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2013年2月12日 第8回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 議事録

職業安定局派遣・有期労働対策部需給調整事業課

○日時

平成25年2月12日(火)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第14会議室(22階)


○出席者

構成員

鎌田座長、阿部委員、奥田委員、小野委員、木村委員、山川委員

事務局

岡崎職業安定局長、宮川派遣・有期労働対策部長、尾形企画課長
富田需給調整事業課長 、牧野派遣・請負労働企画官、佐藤需給調整事業課長補佐

○議事

○鎌田座長 定刻になりましたので、第8回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会を開催いたします。まずは、事務局より、委員の出欠状況と資料の確認をお願いいたします。
○佐藤補佐 本日の委員の出欠状況ですが、竹内委員より御欠席との連絡をいただいております。
 資料は、議事次第、座席図のほか、資料1から資料3までお手元にお配りしております。資料の不備等ありましたらお申し付け下さい。以上です。
○鎌田座長 資料のほうはよろしいですか。そろっていますか。
 議事に入ります。本日は、前回欠席された阿部委員にも御出席いただいておりますので、まず、前回の研究会の場で議論した論点について、阿部委員から御意見を頂ければと思います。阿部先生、よろしくお願いいたします。
○阿部委員 多分、今日の議論とも重なるところがあるので、そちらでまた振り返りたいと思います。派遣労働者の位置付けですが、基本的には先生方が議論されていたとおり、やはり私も間接雇用であるという点が非常に大事な点ではないかと思います。それによって、特に労働者の保護をどうするかという問題があったり、あるいは雇用のリスクの配分を労働者と企業、派遣先と派遣元でどのように分担するかという問題もかなり大事な論点になるだろうと思います。間接雇用である点がほかの非正規のものと比べても、あるいは正規労働者もそうですが、全く違う点で、そこが一番大きな問題になるのではないかと思います。
 常用代替の話が出ていましたが、私、個人的には常用代替は、いわゆる生産活動において、それまで正規雇用者がやっていたものを非正規が行うようなものになるということだと思っていて、例えば、今、ここに机があって、それまで正規雇用者が座っていた机に非正規雇用者が座れば、私はそれは代替だろうと思っています。そのとき、非正規の雇用者がやれる仕事になっていれば問題はないと思うのですが、本来であれば正規雇用者がやるべき仕事、例えば、その業務はコアとなる業務で、しかも長期にわたって持続的に企業の中でやらなければならない業務が、それまで正規雇用者がやるわけですが、その仕事を非正規雇用者に出してしまう。それによって、例えば契約期間が短くなっても繰り返し反復契約していくといったことが起こっていることがやや問題ではないかと思います。それは派遣先というか、雇用元というか、仕事を非正規に切り出した企業の経営の問題なのかもしれませんが、そういうことが起こるのがどうかということをいろいろな観点から考えるものがあるだろうと思います。
 キャリアアップ措置の話ですが、多分これは労働者個人がかなり自律的に行っていく必要があるだろう。それをどうやって社会がバックアップできるかという問題だろうと思っています。派遣会社がとか、あるいは派遣先がというのはなかなかキャリアアップを図るインセンティブがないので、どうやって労働者が自律的に行うかということを、あるいは行っていくかというのを、バックアップするようなことを社会が考えていくべき問題ではないかと私は個人的に考えています。雑駁ですが、そんなものです。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。本日の議論とも関係しますので、その折りにまた御意見をいただければと思います。
 本日の議論に入ります。本日は「登録型派遣・製造業務派遣・特定労働者派遣事業の在り方」と「派遣可能期間の制限の在り方」について御議論いただきます。まず、事務局から資料の説明をお願いいたします。
○佐藤補佐 資料1は前回の研究会の議事概要ですので、資料の説明は省略いたします。適宜御参照いただければと思います。資料2、資料3ですが、まず資料2を御覧下さい。詳しいことは別途改めて説明いたしますが、本日、御議論いただきたい事項ということで大きく2点あります。まず1点目が「登録型派遣・製造業務派遣・特定労働者派遣事業の在り方」について、大きな2点が「派遣可能期間の制限の在り方について」。以上大きな2点について御議論いただきたいと思います。そういう前提で資料を作っておりますので、資料3はその前提でお聞きいただければと思います。
 資料3を御覧下さい。要点のみ説明いたします。1ページは派遣労働者数の推移ということで、一般労働者派遣事業に雇用されている労働者、特定のほうに雇用されている労働者の推移を表わしたものです。一番上の折れ線グラフが派遣労働者全体の推移で、内数ということで下に棒グラフがありますが、色が濃いほうが特定に雇用されている派遣労働者、薄いほうが一般に雇用されている労働者ということで、薄いほうは近年は減少傾向にあります。濃いほうの特定はおおむね横ばいで推移していて、大体30万人前後で推移しているという状況です。
 資料の2ページは、同じ派遣労働者の推移です。これは常時雇用かそれとも常時雇用型以外かで分けたものです。いわゆる常時雇用ですので、1年以上の雇用見込みです。色が濃いほうが常時雇用型労働者の推移、薄いほうが常時雇用型以外の労働者の推移ということで、大体平成19年度以降は黒いほうが薄いほうを上回っているということで、常時雇用型のほうが常時雇用型以外の派遣労働者を上回っている状況にあります。
 3ページは同じく派遣労働者の推移です。派遣労働者全体と製造業務に従事した派遣労働者で分けて作っている資料です。棒グラフが2種類ありますが、薄いほうが派遣労働者、全体の数で、右側の黒い棒グラフのほうが内数として製造業務に従事した派遣労働者の推移ということで、平成23年度、一番右側で申し上げると全体の派遣労働者が137万人、そのうち製造業務に従事した方が26万人、全体の19%程度ということで、平成20年度をピークとして、大体平成21年、平成22年、平成23年ということで、製造業務に従事した派遣労働者は25万人前後で推移している状況です。
 資料の4ページ、5ページについては、登録型派遣・製造業務派遣・特定労働者派遣事業に関する主な指摘事項ということで、過去の労働政策審議会での指摘あるいは研究会でヒアリングにお越しいただいた皆様方の意見等をもとに、私どもの事務局で整理をしたものです。
 4ページは登録型派遣についてです。禁止すべき、あるいは規制すべきということに賛成の意見として一番大きいのは、雇用の不安定、あるいは派遣切りが起こった問題なので禁止すべきという一番最初のポツ。1つ飛ばして3番目のポツです。登録型派遣は派遣期間の不更新あるいは解除が労働者の雇用喪失に直結する。だから禁止すべきだという御意見があります。一方で、禁止・規制に反対の御意見ということで、一番最初のポツですが、豊富な雇用機会の提供、あるいは迅速な需給調整機能を有しており、労働者・派遣先双方のニーズがあります。一番下ですが、改善の余地があることは確かですが、問題点を改善しながら継続していくべき。こういう御意見があります。
 5ページは製造業務派遣です。これも禁止に賛成の意見ということで、代表的なものとしては、雇用の不安定さあるいは派遣切りの問題。ものづくりの現場力が落ちた。1つ飛ばして、労災が多発している形態であるといったことで禁止すべきだという意見。一方で、禁止に反対の意見ということで、例えば、派遣を望む人のニーズに対応できない。上から4つ目ぐらいに、需要に即応できない。その次ですが、グローバル競争が激化する中で、柔軟な生産体制の構築のために製造業務派遣は必要不可欠。下から2つ目ですが、製造業務派遣の禁止には6割の派遣労働者が反対。改善の余地があることは確かだが、問題点を改善しながら継続していくべき。こういった御意見があります。
 一番下の3番目は特定労働者派遣です。これも範囲の限定あるいは基準の厳格化を行うべきとの御意見として、一番最初のポツ、一般の労働者派遣の資産要件を満たせないから特定の届出をしている。「常時雇用」の範囲を無期雇用に限定すべき。特定と一般を統合して1つの制度とするかあるいは許可制とすべきといった御意見があります。
 6ページは製造業の就業者の状況ということで、これは派遣に限らず全体の就業者の状況です。1、2と表とグラフがありますが、左側の平成24年12月現在の労働力調査を引用してます。就業者全体で約6,000万強いらっしゃいますが、製造業の就業者が1,000万人を割って998万人という状況です。右側は就業者全体と製造業の就業者数の推移です。これは年平均ですので、左側と数字が違っていますが、全体の就業者はこの10年間で大体100万人ぐらい減っているわけですが、製造業は200万人ぐらい減っている形で推移をしています。
 7ページ以降は被災3県の雇用情勢ということで資料を添付しています。被災3県の雇用情勢は、沿岸部は依然として厳しい状況。ミスマッチが見られている状況です。真ん中に求人・求職の推移がありますが、有効求職者は減少傾向にあります。特に沿岸部の雇用保険被保険者は震災前の水準を下回っているということで、左下に沿岸部の状況ということで、雇用保険被保険者数の推移の状況が出ております。特に食品の製造業の状況が厳しいということ。一番右下に職業別ミスマッチの状況ということで、特に建設では求人と求職の乖離が大きい状況にあります。
