ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会> 第1回高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会 議事録(2013年8月9日)
2013年8月9日 第1回高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会 議事録
医政局研究開発振興課
○日時
平成25年8月9日(金)18:00~20:30
○場所
厚生労働省 講堂
○出席者
【委員】
森嶌委員長 | 稲垣委員 | 桑島委員 | 曽根委員 | 竹内委員 |
田島委員 | 田代委員 | 花井委員 | 藤原委員 | 宮田委員 |
森下委員 | 山本委員 |
【事務局】
田村厚生労働大臣 |
原局長 (厚生労働省医政局) |
神田審議官 (厚生労働省大臣官房) |
成田審議官 (厚生労働省大臣官房) |
新原審議官 (厚生労働省大臣官房) |
宮嵜課長 (厚生労働省大臣官房厚生科学課) |
土生課長 (厚生労働省医政局総務課) |
佐原医療統括管理官 (厚生労働省医政局総務課) |
一瀬課長 (厚生労働省医政局研究開発振興課) |
城課長 (厚生労働省医政局経済課) |
赤川課長 (厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課) |
宇都宮課長 (厚生労働省保険局医療課) |
村田課長 (文部科学省高等教育局医学教育課) |
板倉課長 (文部科学省研究振興局ライフサイエンス課) |
松尾課長 (文部科学省科学技術・学術政策局人材政策課) |
木村課長 (文部科学省科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課) |
○議題
1 検討委員会の設置の経緯等について
2 関係大学及び関係企業による調査状況について
3 今後の検討の進め方について
4 その他
○配布資料
議事次第 | 議事次第 |
座席表 | 座席表 |
参考人名簿 | 参考人名簿 |
資料1-1 | 設置規程 |
資料1-2 | 委員名簿 |
資料1-3 | 審議参加に関する遵守事項 |
資料1-4 | 高血圧症治療薬の臨床研究事案に係る経緯 |
資料2-1 | 京都府立医科大学作成資料 |
資料2-2 | 東京慈恵会医科大学作成資料 |
資料2-3 | 千葉大学作成資料 |
資料2-4 | 滋賀医科大学作成資料 |
資料2-5 | 名古屋大学作成資料 |
資料2-6 | 大阪市立大学作成資料 |
資料2-7 | ノバルティスファーマ株式会社作成資料 |
資料3 | 高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会 論点(案) |
委員等からの申告書 | 委員等からの申告書 |
○議事
○一瀬課長 お待たせしております。大臣、間もなく到着するという連絡が入りましたので、おくれましたけれども、第1回「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」を始めたいと思います。
委員の皆様方におかれましては、大変忙しい中、本検討委員会に御出席いただきまして、ありがとうございます。
それでは、今回第1回目でございますので、委員長が決まるまでの間、私、研究開発振興課長の一瀬が進行を務めます。
まず、委員の皆様の御紹介を私よりさせていただきます。
資料1-2をごらんください。50音順になっております。
日本製薬工業協会医薬品評価委員会委員長の稲垣治委員です。
特定非営利活動法人臨床研究適正評価教育機構理事長の桑島巌委員です。
日本医学会利益相反委員会委員長の曽根三郎委員です。
北里大学薬学部臨床医学(臨床統計学・医薬開発学)教授の竹内正弘委員です。
さわやか法律事務所弁護士の田島優子委員です。
昭和大学研究推進室講師の田代志門委員です。
全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人の花井十伍委員です。
独立行政法人国立がん研究センター企画戦略局長の藤原康弘委員です。
日経BP社特命編集委員の宮田満委員です。
独立行政法人国立病院機構大阪医療センター臨床研究センター臨床研究推進部臨床研究推進室室長の森下典子委員です。
名古屋大学名誉教授の森嶌昭夫委員です。
公益財団法人かずさDNA研究所所長の山本正幸委員です。
本日、御欠席の委員はいらっしゃいません。
引き続きまして、事務局の主なメンバーの紹介をさせていただきます。
厚生労働省大臣官房審議官の神田です。
同じく大臣官房審議官の新原です。
同じく大臣官房審議官の成田です。
そのほかの事務局からの出席者につきましては、座席表のほうで御確認いただければと存じます。
また、本日オブザーバーとしまして、文部科学省からも御出席をいただいております。
さらに、本日は議事次第の2番「関係大学及び関係企業による調査状況について」におきまして、各大学、各企業の調査の現状説明のため、京都府立医科大学、東京慈恵会医科大学、千葉大学、滋賀医科大学、名古屋大学、大阪市立大学、ノバルティスファーマ株式会社から、それぞれ参考人として御出席いただいております。
次に、配付資料の確認をさせていただきます。
1枚紙で議事次第と配付資料を記載したものがございますが、それに沿いまして御確認をください。
資料1-1「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会設置規程」。
資料1-2「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会委員名簿」。
資料1-3「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会参加に関する遵守事項」。
資料1-4「高血圧症治療の臨床研究事案に関する経緯等」。
資料2-1「『Kyoto Heart Study』臨床研究に係る調査報告」。これは京都府立医科大作成のものになります。
資料2-2「Jikei Heart Studyに関する中間調査報告概要」。東京慈恵会医科大の作成資料です。
資料2-3「VART(Valsartan Amlodipine Randomized Trial)studyに関する調査の現状」。こちらは千葉大学さんの作成資料になります。
資料2-4「SMART研究論文に関する調査概要」。滋賀医科大学さんの作成資料になります。
資料2-5「NAGOYA HEART Studyに係る問題についての検討委員会資料」。名古屋大学の作成資料になります。
資料2-6「ノバルティスファーマ社の元社員が高血圧症治療薬臨床試験論文に大阪市立大学の肩書きで参加していた件について」。大阪市立大学作成の資料になります。
資料2-7はノバルティスファーマ株式会社作成で「第1回高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会説明資料」。
また、資料2-7の別添ということで、A4の紙がついております。
資料3「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会論点(案)」。こちらは事務局で作成したものになります。
不足、落丁等ございましたら事務局までお知らせください。よろしゅうございますか。
それでは、続きまして委員長の選任をお願いしたいと存じます。
資料1-1の本検討委員会の設置規程第2条第2項に基づきまして、委員長は委員の互選により選任することとされておりますが、どなたか御推薦ございますでしょうか。花井委員、お願いします。
○花井委員 医薬品行政に造詣の深い森嶌先生にお願いしたらどうかと思いますが、いかがでしょうか。
○一瀬課長 ただいま花井委員より、森嶌委員を御推薦される旨の御発言がございましたが、委員の皆様いかがでございますでしょうか。
(拍手多数)
○一瀬課長 御異議ないようでございますので、森嶌委員に委員長をお願いいたします。森嶌委員が御選任されました。
それでは、以降の議事進行につきましては森嶌委員長にお願いしたいと思いますので、委員長席にお移りいただけますでしょうか。
(森嶌委員、委員長席へ移動)
○一瀬課長 委員長、済みません。御就任に当たりまして御挨拶をお願いします。また、議事進行をお願いいたします。
○森嶌委員長 皆様の御推薦によりまして委員長に就任いたしました。
今までも厚生労働省に関わるいろいろな問題がございましたけれども、今日もテレビなどもたくさん入っていますように、この事案につきましては、社会的に大きな注目を集めております。この事案についてこれから審議をしていただくわけですが、どういうふうにこれを進めていくかということにつきましては、内容的に難しい問題があるだけでなく、社会的な影響も多かろうと思いますので、私の責任も重いのみならず、委員の皆様の責任も大変重いことだと思います。
私は法律家でございまして、C型肝炎など今まで厚生労働省に関わるこのような問題を扱ってまいりました。今回も、できるだけ真実を追究すると同時に、フェアに公正に、しかも従来の法律上の問題をきちんと押さえて処理するだけでなく、今後あるべき法律のみならず、倫理問題についても、どうあるべきかということについて、皆さんの御意見を十分聞きながら、解決の道を探っていきたいと思っていますので、どうぞ御協力のほどよろしくお願いいたします。
それでは、早速議事にとりかかりたいと思います。まず、設置規程の第2条3項をごらんいただきますと、委員長の職務を代理していただく方を選任しなければならないわけでございますが、曽根委員にお願いをしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
また、本検討委員会の検討内容を勘案いたしますと、ノバルティスファーマ株式会社及び関係6大学と委員との利益相反について確認する必要がございます。お手元の資料1-3、審議参加に関する遵守事項に基づきまして、各委員の利益相反を既に申告していただいておりますが、各委員の皆様、これでよろしゅうございましょうか。
(「異議なし」と声あり)
○森嶌委員長 それでは、事務局から。
○一瀬課長 委員長、申しわけございません。今、大臣が到着しましたので、大臣から御挨拶を申し上げたいと思います。
○森嶌委員長 では、大臣に御挨拶をいただいて、その後にお願いしたいと思います。
それでは、大臣よろしくお願いいたします。
○田村厚生労働大臣 どうもおくれてまいりまして、申しわけございませんでした。
きょうは長崎の平和祈念式典でございまして、日程的におくれましたことをまずお詫び申し上げたいと思います。
委員の皆様方には、第1回高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会ということで、御多忙の中お集まりをいただきまして、まことにありがとうございます。
本委員会は御承知のとおりでございまして、ノバルティス社の降圧薬ディオバンの効果を調べる臨床研究の中におきまして、いろんな問題が生じてきたということでございまして、東京慈恵会医科大学、京都府立医科大学、この2つの大学の内部調査の中におきまして、1つはデータの改ざん、操作があったのではないか。こういうような報告が出てまいりました。
結果的にデータ自体、論文のデータとカルテの情報の間に乖離があったわけでございまして、これに対してノバルティスファーマ社も第三者による調査をされたわけでありますが、その報告の中において元社員の方がデータ等々にはかかわっていないという話でございましたが、大学側の発表とはここが違っておるということでございまして、このような事態を重く受けとめる中で今回の検討会をお願いさせていただきました。
当然のごとく、論文が違っていたということになれば、医師の処方行動も変わってくるわけでございまして、結果といたしまして患者の方々にとってみれば大変な混乱と不信感、不安を持たれている。大変これは大きな問題でありますし、一方で閣議決定をいたしました日本再興戦略の中におきまして、画期的な医療技術の実用化というものを挙げておるわけでありますけれども、そのもとになります臨床研究が信頼性がないという話は大変大きな問題になってくるわけでございますので、我々は遺憾に受けとめさせていただいております。
このようなことを踏まえながら、この検討会で9月末を1つめどにしていただきながら、その中においての原因の分析、当面の対応、さらには再発防止策等々をおまとめいただければありがたいと思っている次第でございます。
あわせまして、やはり真実はどういうところにあったのかというところ。これをある程度我々も調べていかなければならないわけでございまして、そのような意味から誰がどのような意図を持って、何のためにこのようなことが起こったのかということも含めて、関係者の方々のヒアリングも含めて、そのような真実がどこにあるのかということもお調べいただければありがたいなと思っている次第でございます。
我々もいただきました結果をもとに、厳しく対応してまいりたいと思っておりますけれども、いずれにいたしましても臨床研究が不信を持たれたことは日本にとって大変大きな問題でございまして、この信頼回復のためにぜひともお力をお貸しいただきますように、心からお願いを申し上げて、冒頭の御挨拶にかえさせていただきたいと思います。どうかひとつよろしくお願い申し上げます。
○一瀬課長 大臣は所用のため、中座させていただきます。
事務局、もう一人メンバー紹介させていただきます。厚生労働省医政局長の原でございます。
それでは、委員長にお返しいたします。
カメラはここまでとさせていただきます。
(報道関係者退室)
○森嶌委員長 それでは、先ほどのところで、遵守事項の利益相反のところまでは終わったということで次へまいりまして、各委員の申出状況についてまでは公開することでお願いをしたいと思います。
それでは、議事に入らせていただきます。議題1でございますけれども、検討委員会の設置の経緯についてです。委員の皆様は報道等で事案の概要については既に御存じのことと思います。しかし、報道では全体像がよくわからないと思います。そこで資料1として、事務局のほうで事案の概要について高血圧症治療薬の臨床研究事案に係る経緯としてまとめてくださっていますので、議論に先立ちまして説明していただきたいと思います。
それでは、事務局から説明してください。
○河野治験推進室長 事務局でございます。
それでは、お手元の資料1-4に基づきまして、高血圧治療薬の臨床研究事案に関する経緯などにつきまして、簡単に御説明させていただきたいと思います。
「1.主な経緯等」といたしまして、まず我が国ではバルサルタンにつきましては平成12年9月に承認されておりますけれども、平成14年以降、東京慈恵会医科大学さんが中心になりノバルティスファーマ社の降圧剤バルサルタンと、従来の降圧剤の効果を比較する大規模臨床研究が開始されております。その後、千葉大学、滋賀医科大学、京都府立医科大学、名古屋大学におきましても、バルサルタンを用いた大規模臨床研究が実施されております。
1枚おめくりいただきますと各研究の概要といたしまして、各大学で行われた研究がどういうものだったのか、実施期間、対象症例数、追跡期間、どういったようなデザインであったのか、あるいは研究結果はどうであったのかということを簡単にまとめておりますので、御参考にしていただければと思います。
