいのですね。

○辻救急医療専門官
 はい。

○有賀座長
 分かりました。ということで、ここは○の部分をきちんと書き込むことになるだろうという理解ですが、どこでも結構ですので。

○久保構成員
 3の「救急患者の搬送について」という、(1)、(2)ともに周産期搬送もこれに関わっているので、できれば「救急患者の搬送について(周産期搬送も含む)」ということを付け加えていただくと、救急患者だけではなくて周産期搬送、この2つは両方とも大きな問題点なので、よろしくお願いしたいと思います。

○有賀座長
 今のは5ページですか。

○久保構成員
 5ページです。

○行岡構成員
 これは中間取りまとめがあるから、最終取りまとめもあるわけですよね。今日、これを認めると、これは(案)が取れるのですか。

○有賀座長
 今後の進め方とも関係がありますので、ちょっと全体像を。

○行岡構成員
 今でいいのか、後なら後でもいいのですが。

○田中救急・周産期医療等対策室長
 では、後で。

○行岡構成員
 そしたら、中間から最終取りまとめに行く文脈でいうと、やはり2ページのMCのことは、いろいろな所で関わってくると思います。今日の議論だと、周産期のほうはなんとなくロードマップが見えてきて、解き得るかもしれないというのですが、後半はちょっとロードマップが見えないなという。決して千葉委員をどうのこうのではなくて、全体、我々も含めてちょっと見えていないという気がします。
 この辺りは、これからどういう議論になるのか、もう少し詰めたい。実は私、東京都で地域も都も1つのMCでやっていて、事後検証、教育、指示、指導とかなり委員会が充実して、強制権というか力も持っているのですが、地域がどうなっているのか。二次医療圏と一致している、していない。地域と県、その辺りはベストプラクティスなのか、いろいろな問題がどこにあるのかもう少し見てみたい、検討もすべき。これだけだと、少し漠然かなという気がしました。
 それを踏まえて、例えば今日の議論で周産期の問題をどう解決するのか、精神科救急のことを今後どう検討していくのかというのを考える手掛かりが、もう少し深まるのかなというように、これを見て思いました。コメントというか感想です。

○有賀座長
 今の話は、メディカルコントロールというもう少し大きなくくりで話をまとめるほうが、かえって読み手が分かりやすいのではないかということになるわけですよね。

○行岡構成員
 はい。メディカルコントロールというのは、要するに病院前救護の質の保証というところから始まってきたけれども、だんだん医療計画とまで言っていいのか。

○有賀座長
 だから搬送と受入れの問題は、当座の問題としてあったのだけれども、地域医療の全体像をどのように構築しているのかということとも関係してしまう。先ほどのロードマップはそうですよね。

○行岡構成員
 そうですね。

○有賀座長
 産科の話と、精神科もそういうことになりますよね。

○行岡構成員
 これは余りに肥大化してきて、医療計画そのものに関わるのか、その立ち位置ももう1回見直す必要があるのかな。地域でどのようにやっているのかというのを、自分自身が知らないということもあるのですが、今後の課題と言っていいのか、コメントしておきたいと思います。

○有賀座長
 ありがとうございます。

○伊藤参考人
 私は北九州地域のMCを担当させていただいています。前回も少しメディカルコントロールというお話をさせていただいたのですが、ここにありますように小児科、産婦人科、精神科の委員にも入ってもらう、先ほどは周産期専門家の委員の話がありました。福岡県では実施基準を決めるとき、精神科の先生に入っていただいたのですが、小児科などは入っていなません。地域メディカルコントロール協議会にいたっては、何度も言いますが、予算化ができないので、委員を増やすことすらできない現状です。
 ですから是非、メディカルコントロール活動に対する予算を付けて頂きたい。県も予算がないようで、なかなか動いていただきにくい様子です。福岡県メディカルコントロール協議会は、地域4ブロックがあり、やはり地域単位で問題解決していくことが多いです。従って、県に専門委員が1人おられても、各地域の協議会にそういう先生方に入っていただかないと、恐らく地域も県もメディカルコントロール活動は機能しません。そういう意味では地域に各領域の専門家の委員に入っていただくための予算を付けていただく、あるいはより良い活動ができるように環境整備をしていただければ、MC担当としてはとても助かります。

