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2013年6月6日 第13回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 議事録

職業安定局派遣・有期労働対策部需給調整事業課

○日時

平成25年6月6日(木)9:30~12:00


○場所

厚生労働省 職業安定局第1・2会議室(12階)


○出席者

構成員

鎌田座長、阿部委員、小野委員、木村委員

事務局

尾形企画課長、富田需給調整事業課長
牧野派遣・請負労働企画官、亀井需給調整事業課長補佐

○議題

1 事業者団体からのヒアリング(公開)
   ・日本生産技能労務協会・日本エンジニアリングアウトソーシング協会
2 労働者団体からのヒアリング(公開)
   ・連合・UAゼンセン・派遣ユニオン
3 その他

○議事

○鎌田座長 定刻になりましたので、第13回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会を開催いたします。本日は、事業者団体2団体と労働者団体3団体からのヒアリングを予定しております。
 それでは、委員の出欠状況と資料の確認を事務局よりお願いします。
○亀井補佐 委員の出欠状況ですが、奥田委員、竹内委員、山川委員が所用のため御欠席と伺っております。また、小野委員が少し遅れて来られると聞いております。
 続きまして、ヒアリングに対応いただく方々の紹介です。事業者団体としては、一般社団法人日本生産技能労務協会、一般社団法人日本エンジニアリングアウトソーシング協会の2団体、労働者団体としては、日本労働組合総連合会、UAゼンセン、派遣ユニオンの3団体にそれぞれお越しいただくこととなっております。
 資料の確認をさせていただきます。資料1は、毎回参考としてお配りしている前回の研究会の議事概要を事務局においてまとめたものです。資料2は、前回の研究会においてお配りした資料と同じものですが、これまでの研究会における主な議論をまとめた資料です。資料3~7は、本日お越しいただく団体の方々から御提出いただいた資料です。団体によっては複数の種類を御提出いただいた所もありますが、準備の都合上、一綴じにして通しページを振っておりますので、あらかじめ御承知おきください。以上です。
○鎌田座長 それでは、議事に入ります。本日は、最初に事業者団体2団体、その後に労働者団体3団体からのヒアリングを行います。1団体ずつ最初に15分程度御説明を頂き、その後15分程度質疑応答を行う形で進めます。なお、長時間のヒアリングになること、また席の都合もありますので、事務局の誘導に沿って1団体ごとに交替していただく形にします。
 それでは、日本生産技能労務協会から御説明をお願いします。本日は、お忙しいところ誠にありがとうございます。御説明の前に、出席者のご紹介を事務局よりお願いします。
○亀井補佐 日本生産技能労務協会からは、会長の清水竜一様、副理事長の青木秀登様、理事の出井智将様にお越しいただいております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○鎌田座長 それでは、よろしくお願いします。
○清水様(日本生産技能労務協会) おはようございます。時間の関係もありますので、早速詳細な説明をさせていただきます。内容については、政策法を担当している青木副理事長より説明します。
○青木様(日本生産技能労務協会) 本日、このような機会を頂き、深く感謝いたします。30分という短い間で、私どもの意見を全て述べることは不可能ですので、本日はポイントのみこの時間の中で述べさせていただきます。資料をお持ちしましたので、必ず目を通していただいて、私どもの考えを御理解いただければと思っております。少し早口になるかと思いますが、また15分の発表の目安ということで、多少長くなるかもしれませんが、発表をさせていただきます。
 資料に沿って発表します。第1「現行労働者派遣法に対する評価と見直しの視点」ということで、大きく2つ述べさせていただきます。現在の状況は、雇用の安定とともに、円滑な労働移動を促進するなど柔軟な労働市場が求められており、また、労働者全体に占める非正規労働者の割合が4割近くにも達し、更にその割合は増加し続けている。このような状況の中で、最近の労働者派遣法をめぐる動きは規制強化一辺倒に流れていて、現在の状況に適切に対応していない。労働者派遣法が累次の改正を重ねる中で、つぎはぎが行われ、複雑化する中で、派遣労働者や派遣元、派遣先などの関係者にとって極めて分かりにくいものとなっている。このため、今回の改正においては、広く関係者にとって分かりやすく使いやすいものとすることが、何よりも優先されるべき見直しの視点でなければならないと考えております。
 第2として、この研究会におけるこれまでの主な議論に対する当協会の意見を述べさせていただきます。1「登録型派遣の在り方」で、(1)(2)に関しては、私どももそのとおりと思っております。(3)「他の非正規労働者とは異なって、雇止め規制(合理性判断)を受けにくい。また、間接雇用であるため、派遣契約の終了が雇用契約の終了につながり、派遣労働者はいつ雇止めになるか分からない不安定な状態にある」。1派遣労働者については、その雇用主である派遣元が雇止め規制(合理性判断)を受けるが、派遣労働者のみが契約社員、パート・アルバイトなどとは異なって雇止め規制を受けにくいとする法的・制度的な要素はなく、そのようなことを示す統計データもない。2一般の事業主においても、業務量が減少すれば契約社員、パート・アルバイトなどについて雇止めを行い、場合によっては正規労働者について解雇せざるを得ないが、派遣労働者の場合には、仮に特定の派遣先において業務量が減少したときには、当該派遣先において就業を継続することは困難となるものの、派遣元の営業努力により他の派遣先を確保することによって雇用を継続することが可能であり、現に多くの派遣元がそのような営業努力を行うことによって雇用の継続を図っている。これは、一般の事業主において配置転換によって雇用の継続を図っていることと同様の措置であり、一般の事業主において配置転換によって雇用の継続を図っているのは一般に正規労働者に限られ、契約社員、パート・アルバイトなどについてはこのような措置はあまり行われていないことからすれば、派遣労働者については契約社員、パート・アルバイトなどと比べて雇用の安定に対する期待は高く、派遣労働者のみがいつ雇止めになるか分からない不安定な状態にあるということはない。
 (4)「登録型派遣の雇用の不安定性という側面には何らかの対応が必要」。1「雇用の不安定性」とあるが、登録型派遣労働者の中にはワーク・ライフ・バランスなどの理由で有期雇用で就業することを希望する者が多数おり、有期雇用であることをもって一律に「雇用が不安定」と表現して、評価をすべきではないと考えています。23は飛ばします。4派遣労働者に限らず、有期労働者の場合には、無期労働者と比べれば雇用に期間制限がある分、不安定であることは否定できない。このため、雇用の安定、長期就業を希望する有期労働者全般について、何らかの対応が必要であると考えています。
 (5)「登録型派遣を一律に禁止するのではなく、労働者がより安定的な雇用形態へ転換していけることを促すような対策を講じることが必要」。1先般の労働力調査結果でも、非正規労働者の約2割が正規労働者の仕事がないことを挙げており、このような非正規労働者については正規労働者に転換するための対策を講じることが必要である。2一方、労働力調査結果でも、非正規労働者の約8割は正規労働者の仕事を希望していないと考えられることからすれば、より安定的な雇用形態へ転換していけることを促すような対策を講じるのは、安定的な雇用形態への転換を希望する労働者に限るべきであると考えています。
 2「製造業務派遣の在り方」について、(1)に関してはそのとおりと考えております。(2)「製造業務派遣には、危険・有害な業務に経験の少ない労働者が短期間当てられているという問題がある。これについては、安全衛生教育の面で対応するべき」については、そのとおりとは思いますが、製造業務派遣だけが危険・有害な業務に経験の少ない労働者が短期間当てられているという問題があるわけではなく、この問題は製造業務に従事する有期労働者全てに言えることであり、これについては安全衛生教育の面で対応すべきであると考えています。(3)はそのとおりと考えております。
 (4)「仮に製造業務への派遣を禁止すると、請負への移行が起こることが考えられるが、そこで新たな問題が発生する可能性もある」。これについては、1「新たな問題が発生する可能性がある」とは、どんな問題をイメージしているか分からないが、製造業務への派遣は禁止すべきではなく、派遣先(注文主)が労働者を指揮命令する必要がある場合には派遣を、指揮命令する必要がない場合には請負を活用できるようにするべきであると考えております。
 (5)「製造業務派遣をはじめとする登録型派遣には、雇止めの問題など多くの弊害があり、これらの弊害と派遣先のニーズのバランスを考慮して制度を検討すべき」については、1先に述べたとおり、登録型派遣労働者のみが雇用が不安定ということはなく、このことについては製造業務派遣の場合も同様であると考えています。また、雇止めなどの問題があるのも、派遣労働者に限られた問題ではなく、有期雇用全体の問題であるが、派遣元の営業努力により他の派遣先を確保することによって雇用を継続していることからすれば、むしろ登録型派遣の方が他の有期雇用労働者と比較して弊害は少ないと考えています。3派遣先のみならず、派遣労働者の製造業務派遣に対するニーズが極めて強いことは、十分考慮されるべきであると考えています。(6)に関しては、そのとおりと考えております。
 5ページ、3「特定労働者派遣事業の在り方」に関して、(1)(2)はそのとおりと考えております。(3)「特定労働者派遣を許可制とすべきとの意見もあるが、無期雇用の労働者のみを派遣する事業所まで許可制とする必要性は低い」に関しては、無期雇用の労働者のみを派遣する事業所であれば、あまり問題が生じることはないようにも思いますが、先に述べたとおり、本来実質無期雇用の労働者を対象としていたものが濫用された経緯があること、派遣労働者の保護等に関する規定については、特定労働者派遣事業も一般労働者派遣事業も同様の規制が行われていて、その点について適切な指導監督が行われる必要があること等からすれば、特定労働者派遣事業についても許可制にすべきであると考えています。
 4「期間制限の在り方」。Aに関しては、そのとおりと考えております。6ページ、B「常用代替の有無について新たな基準を設けることは、現実的には非常に難しい。仮に見直しても、境界線上の問題について分かりにくいという問題は残る。26業務という区分自体を廃止することも選択肢としてあり得る」。これに関してはそのとおりと思います。ただし、少なくともその業務に従事することを目的として、無期雇用で雇用されている派遣労働者については期間制限の対象とすべきではなく、また、この見直しに当たっては、期間制限について業務単位から人単位への変更に合わせて検討されるべきであると考えています。Cに関しては、そのとおりと考えております。
 (2)「常用代替防止の在り方」については、A「一部の雇用形態について規制を強化すると、他の雇用形態への雇用が移動するもぐらたたき現象が起こる。派遣だけではなく、非正規雇用全体を視野に入れて考えることが必要」。これに関してもそのとおりとは思います。ただし、有期雇用全体を考える際には、派遣労働者の賃金が一般に契約社員やパート・アルバイトなどと比較して高い水準にあることを踏まえた検討が必要であると考えています。
 B「派遣だけが正社員を代替しているのではなく、契約社員やパート・アルバイトも増えてきている。単に派遣の受入れを制限する仕組みを作っても、その分の労働力は正社員にならず、他の非正規雇用に置き換わる可能性が高い」に関しては、そのとおりと考えています。1派遣労働者は、労働者全体の1.7%、非正規労働者全体の5%に過ぎず、正規労働者を代替している要因としては極めて小さいという事実を直視して対応すべきであると考えています。
 7ページ、C「常用代替を防止することは重要。不安定雇用は社会的にも弊害があり、安定した雇用が望ましい」に関して、1社会の安定のためには、安定雇用が望ましい反面、行き過ぎた常用代替防止の考え方も問題である。特に現在においては、労働移動を促進することも重要な政策課題であり、同じ雇用主に継続して雇用されるだけではなく、失業なき労働移動によって雇用の安定を図ることも重要であると考えています。2先に述べたとおり、派遣労働者が正規労働者を代替している要因としては極めて小さく、これも先に述べたとおり、パート・アルバイトや契約社員などが増加しているという事実を直視して対応すべきであると考えております。
 D「派遣労働者とその他の雇用形態の労働者の利害が対立するような仕組みではなく、派遣労働者の保護のために、例えば派遣が終了したら次の派遣先を紹介することを義務付けるなど、派遣元の雇用責任を強化していくことが必要ではないか」に関して、1例えば、有期労働契約基準などは、有期契約の更新の有無やその基準を明示することを義務付けていますが、有期契約の更新そのものについては義務付けていないことからすれば、派遣労働者に限って有期契約の更新そのものを義務付けることは適当ではないと考えています。2実際にも、先に述べたとおり、派遣元の営業努力により他の派遣先を確保することによって雇用を継続しており、配置転換等によって雇用を継続する努力があまり行われていない直接雇用の有期労働者とは事情が異なると考えています。
 E「常用代替防止の考え方には、派遣先の正社員が派遣労働者に取って代わられることを防ぐミクロの観点のものだけではなく、労働市場全体の不安定雇用の比率が上がることを防ぐというマクロ的な観点のものもある」に関しては、1社会の安定のためには、無期雇用労働者の比率が一定程度あることが望ましいことは理解するが、若者における人生の価値観の多様化や女性の社会進出、定年退職後の再雇用者の増加、ワーク・ライフ・バランスなどにより、有期雇用の方が都合のよい労働者が増加しているという事実を直視して対応すべきであると考えています。2先に述べたとおり、派遣労働者が正規労働者を代替している要因としては極めて小さく、これも先に述べたとおり、パート・アルバイトや契約社員などが労働者全体の3分の1を占めて、なお増加しているという事実を直視した上で、何を優先的に行うかを定めて、必要な対策を講ずるべきであると考えています。
 8ページ、F「派遣元で無期雇用されていれば、労働者本人にとっての常用代替の問題はクリアされる。一方、派遣先にとっての常用代替については、派遣先の労使の意見により、派遣先における派遣労働者の利用を一定に抑えるなどといった対応策も考えられるのではないか」。これに関しては、1先に述べたとおり、無期雇用で雇用されている派遣労働者については、期間制限がその雇用の安定の障害となっており、期間制限の対象から除外すべきであると考えています。2派遣先の雇用の在り方について、派遣先の労使の団体交渉、労働協約などによって、派遣労働者の利用を一定割合とすることは現行労働組合法においても可能です。