1枚目にお戻りいただきまして、平成24年以降の状況でございますが、京都大学のドクターより東京慈恵会医科大学、京都府立医科大学及び千葉大学が中心となって実施された研究論文について、血圧値に関する疑義があるといった御指摘がございました。同年12月以降におきましては、日本循環器学会誌、欧州脳心臓病学会誌等におきまして、相次いで京都府立医科大学の関係論文が撤回されておるといった状況になってございます。
平成25年5月になりまして、これらの研究に関しましてノバルティスファーマ社の当時の社員が、大阪市立大学の非常勤講師の肩書きでかかわっていたという御指摘があったことから、厚生労働省よりノバルティスファーマ社から事情聴取した上で、事実関係の調査及び再発防止等について指導を行っております。
また、これ以降、関連大学に関しましても調査等の実施につき指導をさせていただいております。
それらを踏まえまして、7月11日でございますが、京都府立医科大学が内部調査の結果を公表し、7月29日にはノバルティスファーマ社が内部調査の結果を公表し、7月30日には東京慈恵会医科大学が内部調査の結果を公表してございます。
簡単に京都府立医科大学、ノバルティスファーマ社、東京慈恵会医科大学の調査の結果がどういう内容であったのか御報告いたしますと、まず京都府立医科大学におきましては一部のカルテ情報と論文作成に用いられた解析データ等の比較を外部機関により実施しており、その結果でございますけれども、脳卒中や狭心症といったようなイベントの発生について、バルサルタン群でイベントを減少させ、非バルサルタン群ではイベントを増加させるといった方向の操作があったというような結果を公表されております。
また、血圧についてはカルテと解析データでおおむね一致はしていたけれども、血圧値の追加修正があり、この結果、論文の結論は今回のカルテの調査からは指示されず、結論に誤りがあった可能性が高いといった御報告を発表しているところでございます。
東京慈恵会医科大学におきましては、やはり一部のカルテの情報と論文作成に用いられた解析データとを比較したところ、脳卒中などのイベントにつきましてはカルテの記載とおおむね一致していたという状況ではあるものの、血圧値についてはカルテの記載と異なるものが相当数あり、データ操作が人為的になされたと思われるということ。この操作による結果への影響は未知数であり、論文の結論の正当性は判断することはできないといった趣旨の公表をしていただいております。
また、ノバルティスファーマ社の公表の状況でございますが、第三者による関係者への聞きとり調査を実施したところ、元社員による意図的なデータ操作や改ざんを行ったことを示す具体的な証拠は発見できなかったといった発表をされているところでございます。
これまでの経緯等については以上でございます。
○森嶌委員長 それでは、ただいまの御説明で何か御質問、非常に簡単な御説明ですから質問を始めると大変長くなるでしょうが、今の段階で何かございますか。よろしければ時間が押していますので、先に進ませていただきます。
次に、議題2「関係大学及び関係企業等による調査状況について」に移らせていただきます。今回、関係する大学及びノバルティスファーマ株式会社の方に参考人として御参加いただいておりますので、順番にそれぞれが主体となっておられる調査につきまして、現時点での状況についてお聞かせいただければと思います。
それでは、資料順に発表をお願いできればと思います。
まず、資料2-1に基づきまして、京都府立医科大学の伏木参考人から説明をお願いいたします。時間は12分程度となっております。短こうございますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
○伏木参考人 京都府立医科大学の伏木でございます。よろしくお願いいたします。
資料2-1に基づきまして御報告をさせていただきたいと思います。
今回の研究の概要でございますが、Kyoto Heart Study、以下KHSと申し上げますが、先ほど来、御説明のございましたようなバルサルタンが通常の降圧効果に加えまして、心血管イベントの発生を抑制する効果を示すかどうかを検証することを目的といたしました臨床研究として、京都府立医科大学の大学院、循環器内科学、松原弘明元教授らによって計画されました。2004年1月から2007年6月にかけまして、京都府立医科大学附属病院並びに関係病院合わせて31の施設から患者登録がなされまして、2008年から2012年にかけまして、研究デザインに関します論文並びにその解析結果をまとめた論文が計7報発表されました。
本臨床研究におきましては、高血圧の治療を必要とする患者さん、特にこのスタディでは心血管のリスク要因を持った患者さんですが、そのような方をバルサルタン上乗せ投与群と対照群の投与群それぞれ約1,500名でございますが、ランダムに割りつけて、約3年間の観察期間を設けまして、その間に発生した心血管イベント、具体的には狭心症、心筋梗塞、心不全、脳卒中などでございますが、その発生を評価して、イベント抑制に対する効果を解析したものでございます。研究デザインとしてはPROBE法が採用されております。
本臨床研究のメイン論文はEuropean Heart Journalの2009年に発表されておりますが、その中ではバルサルタン上乗せ投与治療が対照薬投与に比べまして心血管イベントの発生を有意に抑制した。リスク低下率は45%であると結論が示されております。
なお、このKHSに関しまして発表されました論文はデザイン論文1編を除きまして、6論文が全て現在時点では撤回されていることを付記いたします。
「2.研究資金の性質・金額と流れ」でございます。KHSの支出に関する補助簿が大学の事務局を含めまして残っておりませんが、関係者への聞きとり調査によりますと、研究資金の財源は奨学寄附金であったということでございました。
また、聞きとりの中で各種のKHSの中で設けられております委員会、出席された委員への謝金あるいは会場費、また、協力医療機関へのデータ入力用のコンピュータの配備あるいはデータ管理、開発に係る費用といったものが支出されたという証言を得ておりまして、現在、支出伝票等について大学のほうで調査をいたしております。
なお、資金の流れといたしましては、企業から申し出のございました奨学寄附金を当時私どもの大学が法人化いたしました2009年でございますので、その前からこのスタディは始まっておりますので、京都府医学振興会というところで受け入れまして、各教室に配分をしていた。その奨学寄附金に関しましては特定の人に限られたものではなく、研究室全体の全般的な研究のために使用されていましたけれども、各教室で直接的に執行されておりまして、精算報告は京都府医学振興会に最終的になされていたということでございます。
「3.これまでの経緯」でございますが、先ほど既に事務局から御説明がございましたが、この論文につきましては懸念が表明されておりましたけれども、昨年12月末に日本循環器学会の学会誌の編集委員長等から、サーキュレーションジャーナルに掲載されておりました2論文を撤回したというお知らせがございまして、調査をしていただきたいという文書が届きまして、学内調査をいたしましたが、その結果は本年1月末に故意の捏造は認められないという報告をさせていただきました。
その後、2月15日になりまして日本循環器学会から元データに踏み込んだ詳細な調査を実施するよう依頼がございましたので、それを受けまして私たちの大学の中に研究活動に関する品質管理推進本部を設置し、あわせてKHSに関します精度検証チームを立ち上げました。
5月15日に登録症例の調査をカルテにさかのぼって実施するという目的を持ちまして、公益財団法人先端医療振興財団と委託契約を締結いたしまして、京都府立医科大学附属病院で登録されました症例につきまして調査を開始いたしました。
一方、データ記録収集あるいは解析上の不正の有無、利益相反の観点からの調査を実施するために、本学の臨床研究利益相反委員会と精度検証チームの合同調査委員会を設置いたしまして、関係者に対するヒアリング調査等を開始いたしました。
先ほど申し上げました先端医療振興財団へ委託しておりました1次調査の結果報告を受けまして、合同調査委員会でのこれまでの調査結果をあわせまして、先月7月11日に調査報告を公表いたしました。その結果が4でございます。
先ほど既に御説明申し上げましたが、カルテとの突き合せ等のデータの検証が1つ大きな目的でございましたし、2つ目としましては関係者へのヒアリング等でございます。
調査結果でございますが、まずデータ操作の観点からということで御説明申し上げます。
京都府立医科大学附属病院からKHSに登録されました223症例につきまして、論文作成に供されたと思われます解析用データセットとカルテ調査結果の間で、複合イベントの発生数に相違がございました。3ページ目の表のとおりでございます。カルテに記載のなかった複合イベントが解析データに存在する。あるいはカルテに記載のあった複合イベントが解析データになかった。このような例が合計34例存在することが判明いたしました。
この表をごらんいただきましておわかりいただきますように、このようなデータ操作はバルサルタン投与群でイベントを減少させ、対照群ではイベントを増加させる。このような方向の操作でありました。
また、223症例につきまして、複合イベント発生率に関する解析を行いましたところ、3ページ中ほどの上段のグラフでございますが、解析用データでは左側のグラフでございます。赤のバルサルタン投与群と黒の対照群。この両者の間で比較いたしますと、バルサルタン群で有意にイベント発生が抑制されていましたが、右側のカルテ調査結果で調べますと、イベント発生に両者の間で有意な差は認められませんでした。
その次のグラフでございますが、これはKHS全体での複合イベント発生について解析用データとウェブ入力データを比較したものでございます。ウェブ入力データと申しますのは、医師が各登録施設から入力したデータでございます。この両者を比較いたしますと、左側の解析用データで対照群を比較いたしますと、有意にイベント発生が抑制されておりましたけれども、ウェブ入力データではイベント発生率に有意な差は認められませんでした。これはカルテにさかのぼったものではございませんが、既に提出されたデータを比較したものでございます。
3ページ目の下のほうでございますが、解析用データセットとカルテ調査結果の間で血圧値の追加、修正がみられたということもわかりました。
以上のように、カルテとの照合による今回の調査から、解析用データに操作が認められている。カルテ調査とウェブ入力データを比較いたしますと差異がほとんどございませんでしたことから、最終解析データを作成するに至る過程で何らかの操作が行われたことが疑われました。
4ページ、関係者へのヒアリング調査等から今、申し上げましたデータ操作には解析担当者及び事務局責任者もかかわることができたと推測されました。
4ページの中ほどは、解析用データセットから今回のカルテ調査を実施した223症例を除きまして、その後、カルテの調査で得られた正確なデータを挿入したところですが、そういたしましてもバルサルタン群と対照群との有意差が消失しませんでしたので、京都府立医科大学以外の登録施設での症例に関しても、何らかのデータ操作が行われていた可能性が示唆されます。
4ページの下でございますが、利益相反の観点。これは先ほど既に事務局から御説明ございましたことでございますけれども、ノバルティスファーマ社の元従業員の方が統計解析を行っておられ、また、エンドポイント委員会等の委員会にも出席され、事務局的機能を担われていたということでございます。
5ページ、元従業員の方への事情聴取はまだ実現できておりませんけれども、現在ノバルティスファーマ社と調整中でございます。
今後の調査予定でございますが、関係者のヒアリングを続行して、可能な限り事実関係を明らかにしたいと思っておりますのと、経理状況をさらにつまびらかにしたいと考えております。
再発防止策につきましては、まず学長の給与の一部返納ということと、関係者への処分、再発防止として臨床開発研究支援センターを創設したい。そのほか幾つかのことを書いてございます。
以上のような状況でございます。
○森嶌委員長 ヒアリングがたくさんありますので、できれば後でまとめてと思いますけれども、ただいまの御説明に対して今、聞いておきたいことがございましたらどうぞ。
○曽根委員 1つ質問させていただきたいと思います。
臨床研究はかなりお金がかかるということで、産学連携もいろいろな形でなされています。産学連携を適正に行う上では倫理審査が非常に重要だと思うのです。最初にこのプロトコルが提出されたときに、倫理委員会の審議の内容とか結果についてはどういうようになっていたか、教えていただきたい。
○伏木参考人 2003年でございますけれども、倫理審査はもちろんさせてもらっておりますが、その案件につきましては京都府立医科大学の症例についてのみ提案されてきたという、そのようなものでございました。
それから、当時議事録を残す形にはなっておりませんでしたので、詳細なことについてはわかりませんけれども、承認をいたしております。
○曽根委員 ということは、多施設で臨床試験、特に大規模の場合には多施設間の連携が大切であり、一番気になるのはスポンサーがあるかどうかが非常に問題だと思うのです。そういう点では議論があったという理解でよろしいでしょうか。
○伏木参考人 特にその点について記載はございませんでしたので、議論になったかどうかについてははっきりしたことはわかりません。
○曽根委員 もう一つは利益相反という観点から、2006年に医科系大学を対象とした利益相反指針策定のガイドラインが出ておりますが、先生のところは実際いつごろ利益相反委員会を立ち上げられたのか。今後いろんな臨床試験をされると思うのですが、それに対して利益相反委員会、倫理委員会がどういう形で審査をし、適正なシステムづくりをなされていくのか。再発防止策で各委員会をいかに動かしているか、それらの点が見えなかったので、教えていただきたい。
○伏木参考人 私どもの大学では2008年に利益相反マネジメントを始めまして、利益相反委員会をつくらせていただきまして、全ての教員、研究者に関しましては年に1回、利益相反状況を報告する。この報告基準につきましては、先生のほうでお示しいただきました自己申告書の各カテゴリの金額を採用しておりますけれども、それが年に1回。それから、臨床研究の申請をされるときには、必ずその臨床研究に携わっている方全員の利益相反状況を報告させて審査をあらかじめする。このように今やっております。
○森嶌委員長 桑島委員、どうぞ。
○桑島委員 お聞きしたいことは、論文の中にData and Safety Monitoring BoardとStatistical Analysis Organizationとしてルイ・パストゥールセンターというものがありますけれども、これはどういう機関でしょうか。
○伏木参考人 ルイ・パストゥール研究センターは京都にございます私立の医学研究センターでございます。
○桑島委員 理事長はどなたですか。八木さんというのはどういう方ですか。
○伏木参考人 八木さんというのは、その研究員です。
○桑島委員 先ほどの京都医学振興会とは全然関係ないですね。
○伏木参考人 はい。全く違う独立した機関です。
○桑島委員 そうするとデータは記録員が入力したものを、ここのルイ・パストゥール研究所に送ったということでよろしいでしょうか。
○伏木参考人 そこは実は調べましたところ、論文に記載されておりますルイ・パストゥール医学研究センターの八木さんという方のヒアリング等を行いましたのですが、統計そのものは一切やっておらないと。ただ、Data and Safety Monitoring Boardには出ておられる。
