ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会)> 第10回中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会 (2013年5月29日)




2013年5月29日 第10回中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会

○日時

平成25年5月29日(水)11:40~12:48


○場所

厚生労働省専用15・16会議室(12階)


○出席者

関原健夫部会長 印南一路部会長代理 西村万里子委員 森田朗委員
矢内邦夫委員 白川修二委員 花井十伍委員 
石山惠司委員 田中伸一委員 伊藤文郎委員
鈴木邦彦委員 安達秀樹委員 嘉山孝正委員
万代恭嗣委員 堀憲郎委員 三浦洋嗣委員
土屋裕専門委員 昌子久仁子専門委員 田村誠専門委員  加茂谷佳明専門委員
池田俊也参考人 福田敬参考人 田倉智之参考人
<事務局>
木倉保険局長 宇都宮医療課長 井上医療課企画官
竹林保険医療企画調査室長 近澤薬剤管理官 田口歯科医療管理官 他

○議題

1 具体的な評価の活用手法について

○議事

○関原部会長
 おそろいでございますので、ただいまより第10回「中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会」開催したいと思います。
 まず委員の出席状況ですが、きょうは全ての委員が御出席でございます。
 なお、審議官は公務のために御欠席です。
 それでは、本日の検討の進め方につきまして、確認をしたいと思います。
 資料の中医協費-1にございますように、前回に引き続きまして「○ 具体的な評価の活用手法について」を議題といたします。
 前回は、福田参考人から、諸外国での費用対効果評価の活用方法について御説明をいただき、それにつきまして、議論をいただきました。
 前回説明がありました諸外国の例を参考にいたしまして、きょうは、我が国における費用対効果評価を用いた医療技術評価を検討するに当たりまして、幾つかの論点について御議論をいただければと思います。
 事務局より資料が提出されておりますので、簡単に御説明をお願いします。井上企画官、よろしくお願いいたします。
○井上医療課企画官
 医療課企画官でございます。
 資料中医協費-1、中医協費-2に基づきまして、簡単に10分程度で御説明いたします。
 中医協費-1は、いつもどおりの資料でございまして、本日は当面の検討事項の中のどこを議論するかという紙でございます。
 本日は、当面の検討事項の一番最後、具体的な評価の活用手法の2回目という形でございます。
 次に中医協費-2の資料に移ります。
 費用対効果評価の結果の活用方法については、前回、福田参考人からの資料をもとに議論いたしましたが、まだ議論が十分に尽きておりませんので、諸外国での活用方法という前回の資料に引き続き、これを日本で使う場合にどのようなことが考えられるかということを事務局で整理した資料を作成しました。既存の資料を中心に再構成した形ですが、簡単に御説明をいたします。
 中医協費-2のスライド1「【総論】費用対効果評価と医療技術評価」。基本的な考え方を既存の資料で、スライド2、3、4、3枚でお示しをいたしました。
 復習になりますが、スライド2「費用対効果評価の考え方」です。基本的には増分費用効果比というもので、既存の技術と新しい技術を比較する形でございます。比較をするときに、分子、分母があって、分子のほうは費用、分母のほうは実際の効果ですが、この効果は生存年なり、QALYなり、さまざまな単位があり得、どういう単位を用いるのかということは、まだ議論の整理ができていない状況でございます。
 スライド3は「費用対効果の優劣とICERの関係」でございます。費用対効果が劣るというのは、効果1単位増加当たりの金額によって、定量的に示すことができるという形でございます。
 スライド4は、実際の評価のプロセスですが、定量的に示したものが全てではなく、定量的な評価をするアセスメントの部分から、今度はそれを用いて、さらに臨床的、倫理的、社会的、さまざまな影響を考慮するアプレイザルの部分、さらにアプレイザルを踏まえての最終決定、こうしたプロセスがあり、単純に書かれた数字だけの判断ではございませんというのが、スライド4で示したところでございます。
 各論がスライド5からでございます。これを実際に医療技術評価にどのように用いるのかということでございます。
 スライド6では、実際の活用のあり方として、大きく2つあり得ますということをお示しいたしました。1つは、スライド6の○1で示しました、保険償還の可否判断。2つ目は、○2で示しました、保険償還価格への反映。必ずしもこの2つはクリアカットではございませんで、この2つの間にさまざまなバリエーションがございます。
 そのバリエーションを含めて、諸外国の現状を一覧表にしたのが、スライド7でございます。各国におきまして、実際に費用対効果の評価というツールをどう使っているのか。保険償還の可否に使っている国もあり、保険償還価格への反映に使っている場合もあり、その間のバリエーションである、患者アクセスの確保のためのさまざまな調整に使っているケースもございます。
 スライド8、9におきまして、実際の保険償還の可否に用いる、あるいは償還価格への反映に用いるということは、どういうことなのかということを、模式的にお示しいたしました。
 スライド8では、保険償還の可否の判断材料に用いる場合、増分費用効果比で一定の基準値を設け、その基準値よりも費用対効果が劣るは場合には、技術A、推奨しない。場合によっては、技術Bのように、費用対効果は劣るけれども、さまざまな社会的、倫理的影響を踏まえた上で、保険償還を推奨する場合もあります。
 スライド8の技術C、技術Dのように、費用対効果が優れる場合には推奨する。こうした償還の可否に用いるというのが、1つのあり方でございます。
 スライド9にお示しをいたしましたように、今度は償還価格への反映に用いる場合には、費用対効果が劣る技術A、Bにつきましては、費用対効果が一定の基準値以内になるまで、価格を落とした場合に償還をするという形でございます。
 スライド10では、こうした償還の可否、価格への反映以外の幾つかの用い方に関しまして、説明をいたしました。
 スライド10にございますように、例えばオーストラリア、英国では、費用対効果が優れないとされた医療技術について、単に保険償還を認めない、あるいは価格を下げる以外のやり方をとるケースがございます。
 例えばあらかじめ定めた患者数までは償還するけれども、それを上回った場合には、公的医療保険以外による提供とする。
 あらかじめ定めた投与量・投与期間までは償還するけれども、上回った部分は、公的医療保険以外の提供とする。