 8ページは被災3県における就業者数の状況ということで、被災3県では、全就業者の大体16%が製造業に従事しておられる状況です。
 9ページは、被災3県の派遣労働者の推移ということで、被災3県で大体4万2,000人が派遣就業に従事しておられる状況です。そのうち製造業務に従事しておられる派遣の方が約1万5,000人で、震災前後を通じて増加傾向にあるという状況にあります。
 資料の10ページは、被災3県における製造業の状況ということで、下に表があります。一番上の欄が、県内総生産に占める製造業の割合ということで、福島県の場合には県内総生産の約23%を製造業が占めている状況にあります。下のほうに新規求人の状況を付けております。平成24年の新規求人のうち、大体製造業が占める割合が岩手県、宮城県、福島県全体で大体7%から10%ぐらいである状況にあります。
 11ページです。これまでは、厚生労働省は関係各省と一体となって雇用対策を講じてきております。特に震災復興関係で申しますと、産業政策と一体となった雇用面での支援、あるいは女性の活用、障害者の活用等々、雇用面でモデル性がある事業をいろいろと実施して、法制でも積み増してきております。きめ細かい就職支援ということで、ハローワークによる出張相談等を行っております。建設機械の運転技能を習得する特別訓練コースの設定など、職業訓練などもいろいろと充実させて、様々な対策に取り組んでいる状況です。
 12ページ以降から資料が4枚ぐらいありますが、デフレ下の賃金動向、あるいは雇用動向ということで資料を添付しております。12ページはデフレと雇用の関係です。平成14年の労働経済の分析を引用しています。真ん中ぐらいに「また、これをいいかえると、失業率が」うんぬんという項目です。一番最後の文章に「賃金の下方硬直性がある場合、デフレは雇用に影響を与える可能性がある」という指摘をしております。少し飛ばして「すなわち、バブル崩壊後」うんぬんというところですが、下3行ぐらいに下線を引いておりますが、「一般労働者の賃金に下方硬直性が存在するならば、デフレ傾向のもとでは、賃金調整は行われにくく、実質賃金が上昇することにより一般労働者の雇用コストが高くなる。その結果、一般労働者の雇用が減少し、パート労働者への労働需要のシフトや失業の増大に結びついている可能性がある」という分析があります。
 13ページ以降はデフレと賃金の状況です。図が細かいですが、名目賃金の変化を要因分析したものです。これは、経済財政報告(内閣府)の資料を引用したものです。(1)現金給与総額。前年同期比でどういうふうに推移しているのかというのが折れ線で、そのうち、寄与度を分解して分析しているのが縦の棒線グラフです。賃金調整は特別給与の寄与度が大きいというのが(1)のグラフの結論です。(2)は定期給与の前年同期比の増減が折れ線グラフで書いてあり、縦の棒グラフが同じく寄与度を分析しているものです。結論だけ申し上げると、定期給与の増減はパート比率の寄与度が大きいということで、パート比率が高いと定期給与が減少傾向にあるという状況分析があります。
 資料を少し飛ばしまして、資料17ページです。16ページから円高と企業行動への影響についての資料を添付しています。「円高による輸出企業への影響2」が17ページにあります。通商白書の資料を引用しております。「円高に対する企業の意識調査」ということで、左側に「円高が自社の売り上げに与える影響」で、全体、nが1万1,000ちょっとですが、「悪影響」と回答しているのが35%強。内数として製造業について見ると約半数が「悪影響」だと答えており、それが左側の円グラフに書いてあります。右側は円高対策として実施、あるいは検討している対策です。数字が大きいものだけ拾って申しますと、1番目の海外調達を増やす、3番目の円価格の維持(外貨建て輸出価格の引き上げ)。少し飛ばして5番目、国内の生産部門合理化によるコスト削減、6.海外生産拠点の拡充・新設、7.海外生産比率を上げる、といったものを対策として検討しているという回答が得られています。
 資料の19ページは、一般の派遣事業所と特定の派遣事業所の比較です。JILPTの調査を引用しております。事業所の年間売上高の比較です。箱が2つありますが、真ん中の欄が一般、下の欄が特定ということで、全体を100とした場合にそれぞれの売上高がどれくらいの分布になっているかというものです。一番右下に「平均」とあります。平均で見ると、一般の派遣事業所は大体5,200万円の売上高がある。特定は大体2,000万円ちょっとということで、売上高でいうと、特定よりも一般のほうが規模の大きい事業所が多いということです。
 20ページは売上高の金額ベースではなく、派遣社員の稼働者数の数字で比較したものです。同じように一番右下の欄を御覧いただくと、事業所で稼働している派遣社員の数の比較で言いますと、一般は大体125人。一方で、特定は34人ということで、人数で見ても一般のほうが特定よりも大きい状況にあります。
 21ページは雇用契約期間別の派遣労働者数です。JILPTの調査を若干加工しているのですが、1番目は派遣労働者の雇用契約期間の比較ということで、純粋な調査結果をそのまま貼り付けているものです。登録型と常用型で雇用契約期間にどういう差があるかということですが、登録型は当然のように有期の方が多いわけですが、常用型で期間の定めのある方についても、比較的雇用期間が短い方が多いということができます下は「派遣労働者の雇用契約期間の比較(調整後)」とありますが、登録型で期間の定めがないという回答が14.8%ありましたので、便宜上ゼロとした上で、ほかの雇用契約期間の数値を割り戻して、登録型と常用型で比較したものです。そうすると、登録型のほうは、大体92%が雇用契約期間1年以下、常用型(期間の定めあり)のほうは89.1%が1年以下ということで、それほど大差がないのではないかという調査結果もあります。
 22ページは、一般労働者派遣事業の許可基準を平成21年10月から厳しくして、資産要件、あるいは派遣元責任者の要件、派遣元責任者の講習等々で厳しくした上で、雇用管理を適正に行えるような派遣事業者だけが参入できるようにしようということを行っております。
 23ページ以降は国会の議論の状況です。これも議事録を添付しておりますのでポイントだけ説明いたします。まず23ページです。登録型派遣・製造業務派遣について、国会でどういう議論があったかということで、一番最初に、第174回衆議院厚生労働委員会を添付しております。長勢甚遠議員からは、例えば、これを一律に登録禁止あるいは登録派遣は禁止をする、製造業派遣は禁止するということになれば、いろいろな問題が出てくるだろうという御指摘があります。それに対して当時の長妻大臣は、非常に働き方が不安定になったとか、直接目の前の労働者の雇い主ではないということで、いろいろな労務管理等々で不十分になってしまうと答弁をしております。
 24ページです。これも同じように登録型派遣、製造業派遣の議事録です。一番上に、第179回衆議院厚生労働委員会で柿澤議員からは、製造業の派遣の原則禁止を行った場合に、円高もあり、規制が厳しくなり、またゼロ成長でもある。こういったことをやっていたら、製造業は海外に流出して、雇用が減少するのではないかという御指摘があります。真ん中のその続き、大西議員からは、登録型派遣の原則禁止に反対の人は賛成の人を大きく上回っている。同じように、派遣労働者のうち製造業派遣の禁止に賛成の人は全体の1割に対して、67%もの人が禁止に反対だと答えています。こういった指摘がありました。
 25ページです。古屋議員からも同じように、製造業派遣、登録型派遣の原則禁止について、中小企業経営の人材活用の圧迫とか、悪質な労働関係への移行、あるいは過剰な規制はかえって雇用を失わせることがあるのではないか。こういった指摘があります。坂口議員からは、登録型派遣の方がかなりたくさんお見えになっていて、かつ自分で選んでいる方もたくさんいらっしゃるという御指摘があります。
 第180国会と参議院厚生労働委員会で、衛藤議員からは、多様な働き方の1つである派遣労働という選択肢を奪っていいのかという御指摘があり、田村議員からは、登録型派遣、製造業派遣それぞれ22万人、10万人いるので、そういった人たちの職が失われる恐れがあるといった御指摘があります。
 26ページの特定労働者派遣事業についても同じように、第174回国会で、阿部議員から、常用といっても有期と無期と両方いらっしゃるので、圧倒的に有期の方はいわゆる派遣切りの対象になっているのではないかという御指摘があります。
 27ページです。第180国会、参議院厚生労働委員会で、川合孝典議員から、特定労働者派遣事業所が増えている理由ということで、特定労働者派遣事業のほうに事業者がどんどん移行しているとか、実態として、短期雇用で派遣しているケースも散見されますとか、こういった御指摘があります。
 28ページは派遣受入期間の制限です。田村議員、石井議員、それぞれ同じような御指摘ですが、もう人に着目していくというような方向で派遣法を見直すことを検討すべきではないかとか、労働契約法の考え方も踏まえて、見直していくことも考えられるのではないかといった議論がありました。
 29、30ページは、過去の研究会あるいは審議会における報告の抜粋です。29ページの登録型派遣については、平成20年の研究会では、必ずしも規制をするということではなく、必ずしも禁止することが適当ではなく、様々な問題を解決しながら、迅速な労働力需給調整という登録型派遣のメリットをいかした事業形態として位置付けていくことが適当であるという御指摘があります。