○桑島委員 名前だけということですか。
○伏木参考人 その委員会には、3回開かれておりますけれども、それには出られて、一定の意見はおっしゃったと聞いています。
○桑島委員 そうすると、データはどのような流れになっていますか。
○伏木参考人 データに関しましては、ノバルティスファーマ社の元社員の方が大阪市立大学の講師ということで、そちらのほうが独立解析機関としてされていたと、そういうことでございます。
○桑島委員 それは京都府立の記録員が入力したデータを、メールか何かで大阪市立大学の元社員のところに送ったということですか。
○伏木参考人 データの流れにつきましては、データ管理センターが神戸CNSというところでございますが、そのデータ管理センターから最初のほうの状況をいろいろ調べた限りでは、京都府立医科大学の循環器内科のKHSの事務局に送られていたというのが1つわかっておりますが、それがさらにノバルティスの元社員の方のところに送られている。そういう流れは1つございました。
○桑島委員 すると、神戸CNSというのがまたよくわからないのですけれども、これはどういうところでしょうか。
○伏木参考人 個人経営の会社でございまして、ヒアリング等でわかっておりますのは、ノバルティス社の元社員の方と近い関係の方である。元同僚ということでした。
○桑島委員 そうすると、ほとんどノバルティス社関係ですね。
○伏木参考人 そのあたりはわかりませんが。
○竹内委員 神戸CNSはデータセンターという形で役割を果たしているのでしょうか。
○伏木参考人 はい。データ管理センターです。
○竹内委員 ということは、データが全てそこで管理され、最終的な解析データは神戸CNSがうまく患者さんのデータが正しいかどうか。先生が打ち込んだとしても人間として間違いがございますので、それは本当に間違ったのか、正しいのか、もし間違っていれば神戸CNSの方から先生に直接問い合わせて、そこで一元管理をしているという理解なのですけれども、ある程度そこでデータはロックできると思っているのですが、そういうことは一切されなかったのでしょうか。
○伏木参考人 データ管理センターの役割としては、割りつけのノウハウをお持ちだということで、それでバックグラウンドのデータをきっちりそろえながら割りつけるというノウハウに基づいて、データ管理センターへ各登録施設からの患者さんのデータが流れていた。その集められていたものが毎月月次報告という形で事務局に送られていたと聞いております。
○竹内委員 割りつけということは、最小化法という非常に難しい割りつけ方法を使っておりまして、そこで神戸CNSの人が、私は統計学者なのですけれども、できるとは思えないのです。もしやった場合には、その割りつけの後、バリデーションをかけるために何回もシミュレーションをやりながら、果たして今の割り付けプログラムで、3,000例の大規模な状態でうまくいっているかというバリデーションをかけた上でようやくスタートすると思っているのですけれども、そういう事実はあるのでしょうか。
○伏木参考人 そこについては聞いておりません。
○山本委員 そもそもKyoto Heart Studyが始まった時点で、どうしてディオバンを選ばれたのかという経緯はわかっているのでしょうか。その当時これが唯一のアンジオテンシンの受容体ブロッカーだったのかどうかとか、事前に血管イベントに対して何か影響がありそうだという、普通、実験を始めるときはプレリミナリーなデータがあって大きな実験を始めると思うのですけれども、そういった状況というのはどうだったのでしょうか。そのときに会社側から働きかけはなかったのかとか、その点をお願いします。
○伏木参考人 ヒアリングでこれまでのところ聞いておりますのを総合いたしますと、当時、循環器内科におられました松原元教授は、着任されたのが2003年4月からでございますが、関係病院との連携を模索しておられたということが1つあったようです。
もう一つは、ノバルティスファーマ社からのお話もあったのだろうということで、その両者の思いが一致したと私たちは推測しております。
○田代委員 今の件に関して、恐らく調査中だとは思うのですけれども、研究計画の企画立案というか、プロトコル作成の段階に、ノバルティスファーマの元社員の方がどのような形でかかわられていたというのをもしおわかりでしたら教えていただきたいと思います。
○伏木参考人 直接その元社員の方にまだヒアリングはできておりませんので、確認はできておりませんが、これまでヒアリングいたしました範囲では、その方がかなり中心的にかかわられたと聞いております。
○稲垣委員 テクニカルな短い質問であれなのですが、解析用データセット及びウェブ入力データセットというところが先ほどのデータの流れの中で、どこで、どの段階でつくられて、どこからどこに渡されたものが事務局に残っていてというところはわかりますでしょうか。
○伏木参考人 大変重要なポイントだと私どもは認識しておりますが、事務局に残っておりましたのは解析用データセットとウェブ入力データセットの2つでございまして、それぞれの日にちは4ページのところにも書いてございますように、解析用データセットが2009年4月1日、ウェブ入力データセットが2009年1月21日ということでございますが、特にこのウェブ入力データセットが本当に最終のデータかどうかということについては、断定はできない状況でございます。それはなぜかと申しますと、この1月21日以降、まだ入力できる状態にあったということが別の資料からわかっておりますので、1月21日のデータが最終とは言えない。
もう一点、2009年4月1日の解析用データセットに関しましても、実はエンドポイントの判定が4月1日以降にされているという別の資料がございまして、そのような状況でございますので、これが最終に近いことは論文の図表等から十分推測できるのですけれども、本当の最終データとは言えないだろうと考えております。
○稲垣委員 ということは、作業中のデータが一旦送られてきて、残っていたものの可能性が高いということでしょうか。
○伏木参考人 はい。そういう可能性はもちろんあると思います。
○宮田委員 2つ簡単な質問があります。
今の段階でいつごろデータ操作がなされたと今、調査委員会の中では考えられているのかが1つ。それと、先ほどKHSの事務局からノバルティスの元社員にデータが送られていたとおっしゃっておりましたけれども、その際のEメールアドレスとかそういったものは確認なさっていらっしゃいますか。
○伏木参考人 最初のほうでございますが、いつデータ操作がされたかについては全くわかりませんけれども、ただ、ステップとしましては最終の解析データがつくられるに至る、そこのところでされていたのだろうということでございますが、日にち等についてはわかりません。
Eメールアドレスについては調べております。
○宮田委員 大阪市大のEメールアドレスなのですか。
○伏木参考人 幾つかアドレスをお持ちだったようですので、そのうちの1つだということでございます。
○宮田委員 ノバルティスではないのですか。
○伏木参考人 ノバルティスではなかったと思います。
○宮田委員 わかりました。ありがとうございます。
○藤原委員 2点ほどお聞かせください。
まずこういう試験はほかの領域でも結構やられている話なので、まずこういう試験が進捗中にいろんな委員会が進んでいると1ページ目に書いてありますけれども、そういうときに労務の提供、ノバルティスさんの京都の支社の方々が大体受けつけとかいろんな小回りをしたりとかすることがよく昔はあったと思いますけれども、そういうところはヒアリングで聞かれたのかというのが1点。今、議事録等ももしあれば、わかればということです。
○伏木参考人 KHSの大学の事務局でかかわった方の複数のヒアリングをいたしましたけれども、仰せのとおりノバルティスファーマ社のMRの方とかが例えばホテルの予約等について動かれたという情報は聞いております。
○藤原委員 もう一つは奨学寄附金です。これが一番問題なところだなと私は思っているのですけれども、奨学寄附金がここに書いてあるのでは京都府医学振興会で受け入れて、各教室に配当として配分されていたというのが理解ができないので、言葉の整理だけしておきたいのですが、これは通常だと奨学寄附金というのは大学の教授あてとか、各研究室の研究代表の講師とか、そういう方々の名前で入って、それぞれの先生方の講座とか研究グループで使われるというのが割と日本の大学では多いと思うのですけれども、京都府立医大の場合は1カ所に集めて、それを配当金か何かでさらに再配分するという仕組みだったのか、それとも入ったものは講座に全部流れる、あるいは研究グループに入っていくものだったのかというのを教えてほしいです。
○伏木参考人 基本的には医学振興会で通帳等をつくりまして、その通帳の中からいわゆる間接経費的なものは差っ引いて、その残りを各教室にそのまま渡していたという状況でございます。経理そのものは各教室の中でやっておられて、最終的な報告は医学振興会にするという状況でございます。
○曽根委員 ちょっと追加でよろしいですか。今の寄附金のことですが、国立大学では教授の名前で寄附されることはありません。学長あるいは病院長とか医学部長とかの形で受け入れがなされているとご理解いただきたいと思います。
○花井委員 1つだけ、いわゆるウェブ入力データセットというのが、基本的にはほかの施設ですね。ほかの施設のカルテは参照できない分、ここが多分そのデータがそこにあるというふうに推論した結果で分析されていると思うのですけれども、それ自体はカルテに突き合せても、このデータとそんなに差がないかどうかというのは必ずしも検証できていないと思うのですが、今後もっと協力施設のカルテも含めてきっちりと検証して、その入力した担当者もいろいろおられたと思いますし、そこにもしかしたらメーカーの人も関与したかもしれないとか、そういう部分も重要だと思うのですけれども、なかなか大学外のことで難しいと思いますが、そこについてはどうお考えになっていますでしょうか。
○伏木参考人 4ページの真ん中のところのグラフがございますように、府立医科大学附属病院以外で登録されたものにつきましても、恐らく操作があっただろうということは推測しておりまして、ただ、今、御指摘のように他病院でございますので、実際にカルテを調査するのは難しいというのは1つあると思いますし、それから、カルテの保存期間等の関係もございますでしょうし、さらに先ほど御説明いたしましたけれども、外部機関に委託して今回のことをやりましたので、そういった面でも経費等の問題もございますので、現時点での私たちの計画といたしましては、他病院でのカルテに戻った調査は特にする予定はございません。
○森嶌委員長 それでは、よろしゅうございましょうか。またいずれお聞きする機会があると思いますので、次の東京慈恵会医科大学の橋本参考人から資料2-2につきまして説明をお願いいたします。時間は一応12分となっておりますので、よろしくお願いいたします。
○橋本参考人 今回の調査委員長を務めました医学科長の橋本和弘です。
資料2-2をもとにお話させていただきます。
調査の手順ですが、資料収集から始まりました。Lancet掲載論文。研究実施計画書を含むJikei Heart Studyに関して作成された文書類。最終統計用データ。これは統計解析に使用された最終的な患者データ3,081人分です。大学保有データ。データセンターから大学に送付された患者データで、統計解析に使用される前段階のもので、今回は2種類見つかりました。○1は2002年9月時点での671人分、○2は2005年9月時点の3,081人分です。ただし、○2はデータの一部が欠落しておりまして、全て利用できるものではありませんでした。次に、患者カルテ485人分。これは大学の保有データ○1 671人と、照合できた慈恵医大附属病院、4病院のカルテでございます。
調査内容のうち、資料の分析ではデータ再解析は学外の専門家に委託いたしました。つぎに多数の関係者に統計解析担当者も含めて面接調査を行いました。また、エンドポイント委員会のメンバー、データセンターへは質問状を郵送するという形での調査を行いました。本研究の実態を調査し、論文中の図表、データ等の正確性を検証するというのが調査内容の最大の目的であります。
調査結果に移ります。本研究の概要ということで、これは京都府立医科大学とほぼ同じでありますので、ここは飛ばさせていただきまして、2ページ目をごらんください。研究成果。この論文はLancetに掲載された論文です。その論文の結論ですが、一次エンドポイントの発生件数はバルサルタン投与群において非投与群に比較して少なかった。この違いは二次エンドポイントで見られた脳卒中及び一過性の虚血発作、狭心症、心不全の減少によるものであったとし、バルサルタンはほかの降圧剤より脳卒中、狭心症、心不全の予防に有効である旨の結論を導いている。
本研究の問題点を提示いたします。
本研究に前後して、研究統括責任者の講座にはバルサルタンの販売会社であるノバルティス社から多額の寄附金が提供されている。そして、本研究において患者データの統計解析は全てノバルティス社の元社員に任されていた。研究者らは統計解析には一切関与しておらず、論文に掲載されている表及び図も全て元社員から提供されたものであり、共同執筆者が作成したものではなかった。本研究の構図として研究者は統計に関与すべきではなく、また、これだけ大規模の前向き研究の場合、統計学の知識が極めて高度に要求されることは周知の事実であり、自分らの統計能力をはるかに超えるレベルであることから、全て統計解析は担当者に任せるべきであると認識していた。
加えて、論文においてはデータ解析にノバルティス社社員が関与した事実が伏せられておりまして、データ解析は大阪市立大学統計解析グループが担当したが、本グループは本試験実施グループ及び基金提供者、この場合はノバルティス社でありますが、それとは独立していた。資金提供者は試験計画、データ回収、データ解析、データ解釈及び報告書作成には関与しなかったと論文中には記載されておりますが、これは事実と異なる記載がなされていたと判断いたしました。
バルサルタンの効能に関する研究において、最も重要なデータ解析をノバルティス社の現役社員が身分を伏せて行うということは、そもそも研究の公正性、客観性を疑わせるものであり、本研究は基本体制において欠陥があったと言うべきである。
データ解析の件です。最終統計用データの再解析は論文作成のもととなったデータでありますが、最終統計用データを他学の統計専門家に委託して再解析を行ったところ、論文中の主要な図表の数字と全て一致した。したがって、最終統計用データを用いて統計解析が行われ、その解析結果が論文の図表に採用されていることが確認された。
論文中のイベントのデータ、これは論文中の図3なのですが、その正確性について、最終統計用データと大学保有データ○1との照合を行ったところ、イベント内容に関して1件を除いて不一致の存在はなかった。1件についてはイベント登録用のC票の提出があったものの、エンドポイント委員会においてイベントとして採用されていなかったものと思われる。
