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2013年4月10日 第9回中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会

○日時

平成25年4月10日(水)12:09~13:14


○場所

厚生労働省専用第15・16会議室(12階)


○出席者

関原健夫部会長 印南一路部会長代理 森田朗委員
矢内邦夫委員 白川修二委員 花井十伍委員 石山惠司委員 伊藤文郎委員
鈴木邦彦委員 安達秀樹委員 嘉山孝正委員 堀憲郎委員 三浦洋嗣委員
土屋裕専門委員 昌子久仁子専門委員 田村誠専門委員  加茂谷佳明専門委員
池田俊也参考人 福田敬参考人 田倉智之参考人
<事務局>
木倉保険局長 神田審議官 宇都宮医療課長 井上医療課企画官
竹林保険医療企画調査室長 近澤薬剤管理官 田口歯科医療管理官 他

○議題

1 具体的な評価の活用手法について

○議事

○関原部会長
 それでは、皆さんおそろいになりましたので、ただいまより第9回「中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会」を始めたいと思います。
 まず、委員の出席状況でございますが、本日は石津委員、西村委員、田中委員、万代委員が欠席でございます。
 次に費用対効果評価専門部会に所属する委員につきましては、中医協総会におきまして森田会長より指名されるということで先ほど指名されたわけでございまして、4月4日付で退任されました小林剛委員の後任として矢内邦夫委員。また、3月31日付で退任された禰宜寛治専門委員の後任として土屋裕専門委員が指名されております。
 先ほどと同じことになって恐縮なのですが、一言ずつ御挨拶をお願いいたします。矢内委員、お願いします。
○矢内委員
 全国健康保険協会東京支部の支部長の矢内でございます。どうぞひとつよろしくお願いいたします。
○関原部会長
 続いて、土屋専門委員。
○土屋専門委員
 4月1日付で専門委員を拝命いたしましたエーザイの土屋でございます。よろしくお願いいたします。
○関原部会長
 それでは、本日の議題に入る前に恒例になっておりますが、きょうの検討の進め方について確認したいと思います。事務局より資料が提出されておりますので、事務局より説明をお願いします。
○井上医療課企画官
 中医協費-1の資料を御参照くださいませ。
 毎回毎回、本日の検討を進めるに当たりまして、昨年6月に定めました当面の検討事項全体の中で、本日の議題がどこにあるかということを示しております。
 当面の検討事項、資料費-1で点線で囲んだ資料の中で、本日の議題というのは一番最後の項目、具体的な評価の活用手法という項目でございます。本日の全体の中での位置関係はこの表に示したとおりでございます。
 以上でございます。
○関原部会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、今の点については特に問題ないかと思いますので、ただいま確認をいただいたということで、確認に基づきまして「具体的な評価の活用手法について」を議題にいたします。
 福田参考人より資料が提出されておりますので、御説明をお願いいたします。
○福田参考人
 福田でございます。よろしくお願いいたします。
 費-2の資料に沿って「諸外国での費用対効果評価の活用方法」について御説明をさせていただきます。
 まず最初に何枚か海外のものをまとめたものとして総論を書かせていただきました。
 3枚目をお願いいたします。これは前にもお話をしましたが、一般的に諸外国で行っている医療技術評価の活用の過程については、以下のような3つの段階に分かれております。
 最初にAssessmentとして費用対効果評価の実行、もちろん、この前には有効性・安全性等の確認をいたしますが、この費用対効果評価の分析をするというところと、この分析結果の解釈あるいはその他の要素として臨床的、倫理的、社会的な影響等を考慮するAppraisalという段階に分類しております。そのAppraisalの結果に基づいて最終的な意思決定を下すこととされています。
 4枚目のスライドにまいります。最初のアセスメントの段階なのですが、費用対効果評価に関しましては一般的に増分費用効果比(ICER)という指標を算出いたします。これは費用がどのくらい増加するかを分子、効果がどのくらい増加するかを分母にした指標でありまして、意味としては1単位の効果を追加的に得るのに幾らかかるかという指標でございます。
 次のスライドにまいります。5枚目であります。この費用対効果の結果をどう解釈していくかということなのですが、一般に増分費用効果比(ICER)という指標で出されますので、この結果として算出された数字が大きいほうが一般には費用対効果が劣る。つまり同じ1単位の効果を得るのにお金がかかることになります。図示するとこのような形でICERの数値が大きいほうが費用対効果に劣る。少ないほうが費用対効果に優れるというのが一般的な解釈です。ただし、下に書きましたが、このように比較できますのは、もちろんアウトカム指標として同じものを使った場合でなければならないということになります。
 次のスライドが本日御紹介させていただく国をまとめたものになります。本日はこの6カ国について御紹介をさせていただこうと思います。個別にはこの後お話をさせていただきますので、全体をまとめて言いますと、上に書いてありますのが償還制度の概要ということで、外来及び入院の医療及び医薬品について書かせていただいております。入院については、包括で支払っているところが多くなっております。
 その下に評価対象技術選定の考え方ということで、医薬品とそれ以外の医療機器・医療者等の技術に分けましたけれども、医薬品に関しましては、新規のもの等取り上げている場合が多く見られます。また既存のものについても一部実施されています。また、医療機器・医療者等の技術についても、国が決めたもの等を中心に評価をされている国があるということであります。
 次のスライド、7枚目にまいります。これをどう活用しているかというのを、これもまとめたものですけれども、この後お話しさせていただきますが、大きく分けて2つのパターンがあると考えております。1つ目は償還の可否の判断の材料に使う。もう一つは、償還価格への反映に使うということでございます。これは国によって対応は違うということで、この後、御説明をさせていただきます。
 8枚目、9枚目にそのイメージを書かせていただきました。