 スライド10の3ポツ目に示しましたように、アウトカムが優れたものは償還するけれども、結果として、優れたアウトカムが得られなかった症例については、公的保険では償還をしない、あるいは償還された費用を返還する。
 そうしたことは、実際にオーストラリアあるいは英国において、どのようにしているかということを具体例として例示をいたしましたが、スライド11、12でございます。
 各論の第1弾目は、用い方に関して、これまでのスライドで説明をいたしまして、スライド13以降、もう一つ、もう一つの論点といたしまして、費用対効果の評価を使うタイミングはいつかということに関しまして、諸外国の事例から論点として整理をいたしました。
 結果を活用する時期につきましては、諸外国でも実際の上市の前後のタイミングにするケースもあり、あるいは上市後、1年程度経過した後等にするケースもございます。各国の実際の状況をスライド13にまとめてみました。
 それをさらにイメージとしてお示ししたのが、スライド14でございます。例(1)、例(2)、例(3)と3つのケースを設けました。いずれも横軸は時間軸でございます。
 例(1)におきましては、臨床開発の段階でのデータをあらかじめ提出していただき、保険収載の前の段階で提出データのレビュー、アプレイザルを行い、保険収載の段階で費用対効果の評価に基づいた収載をする。
 例(2)におきましては、基本的には、同じように臨床開発の段階のデータをあらかじめ提出していただいているが、実際の保険収載のときには、時間的に間に合わず、いただいたデータをレビューする期間を、保険収載後1~2年程度用いて、その後に改めて評価をし直す。
 例(3)におきましては、既存の仕組みで決定された価格で数年間、実際の市場で使う中で臨床開発中のデータ、場合によっては、市場で使いながら、用い得たデータも含めてレビューをし、アプレイザルをし、その結果、時間的には保険収載後、数年経った後で費用対効果のツールを用いた判断をしていくというのが、例(3)でございます。
 こうしたタイミングについても、幾つか考えがあります。
 以上、これまでの論点を整理したのが、スライド15でございます。結果の活用について、仮に我が国の医療保険制度において、費用対効果評価を用いた医療技術評価を用いることを検討する場合には、幾つかの論点がある。
 その論点は、ここにまとめましたように、まず費用対効果評価の結果の活用方法、償還の可否、価格への反映、あるいはそのほかの幾つかのバリエーションをどのようにするか。そのほかの幾つかのバリエーションというのは、下記のようなさまざまな調整等によりと書いたところでございます。
 3つ目の論点といたしましては、結果活用の時期をどうするか。保険収載の前後にするのか、一定の時間を置いた後にするのかという論点がございます。
 そのほか、海外の事例に必ずしも倣うことはなく、我が国の医療保険制度において、費用対効果評価を用いた医療技術評価を検討する場合、こうした海外の事例からの参考のみならず、我が国として、独自に行うさまざまな検討課題は、どのようなものがあるかということも論点になるかと思います。
 本日はこのような論点について、御自由に御意見をいただければと考えております。
 以上でございます。
○関原部会長
 どうもありがとうございました。
 お手元には、前回、福田参考人から御提出いただきました、諸外国の評価の活用方法という資料も添付されております。
 それでは、きょうはフリートーキングということでいきたいと思いますので、御自由に発言をいただけたらと思います。何か御意見はございますか。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員
 それでは、幾つかお話させていただきたいと思います。
 資料中医協費-2の4ページに、医療技術評価のプロセスとあります。ここのアセスメント(分析)というところには、有効性・安全性等の評価の実行と書いてあります。一方、資料中医協費-2(参考)の29ページには、日本ではPMDAで有効性・安全性の評価を行うと書かれているのですが、実際、PMDAでそれを行ったとしても、医療技術評価のプロセスにおいて、その有効性・安全性がどの程度のレベルのものなのかもう一度見る必要があると思っており、そういう意味で書かれていると思うのですが、それでよろしいのかどうかということが、1つございます。
 それから、最後の論点のところでございますが、これは前回とほぼ同じ資料ですので、各国の例を見て考えますと、例えば中医協費-2の7ページ目の表を見ても、左の3つの国、スウェーデン、イギリス、オーストラリアは、税方式の公営医療の国です。右の3つ、フランス、ドイツ、オランダが社会保険方式の国になりますので、そこに違いがあることはわかると思うのですが、税方式ですと、医療はある意味では配給制ですが、社会保険方式ですと、保険料を払えば、受診は権利ということになりますから、両者では医療に対する考え方が違うと思います。その意味では、保険償還の可否か償還価格への反映かということを考えますと、我が国としては、ほかの社会保険方式の国と同じように、保険償還可否の判断ではなく、償還価格への反映になると思います。
 次に書いてある、患者のアクセスを確保することをどう思うかということですが、これは、それらの国々の例を見ますと、むしろ償還の可否に用いている国で、否認された場合の救済措置という意味合いが強いと思われますので、そういう意味で使われているという感じがします。即ち我が国においては、そうしたことは、基本的に行われないことになるのではないかと思います。保険償還価格の反映をした上で、さらにということはあるのかもしれませんが、外国の例を見ると、そういう考え方になるのではないでしょうか。社会保険方式という意味でも、事実上、使ったり、使わなかったりということは難しいのではないかと思います。
 結果活用の時期ですが、中医協費-2の13ページを見ますと、医療の税方式か、社会保険方式かにかかわらず、上市の前後というのが圧倒的に多くなっています。ドイツの場合は他と違った制度になっているので、これはわが国でも保険収載の前後になるのではないかと思います。
 また、その他についてでございますが、これも前回お話させていただいたことと重なる部分もあると思いますけれども、QALYをどのように使うのかということです。各国を見ますと、イギリスなどのようなQALYありきということではない国々も多く、あるいはイギリスも変わってきているという説明が、前回の資料の中でございましたが、中医協費-2(参考)の36ページにあります。イギリス自体が患者アクセス確保のために、償還の可否から償還価格の決定へと、2014年度から移行するということもあり、そういう全体の流れを考えますと、QALYの使い方にもかなり多様性があるようですので、社会保険方式のわが国では、むしろ全てQALYありきではないという意味でいえば、使うにしても、その他の指標の1つになると思います。