 平成21年の労働政策審議会の答申では、常用型の労働者派遣を禁止することが適当であるといった御指摘があります。
 30ページの2番目、製造業務派遣。平成21年の労働政策審議会答申では、一部例外がありますが、登録型と同じように禁止することが適当であるといった答申を頂いております。
 特定労働者派遣事業については、平成20年の研究会報告では、一番下3行「このため」という所がありますが、「常用型派遣については、期間の定めのないものとして再整理をした上で、派遣労働の中では最も労働者の雇用の安定に適した形態として、今後育成していくとともに」うんぬんという指摘があります。
 34ページは、業務別の通算派遣契約期間ということで、26業務と自由化業務で通算の派遣契約期間にどういった違いがあるかということで、26業務は右のほうに「1年超3年以下」あるいは「3年超」という欄がありますが、この契約期間が非常に多いということ。自由化業務については、イベント・キャンペーンが「1週間超1か月以下」が一番多いですが、それ以外は「6か月超1年以下」あるいは「1年超3年以下」が一番多い状況になっております。
 35ページは労働者派遣法における主な規制の種類ということで、事業規制と派遣労働者保護の規制とざくっと2つに分けて書いています。一応便宜上こういう形で書いていますが、事業規制を通じて派遣労働者の保護に帰着する事項も多いので、その点を御留意いただいた上で説明をいたしますと、事業規制ということで、主なものは「事業開始時の規制」、禁止業務や許可・届出、「事業運営上の規制」ということで、事業報告の提出やマージン率の情報提供、派遣元(派遣先)責任者の選任等々があります。グループ企業派遣と派遣期間の制限は、グループ企業は労働市場全体の需給調整機能、派遣期間の制限は常用代替の防止という観点からの規制になっております。右側は派遣労働者保護の規制ということで、派遣契約の中途解除時の保護、対遇改善、雇用の安定ということで、様々な規制が盛り込まれている状況です。
 36、37、38ページは外国の例です。36、37ページで諸外国の労働者派遣制度の概要ということで整理をしています。36ページの一番下に、業務区分による規制(禁止業務以外)があり、日本の場合には、派遣先の業務によって派遣受入期間の上限を設定している。これは自由化業務で26業務ですが、こういう形での規制をしているということです。
 37ページです。一番上の欄に「派遣が許可される事由と派遣期間の上限」があり、フランスやベルギーでは休暇や病欠による欠員の代替や一時的な業務量の増加といった場合には許可されるというルールになっております。真ん中の欄に、派遣労働者の対遇に関する義務ということで、EU、ヨーロッパでは均等対遇で、こういう規制が課せられています。日本の場合には均衡対遇となっております。アメリカの場合は何もございません。
 38ページは「ドイツ金属産業における派遣労働者の受入れの例」ということで、2012年5月に、ドイツのIGメタルは金属産業の使用者団体と協約を締結して、派遣労働者の投入に対して、派遣先となる事業所の事業所委員会の同意が必要とされております。下のほうに協約の概要があります。事業所委員会との共同決定をした上で、派遣労働者の受入れの可否を決めることになります。派遣の利用理由についても、需要の一時的な増大や専門的な労働力の必要といった場合を除いては、派遣労働者の投入ができないことになっております。資料3の説明は以上です。
 資料2に戻っていただいて、今日、御議論いただきたい事項ということで大きく2点、先ほど申し上げましたが、まず1点目の登録型派遣・製造業務派遣・特定労働者派遣事業の在り方についてということで、(1)の1つ目の○ですが、登録型派遣については、雇用が不安定であり問題であるという指摘がある一方で、労働者・企業のニーズがきちんとあって、臨時的・一時的な需給調整機能として有効に機能しているといった指摘もあります。こういった指摘を踏まえつつ、また、昨年10年からは、日雇い派遣が原則禁止とされたことも踏まえて、今後の在り方をどう考えていくのか。2つ目の○、附帯決議で言われている事項ですが、東日本大震災による雇用状況、あるいはデフレ・円高等の産業に与える影響、派遣労働者の就労機会の確保等との関係をどう考えるか。3つ目の○、登録型派遣については、能力開発の機会が得にくい、就業経験が評価されないといった指摘もあるが、派遣労働者のキャリア形成を促すために、派遣元はどのような役割を果たしていくべきか。この3点。
 (2)製造業務派遣についても、1つ目の○、「派遣切り」の場面では雇用の安定が図られず、また技能継承の観点からも問題であるという指摘がある一方で、これを禁止することは季節的変動等による生産現場の臨時的・一時的なニーズに柔軟に対応できず、ひいては生産拠点の海外移転や中小企業の受注機会減少を招き兼ねないという指摘がありますので、こういった指摘も踏まえつつ、どう考えていくのか。2つ目の○は同じく震災の影響あるいはデフレ・円高の影響等々です。
 (3)特定労働者派遣事業です。先ほど説明申し上げましたが、平成20年の研究会報告では、「常用型派遣」については「期間の定めのないもの」と再整理することが適当とされていますが、現状においてどう考えていくのか。2ページの一番上の○ですが、特定労働者派遣事業についても、一般の派遣事業と同じように許可の対象とすべきという意見もあるが、どう考えるか。
 大きな2番目、派遣可能期間の制限の在り方ですが、一番最初の○、これまでのヒアリングでは、業務による派遣期間制限を撤廃し、無期雇用の者を除き、同一の派遣労働者について同一の派遣先での派遣期間の上限を設けるべきとの意見が示されていますが、これについてどう考えていくか。取り分け、以下の点についてどう考えるべきかということで、1今の法律が業務を切り口として常用代替防止を図っていることとの関係をどう考えるか。2有期雇用の派遣労働者について派遣期間の上限を設定しようとする切り口についてはどう考えるか。一番下の○ですが、派遣期間制限という事業規制の手法が、派遣労働者の保護につながっていないという指摘があるが、この点についてどう考えるかということで、以上の点について特に御議論いただければと思っております。事務局からの説明は以上です。
○鎌田座長 今の御説明に対して質問はありませんか。後ほど御意見のところでまた御質問していただければと思います。本日も論点が多岐にわたっているので、幾つかに分けて御議論いただきたいと思っています。まず、資料2-1の「登録型派遣・製造業務派遣・特定労働者派遣事業の在り方について」とありますが、この中の登録型派遣と製造業務派遣について、委員の皆様の御意見を伺いたいと思います。
○奥田委員 登録型派遣についてですが、労使双方のニーズということでいろいろ御紹介もいただいて、これまでのヒアリング等でも出てきているかと思うのですが、一方で必要性がいろいろあることと、もう一方で既に様々な弊害が出てきていること、両方ともどう考えるかということで、方向性は当然考えていかなければいけないと思うのです。2008年の報告書でも若干触れられていることも念頭に置いて考えてみると、登録型派遣の実際の運用のされ方によるのかもしれませんが、登録型で働きたいとか、例えば登録型派遣でのアルバイト的な働き方とか、迅速な労働力需給の調整ということ、あるいは就業機会を迅速に確保するということを考えた場合、これが職業紹介とかである程度代替できるものではないかという気がどうしてもあるのです。
 もちろん派遣先からすると、自らに雇用関係が生じるかどうかという違いは相当程度大きいと思うのです。労働者の様々なニーズが挙げられている、そのニーズの内容から見ていくと、必ずしも雇用と使用とを分けた、間接雇用で働きたいと思っていらっしゃるようには到底見えないのです。必要なときに仕事がパッと見つかるとか、そういうことが念頭に置かれているのではないかということから考えてみると、職業紹介での対応で仮にある程度の範囲が可能だとすれば、当初から出てきている非正規の中でも特に間接雇用であることによる様々な問題を考えると、あえて使用と雇用とを分けた間接雇用に対するニーズがあるとは私には思えないのです。この辺りを登録型派遣ということで、間接雇用としてのこういう働き方を残しておくことが必要なのか、あるいは職業紹介という形で整理をすることが可能なのかを、先生方の御意見も含めて少し検討してみてはどうかと思っています。
 私自身はある程度のところ、実際に派遣元で相当程度の職業訓練をしたりとか、そういう実態があるということならですが、登録型の多くというか、数字として多いかどうかは正確には申し上げられませんが、かなり職業紹介的な要素も強いようにも感じられます。その辺りをそういうもので代替、代替というかカバーできるものなのではないかと考えているところがあります。そういうことを含めて、それでも登録型の間接雇用でのニーズがあるのかどうかを少し御議論いただければと思います。
○鎌田座長 この点についてでも結構ですし、またほかの点でも結構です。私から、今の奥田委員から職業紹介との代替可能性も検討してみたらどうかというお話で、今の日雇い派遣に関する原則禁止の中で、職業紹介との代替というか職業紹介によって代替することも幾つかの企業で試みられていることを聞いています。そこで、どういった状況になっているのか。もし何か事務局にデータがあればご紹介してください。
○佐藤補佐 具体的なデータとしてはないのですが、日雇い派遣が原則禁止となり、日雇い派遣から職業紹介のほうにビジネスとして移行しているという会社も幾つかあるのは、事実です。あるいは、今まで派遣だけでやっていたのですが、新しく紹介の許可も取って派遣と紹介の両方でやっているという企業も、特に日雇い派遣の原則禁止の法案が出てから大分経ちましたので、そういう行動が出てきているのも事実です。禁止されてまだ3、4か月しか経っていませんので、データ的にはなかなか集められていないのが現状です。