 まず、8枚目が1番目の償還の可否の判断材料に用いる場合ですけれども、先ほど申し上げたとおり、分析の段階で増分費用効果比を算出します。もちろんこれは値が低ければ効率的という判断になるのですけれども、仮に出された値が大きな数字だった場合、これについても増分費用効果比の基準的な目安となるような値を明示的に定めている国、あるいは明示的ではないけれども定めている国というのがございますので、この基準と比べて、それを上回る場合にどうするかということです。
 一般に償還の可否の判断材料に用いる場合には、それを用いて償還を行わない、あるいは非推奨とする、あるいは費用対効果がよい使用方法のみの適用とする場合がございます。ただ、技術Bというところに書きましたが、費用対効果だけが判断基準でやっている国はございませんので、ほかの要素も勘案して、推奨、非推奨が決まるということでございます。
 9枚目のスライドは価格の反映に用いる場合ということなのですけれども、これも算出された増分費用効果比が大きな値だった場合には、この償還する価格等を調整することによって、ある程度費用対効果に優れると考えられる範囲に、基準値以下になるように調整をしてというような、価格の調整で使うという手法でございます。
 では、それぞれの国について少しずつですが御紹介をさせていただきます。
 11枚目からになりますが、まずスウェーデンの状況でございます。12枚目にスウェーデンの医療制度などについて概要をまとめさせていただきました。税方式による医療提供を行っていて、入院用の医薬品については包括払い、外来については各地方自治体で償還する範囲を決めているということです。価格につきましては基本的に企業の申請価格に基づいて決定するということになっています。
 13枚目ですが、特に今スウェーデンで行われているものとしては、この外来用の医薬品について価格決定時に費用対効果評価を実施するということで、費用対効果に優れるものについて、地方自治体への補助金の供出という形で対応するとなっています。効果指標には基本的にQALYが推奨されていて、もちろん、費用対効果に加えて、他の要素も勘案して決定するということがされております。
 下にイメージをまとめましたけれども、スウェーデンにつきましては、基本的には保険償還の可否に使うというイメージでやっておりまして、基本的に費用対効果に優れないと判断されたものについては、非推奨とするか、あるいはほかの要素を勘案して推奨になる場合があるということでございます。
 15枚目にまいります。Appraisalについては、さまざまな要素を考慮するということなのですが、16枚目にありますとおり、スウェーデンの文書で償還3原則というのが挙げられています。(a)として、全ての人が平等に扱われる。(b)として、重症度の高い疾患を優先的に償還するというもので、(c)に費用対効果のよいものとありますので、費用対効果だけではなく、特に疾患の重症度を考慮して推奨が決められるということでございます。
 次に17枚目のスライドから、オーストラリアの状況でございます。
 18枚目ですが、オーストラリアも税方式による医療提供がされております。入院用の医薬品については、包括払いというのが原則になっています。外来用の医薬品については、PBACと言われる政府機関によって決定がされ、さらに別の組織ではありますが、PBPAという組織と企業との間で価格交渉がされているということでございます。
 19枚目は、医薬品の場合には全ての新薬が対象となるということです。効果指標は特に1つに定めるということはされておりませんが、2005年から2009年のものについて調べたところ、約6割がQALYを用いた評価となっております。
 結果の活用方法は20枚目になりますけれども、公的医療制度における収載の推奨をするということであります。この評価に基づいてネガティブな評価結果が出た場合には、公的薬剤給付リストに非収載となるのが原則であります。また、その過程で価格の交渉を行うことがあるということでございます。
 医療者等の技術の評価についても同様で、費用対効果に加えてほかの要素も勘案して収載の推奨を行うということがされております。
 21枚目に、オーストラリアの場合の価格交渉以外の調整方法ということなのですけれども、やり方は幾つかあると理解しております。価格自体は下げないけれども、一部を払い戻す仕組みとか、使用量を制限する、予想患者数を上回った場合には例えばメーカーが負担をするという仕組みがあったり、あるいは投与量や投与期間を制限するというもので対応がされています。
 その下には薬についての例示を出させていただきました。これの場合にも価格の引き下げあるいは投与数の調整によって推奨されたというような事例でございます。
 23枚目、オーストラリアの活用方法のイメージは2つのパターンで言うと償還の可否の判断材料と、償還価格への反映の組み合わせという理解をしております。基本的に費用対効果が劣る技術については公的医療制度では非推奨となるのですが、そこに対しては価格の調整あるいはいろいろな条件をつけることによって、費用対効果が改善されると見込まれれば推奨されるということの対応が行われております。
 24枚目のオーストラリアの場合にAppraisalで考慮する費用対効果以外の要素なのですけれども、比較対照と比べて追加的な有用性の大きさとか、保険で償還しなかったときの患者負担の大きさ、保険予算全体へのインパクト等が考慮されております。
 25枚目ですが、こういう評価をしていく際に、新規導入時ということですと、その評価に時間がかかるという指摘もしばしばされます。それに対してオーストラリアがとっている1つのやり方としてはManaged Entry Schemeというものですが、医療上の必要性が高い医薬品については、償還申請時に利用可能なデータで一旦薬価を仮設定して償還を開始し、その後、臨床試験などのデータがそろった段階で、改めて評価をするという対応が行われております。
 26枚目は論文として出されていたものなのですけれども、横軸に増分費用効果比の値、縦軸に償還される可能性を確率の形で書いたものであります。一律にどこかの金額まででそれ以上は償還されないということではなくて、先ほど来申し上げているとおり、ほかの要素と勘案して決めますので、増分費用効果比の値が小さければ償還される確率が高いということで、それが高くなるとその確率が低くなるということになります。
 27枚目から英国の話にまいります。
 28枚目に制度を書かせていただきました。英国も税方式でやっているところで、入院については包括で、外来については薬局の薬品は薬価に基づき出来高で払われるという仕組みになっております。医薬品については企業の申告価格に基づく価格で一般には償還をされております。
 29枚目に英国と日本の償還制度についてまとめさせていただきました。英国の場合には承認を受けたものについて企業の申請により価格が決められますが、実際にそれが償還されるかどうかは地域のNHSが償還リストを決定するということです。この決定に対してNICEと言われる組織ですけれども、ここの医療経済評価を含めた評価結果が参考にされるという仕組みになってございます。