 評価対象ということですが、多くの国々の状況を見ますと、中医協費-2(参考)の6ページでございますが、社会保険方式の国を見ましても、ドイツはちょっと違っているわけですけれども、新規の外来医薬品と書いてありますので、そのうち、さらに限定したものが考えられます。フランスを見ますと、追加有効性のクラス分類の上位を希望し、財政規模の大きいものと書いてあります。オランダでは、代替可能な医薬品がないものとありますが、そうした条件をさらに絞り込んだものになる気がしますし、医療機器や医療者等の技術というものは、社会保険方式の国では対象とせずということでそろっておりますので、わが国でもそういったものは対象とはならないのではないかと思います。
 さらに必要とされるもの、今後、検討する必要があるものとしては、全体の枠組みをどのようにするのか、あるいはどこで行うのか、そういったことの議論がまだ十分に行われていないと思います。また、誰が行うのか。人材育成も必要だと思われますが、そういったものも、まだ議論されていないと思います。
 費用対効果分析の話を、これまでずっとしてきたわけですが、それ以外の前後の最終的な決断に至るまでのプロセスや考え方について、何を加えて決断するのかということも、まだ漠然とした話しか出ておりませんので、そうしたものも必要になると思います。また、そういったものを包括的に考えながら決断していくときに、中医協という場以外に、必要なところがあるとしたら、それはどういうところなのかとか、そういう議論もされていないと思います。
 それから、費用対効果分析のための手法のガイドラインを作成する必要があります。こういったことは、まだ検討が十分にされていないか、あるいは全くされていないところだと思いますので、そうした議論がこれから必要になってくると思います。
 以上です。
○関原部会長
 どうもありがとうございました。
 非常にたくさんの御意見が出たかと思いますが、最初に有効性・安全性につきまして、今回のアセスメントに記載されている有効性・安全性の話と、PMDAにおける安全性との関係について、これは御質問だと思いますが、まずそれをお答えいただけますか。
 企画官、どうぞ。
○井上医療課企画官
 医療課企画官でございます。
 御照会の点は、中医協費-2の4ページ目のアセスメントのところにある、有効性・安全性等の評価の実行という項目に関するものであったと思います。これは我々も不明確な書き方だったということを、今の御指摘を受けて、気がつきました。
 再度確認させていただきますと、薬事承認が必要な技術、例えば医薬品医療材料等におきましては、有効性・安全性というのは、薬事承認の段階で確認すべき事項でございます。薬事承認を得た医薬品医療機器等について、改めまして、費用対効果の評価のプロセスで評価をし直すということは、想定しておりません。
 ここで書いてあることは、2つ意味がございまして、1つは、薬事承認の段階では、有効性・安全性は確認をされているんですが、それはスライド2で示しましたような、増分費用効果比という観点からの評価ではない。そういう観点からの評価は、薬事承認のプロセスではなされていないので、仮にやるとすれば、ここの費用対効果のところになるということが1つです。
 もう一つは、費用対効果評価の対象となる技術につきましては、今後の議論の結果によっては、薬事承認を得ていない技術が対象になることも、可能性としてございます。つまり医薬品医療材料は、薬事承認を得ておりますが、そうではない、薬や材料によらない技術に関しては、薬事承認上の有効性・安全性の確認というプロセスがございません。仮にそうした技術をも費用対効果評価の対象にするのであれば、そうしたものについては、費用対効果の評価の中でのプロセスに含まれるのではないかという考え方でございます。
 いずれも、参考人からさらに追加なり修正があれば、お願いできればと思います。
○関原部会長
 福田先生、御意見ございますか。
○福田参考人
 福田でございます。
 今、企画官から御説明いただいたとおりだと思いますが、1つ追加させていただくとすれば、費用対効果の評価を行う際に、増分費用効果比を算出いたします。2ページ目で御説明をいただいたとおりです。その場合には、比較対照技術との間で、追加的な効果と費用を考えるということでございます。
 比較対照技術を何にするかというのは、以前にも少し話題がありましたが、諸外国で行っている一般的なアプローチでは、新しい技術によって、最も置きかわると考えられる技術を比較対照にしています。薬事承認のときに、必ずしもそういうものを比較対照として、有効性・安全性の評価をしているとは限らないケースがあると思いますので、その場合には、もう一度ここで設定した比較対照との間で、追加的な有効性・安全性を評価する、これが改めて必要になる場面がある、諸外国の例ではそうなっていると思います。
○関原部会長
 ありがとうございました。
 鈴木委員の2つ目、税方式、社会保険方式等々の違いから、結局、償還価格への反映をさせるのではというのは、御意見ということでよろしいですね。
○鈴木委員
 意見というか、そうなるのではないでしょうかということです。そうでないと、外国との整合性、比較ができなくなるのではないかと思います。
○関原部会長
 その次は、結果活用の時期で、みんな上市の前後だということです。これもそうなんだという御意見でした。
 4つ目は、QALYはどう使うのかという御質問だと思いますが、そういうことでよろしゅうございますか。
○鈴木委員
 意見です。これも以前から言っていますけれども、全てQALYでというのは、なかなか難しいのではないかということです。
○関原部会長
 次は評価対象についてのお話をされた。それから、全体の枠組みをどうするのか、あるいは中医協以外の場をどうするのかというお話をされましたが、今回、中間取りまとめをする前の段階としては、最初に御説明があった、当面の検討事項として(2)の具体的な運用方法ということで、これをベースに中間取りまとめをした上で、具体的な評価の対象であるとか、枠組みなどを検討していくと御理解いただいたほうがいいのではないかと思うんですが、企画官、それでよろしゅうございますか。
○井上医療課企画官
 企画官でございます。
 結構でございます。
○関原部会長
 白川委員、どうぞ。
○白川委員
 今、中間取りまとめという話が出ましたが、中間取りまとめも何もまだ具体的な議論はしていない。今まで福田先生から御教示いただき、その中で、我々が気づいたことについて、幾つか意見は申し上げましたが、日本でこの仕組みを導入するにあたり、どういうふうにしたらいいんだろうかとか、鈴木先生がおっしゃったように効果指標はQALYだけでいいのかとか、いろいろあったかと思いますが、そういう議論を進めた上で、中間取りまとめにしていただかないと、このまますっといってしまうことは問題だと申し上げたい。