大学保有データ○1に基づき、そのうち大学附属4病院の患者を特定してカルテ485人分を入手し、イベントに関するカルテの記載と最終統計用データの照合を行った。カルテ患者485人に対応する最終統計用データにイベントが存在したのは44人でありました。当該44人のカルテには全て対応するイベントの記載があり、カルテの記載の裏づけを欠くイベントは存在しませんでした。他方、カルテにイベントらしき記載があるにもかかわらず、最終統計用データにおいてイベントとして採用されていなかった例が7件ありました。そのうち大学保有データ○1の中には6件ありました。うち1件は前述のとおりエンドポイント委員会において不採用とされたものと考えられます。残る6件はいずれもイベントは狭心症でありましたが、食い違いの原因としては担当医師よるイベント登録票の報告漏れが考えられるが、カルテの内容を精査したところ、担当医師による意図的なイベント隠しとは考えられませんでした。この6件の内訳はバルサルタン投与群3件と、非投与群3件で同一でありました。その点から今回のイベントに関しては人為的な操作は行われていないという判断に至りました。
論文中の血圧データ(表3)の正確性について、大学保有データ○1にあるベースラインの血圧値と患者カルテ485人分を照合したところ、血圧値は一致した。したがって、研究に参加した医師らが報告した血圧値は、カルテによる裏づけのある正確なものであった。
最終統計用データと大学保有データ○1の各血圧値を照合したところ、ベースラインの収縮期血圧値について不一致件数が671件中86件、12.8%存在した。この不一致は10の位での増減例が多数見られました。
4ページ、その大学保有データ○2、これは3,081名分ですが、その血圧値と大学保有データ○1の血圧値を照合したところ、671人に関しましては数値が一致いたしました。したがって、大学保有データ○2の残りの2,410人分についてはカルテとの照合は未了でありますが、671人のデータがカルテと一致する大学保有データ○1と同じであることから、大学保有データ○2は基本的に正確なデータと推測できました。
そこで最終統計用データと大学保有データ○2の間において、論文の表3にあるベースライン、6カ月、12カ月、24カ月、試験終了時の各血圧値を照合いたしましたところ、いずれも収縮時血圧時においてベースラインで412件(投与群190件、非投与群222件)、6カ月177件、12カ月113件、24カ月3件、試験終了時123件という多数のデータの不一致がありました。これはバルサルタン投与群、非投与群に大きな差はありませんでした。
したがって、論文において採用されている患者の血圧値データは正しくなく、何者かによってデータが操作されたものと考えられる。その操作の意味についてはなかなか理解できないところであります。
血圧値のデータの不一致について研究統括責任者、共同執筆者、研究参加医師、研究補助員との面談調査において質問いたましましたが、いずれも不一致の存在について初耳であり、みずからの関与を否定し、データ操作があったとするなら統計解析段階しかないという意見でした。
元社員に対して、血圧値データの不一致に関して質問をしたところ、思い当たることはないとしてデータ操作への関与を否定しました。しかし、元社員は調査委員会に対してデータ解析を行ったのは医局の先生たちである。時々医局に呼ばれて先生たちから解析の手順などについて質問を受けてアドバイスをしたことはある。しかしながら、実際はデータ解析について部分的に協力しただけである。自分は論文のドラフトは見たことは一切ない。自分が論文に記載されている表や図を作成したことはない。したがって、これらの表や図を自分から教授らに提供したことはないと客観的資料に反する供述を行っており、元社員の供述は全般的に信用できないと判断いたしました。
研究資金の性質と金額の流れ。奨学寄附金は大学財務部を経由して研究者の所属の口座に振り込まれる。本学の経理資料を調査したところ、循環器内科に対するノバルティス社からの奨学寄附金は2005年から2007年までの3年間で8,400万円であった。2004年以前については規程に基づき資料は破棄されたため不明でありました。これらの奨学寄附金は本学の財務部を経由して正規の手続を経て循環器内科に提供され、本学の財務部による内部監査並びに外部の会計監査を受けており、個人的な流用等の不適切な使用はありませんでした。
特定の薬の効能に関する臨床研究を行うことに関して、当該薬の販売会社から多額の奨学寄附金を受けること自体が利益相反の問題をはらんでいます。しかし、研究論文中に奨学寄附金を受けている事実を明らかにし、奨学寄附金を受領することにより、臨床研究の客観性、透明性、正当性が損なわれることがない限り、産学連携の見地から不適切なものではないと考えられる。
本研究の成果である論文において、著者らはノバルティス社から講演料、寄附金を受領していることがそれぞれ明記されており、利益相反ルールに違反するものではないと考えられる。
論文の評価。以上のとおり論文中の患者のイベントデータはカルテとの照合の結果、おおむね一致した。このデータに関しては人為的データ操作が行われたとは考えられない。他方、論文中の患者の血圧値データはカルテの記載と異なるものが相当数あり、何者かによってデータが人為的に操作されていると考えられる。この血圧のデータ操作によるイベント解析結果の影響は未知数であり、その意味ではバルサルタンがほかの降圧剤に比較して脳卒中、狭心症、心不全、解離性大動脈瘤の予防に有効であるという論文の結論部分の正当性を判断することはできない。
さらに、研究の重要な要素であるデータ解析過程において、ノバルティス社の現職社員の関与が伏されているという事実と異なる記載があることから、本研究は科学論文としての基本において欠陥があり、信頼性を欠くものと言わざるを得ないと思います。
今後の調査予定としては、大学保有データ○1 671人分をさらに調査を継続していって、数をふやして検証していきたいと考えております。
再発防止策といたしましては、1、科学研究行動規範の制定。2、臨床研究及び医学研究倫理の教育の充実を行ってまいります。また、3番目といたしまして臨床研究センターの設置を考えていきたいと思います。この部分は京都府立医科大学と極めて同じであると思いますので、割愛させていただきます。
以上です。
○森嶌委員長 それでは、御質問をどうぞ。
○桑島委員 エンドポイントに関してカルテデータと解析データが重ならなかったとおっしゃったのですけれども、この論文の不可解な点は、デザインでは狭心症の発症だとか心筋梗塞の発症になっているのですが、結果的には入院という言葉になってしまっているのです。そうすると、お調べになったのは入院した事実があるかないかだけで調べたのか、それとも入院を要するような中身についてまで調べられたのか。
○橋本参考人 中身まで見ました。例えば狭心症であれば入院して必ずカテーテル検査をしている。
○桑島委員 そうすると狭心症でない、要するにネガティブ、何も起こっていない症例についてはなかなか調べにくいということがありますね。起こって入院したのはわかりますけれども、もともとイベントがなかったものは、それを探し出すのはかなり難しいですね。
○橋本参考人 それは難しいかもしれません。
○桑島委員 その点について、私の推測では。最初LancetからConcernが出たのは血圧値の不一致。だから調査機関はその辺を中心にお調べになったのではないかと思うのです。それで京都府立がエンドポイントをいろいろ出してきたので、追加としてエンドポイントを調べられたのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○橋本参考人 最初はまさに桑島先生のおっしゃられるとおりで、血圧を中心に調べました。その後、イベントの照合に関しましては、論文中のイベントがカルテに記載があるかという点はすでに調べてありました。その点では全く一致しておりましたので、大きな操作はないのかなと思っていた中で、確かに京都府立のほうでは捏造があったということで、もう一度調べ直したということです。
○桑島委員 エンドポイントに関しては、調査期間が短かったのではないかと思っているのです。
○橋本参考人 いや、結構みんなでやりました。頑張りました。
○桑島委員 もう一つは、LancetからConcernがあったのは昨年4月なのです。今まで1年間回答がなかったのは何か理由があるのでしょうか。
○橋本参考人 回答がないわけではないです。一番最初、Lancetからそういった疑義についてありまして、それにはきちんと回答しています。
○桑島委員 Lancetに回答しているのですか。
○橋本参考人 はい。その後、由井先生の論文というかConcernが出たときは、Lancet側からそれに対して何か意見を述べろということが来なかった。ですから、それは特別要請がないので、それに対しては対応しなかった。
○桑島委員 Lancetから回答はあったけれども、由井先生は回答しなかったということですか。
○橋本参考人 Lancetから要請があったので最初の疑義に回答したが、その後の由井先生のConcernには要請が無いので対応しなかった。
○曽根委員 本当に大変な調査活動だったと思いますし、明らかにしていただいて本当に我々にとっても対策をしていく上で、非常に参考になることがたくさんあったと思います。
1つお聞きしたいのは、調査委員会のあり方といいますか、組織構成です。やはり真相解明して、それをいかに改善に結びつけていくかという意味で、倫理委員会の委員長とか、利益相反委員長がこの調査委員会に入られておるのでしょうか。
○橋本参考人 今回は入っておりませんが、委員のほかにそういった再発防止等に関しては、当方でそういった臨床研究をされている先生にいろいろ御意見はいただきました。特に委員のメンバーとしては入れてありません。
○曽根委員 できれば入って、一緒に作業されたほうがより具体的な対応ができるのではないかと思います。
○橋本参考人 1年前から臨床研究センターの必要性は当大学でも考えておりまして、進んでいる中で、それに主にかかわってくれた先生のいろんな意見はいただきました。
○曽根委員 もう一つは京都府立医大のケースと同じで、元社員の関与の仕方が非常に深いというか、臨床試験のあらゆる場面に関与している。両方の大学ともにヒアリングで、あるところまで調査は行くのだけれども、真相解明になると限界がある。これ以上ヒアリングしても無理という理解でよろしいでしょうか。あるいは何らかの拘束のあるような、偽証ができないような環境が必要ではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
○橋本参考人 それはなかなか私からお答えしにくいことで、ただ、我々が調査を行った限りは全て否定されました。
○曽根委員 元社員の責任問題が大きくクローズアップしてきておりますが、社員が統計解析とか、あるいはデータの集計、管理までかかわっていたということと、会社からの寄附金が必ずリンクしているわけですね。そういった意味で、元社員の上司についてもヒアリングされたのかどうかという点について。
○橋本参考人 いや、上司の方はヒアリングしておりません。
○藤原委員 3点ほど。やはり奨学寄附金の研究に絡んでの話なのですけれども、先ほどこれは非常に大変な調査だと思うのですが、京都府立医大の調査のときの研究の進捗中、こういう大きな試験の場合には何回も研究会を開いたりとかしていきますので、そういう研究の進捗中の研究会がよく昔からやられているのは、何で大学の先生なのにホテルで開催するのかとか、よくわからないときにホテルで開催して、企業からたくさん来て、それでサポートをして、会場の中には内部の先生だけが入って検討するいうのが多かったと思うのですけれども、そのあたり研究会が開催されたときとか、それに対する労務の提供をされたというヒアリングはされたのかというのが1点です。
○橋本参考人 ある程度聞いて知っております。委員会の開催場所はまず学会に合わせてありました。ですから交通費は発生しない。それはエンドポイント委員会の先生方も皆さんおっしゃっておりました。
また、運営委員会は大学でやられていたことが多いようであります。ただ、詳しくは運営委員会等の委員会記録が全く残っておりません。もう10年前で、ちょうど2年前に全部破棄されたようなのですが、そういう意味での確証はありません。
○藤原委員 次はプロトコル関係の話なのですけれども、先ほど論文執筆が発表されたときにはCOIとかの開示はされていますというふうにお話をされていたのですが、例えばレビューの途中によくあるのはLancet誌のレビュアーからCOIとかが書いていないので、そういう研究の資金などのサポートについて記載してくださいというコメントをしてから記載される方、私もたくさんレビューをしているので、そういう指摘をして記載を追加してもらうことはよくあるのですけれども、そういうレビュアーからの指摘はなかったかというのと、最近はLancet誌もそうですが、プロトコルを論文投稿時につけさせて、大変なのは日本語で書いてあるものを英語に直して投稿するのですけれども、その当時は多分そういう仕組みはなかったと思います。
○橋本参考人 いや、やっています。
○藤原委員 されているのですね。そのときにプロトコルなんかにはCOIの開示とか、IC文書の中にCOIが開示されてあったかとかいうのは確認されましたでしょうか。
○橋本参考人 最初にLancetに投稿されて、レビュアーから来た中には内容に関するものはかなりいっぱいありましたが、その点は最初から書いてあったようです。
○藤原委員 最初の倫理審査委員会の時にはいかがですか。
○橋本参考人 倫理審査委員会のところには、特に統計解析をどういう方にお願いするというのはまだ書いてありませんでした。
○森下委員 2点お聞かせ願えたらと思うのですが、真っ向から意見が違っているところの主張なのですけれども、研究者の先生方は複数年にわたる長期試験に対して、解析を担当された方と接点が本当になかったのか。一方で元社員は指導に伺ったと述べており、もしメール等でやりとりをしていたとしても、実際に中間解析あるいは班会議の場とかで何度かは会う機会があったのではないかと思っておりますので、研究者はどの程度任せ切りという認識だったのかをお聞かせ願いたいと思います。
○橋本参考人 もちろん運営会議とかそういうときには彼は参加しておりましたので、みんな一緒に集まってという形で常に委員会は進んでおりました。また、ウェブ入力されたデータも我々のところには毎月データ管理会社から送られて戻ってきておりまして、また、データがある程度集まったところでのデータクリーニング等も、これはそろそろやらなければとか、そういったことも統計担当者の方から依頼を伺って戻ってきて、それをやって返すという流れもありましたので、接点は結構ありました。
○森下委員 それならば、最後までノバルティス社の方ということを研究グループが全員知らなかったのか、途中から気づく機会があったのか。要は最後の論文のところの所属・氏名の書きぶりのことでお聞かせ願いたいと思います。
○橋本参考人 主な研究担当者は、最初に紹介されたときは大阪市立大学の非常勤講師の統計の方だという認識でした。ただ、全部で122名の医師が参加した計画ですので、その人によって大分温度差はあるのですが、主に運営委員会等に出てくるような方々は、数カ月後ないしは1年後ぐらいには彼がノバルティス社員だということは知っていました。つまり、最終的に論文を書く時点では主な人たちはみんな知っていた。全員ではありません。主な人たちは知っていたということです。
○山本委員 京都府立医大のほうはイベントに手が加わっていて、慈恵のほうは血圧だけという感じで報道されているのですけれども、今の御説明の中で大学保有のデータでイベントが起こっている起こっていないというのは、最終データのイベントが起こっている起こっていないというものと比例した形になっているのでしょうか。
○橋本参考人 カルテの照合ですから、それは検証できておりません。