 日本の場合には、承認については主にPMDAが関与して有効性、安全性、品質などの評価をして承認がされます。薬に関して言うと、その後、原則として薬価収載がされるという仕組みになってございます。
 30枚目、イギリスにおける医療技術の評価対象の選定方法ですが、これは保健省が決めるという形になっております。その際に考慮するものとしては、NHSや公共セクターへの費用の影響とか、疾病の負担、政策的な重要性、こういうものを勘案してどれを評価するかは国が決めるという形がとられております。
 31枚目、この評価の手続なのですけれども、大きく分けてSTA(単一技術評価)とMTA(複数技術評価)が行われています。STAにつきましては単一技術の単一適応症についてということで、主に新規の医療技術等の導入時に評価がされる仕組みです。MTAについては1つの疾患領域等について、複数の技術を同時に評価するというスタイルがとられております。特に左側のSTAが導入された背景としては、市販前から市販直後に対して迅速に評価を行うために、主に企業側からのデータ提出に基づいて評価するという仕組みが入ったということであります。
 32枚目にその結果の活用の原則なのですけれども、イギリスの場合には効果はQALY(質調整製造年)で算出をし、しかも増分費用効果比(ICER)を算出することになっていますので、原則として3つのパターンのいずれかになります。
 1つ目は使用を推奨するということで、この場合には各地域で原則として3カ月以内に提供されるという義務が発生することになっています。
 2番目は使用を推奨しないという場合なのですけれども、この場合にもNICEの判断はあくまでも推奨ということですので、拘束力はございません。ただし、イギリスは予算制で動いておりますので、事実上、使うことはなかなか難しいとうかがっております。
 3番目が一部の患者集団に限定して使用を推奨するということで、例えば重症度等で区分をして、特定の患者だけに使用を推奨する。このような対応がとられています。この使用の推奨を判断する基本的な基準なのですけれども、NICEの場合には明示的に基準を示しておりまして、1QALY増加に対して2万ポンド以下であれば通常、費用対効果の観点から使用が推奨されるということです。それを超えた場合には推奨されないということではなくて、2~3万ポンドの間であれば費用対効果の結果の評価以外にAppraisalでさまざまな点を考慮して、必要があれば推奨しましょうという形になっています。
 さらにこれは3万ポンドを超えた場合にも、Appraisalな段階で特別な理由がある場合には推奨しましょうということで、現実的にこの3万ポンドを超えた医療技術等についても推奨されている場合が幾つもございます。
 33枚目、活用の方法の続きなのですけれども、もう一つ、原則としてNICEは公的医療制度で使用を推奨するかしないかという判断をしてきているのですが、近年の対応として償還価格への反映の考え方として、患者アクセス保障というものが制度として入ってきております。これは費用対効果に優れない、増分費用効果比が大きいという場合に、価格の調整をすることによって患者が使える状態を保とうという取り組みであります。さまざまな対応方法がありまして、1つは例えば治療効果が得られない場合には費用を企業からNHSに払い戻すであるとか、先ほどオーストラリアでもありましたが、規定回数までは公費で負担しますが、それ以上は企業の負担にするとか、あるいは企業と合意した一定の割引をした価格で推奨する、というように、これは今のところさまざまな対応がとられていますが、このようなことを企業と合意することによって、費用対効果に優れる範囲での給付が行われております。
 34枚目には、一応それの具体例として、これまでNICEで出されたものを一覧にさせていただきました。これは時間の関係で割愛させていただきます。
 35枚目に英国における結果活用のイメージをまとめましたけれども、英国の場合には従来、償還の可否の判断材料に主に使う。NHSでの使用を推奨するかしないかという判断に使ってまいりましたが、近年の動きとして償還価格の調整をする。これも価格を直接調整する場合と、間接的な手法として様々な条件をつけて推奨するという対応に変わってきております。
 36枚目、今後の動きとして償還価格決定の活用を制度化する。今、個別対応が行われているということですが、これをある程度制度化しようという動きがあると聞いています。具体的には2014年以降の導入が検討されているということなのですけれども、償還価格をある程度費用対効果が優れる範囲におさまるように設定するように求めるという対応で、どこまでを基準にするかというところの判断に関しては、従来の基準に加えて疾患の負荷であるとか、治療技術のイノベーションあるいは社会的な便益というものを勘案して、その基準とする値の設定を変えることが示されております。
 37枚目が英国のAppraisalで考慮されている費用対効果表以外の要素ということで、これは今後ではなくて、これまでの評価でされているものが文献として出されているものであります。実際に考慮された事例として疾患の重症度あるいは致死的な疾患での延命の治療に関して、あるいは関係者からの意見とかイノベーションの大きさ、社会的に不利な者への配慮等、小児の疾患というものが考慮されております。
 38枚目には、これは前回も御紹介いたしましたけれども、Appraisalの1つの例を御紹介いたしました。これは当初は費用対効果に優れないのではないかと言われたのですが、小児であることとか、あるいは価格の調整をすることによって最終的には推奨がされたというものでございます。
 39枚目、先ほど挙げたもののうちの具体的に取り組まれている例が多いものとして、終末期医療への配慮の状況について出させていただきました。これはQOLの評価値を調整するというものでございます。
 40枚目からフランスの状況についてのお話をさせていただきます。
 41枚目、フランスの場合には社会保険方式をとっております。入院に関しましては他国と同様に包括による支払いが原則となっています。外来用医薬品については出来高であります。
 フランスに関しましては、現時点で費用対効果の評価を制度に明示的に使われているかというと、そんなことはなくて、今後実施をしていくということであります。
 42枚目、まずこの前段階として2011年に評価をしていくためのガイドライン、標準的な手法というのが作成されて、定められたものが出ております。今後一応2013年10月以降と聞いておりますけれども、医薬品については費用対効果評価を実施していく予定になっております。活用方法はこの後お話ししますが、償還価格への反映ということであります。効果指標としてはQALY等を用いるということで、QALYだけとは言っていませんけれども、特にQOLに影響するような疾患の場合にはQALYを使うことが推奨されております。