○有賀座長
 財政的な局面について、十二分に配慮した環境整備ということですね。

○市川構成員
 小児に関して少しお願いしたいのですが、6ページの4の小児の部分です。4番目の○ですが、「医療従事者は、患者家族の努力だけでは対応できない社会環境の存在」、これは当然そうなのですが、これにプラス、「・・・・存在と保護者の不安な心情を理解する」という言葉を入れていただきたいです。そういう、我々がもっと歩み寄らないといけない部分があるのではないかと思っているので、是非その文言を入れていただきたいと思います。
 それと5番目の○で、5と6は小児の救命救急医療を、一般救命と小児固有の疾患に分けて考えるということで書いていただいていますが、5番目のほうでは小児科医とER医の相互研修の必要性というのを入れていただいて、もっと連携を強化すべきだということを提言していただきたい。この2点をお願いしたいと思います。

○有賀座長
 事務局にお尋ねします。今、ER医という言葉が出てきましたが、ここでは何と書いてあるのですか。例えば専門医制度でいうところの救急科専門医みたいな人たちを、ここでは何かそういうことで表現しているのですか。たまたまER医と市川先生がおっしゃったのですが、余りそういうことは触れていないですか。

○辻救急医療専門官
 そうです。統一したほうがよろしければ。

○有賀座長
 いや、今は小児科の先生方と、ERで働く先生方との勉強の仕組みを充実させたほうがいいのではないかという御意見ではないですか。そうすると、小児科医と出てくると、こちら側に救急医ということなのかなと思ったりして、ここにはどう書いてあったかという質問だったのです。

○行岡構成員
 よろしいでしょうか。救急医学会の代表としては、救急科専門医という表現をしていただくのがいいかなと思います。ERだけではなくて、救命のほうも頑張っていますので、是非小児科の研修はしたいという人が多いので、よろしくお願いします。

○池田参考人
 産科救急のことです。従来、産科救急は母子保健課が担当して、まだ地方によると母子保健課、一方一般救急は別の課と縦割りでやられている所がありまして、厚労省のほうはきれいにこういった形で、医政局という所が主宰されている。しかし地方に行きますと、まだまだどこで扱ったらいいのかということで、これが下りてまいりますと、どちらに振られるのかということがありますので、是非そういった行政的な、どこで取り組むかということを明確化していただくと、混乱が少ないように思います。

○加納構成員
 先ほど千葉先生がさらっと最後に認知症の話をされたのですが、やはり認知症というのは、これからも激増してきて、二次救急においては全面戦争になるのではないかという状況だと思います。
 先生がおっしゃるように、今は200ぐらいのセンターが出来ていますが、あのセンターは出来た背景も違いますし、やっている組織体も全然ばらばらで、あれが結局、まとまらなくて精神科と同じような、絵に描いたような餅のセンターがいっぱい出来ても、現場はやはり混乱してしまう。やはりそこのところは、認知症を二次救急の1つの大きなテーマとして、何か書いていただいたほうがいいかなと思っています。

○有賀座長
 そういう意味では、認知症の件は恐らく高齢者が増えることと、同じような意味を持つ可能性が高い。だから高齢社会になっていくというか、もうなっているというか、そういうところにおける救急医療の問題がありそうです。第4に「その他」とあり、「その他」には検証と書いてありますが、何はともあれ検証する間にガンガンと高齢者が増えてきて、先ほど言った大戦争というか、負け戦になるかもしれない。そういう状況を考えますと、その件についての言及も、多分全くしないわけにはいかないのではないかという気がします。石井先生、何かありますか。