○山本委員 イベントが起こっている数です。大学のデータを数が少ないから統計処理して有意なのかどうかは別として、投与群でイベントが起こっている起こっていない、対照群で起こっている起こっていないという比率が、最終データと大学の手持ちのデータとできちんと、ほぼ合致する値になっているかどうか。
○橋本参考人 カルテと照合したところでも、全く一致しています。それと3,081名分を合わせても一致していますから、その部分は一致しておりますから。
○山本委員 そのデータではなくて、部分集合として大学が保有されているデータというのが、全体とほぼ比例する形になっているのかどうかということをお聞きしたいのです。それを加えたとき、引いたときにどうのこうのという話ではなくて、大学に残っているデータから統計学的には有意ではないかもしれないけれども、一応、傾向としてはイベントが投与群で抑えられているということが言えているのかどうか。
○橋本参考人 それは統計解析はしておりません。
○山本委員 重要なポイントだと思うのです。そうすると、何かの加減で大学に保有されているデータには手は加わっていないけれども、それ以外には加わっている可能性は否定できないわけですね。
○橋本参考人 そうですね。
○宮田委員 3つ伺います。
1つは、まずこの研究というのは全ての研究の発端、今回の事件の発端になっていますので、そもそも誰がどういう経緯でこの研究をやろうと考えたのかということを教えていただきたい。
○橋本参考人 これは京都府立と非常に似ているのですが、我々のところもナンバー制の講座からちょうど循環器とか糖尿病内科などに分かれた時期でありまして、その最初の教授に望月先生がなられて、4病院に循環器の医師が各ナンバー講座にいたわけで、その方たちが1つの医局になった。そこで何か1つやろうということで考えたことです。
最初はノバルティス社ではない別の会社にこの話を持っていったそうです。ところが、そこは余りそういう研究はということで断られたということで、その次に声をかけたのがノバルティス社だということです。
○宮田委員 今の主任研究員の方がノバルティスに声をかけたということですね。
○橋本参考人 はい。
○宮田委員 2番目の質問は、倫理委員会の記録が残っているかどうかわかりませんけれども、なぜPROBE試験というものを認めたか。というのは、同様なことは多分、先行研究として欧米でダブルブラインドで行われていると思うのですが、なぜこのPROBE試験を認めたか。そこは調査対象になりましたか。
○橋本参考人 そこは調査対象にはなっておりませんが、2002年の話なので、ちょうどPROBE法が出てきたところですから、それに対してどう判断されてかというのはなかなかわからないです。
○宮田委員 ただ、先ほども御指摘がありましたけれども、ソフトエンドポイントだと非常に主観的な結果になりますね。ある意味では恣意的に結果を招くことができるプロトコルですね。そこはそういうような議論はなされていないということですか。
○橋本参考人 その議論はされていないと思います。
○宮田委員 議事録は残っているのですか。
○橋本参考人 議事録はあると思います。提出資料とそれを認めたという書類等は残っていますので、あります。
○宮田委員 もう一度、そこの経緯も精査なさる必要があると思います。
3番目、これは血圧のデータが操作されているという御指摘ですけれども、その操作されたタイミングというのはいつごろと想定していらっしゃいますか。
○橋本参考人 やはりウェブ入力した医師等の環境とか、データへのアクセスができる範囲と、パスワードというものがありまして、どこまでパスワードで入っていけるかということも全部聞きとり調査をいたしましたが、やはり医師がかかわることはほとんど難しいなという中で、我々はデータ収集から統計解析の過程、そのところであったので。
○宮田委員 それは何年ぐらいだと考えているのですか。
○橋本参考人 最終的に我々が毎月入れていたものが戻ってくる2006年5月までのは最終データとしては合っていますから、その後だと思います。本当に論文を書く前ではないかと思います。
○宮田委員 わかりました。
○桑島委員 先ほどの御質問とも関連があるのですけれども、元社員は関西の人なのですが、この委員会にたびたび来られているということで、その旅費はどこから出したのでしょうか。この試験の旅費として出したのか、あるいは別のところから出ていたのか。
○橋本参考人 当方からは出しておりません。
○桑島委員 もう一つ、神戸CNSはヒアリングを行ったのですか。
○橋本参考人 ヒアリングはできておりません。そういう要望は出しましたが、ただ、アンケートには答えてくれています。
○桑島委員 基本的にはデータのやりとりは、医局の管理センターからCNSセンターに送られたわけですね。京都と同じように。そこから何か回答はあったのですか。定期的なまとめたデータというのは。
○橋本参考人 はい。毎月送られてきておりました。
○桑島委員 それは最後まで送られてきましたか。
○橋本参考人 はい。
○桑島委員 望月先生も、それは最後まで把握しておられた。
○橋本参考人 はい。
○桑島委員 そのデータには間違いなかったということですか。
○橋本参考人 そうです。
○竹内委員 確認なのですけれども、先ほど先生がおっしゃいましたように、神戸CNSから毎月大学のほうにデータが送られてきて、大学でデータクリーニングをされたということなのですが、ということは、そこでデータの打ち込みは大学側でできたということですね。もし間違っていれば。
○橋本参考人 決められたここをチェックしてくれという項目だけは、この方のここが未測定とか、これはおかしいデータではないかという、それをもう一回紙に書いて、そこだけ入力担当者の研究補助員なのですが。
○竹内委員 紙に書かれて、また神戸CNSに送られて、そして神戸CNSがそこでもし直した場合には、直しましたという記録は最終のデータ解析セットには残っているのでしょうか。ここは違っていたので手を入れました。だから例えば血圧がこうではなくて、こういう具合になりましたというような記録を、神戸CNSのデータセンターとしての役割を果たしているのかなと疑問に思っております。
○橋本参考人 こちらで得られた資料はクリーニングをしてほしいという、この患者さんのこのところがおかしいから見てくれというものの書類はありましたけれども、その後のものは資料がなくて何ともわからないです。
○竹内委員 中間解析が3回行われているのですけれども、その中間解析をやった統計学者は誰なのでしょうか。
○橋本参考人 元社員の名前で。
○竹内委員 全部COIですね。通常は独立した統計学者が中間解析をやって臨床試験をとめていますので、そのとめるときに元社員のノバルティスの人が入って、とめるということはまずあり得ないと思います。そこはLancetから聞かれなかったのですか。
○橋本参考人 COIに関してのことはなかったです。
○竹内委員 中間解析をやる場合、どういう中間解析グループがあって、どういうメンバーがいて、そこで結果が開示されますので、そこでどういう、この場合ですとP値が詳細に書いてありましてわかったのですけれども、そこの中間解析をやる過程も非常に統計的には難しい解析をやっております。そのCNSが、いつデータセットを固定したのかというのを私はお聞きしたいのです。
○橋本参考人 その辺ははっきりわからないですね。
○桑島委員 もう一つ、このエンドポイント委員会のメンバーですけれども、愛媛大学の堀内先生とか入っていますが、堀内先生というのは基礎医学の先生なのですけれども、彼をエンドポイント委員会のメンバーとして選定したのは大学側でしょうか。
○橋本参考人 それは望月教授だと。
○桑島委員 この点について望月先生にヒアリングは行いましたか。
○橋本参考人 はい。
○桑島委員 我々の感覚から言うと望月先生と堀内先生の接点が非常に不明なところがあります。特に基礎医学の先生である堀内先生がどうして選定されたのか。エンドポイントの評価委員ですから臨床経験の豊富な専門家でなければなかなか難しい問題があるのです。その辺の問題をぜひお聞きしたいと思っています。
○森嶌委員長 各大学からの御説明で、今日だけで全部事実解明ができるようには思いませんで、実を申しますと現時点で50分以上時間が押しておりまして、2時間半のうちでもう50分おくれているということで、この後まだ参考人の方が待っておられるので、私としては時間の配分ではなくて、積み残しが出るのではないかということを恐れておりますが、できれば今日全ての事実を解明しようという、私も伺っていて非常に的確な御質問なので、それ自身は大変評価するのですけれども、幾ら質問をしても今日中に事実が解明できるとは思いません。今後、機会を設けてもう少しいろいろなことを各大学についても伺いたいと思います。また、各大学も現時点で事実についてお調べになっていると思いますので、そういう機会をこれから設けたいというか、設ける予定でおりますので、ぜひそういうことを前提にして御質問いただきたいと思います。
○桑島委員 提案なのですけれども、我々も直接ヒアリングしたい方がいるのです。そうしますととても時間もないですし、もっと効率にやるためにはグループに分けての検討が必要と思います。
○森嶌委員長 いや、今後これは事務局との関係もありますけれども、今日一応参考人に伺って、これだとすればこういうことを聞きたいので、こういう機会を設けたらどうか、こういう方から聞きとりをしたらどうかということを皆さんから伺って、場合によっては全員で聞くのではなくて少し班を分けるとか、考えないとある程度の時間の中に事実解明もしなければなりませんし、さらに倫理指針なんかについても考えなければならないとなりますと、時間との闘いで、だからと言って余りいい加減なこともできませんので、それも御相談しますが、今日全部やろうというわけにはいきませんので、ぜひそこも皆さんのほうで、今日の参考人の意見をお聞きになりながら、皆さんが事務局かつ委員長になったおつもりでお考えいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○一瀬課長 委員長、よろしいでしょうか。今日はどうしても時間が限られておりますので、今日おいでいただいている大学でありますとか、ノバルティス社さんにまだお聞きになりたいという事項が残る場合でしたら、書面等でまた事務局にいただきまして、それをまた回答してもらうという形で皆様にお伺いしたいと思います。
ヒアリングの話はまた別途、この委員会の中で御議論いただければと思います。
○森嶌委員長 今日のところはともかくせっかくおいでいただいたので、お聞きしてということで、今までお二人に伺っていますが、この調子でいくと夜を徹することになるのではないかという感じになってまいりました。そこで、ぜひ今日中に全部片づけようとお考えにならないでいただきたいのですが。
○山本委員 残りの大学から出ている報告はまだ中間段階ですから、それほど討議することはないと思います。
○森嶌委員長 どうもありがとうございました。
それでは、次に千葉大学の横須賀参考人から御説明を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。5分と予定されております。
○横須賀参考人 千葉大学の横須賀でございます。
VART Studyに関する調査の現状について報告申し上げます。
今回の資料2-3でございますけれども、今回の研究の概要につきまして、まずVART試験の内容でございます。本試験は、高血圧患者の薬物治療としてバルサルタンとアムロジピンを使用した場合、真の治療効果である心血管イベントの抑制効果が、バルサルタン群がアムロジピン群と比較し40%上回るという仮説を証明することを目的として実施したものでございます。
対象患者は、新規に高血圧(140/90mmHg以上)と診断された患者、または既に降圧治療を受けている30歳以上の高血圧患者3,000例を対象としようとしたものでございます。なお、ここに書いてございます二次高血圧症、その他については除外してございます。
治療スケジュールでございますけれども、バルサルタン群では80mg/日から開始し、降圧目標でございます140/90に達しない場合は160mg/日まで増量。アムロジピン群では5mg/日から開始し、降圧目標に達しない場合は10mg/日まで増量したものでございます。両群とも降圧が不十分な場合にはα遮断薬、β遮断薬、または利尿剤を必要に応じて追加してございます。
試験デザインでございますが、先ほどよりお話のございますPROBE法でされてございます。
評価項目でございますが、主要評価項目は全死亡、突然死、脳血管イベント、心イベント、血管イベント、腎イベントの複合イベントとしてございます。
副次評価項目といたしましては左室肥大、血漿ノルエピレフリン濃度、心臓交感神経活性、腎機能、糖尿病の新規発症に対する効果としてございます。
割りつけは最小化法による無作為割りつけでございます。
実施医療機関は千葉県、東京都の医療機関による多施設共同試験でございます。
タイムラインでございますが、千葉大学の倫理審査委員会の承認が2002年5月22日でございまして、最初の症例登録が2002年7月2日、最後の症例が2007年9月20日、データロック日は2009年7月27日となってございます。
試験結果でございますけれども、組み入れ被験者数はバルサルタン群510例、アムロジピン群511例で、合計1,021例となり、予定症例数の3分の1でございました。
登録時の被験者の背景は、2群間で有意差は認められておりません。薬物治療にも有意差はなかったということでございます。
試験期間中の血圧推移でございますが、バルサルタン群は開始時158±19/93±13、終了時が135±13/80±10、アムロジピン群は開始時が158±18/94±13、終了時135±14/80±10と、両群ともに十分かつ同等の降圧効果を認めました。
主要評価項目でありますが、2群間に有意差を認めず、本試験計画立案の仮説を検証できませんでした。
組み入れ症例数は予定症例数の半数以下であり、本試験は検出力不足でございました。
複合イベントはバルサルタン群で21例、アムロジピン群で21例、それぞれ4.1%でございます。
死亡等の評価項目それぞれについて、両群に有意差は認められなかったという結果でございました。
副次評価項目は、資料に出てございます○1~○4につきましては有意差が見られたものの、糖尿病の新規発症○5については有意差がなかったというものでございます。
研究資金の性質・金額と流れでございますが、研究に使用した資金は奨学寄附金でございます。受け入れ記録ではノバルティス社から2007年から2009年の3年間で9,100万円の寄附があったという記録がございます。また、受け入れた寄附金は寄附目的に沿って使用しておりますが、本学保存資料に「VART Study」の記述がある一部の経費以外については、本試験との関連を特定することが困難でございました。
これまでの経緯といたしましては、平成25年5月17日に研究活動の不正行為対策委員会が設置され、6月20日に第1回の開催がございました。7月2日に特定非営利法人日本高血圧学会による臨床試験のデータの検証結果の公表、データ解析の結果から解析結果について間違いはないとの報告がございました。しかしながら、カルテとの照合が必要であると判断し、私どもとしてはそれらの解析データを入手いたしまして、カルテと照合を開始したわけでございます。別に第三者機関として平成25年7月22日、公益財団法人先端医療振興財団に症例データとカルテの照合を依頼したところでございます。