 43枚目、これは現状でのフランスにおける材料とか医薬品の値段の設定の考え方なのですけれども、追加的な臨床的有用性(ASMR)という基準に基づいて5段階に分類をされるということです。比較対照の技術と比べて追加的な臨床的有用性が大きいものがASMR1、それ以降2、3、4と下がっていくということで、ASMR5については改善がほとんどないものになっています。この分類に従って最終的にはCEPSと言いますが、経済委員会で上限価格を決定する。その際には諸外国の価格が参照されるということでございます。
 44枚目にまいります。2013年、ことし10月以降に予定されているものなのですけれども、新規医薬品の価格交渉時に費用対効果評価の提出が義務化される予定になっております。この中でも特にASMRの基準で1~3を希望するものについて、さらに財政規模が大きいものについて、こういうものを費用対効果の評価に関しての資料の提出を義務づけて、それを含めて判断していくことが予定されております。このASMRの評価自体はHASが担当しております。
 45枚目からドイツの話にまいります。
 ドイツは制度としては、46枚目になりますが、社会保険方式による皆保険の国でございます。入院については包括性で、外来については企業の申請価格に基づく公定価格になっております。ただ、2011年1月以降、医薬品市場再編法に基づいて、医薬品の価格設定については少し対応がとられております。
 47枚目、ドイツでの反映の仕方としては償還の可否ではなくて、償還価格へ反映するというような対応になっております。具体的なやり方としては、当初は企業が決めた値段で償還をするということでありますけれども、市販後1年以内に追加的な有用性を評価して、それをもとに医薬品の価格を交渉することになっています。追加的な有用性がある場合には企業と疾病金庫中央連合会の間で価格交渉をして、それに基づいて合意された価格での償還が行われていくようになるということでございます。
 ただし、もし交渉でうまくまとまらない場合には、費用対効果の評価をするという形になっております。ただ、現時点では、一応今年3月時点での私の理解ですけれども、費用対効果評価の提出に至った事例はないという状況でございます。効果の指標に関してはさまざまなものが使われるというものがドイツの対応でございます。
 最後にオランダの状況について、これはごく簡単ですが、御紹介をさせていただきます。48枚目以降です。
 49枚目、オランダは社会保険方式の制度であります。実際の医療保険の運用は民間の保険者になっております。支払いの仕方は諸外国と同様なのですけれども、50枚目になりますが、オランダにおける費用対効果の評価の活用方法としては、現在のところ保険償還の可否あるいは償還価格への反映など、具体的な意思決定には用いていないということであります。実際の活用についてはどうするかというのは検討中であって、その検討中の間に何をしているかといいますと、下にありますとおり例えば外来で用いる新規の医薬品で、有効性が類似のものに比べて高いと考えられるものについては、費用対効果評価のデータの提出が求められているということであります。
 今のところはそのデータを提出するというだけで、それは直接制度には反映していないということなのですけれども、この状況を踏まえて企業や審査側の能力向上を図るというフェーズになるということでございます。
 簡単でありますが、以上でございます。
○関原部会長
 どうもありがとうございました。
 この後、きょうはフリートーキングと考えておりますが、まずただいまの福田先生からの諸外国の活用方法の御説明についての御質問からスタートしたいと思います。
 何か御質問、御意見ございましたらどうぞ。
○鈴木委員
 丁寧な御説明、今回もありがとうございました。
 幾つか教えていただきたいのですが、まず3ページ目のアセスメントのところで、ここには有効性・安全性等の評価の実行と費用対効果評価の実行というものが両方入っておりますが、これは共通するものと考えてよろしいのでしょうか。
○関原部会長
 福田参考人、お願いします。
○福田参考人
 共通するものというか、一緒にされているということでございます。費用対効果の評価に当たっては、その前段階として有効性・安全性の評価がされていると理解しております。
○関原部会長
 よろしいですか。
○鈴木委員
 あと、36ページですが、イギリスでQALYを用いた費用対効果分析の本家本元と言われていると思うのですけれども、14年からやり方が変わると書いてあり、償還の可否の活用から償還価格決定の活用に制度変更するということですが、どういう理由でこのように変えようとしているのかについて教えていただけますか。
○関原部会長
 福田先生、お願いします。
○福田参考人
 御質問ありがとうございます。
 これは変更なのですけれども、その1つ前の33枚目ところで現在、患者アクセス保障という仕組みが入ってきております。これが入っている理由としては償還の可否で従来判断していて、費用対効果に優れないものは推奨しないようにしようとしていたものが、それだと患者さんがアクセスできなくなる可能性があるのではないかということで、個別対応として患者アクセス保障という仕組みが入ってきております。これは2009年ぐらいから入ってきている仕組みです。
 今回2014年からというのは、これをある程度制度化しようという形だと思っております。今まで個別対応でいろいろな対応がとられてきたものを、原則としては価格等に反映するのがいいのではないかという方向で制度化しようという動きだと理解しております。
○鈴木委員
 そうすると今までの償還の可否を決めるものから、償還の価格への反映のほうにかじを切るというか、変えていこうということですか。それとも両方ですか。
○福田参考人
 両方でございます。価格をあくまで調整するというのは、費用対効果が優れないとされた場合だけですので、原則としては償還の可否でいくということです。それが基準値を上回るものについてどういう対応をとるかというところで、原則は価格でやっていこうという方針だと思います。
○鈴木委員
 もう一つ、42ページのフランスですが、QALY等を用いるということでQALYは条件つき推奨と書いてありますけれども、そのQALYを用いる条件というのはどういう場合なのか。先ほどおっしゃったかもしれませんが、もう一回お願いいたします。
○福田参考人
 これにつきましては、これも実例がありませんので、あくまでもガイドラインとして出されているものの文章の範囲なのですけれども、QOLに影響すると考えられる疾患については、QALYの使用が推奨されているということでございます。