 (3)「業務と人」。A「派遣期間の上限設定を業務単位から人単位に変更することで、派遣労働者に任せる仕事に幅が生まれ、キャリアアップにつながるという見解がある。また、業務単位に比べ、人単位での期間制限の方が分かりやすい」。これについては、そのとおりと思っております。得意とする業務を通じて成果を出し、広く社会性やキャリア開発ができるようにすることは、人として本来持っている権利であると考えています。
 B「業務単位から人単位に変更した場合、人さえ替えれば派遣先はいつまでも派遣を受け入れることができ、これこそ常用代替防止の趣旨とは合わないのではないか」に関しては、1恒常的なもので熟練を要する業務については、企業の合理的な行動として、常用労働者を雇い入れて当該業務に従事させ、派遣労働者を受け入れるのは臨時的な業務、又は熟練を要しない業務と考えられるので、業務単位から人単位に変更しても常用代替となるおそれは極めて小さいと考えています。2先に述べたとおり、派遣労働者が正規労働者を代替している要因としては極めて小さく、その点からも業務単位から人単位に変更しても、常用代替になるおそれは極めて小さいと考えています。3常用代替防止という考え方を全て否定するものではないが、派遣労働者の雇用の安定や、その安定によって得られる業務習熟によってキャリアアップを図るという視点も同様に重要な課題であることからすれば、業務単位から人単位に変更することは必要不可欠な制度改正であると考えています。
 C「派遣先の常用代替を防止するという考え方からは、業務単位の期間制限という考え方が自然。ただし、これは派遣労働者の保護や雇用安定のためにならないという側面もある。一方、人単位の期間制限というのは派遣先の常用代替とは別のコンセプトであり、同一の派遣先で同一の労働者が何年も働くべきではないという考えである」に関しては、1先に述べたとおり、派遣労働者が正規労働者を代替している要因としては極めて小さく、業務単位の期間制限は派遣先の常用代替を防止するという政策目的からすれば、過剰な規制であると考えています。2人単位の期間制限は、派遣先の常用代替を防止する中で、派遣労働者の雇用の安定と、その安定によって得られる業務習熟によるキャリアアップに寄与することを目的としています。Dは飛ばします。Eに関しては、そのとおりと考えております。
 (4)「常用代替防止の手法」について、Aに関してはそのとおりと考えております。Bは飛ばします。
 C「派遣先の労使という枠組みからは、派遣労働者が除外されていることに留意が必要。常用代替防止と派遣労働者の保護とのバランスも考えるべき」。1現行の労働組合法でも、派遣先の労働組合に派遣労働者を加入させることは可能であり、これは派遣先の労働組合の方針の問題であると考えています。2労働者派遣法の改正・運用に関する政策の立案を行う労働政策審議会から派遣元などの代表が除外されており、その結果、派遣労働者の保護に欠けている面があるので、派遣元などの代表を労働政策審議会の委員として参加させるべきであると考えております。
 5「派遣先の責任の在り方」に関しては、そのとおりと考えております。
 6の(1)「派遣労働者の賃金は、その時々の労働市場の状況の影響を大きく受ける。単に均衡待遇の配慮義務を設けても、賃金の均衡待遇は進まないのではないか」に関して、派遣労働者の賃金は、外部労働市場で決定されるのが原則であり、その状況の影響を大きく受けることは避けられない。派遣先の労使の労働者との均衡待遇は、配慮すべき要素の1つであり、それ以上の規制を行うべきではないと考えています。なお、派遣先の労使の労働者との均衡待遇に関しては、派遣先の労働者の賃金の在り方の問題もあると考えています。
 (2)「均衡待遇の配慮は、その結果に法が直接介入することは難しい。パートタイム労働法のような説明義務を設けることが考えられる。行為規範として、ガイドラインを示すという取組もあり得る」。これに関しては、均衡待遇については、現行法上の規制を行うべきではないと考えています。派遣元に説明責任を求めることはやむを得ないと考えますが、ガイドラインについては現在の派遣元指針で十分であると考えています。
 (3)「労働・社会保険の加入率は、パートと比べても高く、派遣に限定して加入促進の対策を講じる必要性は低いのではないか」。1パートの場合には、加入要件を満たしていない者が多数いるのに対し、派遣労働者の場合には、加入要件を満たしていながら加入させていないという問題があり、同列に扱うことはできません。2特に雇用保険については、先に述べたとおり、リーマンショックのような大規模な経済規模の縮小の際には、最終的には雇用保険制度に頼らざるを得ないことからすれば、派遣労働者について雇用保険を適正に適用させるよう、加入促進の対策を講じるべきであると考えております。3ただし、派遣労働者の加入以上に、加入要件を満たしている契約社員やアルバイトなどを労働・社会保険に加入させていない事業所も相当見られるところであり、これらの者についての労働・社会保険の加入促進の対策を早急に講じるべきであると考えています。4なお、労働・社会保険に未加入の事業所の存在は業界としても問題であり、必要な協力を行うことによって、その健全な発展に向けた取組を行う必要があると考えています。
 7、(1)(2)に関しては、そのとおりと考えております。
 11ページです。(3)「キャリアアップは、基本的に派遣労働者が自律的に行うものであり、それをいかにバックアップするかを考えるべき。派遣元や派遣先にはインセンティブが低く、主体になるのは難しい」に関しては、そのとおりと考えております。ただし、派遣労働者のキャリアアップについては、社会全体で取り組む必要があるが、特に派遣元などのインセンティブが重要と考えており、例えば建設労働者のように、雇用保険の料率を引き上げて、派遣労働者のキャリアアップや雇用の安定に取り組む派遣元などに対して、インセンティブとして高率の助成を行うことも1つの方策である。また、このような方策を有期雇用全体について行うことも有効であると考えています。
 (4)「キャリアアップは、実際の仕事の中で実現していくものであり、派遣労働者を使用している派遣先にも人材を育てていくという意識を持ってもらうことが必要。派遣先に派遣労働者の評価や目標設定等に関わってもらう取組も考えられる。これは、派遣先での直接雇用の転換を検討する際にも重要な情報となる」。これに関してはそのとおりと思います。ただし、派遣先による派遣労働者のキャリアアップに向けた取組などを行う際には、派遣労働者は派遣契約に定められた業務以外の業務を行うことができないことに留意する必要があると考えています。(5)(6)に関してはそのとおりと考えております。
 12ページ、8「その他」(1)「特定目的行為の在り方」について。A、Bに関してまとめると、特定目的行為、いわゆる事前面接については、少なくとも無期雇用の者については数多くの候補者を面接するようなものではなく、ヒューマンスキルレベルの確認ができるようにすべきであると考えております。また、一般的なものに関しても、いわゆる事前面接については、ヒューマンスキルレベルの確認ができる程度にとどめるべきと考えております。
 C「事前面接等をしなくても、的確にマッチングするというのが派遣元の能力であり、現行のままでもよいのではないか」に関しては、そのとおりと思います。ただ、「事前面接をしなくても的確にマッチングするというのが派遣元の能力である」、これは変わりません。ただし、職場の人間関係も、職場で働くに当たって重要な要素であることから、ヒューマンスキルレベルの確認ができる程度のことは許容されるべきではないかと考えております。
 (2)「無許可・無届事業所に対する指導監督の在り方」に関しては、2無許可・無届事業所の存在は、業界にとっても大きな問題であり、行政に対して業界としても協力することによって、その健全な発展に向けて取り組むべきものと考えております。
 第3「改正労働者派遣法などについて当協会の意見」ということで、これは第6回の今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会に提出した資料の抜粋です。1「労働契約の申込みみなし」に関しては、国会審議でも指摘されたとおり、派遣先の採用の自由や労働契約の合意原則を無視するような制度を法制化するのは問題があり、当該規定は施行前に削除されるべきであると考えています。
 13ページ、2「日雇派遣の原則禁止について」。1雇用契約30日以内の短期派遣については、生活維持のため収入を得ようとする派遣労働者及び臨時・短期間の繁忙に対応したい派遣先双方からのニーズが強く、日雇派遣の原則禁止は削除すべきであると考えています。2禁止の例外とされている副業として行う場合や、家計の主たる担当者以外について収入の下限を設けていることについては、日雇派遣を活用して収入を得る必要のある者に限って活用できないという矛盾した制度となっており、このような収入制限は削除するべきであると考えています。
 3「1年以内に離職した労働者の派遣及びその受入れの禁止」について。これはかなり働き手にとって弊害が出ている不便な法律になっています。1離職者であるか否かの確認については、実務運用において様々な問題が生じており、また、労使双方のニーズがある場合もあるので、1年以内に離職した労働者の派遣及びその受入れを一律に禁止する規定は削除すべきであると考えております。
 14ページ、4「マージン率の情報公開」について。1マージン率の公開は、契約自由の原則を侵すことにもなりかねず、あらゆる業種の中でマージン率や原価率の公開を義務付けている産業はなく、労働者派遣事業だけが差別的にマージン率の公開を定められるのは、公平性の観点からも、また我が国産業界がこれまで築き上げてきた経済秩序の観点からも異常な規制であり、マージン率の公開義務規定は派遣元の業務の高度化を阻んでおり、削除すべきである。2派遣労働者となろうとする者の多くは、マージン率を気にして派遣元を選択しているとは思えず、求人広告を見たり、登録してある派遣元からのアプローチを受けたりする中で、業務内容、設定賃金などから派遣という仕事を選択しています。3マージン率が低いからといって適正・良心的とは限らず、マージン率が高いからといって暴利・悪質とは限りません。立法の背景には、派遣は暴利をむさぼる事業であるとの不明確、かつ曖昧な大衆的感情論があったと考えられますが、実際派遣元のマージンは派遣料金と派遣労働者の賃金、派遣元の付帯経費のバランスを取りながら設定されています。4既存の労働者派遣事業報告制度にのっとり、統計的に数値を公表するなどで十分であると考えています。5は飛ばします。
 6「その他」。これは今までの議論とは離れているかもしれませんが、労働者派遣法施行規則第28条第1号においては、派遣元は派遣労働者が45歳以上である場合にはその旨、派遣労働者が18歳未満である場合には当該派遣労働者の年齢を派遣先に通知しなければならないと規定しています。このうち18歳未満については、労働基準法などで就業制限が課せられているので理解できるのですが、45歳以上については通知しなければならない事情はないと考えられることから、逆に45歳以上である旨を通知することによって就業機会が制約されていることも考えられますので、これは削除すべきであると考えています。御清聴ありがとうございました。
○鎌田座長 当初申し上げたとおり、15分程度で御説明を頂ければ有り難かったと思います。御丁寧に御説明いただいて、その点については感謝申し上げます。これからのヒアリングも詰まっているので、5分程度の質問時間を取ります。委員の皆様、何か御質問はありますか。
 私から2点ほど御質問があります。常用代替防止に関わる所で、何度か派遣労働者は正規労働者を代替している要因としては極めて小さいという論拠が出されておりますが、何か統計的なデータというか、根拠はありますか。
○青木様 統計的なデータは、ここに書いてあるとおり、全体の労働者の割合を示すもの程度で、何か数字的なものがあるわけではありません。ただ、一般的に、実際に熟練などが必要なものに関しては、その企業が通常の業務の中でこれは常用でやるという判断でそういった設定をしていくので、企業の判断の中で常用でやるものなのか常用でないものでやるものか、基本的に判別しながら進めていることもあるので、そんなに大きな問題はないと考えております。
○鎌田座長 そうすると、御趣旨としては、派遣労働者の労働力人口に占める割合が少ないことが前提になって、少ないことから正規労働者を代替している要因としてはボリュームの点で少ないだろうということですか。
○青木様 それも1つということです。
○鎌田座長 もう1つ、業務限定によって、業務単位にしていることによってキャリアアップを図る点で問題があるという趣旨の御発言がありました。例えば11ページの(4)で、同意されているわけですが、「ただし、派遣労働者は派遣契約に定められた業務以外の業務を行うことができないことに留意する必要がある」ということと、先ほどの業務限定のために人単位にということを論拠として言われているわけですが、派遣契約自体は業務単位で行われていますね。それ自体を変えろということですか。
○青木様 何か変えてほしいということで述べているわけではなく、これに留意する必要があるということで書いてあるのみです。
○鎌田座長 派遣契約は業務単位で特定して、人単位で特定せずに契約を結びますね。
○青木様 今、現状はそうなっています。
○鎌田座長 そして、派遣契約を結んで労働者を派遣しても、人で特定しているわけではありませんね。
○青木様 はい。
○鎌田座長 だから、そのことを変えろと言っているわけではなくて、人単位というのは全く別のことをおっしゃっているということですね。
○青木様 そうです。ここは、現状そういう状況にある中で、「キャリアアップは実際の仕事の中で実現していくものであり」という文章があったので、ここは留意する必要があるということを述べたくて、ただしということで付けただけです。
○鎌田座長 分かりました。業務単位で限定されているがために、当該派遣労働者がキャリアアップのために従事できる業務の範囲を広げるべきだという御趣旨かと思ったのです。
○青木様 それも、もちろんあります。
○鎌田座長 でも、それは業務が特定されていますから、広げると言っても派遣契約そのものに関わる話ですね。
○青木様 そうですね。現段階では、簡単ではなく、かなり深く考えているところではないのですが。
○鎌田座長 分かりました。私の質問は以上です。
○阿部委員 9ページのDで、ここで「労働者派遣は」という括弧の中は条文だと思いますが、ここで何を言わんとしているのかを教えていただきたいと思います。