 もう一つは、スケジュール面で、来年4月の改定までに、どこまでやるのだということは調整をしておかないといけない。費用対効果評価は、特にヨーロッパ等で先進的に取り組んでいますし、我々としても、そこのいい部分は日本の制度にも取り入れたいと思っております。しかしながら、ジャパナイズした形でないと、合意も得られないでしょうし、そのための物理的な時間も一定程度は必要だと思いますので、その辺も含めて来年4月までに何をやるのか、あるいは来年4月からやるのか等、を含めて、一度フリーディスカッションをした上で、次のステップに進んだほうがいいのではないかと考えております。
○関原部会長
 どうもありがとうございました。
 私の説明が悪かったわけですが、それに異存はございません。もちろんQALYも今まで議論してきたわけですし、まさに今日なり次回でも議論するということで、中間取りまとめまでにそれらを議論した上で、具体的な評価の対象をどうするかとか、枠組みなどは、その後にする議論ということで、QALYについては、従来議論されてきたわけですから、きょうもまた議論していただく項目だと考えております。
 もう一つ、今、御質問があったように、今後の方向といいますか、スケジュール感ですが、むしろきょうの議論をお伺いした上で、今後のスケジュール感を決めるということでよろしゅうございますか。あるいは今、何かアイデアがございますか。企画官からお願いします。
○井上医療課企画官
 企画官でございます。
 我々事務局といたしましては、今後のスケジュール感につきましても、この場で各委員のお考えを踏まえて、部会長とともに整理してまいりたいと考えております。
○関原部会長
 スケジュールというのは、そういうことでございまして、今ここで決めることではなくて、これから議論をいただいて結構という話でございます。
 安達委員、どうぞ。
○安達委員
 鈴木委員、白川委員がおっしゃったとおりだと思っています。
 中医協総-2の15ページの論点に挙げていただいていますけれども、1番目の論点が恐らくこれをどう使うかというところの大きなポイントであって、2番目のような使い方というのは、日本の皆保険制度の中では、我々は望ましいとは必ずしも思いませんということだと思います。
 1番目の2つをどうするかという議論をするときには、中医協総-2の3枚目のスライドに書いてあるICERの議論ができないと、この議論が進まない。つまり今までの御説明にもあったように、PMDAの認定の中では、ICER的考えが入っていないわけですから、ICER的考えをどう入れるかということが論点だろう。文字通りICERの効果1単位増加当たりの費用という、効果1単位をどう決めるんだということの議論がまだ尽くされていないわけで、今までは御説明を聞いてきた。その中で、我々はそれぞれの問題点があるということは御指摘しましたけれども、最終的にQALYだけでいいということはもちろんないでしょうが、日本の医療制度において、1単位というものをどう決めるかということの議論を尽くさなければいけない。
 鈴木委員の御指摘は、それはそう簡単ではなくて、我々だけでは恐らくやれないので、専門的な方たちの間である程度の組織をつくって、原案の幾つかの例示をしてくださいということも含めて、その必要性を言われたと思います。
 今後の議論というのは、日本の保険制度の中において、どういうものを1単位と定義するかということをまず決めないといけない。そこに絞って議論した上で、使い方をそれに準じて決めるということが、議論の流れだろうと思います。ですから、一体どのぐらい時間がかかるのかということは、我々もなかなか見通せないでいるわけですが、少なくとも来年4月までに必ずこれに対応するような医薬品や医療機器等々、あるいは医療技術等々が、1つでも、2つでも入らなければいけないという、時間限定の話ではないと思います。
 一番大事なことは、ICER的考え方を入れるということで、恐らく皆さんが合意しておられる点で、そのときのICER効果1単位というものを、何を1単位にするかということを決めるという議論が本質的に必要だろうと思います。
○関原部会長
 どうもありがとうございました。
 今の点はどうしましょうか。
○安達委員
 部会長、済みません。1つだけ追加させてください。1単位を決めるときに、そう簡単ではないということを鈴木委員がお話になって、どういう形でそれを決めるんですかという質問、どういうプランなんですかという質問があったと思うんですが、それについて、事務局はどうお考えになっているのかということは、お聞かせいただきたいと思います。
○関原部会長
 関連質問ですか。嘉山委員、どうぞ。
○嘉山委員
 関連質問です。今まで鈴木先生、安達先生、白川先生がおっしゃったことと同じことなんですけれども、中間取りまとめと言いながら、今までの意見がきょうの資料に全然反映されていないんです。
 例えば一番大事な今のICERについても、中医協費-1に目次が出ています。今まで議論してきて、企画官のお言葉をおかりすると、きょうは晴れの第10回目なんです。対費用効果でメモリアルなディスカッションなんですけれども、ずっときて、今、安達先生もおっしゃった効果手法の中身がなければ、ICERの1単位が何かはわからないわけで、それによって、制度の根本的なものが変わってしまいます。今まで我々も意見をたくさん言っているんですけれども、それがきょうの資料に反映されていないんですが、それはどうなっているんでしょうか。
○関原部会長
 企画官、お願いいたします。
○井上医療課企画官
 安達委員、嘉山委員の御質問にあわせてお答えいたします。
 まずはICERという考え方を費用対効果において用いていくとして、ICER増分費用効果比には、スライドの2ページの上にお示しいたしましたように、分母と分子がございます。分子の単位がお金というのは、間違えがないところですが、論点になっているのは、分母のほう、効果がどれぐらい増加するのかというものの単位は何なのか。これに関しては、これまでもまだこの部会でコンセンサスが得られていない、今後の検討課題ですという形で、明確にしております。そういう意味では、結論が出ていないという形でのコンセンサスは、この部会の中では得られていると考えております。
 安達委員の御質問である、これは今後どのように議論を進めていくのかという点に関しまして、事務局で考えておりますのは、こんなものがあり得ますという議論は済んでおりますので、今後はもし技術的に可能でありましたら、具体的な技術を例にとりまして、これをICERの分母の単位が生存年でやった場合、あるいはQALYでやった場合、その他の1単位の効果でやった場合、異なる指標でやった場合に、同じ例で結果がどれぐらい違い得るのか、あるいは違い得ないのか、そうした具体的な議論の材料をお示ししながら、さらに議論を進めていければよいのではないかというのが、今の事務局の基本的な考えでございます。そうした形で、具体例をもとに議論をしてもよろしいかということも含めて、この場でお諮りをしたいと考えております。