○関原部会長
 よろしゅうございますか。白川委員、どうぞ。
○白川委員
 いつも明快な説明をいただきまして、まことにありがとうございます。
 二、三、質問をさせていただきたい。資料の6頁を見ますと、特に下半分の評価対象技術選定の考え方を見ますと、ここに記載されている6カ国では、基本的に医薬品は全て費用対効果評価の対象にしていると見てよろしいのではないかと思うのですが、逆に言うと医療技術とか医療機器については、ほとんどの国はやっていないと見えます。もちろん医療材料等が自由価格制の国もありますから、それはそれでわかるのですが、QALYを効果指標に使っている国が多いと思いますが、それだと例えば新しい手術のような医療技術についてはQALYによる評価は現実的に難しいということで各国はやられていないのか、あるいは別の理由で実施していないのかというのが質問の1つ目でございます。
 2つ目は、その次の7頁のフランスを見ると償還の可否には活用せず、償還価格への反映は今後実施予定ということで、現在は前のページにあるように新規の外来医薬品のうち追加的有用性が高く財政規模が大きいものを対象に評価をやっている。フランスのHASやイギリスのNICEでは、特に医薬品についてどれぐらいの規模、スタッフ数で、薬の評価をどれくらい行っているのでしょうか。
 それから、例えば1つの薬を評価するときに、償還の可否の判断と償還価格への反映をセットでやれないことはないと思うのですが、そうした場合、1つの医薬品で何日ぐらいかけて評価をしているのかについて、各国ごとに違うのだと思いますが、少し教えていただきたい。
○関原部会長
 3つか4つかどちらかだと思うのですが、デバイスと、フランスの話と、どのぐらいの量と、評価の日数。その辺についてお願いいたします。
○福田参考人
 御質問ありがとうございます。
 まず医療機器に関してなのですけれども、手法として例えばQALYのような指標が使いにくいということはないと思います。ですので、同じような評価方法が可能だと思っています。ただ、ベースとするような有効性、安全性に関するデータがそろうかというところは場合によっては医薬品等とは違う部分があるかもしれないというふうには思います。
 諸外国でこれをやっていない大きな理由としては、支払い制度によるところが大きいのではないかと考えています。原則は特に入院で行うものは包括でやっていたり、あるいは外来でも予算制でやっていたりという国がございますので、そういう意味では個別のものの評価は余り進んでいないのかなと思っております。
 フランスなのですけれども、前のまとめた表の書き方が悪かったかもしれませんが、フランスでは今年の2013年10月以降に薬についてもそれをやっていく予定でございまして、現時点でも外来医薬品について評価をしていることはございません。ですので、6枚目に書かせていただいた表の中の記述は、今後やるものの対象としてこういうものですというものを書かせていただいているものでございます。誤解が生じるようなもので失礼をいたしました。
 評価をどのくらいやっているかということなのですけれども、これは国によって違いまして、例えば御紹介した中で言うとオーストラリアに関しては、医薬品については全ての新規医薬品についての評価をするということをやっております。イギリスについてはお話をしたとおり、国が指定するという形でありまして、一応私が覚えているところでは、2000年から2012年の夏ぐらいまでの段階で、Appraisalで五百数十件出されているということでございます。ただ、それは12年ぐらいたっている状況でございます。正確なものはきちんと調べて、必要でしたら御用意いたします。
 ここにかかる時間なのですけれども、例えばイギリスでやっている、NICEがやっているSTAと言われる新規の医療技術に関して、単一の適応症に関してやるものについては、31枚目の2種類の技術評価という中にあります通り、分析期間としてSTAの場合には34週を目安に実施がされていて、MTAの場合には52週を目安に実施をされているという状況でございます。
○関原部会長
 白川委員、よろしゅうございますか。
○白川委員
 対象技術によって分析期間が34週、52週という記述は見たのですが、例えば日本で言えば薬事承認の手続を経て中医協に保険収載と償還価格の設定の提案があるという一連のプロセスがあります。要するに、このプロセスに相当する期間がSTAの場合は、34週という見方でよろしいのですね。

○福田参考人
 説明が不足していて申しわけありません。これはあくまでも評価にかかる期間ということで、評価自体は承認前からスタートしていると聞いております。承認が見込まれるものについて評価を始めていると伺っておりますので、承認後はもう少し短い間で推奨、非推奨の判断が出るというのが一般的でございます。
○関原部会長
 よろしゅうございますか。
 安達委員、どうぞ。
○安達委員
 ドイツの制度を教えていただきたいのですが、46と47なのですけれども、46で2011年1月から変わったのです。医薬品の市場再編法にのっとるということで変えた。この絵が先ほど説明のときにもおっしゃったなと思うのですが、当然メーカーの申請というのは新薬ですから、追加的有用性があるというある種の治験データがあって申請が出ているということが前提なのです。それで1年間実際に使ってみた。それで追加的有用性がなしとありに分かれるということになっているのですが、これはつまりメーカー申請の発売前治験では追加的有用性があるとしていたけれども、1年やってみたら追加的有用性はなかったという判断に至ったものという理解でよろしいのでしょうか。
○関原部会長
 福田先生、どうぞ。
○福田参考人
 わかりにくい図で申しわけございません。先生から御指摘のとおり、承認時に関しては当然有効な医薬品であるというのが証明されているわけでありますけれども、1年以内に評価を実施するといいますのは、ここでやっているのはあくまでも追加的有用性ですので、比較対照と比べて、プラセボ等ではなくて、ほかの治療法と比べて追加的な有用性がどの程度あるかという判断を改めてするということであります。ほぼ同等とみなされるというのが、上の追加的有用性なしと判断されるものということです。プラセボと比べたら有効であるというのは間違いないと思うのですけれども、ほかの治療法と比べての相対的な有用性の追加ということでございます。
○安達委員
 つまり、申請の時点でメーカーは必ずしも追加的有用性があると言って申請しているわけではないものもあるということですね。