○青木様 これは質問の趣旨がよく分からなくて、「人を送り込むという考え方ではない」というのがどういうことなのか分からないので、そういうサービスですよね、ということで改めて書いてあるのみです。ですから、ここは飛ばしました。「労働者派遣は、労働サービスという役務を提供するものであり、人を送り込むという考え方ではない」というのがどういうことか分からなかったのです。
○阿部委員 これは私が言ったことだと思いますが、人身売買的なものではないという意味で、ここの条文にありますが、労働に従事させることが派遣ということですので、そうすると、労働サービスという役務を提供すると考えてよろしいのですね。
○青木様 そのとおりです。
○阿部委員 分かりました。
○木村委員 2つあるのですが、手短に申し上げます。全体を拝見したのですが、26業務か否かという話があって、つまり、派遣法は今、業務によって中身が変わっているわけです。それを、全体的には業務によっての差異化をなくした方がいいというお話なのか、一部残した方がいいのか。つまり、26業務は廃止に同意とありますが、26はなくしたとしても、ほかのものは一部に関しては制限を残した方がいいとか。
○青木様 業務ごとの区分はなくして、制限に関しては人単位にしていただきたいという考え方が1つです。ただ、私どもが無期雇用した者に関しては、期間制限はなくということを言いたかったわけです。
○木村委員 少し細かい話になりますが、業務で製造だからどうだとか、経理だからどうだといった話はなくなるとして、その後に先ほどの11ページの契約に定められた業務以外という話が出てきますが、業務によって違いがなくなったときの業務というのを、今後の派遣の中でどう捉えていくかという話で、例えば26業務がなくなったら、26業務の中での業務の名前がありますね。ああいうもので派遣契約が動いていくのか、それとももう少し細かい単位、業務以外の契約をするなという話になったときに、経理という一言で済む話なのか、経理の中のこれとこれというイメージで、契約以外の業務を定めるということなのか、どちらのイメージなのでしょうか。
○青木様 冒頭にお話したとおり、余り細かく限定して複雑化するのはよくないと思っております。先ほど経理というお話がありましたが、そういった単位の中で、そこの職場で3年とか、3年というのは別に私たちが指定しているわけではありませんが、業務ではなくて、人がということで考えています。
○鎌田座長 よろしいですか。それでは、日本生産技能労務協会に対する御質問はここまでとします。日本生産技能労務協会の皆さんにおかれましては、大変御多忙であるにもかかわらず、本研究会に御出席いただき、誠にありがとうございました。
 引き続きまして、日本エンジニアリングアウトソーシング協会からヒアリングを行います。準備が整うまで少しお待ちください。
(技能協退席、アウトソーシング協会着席)
 本日はお忙しいところ、誠にありがとうございます。事務局から出席者の御紹介を頂いて、その後、御説明をお願いいたします。
○亀井補佐 日本エンジニアリングアウトソーシング協会からは、代表理事の西本甲介様、理事の牛嶋素一様にお越しいただいております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○鎌田座長 それでは、先ほども申しましたが、御説明を15分程度でよろしくお願いいたします。
○西本様(日本エンジニアリングアウトソーシング協会) 日本エンジニアリングアウトソーシング協会から説明させていただきます。今日はこのような機会を頂きまして本当にありがとうございます。私どもはここに記載のように技術者派遣事業の業界団体です。「特定派遣事業について」と記載してありますが、中には一般登録型で事業を営んでいる企業もありますけれども、雇用形態で申しますと、いわゆる正規雇用、無期雇用を基本的な雇用形態として事業を営んでおります。
 本日は2ページの目次に記載のように、技術者派遣業界の概況、当協会の概況、そして当業界におけるキャリアアップ支援の事例、そして最後に牛嶋理事の方から政策提言の御説明をさせていただきたいと思います。
 3ページ以降が技術者派遣業界の概況ですが、4ページの技術者派遣市場のデータは厚生労働省の方で出されている統計データから引用しているものです。直近が2010年度ですが、人材派遣市場が5.3兆円の市場規模で、そのうちの1兆1,331億円が、推定ではありますが、技術者派遣市場ということです。この推定については4ページ右下に記載のように、専門業務区分から推定をしています。1号業務のソフトウェア開発、2号業務の機械設計、13号業務の研究開発、この合算値で推定をしているということです。この1兆1,300億円の市場の中で私ども日本エンジニアリングアウトソーシング協会、NEOAに加盟しているのは10社です。1,300億円ですので、11.5%ということで、市場規模から言いますと、必ずしもこの業界全体を網羅しているわけではありませんが、逆に小規模の事業者が多い業界でもあるということかと推測をしております。
 続く5ページが、今のデータを歴年で経年変化を示したものです。御案内のようにリーマンショックの直前の2008年度が派遣市場のピークで、7兆7,000億円を超えるというところまでいきました。それがリーマンショックで、現在5兆3,000億円まで縮小しているということを示しているわけですが、この棒グラフの短い方の色の濃い部分が技術者派遣市場のデータです。ピーク時で1兆2,600億円、それが現在は1兆1,000億円ですので、全体の市場規模の縮小動向から見ると、比較的安定しているという見方もあろうかと思います。この点については冒頭に申しましたように、当協会は無期雇用型が基本の事業形態ですので、派遣元事業会社それぞれが雇用を守ろうと努力した結果であろうと推定をしています。
 6ページ以降が当協会の概要についてです。7ページですが、2007年2月に設立をしまして、現在、記載の10社で構成をしているところです。8ページの基本理念ですが、12には業界の健全化を第一義的な目的として活動をしていることを記載しています。御案内のように、2000年代の中盤辺りから、残念なことですが、私ども派遣業界の中にもいろいろなルール違反をする会社が出てまいりまして、社会問題にもなったかと思います。その結果、あたかも派遣業界あるいは派遣という働き方そのものが社会的に否定されるというような風潮に対して、私どもは非常に危機感を持ち、こういう状況に対して派遣元事業会社からまずは襟を正して業界の健全化に取り組もうと、2007年以来、活動しているところです。そうしたところから、現状では私どものお客様は基本的には大手の製造業各社になるわけですが、各社様ともにいろいろな派遣会社を使われるわけですけれども、技術者派遣会社であれば、このNEOAに加盟している会社であれば安心であろうということを言っていただけるような状況にまできています。
 3はキャリアアップについてで、派遣業界あるいは派遣という働き方でもキャリアアップができるということを社会的に実証していきたいという考え方を記載しています。9ページ以降がそのキャリアアップ支援の事例ということで、私どメイテックの事例を記載してあります。ちなみに当社では、派遣エンジニアとして60歳定年を迎え、更に雇用延長を実現しているエンジニアも数年前から多数輩出しているところではあります。
 10ページがそのキャリアアップの一番基本的な考え方です。冒頭ずっと申し上げていますように、私ども無期雇用が基本的な雇用形態ですので、1つのお客様の業務が大体平均すると3年ないし4年で終了をいたしますから、そのためにローテーションという形でお客様や業務を替わっていくという仕組みです。キャリアアップというのは、そのローテーションをしていくときに、要は次の派遣先に配属していくときに、いかに今までのキャリアをいかして次の成長に資するようなローテーションを実現するか、これが一番重要なところであろうと考えています。ですから、ここに「ベストマッチングシステム」と記載していますが、お客様から得た受注情報を、当社の場合は年間約3,000件ですが、それを全てできるだけスペックに落とし込み、データベース化しています。エンジニアのキャリアデータも合わせて同じようにスペックに落とし込んでデータベース化をしています。それをITでデジタルでマッチングさせて、契約を終了したときに、次の派遣先は今までエンジニアが積み重ねてきたキャリアあるいは修得した技術、スキル、知識というものを最大限にいかせるようにローテーションをしていくという考え方をしています。
 一方で、エンジニアがこういう仕事をしたいと思っても、そのスキルが足りない、知識が、技術が足りないがゆえにマッチングしないという結果も、ここで見えてまいります。では、自分が成長したいと思う仕事に就くために、こういう技術、スキル、知識を身につけましょうということが研修の基本的な考え方だということです。具体的にどういう研修をやっているかを11、12ページに記載しています。新入社員研修は新卒、中途に限らず、入社時に行う研修で、その後、技術力の研修、そしてサービス業ですので人間力の研修、この両面から研修をやっているということです。
 12ページがそれをチャートにしたものです。この図のように、詳細は割愛していますけれども、いわゆる体系的に研修システムを作る、それを社員が利用できるような仕組みにしているところです。この研修システムあるいは研修体系というのは、私どもの業界で言えば正に競争優位性に直結する部分ですので、各社各様に様々な取組をされています。例えば、私どもは網羅的にやっていますけれども、主に自動車分野にエンジニアを派遣する業態では、極めて自動車分野に特化した研修体系を非常に精緻に作られている会社もあるところです。同時に、研修を行うことは我々にとっては教育投資です。こういう教育投資というリスクを取って投資ができますのも、我々は無期雇用ですから、長期の社員エンジニアのキャリア形成を前提とした教育投資が可能であるビジネスモデルだと考えています。
 13ページは、全国でこういう研修センターを設けてやっているということです。14ページは、例えばこんな研修風景で実際に研修をしているといったようなところの御紹介をさせていただいています。それでは、当協会の政策提言を牛嶋理事から御説明申し上げます。
○牛嶋様(日本エンジニアリングアウトソーシング協会) 私の方から政策提言について発表いたします。本日は主に4つの論点について発表させていただきます。資料4の16ページです。本日の一番大きなテーマの「期間制限の在り方について」、私どもとしては現行制度における問題点をこのように考えています。現行法では常用代替防止を目的に専門性の観点等から業務を政令26業務と自由化業務に区分し、当該業務区分により、派遣可能期間の制限を設けています。しかしながら、下の四角の中のように、見解の相違により現場に混乱が生じる場合があります。政令26業務と自由化業務の区分基準は不明確でして、派遣先、派遣元、労働局の見解に齟齬が生じるケースがあります。
 2つ目に派遣労動者のキャリア形成や能力開発を狭める場合があります。ということで、業務区分による派遣可能期間の制限は、派遣労働者の働き方を制約するだけでなく、派遣労働者のキャリア形成や能力開発の機会を狭める場合があります。
 資料の17ページは今述べました現行制度の問題点を踏まえ、私どもとしては以下の3つを提言したいと考えています。1つ目が、「派遣業務の専門性による区分の見直しを求めます」ということです。業務の専門性は業種・業態により異なること、時の経過により変化するものであることから、専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務を画一的に区分し、規定することは非常に困難であると考えています。2つ目に、「派遣元と派遣労働者の雇用関係に応じた派遣可能期間への転換を求めます」。現行法における26業務を見直し、業務区分による派遣可能期間の制限から、派遣元と派遣労働者の雇用関係、雇用の安定度に応じた派遣可能期間へ改めるべきであると考えています。3つ目に「無期雇用の派遣労働者の派遣可能期間の制限の見直しを求めます」。期間の定めのない雇用の派遣労働者は、その他の無期雇用の労働者と同様に、雇用の安定が図られていることに加え、キャリア形成・能力開発の機会が与えられています。したがって、無期雇用の場合、期間制限を見直すべきであると考えています。
 具体案が18ページです。常用型の定義を再整理し、常用型を無期雇用(期間の定めのない雇用)と、有期雇用(常時雇用)、現状の常時雇用に区分をしたいと考えています。2つ目に、雇用関係に応じた派遣可能期間の制限。3つ目に、業務の専門性による区分規制の見直しを行うということです。19ページの図を見ていただくと分かりやすいと思います。現行法は上段の方です。政令26業務と自由化業務、そして常用型と登録型の形で分かれています。政令26業務については期間制限がありませんが、先日の改正で40条の5の問題ですが、無期雇用の場合には労働契約申込みの対象外となっています。登録型の場合には労働契約申込みの対象です。自由化業務については御存じのように派遣期間は原則1年、業務ごとに判断という形になっています。
 今回の私どもの提言は下段です。政令26業務、自由化業務といった業務区分による区分を見直して、派遣元と派遣労働者との雇用関係に着目し、更に先ほど申しましたように、常用を2つに区分し、無期雇用と有期雇用に、そして、登録型で、業務としては全ての業務について常用の無期雇用(期間の定めのない雇用)の場合には期間制限なし、有期雇用の場合には一定の期間制限を設けることが妥当と考えています。もちろん派遣禁止業務については存続が必要かと考えています。
 今のが期間制限に関する我々の見解ですが、資料の20ページ、2つ目のポイントとして、特定労働者派遣事業の在り方についてです。現行では特定派遣の中に無期雇用と有期雇用が混在することから、特定派遣を常時雇用から期間の定めの無い雇用に基づく派遣に再整理することが適当かと考えています。同時に、特定派遣の場合においても、一般派遣と同様に許可制、若しくは届出要件、資産要件の追加等々の厳格化を行うべきであると考えています。NEOAとしては、業界の健全化というものを強く求めているものです。
 3つ目のポイントですが、マージン率等の情報提供の在り方についてです。マージンの中には教育研修費・福利厚生費等が含まれています。教育研修や福利厚生にコストをかけないほうがマージン率が低く見えるという可能性もあります。したがって、マージン率が派遣労働者の処遇を的確に表したものというようには言えないと考えています。このような観点から、マージン率の公開義務については見直しが必要であると考えています。