これまでの大学の調査の概要でございますが、調査の手順では学内に調査チームを設置し、データベースとカルテデータを照合するとともに、関係者からの聴取を行いました。
データの検証内容でございますが、まず症例データと本学附属病院のカルテの照合結果でございます。登録時の症例データ、本学の症例のデータ109名分の中から解析対象とした108名の被験者名をカルテから特定いたしました。
108名分の照合結果。まず主要評価項目でございますが、発生イベント数に関しましてはバルサルタン群でデータベース情報が4件、カルテデータの検索が4件で、アムロジピン群におきましてもデータベース情報では4件、カルテデータでは4件でございます。
以上から、イベント数に関してデータベース情報とカルテ情報データに相違はございませんでした。しかしながら、バルサルタン群の1例が心不全2例となってございますが、カルテを見ますと1例は軽度の心不全の後、脳卒中を起こしたという記録がございまして、肺炎によって死亡してございますので、一応脳卒中のほうに入れて2件という結果にいたしております。また、血圧に対しましては血圧測定全ポイント1,512ポイント中67ポイント、4.4%においてデータベース情報とカルテ情報とに相違が認められました。しかし、カルテデータでの集計記録とデータベース情報から得られた集計結果との間に有意差は認められませんでした。
また、副次評価項目につきましては、本日のところまで心エコーでは約290ポイント中14ポイント、5%で相違が見られました。血漿のエピネフリンに関しましては267ポイント中8ポイント、3%で。また心筋シンチのデータに関しましては101例中8例、8%。尿中アルブミン/クレアチニン比に関しましては247例中4例、1.6%で差異が指摘されております。
新規の糖尿病の発症につきましては3件という報告でございましたが、うち1件が治療前の値が見つからなかったため2件としてございます。
関係者からの聴取内容でございますが、研究の概要、研究の実施体制、データ収集・解析方法など、また、N社元社員のデータ解析における関与や、関係者との利害関係の有無について聴取をいたしました。
今後の調査予定でございますが、外部機関による症例データとカルテの照合を再度しっかりと行う。それから、利益相反に関する調査を行う予定でございます。その他、利益相反の周知と再発防止策を検討する。また、臨床試験支援体制の拡充を行うことを考えております。
なお、本資料は厚生労働省の要請に基づき作成したものであります。そのため、千葉大学の不正行為対策委員会を経ていない段階であることを御了承ください。
以上でございます。
○森嶌委員長 特にどうしてもということがあれば伺いますけれども、よろしいですか。
○山本委員 1つだけ。5ページにあります関係者からの聴取調査内容ということで、N者元社員のデータ解析における関与や関係者らとの利害関係の有無等について聴取したとだけ書いてあるのですけれども、その結果というのはお話いただけるのでしょうか。
○横須賀参考人 まだ全員からお聞きしているわけではございませんが、最初にこの試験を主導した方というのが生物統計の専門家で、米国で臨床研究を行ってきた方でございまして、その方はN社の社員であることを御存じだったようで、利益相反に違反するということから、いろいろプロトコルを作成する段階とか、いろいろな委員会ではその方に来るなということを言っておったそうでございます。ただ、その方が途中で大学をおやめになられて、次の本試験を主導した方々にお聞きしたところでは、その方がN社の社員であることは知らなかったということです。また、その方々もデータに関してはN社の方に触れさせることはなかったというようなことを聞いてございます。
○森嶌委員長 それでは、次へ進んでよろしいでしょうか。ありがとうございました。
次に、滋賀医科大学の服部参考人から説明をお願いいたします。これも時間は5分となっております。
○服部参考人 よろしくお願いいたします。
まず今日は資料2をごらんいただけたらと思うのですけれども、私どものSMART研究はほかの大学と異なりまして、これは腎臓で糖尿病の患者さんの腎臓の蛋白尿、その微量アルブミン尿に薬剤がどのような影響を及ぼすかということで、アムロジピンとバルサルタンの比較研究をなされたものでございます。
本学の場合はイベント等が評価ポイントではございませんで、数値そのものになってきます。したがいまして、現在、数値を中心にこの論文の信憑性を検討しておるところでございます。研究は2003年12月から3月ということでありまして、2006年9月以降にデータ解析がされたということです。
結果は(4)にございますように、バルサルタンのほうが有意にアムロジピンよりも微量アルブミンの減少効果を示したという結論でございました。
2ページ、研究資金といたしまして、本学の調査では5,300万、これは当事者からの申告でございましたけれども、ノバルティス社からは6,300万ということで、これはもちろん利益相反の問題と関係してまいります。
これまでの経緯でございますけれども、そこに書きましたように委員会を立ち上げて鋭意努力をしておるところでございますが、この論文が2編ございまして、1つはDiabetes Careというアメリカの雑誌です。もう一つはHypertension Researchで、これは日本の高血圧学会の雑誌でございます。本学の調査ではアメリカのDiabetes Careの論文を中心に今、分析をしておるところでございます。
本日はまだここ1週間ぐらいでわかったこともございますので、中間報告は書かせていただけなかったわけでございますけれども、簡単に今までわかっていることを御紹介いたします。
この研究では150例の患者さんの御協力をいただいているわけですけれども、滋賀県の15病院からの協力でなされました。当事者にカルテの提出を求めまして、カルテデータと申しますけれども、これは検査データそのものの数値です。それが手に入りましたのが7月15日でございまして、この7月15日から分析をいたしております。90例のデータが手に入りまして、今この90例のデータから論文の再現性等を研究しております。調べております。
このDiabetes Careの初め申しました論文の著者が4名でございまして、3名は糖尿病、内分泌、腎臓内科の医師でございます。もう一名がA氏と申しまして、実はこれはノバルティスの社員でございました。調査で判明いたしましたのは、今まで問題になっておりますノバルティスの大阪市大所属でありましたB氏以外に、滋賀医科大学の場合にはA氏というノバルティス社の社員がこの研究に参加いたしました。
この関係ですけれども、B氏の部下だということを聞いております。机を並べてノバルティス社では働いていたということで、B氏が本学の教授とこの研究を立案した1カ月後ぐらいから、A氏が滋賀医科大学で研究に参加した。そのようなことが判明しております。
2003年にこの研究をスタートしまして、2006年までデータ収集等が行われて、論文は2007年に出版されましたが、その過程でこれはノバルティス社の報告にもございますけれども、A氏というノバルティス社の社員がいろんなデータの検討委員会とか、処理にかかわっていたということが判明いたしました。
7月15日以降、カルテデータと論文の内容を比較しておるところでございまして、最終的な報告は現在のところまだできない状況でございます。ただ、論文の生データを見ますと非常に初歩的なミス、例えばカルテからの入力ミス、計算ミス、そのようなものがたくさん出てきております。
もう一つ、論文内容と必ずしも一致しないような部分も出てきておりまして、今、もちろんこれは鋭意この信憑性を解明すべく努力しておるところでございます。これに関しましてはまだあと数週間を要しますので、最終結果は1カ月以内には公表する予定でございますけれども、今からどのように進捗するかはわかっておりません。当事者であります内科の3名の医師に関しましては、今、事情聴取をやっております。それから、ノバルティス社の1名の方には既に事情聴取を済ませております。もう一名の方につきましても事情聴取をすべく現在進めております。
5番の今後の調査予定でございますけれども、なるべく早く今後も委員会にも御報告できたらと思ってございます。ただ、我々もこの事件が起こりまして開いてみてびっくりしましたのは、ノバルティス社の2人の社員が滋賀医科大学の研究に関与していたという驚くべきというか、衝撃的な事実がわかっていた。今の論文の信憑性に関しましては、かなりずさんなデータが見られるということで、これを外部委員会にお願いをして、信憑性を中立的な立場で確認していただこうとしているところでございますけれども、高血圧学会とも御相談していただいて、第2編目の論文は高血圧学会。出ました論文はそこの学会誌でございますので、そこで何とか御協力いただけたらということで今、進めております。
今日は中間報告等もまとめられませんでして非常に申しわけございませんでしたけれども、なるべく早い段階で報告させていただきたいと思います。
以上です。
○森嶌委員長 ほかの大学と違って、いろんな形でまだ進行中でございますけれども、進行中にもかかわらず、2人の社員が論文作成にもかかわっていたということのようですので。
○服部参考人 その1名のB氏に関しましては、A氏にバトンタッチをした時点でこの大学には出入りしていないということでございます。
○森嶌委員長 いずれにしても、早い機会にということではなくて、ぜひとも至急に調査の報告を出していただきたいと思います。その上で私どものほうで検討させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
それでは、先に進ませていただきます。資料2-5でございますが、名古屋大学の藤井参考人から説明をお願いいたします。5分ということでお願いいたします。
○藤井参考人 名古屋大学の厚生担当理事の藤井でございます。調査専門委員会の委員長もやっております。
それでは、資料2-5に基づきまして報告させていただきます。
研究の概要でございますけれども、名古屋ハートスタディは糖尿病に高血圧を合併した日本人の患者を対象として、ARBのバルサルタンとCCBのアムロジピンの有効性を比較した試験でございます。
高血圧に糖尿病が合併すると、脳卒中や心筋梗塞等の心血管イベントの発生率が高まることは報告されておりますけれども、このイベントの抑制を考えた場合にARBとCCBのどちらが優れているかについては、特に日本人を対象にした明確なエビデンスがこれまでなかったということから、この企画実施を行いました。
試験デザインはPROBE法で、医師主導研究として東海4県46病院において実施いたしました。2004年10月に開始して、2010年7月に終了し、実際の年齢、性別、スタチン製剤使用の有無、喫煙、糖尿病とIGTの比率の5項目の頻度分布が両群同等となるようにランダム振り分けをして、1,150例の解析有効症例が得られたということでございます。
最も重要な一次エンドポイントであります心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術、心不全による入院、心臓突然死の総計であらわれます複合心血管イベントの発生は、バルサルタン群で54例、アムロジピン群で56例と両群間で有意差はございませんでした。各イベント別に見ますと心不全による入院はバルサルタン群が3例に対して、アムロジピン群が15例ということで、バルサルタン群が有意に少なかったということでございました。そのほかのイベントについては両群間では差がないという結論になりました。
本試験の結果につきましては、先行する海外の類似研究であるIDNT試験の結果と、この2つの有意差がある場合とない場合についても酷似していたということで、日本人でどうなるかということを知りたかったわけですけれども、白人とほぼ同じ反応であることが確認されたということでございます。
(2)の研究資金の性質・金額と流れというところでございますが、循環器内科への寄付金をこの研究については使用しておりますけれども、寄附については目的は限定されておりませんでした。それから、寄附者別に研究室が寄附金を管理していないために、ノバルティスファーマ社からの寄附金の使途を特定することはできていないというのが現状でございます。なお、この金額につきましては平成20年から24年に1.1億円の寄附金をいただいているということでございますが、それ以前につきましては文書の保存年限が経過しているため、寄附はいただいていると考えておりますけれども、文書からの数字は確定できておりません。
(3)これまでの経緯でございますが、この件につきまして活動を開始しましたのは4月30日でございます。そのときは医学系研究科長が当該教授に関連事項について確認をしたということからスタートしておりますが、5月29日の医学研究科内の調査委員会で、これは研究科内で閉じるのではなく、全学で第三者を入れて詳細に調査をするべしということで、全学のほうで検討することになりました。7月2日に全学の公正研究調査専門委員会を開催して、7月17日の第2回では今後の調査方法や内容についての詳細を決定しました。
なお、現在の調査専門委員会の構成は理事が2名、学内から医学系研究科あるいは医学部附属病院生命倫理審査委員会の委員長を含んで2名。学外からは生物統計の専門家1名を含めて2名の計6名で構成されております。
これまでの大学の調査の概要でございますけれども、データの検証としましては本研究で扱っているのは先ほど述べました46病院、1,150例でございますが、そのうち連結表が確認できたものは18施設の446例でございます。446例のうち、まず名古屋大学で行った141症例を対象に、カルテのデータとウェブ入力データ、統計解析データ、エンドポイント評価の照合を外部委託により開始しております。また、別途固定解析データの再解析による論文結果との照合も行う予定でございます。
関係者へのヒアリングですが、当該研究担当教授にヒアリングを7月17日に行い、8月2日に関係教員等にヒアリングを行っております。ただし、まだ裏がとれていないので、確定した結果はでておりません。
今後の調査予定でございますけれども、データの検証としましては141例の照合、これは12週間かかると見積もられておりますが、11月をめどに中間報告の予定でございます。その後、他機関の残り305例の連結可能データについても、同様の調査を行う予定でございます。
論文に関する調査に並行して、利益相反についても調査を行っており、この点についても調査結果が出次第、報告させていただきたいと思っております。
関係者へのヒアリングとしまして、ノバルティスの元社員へのヒアリングを予定しております。
以上でございます。
○森嶌委員長 それでは、これにつきましても今の時点ではこれ以上のことは無理でしょうから、鋭意調査を進めていただいて、今日いろんな方から御質問がありましたので、そういうような点についてもきちんと調査をしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
この委員会にもきちんとした報告書を、中間報告も含めてなるべく早い機会に出していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。この委員会は11月までには最終結論をまでいくかどうかわかりませんけれども、いずれにしてもある程度のものは11月より以前に出さなければなりませんので、それ以前に1つ中間報告でも結構ですので、出していただくようにお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○藤井参考人 そのようにいたします。どうもありがとうございました。