 私の理解では、費用対効果の議論をしている理由の一番根源的な問題というのは、日本のいわゆる先進医薬品等々について、有効だという判断に対して諸外国に比べて余り定量的な視点がない。そのことの観点から検討しているのだと思っているので、この辺は非常に大事なのですけれども、この追加的有用性なしということを判断する基準、ドイツの市場再編法による基準というのはあるのでしょうか。追加的有用性があると判断する、ないと判断するというのは、何を指標にして、どういうふうにやるのかということが一番私の観点からすると大切なところなのですけれども、それは具体的に何か示されているのでしょうか。
○関原部会長
 福田先生、お願いします。
○福田参考人
 これに関しましては1年以内とありますけれども、原則としては当初の3カ月で主に臨床試験の結果等をレビューするという形がとられています。その中で追加的な有用性あるなしを、4段階ぐらいに分類していくというような、そういう意味ではフランスのアプローチに近いと思います。
○安達委員
 4段階は日本でも前からお薬のあれを出したときに極めて有効、有効、やや有効、無効なんていうような、非常に定性的な4段階があるのですが、そういうものではなくて、もう少し数値化した上できちんと定量的に判断できるという4段階なのでしょうか。しつこくて申しわけありませんが。
○福田参考人
 私の理解している範囲なのですけれども、例えば生存年数が延びるとか、そういう幾つかの指標について、おおよその目安が示されているように理解をしています。
○安達委員
 ありがとうございます。
○関原部会長
 堀委員が先に手を挙げられたので、どうぞ。
○堀委員
 6カ国の例が挙がっていまして、費用対効果を償還の可否に活用しないで価格決定に活用するのと、逆に償還の可否の判断材料にはするが価格決定に反映しないという2つがあって、最初のほうはイメージがわかるのですけれども、特にスウェーデンの13ページ、14ページで償還価格決定時に費用対効果評価を実施しておきながら、最終的な価格決定には反映しないという、この理由といいますか背景がもしわかれば教えていただきたい。
○福田参考人
 これも説明が不足していて申しわけございません。
 13枚目のところですけれども、原則として一番下にありますとおり、価格交渉は実施しないという考え方をとっているということですので、あくまでも価格は企業が申請したもので決めるという形です。ですので、判断としてはその価格で推奨するかしないかのどちらかになるという制度になっていると思います。
○関原部会長
 堀委員、よろしゅうございますか。
○堀委員
 そうしますと、その後でメーカーサイドからこの決定を受けて、また償還をしてほしいとなった場合は、交渉ではないですけれども、再度申請という形があるということでしょうか。
○福田参考人
 それはあり得ると理解しております。
○関原部会長
 よろしいでしょうか。
 今度は嘉山先生、お願いします。
○嘉山委員
 ついに活用の場面まで来たので、ここがフリートークの多分最後になると思うのであれなのですけれども、7ページで今、堀先生がおっしゃったように、各国対費用効果の制度の使い方が、要するに薬を使っていいよというふうに保険に入れるのと、価格決定と原理が大きく2つですね。
 日本の国民皆保険のことを考えると、今、ドラッグラグとかそういうものが問題になっていて、国民の目から見てアクセスの制限が加わるというのが一番国民感情としてはなかなか受け入れ難いと思うのです。
 そうしますと、この6カ国でこれだけ違うということが、この6カ国の間である国ではある薬は例えばイギリスですと3万ポンドを境に償還するとかしないとか決定されてしまう。ある分ではそうではないということになると、国によってドラッグラグというか、ドラッグアクセスへの違いが出てきますね。そういう問題が一番大きいと思ってこれを見ていたのですけれども、実際には私が今お話したようなドラッグアクセスの問題があったらば教えていただきたいのが第1点です。
○関原部会長
 福田先生、どうぞ。
○福田参考人
 私の理解している範囲ですけれども、こういう仕組みでやっておりますので、諸外国、国によってどの薬にアクセスできるかどうかというのは異なってくることになります。
 それから、アクセス制限に関しては、イギリスの例でお話をさせていただきますと、そもそもイギリスでこういう評価を入れるNICEのような組織ができた大きな理由がそこにあるというふうに理解しております。と言いますのは、イギリスの中ではNHSという大きな制度がありますが、実際にどういうものを償還していくかというのは、各地域の保険当局が決めるという形になっておりましたので、国内で使えるものが違う、場所によって違うという状況がありました。そこでNICEのようなもので統一的にやっていこうということでございます。
○嘉山委員
 まさにそれがイギリスの、先ほど鈴木先生がおっしゃったように33ページです。償還価格への反映を主にやっていこうというようなかじ切りをしているということで、日本として償還の可否に使わないで、償還はするけれども、でないとドラッグラグというか、そういうものが起きれば、日本の国民感情としては国民皆保険としては世界と比べてアンフェアというふうになりますので、償還可否の判断材料に使わないで、償還価格への反映が私はいいと思うのです。今の制度を余り大きく動かさないで、薬価をさらに精緻な制度にするためには、この制度は償還価格への反映が一番いいと思うのです。そうなりますと先生が概論としてお書きになっているスライド9、償還価格への反映に用いる場合は費用対効果が優れるとされる範囲に償還予定価格が収まっているかを確認し、おさまらない場合に償還価格を調整するとありますけれども、調整の仕方が次に問題になると思うのですが、その調整の仕方をどういうふうにイメージされているのかを教えていただきたい。
○関原部会長
 嘉山先生、最初に申し上げましたように、きょうはフリートーキングだということで、ただし、前半部分として諸外国の例について議論をして、日本への活用等はその次のステップというふうに議論を分けてやろうと思っておりまして、それで今、諸外国の質問で時間が済んでいるということでもございますので、後で申しますようにこれは引き続き議論を続けていきたいということでございますので、ほかの委員の方も含めて、きょうは先ほども説明があった諸外国の例についての質問とか疑問について、ざっと洗うというふうに考えているわけでございます。
○嘉山委員
 ですから先生、それは諸外国の例も含めて償還関係の反映に用いる場合というのは、外国ではどういうふうな制度でやっているのかということをお聞きしているのと同じですから。
○関原部会長
 ということで、日本のあれではなくて外国の説明をお願いいたします。
○福田参考人
 諸外国ではということでお話をさせていただきますと、一般には償還する価格についての交渉をするという場で使われているという形になっているかと思います。企業との間で合意が得られるところということです。
○嘉山委員