○鎌田座長 まだしっかりした傾向を読み取るところまではいかないということのようです。
○山川委員 先ほど平成20年の研究会報告のお話がありましたが、私自身はその研究会にも関わっていたので、基本的にはその研究会で到達した結論がよいのではないかという感じではあるわけです。そこで述べられていることをここで余り繰り返す必要もないかとは思いますが、先ほど来御紹介のありました労働力需給システムとしてのニーズ、あるいは労働者のニーズということもあるということです。
 先ほどの職業紹介との関係については、確かに実態がどうなって、新たに職業紹介に移行した段階でどのようになっているのかは、調べるというか確認する必要はあろうかと思います。一方で、間接雇用という問題ともう1つ不安定雇用という問題と、派遣には2つの側面がある感じがします。不安定雇用の側面は、登録型のときには特に出てくることがあるので、その点については何らかの対応を図る必要があると思います。今回の改正法でも対応が一定程度とられているということはありますが、そういう意味で不安定性に対する対応は考えられるとは思いますが、それぞれのメリットみたいなものはいかす方向も考えられるのではないかと。具体的にどうしたらいいかまではまだ確固とした案があるわけではありませんが、一応今のところはそういう感じです。
○木村委員 登録型派遣の今の点で私の考え方です。職業紹介でよいのではと、間接雇用の意義はということですが、職業紹介にしたときですが、ある程度長い期間で雇うときであれば、職業紹介で紹介してもらって、民間のであれば、そこで紹介手数料を半年後とかに渡す形でよろしいかと思うのです。派遣を使うときの動機というか状況として、どれぐらい人を使うのかという期間が不確実な状態で、例えば1か月になるのか3か月になるのか6か月になるのか分からないときに、派遣のほうが派遣先にとっては活用しやすいということと、あとは、間接雇用のほうが、雇用管理、労務管理、その辺りの手間がかからないと、派遣先がというか人を使う側の論理ではそういうことがあると思うのです。
 もう1つ、もう少し労働者保護という形で前向きなことを考えると、派遣と競合する職業紹介というと短期になるのではないかと思うのです。それ以外の長期で、例えば正社員前提で人を活用すると思えば、直接、普通に求人採用するか、職業紹介で長期で雇うかということです。日雇いにしろ有期にしろ、短期での職業紹介になると、例えば1年なので直接雇用になるのですが、関係が切れたと。切れたあとどうするかというと、ほかの所に行くわけです。そしてまた有料職業紹介という形で、職業紹介会社がどこまで継続的に同じ人を扱っていくか、また逆に言うと、労働者側からすると、紹介会社で同じ紹介会社を使っていくこともあるのかもしれないのです。
 間接雇用という形で、派遣という形で、雇用主は変わらないのですが派遣先だけ変わるということの積極的な意味も考えると、就労先は変わっても雇用主は同じで、継続的にその人を見ていけると。労働者のことを管理というか見ていけると。能力の面であったり、あとは、まだ進んでいないと思うのですが退職給付とか、その辺りも見ることもできなくはないと。
 ただ、現状の間接雇用の形態が、そういった雇用主として、就労先が変わっても、継続して労働者の状況を見ていけるかという点が1つ課題になっている。間接雇用のそういった前向きなメリットをいかすとすれば、就労先が変わっても雇用主は変わらないことをよりいかすように、雇用主が継続的に労働者に目配りをするという点です。ただ、それが登録型でどのように可能になるかが議論の点になると思います。
○小野委員 登録型派遣について、私の今考えるところですが、奥田委員からお話があった、職業紹介では委員の職業紹介で代替できるのではないかという話ですが、今、木村さんからもありましたが、端的に代替できるかどうかは、これまで派遣でやってきたことを職業紹介にしたときに、派遣元がそれでペイできるかどうかというところだと思います。
 恐らくそれは今、日雇い派遣の禁止をめぐっていろいろ工夫されてやっていらっしゃるとは思うのですが、現場からの声を聞くと、非常に混乱しているのを聞きます。経過を見ながら熟成していったら、それでやっていけるのかどうかはウォッチしていかなくてはいけないとは思うのですが、かなり構造的には厳しいのではないかというのは私の印象です。特に短期の派遣についての職業紹介についてはです。
 あとは、派遣元が持っているマッチング、需給機能の迅速な調整というかマッチングの機能は相当構築度が高いものでして、そこの機能が失われてしまうのは、私としては労働市場の中で損失があると思っています。登録型派遣はそもそも必要だという話は、労働力需給というものをいかに迅速に行うかということで必要とされてきたものなので、ここの機能はいかすべきだと私は思っています。
 ただ、問題として最近傾向であるのは、登録型派遣における雇用契約期間です。それが短期化している、それの反復が問題だと私は思っています。派遣先に10数年働いているにもかかわらず、3か月ごとに更新であったりとか、これまでは1年ごとの更新であったものが3か月になったとか、そういうことを耳にしたりするので、その辺が派遣先との派遣契約が長期であれば、雇用契約も長期にするとか、なるべく雇用契約期間は長く持たせる工夫は必要ではないかと思っています。登録型派遣については、以上です。
○鎌田座長 登録型派遣とともに製造業務派遣についても、何か御意見があれば。
○阿部委員 製造業派遣ですが、製造業派遣と非製造業派遣の違いがよく分からないのが、一番考えるときのポイントではないかと思うのです。つまり、私が分からないだけかもしれませんが、労働サービスを提供することは、製造業であれ非製造業であれ、サービスの提供ということでは一緒なわけです。就業環境が多分違うだろうというのは想像できます。ただそれは、製造業で働いている人はみんなそういう状況で働いているわけで、そこの違いが派遣労働者と直用で働いている人との違いも分からないし、非製造業で派遣された人が労働サービスを提供することと、製造業に労働サービスを提供することの違いもよく分からないです。そこのところをどう考えるかはずっと考えているのですが、私にはよく理解できないとは思います。
 ただ、確かに当時、当時というのは何年前ですかね。いろいろな問題が起こったのは事実だと思うのですが、だからといって禁止することになるのか。同じものが非製造業で起こったらどうなるのだとは思うわけです。だから、私には論点がよく見えないというかですね。
○山川委員 今の阿部先生の御意見との関連で、私も先ほど申した登録型派遣と製造業派遣を分けて議論する実益が、実益というか意味はどういうところにあるのかと思います。不安定性、また間接雇用という面でもそうかもしれませんが、基本的に登録型と同じように考えられるのではないかという感じがします。
 ただ、違いがあるとすれば、恐らく、1つは、リーマン・ショック等で大きく問題が生じたように、製造業の場合は輸出依存型の産業であると。その意味では景気変動、あるいは為替変動もそうかもしれませんが、そういうものによる影響が非常に強く現れやすいという意味では、不安定性は強いということかもしれません。他方で、海外移転の促進の恐れも逆にあるのではないか。分けて議論するとしたら、1つはそういうことが考えられるかと思います。ただ、基本的な制度の枠組みの話としては、登録型派遣と同様に考えられる、そういう発想が成り立つように思います。
○木村委員 製造業務派遣に関してですが、今の実態としてリーマン・ショックのときの減少が非常に大きかったという話もあると思うのです。もう1つは、危険有害業務が含まれるということで、そこに短期でいきなり来た人を当てたときに問題が起きると。実際に労災が多発していると、恥ずかしながら何件かは把握していませんが、そういった問題があるということです。そういった面を含めると、安全衛生教育等の一定の措置を、一般というか他の比較的安全な業務と比べて、何らかの規制というか縛りをかける必要があるのではないかと思います。
 ほかに論点として、今日の資料で、資料2-3の5ページに「製造業務派遣禁止に賛成の意見」、禁止すべき意見の所ですが、2番目の「現場力が落ちた」とか、3番目の「高度熟練技術の継承」ということが禁止の論拠を押し下げられています。この点で疑問なのは、製造業務のノウハウとか、個々のメーカーのノウハウとか、高度技術の継承を労働法の中で縛るものかどうかと。それは企業個々の判断であって、出したくなければ中の人間で。中の人間という言い方は悪いですね。直接雇用で長期雇用でやればいいわけで、そうでないと判断すればアウトソーシングすると、経営判断の話であって、労働法の範疇ではないのではないかと思います。以上のことを考えると、危険有害の労災の面以外は、登録型派遣かそうでないかという、そこの問題にまとまるのではないかと考えます。
○阿部委員 今の労災の話ですが、これはもちろん当然の話であって、労災しない派遣元があったら大変なことですし、非製造業でも労災の可能性はあるわけです。特に最近だと、心の病とかいろいろな問題がありますからね。だから、なぜ製造業と非製造業と分けなければいけないのか、よく理解できないです。