○石井構成員
 全くそのとおりだと思います。

○鈴川構成員
 栃木県を念頭に置きながら「取りまとめ(案)」を見ると、MC協議会という名前が、例えば第3「検討事項」の1の(1)にありますが、MC協議会と言った瞬間に、医事厚生課の主管ということで、あとは見なくなる、ほかの課は見ないということで。先ほどどなたかがおっしゃっていたとおり、MCという概念が、昔は搬送をどうやって、プロトコールをどうやって作る、事後検証というところから、今は非常に幅が広がってきて、うちの県でいうと医事厚生課だけの話ではなくて、今は明らかに母子保健だとか、精神の話だとか、消防防災の話とか。そういうのが縦割りの内容ではなくて、MCというのはもうこんなになっているよという辺りが、「はじめに」の所だけ読んでも分からない人は分からないと思うので、私たちは分かりますが。そういうところを少し触れていただいて、MC協議会と言ってももっと広い概念で、必要な場合には新たに作り直してもらうぐらいの、そういうことが分かるように書いていただくと、説明がしやすいかなと思いました。

○高城構成員
 今の御意見に私も賛同します。MC協議会と言ったときに、このMCとは一体何なのかというのが、共有できていないという部分があるかと思います。例えばうちの奈良県の話をすれば、MC協議会というのは消防士隊のほうでやられていて、主に救急救命士がどういう手技行為をやるのかというところに特化したりしています。
 先生が言ったような、いわゆる個別疾患ごとにどういう搬送ルールを作って、どういう医療機関に協力をしてもらうのかというのは、また別の所で議論していたりというスタイルをとっている自治体もありますので、全体でMC協議会というのはどうあるべきなのかというスタンダードを見せていただくというのが、非常に重要なのかなと思います。

○有賀座長
 だからMCという外来語をいつまでもずっと使い続けるのかという話と、同じではないかと思います。是非、日本救急医学会で考えてください。では田邉先生、お願いします。

○田邉構成員
 それに関連して、確かにMC協議会が取り扱う内容が非常に広くなっている。一方で第3の1の(1)の2つ目の○ですが、「MC協議会は、行政機関・消防機関・医療機関等と連携をとりながら」。何かいかにもこの3つに、消防機関とか行政機関と並び立つような組織があるかのようですが、実態は多くの都道府県で、年に何度か開かれる協議会といったレベルの所も多いですから、このような記載だと少し誤解を与えるのではないかと思います。2ページ目の第3の1の(1)です。

○石井構成員
 いずれこれは、体制一新よりは上書きを繰り返していって、作っていく必要が多分あるのだと思います。その前の段階では、今我々が共有している認識というのは、「MC協議会が関わるべし」の前に、MC体制というのは全国にもう整ったわけですね、不十分なり何なり、いろいろな議論はありますが。それがどこまでカバーさせているのかといったら、それは行政のいろいろな理屈もあるというのは何度も聞いていますが、MC体制はありきでないと、議論は始まらないと思います。それをどうやって円滑に、もっとアップバージョンにしていくかということの書きぶりのほうが、不要な議論を招かないのではないかと思います。

○田中救急・周産期医療等対策室長
 時間のほうも限られてきましたので、とりあえず事務局より、今後の検討会の進め方についてのみ、説明させて頂ければと思います。

○有賀座長
 先ほど行岡先生が少し。

○田中救急・周産期医療等対策室長
 その点ですね。この半年間にわたりまして、超特急で広く深いところを御議論いただきましたが、一応本日をもちまして、事務局で御議論願いたい事項については一巡できたかなと思っています。そういう意味で、事務局で中間取りまとめ(案)を作成して、少し肉付けの案をいただきたいと思っていますが、中間の取りまとめですので、取りまとめをするに当たっては、各構成員に持ち回りで回覧いただいた上で、座長に一任させていただきたいと思っています。
 今回の検討会をもって、一応事項としてはおおよそ御議論いただいたと思っていますが、先ほど来御議論がありますように、MC体制等、引き続き御議論いただきたいこともありますし、来月の8月は皆さんに夏休みを取っていただいて、毎月やらせていただきましたので、9月には第7回の検討会を開催したいと思っています。
 今後は取りこぼしと申しましょうか、まだ不完全燃焼ですよということも今日たくさんお話がありましたので、今後更に御議論いただくべき事項というのを、今日はあと5分か10分しかありませんので、とりあえず委員の先生から事項のみ出していただきまして、その論点に基づいて、次回に向けて資料等を事務局で用意したいと思っていますので、この場で事項のみ御発言をいただければと思っています。

