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2013年5月8日 第10回緩和ケア推進検討会議事録

健康局がん対策・健康増進課

○日時

平成25年5月8日
14:00~16:00


○場所

厚生労働省 12階 第12会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議題

(1)看護師に対する緩和ケア研修について
(2)緩和ケアにおける地域連携について
(3)その他

○議事

出席構成員:花岡座長、池永構成員、岩瀬構成員、大西構成員、小川構成員、加賀谷構成員、木澤構成員、小松構成員、田村構成員、中川構成員、細川構成員、前川構成員、松月構成員、松本構成員、道永構成員、武藤構成員、小野沢参考人

○事務局 それでは、定刻となりましたので、ただいまより「第10回緩和ケア推進検討会」を開催いたします。
 構成員の先生方の出席状況について御報告いたします。本日、御予定としては全員の構成員の方々に出席いただけることになってございますけれども、木澤構成員、小松構成員、中川構成員はまだ御到着されておりません。また、今回、北里大学病院患者支援センター部の小野沢先生に参考人としてお越しいただいております。
 それでは、お手元にお配りしております資料の御確認をお願いいたします。
 まず、「座席表」「議事次第」のほか、資料1「構成員名簿」。
 資料2「緩和ケアに関する研修体についてのとりまとめ(案)」
 資料3「がん医療に携わる看護研修事業」。
 資料4「がんと診断されたときからの緩和ケアの推進をするための看護教育・研修のあり方について」、松月構成員からの提出資料でございます。
 資料5「看護師に対する緩和ケア研修・研修内容」、こちらは小松構成員からの提出資料となってございます。
 資料6「緩和ケアに関する地域連携の取り組みの現状」。
 資料7「医療チームからみた意思決定支援と地域連携」、こちらは岩瀬構成員からの御提出資料となってございます。
 資料8「意思決定支援の重要性」、小野沢参考人からの提出資料でございます。
 資料9「拠点病院に求められる緩和ケアの提供体制についてのとりまとめに関する在宅医療の視点からの考察」、こちらは武藤構成員からの御提出資料でございます。
 また、参考資料といたしまして、参考資料1「拠点病院に求められる緩和ケアの提供体制について(とりまとめ)」。
 参考資料2「緩和ケアに関する研修会のこれまでの実績について」。
 参考資料3「緩和ケアに関する研修体制における論点(案)」。
 参考資料4「緩和ケア研修のこれまでの取り組みと今後の方向性」。
 参考資料5「がん診療連携拠点病院の整備について」。
 参考資料6「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会の開催指針」。
 参考資料7「緩和ケア専門委員会報告書」。
 参考資料8「がん対策推進基本計画(緩和ケア関連部分抜粋)」でございます。
 また、机上配付といたしまして、前川構成員からの御提出資料「がんの患者さんとともに」をお配りさせていただいております。
 以上でございますが、資料に不足・落丁等ございましたら、事務局までお申し出ください。
 また、撮影は以上をもちましてカメラのほうをおおさめいただきますよう、御協力、よろしくお願いいたします。
 では、花岡座長、よろしくお願いいたします。
○花岡座長 連休明けのお忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 それでは、まず前川構成員より、患者サロンにつきまして机上配付資料がございます。このたび取りまとめた「拠点病院に求められる緩和ケアの提供体制について」の中でも、相談支援センターの役割に「患者サロンのサポート」の項目を盛り込んだところでございますので、前川構成員に資料について御説明いただいた後、患者サロンについての若干の議論を行いたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、前川構成員、説明をお願いいたします。
○前川構成員 ありがとうございます。
 NPO法人周南いのちを考える会は、活動の一環として院内患者さんを介助しております。机上配布させていただいております3周年記念誌は、山口県立医療センターの発案で作成されました。この冊子は、397の全国のがん診療連携拠点病院相談支援センターに送られたそうです。
 24ページ、活動実績で、3年間で利用者数が1,411人となっていますが、4月末で1,600人になりました。利用者は、多い日で七、八人、少ない日で二、三人、全くお見えにならない日がこの3年半で数回くらいありました。