 そのときの基準は何ですか。要するにこうだから下げなさいとか、こういうことがあるから下げなさいとか、上げてもいいよという、どういうふうな価値観というか、そのコンセプトは何ですか。例えば安全性だとか効果が少ない患者だとか、子供だとか、そういうコンセプトがなければ議論になりませんね。
○福田参考人
 そういう御質問であれば、いわゆるAppraisalの段階で幾つか考慮される要素がございまして、例えばオーストラリアの場合ですと24ページにあるような追加的有用性の大きさとか、自己負担の問題であるとか、あるいはイギリスの場合ですと37にあるようなものであります。具体的にイギリスの場合ですとAppraisalをするための委員会、Appraisal committeeというものがございまして、そこでこういうものを踏まえた指摘がされて、計算のし直しをして、こういうやりとりを何回か繰り返した上で最終的な判断がされる。その繰り返しの中で価格調整も行われているという仕組みになっています。
○嘉山委員
 そうすると企業努力というのはそこには入ってこないのですか。つまり、よく石山委員が我々のことを努力しろ努力しろとおっしゃるのと同じように、ある薬をつくる場合に企業努力すれば価格が安くなったのに、結構かかってしまった。だけれども、効果は非常に部分的であるという場合はどうやって交渉するのですか。例えばオーストラリアでもどこでもいいのですけれども。
○福田参考人
 私が主に承知しているのはイギリスの例なのですけれども、交渉の中で一部適用を限定していくとか、あるいは企業の努力と言っていいかわからないですが、価格自体の調整については企業の合意がないとそこには進まないということですので、そこで少し低い価格で提供するとか、そういうことはされているようであります。
○関原部会長
 よろしゅうございますか。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員
 6カ国を分けますと大きく2つのグループに分かれるのではないかと思うのです。1つは出てきた順番なのですけれども、スウェーデン、オーストラリア、イギリスのグループ。これはイギリス北欧グループ、あるいは公営医療グループと言ってもいいと思うのですが、こういうグループと、それからフランス、オランダ、ドイツグループ。これは大陸グループ、あるいは社会保険グループと言ってもいいと思います。大きくこの2つに分かれると思います。
 先ほどから質問が出ていますが、償還の可否については社会保険グループでは全く行われていないのです。これは社会保険制度である以上、保険料を払えば受診は権利ですから、これを拒否することはできないのだと思います。ですから償還の可否に用いるというのは社会保険制度である国では困難であると考えられます。要するに実際に行われているのは価格への反映ということで、これは本家本元のイギリスでもそちらの方向にかじを切るということですから、やはり償還の可否に用いるというのはかなり抵抗があり、国民の批判を浴びるものであるということが考えられると思います。
 対象についてですが、これは先ほど白川先生からもありましたように、医薬品は全ての国でやっているということで、これはそういうことなんだろうなと思いますが、医療機器、医療者等の技術に関しては、ほとんどの国ではやられていないということが明らかになっていると思います。イギリスとオーストラリアは共に英連邦で、もとになる制度は一緒ですから、同じようなものです。そういうイギリス系以外はやられていない。スウェーデンでもやられていない。これは1つの大きな違いで、しかもこれは社会保険制度の国でもやられていないということですから、社会保険制度の国では償還の可否には使われない、医療機器や医療者等の技術等にも使われないというのが一般的な外国の状況ではないかと思います。
 QALY等につきましても、私が最近読んだフランスの本にはQALYはアングロサクソンの技術であるということで、その理論的根拠は極めて薄弱であり、また、常識的な判断力に堪えられる根拠は何もなく、同じ研究でも尺度の選び方によって全く反対の結果が得られることもあるので、この種の指標を考慮に入れることの危険性については、強調する必要もないだろうと書いてありました。
 そういうことでQALYは必ずしも世界中で使われているわけではないのです。そういう視点で見ますと、確かに英国、北欧グループではある程度使われている。ただ、オーストラリアの場合は6割ぐらいだと19ページに書いてあります。一方社会保険グループを見ますとかなりこれは限定的で、フランスだと条件つき推奨と言いながら、先ほどのものはフランスの本ですからかなり批判的な状況にある訳です。
 ドイツにおいても47ページに、他の指標の1つということで、たしか独特な指標がありましたが、ドイツはドイツのやり方でということです。QUALYもさまざまな指標の1つということを考えますと、我が国はもちろん社会保険制度ですから、今日は我が国について考える場ではないということですが、当然こういうことを考える場合には、同じ社会保険制度の国でのあり方が我が国においても参考になるのではないかと思います。そうすると、償還の可否よりは価格への反映、機器や技術よりはまず医薬品、QALYは使うにしても限定的ないし参考、そのようなスタンスが世界的な標準から見たら我が国においては考えられるのではないかと思います。しかしながら、そもそも我が国にはそれらの国々と違ってまず組織が何もなく、人材もいない。そういうベースになるものが何もない中でいきなりやるという訳にもいかないので、まずそういった土台をつくっていく必要があります。それを踏まえた上での話ということを前提にして、そういうことがきょうの資料からは考えられるのではないかと思います。
 以上です。
○関原部会長
 ありがとうございました。
 ただいまの償還の可否だとかデバイスとテクノロジーだとかQALYの可否を含めて、今のは鈴木委員の御意見ということで、福田先生に対する質問ということではないですね。
○鈴木委員
 質問として、私は大きく2つに分かれるのではないかと思うのですけれども、どのように考えになりますか。
○関原部会長
 それでは、今の御意見に対する福田参考人のコメントをお願いします。
○福田参考人
 御指摘ありがとうございます。
 まず現時点のものという形では7ページにまとめさせていただいたとおりで、先生御指摘のとおり、大きくそもそも医療保障制度として税金をベースにやっているところと社会保険の方式のところがございます。そこでうまくやり方が分かれているのかというと、そこまで明示的ではないのではないかと思っています。
 7ページにありますのは、あくまでもこういう判断に費用対効果を今のところ使っているかどうかということですので、全てのものが償還されるというわけではないと理解しています。特にここに挙げておりますフランス、ドイツ、オランダはこれからやっていくということですので、今のところどういうふうにやっていくというのが価格のほうにしか出ていないということだと思います。