 以上でございます。
○関原部会長
 嘉山委員、どうぞ。
○嘉山委員
 よくわかります。そういうふうに具体性を持ってやればいいんですが、具体的なものをやるときに、どういうアイテムを使うのか。つまり効果がどのぐらい増加するのか、日本の制度の中では、どういう項目を入れていくのかということは、まだ決めていないわけです。ですから、もしもやるとしたら、QALYと同じやり方をやらざるを得なくなる可能性が高いんです。そうすると、ICERの分母のところがQALYと同じであれば、何で今まで議論してきたのかということになりますので、それを反映させていただきたいということを申し上げているんです。
 事実、イギリスでは、スライドの6にありますような2つの方法があって、イギリスでは保険償還の可否の判断を行っているので、現在、抗がん剤の36%がこれではねられています。イギリスは、ヨーロッパの中で、ドラッグラグがすごく進んでしまったんです。この制度のおかけで、あっという間に進みました。したがって、イギリスのQALYの尺度を使いますと、そういう結果が出ているということは、もうエビデンスとしてあるんですから、QALYの尺度をそのまま使うと、非常に危険な制度設計になりかねないので、我々が何度も言っているように、福田先生にもお願いしましたけれども、日本版のQALYをつくろうと言ったわけですから、それを具体的に出していただかないと、具体的なことをやるといっても、尺度がない。QALYではまた同じことになってしまうので、まず尺度をつくりましょう、それが第一歩だと思います。
○関原部会長
 石山委員、どうぞ。
○石山委員
 嘉山先生がおっしゃるのは、かなり理解できるんです。ページ4のアセスメントからデシジョンまで3段階があります。今まで福田先生からも、言葉は悪いですが、抽象論として伺っているんです。今まではこれが全部ぶった切られた議論です。できれば、ヨーロッパの先進国の分析の横筋で通したものを、具体的に提示されて、どういう仮定の議論があって、どういう結論が出たか。そうすると、嘉山先生がおっしゃるように、どこかの評価で、こういうことで、今、イギリスのケースは落とされた。そういうデータが厚労省になければいけません。そういう横軸のものを具体的に示していただかないと、どれを基準にしたらいいのかとか、そういう議論ができにくいと思います。
 ですから、今後、早い時期に、具体的なケーススタディー、こういうことをやって、これがカットされたとか、これは結論が出た、イギリスではこういうことだけれども、日本的に見たらこういうことだという議論ができないと、何も話が進まないと思いますので、ぜひ1回そういうケーススタディーをやっていただけませんか。
 以上です。
○関原部会長
 どうもありがとうございました。
 先ほど企画官からお話がありましたが、具体的なケースを幾つか用意した上で、問題点なり、方向性なりを含めて、議論をするという御提案もありましたので、それをどこまで広げるかは別としまして、幾つかの例を出して議論を深めたいと思います。
 ただし、今、おっしゃったように、各国のものを全部やるというのは、ちょっと難しいですね。
○石山委員
 全部ではなくて結構です。
○関原部会長
 そのときに、福田参考人なり、池田参考人なりに、各国のものもコメントをいただくということで、やっていただいたらと思います。
 花井十伍委員、どうぞ。
○花井十伍委員
 今、何人かの委員の先生方の意見と重なる部分もありますが、確かに安達先生がおっしゃるように、次の診療報酬改定という期限よりも、やることがあるということも得心できますし、今、嘉山先生が指摘したような話も当然だと思います。ただ、全部にICERというものが対応するとなると、多分相当困難で、実際は不可能な話になっていく。結局、現実のところとの折り合いでやるしかないということがあると思うので、やる気があるなら、ここまではやらなければいけないということも必要だと思うし、今、具体例と言いましたが、日本でやるなら、こういうふうにやるというところも含めて、具体例というところで進める時期ではないか。医薬品の評価の問題でも有用性・有効性というのは、概念として違うとか、評価でも、治験のデータで評価するのと、実際に市販後2年で見たデータというのは、有用性を評価する上でも全然違うわけであって、そういうことを厳密に評価していくと、誰が本当に評価できるのかということに、論理としてはなると思う。
 なので、具体的な診療報酬改定にどのよう使うかというところから、ある程度は考えないと、計画がなければ、話がまとまらないので、実際、事務局には腹案があると思うので、そろそろ手の内をお示しいただき、こんな感じでやりたいと言っていただかないと、難しいと思います。だから、具体例を出せというのに私も賛成ですし、一方で、導入するなら、する時期をなるべく早くするほうに向かわなければ、具体性がないところで終わってしまうと思います。
 以上です。
○関原部会長
 どうもありがとうございました。
 今のご意見は非常に大事なところです。具体例を出して、ここで議論をした上で、中間取りまとめをするが結論のようなものを出すのではなくて、今までの議論の整理をするということで、それを踏まえて、今後更にどういうふうに議論し、煮詰めていくかということだと思います。その辺のスケジュール感も含めて、きょうの議論を踏まえて、事務局ともよく相談をして、皆さんに御提示したいと思います。
 土屋専門委員、どうぞ。
○土屋専門委員
 具体例に近いところにおりましたので、私の知っている限りのことで、多少補足させていただきます。
 特に6ページと7ページにある費用対効果の活用方法の点です。これは鈴木先生がおっしゃいましたが、逆にいきますと、患者アクセス確保のために調整を行うというのは、あくまで結果であって、英国の場合、ほとんどがICERで閾値を設定して、それに合わないものが使えなくなる。その救済措置として幾つかの手段が使われており、その中にリスクシェアという形で、効かなかったら、企業がお金を負担するとか、ここには書いていませんが抗がん剤の場合は、嘉山先生がおっしゃいましたように、多くの抗がん剤が認められていませんので、キャンサー・ドラックス・ファンドというファンドを別に設定して、大体200ミリオンポンド、日本円でいうと、300億円ぐらいを各年で税金から拠出して、それで償還している。それもイングランドが中心です。そういうことで、記載のトーンが、費用対効果評価をアクセスの確保のために使っているようにされているが、少しミスリードだと思います。