 最後の4つ目のポイントは、いわゆる事前面接の在り方についてです。無期雇用の場合には特定目的行為が派遣元と派遣労働者の雇用関係に影響を及ぼすことはありません。したがって、無期雇用の場合には事前面接の適用を除外すべきであると考えています。事前面接のメリットとして、私どもとしては2つのことを考えています。派遣労働者のキャリアアップの機会につながること。さらに、派遣先、派遣元、派遣労働者が派遣業務の内容について十分な情報交換をする機会になると考えています。もう1つはミスマッチです。就業後のトラブルの防止となること。従事する派遣業務と派遣労働者の有するスキルとの整合性を図ることが可能となるというように考えています。的確なマッチングは派遣元企業の能力であることに異論はありませんけれども、更なるミスマッチの防止の観点から考え、メリットのあることではないかというように考えています。以上です。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。また、15分程度でまとめいただき、誠にありがとうございます。それでは、御質問をお願いいたします。
 私の方から1つ伺います。19ページの表の御提言の中で、現行の常用を無期と有期(常時雇用)に分けて、全ての業務については、無期雇用は期間制限なし、有期雇用の常用と登録型の有期雇用は一定の期間制限という表を作っておられます。この場合、要するに無期雇用と有期雇用で分けて、有期雇用については一定の期間制限を設けると、そういった御趣旨ですか。
○西本様 はい、そうです。違いは特にありません。ただ、現状で常時雇用という制度があるということで、残すとすればこういう形かなというように考えました。
○鎌田座長 その場合の期間制限は何か目安と言いますか、上限年数みたいなものをお考えでしょうか。
○西本様 そこまでは。私どもは無期雇用が基本的な雇用形態ですので、私どもの社員の雇用形態外のところまでは実は深く議論はしておりません。
○鎌田座長 そうですか、分かりました。ほかにいかがですか。
○小野委員 今、無期雇用が中心だとおっしゃっていますけれども、必ずしも特定派遣でやっていらっしゃる所は、無期雇用が中心というわけでもないと思うのですが、この提言の中で無期雇用と有期雇用を残す余地というのは、全部無期雇用に統合するというような案をおっしゃらないというのは、やはりここを残しておかないと困るということが何かおありかどうかをお伺いしたいのですが。
○牛嶋様 私ども協会としては、そこはありません。制度として、今常時雇用をされている企業さんがあるというように理解していますので、そこを残すとすればこういうことかなと。ただ、実際にこの期間制限の所で見ていただきますと余り意味がないので、特に残すべきというように考えているわけではありません。
○鎌田座長 ほかの委員は何かありますでしょうか。
○阿部委員 2点あります。1点目は18ページの「雇用関係に応じた派遣可能期間の制限」で、非常に興味深いと思ったのですが、派遣元と派遣労働者との雇用関係に応じて区分するということは、派遣可能期間を、例えば派遣元との契約期間と連動させるというような意味で考えてよろしいのですか。
○牛嶋様 いいえ、そのように考えているわけではなくて、19ページにありますように、無期と有期というように。
○阿部委員 その部分を考えているということですか。
○牛嶋様 はい、ということです。
○阿部委員 分かりました。
 それから、特定目的行為の点で、ミスマッチの防止になるということですが、特にスキルとの整合性を図ることが可能になるので、特定目的行為のメリットがあるということですが、現実にどのような問題が起こっているのか、そのミスマッチという点で。
○牛嶋様 例えば、書面で「CADを使える人」とあったとした場合に、どの程度使えるかというのは、実は行ってみると、この程度では困るということも実際に派遣した後に起きるのですね。そういうことはお互いにアンハッピーですので、そういうことを防止するためには、事前にお話をさせていただければ、もう少しマッチングの度合いを高めることができるのではないかと。
○阿部委員 派遣先はどの程度のレベルが必要かというのは、事前に分かっているわけですよね。
○牛嶋様 はい、分かっています。
○阿部委員 でも、それがオーダーを出すときに伝わってこないという問題なのですか。
○牛嶋様 書面だけではなかなか。今のは分かりやすい話をしましたけれども、それ以外にもいろいろな要素があります。
○西本様 要は専門性が高くなればなるほど、非常に専門知識の中での、専門知識を持った者同士のコミニケーションが必要になってまいります。ですから、こういった分野の設計開発がどの程度できるのかとか、その前の業務経験がどの程度いかせそうなのかは、なかなか定量的に、あるいは文言だけでは表現しにくい場合があります。業務のフェーズが上がれば上がるほど、高度化すればするほど、その相互理解は非常に難しくなってまいります。そこは逆に、エンジニアと技術の専門性を持った者同士が、お客様の御担当の方とエンジニアが直接話したほうが、すぐにどの程度か分かるというメリットです。
○阿部委員 例えば、それによってこの仕事は引き受けられないとか、そういうケースも出てくるわけですか。
○西本様 それは当然あります。
○阿部委員 分かりました。
○木村委員 19ページの先ほどからの所です。無期雇用がメインの業界でいらっしゃるので無期雇用の議論が中心だったと思うのですが、ちょっと変な読み方をすると、無期は期間制限なしで、有期の方は制限するということで、つまりは常用代替という話をすることになったときに、派遣先から見てそれが間接雇用か直接雇用か、そこはある意味どうでもよくて、要は雇い主が誰であれ、常用雇用であれば期間とか問わず、常用雇用であればいいというお考えの下でやられていらっしゃるのかということと、長く派遣したければ、派遣元が無期で雇って育成していくという、それが望ましいというお考えなのか、その2点の確認です。
○西本様 1点目については、そのとおりといえばそのとおりです。というのは、大きな法律の前提条件としては、いわゆる雇用の安定化、労働者の雇用をいかに社会的に安定させるかというところが第一にあるのではないかと思います。であれば、それはお客様が正規雇用という形を取られようが、我々派遣元事業会社が正規雇用という形を取ろうが、同じではないですかと。常用代替といったときに、何をもって常用代替というのですかと。派遣事業でも正規雇用という形態があることはもう既に雇用の安定化が図られていると。ここの点を我々は主張したいというところです。
 2点目の趣旨はちょっとよく分からなかったのですが。
○木村委員 キャリアアップを図っていくのであれば、派遣元の方も無期雇用でないと、ということのお考えがあるのかどうかです。
○西本様 いいえ、雇用の多様化という観点から言えば、雇い手も雇われる方も、いろいろな価値観がありますので、それを一概に否定するものではないというように考えています。ただし、先ほどと同じ論議ですが、社会的に雇用を安定化するということを前提にしたときには、有期雇用の場合は不安定になりがちな要素が多々ありますので、そこに対して一定の制限があってしかるべきではないのかという趣旨です。
○木村委員 はい、分かりました。
○鎌田座長 1点だけ西本様に確認ですが、この無期雇用型に関しては常用代替防止ルールというのは、そのまま適用するのはおかしいのではないかと、そういう御趣旨ですか。
○西本様 そういう考え方をしています。
○鎌田座長 はい、分かりました。よろしいですか。それでは、日本エンジニアリングアウトソーシング協会に対する御質問はここまでとしたいと思います。皆様におかれましては大変御多忙のところ、誠にありがとうございました。
 引き続きまして、労働者団体からのヒアリングに移りたいと思います。準備が整うまで少しお待ちください。
(アウトソーシング協会退席、連合着席)
 それでは、引き続き労働者団体からのヒアリングを行います。最初は日本労働組合総連合会から御説明をお願いします。お忙しいところ、誠にありがとうございます。御説明の前に、出席者の御紹介を事務局からお願いいたします。
○亀井補佐 日本労働組合総連合会からは、総合労働局長の新谷伸幸様にお越しいただいております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○鎌田座長 御説明はできれば15分程度で。
○新谷様(日本労働組合総連合会) 分かりました。今日はヒアリングの時間を頂きましてありがとうございます。今、御紹介いただきました、連合で総合労働局長を拝命しております新谷と申します。
 私ども労働側としてこの派遣制度についての基本的な考え方を説明したいと思います。お手元に資料を配布させていただいております。15分という限られた時間ですので、早口になるかもしれませんが申し上げたいと思います。
 まず、派遣労働者をめぐる問題点ということで、一体、派遣労働者はどういう課題を抱えているのか申し上げたいと思います。大きく3つあります。
 1つは雇用の不安定さという問題です。特に登録型がそうですが、派遣労働については、労働契約が、派遣先と派遣元との労働者派遣契約が存在している期間を中心に存在するということで、有期雇用が大半であり、派遣期間と労働契約の期間が一致して細切れの契約、2か月、3か月の反復更新が多いという問題があります。これはリーマンショックの後に起こった話ですが、派遣先、派遣元の労働者派遣契約の終了が直ちに派遣元と労働者との労働契約の解消、すなわち解雇、これは有期の契約期間中の解雇ですから、派遣先と派遣元の派遣契約の終了が直ちに労働契約法の第17条の「やむを得ない事由」に該当するものではないはずなのに、これが頻繁に生じました。そもそも有期期間中の解雇というのは、正社員の解雇よりも非常にハードルが高いはずなのに、派遣労働者だから解雇は当たり前のような扱いになっているということは、非常に問題です。また、派遣元の使用者性が希薄であると考えています。更に、派遣法における常用雇用の定義が世の中一般にいう「常用雇用」の定義と全く違っておりまして、これが曖昧さを生じる原因になっているのではないかと思っております。この扱いも非常に今回の改正のところではポイントになるのではないかと思っています。
 それと、派遣労働者は、賃金などの処遇が、正期雇用に比べて非常に低く、派遣先の正規労働者とギャップが非常に大きいということです。派遣労働者は、賃金決定の仕組みがキャリアや勤続など、いわゆる習熟によって労働能力が高まっていることに対する評価がなかなかされにくい。先ほどNEOAの2人が御報告されましたが、きちんと派遣労働者の能力を体系的に作っておられて、キャリアアップの仕組みも持っておられ、かつ派遣先との交渉・営業努力によって引き上げていくといったビジネスモデルを確立している所は良いのですが、そうではない所は派遣労働者のキャリアが評価されない。もっと卑近な話でいくと、通勤費が支給されないといった問題もございます。社会保険の加入についても徹底されていない。後ほど申し上げますが、教育訓練についても特に登録型については不十分であると思います。労働現場への影響も当然あろうかと思います。
 次ページで、私ども連合に寄せられた労働相談の事例を持ってまいりました。私ども連合本部のほかに、全国47都道府県に地方連合会を配置しており、全国で電話による労働相談を受け付けております。1年間で約1万7,000件ほど労働相談がまいりますが、ここに持ってまいりましたのは、今年の1月から5月まで労働相談を受け付けたうちの、派遣労働者と特定ができたものだけ抜いております。主な内容は、例えば相談事例の1や6のように、女性労働者の権利の保護が十分図られていない実態があります。これは出産、育児の問題、あるいは子どもさんの面倒を見るため、家事分担の問題も当然あるわけですが、派遣先、派遣元との関係で、女性労働者の権利保護ができていないということです。それと、派遣元と労働者との派遣労働契約が簡単に切られてしまうという相談事例もあり、2の事例は有給休暇の申請をしただけで派遣労働契約を切られてしったというものです。また、5のように理由もなく派遣契約を切られてしまうといった相談事例もあり、本当に派遣法が、うまく施行されているのかというところの事例がたくさんあるわけです。
 続いて、昨年成立して施行されている、派遣法改正に対する連合としての評価を申し上げます。まず、民主党政権において、派遣法25年の歴史の中で初めて労働者保護という視点で法改正がされたということについては評価をしたいと思います。ただ、残念ながら、立法府の中で、労政審が建議をベースとした内閣提出法案が、途中で修正をされてしまった。特に登録型派遣・製造派遣の原則禁止の規定が削除されたということ、日雇派遣の2か月の契約期間の上限が30日に短縮されてしまったということが、非常に残念でございます。また、今回、盛り込まれた賃金決定に当たっての均衡配慮は努力義務でありながらも、実効性の観点から課題があると思っております。
 次ページ以下が派遣法見直しに当たっての連合の考え方ですが、以下の内容につきましては、2007年の9月に私どもの組織の中で、機関決定した考え方でございまして、今見直しを検討中です。昨年の法改正の中で、今年の10月をめどに、労政審で派遣法の審議をせよと附帯決議で決まっておりますので、私どももそれを目指してどのような対応をするか検討中ですので、ここの内容については申し訳ございませんが、2007年の9月現在の内容ということでおくみ取りください。改めて私どもは秋口にこの考え方を取りまとめることにしております。内容が大きく変わるとは思っておりませんが、一部変わるかもしれませんので、おくみ取りをいただきたいと思います。私どもとしては、基本的な雇用の原則は、やはり期間の定めのない直接雇用であるという大原則を不変の原則として持っておりますし、派遣の在り方については、常用代替防止ということと、臨時的・一時的な労働力の需給調整機能であるという原則は、派遣法の制定以来の考え方ですので、これは堅持したいと思います。それと、均等待遇の理念の確立、派遣労働者の保護も必要であると思っています。
 また、法令遵守については、派遣先、派遣元とも毎月のように業務改善命令や業務停止命令が各労働局から発出されています。こうした状況を踏まえると、派遣業界は、コンプライアンスという面で問題の多い業界ではないかと感じており、エンフォースメント、法の施行を厳格にやるためにはどうすべきかということが課題であると捉えています。それと、労使関係の在り方についても、是非整理をする必要があると考えています。
また、派遣制度のあるべき方向としては、やはり常用型といっても、これは無期を中心とした制度とすべきであると思いますし、業務限定型のポジティブリストに回帰するべきである。あるべき方向としてはこう考えているわけですが、ただ、当面の対応としては、一般業務と専門26業務、業務による区分について分けて考えておりますが、一般業務については登録型を禁止するべきであると考えています。26業務については、今日的に見て、専門業務か否かを中心に見直しをする必要があると考えております。
 期間制限については、現行の上限の延長はするべきではないと考えております。加えて、派遣活用の事由の限定といったいわゆる入り口規制を盛り込むべきと考えております。