○関原部会長
 デバイスと医療技術についての活用はないということのコメントを。
○福田参考人
 非常に少ないというのが今の状況ではございます。
○関原部会長
 最後のQALYについてのコメントを。
○福田参考人
 QALYに関しまして限界と測定方法の課題というのは従来から指摘されておりまして、それはこれを活用している国でも理解がされていると思っています。そのためにQALYの測定方法によってはそれ以外の要素を勘案してやっていく。そういうAppraisalのようなところが重要になってくるのではないかと思います。
 今のところQALYを使っている国が多いといいますのは、それにかわる適切な指標が今のところ考えられていないためと理解をしております。
○鈴木委員
 ありがとうございました。
 新しく参考人になられた専門委員の土屋先生は、イギリスに長くおられてその事情にお詳しいと聞いております。我々はヨーロッパに住んで直接体験したわけではなく、ご出身の会社はいろいろな体験もされたと漏れ聞いておりますので、ぜひ教えていただければと思います。
○土屋専門委員
 ありがとうございます。
 私も質問をさせていただきたかったので、それとあわせてお聞かせ願いたいと思います。
 英国の先ほどの鈴木先生の御質問は、これから新しい制度に変わっていくとき、その理由は何かというお話だったと思います。確かに表面的には償還の可否から価格のシーリングを設定するような変化ですが、実際には経緯として、これは嘉山先生が御質問されたように、英国はかなりヨーロッパの中でもアクセスが悪いということが評判になり、その過程でいろいろな救済制度を入れました。しかし、それでも間に合わないので新たなValue -based-pricingというシステムに来年から移行すると理解しております。
 そのValue-baseの意味も現在検討中ですが、QALYだけでなく、ここに先生が挙げているような3つの要素、例えばburden of illness、therapeutic innovation、社会的便益という要素を入れて総合的に判断しようというふうに移ってきたと私は理解していますが、先生いかがでしょうか。そういう理解でよろしいですね。
○関原部会長
 福田先生にイギリスの変遷といいますか、このところの変化を。
○福田参考人
 今、御指摘があったとおり来年からということなのですけれども、現時点で具体的にどうやっていくかというところが決まっていないと私も聞いておりますので、こういうことを考慮しますというところは挙げられているのですが、今後を見ないとわからないと思います。
○関原部会長
 それでは、どうしますか。しかしお断りするわけにはいかないから、田村専門委員、お願いします。
○田村専門委員
 諸外国で医療機器の費用対効果評価がどうしてあまりなされていないかについて、諸外国がどういう状況かを調べたときに幾つか理由をみつけましたので、それだけ御紹介させていただきます。
 1つは先ほど福田参考人も言われましたように、比較的薬事承認をとる場合にデータが少ない。治験データが少ない。それから、対照群を設けない治験であることが倫理的な理由等々からあるということで、データが不足しているというのがございます。
 2つ目には、比較的医療機器は改善、改良が2~3年、長くても5年ぐらいでされていきますので、データが出てきたときに次の世代のものになってしまっているということがございます。
 3つ目には、医療機器の場合はそれをお使いになる先生方の技術によってアウトカムが随分変わってくるという要素がありますので、どういうデータを代表として見ればいいかという問題があります。先生方がだんだん習熟されて、それによってアウトカムがよくなっていくという面もありますので、そういう意味で費用対効果みたいなものになじまない面があり、外国では苦労しているというような文献が数々ございます。
 以上でございます。
○関原部会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、一言でお願いします。
○加茂谷専門委員
 本日、説明いただきました資料は、全て医薬品に限定しての話になっておりますけれども、費用対効果評価については何を対象に、どのように実施し、その結果をどう活用していくのかというのはまだ決定していないと認識しております。そういった意味で、若干の議論はございましたけれども、本日はあくまでも評価の活用指標について医薬品を例にして紹介いただいたということで、医薬品から進めるべきだというような意図があるわけではないということを、確認させていただきたいと思います。○関原部会長
 きょうはフリートーキングでございますので、特にそれは今のところ別に決めているわけではございません。
 きょうはフリートーキングということで本来、日本でどうするかということも含めたいろんな問題があったわけですが、きょうはとりあえず諸外国の説明を聞いて、それに対する質疑をしたということでございまして、きょうはこれで終わりにさせていただく。
 今後の進め方でございますが、きょうの諸外国のフリートーキングを含めまして具体的な評価の活用方法につきまして次回以降さらに議論を続ける。それから、その後に関係者からの意見聴取も行うということでございます。この委員会は去年の6月からスタートしているということで、ちょうど1年になるということもございまして、その意見聴取を踏まえた後で、この1年間のいろんな議論を論点なりにして整理をするということで考えております。そして、その論点整理を踏まえて夏ごろまでにその次のステップを考えていけばいいかなというふうに、これは私自身が考えておりますし、事務局ともそういう打ち合わせをしているというイメージでございます。
 ということで時間も大分オーバーいたしましたので、いろいろ御意見もあると思いますが、次回以降もこれは続けるということで、きょうはこれで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 それから、今後のスケジュールについて事務局からございますか。
○井上医療課企画官
 次回の日程はまた定まり次第、御報告申し上げます。
 以上です。
○関原部会長
 それでは、きょうの費用対効果の専門部会は終わらせていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
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厚生労働省保険局医療課企画法令第2係
代表: 03-5253-1111(内線3277)

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