 それから、価格への反映というのは、どういう定義で使うかですが、実際に価格に反映させようとして使っているところはまだありません。ここの表にありますように、フランス、ドイツが、今、それをやろうとしておりますが、フランスも去年の11月、ドイツは2011年からスタートしたので、実例はないと認識しています。唯一の英国が、閾値の設定で償還・非償還を決めるということで、先ほどの述べたような問題になり、救済措置が図られているということがあると思います。
 これは嘉山先生がおっしゃった点と全く同じですが、そこで最も問題になっているのが、ICERという単位をQALYベースに使っているのですが、利点は前回福田先生がおっしゃったように、疾患を横断的に使えるから、いろいろな薬剤に関して一律の評価ができる。英国では閾値を2万5,000から3万ポンドと置いて、そこに合わないものは償還しないとされるわけですが、これが非常に不評であり、我々も反対し、患者団体も多くの反対をしております。ですので、疾患ごとの指標をつくるかどうかは、前回、議論がございましたが、そういうところからも紐解かないと、本来、どのような制度を日本に導入できるかというところの議論には行き着かないと思います。
 以上です。
○関原部会長
 どうもありがとうございました。
 万代委員、どうぞ。
○万代委員
 今までのこととも関連しますので、意見を述べたいと思います。
 その前に質問がございまして、15ページの論点のところでも構わないと思いますけれども「-」の2つ目の患者のアクセスの確保のところで、1ポツ目にあらかじめ定めた患者数までは償還し、上回った部分は公的保険以外という場合、この文字を読みますと、早いもの勝ちみたいなにも思えてしまうんですが、実際にはどんな形で適応されているか、もし例がありましたら、教えていただければと思います。企画官でも、福田先生でも結構です。
○関原部会長
 福田先生、よろしゅうございますか。福田先生、お願いします。
○福田参考人
 諸外国の例でよろしければ、オーストラリア等で行われれている仕組みですが、予め決めた患者数までは保険制度で償還をし、それ以降は、メーカー、企業が負担する形がとられているのが一般的でございます。
○万代委員
 いずれにしろ、患者さんには償還されるということですね。
○福田参考人
 そうです。11枚目にあるとおりでございます。
○万代委員
 わかりました。
 これまでの皆様の意見について、全く反対する者ではございませんけれども、事務局の応援演説みたいな形で意見を申し上げれば、費用対効果をどのように導入するかということについては、非常に難しくて、1つのことを言い出すと、いろいろ関連してきてしまうものですから、行ったり来たりする。最初の数回はそうなりましたので、それでは議論が進まないということで、事務局に当面の検討事項ということで整理していただいたのは、大変ありがたいと思っております。
 その中で、本日、何をするかというと、5月29日は、具体的な評価方法の活用手法について、ひとまず議論したらどうかという御提案だと理解しております。もちろん論点の費用対効果の結果活用にどう反映するかというのは、費用対効果の評価をどう扱うか、どれがいいかということを判断してからでないと、活用については議論できないということはよくわかりますけれども、それを言っていると、先ほど申し上げたように、議論が行ったり来たりになってしまいますから、ひとまず論点の15ページの議論をしてはどうかと思います。
 そんなところで、私の意見を申し上げますと、基本的には制度の考え方の原則として、新規の技術について、費用対効果の考え方を入れてはどうかということがスタートでございますから、新規の技術ということであれば、論点の中の一番最初の保険償還の可否の判断云々というところについては、新規の技術を保険償還するかどうかという点については、中医協マターだと思いますので、その可否の判断に使うという点については、合意していいのではないかと思います。償還価格への反映については、先ほど申し上げましたように、ICERをどう判定するかとか、そういうことにも反映しますので、そんなことで、ここはペンディングにする。そんな形で議論をしていったほうが、事務局にまとめていただいたものは、私は大変評価しておりますので、議論を進めるという意味では、いいのではないかと思います。
 2番目の患者アクセスについては、国によって制度が違いますから、これを我が国のこれまでの保険の償還に考え方として入れるのは、抵抗があると思いますので、ここについては、議論すべきだと思います。
 3番目の結果活用の時期については、先ほど申し上げたように、新規の技術であれば、保険収載後数年経ったところでは、もう新規ではございませんので、それについては、この議論から外れて、1~2年を経過した後も外れる。ですから、新規の技術に限定するとすれば、保険収載の前後にならざるを得ないというのが、私の意見でございます。
 こういった手法で、今、皆様がおっしゃるように、具体的な事例で、日本モデルとしていいものができるということであれば、先ほど企画官にはあえて確認いたしましたが、既存の技術についても、費用対効果の考え方を入れて、再評価することもあり得るのかといったら、そうだという返答でございましたので、私はそういう認識でございますので、新規の技術について、一定程度いいモデルができれば、それは既存の技術についてもやっていくということだと思います。
 さらに申し上げれば、言い過ぎかもしれませんけれども、森田会長がおっしゃったように、費用対効果の考えを入れないということはあり得ないだろうと思っておりますし、それについては中医協だけの議論ではなくて、保険償還するかどうかということだけかもしれませんが、医療を受ける人たちがどういうことを考えるかということも、あわせてやらなければいけないので、その部分までは踏み込めないところがあると思っております。
 以上です。
○関原部会長
 どうもありがとうございました。
 森田先生、何かありますか。
○森田委員
 今、名前が出たので、私が発言したほうがいいかどうかわかりませんけれども、私自身はこの問題をどういうふうに認識をしているかということを、お話しておきますと、今、申し上げましたように、医療財政そのものが厳しくなってきているときに、限られた医療財源という資源をどのように使うのが有効かということを、考えなければいけないような状況になっているということです。
 これにつきましては、もちろん財源そのものをふやすという選択肢が可能であれば、それは望ましいことなのかもしれませんけれども、仮にふやすことができたとしても、需要のほうが相当多くなってきているのが、世界的な情勢ではないかと思っております。したがいまして、世界のいずれの国におきましても、こうした形での評価をしていくということで、これは経済学的に言えば、希少な資源をどう配分するかということですから、ある部分について、保険償還をすれば、その分の機会費用はほかで使うことができないことになると思います。そういう意味でいいますと、一番効果があるものから優先的に使っていくというやり方を、採用しなければいけないのではないかということです。