○森嶌委員長 それでは、資料2-6に基づきまして、大阪市立大学の上田参考人から御説明をお願いいたします。
○上田参考人 大阪市立大学医学研究科教授の上田でございます。
私どもの調査委員会の委員長をさせていただいております関係上、本日御報告させていただきます。
資料2-6をごらんいただきたいと思います。ノバルティスファーマ社の元社員が高血圧症治療薬臨床試験論文に大阪市立大学の肩書きで参加していた件につきまして、これまでの経緯等を述べさせていただきます。
本年3月下旬に京都府立医大が実施したノバルティスファーマ社の高血圧症治療薬バルサルタンの効果を調べた臨床研究の論文につきまして、ノバルティスファーマ社の元社員が社員の身分を明示せず、非常勤講師(無給)としての大阪市立大学の肩書きを使用していたことがマスコミ報道で表面化し、その後、マスコミ各社がこの問題を取り上げ、報道するたびに大阪市立大学の名前が出てきており、本学としても事実関係を調査する必要があると考え、5月23日に医学研究科内に調査委員会を設置いたしました。
調査委員会は、主に大阪市立大学の肩書きが使用された事実関係や、本学に非常勤講師として委嘱された経緯などについて調査することといたしました。
調査の進捗状況でございますが、調査委員会では事実経過の調査のため、学内外の文書や資料の収集を行うとともに、元社員が所属していた産業医学教室のヒアリング及びノバルティス社のヒアリングを行いました。また、元社員がどのような経緯で大阪市立大学の研究者として論文中に記載されることに至ったのかを明らかにする目的で、バルサルタンを用いた11臨床研究論文のそれぞれのcorresponding authorに対しまして質問書を送付して、種々の疑問点に関しまして見解を求めました。そして、全員のcorresponding authorから回答を得たところでございます。
なお、事実経過の確認のためには元社員のヒアリングは必須であると考えまして、本人に連絡をとりましたが、本人からの応答はございませんでした。調査結果をまとめるに当たり、本人のヒアリングについては断念しておりましたけれども、7月下旬にノバルティス社を通じて本人がヒアリングに応じる用意があるとの連絡がございまして、8月初旬にヒアリングを行いました。調査委員会としましては、来週後半に調査結果を報告する予定でございます。
今後の対応でございますが、調査委員会の調査結果を踏まえ、大学としての対応を決定するとともに、非常勤講師の委嘱のあり方についても見直しを図る予定でございます。
ノバルティスファーマ社の元社員への委嘱の状況でございますが、身分は無給の非常勤講師、委嘱期間は平成14年4月から平成25年3月まで、毎年の更新でございました。講義等の実績につきましては、平成18年度の医学研究セミナー講義の1回でございまして、そのほか大学院生に対してのゼミ等で数回の指導がございました。
委嘱の経緯でございますが、元社員の説明では以前から親交のあった本学の教員を通じて産業医学教室の教員を紹介され、元社員が統計分析に造詣が深いということで、非常講師の委嘱を要請されたとのことでございます。
以上、簡単でございますが、現在までのところを報告させていただきました。
○森嶌委員長 ありがとうございました。
今まで御説明のありました5つの大学と大阪市立大学は少し状況が違いますけれども、ぜひとも調査を続けていただいて、この委員会にも御報告いただければと思います。
○山本委員 事実関係だけ。元社員の方は大阪市立大学にオフィスといいますか、部屋あるいはデスクを持っていたのか。それから、大阪市立大学のメールアドレスを持っていたのか、その辺はどうでしょうか。
○上田参考人 デスクは持っていないと伺っています。メールアドレスも持っておりません。その件に関してなのですが、元社員が所属していた産業医学教室では、医師主導臨床研究は行っていないと述べております。さらに、元社員もこのバルサルタンの臨床研究を私どもの産業医学教室で行っていないと主張しています。また、本学の倫理委員会の資料をさかのぼって確認したところ、当該の臨床研究に係る申請は見当たりませんので、本学は当該の臨床研究には一切かかわっていないと考えております。
○森嶌委員長 どうもありがとうございました。
曽根委員、どうぞ。
○曽根委員 その委嘱した非常勤講師の業務は、講義だけ、学生の指導だけという理解でよろしいですか。研究活動は一切含まれていない。
○上田参考人 基本的には私どもは講義という形での講師を委嘱していたわけです。したがって、研究というような形で、こういうようにかかわることは想定していなかったわけです。また、本人からもその研究に関して産業医学教室の上司である教授に、そういうことに関する相談は全くございませんでした。
○曽根委員 寄附金関係については。
○上田参考人 産業医学教室には全く入っておりません。
○曽根委員 わかりました。
○森嶌委員長 それでは、次へ進ませていただきます。どうもありがとうございました。
ノバルティスファーマ社の資料2-7に基づきまして、永田参考人から御説明をいただきます。
○永田参考人 ノバルティスファーマの永田でございます。よろしくお願いいたします。
まず最初に、このたびはバルサルタンにかかわる医師主導臨床研究の問題で、大変お騒がせして申しわけございません。患者の皆様、その家族の方々、また、医療従事者の方々に多大なる御心配と御迷惑をおかけしていることをお詫び申し上げます。
今後、弊社での再発防止に関する取り組みを徹底して継続するとともに、今回の問題について真相解明に協力してまいります。
それでは、調査結果について御説明申し上げます。資料2-7をごらんください。まずスライドの2ページに今回の医師主導臨床試験にかかわる薬剤バルサルタンの有効性、安全性等のバックグラウンド情報を添付しております。
調査結果でございます。ノバルティスファーマは本年3月以降、医師主導臨床研究への元社員の関与を中心に社内調査を実施いたしました。4月には私どもの親会社に当たるスイス本社が第三者機関に調査を委託し、その結果を7月29日に公表いたしております。
資料の3ページから6ページにその結果をまとめております。第三者機関の報告そのものは添付資料としてスライドの後に添付しております。時間の関係から詳細は割愛させていただきまして、7ページに主要なポイントをまとめておりますので、こちらをごらんください。
まず1点目でございます。5つの医師主導臨床研究について、程度の差はあれ、元社員が関与しておりました。当該元社員の関与については上司が認識をしており、支援をしておりました。しかしながら、大部にわたる文書を精査したにもかかわらず、当該元社員がデータの意図的な操作、捏造、改ざんなど行ったことを示す証拠は認められませんでした。また、上司がノバルティスファーマに有利な結果を出すために、データの操作、改ざんを指示したことを示す証拠も認められませんでした。
以上が主なポイントでございます。
8ページ、社内調査及び第三者機関による調査の限界。
5つの医師主導臨床研究は2001年から2004年に開始され、既に相当の年数が経過しております。このため、退職した元社員の中には十分な事情聴取ができない者がおりました。また、文書や電子データはある時期、入手できないものがございました。また、各大学での研究データを保有していないため、独立したデータ解析、データ検証を行うことができませんでした。このような理由で私どもノバルティスとしてできる調査には限界がありましたこと、御理解いただきたいと思います。
9ページ、今後の調査及び関係者の処分でございます。
さらなる真相解明のためには、弊社の調査結果と大学の調査結果を突き合せていくことが重要と考えております。当委員会はもとより、各大学のあらゆる調査に全面的に協力し、真相解明に当たり、二度とこのようなことが起こらないように再発防止を徹底する所存でございます。
関係者の処分につきましては、お手元の資料をごらんください。
10ページ、再発防止策でございます。
真相解明とともに、再発防止に努めることが弊社の責務でございます。これまでの取り組みを10ページにまとめております。まずプロモーション資材の審査プロセスを厳格化いたします。社員教育。全社員を対象に行動規範、ルール、ガイドラインについて継続的に教育し、その遵守の徹底を図ってまいります。さらに、医師主導臨床研究に関する手順を強化してまいります。4点目として、私どもの社長をリーダーにコンプライアンス委員会を設置の上、真相究明の調査並びに再発防止を徹底してまいります。
当委員会からの事務局からの御要請がございましたので、今日は奨学寄附金とプロモーション資材の審査の2点についても具体的に御説明申し上げます。また、あわせて医師主導臨床研究の支援を適正に進めていくため、弊社において2010年以降、取り組んでいる受託契約型の臨床研究についても御紹介させていただきます。
11ページ、奨学寄附金による医師主導臨床研究の支援。
5つの医師主導臨床研究の実施期間中、弊社は奨学寄附金を主任研究者が率いる教室に対して提供し、当該教室における研究活動を助成してまいりました。奨学寄附金の提供に際し、使途を指定していないため、実際に臨床研究に使用された寄附金額は把握しておりません。また、弊社における奨学寄附金の管理でございます。奨学寄附金は一般管理費(項目:奨学寄附金)として計上しております。2007年4月に寄附金審査委員会を設置し、社内審査体制の強化を図っております。
12ページに寄附金の決定プロセスをお示ししております。奨学寄付金は一般管理費として毎年総額見込額を予算計上し、寄附の実行時には金額に応じて決裁者を定めております。高額のものについては本部長、社長の決裁を得ております。こうした経費支出のプロセスの中で、公正競争規約の観点や学術部門のチェックが行われてまいりました。2007年4月にプロセスの見直しを行い、営業部門から独立した寄附金審査委員会を設け、社内各部門の寄附金を一元的にコントロールする審査体制を設けております。
13ページ、奨学寄附金額の開示でございます。今回、事務局からの御要請に応じ、関係各大学の御了承を得た上で、2002年以降の奨学寄附金の額を調査し開示いたしました。具体的には5つの研究の主任研究者の教室、講座に対する症例登録開始から昨年までの奨学寄附金額をお示ししております。奨学寄附金の性格上、弊社はこれらの寄附金のうちどれだけが5つの医師主導臨床研究に支出されたのか、あるいは5つの研究それぞれの研究費の総額がどの程度だったかは把握しておりません。
ちなみに3,000例で3年以上の追跡を計画したディオバンの大規模臨床研究の場合、仮に症例1件当たりのコストが10万円だったとすると、総額3億円という計算になります。
14ページには、臨床研究に要する費用として御参考までに開発、治験の場合の1症例当たりのコストと、弊社が取り組みを進めておる委受託契約型の1症例のコストについて、当委員会の御議論に役立てていただきたく、参考までにお示ししました。
事務局からは2点目として、医師主導臨床研究の成果のプロモーション活動での資料についても資料提供を求められましたので、御説明申し上げます。
15ページに社内審査について示しております。社内審査体制、審査に当たっての要件自体は当時も現在も大きな違いはございません。すなわち、薬事法や関連法規、プロモーションコードや公正競争規約、各種ガイドライン等でございます。ただし、業界の資材作成のルール自体は毎年、年々厳しくなっており、審査基準の内容は変わってきております。弊社では今回の事案の反省に立ち、新たに引用文献の利益相反のチェックを行うこととし、既に実行しております。また、5論文のプロモーション資材への使用状況は16ページにお示ししておりますが、現在はいずれも使用を中止しております。
17ページ、関係論文のプロモーション資材への使用でございます。関係者の当時の認識でございますが、元社員の研究への関与は認識しておりましたけれども、論文の結果の科学的な妥当性に問題があるとは認識しておりませんでした。海外の一流雑誌に専門家による査読を経て、掲載されていたので、通常の公表論文と同様にプロモーションに使用することは可能と判断しておりました。
結果として、撤回された論文に基づいてプロモーションを行ってしまったことについては、大変申しわけないと考えております。
弊社の再発防止策の1つが、研究計画を明確にし、それに対する費用提供と成果物を契約で規定するという委受託契約に基づく臨床研究の支援でございます。18ページから20ページに、定義やこれまでの奨学寄附金方式による臨床研究への支援との違いについてお示ししております。時間の関係で19ページの臨床試験の2つの方式の比較について御説明させていただきます。
奨学寄附金方式では、大学の研究者の方々から寄附の依頼があり、その内容を社内で検討判断して寄附の可否、寄附を行う金額を決めております。寄附金の使途は拘束せず、また、成果物も求めません。一方、委受託契約方式では研究者から研究計画が提案され、会社は実施の依頼を行うとともに、委受託契約を提案いたします。これに基づいて研究費を提供し、対価として報告書や論文といった成果物を提出いただくことになります。
弊社といたしましては、奨学寄附金による支援との対比において、より透明性の高い方法として2010年以降、徐々に委受託契約型への転換を進めております。
21ページ、ノバルティスファーマのコミットメント。当委員会における調査、各大学が実施されている調査、あらゆる調査に全面的に協力して、データの操作について、誰が何のために、データマネジメントのどのプロセスで行われたか。この真相の解明に当たってまいります。私たちの責務として、二度とこのようなことが起こらないよう再発防止を徹底していく所存でございます。
臨床研究への新しいかかわりとして、ただいま御説明いたしました透明性のある契約型の臨床研究に移行してまいります。臨床研究の品質保証を改善する仕組みづくりにも積極的に貢献したいと考えております。
以上がノバルティスファーマからの報告でございます。
○森嶌委員長 ありがとうございました。
もう予定されていた時間が過ぎておりまして、議題3が今後の検討の進め方について御議論いただくことになっておりまして、さらに新幹線でお帰りになる方もおられるというので、9時ぐらいまでにはぜひ終わらせたいと思いますので、ノバルティスファーマ社については今もおっしゃったように全面的に協力するということですから、今後もまたありますので、今の時点でぜひ質問をしておくということに限って御質問をいただきたいと思います。
山本委員、どうぞ。
○山本委員 先日のクローズアップ現代では、元社員の方は御家族も行き先はわからないとおっしゃっていたわけですけれども、先ほどの大阪市立大学の御説明では御本人の面接はノバルティス社が仲介したと言われましたが、それは事実でしょうか。
○永田参考人 まず、元社員の聴取について御説明申し上げます。
元社員は社内の調査、これは私が責任者として執り行ったものでございますが、4回のインタビューを10時間以上やっております。それから、5月以降、第三者の調査が入りまして、ここで2回、事情聴取を行っております。本人は既に話すことについては全て会社に話したので、会社が大学にお伝えすればいいという理解でおりました。ただ、ここ1カ月、1カ月半ぐらいの間に、本人から直接聴取しないとわからないことがあるということを徐々に理解してまいりましたので、会社からは元社員に連絡をとっていなかったのですけれども、本人のほうから、場合によっては聴取に応じていいという連絡がございました。