○鎌田座長 データ的には事務局にお聞きしたほうがいいのかもしれませんが、私のイメージでいうと、派遣固有の違いということよりは、まず派遣労働者が通常の事務派遣の場合には女性が多く、製造業派遣の場合には、男性の割合が結構高いのではないか。どのぐらいの割合か今はデータを見ないと分かりません。業務の内容も、今おっしゃったように、比較的危険性が高い労災につながる業務があるというイメージですので、派遣固有の違いというよりは、投入される人たちの属性の違いが1つ大きかった気がします。
 ですから、その人たちが抱えている背景事情、つまり女性の場合には、例えば家庭を中心に据えて働いているということですが、男性の場合の製造業務のほうは、正に派遣で生活している。そして、単に派遣にとどまらずにいろいろな非正規の働き方を経験しながら、そうした社会状況との中で議論の対象とされてきたというイメージで私は考えています。ですから、当時、製造業派遣の問題のときに、宿泊施設とかそういったことも一緒に問題になった経緯は、そういったことがあったのではないかと思います。
○阿部委員 多分そうだと思うのです。ただ、ここで議論すべきは、そういった属性とかで議論してしまうと、今後社会が、例えば男性も女性も関係なく1人で生活する人たちも出てきているわけですし、その人たちの生活は仕事を拠り所にすることが多いわけで、属性で分けて議論してしまうと、男性だから何とかしてあげなくてはいけない、では女性は補助的でいいのかという話になりかねないので、そこはそういう議論はしないで、派遣元が労働サービスを派遣先に提供している。その労働サービスがどういうことかをきっちり議論すべきではないかと、それは人で話すのではなくて。私は個人的にはそのほうがいいような気がしています。
○小野委員 確かに2つ分けて議論するのも違和感があるとは思いつつも、今からお話することは、製造業務派遣と事務の登録型派遣の構造的な違いといいますか、法的というよりも、そういうものです。例えば製造業務派遣の工場のラインで働く人の数とか、賃金はどうやって決まるかの論理は事務派遣の人たちの賃金とか数が決まる論理とは全く違う所で決まるのです。恐らくそれが山川先生がおっしゃったそこのそもそもの論理が違うので、国際競争での為替とか、不況とかが色濃く反映される部分だと思います。
 製造業務は製造ですから、その製品の値段、原価、それを造るために必要な投入の人間の数、賃金ですよね。人工でどのぐらいの賃金で、どのぐらいの人数で、幾つのロットができると、そういうかなりメカニックというか数字の世界なのです。そこに派遣労働者の能力に対する評価の賃金であったりとか、そういうものはほぼないと考えてもいいと思います。
 片や事務派遣の場合は、英語ができる人とか、パソコンができる人とか、こういう企業で以前働いた経験のある人とか、そういう条件の積み重ねの上で、ではこのぐらいの市場の賃金で募集をかければこういう人材が集まるだろう、という論理で値段付けがされるわけです。
 そもそも同じ登録型派遣だけれども、企業の雇うニーズというか、条件というか、考え方、人として、キャリアとして考えるのか、ある意味原価の一部として考えるのかというところでの違いはある。だから、そうなった場合に、私が言っているキャリアの話とかは、相当製造業務派遣に適用するのは難しいだろうと考えざるを得ないと思います。
 ただ、製造業務派遣については、ここにも書かれていますが、技能継承という非常に重要なところ、これはキャリアがないとできない話ですから、そこの部分と非常に重要な需給調整の部分は双方を考えなくてはいけないので、そう考えたときに、需給調整機能は非常に重要なものだと私は考えているので、それを取りつつもキャリアの部分を伸ばしていくような、恐らく製造業務派遣であったとしても、そういうやり方はあるだろうと思っています。だから、それはどうインセンティブを付けてそうやっていってもらうかを考えていかなくてはいけないと思っています。
○鎌田座長 確認ですが、今非常に詳しく御説明いただいて、私も非常に参考になったのです。つまり、例えば賃金の決め方とか、キャリアアップの在り方とかで、製造業務派遣については厳しいものがあるというお話だったのですね。それは先ほど来皆さんが議論して、特に阿部先生がお話して、派遣固有の問題と見るべきかどうかが1つあると思うのです。例えば派遣を禁止し、派遣がなくなったとした場合に、考えられるのは、工内下請の問題が再び出てくる。そこでも同じ問題が出てくる。あるいは仮に直用した場合に、短期の有期の臨時的な社員として入れたときに、やはり同じ問題がそこでも出てくる。
 つまり、いま製造業の中で抱えるいろいろな問題が、先ほど海外輸出依存作業という側面から非常に厳しいグローバルな競争の中で行われている様々な問題が、例えば派遣の所にも出てくる。そうすると、そこが禁止されると、全体にかかってくるプレッシャーは別に変わりませんので、別なところにも出てくるという問題も出てきますよね。だから、固有かそうではないかという議論は、そこは先ほどからの問題提起、阿部先生の問題提起かと思っていたのですが。
○小野委員 1つの例を出して言うと、工場は地方に多いのです。そして、工場のラインで人を雇用することになったら、1人、2人ではないわけです。10人、数十人単位で雇っていくことになる。あるヒアリング調査で行った工場での話ですが、ハローワークとかを通じて募集しないのですかという話をしたら、ハローワークで募集しても自分たちの欲しい人は集まらないと言うのです。なので、製造業務派遣の所にこういう人を何人くださいと言ったら、製造業務派遣をやっている人たちがそれなりにそこで働けるだろうと思う人たちを、その人数分を集めてくれるというのです。だから、それは相当程度手間というもの、派遣先にとっての迅速な需給調整がそこで成し得ているわけで、採用であったりとか、募集であったりとかいうものを、お金を払いつつ、そこを軽減できるというメリットがあると考えています。
 だから、なくなったときに、ではハローワークで直接雇用で募集をかけて、適当な人がきちんと集まればいいのですが、場所にもよるとは思いますが、安定して労働力の需給調整を迅速に行うことを第一に考えるのであれば、製造業務派遣がある必要性はあるだろうと思っています。
○鎌田座長 いま登録型と製造業についていろいろ御議論していただき、間接雇用という問題があって、それを注目すべきだと、それから不安定雇用。今皆さんが御議論していて、私はもう1つ需給調整機能というのですか、その辺も重要なポイントかと思います。先ほど木村先生が職業紹介との代替と言った場合に、つまり短期の場合には次々と終了するわけですよね。そうした場合に継続的にその人の新たな就業先の紹介を考えた場合に、派遣は需給調整の機能としては職業紹介にないものがあるのではないかというのが問題提起だったと思います。そうすると、需給調整機能、マッチング機関としての役割も1つ考える上で重要かと思っています。奥田先生、その点について何か考えは。
○奥田委員 私も職業紹介で全部代替できるとはもちろん思わないのです。ただ、需給調整機能が必要だとか、おっしゃるように派遣先にとってできるだけ人が集められて調整ができるとか、その必要性を全く否定できないとは思うのですが、その場合に調整の対象となる労働者はモノではないのですから、集めて、また替えればいいというものではありません。
 先ほど阿部先生がおっしゃったように製造業特有かどうかは別としても、登録型にしても実際に多くの弊害が指摘されてきていることは事実ですし、特に労働法の観点から言えば、本来であれば適用される解雇規制であったりとか、雇い止め規制であったりとか、労働判例等を見ていても多くの面で派遣で適用が外れるという疑問点が多々生じるのです。
 そうだとすると、一方での需給調整と、他方でそこで生じている弊害をなくす、軽減するというバランスで見ていかないと、どうしても需給調整ということで派遣先にとって人が採りやすいということで見ていくのは、私は疑問を感じるところがあるので、それをきちっと整理して考えていきたいということです。
 それとの関係で言えば、先ほどの登録型もそうですが、製造業派遣をなくしてほしくないという声が労働者にも多いというのは、それは確かに統計等で出てくるのですが、それは製造業派遣でしか仕事がない方もあるでしょうし、派遣という間接雇用の形で働きたいとか、登録に関しても派遣という間接雇用で働きたいという声だというふうにストレートには捉えられないと思うので、なぜそういう反対が出てくるのかとか、そういうことを含めて考えていく必要があるだろうとは思っています。もちろん需給調整という面を全くは否定できないですが、それが余り本筋になると疑問を感じるところがあるので、またその辺りを含めて考えていきたいと思います。
○鎌田座長 視点を変えて、今度の東日本大震災の中で、労働力の需給調整は非常に大きな問題になっています。現在でもなっている。そういう観点から言うと、派遣が被災地における復興との関連でどのような役割を果たしているのかを、先ほど資料の中でも少し御説明はあったのですが、何かどういう意義があったのか、あるいはそれを分かるデータがあれば少しご紹介ください。報道などで聴くと、特にがれき処理とか様々な面で派遣が臨時的な業務の対応に役に立ったという報道がされていた気がするのですが。
○佐藤補佐 データというか数値的なものはないのですが、ちょうど震災が発生して1か月か2か月後ぐらいだったかと思いますが、当時の厚生労働大臣から業界団体に対しては、働き方というか派遣のほうでもいろいろと御協力をお願いできませんかという形でお願いを申し上げて、業界団体にもいろいろと御尽力をいただいたという経緯はあります。実際に派遣で働いておられる方もいらっしゃると思いますし、当然派遣ではない雇用形態もあるわけですが、そういう意味で具体的に、ではそれによって派遣で何人働いたかとか、あるいはこういう仕事に何人就いておられるかというところまでは、データ的なものはないのですが、経緯としてはそういう経緯はあることは報告を申し上げたいと思います。