 ただ、これが全部を合わせて、何らかの指標で、相対的に効果を見るわけではなくて、新しいお薬とか、一定の期間ごとに見直していくという個別的な評価を積み重ねることによって、それを行うという仕組みですから、ここでは評価の問題が非常に複雑になってくるのではないかと思います。
 事務局の4ページの図ですけれども、これは医療技術だけではなくて、世の中のいろいろな評価において共通していることだと思います。違っていたら訂正していただきたいと思いますが、例えば医療でいいますと、最初のアセスメントというのは、血圧がどれぐらいであるとか、血液中のある成分がどれぐらいであるかという、それを測定する話だと思います。そして、アプレイザルというのは、それによって、ある意味でいいますと、何らかの病気であるかどうか、血圧が一定以上だと高血圧症であるとか、そういう評価の話だと思います。それによって、治療をするかどうかというのは、最終的な決断であろうかと思います。最初の評価方法についても、何か1つの指標だけで、その後の病気であるかどうかということが、測定できればいいわけですけれども、現実にはそうでないものもたくさんあると思います。
 医療の話は、私も自信がないので、私がかかわっている話でいいますと、学生の成績評価も同じです。試験でもって何点とるかというのがアセスメントだとしますと、彼を留年させるか、卒業させるかというのがアプレイザルになるのかもしれません。基準が決まっているかもしれません。しかし、最終的にそれが本人のためになるかどうか、実際に大学でそういうことをやっているかどうかわかりませんけれども、それを教育上の配慮として判断するのがデシジョンだとしますと、最終的な部分においては、いろいろなことを総合的に評価して判断をするということが、必要になってくると思います。特に1つの試験の成績だけが、その人の能力とか人格をあらわしているのではないとしますと、最終的な判断というのは、非常に重要になってくると思います。
 今、具体的にこれを適用する場面を考える場合、我が国ではこれをどうするかというときに、最初のアセスメントの部分、評価の部分については、ある程度客観的な基準をつくって、しかるべき組織で行うことになろうかと思いますけれども、最終的に価格をどうするか、保険収載をするかというのは、医療に関していいますと、中医協が果たしてきた役割であって、そういう意味でいいますと、中医協がそういう判断をするときに、できるだけ客観的な根拠で、さらに言えば、有効性とか効果についての情報を提供するというのが、この制度の役割ではないかというのが、私の理解でございます。
 そういう観点から見た場合、これまでの議論というのは、余りにも評価測定の方法に傾斜し過ぎているのではないかという印象を持っております。それはQALYという指標についてずっと議論されておりますけれども、これ自体が問題を抱えていることは、外国でも指摘されているところですし、ここでも随分議論が出たと思います。ただ、先ほどおっしゃいましたように、疾患横断的に評価する指標というのは、これを上回るような、あるいはこれに匹敵するような、ほかの指標がないわけですので、したがって、これをベースにしながら、さらにほかの要素を加味してアプレイザルをしていく。したがって、複数の指標でもって評価をすることもあり得ると思います。そして、最終的な評価結果は、病気の状況であるとか、患者さんの置かれている状況であるとか、医療技術であるとか、いろいろなものを考慮した上で、最終的に判断をする。そういう制度なり何なりのイメージというのが、諸外国でもそうですし、我が国で考える上でも必要なのではないか。その意味でいいますと、これまでの議論というのは、最終的な評価と決定の部分についての議論が余りされていなくて、測定手法、分析の方法にやや傾斜し過ぎていたのではないかと思っております。
 先ほどから出ておりますけれども、事務局、次回は、最初から実例があればいいと思いますし、そうでなければ、仮想例でもいいと思いますし、海外の例でもいいと思いますけれども、一気通貫に見るような、そうしたモデルないし例示をお示しいただいて、それによって、これから何を議論しなければいけないのか、限られた時間の中で議論をして、どこまで、次期診療報酬の改定までに組み込むことができるのか、その辺についてのめどが立つようにしていただければと思います。
 以上です。
○関原部会長
 どうもありがとうございました。
 ほかにございますか。鈴木先生、どうぞ。
○鈴木委員
 会長は再度踏み込んだ御発言をされたと思うのですけれども、次回改定ありきではないというのが前提で話が進んでいたのに、それを蒸し返すようなことをされると、さらに話が複雑になっていくのではないかと思いますが、それでよろしいのでしょうかという感じで、私は非常に疑問に感じました。
○関原部会長
 きょうはフリートーキングでございますので、いろんな御意見を出していただいたらと思います。
 白川委員、どうぞ。
○白川委員
 森田委員から論理だった、アカデミックな視点からのお話を伺いまして、私も同感でございます。
 確かに具体的なモデルみたいなものがないと、概念、コンセプトだけでは何も出てこないというのが現実だと思いますので、ぜひとも適切なモデルを事務局で準備していただいて、それを基に問題点や日本に導入する場合の改善点などを議論させていただければと思っております。
 それから、万代先生からもごもっともな意見をいただきましたので、関連する意見を申し上げたいと思います。
 15ページの論点でございますが、私は、評価結果は保険償還の可否の判断と価格への反映の両方に使うべきだと思っております。保険償還の可否の判断は、万代先生がおっしゃるとおり、新医療技術が対象でしょう。日本の社会性を踏まえますと、例えば薬事承認を受け、有効性・安全性が確認されたものについては、保険適用していくというのが、当たり前の扱いになっているかと思いますが、よく例に出る重粒子線治療のような高額なものについては、費用対効果の観点からを含めて保険収載の可否を判断していくことが必要だと思います。原則、保険適用という今までのやり方を踏襲しながらも、この考え方は残す必要があると思います。
 償還価格への反映については、例えば薬で言いますと、類似薬効比較方式や原価計算方式に関して、これは安達先生なども指摘されていますが、やはり不合理な部分があるということですから、費用対効果で全て決めろという気はないのですが、こういう考え方も価格決定の要素に入れていくことが必要だと思います。