○有賀座長
 行岡先生から中間の取りまとめという、その延長線上で最終取りまとめみたいな形の局面を迎えるのかどうかという御質問がありましたが、それはいかがですか。

○田中救急・周産期医療等対策室長
 最終的な取りまとめは、一番冒頭の1月にありましたように、一応年内には最終的な取りまとめをしたいと思っています。

○有賀座長
 すると、中間は秋口という意味ですね。

○田中救急・周産期医療等対策室長
 そういう意味です。

○有賀座長
 分かりました。今お話があったように、委員の方たちには取りまとめの文案をメールなどで回してくださるようですので、そこでまた御意見を賜って座長に一任というか、最終確認をさせていただくということだと思います。
 ただ、座長の責任でというか、産科医療もそうですし、精神科医療もそうだと思うのですが、やはり前回の参考資料の3で、私が出しました日本医療機能評価機構の救急医療機能の評価項目の中で、「地域における役割と連携の体制が適切に求められている」という、1-2のこの部分は、やはり全ての議論に関連して、重要な思想的な背景をきちんと表現している部分だと強く思う次第です。ですから、そういう観点で今回の救急医療体制等のあり方に関する検討会も、そもそもそういうものなのだということを踏まえながら、きちんと前に進んでいかないと、枝葉末節の所で闘ってもしょうがないと思います。
 再三言いますが、ある病院の救急部門があったとして、それが地域におけるどういう役割を果たしているのか、または連携をどうしているのか。患者さんというのは、いろいろな患者さんが来ますから、そういう意味で二次病院も三次病院もやっているのだという話になるわけだと思います。そういう意味では、今日のお金の話には直接結び付くか付かないか知りませんが、病院が提供する救急医療のクオリティそのものも、やはり霞を食べて生きているわけではありませんので、そういう質という観点を十二分に勘案した上で、やはり診療報酬の体系なども、場合によってはリモデリングをしなくてはいけない部分はきっとあるだろうと思います。
 お金の話はするなと言っていますが、やはり先立つものも大事ですので、これは誰かがきちんと言わなければいけないと思いますので、座長の権限で言ってしまいました。特に異論があれば、言ってくださればいいと思いますが、いいですよね。この際、先の先を見越しながら、座長一任はけしからんとか、いろいろあるかもしれませんが。

○伊藤参考人
 最後になりますが、福岡県は医師会、精神科病院、診療所を含めて、非常に協力的な地域で、私としては非常に恵まれた所で精神科救急を議論しているつもりでいます。本日の議論のなかで、何か福岡県を誤解されてはいけませんので、一言だけ申し上げます。
 いままで救急病院側の代表が一人の委員としていなかった福岡県精神科医療システム連絡調整委員会委員に、今年度から私が委員として参加することになりました。福岡県はそういう協力的な地域だということを御報告させていただきます。ありがとうございます。

○有賀座長
 青森だって、そういう意味ではそこそこの水準でやっていますよね。

○千葉構成員
 ええ、先ほど石井先生にまとめていただいたのですが、私は県の医師会の仕事を12年やっていましたので、常任理事、副会長もやりました。精神科と一般科は、そういった地域レベルでは医師会の中にきちんと、ある意味、どの医師会の組織の中にも精神科医療を担当する専門医が参画していることが大切です。精神科は特別な扱いを実は今まで受けてきた感じがして、そこの中に(一般医療との間に)本当に壁が出来てしまっている。今日はたくさん御注文を頂いたということで、大変エールを頂いたと思っています。
 ただ、我々のほうでも、(精神科)診療所と(精神科)病院との間の格差というのはなかなか厳しいものがありまして、この辺のところは、病院側のほうは頑張って何とか整備はできそうなのですが、ロードマップというこになれば診療所側のほうはなかなか見えないという形になってしまうのかなというところを、少し気にしていました。その辺のところも報告書等の中に、ロードマップが見えるようにしていけばいいかなと思います。

○有賀座長
 その辺りも場合によって、上手に品良く書き込んでいくことができれば、先の先のときにまた役に立つ。今日、明日に解決するとは思いませんが、今、先生が図らずもおっしゃったように、いろいろな方がいろいろな意見を、場合によっては辛辣に言ってくださったことは大事です。例えば、病院でいうといわゆる御意見を求めた紙にビンビン書いてくる。そのビンビン書いてきたものを見ながら、先々改善していこうという話に結び付きますので、そういう観点で多少辛辣であったとしても、書き込みながら頑張っていく。最終的な目的がいいことに向かってばく進しているということであれば、別に喧嘩する必要もないので、事務局には是非よろしくと思います。