○小野委員 仕事の一環で東日本大震災の派遣会社はどういう働きをしたかという調査はしたりしていたのですが、そもそも被災地は派遣会社がもともと少ない所なのです。特に大手の事務系の派遣会社は、東北では仙台を拠点としている所はありますが、石巻とか、気仙沼とか、それより上の所にはほとんど拠点がないのです。地元の中小の派遣会社で、主に製造業務とかを中心にやっていらっしゃる派遣会社が幾つかあるぐらいで、もともと派遣を使うという文化というか、そういう歴史が余りなかった場所というふうに考えてもいいかもしれません、仙台は別ですよ。
 ただ、大手の幾つかの事務系の派遣会社が震災後に被災地に行っています。石巻や陸前高田に拠点を設けて展開されている所もあるのです。でも、それは多くは緊急雇用の基金を使っての事業なのです。ですので、元請が自治体です。市町村が委託元になって委託すると。そこでいろいろ復興業務をやってもらいつつ、人を雇用するということをやられています。ただ、これらの事業は儲からない。全く儲かりませんと皆おっしゃっていて、長く展開するのはかなり厳しいものがあるだろうと。地元の派遣会社は当然のことながら、ものすごく一生懸命頑張っていらっしゃいました。それによる雇用創出の効果は、非常に高いと思います。
○鎌田座長 需給調整の視点はポジティブな面ももちろんあるし、奥田先生がおっしゃったように、派遣会社あるいは労働者の供給ということから言うと、様々な問題もしっかり見た上で議論していかなくてはならない。なぜこのようなことを言ったかというと、放射能の除染労働者の問題があります。除染労働者のなり手がいないものですから、いろいろな形で集めているようなのです。まだ現在進行形の話で、もしかしたら厚生労働省もかなりつかんでおられる事実もあるかもしれませんが、問題となっているケースが非常にあるということ。ただし、除染作業で人がなかなか集まらないと。そういうことがバックボーンとしてあった上でいろいろな問題が指摘されているということなので、奥田先生が指摘されるように需給調整という、人が集まればいいではないかというだけでは問題は解決しないというのは、そのとおりだと思っています。
 さて、一応ほかにも論点はありますので、次の論点に移りたいと思います。次に、特定労働者派遣事業についての御議論もしていただきたいと思います。これについては資料3では5ページにうまくまとめておられるわけですが、これについては山川先生が御参加の以前の研究会でもかなり突っ込んだ議論がなされていたので、もしよかったらそれを御紹介いただければと思います。
○山川委員 また、先ほどの平成20年の研究会報告書では、この資料2の○、「常用型派遣については期間の定めのないものと再整理する」という提言は、残念ながら法改正には盛り込まれませんでしたけれども、この点についても私はこのような方向がやはり妥当ではないかと思います。つまり、常用型派遣の労働者のみを派遣している場合には、届出制で足りて許可制の対象にならないのは、先ほどの不安定性という観点からすると、雇用が安定した労働者から構成されている場合には許可制までは必要がないと、そういう趣旨だと思いますが、現在の常用型派遣の定義につき、5ページにもありましたし、また資料3の21ページにも先ほど御紹介ありましたように、かなり短期の有期契約が用いられているという実態があるようですので、この点は届出制で足りるとした趣旨からすると、常用型は無期と考えるのがよいのではないかと思っております。
○鎌田座長 どうもありがとうございます。この点について、先生方何か御意見はありますでしょうか。
○木村委員 私は今の御提案に賛成です。特定と一般で、常用と非常用という言い方が曖昧になっていますけれども、何が派遣事業の形を変えるかといったら、結果として長くなったかどうかではなくて、元々無期で雇っているか有期で雇っているかによって、派遣元の雇用管理が大きく変わってきますので、これを大きく分けるのであるとすれば、特定と一般というのは無期と有期で分けるべきだと考えます。それに伴って届出許可という区分を分けるのであれば、届出は無期に限定すべきだと思います。では、無期のほうまで許可制にすべきかどうかというと、許可制にすべきとまではいかなくて、届出でよいのではないかと思うのです。
 一つ気になるところは、実際に無期で派遣労働者を雇用して特定でやったときに、派遣先がほとんど、さっきの話でいくと製造業であったりするときに、業者がサービス業の扱いになってしまうと、安全衛生法とかその辺りのことで、登録している業種と実態の業種とのギャップが出てきて、安全衛生管理との差が出るので、その辺りをチェックする仕組みがどこかで必要ではないかと思います。
○鎌田座長 この点について何か。よろしいですか。もし何かあればまたあとから御意見をいただければと思います。
 次に、大きな2つ目の論点である「派遣可能期間の制限の在り方について」、皆さんの御意見を頂きたいと思います。この論点のことで事務局に確認ですが、これは、派遣可能期間の制限というのはいわゆる自由化業務については特にそうですが、26業務についてもここで御議論をいただければよろしいということですね。
○佐藤補佐 はい
○鎌田座長 ということですので、26業務の在り方についても併せてここで御議論をいただければと思いますので、よろしくお願いします。
○小野委員 派遣可能期間の制限の在り方についてですが、どういう方向から見ていくかということがあると思うのです。常用代替の考え方からいくと、ある程度その派遣の期間制限というものが必要だと思います。キャリアの面から考えたときに、じゃあどうかと考えると、なかなかこれは難しい部分がありまして、若年の人に関して言えば、これまでのいろいろな研究からも正規になっていくとかということを前提に考えたときに、一つの所の派遣先にはある一定期間定着して働いたほうが転職であったり、転換に有利であることがあります。その期間は調査研究によっても多少バラツキはあるものの、大体3年から5年程度という所があります。だからそれよりも長くなるとあまり効果もなくなってくるということもありますので、3年から5年ぐらいの派遣期間で、その辺の期間をどこで切るかは非常に難しいですけれども、設定することはあり得るかなと思います。
 安定雇用の面から考えると、特に日本の労働市場で考えると、年齢的に30、40代過ぎた時に、労働派遣社員をやっていても、3年で切られたときに、次の派遣先を見つけるのは非常に難しいということになりますので、これはかなり不安定な雇用になってしまうことがあります。私は年齢の高い人に関していえば、そういう人の場合はずるずるいける人はずるずるいってほしいと思っています。年齢で切るのは非常に難しいのですが、例えば家計の補助的に働いていらっしゃる方であまり動きたくない方、国民が全員キャリアに向かって走る人たちばかりではないので、キャリアはそこそこに。バランスのとれた仕事の在り方を追求するような方については、期間制限がないような働き方のほうがいいのではないかと思ったりもしています。
 一律にここで派遣期間制限を3年からというようにしたときに、私が恐れているのは、派遣というのはただでさえ短期的なパースペクティブで、派遣先も派遣元もその人を見るので、やはりそこで投資をしようとしないのが一つの問題点でもあります。だから3年というように期間が区切られてしまったときに、その人のキャリアを誰が責任をもって投資して能力をつけてくれるように教育訓練、能力開発をしてくれるのかといったときに、そこの期間制限があることによって何らかネックになってしまうのではないかということを懸念しております。ですので、いろいろな面から考えると期間制限が必要である面と、投資回収のことから考えると期間制限があったとしても長く設定するということを同時に考えなければいけないと思っております。
○鎌田座長 今の御発言の前提ですが、現状では業務単位で期間制限が付いていますよね。今は人単位で御説明があったので、そういう前提のお話ということで。
○小野委員 人単位にすることに私は賛成です。ですので人単位での話をしています。
○鎌田座長 前提にして、期間の長さについてどう考えるか。
○小野委員 そうです。
○鎌田座長 プラス労働者の属性のようなことを申し上げた、年齢も一つだと思います。あと、基本的に世帯単位で見ると、ある程度の所得がある人を想定された人とかそういうような御説明がありましたので、属性に応じて長さも少し考えてみたらどうかと。
○小野委員 そうですね、工夫が必要かという気がします。例えば、非常に難しいかもしれませんけれども、派遣先と派遣元の間と労働者の間である程度の合意形成というものがあって、3年経ったときに話合いをして、今後続けていくかどうか、続けたいかどうかというようなことをちゃんとオフィシャルに面接をした上で、期間制限を解くとかということはあり得るかなと。ただ、これについては派遣労働者に対して強制的になる可能性もあるので、そこら辺についてどう制度を組むかが非常に難しいところではあると思います。無理矢理期間制限なしのほうに合意させられるというような恐れというのも含んでいるなというのはあります。
○鎌田座長 ということで、非常に根本的な問題提起と私は捉えております。
○阿部委員 私は小野さんのお話には全面的に反対です。まず、人にするということが問題ではないかと。なぜかというと、もちろん人が行くわけですから、現実には、あの人は人柄がいいとか、いや、人柄はクエスチョンだとか、いろいろ問題があります。だけれども、本当のところは労働サービスを提供することであって、人を提供しているわけではないですよね。もし、人を提供することになるとこれは相当大変な問題を含むのではないかと思うのです。私は法の専門家ではないので分かりませんが、人の提供というのは相当大きな問題であろうと思うのです。職業紹介との線引もあるでしょうし、そういう意味では業務単位で仕事単位で見ていくのがいいのではないかと思っています。