 違法派遣における直接雇用申込みなし規定ですが、これも法改正の際に内閣提出法案に修正がかかった部分です。この規定は、2015年の10月1日から施行が予定されており、着実に施行するべきであるため、そのための政省令の準備を急ぐべきであると考えております。ただ、この直接雇用申込みなし規定については、一部私どもとして違反の要件として抜けている部分があると考えておりまして、特定行為をやった場合についても、直接雇用申込みなしの要件として付け加えるべきであると考えています。
 次ページの派遣先の責任強化です。派遣の場合は、派遣元が使用者という立場に立ちますが、指揮命令が派遣先で行われるということで、労働の現場は派遣先にあるという特殊な関係にあります。派遣先、派遣元の重複規定化、特に時間外のような派遣先の指揮命令を受けるとか、安全衛生や労災補償といったことについて、派遣先、派元で重複の規定をするということを求めていきたいと思います。社会保険の加入についても、派遣元が怠った場合に、派遣先が補充するといった、派遣先の連帯責任を課していきたいと思います。
 同じく派遣元が倒産したときの未払賃金の立替え払いの義務化、あるいは派遣先の団交応諾義務は、労働委員会、裁判所等で紛争になっておりますが、立法的な対応ができていないということで、応諾義務の明確化をはかるべきと考えております。
 それと、均等・均衡待遇です。これについても、労働者保護法規の一部について、例えば安全衛生法については、派遣先の責任は明確になっているのですが、それ以外のところについては、基本的には派遣元が責任を負うということになっております。最初に書いてありますように、安全衛生上の教育や、医師の面接指導等々については、派遣先と重複規定とすべきではないか。それと、均等・均衡待遇について、今は配慮の義務に留まっておりますので、これについては是非義務化をする、あるいは司法上の効果も含めて、法改正をにらんでいくべきではないかと思っております。
 これに関して申し上げますと、昨日、内閣府で進められている規制改革会議、産業競争力会議の報告書が出ましたが、あの中で派遣について、国際先端テストに触れられておりまして、常用代替防止のところだけ国際比較をせよとなっているのですが、やるのであれば、もともとの法の枠組みは違いますが、ヨーロッパは均等待遇が原則で、これは労働法典にも民事上の効果として入っているわけですから、そこを抜きにして国際先端テストをやるということについては、非常に片手落ちだと思っております。そこは非常に重要なポイントだと私は考えております。
 特定行為の禁止は記載のとおりです。また、派遣先の組合の関与、労使関係についても、先ほど申し上げたように、団交応諾義務について取り組むべきだと考えております。
 次のページの事後チェック機能強化ですが、労働者派遣法は業法ですので、行政としての指導体制の強化を是非お願いをしたいと思いますし、また、罰則の強化、行政罰の拡大を是非お願いをしたいと思います。
 それと、派遣元事業者に対する規制ということで、許可基準の厳格化、あるいはマージンの上限規制も検討すべきであると思います。先ほど来マージンの話が業界団体から出ておりましたが、確かにマージンが低いから良い、高いから悪いという単純なことは当然考えておりませんが、ただ、私も労政審の労働力需給制度部会の委員として、毎月許可申請の審査をやっておりますと、マージン率が50%を超えるという申請が出てくるわけです。50%というのはいかにも悪徳ではないかと、何でそんな高いマージン率になるのかということが非常に疑問でございます。今回、マージン率の開示をするということが法改正で盛り込まれましたので、市場の見えざる手でそういう業者は淘汰されていくと思いますが、この点についても検討いただきたいと思っております。
 それと、細切れ契約の防止、紹介予定派遣の改善についても考えています。紹介予定派遣については、派遣可能期間が6か月を超えてならない旨を、法定化していく等々考えています。
 最後に、まだ連合として機関決定した内容ではありませんので、私見として受け取っていただきたいのですが、今、研究会で論議されている内容につきまして意見を申し上げたいと思います。
 1つは、今回の検討の中で、無期、これは人に着目をして、派元と契約関係が有期なのか無期なのかということで、いろいろな規制の在り方を検討されているようですが、これは単に無期であるということのみをもって、派遣労働者の保護であるとか、常用代替の問題が解決するわけではない。無期が全ての免罪符ではないということを、是非くみ取っていただきたい。と言いますのも、ここに図が記載してありますが、派遣先の正規の労働者は、雇用契約期間は確かに無期で、契約期間が無期だけは共通なのですが、賃金の水準であるとか、賃金決定の仕組み、あるいは教育、キャリアアップの仕組みが派遣先の直接雇用の無期契約労働者と全く違うわけです。共通なのが単に契約期間が無期だけということだけをもって、今回の規制を考えるというのは、処遇という大きな視点が欠落しているのではないかと思いますので、無期ということが全ての免罪符になるということではないということを、是非検討の中に加えていただければと思っております。
 それと、交渉力が弱い派遣労働者の保護ルールをどうするのか。先ほど来NEOAのような専門業務に従事する交渉力の強い派遣労働者ばかりではなく、一般業務に従事している交渉力の弱い派遣労働者の方が少なくありませんので、こうした方の保護のルールをどうするのかというのを、是非検討いただきたいと思っております。
 それと、キャリアアップが今回の論議になっておりますが、特に登録型の場合、派遣元も派遣先もキャリアアップのインセンティブが全然働かないビジネスモデルだと思っております。3年前に厚労省委託事業として行われた、有料派遣事業者の認定に関する検討会に参画させてもらったことがありますが、このとき、事務派遣の業界団体の方が参画をされておりましたが、労働者のキャリアアップのことを話題にしたときに、何とおっしゃったかというと、私たちは慈善事業をやっているのではありませんと、このように言い切られたのです。要するに、特に登録型を中心とする事務派遣については、労働者をキャリアアップしていくという、使用者としてのマインドが働かないというビジネスモデルの構造になっております。派遣労働者のキャリアアップは必要だと思いますが、どういう仕組みでこれを組み込んでいくのかということを、是非検討していただきたいと思っております。以上です。
ました。
○鎌田座長 ありがとうございます。それでは、委員の皆様から御質問いただけますか。新谷様、報告者私見について御質問してもよろしいですか。
○新谷様 お答えします。
○鎌田座長 ということですので、よろしくお願いします。
○新谷様 最初に御報告された生産技能労務協会の意見の中に、派遣元労働者の代表が労政審の委員に入っていないのではないかという御意見があったので、そこだけコメントさせていただいていいでしょうか。私ども連合の中には、派遣労働者の組織化が進んでおります。先ほどNEOAの発表をされたメイテックさんにも労働組合があって、電機連合に入っていらっしゃいますし、牛嶋様の会社も労働組合があって、電機連合に入っていらっしゃいます。加えて、生産技能労務協会の事務局長の所にも労働組合があって、連合に入っておられます。事実誤認があるのではないかと思いましたので、コメントさせていただきました。
○木村委員 資料の「私見」と書かれているところで御質問させていただきます。派遣元の雇用が無期であることのみをもって問題が解決するわけではないということで、恐らく無期にしても、労働条件がそもそも違いますので、いわゆる直接雇用でも全く違う雇用形態というか、事実上の正社員とそれ以外の雇用形態を固定化させるようなことが起きるではないかという御指摘だと思うのですけれども、仮に無期派遣となったときの場合、私見の2点目で書かれている労働者の保護ルールという所で、例えば派遣先の労使関係の中で、無期雇用の派遣の人に関しては、必ず労使関係の中で保護をしなければいけないとか、いわゆる労働組合的なところがサポートしなければならないとか、そういったような仕組みをお考えなのかどうか、ちょっとそこをお聞きしたいのですが。
○新谷様 この研究会で配られた資料の9スライドの下の所に、諸外国の比較をされた資料が出されたと思います。そのときに、EUをはじめ、ヨーロッパの法制の説明資料があって、そこに均等待遇がヨーロッパ中心に各国で法制化されている。特にEUの状況を見ていただいたら分かりますが、派遣先に同一職務で直接採用された場合に適用される労働条件を下回ってはならないとあります。つまり、派遣労働者の労働条件は、派遣先の直接雇用労働者の労働条件を下回ってはならないという大原則が既にあるわけです。ですから、おっしゃったように、労使関係で解決するというよりも、これはもともと法律の枠組みとして均等待遇に組み込むべきではないかと考えております。
 最後のスライド17で、例えば派遣先の直接雇用労働者の賃金を100としたときに、派遣労働者の賃金も100にするという枠組みが必要ではないかと思っております。そうしたときに、派遣労働者の賃金が100になったときに、派遣元と派遣先の派遣契約は当然マージンが上乗せされるので、実際の派遣契約は140とか130という水準でないと、取引きは成立しないというのが、本来の派遣ビジネスのあり方であると思いますので、労働者同士の比較をするときに、単に無期というだけではなくて、賃金水準についても、法律的な対応が必要ではないかと考えています。
○鎌田座長 ほかに御質問はありませんか。では私から、また私見のところでお聞きして申し訳ないのですが、無期であることのみをもって派遣労働者の保護、常用代替の問題が解決するわけではないということで、無期の一事をもって全てこれで保護が図られていると考えるべきではないという御趣旨ですが、一方で有期と無期で違いもあるのではないかということで、もちろん私見で結構ですが、無期にした場合と、いわゆる今現在は常用型という中には、御指摘のとおり、有期の場合も含まれていますよね。そうすると、無期と有期ということで、ルールを分けて考える仕組みをどのように考えるべきなのかということについて、もし御意見があればお聞きをしたいところなのですが。
○新谷様 無期と有期を比べれば、当然、無期の方が雇用が安定するというのは確かなのですが、それは「雇用の安定」だけですから、派遣労働者の保護を考えたときに、処遇がどうあるべきかというのを置いておいて、契約期間だけをもって取扱いをするのはよくないと思っています。ただ、今の派遣法の枠組みにおける常用型という、日々派遣でも1年の見込みがあれば常用とみなすみたいな、定義は変えるべきだと思っております。ただ、有期と無期と分けていろいろな規制を考えるといったときに、その契約期間だけで規制区分を作るというのは、ちょっと大きな視点が落ちているのではないかというのが私の指摘です。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。それでは、日本労働組合総連合会に対する御質問はここまでとしたいと思います。お忙しいところ誠にありがとうございました。
 引き続きまして、UAゼンセンからのヒアリングに移ります。準備が整うまで少しお待ちください。
(連合退席、UAゼンセン着席)
 引き続きまして、UAゼンセンからのヒアリングに移りたいと思います。本日はお忙しいところ、誠にありがとうございます。それでは、事務局から出席者の御紹介をしていただき、その後、御説明をお願いいたします。
○亀井補佐 UAゼンセンからは、政策・労働条件局長の中村善雄様にお越しいただいております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○鎌田座長 それでは、また恐縮ですが、15分程度の御説明ということでよろしくお願いいたします。
○中村様(UAゼンセン) 御紹介いただきましたUAゼンセンの中村でございます。基本的考え方のみペーパーで出させていただきました。御要請の部分の検討されている論点等については、一部、様々な新たな論点等ございます。組織的に検討しているわけではありませんので、確定したものとしてはなかなかお話ができないことを御了解いただきたいと思います。
 ただ、これまでの基本的な派遣制度の考え方については整理ができておりますので、これを御紹介させていただいた上で、検討等の論点等については、考え方をベースに口頭でお話させていただきたいと思っております。
 お配りしたペーパーのUAゼンセンという組織ですが、全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟ということで、様々な産業が加盟している産別の組織です。流通、サービス等が入っています。また、一部、派遣労働等の労働者を組織している組合も入っているという産別です。
 労働者派遣制度についての基本認識ということで、まずはUAゼンセン全体として了解している基本的な部分のオーソドックスな観点を申し上げます。まず、労働者派遣制度ということについては、労働力の需給調整システムとして、雇用機会の確保、あるいは労働者が適職を探索するときに非常に支援をする、あるいは、そういうことを通じて能力開発を提供するという意味で一定の機能を持っていると考えております。ただ、必ずしも全てを肯定的にするわけではありませんが、やはり、創設以来、この経済の中に組み込まれたものとなっているという認識を持っております。
 しかし同時に一方で、これまでの創設以来から改定等の歴史については、労働者全体の観点で考えると、いわゆる労働者保護の後退の歴史であったように思っております。特に派遣については一般業務への拡大以降、長期の不況、更には国際競争をはじめとする市場競争の激化によって、企業はコスト・人件費の削減として、コスト面から正社員以外の労働力を多く使用するようになり、派遣労働の解禁・緩和に拍車を掛けてきた側面があることは紛れもない事実だろうと思っております。
 また一方で、条件の問題は若干ありますが、不況下の雇用機会の拡大、あるいはマッチング機能としてポジティブな役割を発揮したことも考慮しなければいけないと思っておりますが、日本全体のトータルな労働市場を見たときに、保護・雇用環境が悪化していることも事実でありますし、能力開発機会の提供も含めて、不安定な労働者が増大をしている。特に派遣の関係ではリーマンショック以後行われた大量の派遣労働者の解雇、あるいは雇止めということは、やはり派遣制度に内在する欠陥としてきちんと認識されているべきではないのかと考えております。
 したがって、マクロ的に不安定雇用の拡大を防止するという政策的な観点からは、やはり、使用と雇用が分離をしている。したがって、労働者保護については使用者の責任、それから雇用主の責任の実質的な分担が曖昧になっている。労働者派遣の領域自身は拡大をしていくということについては、労働市場全体への影響を含めて慎重に検討すべきであると考えております。