○辻救急医療専門官
 確認です。9月の検討会の項目ですが、MC体制についてもう一度御議論いただこうと思うのですが、そのほかにはございませんか。

○嶋津構成員
 救急医療体制ということで、せっかくですので高度救命センターというのは全国で30ぐらいありますが、これが何をする所かというのは、実は余り分かっていないと思いますので、その辺も是非考えていただければと思います。

○辻救急医療専門官
 了解しました。そのほかにはございますか。

○有賀座長
 先ほど地方の問題の話が出ましたけれど、やはりお年寄りの話はしておいたほうがいいですよね。

○加納構成員
 やはり絶対数はどんどん増えてくると思うので、医療現場、救急現場において、これから、非常に問題化されるのではないかと思っているので、是非問題視していただきたいと思います。

○有賀座長
 そうですね。お年寄りの話はやはり入れないといけないのではないか。先ほどのお話では、こういう一生懸命考えている検証をはるかに凌駕する形で、お年寄りの救急搬送が波のように押しかけてくるというのが、多分私たちの景色だと思います。ですから、是非と思います。

○横田構成員
 周産期でも、妊婦さんが陣痛で救急車を呼んだりしていることがあって、多分老人の軽症もそうですが、何かある程度有効に救急車を利用できるみたいなお話が少しできればと思います。

○行岡構成員
 質問ですが、次回の9月はMC体制の議論をする。その中に、やはり地域で救急医療の実態の把握という意味においては、いわゆる救急搬送なり救急発生した患者さんと、診療のいわゆるアウトカムとしてのデータがやはりフィードバックされて、その地域で何が問題なのかというのが分かっていないと、なかなか議論しづらいところがあるのですが、私の質問は次回話をするMC協議会のあり方の中に、そういった話も含まれていると理解してよろしいでしょうか。
 私、個人的にはそういったところを充実させないと、地域での救急医療のあり方を論じていく場合には、そこが非常に重要になってくるのかなと思っていますので、よろしくお願いしたいと思っています。

○辻救急医療専門官
 御指摘を受けまして、検討してまいりたいと思います。

○有賀座長
 MC体制の仕組みを使いながら、地域の救急搬送の質を評価しようということについても、多少議論が始まっている地域はありますから、もしMCの話をするのであれば、今の話はある意味当然のように入ってくるのではないかと想像します。
 それが今度の9月なのか、9月にどれぐらい入るのか分かりませんが、私たちの国の将来を考えると、今の話は切り離せないことですよね。だって、緊急度の選別という話だって、病院の中ではしょっちゅうバージョンアップしているわけです。つまり、それはアウトカムを見ながら新しい仕組みを作っていくというのと同じだと思います。
 ということで、時間が過ぎてしまいましたので、これで終わりにしたいと思います。事務局から何かありますか。

○田中救急・周産期医療等対策室長
 ありがとうございました。今出していただいた事項、またMC体制ということで、そちらについて次回やりたいと思っています。これまでの御議論を踏まえて、できれば夏休み中に文章などでまとめていただくと有り難いですが、そういったところで、この半年間の議論を踏まえて、それぞれおまとめいただきまして、こちらとしても中間取りまとめについてお時間を頂きまして、9月にはその報告をさせていただきたい。そして、先ほど挙げていただいた事項について、御議論を深めていただきたいと思っています。
 また、日程調整に関しては改めてさせていただきたいと思っています。そして先ほど申したように、最終取りまとめに関しては、一応年内をめどにやっていきたいと思っています。以上です。

○有賀座長
 では、これで終りたいと思います。予定については、少し早めにお願いします。休みがあると、その後には“落とし前”がありますので。では先生方、どうもありがとうございました。終わりにします。


(了)
<照会先>

医政局 指導課 救急・周産期医療等対策室
救急医療専門官 辻(内線2559)
救急医療係長 森口(内線2550)
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