 そもそも常用代替防止がなぜ派遣法の大きな柱になっているかというのは、私はよく分かりませんが、一つは派遣先の企業がどの業務を切り出すかといったときに、非常に大きなものがあるのではないかと思います。つまり、内部労働市場でできる仕事と、いや、この仕事は外部労働市場に出してもいいという仕事が、最近特にこの線引が結構明確になってきつつあって、外に出すものというのはスポットでも取引できるような仕事だし、そういう人材もいるだろうし、ということで外部に出した業務だろうと思うのです。人を外部に出しているわけではないですから。ところが、制限を長くやってしまうと、なぜ長くその業務が必要なのかとか、あるいはなぜ長くいないとその業務を活性できるような人材に育たないのかとか、いろいろな疑問が湧いてくるわけですね。そういう意味で、スポットで出せるものとか、比較的短期なものとか、あるいは一時的に必要なもの、外部で調達できるもの、こうしたことを派遣の定義と考えたらいいのではないかと思います。そういう意味でこの前の研究会で議論をしたことを踏襲するというのは私は問題ないのではないかと、個人的には思っています。
○鎌田座長 小野さんも何か言いたいことがあると思いますけれども、ほかの先生の御意見も何か。
○奥田委員 私は基本的に前回の2008年の報告書のこの該当箇所を読ませていただいて、確かに有期とは異なって、例えば活用自由で規制するという可能性も派遣に関してはあるのかなという気はしています。そこまで踏み込むかどうかは別としても、基本的にはこの枠組みとしては前回の報告書で示された常用代替を防止し得る担保方法として、受け入れ期間の制限を維持するという点で更に変更の必要性はないと考えています。
○山川委員 この点に関しては国会の附帯決議等も出されていますので、その辺りも考える必要があるかと思っています。ただ、基本的には常用代替防止という発想自身はやはり重要ではないかと思っています。あまり基本的なことをいうまでもないかもしれませんが、本人にとっての生活の不安への対応のようなことは重要であろうかと思います。余計なことかもしれませんが、更新されるかされないか、雇用機会が続くかどうか不安定ということは、生活に影響をもたらすだけではなくて、不安感から支出を抑えたり、いろいろな意味での、例えば結婚など、人生のチョイスが非常に制約されてしまうような問題があるように思います。
 また、キャリアアップについて、使用者側にとっても教育訓練投資がやりにくくなるというようなことがありますので、望ましいのは安定的な無期雇用であるのは基本的な要請ではないかと思っております。今回の有期労働契約に関する労働契約法の改正もそういう政策の一種だと思います。
 ただ、派遣における常用代替防止は前も申しましたように、かなり多義的なところがあり、この資料2についても、業務による派遣期間制限と、先ほど来議論の、人による期間制限というのもやはりちょっとミスリーディングな感じがします。というのは業務による期間制限というのは、業務に応じて期間制限をかけるかかけないかというようなお話もあるのではないかと私は理解しています。
 もう1つは、人による期間制限については、今の現行法の仕組みは、ちょっと大雑把ですけれども、職場といいますか、一定の単位において派遣労働者はそれ一定の期間以上存在してはならないという、職場単位での制限をかけているように理解していまして、その辺りについては常用代替防止の趣旨の多義性も考慮する必要があると思います。
 具体的にいうと、例えば先ほど来お話しています本人が無期労働者として派遣元に雇用されて派遣されている場合は、本人にとっては、既に無期になっているということですから不安定性は解消されています。間接雇用である場合には労働災害の問題はありますが。そうすると、派遣労働者本人が無期である場合は本人の雇用安定は確保されている。他方で、しかし全体として派遣労働者といいますか、不安定な派遣労働者が増えるということは、労働市場全体としては問題であるような感じがしますので、何らかの歯止めはやはり必要であろうと思います。その点で専門業務かどうかで切り分けるのが果たしていいのかどうか、それによって効果が上がるのかという問題があります。また、附帯決議等にもありますように、分かりにくいという問題があるということです。この点は本人にとっての常用代替の防止とそれから労働市場全体にとっての常用代替の防止があり、もう1つ、現在の仕組みは恐らく派遣先にとっての常用代替の防止であろうということではないかという感じがするわけです。
 要するに、自由化業務について、一定の単位で派遣労働者が存在してはならないということは、限定された派遣先の一定の単位内における常用代替の防止ということで、その点をどう考えるかがかなりクリティカルな感じもします。そこは派遣先のニーズとか、派遣先での意見といいますか、その辺りによってもちょっと違う扱いもあり得るかもしれないということです。そもそも常用代替防止が現行法でどうなっているのか、それから求めるべき常用代替の防止の趣旨について、ブレークダウンして検討する必要があるかと思っています。
○木村委員 まず、期間制限をする場合で、常用代替防止について考えてみました。業務を基準として期間制限をする場合と、人単位で期間制限をする場合と比べた場合に、常用代替の防止という点で期間制限をするということです。その新しい派遣法の下で、ではその派遣労働者を保護するのにどちらがいいかという話だと思うのですが、人で制限をした場合に、業務は続いていてもいいということであれば、人の入替えが起きるということで、業務自体で期間を縛れば人を入れ替えても無駄だというか、期間制限が解除されるわけではないですので、その期間制限をしたあとの出口がどうなっているかといって、現状では直接雇用をしてくださいということになっているわけです。これはあくまで可能性の話ではありますが、業務を切り口として期間制限をされている場合ですが、この人をずうっと使い続けていて、人を入れ替えても意味がないと、同じ人を使い続けていて、あるときには直接雇用しなければいけないと、そうなったら期間制限があった場合であっても、将来直接雇用しなければいけないので、何らかの教育なりをしなければいけないのではないかというインセンティブは、その後の雇用形態が非常に短い有期雇用である場合は別かもしれませんが、人で入れ替えたりするよりはインセンティブは開きやすいのではないかと、可能性の話であります。
 もう1つは業務の、専門業務か自由化業務かという話だと思うのですが、これも業務で分けられているわけです。常用代替を考えたときに、26業務と自由化で分けるのが常用代替防止にどういう実態的な効果があるのか、26が専門的な業務だから無期であって、それ以外のものは有期にして、常用代替を防止するということですが、これはこれで理屈が合っているのかどうかが少し疑問であると。専門的でない所が常用代替の防止をされているわけですけれども、そこで期間制限をかけたところで、その終わりは何かというと有期雇用の反復になると、直接雇用の反復になると。一方の専門的な人たちは無期であって、ずうっと派遣が繰り返されていて、これは実際の常用代替の防止という効果を発揮しているのかどうかが疑問であるところです。
○鎌田座長 あと何か先生方、補足はありますか。
○山川委員 先ほどの補足で、派遣先という単位における常用代替防止につき、派遣先のニーズも考慮すると言いましたが、これはもちろん派遣先の使用者だけではなく、むしろ、常用代替防止という趣旨からすると、派遣先の労使のニーズという趣旨でしたので、補足したいと思います。
○鎌田座長 はい、ありがとうございます。
 今、木村先生から26業務についての御意見もありましたので、それについて私の方で少し問題を整理しておきたいと思います。まず、前回からの繋がりで、常用代替防止をどう捉えるかが1つ大きくあります。これについては、常用代替防止ということの広い意味での常用代替防止というイメージといいますか、趣旨ということと、それから現行法において、常用代替防止はどのような仕組みの中で実現されているかということを考えると、全体で見ると常用代替防止の在り方は極めて多義的なものであって、そのどの部分についてどういったメリット・デメリットがあるかというように考えることが1つあるのではないかということです。そうしますと例えば、小野先生がおっしゃったような御提案をしたときに、常用代替防止の精神というか趣旨自体もノーだという趣旨で言っていたのか、あるいは業務から人へというレベルでの話だったのかをもっと御説明いただければありがたいかと思っております。
○小野委員 させていただきます。
○鎌田座長 そうですね。それから次に、自由化業務の26業務以外についての派遣可能期間制限について、業務から人へといった場合に、私も以前人材派遣協会の方に聞いていて、少し私自身混乱して、御質問をして分かったことですが、つまり派遣というものを本質として、阿部先生がおっしゃったように、まさに役務を提供させるために何らかの人を送るという趣旨であるのに、人単位と考えた場合に、正にその人を送るということでいえば、これは相当違う話ではないかということです。それを人材派遣協会の方に聞いたら、そういう趣旨ではなくて、まずは皆さんの理解とも確認したいと思うのですが、まさに期間限定との関連において、業務単位のものを人単位にしたらどうかという、制限の仕組みの在り方を変えるということで、派遣というのはそもそも別に期間制限がないものもありますから、それについてであっても派遣先から依頼があったときは業務単位で依頼がくるわけです。Aさんをください、送ってくださいというのはないわけです。ですからそこは少し分けて考えている。それを業務から人へといった場合に、そもそも人単位で依頼がきて、人単位で送るというようなことはないだろうということです。阿部先生がおっしゃった意味は、業務単位ということが譲れないという御趣旨は、そういったレベルの話なのか、あるいは自由化業務の所で現行のまま特定の職場の業務で期間を限定することがいいという趣旨でおっしゃったのか、その辺のところをもう一度確認できればと思います。