 そういう意味で、結果活用の時期のイメージとありますが、特に原価計算方式では、想定したマーケットがふたを開けてみたら数倍に膨らんだというケースもあるわけですから、上市前後だけではなく、一定期間経過後までを含めて、費用対効果という手法が活用できるのではないか。少し幅を広げて考えたほうがいいと思っております。ただ、画一的に全部やらなければいけないという話ではないと思っております。
○関原部会長
 ほかにございますか。安達委員、どうぞ。
○安達委員
 森田会長からも御高説を賜りましたけれども、私が申し上げた万代委員の御指摘で言えば、論点の15については、検討するとすれば1番でしょう。最初の1番、保険償還の可否か償還への反映です。この両方なのか、片方なのかということは、最初に申し上げたので、きょうの論点については、意見を申し上げたつもりであります。
 これを議論するためには、ICERの1単位というものを決めないといけない。これは諸外国の例があって、それぞれに長所もあるんだけれども、欠点もあるということが、今までの議論でわかった。これを日本で初めて導入するんですから、我々の責任は非常に重いので、そこは慎重に議論しないといけないという話だろうということを申し上げたつもりであります。
 議論が行ったり来たりしないようにという意味では、1号側から御提案があるような、幾つかの実例を出していただいてやるのは、今の時期として適切だろうと思いますし、それは賛成をいたしたいと思います。
 白川委員から重粒子も出ましたけれども、嘉山委員がここにおられたら、重粒子は一番わかりやすいとおっしゃると思います。費用の面と入院の経費等々、効果、非常にクリアカットにいくんだということは、常々おっしゃっています。それは私も同意でございます。
 これは議事録に残ってもいいのかどうかわかりませんが、政治的マターとして、いわゆる総理大臣があちこちに出かけて、積極的にいろんなものを売り込んで、これが経済政策の第3の矢だとおっしゃるんです。そういう問題もある中で、日本の償還の可否にまで及ぶような議論を、今、することが、適切な時期なのかというと、きな臭い話ではないかと思います。むしろその他の医薬品等を選んでいただいたほうが、いいのではないかと感じております。そういうことを申し上げておきたいと思います。
○関原部会長
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員
 またいろいろな先生のお考えを聞かせていただいて、少し驚いた部分もありますが、私はじっくり議論ができて、非常によかったと思っています。なぜかといいますと、当初前の事務局では議論を拙速に進めようとしたわけですが、そのときの考え方というのは、イギリスの考え方を費用対効果分析のところだけそのまま入れたいという感じだったと思います。もしそのまま決まってしまっていたら、本家のイギリスが、今、それを変えようとしているわけですから、いかに中医協で承認をするということが重いかがわかります。イギリスの状況を見ますと、承認されなかった抗がん剤に対して、マスコミとか政治家が大騒ぎをして、結局、後で救済措置を入れたりした挙句、結局制度そのものを、償還の可否から償還価格決定への活用に制度変更すること検討しているのです。2014年以降の導入ということなので、これからということなのでしょうが、それだけのことがあった事実が、逆にじっくり検討している過程でわかってきたわけです。
 一方では、社会保険制度のドイツとかフランス、特にフランスは、ガイドラインをつくって、いよいよそうしたことを始めようとしているわけですから、これからまさに我々の参考になるような事例が出てくる訳ですので、そういうものを見ながら、日本型の制度をつくっていくべきだと思います。何もここで議論を早めて、結論を急ぐ必要はないと思います。中間取りまとめといっても、最終取りまとめがなければ、中間が最終になってしまう場合もありますので、それは慎重にやるべきだと思います。
○関原部会長
 よくわかりましたが、別に事務局の肩を持つわけではないんですが、QALYでもってイギリスと同じようなことをやろうといって、焦ってやっていたとは見ていません。それは1つの例としてずっと上がってきているわけですし、世界的に非常に重要な指標であるから、QALYが出てきているのでありまして、今、鈴木先生がおっしゃったように、諸外国の例を勉強して、最終的に日本に一番ふさわしく、現実的な案をつくろうということについては、特に問題がないと思っております。
 もう一つ、この間から、ディバイスの業界からイノベーションが大事だと言われている。製薬業界からも新薬がと言われている。結局、新しい医療技術とか、薬剤などを含めて、そういうもののフェアバリューといいますか、そういうものを正しく評価しないと、使う人もそうですし、開発する人にとっても、費用対効果というのは、非常に大事なことだと思います。これをどういうふうに活用するかどうかは別として、この際、これだけ議論をしているわけですから、引き続き、これを何とかうまく生かして、日本の医療全体の向上と効率化に資するということでは、そんなに皆さん異存がないのではないかと思っております。私の勝手な意見で済みません。
 土屋専門委員、どうぞ。
○土屋専門委員
 もちろん医療財源の効率的な活用というのは、よく理解できますが、今後、議論する段階で、費用対効果評価そのものだけを論ずるのではなく、薬価の決め方全体のスキームがどうなっているかというところからひも解く必要があると思います。
 例えば英国は、御存じのように、自由薬価制度で、値上げもできます。ドイツもそうです。費用対効果評価が全くなかったアメリカではある程度のシーリングをかけるということが始まりましたが、日本のような薬価制度はございません。さらに日本の場合は2年に一度の改定もございます。そういう全体の中で、このような仮説が実際にできるのかという点も議論に入れていただければと思います。
 以上です。
○関原部会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、時間も大分過ぎておりますので、きょう、いろんな御意見が出ましたので、これらご意見や具体的な例、次回以降の進め方等を事務局と相談した上で、また皆様に御連絡するということだと思います。 そういうことで、きょうの議論はこの辺で終わらせていただきたいと思います。
 次回の日程について、事務局から何かございますか。
○井上医療課企画官
 次回の日程は未定でございます。調整でき次第、御連絡を差し上げます。
○関原部会長
 それでは、きょうの部会をこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

厚生労働省保険局医療課企画法令第1係
代表: 03-5253-1111(内線3288)

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