 労働者派遣制度は、内在的に派遣労働者の保護の弱い制度であるというふうには思っております。特に労働者保護に責任を持つ雇用主と使用主の責任が分離をされて、その雇用契約自身はやはり商契約である派遣契約にある程度従属せざるを得ないという部分の宿命を持っているからだと思っておりますし、これが端的に表れたのは、やはりリーマンショック以後の事態であったろうと思っております。雇用主の労働者保護の責任は、当然、雇用の安定や適切な労働条件を確保する、あるいは安全衛生の提供であるということだと思いますし、更には長期の雇用と生産性向上ということをベースにした慣行の中で、労働者の能力開発という部分が実態的に果たしていた機能である。このところまで雇用主の責任と言い切れるかどうかは法的にもいろいろあると思いますが、機能としてはそういうことがあったのではないかと思っております。
 この、使用主と雇用主が分離をする労働者派遣制度ということについては、実態としては使用者の派遣先の方は、自らの業務の遂行に当該の派遣の労働者を組み込みつつ、その派遣労働者の保護については、ここで一定の限られたものを除き責任をそれほど持っていない。派遣先は、やはり事実としての使用者として労働者保護の意識が薄いのが実態ではないかと考えております。形式上、法は使用主の派遣先と、派遣元の雇用主に対して、双方で共同分担して、内容的には直接雇用と同等の保護責任を法的には掛かっているということではあるとは思っておりますが、実際の問題としては当然雇用関係ですので、雇用関係を軸として、基本的には派遣元にその責任を多く課している。
 ただ、現実の問題として、派遣先と派遣元の交渉において、いわゆる派遣では役務提供の内容・期間・対価等が決定されるのは、商契約を前提として派遣元が雇用契約を労働者と結ぶわけです。ですので、そもそも多くの責任を果たすべき派遣元が、雇用主として労働者保護の責任を全うできるかどうかということについては、また、したがって、労働市場全体として、政策的な観点で見たときには、マクロ市場全体として労働者保護の強化が図られていくかどうかについては、当然、派遣元である雇用主の責任の自覚と力量と。この力量は正しく派遣先との交渉力。これをやった上できちんと自らの労働者を守るという仕組みだと思いますが、現状の実際の部分において、派遣元がその能力を持っているのかどうか、また、現実的にきちんと交渉力を行使できる環境となっているかということについては、マクロレベルでの不安定雇用の拡大防止という労働政策的観点からしっかりと検討されるべきであると思っています。
 これは、今までの考え方のところでしたので、特に高度な専門的能力を背景にした派遣ということは、競争力があって、実際にデータを見ても賃金も上がっているし、ということもあると思いますが、派遣元が、特に一般派遣が、使用者としての労働者保護に対する責任を派遣先に対して要求して実現していくということはなかなか難しい状況にあるのではないかと思っています。
 労働者派遣制度の全体の広がりの、労働市場全体の中の派遣制度の領域という部分については、やはり国全体のマクロレベルでの労働の保護の質の改善をしていく。極端に裏返すと不安定雇用の拡大全体を防止していくということですが、労働政策の観点から、一定の領域に制限されるべきで、安易に拡大されるべきではないと思っています。
 これまで、規制が解禁以来、業務規制、期間制限と加えられてきたことも、当初は存在しない形態からスタートしたことと合わせて、労働政策的観点から十分に理由があったことであると認識しております。特に、当然、派遣労働者自身の雇用が不安定であること。それから、労働条件について言うと、基本的には、元の派遣契約で業務によって決定されるという性格が強いということですから、労働者の立場から、生涯を通じた労働条件の向上という部分の観点のためには、当然、業務が高度化をしていく。また、それに伴って、当然、労働者自身の職業能力が向上していくことが不可欠でありますが、そういう業務の高度化を促進する仕組みが働きにくいことについても、やはり労働者派遣のシステムに内在する性格であると考えておりますので、雇用における労働者派遣の領域の拡大ということについては、雇用保護の全体的な水準を低下させないようバランスの中で考えられる必要があると思っております。
 派遣の形態ですが、当初、専門的な業務ということから導入されたということで、基本的考えとして、専門的業務の場合は、派遣元の交渉力ということが強くて、当然、労働者を守るという派遣元の雇用責任を果たすことは現実的に期待されると思っておりますし、ビジネスモデルとしても派遣元自身にとって、労働者の能力開発を促進するという誘因が働いて、当然、業務の高度化という部分が働くと思います。それは、イコール労働者にとっては、それに見合った能力で高い賃金を得られるということであると思いますので、そういう経営が期待をされると思っております。また、労働者個人にとっても、1つ、いわゆる企業という枠ではなくて、専門的な能力を軸として、自らの生涯のキャリア形成を図っていくことを求めるニーズにも適合する面があるのではないかと思いますし、また、そういう業務であれば、当該の労働者自身の雇用契約における交渉力という部分についても、比較的強いものを前提として考えられると思います。
 そういう意味では、専門的派遣という考え方については、いわゆる新しい働き方、当然、働き方には労働者の観点からそれにふさわしい処遇がきちんと確保されるということでありますが、その選択肢を拡大するということでは意義のあるものとして、一応、考えられると思っております。そういう意味では、期間制限もされるべきではないと思いますし、また、労働者の意思によって、派遣先に優先雇用されるという、導入された派遣のこれまでの改善の仕組みについても、いわゆる労働者のキャリア形成という観点にとっては、選択肢を広める上で好ましいことであったと考えております。
 一方、一般業務の方ですが、派遣法が専門的業務から一般業務に拡大されたときに、いわゆる一般業務は臨時的・一時的業務に限られた、期間限定の話でも。この限定については、労働者保護の実効性、これは派遣先の労働者、それから当然、当該の派遣労働者、双方を含む労働市場全体として、労働者保護全体のバランスを図ることとして重要な意義があったと考えております。一般的に全体で、特に派遣元の交渉力が弱い場合が多くなると想定されたときに、弱ければ派遣労働者自身に悪影響が及ぶことは必至です。そういう意味では、長期でキャリア形成を考える労働者にとってはリスクの高い働き方で、一方で、派遣が持つマッチング機能からすると、臨時的・一時的業務に限定される部分はありますが、いわゆる短期的な雇用の確保によって、初期の仕事を通じた能力形成に役立つ。また、臨時的・一時的と言っても、現在の仕組みは、業務の性質を臨時的・一時的ということではありません。入った所で全ての業務について1年間働くことができる。当初は1年、今は3年までということだと思いますが。この部分では、その限定した部分の初期の能力形成などについては派遣ということが果たすメリットではないかと考えております。
 同時に、これまでの改定は紹介予定派遣という考え方、あるいは期間制限経過後の直接雇用申込み義務の改定についても、労働者のキャリア形成にとって、促進する重要な意義を持つ。これも社会システムとしての派遣のメリットであろうと理解をしております。したがって、現行の派遣制度については、様々な批判もありますし、また、実態的にもこれまでの経過から見て紆余曲折、メリット、デメリットや問題点が非常にあったということですが、全体の枠組みとしては、これまでに確立してきた専門的業務、それから臨時的・一時的業務、そして直接雇用申込み義務といった骨格を基本的に維持した上で、派遣が持つ労働者保護に欠ける側面について、法的保護を強化しつつ、労働者にとって自らのキャリアとして選択できる働き方として整備をしていくことが必要であると、基本的な整理としては考えております。
 以下、個別論点の部分ですが、まだ組織として、検討会で論議されている論点について改めて議論をして、こういうふうにしようと確定をしたわけではありませんので、一応、今申し上げた基本的な考え方に照らして考えるとどういうふうになるかということも含めて、少し私見の部分も入ることがあると思いますが、口頭で述べさせていただきたいと思います。
 まず、登録型派遣と製造業務派遣の在り方ということですが、登録型派遣については、やはり派遣元の雇用主責任は実質的に弱くならざるを得ないし、この点は労働者保護の観点から問題点があると思っております。一方で労働者にとっては、初期の職へのアプローチについて重要なメリットを有していることも事実です。一概にこれを禁止すべきとは考えませんが、やはり登録型派遣を通じて一定期間以上派遣が継続した場合には、派遣先に直接雇用する責任があるという現行の仕組みをしっかりと強化し、維持した上で、更に労働者の意思によって、派遣元が期間の定めなき雇用に変えていくという仕組みについても考えられる方向が、今、努力義務的に入っていますが、これを実効化することを考えることが必要なのではないかと思っております。
 また、特に大前提として、労働者との労働契約において、いわゆる派遣契約自身と労働契約のラグの差の問題ですが、やはり短期の更新が繰り返されているような事態については、きちんと制限を強化していくべきであると思っています。
 それから、製造業務派遣ですが、リーマンショック後において、派遣の持つ労働者保護のぜい弱さが表れたことは事実が示していると思います。ただし、製造業という業種に限定をして考えることについては、それは制度としてはいかがなものかと考えておりまして、大前提は、臨時的・一時的業務だという性格をきちんと明確にされることですが、その上で、派遣先については派遣として、請負として、自らの戦略を考えていくかということについては、基本的には派遣先事業主の判断に委ねるべきであると考えております。ただ、使用者としての責任については、安全衛生のことは当然ですが、あるいは教育訓練であったり契約解除後の補償などの使用者の責任について強化をしていくべきだ。これはやはり、製造業の持っている競争力という部分があると思いますので、その部分については派遣先使用者としてサポートをしていくことは考えられるべきではないかと思っております。
 特定労働者の派遣事業の在り方については、労働者を無期雇用に限定する派遣元に限定をすべきだということ。従来の有期の扱いではなくて変えていくべきだ。一応、許可と届出との関係であると思いますが、やはり労働者保護を図る部分では、届出ということを前提にしたときに最低限、無期雇用する派遣元に限定するべきであると考えております。
 期間制限の在り方の部分ですが、先ほど基本的な考え方は申し上げたとおりです。専門型派遣を除いて、一般業務派遣については臨時的・一時的業務に厳しく限定をする今の考え方を堅持して、実効性を強化することが必要であるということです。専門的業務については、その専門性を厳しくチェックをして、新たな視点を含めて機動的に運用していくことが必要で、抜け道を作らないことが重要だと思っております。特に専門的業務は、臨時的・一時的業務と異なって、期間制限をする必要がないのは先ほど申し上げたとおりです。なぜならば、派遣元が専門性ということをバックにして労働市場での交渉力があり、当然、派遣労働者の保護も含めて派遣元責任の全うが可能と考えるということですし、常用か否かということについても、特に専門性による職業開発経路を志向する労働者という観点から見たときには特に問題とは思われないと思います。
 議論の中で、少し私見のところに及びます。専門的業務を確定することが難しいという議論があるという部分ですが、派遣料金の水準や賃金水準の優位性といった部分は、端的には専門性への優位性があるかどうかという部分だと思っておりますので、このようなデータについてきちんと集約をして、判断基準を明確化することが必要だと思います。その上で、今の業務の括りの分類がありますが、業務の範囲の細分化を含めて機動的に確定をしていくような体制の整備が必要なのではないかと思っております。
 さらに、迅速性、やはり専門的業務は指定するまでの、そういうやり方を取ったとしても、市場の変動に対応できないという部分があります。ある意味ヒト単位ということに近い考え方になりますが、専門的業務になりそうだというデータの提出・確認を前提とした上で、暫定的に期間制限を適用猶予、これは一般業務から専門的業務に移ることが前提になっていますので、3年の期間制限を暫定的に適用しない括りとして検討ということも考えられるのではないか。専門的業務という部分の派遣を強化していくという意味では、そういう方向もあるのではないかと考えております。一般業務は、それ以外は臨時的・一時的に厳しく限定をすべきであると考えております。
 繰り返しになりますが、やはり日本の経済・社会の発展の原動力は質の高い労働力ですし、継続的な労働力の質の向上を図る政策は不可欠だと。そのためには、継続的な能力開発の実施であったり、特に長期の雇用をベースとする実践的な職業能力開発が不可欠だと思います。その上で、派遣の持つマッチングや適職探索支援、あるいは能力開発としての機能を正当に位置付けて、よりよく雇用システムを構築していくことが必要だと考えております。
 臨時的・一時的業務の部分については、やはりそれを担保するものとして、派遣可能期間を超えて派遣先の直接雇用義務ということが入っていますが、これをきちんと強化していくべきであるということも考えておりますし、脱法的にクーリング期間の3か月についても、何か脱法的な運用がなされることは、きちんと限定をしていくようなことをやっていくべきではないかと思っております。
 それから、専門的業務と言いつつ、脱法的な運用がなされている意味から言えば、いわゆる派遣先労働組合の通知・協議ということが、今、一般業務ということになっていますが、全てという具合に拡大をして、協議の実質性を図ることも必要なのではないかと考えております。「この労働者は専門的業務なので協議する必要はない」、そういう部分は不明確だと思っております。
 責任の在り方は、やはり使用者責任の強化が、使用する以上必要だと思っております。特に、長期に使用する派遣労働者に対する直接雇用の責任は強化するべきであろうと思いますし、同等の職務を遂行している労働者との同等労働条件を提供するということ。それから、派遣労働者からの申出による優先雇用をする。あるいは社会保険加入や労災補償等については、派遣元と連帯責任を含めて保護を図ることが必要なのではないかと思いますし、少し先に飛びますが、派遣労働者のキャリア形成についても、やはり派遣先として支援していく仕組みが検討されることが大切なのかと思っております。
 派遣労働者の保護については、そのようなことでありまして、特に、雇用申込みの義務の履行については、やはり、期間の定めなき雇用であると。あるいは、労働条件の低化防止、派遣先労働者への均等待遇が確保されるような規制を強化すべきということを考えております。