 それから、期間制限をする場合のその制限の長さの話も少し出ました。
 それから、26業務というのは、やはり26業務という業務で限定して、期間制限なしという取扱いをしているのですが、そもそもは、これも以前からお話になっていますように、当初、派遣法が成立したときに、ポジティブリストでいわば対象業務限定がそのまま今度は専門的業務、特別雇用管理が必要な業務ということで限定されて、それについては一定の厳しいルールは必要ないだろうというそういうような発想で置かれていたものでした。それが現在において、26業務というものを、そういった趣旨で依然として理解していくのか、常用代替防止という趣旨から26業務を限定しておく必要があるのかということが議論になっているのかなと思います。そのようなことから、少し私のほうで阿部先生と小野先生に確認をしたいのですが。
○阿部委員 そもそも派遣とは一体どういう業態なのかを考えるべきではないかと思うのです。座長がお話になったように、業務単位から人単位というのはよく分かるのですが、人単位にした結果、ずっと業務は残るわけです。それが派遣という業態にとって望ましいのかどうか。業界にとってはいいのでしょうけれど、仕事は残るわけですから。ただ、結果的に外部にずっと出されてしまうわけで、それは本来は内部労働市場にあるべきものだったのではないかとも考えられるわけです。それがいいのかどうかを考えたらいいのかなというように思います。そうだとしたら、業務がずっと残るのだったら、どの業務を外に出してもいいわけですよね。それがいいのかということです。
○鎌田座長 おっしゃっているのは、派遣可能期間制限の仕組みとして、業務単位を維持したほうがいいのではないかと。人単位にすると、その業務についてはずうっと、派遣職場になることが可能になってしまうから、それは認めるべきではないのではないかと、こういうことですね。
○阿部委員 それがその派遣という業態として、我々が望むものなのか、そうではないのかということだろうと思うのです。私は外部労働市場に切り出していることはある意味スポットで、外部労働市場は調達できる人材ができる業務だろうと想定していて、そのときにマッチングの在り方とか、あるいは人の採用の在り方とかで特に派遣というこの業態がいいというメリットがあると思っています。ただ、それでは何でも業務を外に出していいのかというのが問題ではないかと思います。これは派遣先の企業に、もう少しちゃんとどういう業務を外に出すべきかどうかを考えさせる意味でも重要なインフォメーションを出しているのではないかと思っているのです。そういう意味で人にするとどうだろうかなというように思うのです。
○鎌田座長 はい、1つは分かりました。
○小野委員 私の場合は、人というのは完全にその人を派遣して、何でも業務を好き勝手にどの業務でもやらせていいという趣旨ではなくて、当然のことながら、業務というものがありつつ、人としてキャリアを見ていくとか、人として雇用期間もそこの職場で例えば3年であったとしても、途中から入ったとしても今だったら残りが1年だったら1年しかいられないとかいうのがありますけれども、その業務でまた3年ということがその人個人でできればいいというように思っているわけです。そこは当然、その人がその業務において、契約されているのであれば、突然、全然違う業務をさせたりとか、移動させたりとかはない話だと思っております。そういう意味での業務というのは当然あるべきというように思います。
○鎌田座長 とにかく、入って来るときは当然業務で入って来るわけですよね。
○小野委員 そうです。
○鎌田座長 そのレベルも人にするわけではなくて。
○小野委員 もちろんそうです。
○鎌田座長 ただ、入ってしまったその人については、現在ですと例えば3年というとその業務に就いての3年だから、途中でAさんが2年間働いて、次にBさんが来たときにその業務については1年しか働けない、そういう仕組みですね。阿部先生は業務単位で考えれば当然そうなるのではないかということですが、小野先生は次のBさんについては、3年ということで考えてもいいのではないかと、こういうことですよね。
○小野委員 はい。
○鎌田座長 そこがはっきり違うということです。確認しながら進めていきたいと思います。
○小野委員 26業務の話ですけれども、基本的に私は法律というものがこの世の中で気持ち悪くなったら、やり方として何かおかしいなと感じたら、それは変えていかなければいけない時期にきていると思っています。今の政令の26業務というのは、特に昨今ですけれども、専門26業務という言葉に置き換えられたりしているところがあります。リストを見ても、どう見ても専門ではないというものも入っていますし、常用代替の趣旨もあって作られたリストということが忘れがちになられていたりするわけです。ということは、世の中はやはり専門業務というジョブとしての括りというものを求めてきているのかなと思っていたりもするのです。だから、まずこの業務リストを残すのであれば、それにそぐうような業務リストにするべきであると思っています。
 あるいはもうこれは、何回もこの時流にのって作り替えなければいけないものになってくるので、それか、もう一層のこと無くすのであれば、それもありかなと。ただ、そのときに、今はこの業務リストをもって期間制限をコントロールしているところもあるので、本当に専門業務であるならば、私はある程度期間制限というものを無くしてもいいと思っています。そういう意味での専門業務を作り替えるというのも1つの期間制限を入れる業務と入れない業務を分ける、峻別するためにそういうリストというものをもう一回作り替えることもあるべき姿かなと思います。ただ、このリストを作るのは非常に難しいだろうと思っています。
○鎌田座長 事務局に確認ですが、今の専門業務の専門性というか、業務リストの作り方という話の御議論で、小野先生は専門性がないものとおっしゃいましたけれども、一応、専門性があるものについて指定をしているということですので、そこは法の立場はそうなっています。
 そのことと、もう1つ、少しこの点についても確認をしておきたいと思います。専門業務については、いわゆる付随業務または付随的業務と分けるのでしたか、その分け方の説明を少ししていただけますか。
○佐藤補佐 いわゆる26業務というものがあって、それと併せて付随的業務というものが1つあります。この付随的業務とは26業務と呼ばれるものを行う上で、当然一体的に行われるようなものであって、その業務の割合が26業務の1割以下のものについては付随的業務ということで、今は期間制限の適用を受けない形での運用を行っています。
 それとは別に、26業務と自由化業務を一緒にやるようなケースもあります。例えば、例としていいかどうかは別ですけれども、事務用機器操作というものと、お茶を汲むとかそういうものを複合的にやるような、それぞれがプロフェッショナルの業務としてあって、それを一体的にやるものがあった場合に、事務用機器操作の方は26業務ですけれども、それ以外の業務は自由化業務という整理を行っている場合には、事務的には複合業務という言い方を行政としては行っています。その複合業務の場合には、26業務と付随的に行われる業務ではありませんので、全体として派遣期間の制限を受けることになり、今でいうと、原則1年で、最長であれば3年以下で派遣期間が制限されることになります。
 座長からの御質問の趣旨としてお答えしますと、26業務というものがあって、それとは別に付随的業務があって、それとは別に複合業務があります。当然、自由化業務はありますけれども、そういう分け方になっています。
○鎌田座長 要するにリストのことを考えますと、そういったことも当然視野に入れて議論せざるを得ない。実際に区分が非常に難解というか、難しい領域になっているのですね。
 ということで、実は私の議事進行の仕方もよくないのですが、もう間もなく時間になります。実際に根本的な問題でもありますので、本日、全て議論をすることも難しいかと思っております。そこで、今日の段階で、論点整理も含めて結構ですが、新たな論点、あるいはもう一度確認すべき論点ということで、御意見があれば頂いて、本日は議論途中ということで、この点については本日の議論を終了したいと思いますが、何かありますでしょうか。あとまた、この議論との関連で事務局にもし用意していただきたいような資料があれば、個別に事務局に御依頼いただいても結構ですが。よろしいでしょうか。
 それでは、間もなく予定の時間ですので、本日はこの辺りで終了したいと思います。
 次回は、今日、御議論いただきました「派遣可能期間の制限の在り方」について、更に議論を深めていきたいと思っております。
 次回の日程について、事務局から御連絡をお願いいたします。
○佐藤補佐 次回は事前に御連絡申し上げておりますとおり、2月28日14時から開催いたします。場所等の詳しいことは追って御連絡を申し上げます。
○鎌田座長 これをもちまして、第8回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

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