また、自宅ということなのですけれども、報道機関の方が何らかの方法で自宅住所をお知りになって、毎日来られるということで非常にプライバシーであるとか、家族が非常に困った状態にあるというのが本人から伝え聞いております。
○山本委員 関連してですけれども、大学のヒアリングには弁護士の方が同伴されていると伺っていますが、その弁護士の方は御本人がお雇いになっているのでしょうか。それとも会社がお雇いになっているのでしょうか。
○永田参考人 本人はただいまのところ弁護士をつけておりません。同席されておりますのは私どもの代理人弁護士でございます。私どもの社員は出席せずに、代理人の弁護士さんに聴取の状況について聞いていただいております。
○山本委員 そこまで会社側と連絡をとっておられるのだったら、どうしてコンピュータの内容はお見せにならないということなのでしょうか。
○永田参考人 会社のコンピュータというのはもちろん提供いただいて、メール、ハードディスクに残っているものは洗いざらい確認しております。ただ、個人所有のコンピュータについては提供を求めたのですが、自分のプライベートあるいは家族の情報が入っているということで、本人は固辞をしたということです。
○山本委員 でも、こういうプロジェクトに関する部分だけ抜き出してということもあり得るわけですね。
○永田参考人 その点については、申しわけございません。
○桑島委員 B氏という方は5月15日に退職されていますね。その後のインタビューには退職したことを理由に応じないということもしばしばあったようですけれども、既に2月とか3月の時点でいろんな内部調査が入ったり、B氏の関与がかなり疑われているということがあったわけですが、なぜそういう人を退職させてしまったか。
○永田参考人 退職したというよりも、本人は2年少し前に既に社員としての身分については定年退職し、その後、契約社員の身分でございました。今、桑島先生がおっしゃいましたようにいろんな疑問が出てまいりましたので、3月末で本人は辞めると言ってきたのですけれども、会社側からは延長をお願いして、5月までということで事情聴取を図ってまいりました。ただ、本人が辞めるというのを会社は強制的に引き止めるわけにはまいりませんので、結果として5月15日で退職したという経緯でございます。
○桑島委員 それから、B氏はいろいろな委員会に出ていますけれども、その出張費というのは会社から出しているのですか。
○永田参考人 はい。臨床研究をサポートするというのが元社員の所属している部門の本来のミッションでございまして、業務として出張しておりました。
○桑島委員 それは会社のどの部門ですか。
○永田参考人 当時はマーケティング部門に所属しておりました。
○桑島委員 マーケティング部門から出ているわけですか。
○永田参考人 はい。
○曽根委員 先ほどの説明で、奨学寄附金が悪いという感じがするのですが、私はそうは思わないのです。奨学寄附金というのは日本独特のシステムで、医科大学全部調べても研究費の半分が外部資金。そのうちの65%が寄附金という実態であり、米国では9割が公的資金で研究されているという実態があります。むしろ問題は透明性の確保で、企業からの公開、大学側からの公開、研究している人からの公開がなされていなかったというのが大きな要因ではないかと思います。
今回、多額の寄附金が例えば京都府立医大に提供され、Kyoto Heart Studyが実施されたわけですが、最初の研究の企画からいろんな形でノバルティスB氏が関与しているということは、企業が依頼した医師主導の大規模臨床試験ととるので理解してよろしいですか。
○永田参考人 いや、先ほどの御質問のお答えの中にもありましたように、私どもから真っ先に持ちかけた話ではないという理解でおります。これは研究者の先生が当時、新しい機序の降圧剤としてARBが出てまいりまして、海外ではデータがあって、日本人のデータを何らかの形で研究して出したいという、そういうお考えがあったのだろうと思います。そのお考えが私どもの担当者が病院あるいは大学を訪問したときに聞いて、その中で臨床研究を実施するという形に発展したのではないかと思っております。
○曽根委員 というのは、そのB氏が最初に所属していたのがマーケティング部門ですね。要するに販売促進という形で。ほかの報告書を見ても、そういうような記載があり、あれ?という感じがしたのですが、企業側と大学側の調査結果の乖離が余りにもあり過ぎるのではないかと思います。
○永田参考人 その点については私どもも感じておりまして、私どもはデータを持っておりませんので、ですから先ほどの究極の真相のポイントというのは、誰が何のために、特にデータのマネジメントのどのプロセスの時点でやったかというのを突き止めない限り、この問題の本当の原因はわからないと考えております。ですから、その点は元社員も最近になってわかってきたようですし、私どもは関係する社員のメール、PC、サーバに残っているものを根こそぎ、量で言いますと2,000GB、文書数で言うと150万、関連文書で言うと12万を点検したのですけれども、こういった私どもの持っている情報と、各大学でお持ちの情報とを突き合せれば、またさらに今わからない点もわかってくるのではないかと考えています。
それから、今日、各大学の御説明をお伺いしましたけれども、今この時点でも少し齟齬があるなというのは感じておりまして、こういった点も今後大学と真相解明する中で、こういうところは違うというのはお話できると思います。
○曽根委員 もう一つは利益相反に対する考え方です。この報告書の中で2002年とか2003年当時というのは利益相反に関する社会的な認識とか、会社の中でもしっかりしたものがなかったということが書かれていますね。しかし、ノバルティスと言えば世界ナンバー2の会社でグローバルに展開している。いわゆる弱者である被験者、患者さんを相手にして臨床研究とか臨床試験を支援することについて、特に問題なのは会社の社員が関与していたという事実です。これは1990年から利益相反は非常に活発になって、アメリカではいろんな悪い事例があって2000年以後はものすごく厳しくなっています。日本でもヘルシンキ宣言が2000年に利益相反のことがちゃんと書いてあるし、日本の臨床研究の指針の中にも2003年には出ているのです。そういう状況の中で知らなかった、わからなかったということは、グローバル企業として本当にそれでいいのか。
○永田参考人 これは誠に申しわけございません。社内のルールの制定も遅れましたし、医師主導臨床試験における利益相反の認識が非常に遅かった、弱かったということでございます。
ただ、2003年の倫理指針というのは、あくまでも臨床研究の対象となる患者さんあるいはその他の方々の例えばデータプライバシーであるとか、その他の倫理の問題であって、特に医師主導臨床研究の利益相反については言及されなかったのではないかと思っております。
○曽根委員 しかし、上司はB氏が5つの臨床試験にかかわっていたことを知っていたわけですね。そうしますと、それにかかわっていたこと自体が臨床研究の信頼性が損なわれるという事態に。
○森嶌委員長 お話中ですけれども、今ここでその議論をなさることではなくて、それは後でしていただきたいと思います。
○曽根委員 そういう認識があったかどうかだけ教えていただきたいと思います。
○森嶌委員長 それは同時にもろ刃の刃で、私の大学での経験から言うと大学のほうに向けられる問題もあるので、これは後ほど御議論をいただきたいと思います。
これは議論を打ち切るというのではなくて、今日はむしろ問題提起をする。これは何も製薬会社はいいと言っているのではなくて、問題は今日提起されているわけですから、先ほど申しましたように新幹線で帰らなければいけない人もいるし、もう一つ議題が残っているわけですから、ここで議論を長引かせることではなくて、一応ここで問題提起をしていただいたということにさせていただきたいと思います。
それでは、またおいでいただく、あるいはいろいろ質問が出ると思いますけれども、よろしくお願いいたします。
議題3で今後の検討の進め方ですが、時間がありませんので事務局のほうも簡単に何を考えているかということで、余り細かく説明をしないで、簡単に最後の1枚が何を言いたいのかということだけ説明していただきましょうか。
○河野治験推進室長 事務局でございます。資料3に基づき御説明いたします。
この委員会での論点の案として一案を考えましたので、これをたたき台に御検討願いたいと思います。
論点1でございますが、臨床研究の信頼性及び質の確保をすることが必要であるが、具体的にどのような方策がとり得るのかということ。
論点2でございますが、大学等研究機関と製薬企業との間の透明性の確保について具体的にとのような方策をとり得るのかということ。
論点3でございますが、ノバルティス社が一連の誤ったデータに基づきディオバンに関する広告等の販売促進活動を行ったことや、売上金額についてどのように考えるべきかということ。
論点4につきましては、これら1~3を踏まえまして、我が国の臨床研究に対する信頼回復に向けた関係者の取り組みとしてどのようなことが考えられるのか。
このようなことが論点として考え得ると思いました。御議論をお願いしたいと思います。
○森嶌委員長 かなり抽象的なのですが、大きく言って1つは倫理指針という、これは別の委員会もあるようですけれども、その臨床研究に関する倫理指針というか倫理問題という、これは大学もあります。企業の問題もあります。これも大学の場合は文科省、国がコントロールできるものと、そうでないものといろいろあると思うのですが、そういうところでどういう倫理的なものなのか、それとも規制ができるのかという問題もあります。そういう問題が1つ。
もう一つは論点3のように、今日お話がありました、ノバルティス社や各大学の対応も含めた具体的な詳細な事実関係をこの委員会だけで調査するというのはかなり難しいとは思うのです。事実関係について各大学でもお調べでしょうが、この委員会ができるだけ独自の公正な調査をしてある程度の事実解明をするということは、多分、社会的に期待されていると思いますので、ノバルティス社の事案について、ある程度か、かなり徹底したかはともかくとして、事実関係を調査して出すという具体的な問題が一つ。もう一つは、今回の事件を契機として、これから臨床研究についてどういうルールを考えるかという抽象的なレベルの問題の2つの問題がこの論点1~4の中に入っています。そこでかなり時間が限られている中で、では我々としてはどういうスケジュールでこれらの問題に取り組むのかということについて、事務局では何か素案なりお考えですか。
○一瀬課長 まず、本日おいでいただきました参考人の皆様方にさらなる質問があることにつきましては、各委員からいただいたものを事務局でまとめて、各参考人にお願いをして回答いただくという形で効率的に進めたいと考えております。
また、先ほどもお話に出ましたけれども、今回はそれぞれ大学等の組織を代表される方々からお話を聞いたのですが、やはり研究に実際に携わった方、そういった関連の方々から直接お話を聞きたいということは恐らく委員の皆様から上がると思いますので、どういった方からお聞きになりたいかというお話をいただけましたら、委員長と事務局と相談しながら日程等を組んでいきたいと考えております。
○森嶌委員長 それぞれの人のプライバシーもありますし、人権もありますから、刑事裁判でも、法律で決まっていない限り、強制的に呼び出すわけにもいきません。この委員会は幾ら厚生労働省がバックについているからといって、嫌な人を強制的に呼び出すことはできません。
その意味では、最近では、説明責任があるというような理由づけで、社会的に問題になると、嫌でも何でも正義の味方は我にありというような態度で、ややもすれば世論を背景に強制することが割合多いのですけれども、ルール・オブ・ローという観点からは、法的な根拠もなしに強制はできません。しかし、他方で真実をなるべく追求したい、透明性を高めたいというのがありますので、それぞれの委員でこういう人の意見というか知恵を聞きたい、こういうことをやったらどうかというのがありましたら、今、言ったような限界がありますから、できるかできないかわかりませんけれども、事務局にお寄せいただけないでしょうか。そこで時間の制約と我々の権限と申しましょうか、我々のできること、できないことがありますので、フルの委員会でやれるのか、公開でやるのか、プライバシーの問題がありますから非公開でやるのかなど、いろんな問題があります。皆さんと御相談をしますけれども、具体的な会議の開き方についてプランを立ててみたいと考えていますので、今日のヒアリングの結果を前提にしてぜひとも皆さんのお考えを事務局に早急にお出しいただければと思います。
時間がもう9時5分前になりましたので、何かございましたら。
○花井委員 座長おっしゃるとおりでいいと思うのですが、やはり基本的には資料3はかなり論点が先走っていて、今回の何が問題だったかを土台としてこの資料3が提案されるという流れだと思うのです。時間が限られているというのはおっしゃるとおりなのですが、まず今回ヒアリングした方々に対してもう一回、疑問点について紙で出す。それはいいと思うのですけれども、やはりどう考えても可能であれば、当該元社員の方や論文のファースト・オーサーの方の話は皆さん、やはり直接伺いたいと思っていることについて異論はないのではないかと思います。それは非常に難しい幾つかのハードルがあるにせよ、基本的にこの委員会として、それはできれば行うべきだということは決めてもいいのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○森嶌委員長 私もそれは考えていますので、どういうことをしたいか出してくれと申し上げたのはそういうことです。時間が大分押しているにもかかわらず、皆さんがお聞きになるのを黙っていたのは、皆さんの今日のヒアリングに対する皆さんのお考えを出していただきたいからです。できるだけ花井委員がおっしゃったような方向でやって、今、申し上げたような時間と、我々ができることできないこととの中で、できるだけのことはやりたいと思います。ほかの方もよろしくお願いいたします。
これ以上、時間をとりますと新幹線に乗りおくれる方も出てまいりますので、特にどうしてもというのはほかの方ありますでしょうか。
○桑島委員 ヒアリングの場合、単独のヒアリングではなくて、今日の大学側と会社側とで矛盾がありますので、同じ場所で聞きとりをお願いしたいと思います。
○森嶌委員長 それでは、事務局から何か。
○一瀬課長 次回の会議は9月2日17時半から予定しております。場所等はまた追って御連絡したいと思います。
先ほどもお話がありましたように、お伺いになりたいことでありますとか、呼んでもらいたい参考人、そういった方につきましては事務局から改めて御連絡差し上げますので、それに返信していただければと思います。
また、本日の議事録につきましては、委員の皆様に御確認いただいた上で公開させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
事務局からは以上です。
○森嶌委員長 議事録はいずれにしても公開ですけれども、ヒアリングが呼ぶ人によっては非公開ということも皆さんと御相談の上、決めていきたいと思いますので、これもあらかじめ御了承いただきたいと思います。
それでは、長時間にわたりましてありがとうございました。
<問い合わせ先>
医政局研究開発振興課担当:高江、本間
電話: | 03-5253-1111(内線2542、2590) |
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