 最後に、派遣労働者のキャリアアップについてですが、派遣は本来、人を扱うことについて責任の自覚と高い志が求められる産業であると思っています。ただ残念ながら、派遣労働に対する社会的評価は、どうも低いようです。これには、やはりコンプライアンスを含めた経営者の質がきちんと高まっていく、あるいは最低賃金も含めて公正な労働条件相場を形成していく、更には、適正なマッチング等、能力開発を促進して有意な人材を育成していく、こういうことは、やはり市場競争だけでは達成されないということはあると思いますので、業界全体も含めて、そういう在り方を目指していく取組が重要だと思っています。そのためには、やはり派遣先、派遣元が労働者の職業能力開発を促進する責任があるのだということを明確にしていく必要があると思いますし、更には業界として、能力の評価基準やキャリアパスの設定などを支援して、いわゆる適切な業界秩序を確立させていくことも重要であると考えております。
 若干長くなってしまいましたが、後段の部分は口頭ということになって申し訳ありませんが、一応そういう形でUAゼンセンとしての考え方を御紹介させていただきました。どうもありがとうございました。
○鎌田座長 どうもありがとうございます。後段の部分は、まだ組織的に確定はしていないということですが、これについても、もし質問があれば質問してもよろしいでしょうか。
○中村様 そういう部分は前段を敷衍したと担当者は考えておりますので、飽くまでも、そういう私見だということを前提として。
○鎌田座長 分かりました。それでは、御質問をよろしくお願いいたします。
○小野委員 先ほどおっしゃっていただいた期間制限のところについて、考え方を少しお伺いしたいのですが、要は、一般業務については一時的・臨時的な活用なので、期間はそのままにしておくと。今ある26業務については、そのリスト自体を見直すというお考えですか。
○中村様 明示的には書いてありませんが、考え方は、専門と臨時と分けた上で、やはり今の専門的業務の在り方自身が必ずしも代表しているかということについては、ちょっと見直していくべきではないかと考えております。ですから、本来の専門的業務という部分で、派遣労働者のキャリア形成であったり保護という部分について、実効的に市場として機能し得るような部分を、きちんと精査していくべきではないかと思っています。
○小野委員 飽くまでも、分けるべきだという考え方ですか。
○中村様 基本的には分けるべきかなと思っています。それは、労働市場全体の保護水準ということでやったときのバランスの部分だと思っております。
○小野委員 ありがとうございます。
○鎌田座長 そのほかございませんか。
○阿部委員 2ページの(4)の上の所で、「派遣元が、派遣先使用者としての労働者保護に対する責任を派遣先に対して要求し、実現することは難しいと考える」ということなのですが、これは派遣元の交渉力が問題で、それを改善すればうまくいくというお考えでよろしいですか。
○中村様 はい、基本的には、派遣元、派遣先の交渉力のバランスということだと思いますけれども、基本的にそう考えています。
○阿部委員 とすると、その派遣元、派遣先の交渉力のバランスが取れるように、勝手にやってもらえれば、勝手にというのは当事者同士でやってもらえればよろしいということで理解してよろしいですか。
○中村様 ごめんなさい。そこの論点がちょっとよく分からないのですが。
○阿部委員 つまり交渉するわけでしょう。
○中村様 交渉自身が、交渉ポジションってありますよね、まあ、こちらの考えですが。専門的業務では派遣契約を結ぶかどうかについては、派遣元である提供者側の方が、それを背景にした部分にビジネスモデルの資源を持っていたり、そういう部分がありますから、基本的な、いわゆる労働条件、派遣料金等も含めた部分の条件についても、ある程度力関係が働くのだろうと思っています。でもそうでない一般業務では、市場競争に任せて、派遣元と派遣先で、市場環境の中である程度派遣元が交渉力を、いわゆる高い料金の部分をきちんと確保する仕組みが一般的にできるかどうかは疑問です。そこの交渉で、当事者に任せるだけでは、多分、今の派遣の業務から言うと、派遣元が労働者の保護を獲得するだけの部分の責任を全うすることができるかは疑問に思っております。端的に言うと、派遣先の方は、自らの業務を切り出して、そういう部分で、いわゆるアウトソーシング的な観点も含めてやっていく部分ですから、派遣先の基本的な行動原則は、今の中ではコストということが前提になると思います。要は、派遣先の仕事の内容と、いわゆる報酬対価の部分の派遣料金での決定にかかわる交渉で、当然、コストの中には派遣労働者を保護していくためのコスト、端的には賃金であったり能力開発であったり、そういうことがあると思いますので、それを派遣元が守っていくと。その競争で派遣元の交渉ポジションが弱いと、コストがドンと下がる。そのような市場環境で、派遣元が低い価格でやらなければいけないということになれば、当然、派遣元として、それを、いわゆるコスト割れする事態について、それを一生懸命交渉するのはなかなか困難でありますし、その部分で、では派遣をやめてしまえというビジネスモデルはありますけれども、やめてしまえと言ったら、そこで、それに連動している派遣労働者の雇用は、正しく不安定なことになるわけでありますから、という意味です。先生の論点とはちょっと違うかもしれませんが。
○阿部委員 いやいや。
○中村様 一義的に、交渉力で1対1の個別の派遣先、派遣元の当事者の交渉任せていくというよりも、むしろ、一般業務ということの、今は3年までということですが、その部分の括りは、労働市場全体のバランスで考えたときには、やはり集合的な、そういう枠組みは必要かな、規制は必要かなと。
○阿部委員 まだ理解が足りないですけれども。
○中村様 すみません。また、私もいろいろと教えていただければ、考えたいと思います。
○木村委員 専門的業務と一時的・臨時的業務は分けて、専門的業務に関しては交渉力もありますし、ということで、期間制限は無期でもよいのではないかというお話がありました。ちょっとまとまっていないのですが、あとの方の口頭でのお話の中で、専門的業務の場合にも、専門的業務の確定が、まだ当面難しいので、いわゆる処遇がそれなりの水準であれば、あればというか業務がどうこうという細かいことが決まらないので、それなりの、正社員と、それが勤務先の正社員なのか、それとも世の中の同職種の相場なのか分からないのですが、均等の処遇で処遇していれば、無期でもいいのではないかというお話だったように聞こえたのですが、そこを確認したいのです。
○中村様 これは全く組織的に議論をしていない部分で、本当に、かなり私見に近い部分になって申し訳ないのですが。専門的業務という括りを前提に考えたときに、やはり問題の1つは、専門的業務に指定される前、いわゆる一般業務で皆さんやらざるを得ないわけですが、実際には専門性が確立して、そういう産業、業種として確立したかどうかというのは、やはり、どんどん、そういう環境変化の中で変わっていく部分がある。本来、その後の所で、大体、確立した専門的業務がこれだという部分であったら、考え方は、本来、専門的業務できちんと位置付けられるべきなのだと思うのです。けれども、そうではない事態も発生しうるので、基本は、その業務を専門的で、きちんと、いわゆる26業務のような枠組みを含めて迅速に確定するというのが一番、法的には正しいですよ、皆が分かりやすいように。
 ただ、その部分で、専門的業務として確立するまでの期間は当然あるし、その間の、産業全体、そういう産業が成長していくラグもあると思います。もしかしたら、創業者はそういうところに目をつけてきちんとやっていく部分で、そういうビジネスモデルを拡大していくという話になるかもしれません。やはり、それを阻害するという部分については、結果的に、育つものを阻害するという意味では、そういう専門的なことを求める労働者にとっても、余りいいことではないと思っています。臨時的業務全てが対象となり全体に悪影響を及ぼさないということが前提なのですけれども、そういうことでやった場合に労働者保護の観点からみたときに、その専門性の代理指標は、いわゆる派遣料金相場が、そういう特定の部分にあたる契約の束、かたまりというのでしょうか、そういうことでみて世間的にもより優位であったり、あるいは、その間のほかの同種の契約について優位である。なおかつ、いわゆる当該の派遣労働者の賃金水準といったようなものが全体で優位である。まあ、優位性の幅がどれぐらいかというテクニカルな議論があると思いますけれども。そういう優位な部分がかなりあるということがあって、その部分のところは、実質的には専門的業務と同じような機能を果たしていると私は考えますので。もし仮に、そういう部分があって、それが一般的・臨時的業務の3年までという期間の枠に押し込められている中で、そこが問題になるというところは、労働者にとっても不幸なことだと思いますので、そういう見込みがあることを、ある程度前提とした上で、一定の期間、その部分をペンディングする。これはもしかしたら派遣元単位になってしまうかもしれないし、あるいは派遣のもっと細かい業務というように、考え方はいろいろあると思いますけれども。そういうことは、やはり専門的業務をきちんとやっていこうという、派遣のメリットを進めていこうという意味では考えられてもいいのではないかと思います。ただ、いつまでも個別にやったままでは専門的業務にならないというような部分までやると、その括りはまた大変になると思いますので、基本的には、暫定的な括りのようなイメージかなと考えています。
○小野委員 今おっしゃっているのは、先ほど私が言った26業務の見直しというのではなくて。
○中村様 26業務の見直しとは少し異なるかもしれません。そうですね。専門的業務の考え方です。
○小野委員 専門的業務のリストを作ったほうがいいということですか。
○中村様 基本的にはポジティブのリストでいくべきだと。
○小野委員 だから、別の考え方ですよね。
○中村様 今26業務があって、今度27か28業務になるかもしれませんけれども、そういうことはきちんと作ってあげないといけないと思います。
○小野委員 ただ、26業務は専門的業務だけではないので、だから、そういう意味では。
○中村様 はい。専門的業務という観点に絞って認めるということを前提にして、今の26業務を、そういう専門的業務かどうかできちんと精査をして、それは先ほどお答えしたことです。で、特別な雇用管理を必要とする業務というのが、確かにあると思いますけれども、これについては、派遣のメインストリームを考えるときには余りとらわれるべきではないというか、そういう考えもあります。飽くまでも派遣は、専門的な部分と、臨時的・一時的な、当初の、初期の需給の調整を含めた部分という仕組みとした制度にするべきであると考えます。
 あと、多様な雇用管理といっても、雇用管理の仕方は業務の切り方によっていろいろあるので、それも、しかも会社によっても違うし、ビジネスモデルと全く違う問題だと思っていますから、そこの部分は、まあ、過去の経過からして、そういう部分では、いわゆる一般的な、当時の通常の雇用管理ということの部分では違うという考え方がありましたけれども、今の雇用管理は相当多様化をしている部分があるので、特別な雇用管理を必要とする業務という考え方は、基本的な考え方としては余りメインに置くべきではないのではないか。テクニカルな議論はある。全体の考え方としては、基本的にはそう考えています。
○鎌田座長 予定の時間をかなり押してきましたので、まだ先生方はいろいろ御質問はあろうかと思いますが、一応、UAゼンセンに対する御質問はここまでとしたいと思います。本日は本当に、お忙しいところをありがとうございます。
○中村様 ありがとうございます。
○鎌田座長 引き続いて、派遣ユニオンからのヒアリングに移りたいと思います。準備が整うまで少しお待ちください。
(UAゼンセン退席、派遣ユニオン着席)
 よろしいですか。本日はお忙しいところ、私どものためにありがとうございます。それでは派遣ユニオンからのヒアリングに移りたいと思います。事務局からの出席者のご紹介の後、御説明をお願いいたします。
○亀井補佐 派遣ユニオンからは、書記長の関根秀一郎様にお越しいただいています。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○関根様(派遣ユニオン) 派遣ユニオンの関根と申します。よろしくお願いいたします。
○鎌田座長 大変恐縮ですが、御説明は15分程度でよろしくお願いします。
○関根様 はい、承知しました。だいぶ長くなってまいりましたので、皆さんもお疲れのこととは思いますが、もう少々お付き合いください。私ども派遣ユニオンには派遣で働く方々、特に登録型派遣で働く方々からの相談が多く寄せられています。まず最初に、直近で私が受けている相談を紹介いたします。その派遣労働者は大手派遣会社から同じ派遣先に登録型派遣として、8年間派遣されていたわけなのですけれども、妊娠を機に契約をもう終了としますと言われまして、相談に来られました。実はその相談に来られたのが、もう2年弱前で、そのときに私どもユニオンとして派遣会社と交渉して、何とか育児休業を取らせるというところまで認めさせました。
 ところが、この5月末に育児休業が明けるということになっていたのですが、その大手派遣会社は、残念ながら派遣先が見つかりませんということで、5月末をもって雇用契約を打ち切りますと通告をしたと。つまり育児休業は取って、何とか育児休業明けまでたどりついたわけなのですけれども、育児休業明けと同時に雇用契約を失ってしまうという流れになってしまいました。もちろん今後も交渉の課題となっていくわけなのですけれども、その点について私からも厚生労働省に確認をさせていただきました。しかし厚生労働省の見解としては、登録型派遣においては派遣会社が派遣先を探しても見つからないということであれば、雇用契約を切ることも仕方がないでしょうという見解でした。つまり育児休業が明けても復帰ができない場合が多々あるというのが、残念ながら登録型派遣の現実です。
 まず第1に、今、派遣がとても増えていることによって本来、自分としては安定した雇用で働きたい、妊娠出産を迎えたからといって仕事を辞めるわけにはいかないという事情を抱えた人も派遣で働いているという状況になってきていますので、妊娠出産を機に仕事を辞めてというわけにはいかないという人たちがたくさんいる。ところが現実には、派遣労働者の大半は育児休業さえ取れず、妊娠しましたということを伝えた途端に雇用契約を打ち切られてしまう。2か月ないし3か月契約の方が大変多いわけですから、次回の契約更新はしませんということで切られてしまって、育児休業さえ取れないということになってしまう。さらに、仮に育児休業が取れたとしても、育児休業明けに仕事を見つけることがとても難しい。今、現実には派遣先企業の多くが正社員の代替として派遣労働者を受け入れるという状況になってきていますので、派遣会社いわく「残業なし」という条件で派遣先を見つけるのは本当に難しいと言っています。その上、派遣先が見つからなければ、雇用を打ち切ってしまうというのも仕方がないという状況になっているので、妊娠出産、育児と並行して仕事をするということができない働き方になってきてしまっているというのが現実で、非常に厳しい状況にあると言えるかと思います。
 私が用意した資料で言いますと、資料7に「ILOが日本政府に勧告」という資料がございます。これは正規労働者と全く同じ仕事に13年間従事してきた派遣労働者が、上司のハラスメントについて謝罪を求めたところ、雇用を打ち切られてしまったという伊予銀行事件に関して、ILOに対して申立てをしていたところ、昨年3月に勧告が出たものです。この伊予銀行最高裁判決は皆さんもご存じのことと思いますけれども、13年間働いていたとしても、正社員と同等に働いていたとしても、登録型派遣においては将来にわたって働き続けるということを期待する権利はないという最高裁判決が示された。この点に関して私たちは、ILOに対して、どんなに長く働いていたとしても、雇用の期待権さえ持てないということでは、雇用としての最低限の条件を満たしていない、このような状況では労働者の保護がなされていないということで、ILO181号条約に反するということで申立てをしていたわけです。
 これに対してILOとしては、この資料の3ページにありますが、調査委員会の結論ということで、幾つか書かれておりますけれども、その中の1つで○の6つ目にありますが、「登録型派遣と製造業への派遣を原則禁止する労働者派遣法改正案が採用されたが、最近の情報によるとこの改正案は維持されなかった。つまり、派遣労働者の権利に関して一定の歓迎すべき改善が図られるものの、本申立ての要因となった登録型派遣制度はほとんど変更なく機能し続けると考えられる。本委員会は、法令と履行を条約1条、5条、11条に適合させるように必要な全ての措置を取るよう日本政府に要請する」という勧告が示されています。
 つまり、現行の我が国における登録型派遣制度というのは、労働者の保護が十分になされていないし、雇用の最低限の条件を満たしていないので、きちんとILO181号条約に適合させるようにしなさいという勧告です。残念ながらこの勧告に対して、現状においても登録型派遣は存続されており、登録型派遣で働く人たちの雇用というのは、十分に保護されていない状況にあります。
 皆さんの御記憶にもあるかと思いますけれども、2008年にはリーマンショックをきっかけにして、派遣切りが一斉に起こりました。派遣切りの対象になった多くの派遣労働者は製造業派遣で働いている人たち、特に自動車産業等の製造ラインで働いていた人たちです。製造ラインで働く派遣労働者の大半は、登録型派遣で働いていて、なおかつ全国各地から集められて、派遣会社が用意した寮に住まわせられて、生活をしていました。月収でいうと大体10数万円、手取額でいうと本当に10万円そこそこ、貯蓄はできないという中で働いて、2008年10月ないし11月、12月頃に一斉に「あなたの契約を切る」と通告された。同時に寮からも出て行ってくださいと言われたわけです。貯蓄のない状態でなおかつ自分の帰るべき家がない人たちも多かったわけですので、そうなると新たにアパートを借りなければならない。ところが自分で新たに住まいを借りるためには、最低でも20万円から30万円程度のお金がなければ、新たにアパートを借りることはできません。ところが、最後に手にするお金は10万円そこそこの金額という中で、多くの人たちが路上に放り出されていく状況になっていきました。12月、1月の非常に寒い時期に路上に放り出されて、最初のうちは残りのお金でネットカフェとかサウナなどに泊まって生活をしていたわけですけれども、そんな中で仕事を探しても、住み込みの仕事はなかなか見つからない。そんなにたくさん住み込みの仕事があるわけではありませんから、何万人という人たちが一斉に路上に放り出されて、同じような仕事を探していれば見つかるわけもなく、多くの人たちがサウナに泊まるお金もなくなってきて、路上に放り出されていく。そして生命の危機にさらされるという事態が起こってしまいました。残念ながらこうした派遣切りというのは、現行の登録型派遣なり、製造派遣なりが続く限りにおいては必ず繰り返されると確信しています。
 残念ながら東日本大震災のときにも派遣切りは多数起こりました。東日本大震のときには、製造派遣だけではなく、コールセンター、アウトバウントのコールセンターで働く人たちも一斉に切られていきましたし、旅行関係の派遣先で働いている人たちも一斉に切られていく状況になりました。今後も同じような会社の業績が一斉に悪化するような事態が起これば、必ず派遣労働者はまず真っ先に切られていって、なおかつ路上に放り出される事態も必ず起こる。こうした事態を二度と起こさないようにしていくためには、登録型派遣なり製造派遣なりをきちんと規制を掛けていく、禁止していくことが必要だろうと考えております。
 次に資料として「派遣スタッフアンケート2013年中間集計」というのがあります。これは私どもが加盟しているNPO法人の「派遣労働ネットワーク」が現在行っている派遣スタッフアンケートの中間集計です。これを幾つか紹介いたします。2ページ、「現在の収入で生活できるか」という質問に対しては、「大変苦しい」「少し苦しい」という人たちが大変多い。31%、34%となっております。3ページ、「正社員と派遣スタッフとの格差があると感じるか」という質問に対しては「あると思う」という人たちが81%となっています。5ページ、「今後の働き方の希望」を質問したところ、「正社員として働きたい」という人が62%となっておりまして、本来正社員なり安定した雇用で働きたいけれども、やむなく派遣で働いているという人たちが非常に増えている状況になっています。今、求人誌等を御覧いただければすぐ分かることなのですけれども、もう募集としては派遣の募集が圧倒的に多い中で、安定した仕事をしたいけれども派遣で働かざるを得ないという人たちが圧倒的に増えているのが現状です。
 現在、幾つか議論されている派遣制度の在り方に関する問題点について指摘をして終わりにしたいと思います。まず1つ、常用代替防止に関してです。この原則は何としても堅持すべきであると考えております。仮に無期雇用、派遣元と派遣労働者との間の雇用契約が無期雇用になっているとしたとしても、派遣先と派遣会社、派遣先と派遣元との契約関係というのはいつでも切れる。労働法上の保護の対象となっておりませんから、この部分はいつでも切れるということからすれば、派遣先の常用労働者の代替として派遣労働者がどんどん送り込まれて、いつでも切り捨てられる。そうした派遣先の状況は変わりがないことからすると、仮に派遣元との雇用契約が期間の定めのない雇用契約であったとしても、常用代替防止という原則はきちんと貫くべきであろうと考えます。
 それから期間制限に関してです。業務単位から人単位にすることが議論されておりますが、もし仮に人単位にしてしまえば、もう実際には派遣先企業において1年たった、2年たった、3年たったという段階で、では別の人に切り替えていこうということで、人をどんどん入れ替えることによって派遣労働をずっと継続するということで、常用代替がどんどん促進されてしまうことになって、非常に問題があると考えております。人単位に切り替えは決してやってはいけないと考えております。
 それから特定派遣については、今は届出制ということで気楽に届出でできることから、届出をしている企業も増えてきていると聞いております。きちんと許可制に切り替えていくべきだろうと思います。
 均等待遇に関しては、きちんと具体的に平等な待遇が確保される、派遣先における同一の価値の労働をしている労働者との本当に平等な待遇が確保されるならば、いろいろな効果が期待されますが、抽象的な均等待遇を定めるだけでは、労働者の保護には十分にはならないと思っておりますので、ここについては慎重に対応していくべきだろうと思います。
 最後に特定行為について、事前面接に関してです。1つは、派遣先企業が派遣労働者を特定するということでは、これは現実的にもう採用行為と考えたほうがいいだろうと思います。派遣先企業が派遣労働者を選定して、この人は採用する、採用しないと決めているのだとすれば、もうこれは事実上の採用行為ですから、派遣先に雇用上の責任を持たせるべきだと考えます。また、この事前面接においては、現実に今なお数多く事前面接が行われているわけなのですけれども、差別の温床となっています。残念ながら派遣先企業が派遣元の企業に対して、きれいな人をよこしてくれ、きれいな女性をよこしてくれというような発注をするケースが今なお多く見受けられます。
 少し古い話になりますが、1997年、1998年頃には大手派遣会社が容姿ランクを付けているという事件も発覚いたしました。これは、そうした派遣先のニーズに応えるためにABCと容姿ランクを付けていた。Aは華があり、すれ違ったとき「あっ、美人だな」と思うような人。Bは普通。Cはちょっとという基準が定められていたわけですが、こうした容姿ランクに基づくような差別が行われているというのも残念ながら現状です。
 こうした差別の温床となっている、見た目、年齢などによっても差別が行われている。あるいは事前面接の場面で「あなた、お子さんがいらっしゃるのですよね。緊急の残業でもやっぱりお願いできないですか」というようなやり取りがあったり、「介護をされているのでしたら時間どおり帰らなくてはいけないのですよね」というような確認があった後で断られるというようなことも非常に多いと聞いております。こういった差別の温床となっている事前面接を解禁するようなことがあってはならないと考えております。以上で私からの報告とさせていただきます。どうもありがとうございました。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。それでは御質問があればよろしくお願いいたします。では私から1つよろしいでしょうか。先ほど関根さん、現状においても正社員の派遣による代替が行われているとおしゃいました。これは幾つかの相談などでそのようにおっしゃっていたのかと思いますが、ある程度ボリュームと言いますか、少し集約したようなデータというのはございますか。
○関根様 ございません。ただ、相当多いのだろうなと思っております。一方では登録型派遣で働いている人たちが多いですから、非常に雇用は不安定で、いつ切られるか分からないという状況の中で、そういう常用代替が行われているところに非常に問題があると思っています。
○木村委員 聞き逃していたらすみません。先ほど常用代替防止は堅持すべきというお話で、派遣元との雇用関係が無期であればよいというわけではなくて、派遣先との関係があるということだったのですけれども、常用代替との絡みで期間制限の議論を我々はやっているわけなのですが、期間制限の考え方と関わるところで、業務に関する考え方、本日も専門業務と一般業務とそれ以外の業務と出ているのですが、そこの考え方としては専門業務とその他の業務で、違った考えをするとか、その辺りの御見解はどのようなお考えでしょうか。期間制限に関して。
○関根様 仮に26業務を撤廃するということになれば、一律に期間制限を掛けていくということですよね。ある意味で期間制限をきちんと掛けていくということは必要だろうと考えております。ただ一方では期間制限を緩和する、あるいは人単位にするというのは問題があると思っております。
○木村委員 業務単位の、ある業務に絞って業務単位での制限を掛けるのが望ましいというお考えですか。
○関根様 はい。
○鎌田座長 ほかの御質問はございますか。
○阿部委員 今回、日雇派遣が禁止されたのですが、それによる影響などについて、ユニオンでは情報をお持ちでしょうか。
○関根様 残念ながら現状としては、日雇派遣が禁止されたにもかかわらず、禁止されて以降に日雇派遣が増え続けている状況にあります。つまり取締りが十分に行われていないと言わざるを得ないと思います。その結果、本来であればもう少し安定した雇用に切り替わっていくべきところが、相変わらず日雇派遣のまま非常に多く広がっているのが現状です。もう1つは、日雇派遣から日々紹介へどうぞ、どんどん切り替えてくださいというような御案内もなされておりますので、日々紹介が広がっているということもございます。それも結果として不安定雇用ですので、日々紹介の部分も何らかの形で規制を掛けていくべきなのではないかと思います。
○阿部委員 その一方でたぶんこの研究会でも報告があったと思いますが、日雇派遣がなくなって仕事がなくなったという労働者の声もあったように思うのです。だから、禁止をすることは二面性があって、脱法行為をする問題もあるかもしれませんが、雇用そのものが失われる懸念もあるのではないかと思うのです。ですので、登録型派遣の全面禁止とおっしゃっていたと思いますが、それをやるとそういう問題が発生するのではないかと思いますが、それについてはどのようにお考えですか。
○関根様 短期的には必ずそういう問題は起こるだろうと思います。日雇派遣であっても全体的な流れとしては、日雇いの労働が減って安定した雇用に切り替わっていく流れになるけれども、一部には日雇派遣がなくなったことによって雇用が失われる人たちも現れる。登録型派遣においても本来であれば、大きな流れの中では、安定した雇用が増えていく流れにはなりますけれども、一部、登録型派遣がなくなったことによって職を失う人たちも現れる問題はあるかと思います。大きな変化をするときには、そういった問題は必ず起こるだろうと考えております。
○鎌田座長 ほかにありますか。1つだけ言葉の問題ですが、「常用代替防止」という言葉をどう理解するかはいろいろあると思いますが、先ほどのヒアリングの中で、派遣元会社が無期で雇用している場合について、常用代替防止というのはストレートに適用にならないのではないかという御意見があったのですが、それについては何か御意見があればどうぞ。
○関根様 先ほど申したとおりですが、派遣先企業においては、本来は直接雇用であり、無期限雇用が原則だと私どもは考えています。企業において直接雇用をされている労働者がいるわけですけれども、その常用労働者の代替にどんどん切り替わっていってしまうということからすると、やはり仮に派遣元で無期であったとしても、派遣先における常用労働者の代替となるという形で派遣が導入されて、派遣契約の部分はいつでも切れるということからすると、派遣先企業にとっては非常に入替えの簡単な労働力になってしまうので、そういう形で派遣が入っていくことは問題があると思っています。
○鎌田座長 ありがとうございました。ほかに皆さん、ありますか。よろしいですか。それでは派遣ユニオンに対する御質問はここまでとします。今日はお忙しいところ誠にありがとうございます。
○関根様 どうもありがとうございました。
○鎌田座長 それでは、本日はヒアリングで関係者の皆様に本当に貴重な時間にお越しいただき、いろいろと私どものためにお話をしていただき、ありがとうございました。改めてお礼を申し上げます。本日はこの辺りで終了したいと思います。次回の日程などについて事務局から御報告をお願いします。
○亀井補佐 次回の日程は6月14日(金)10時から、場所は本日と同じ職業安定局第1、第2会議室です。
○鎌田座長 それでは、これをもちまして本日の研究会は終了いたします。ありがとうございました。


(了)

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