 2番目、きららサロンについてです。日時は毎週2回、火曜日と金曜日の10時半から3時まで開催しております。サロンのある日は、10時30分と1時に、本日はきららサロンの日ですという館内放送があります。入院中に放送は聞いていましたが、行く勇気がなかったと言って、退院後にお見えになる方もあります。
 特徴としては、がん患者・家族であれば、いつでも、どなたでも利用でき、出入りは自由です。がんと伝えられた直後に病室で時間を持て余しているとき、あるいはがんについて心配になったとき、そして退院後に心細くなったときなどに来られています。外来受診のときには、ちょっときららに寄られる方も多いです。ここでコーヒーなどを飲まれております。初めて来られた方はかたい表情で来られるのですけれども、それが徐々にほぐれ、帰りのころには笑顔で帰られる方が多いです。ここはボランティアで運営しておりますので、医療的な相談の場合は、御本人に確認をとってから、すぐにがん相談支援センターやがん看護専門看護師と連携をとっております。
 次に、きららサロンについて、記念誌に書かれている病院関係者からの声を一部御紹介いたします。
 17ページですが、6階病棟看護師長さんは、患者様・御家族様にとってはなくてはならない場所。私たち医療従事者にとっては、狭間を埋めていただける大切な場所と書かれています。
 18ページには、がん相談支援センターの看護師長さんから、患者さんはもちろん、医療者にとってもなくなはならない場所と書かれています。
 同じく18ページ、相談員の方からは、スタッフが病院関係者ではないという気安さと、病院の中にある安心感の両面を兼ね備えていて、患者さんや御家族にとって大切な役割を果たしていると書いてあります。
 また、17ページのがん看護専門看護師さんからは、誰にとっても心地よい場であり続けた理由は、助言よりも傾聴を重要視して対応されてきたことと思うなどと、評価、コメントをしていただいております。
 ボランティアについてですが、10名余りが登録しております。ほとんどががん経験者です。もしくは、数十年前に白血病で子どもさんを亡くされた経験者もいらっしゃいます。つまり、命に対峙した経験のある人がボランティアをしています。私がスタッフにお願いしているのは4点です。自分の体験や無駄なおしゃべりをしない。2番目に、聞かせていただくことを心がけ、その場で解決しようとしない。3番目に、女性の井戸端会議にならないように気をつける。4番、優しい笑顔と細やかな配慮を心がけるということです。
 ボランティアスタッフは、最初のころ、私にできるかしらと不安そうでしたが、3年半過ぎた今でも謙虚さは失わず、でも、笑顔でお茶をお出ししてお話を聞かせていただくという姿勢で利用者に接しております。実は、この姿勢がきららサロンのボランティアの特徴でもあります。専門的な知識や学びはしていませんが、暖かい春風のような気持ちで患者さんをお迎えしています。これは、患者同士の緩和ケアの一つではないかなと思っております。
 最後に、患者サロンにもいろいろな形態がありますので、私は、きょうはその一つの例としてお話しさせていただきました。病院とボランティアが信頼関係でつながり、がん患者のよりどころとなる院内がん患者サロンのさらなる広がりを心から願っております。患者サロンを考える上での参考にしていただければ幸いと思って、本日、このきららサロンの3周年記念誌を机上配付させていただきました。お帰りにお目通しいただければ幸いでございます。
 ありがとうございました。
○花岡座長 前川構成員、どうもありがとうございました。
 前川構成員から患者サロンの冊子についての御紹介がございましたが、構成員の先生方から御質問や御意見等、ございますでしょうか。どうぞ、岩瀬構成員。
○岩瀬構成員 本日も、この後、いろいろな資料が紹介されて議論を行うわけですが、医療者の立場からの意見といいますか、提言でありますので、前川構成員がきょう紹介されたサロンについては、私、非常に重要な提言とも言えるものだと考えております。100%患者目線のこういったサロンの存在意義についても、ぜひ検討会で議論していただければと思いました。よろしくお願いいたします。
○花岡座長 どうもありがとうございます。
 そのほかは。松月構成員、どうぞ。
○松月構成員 育てるマインドですね。このボランティアに参加なさる方が、私に務まるかしらと思って参加なさって傾聴するのです。自分の体験の話をするのではないですとおっしゃいました。この傾聴の部分は、看護師ががんの患者さんにかかわるときの一番基本なのですね。だから、そこの共通性をすごく感じて、がんの経験のある方、それから患者サロンというものが、がんの患者さんが非常に多いですので、いい形で病院の中で医療者と、どこに行ったらいいか困っている患者さんとの橋渡しには本当にすばらしい活動だと思いますので、こういう活動をどこの病院でも持てるようになれたら、とてもいいなと思って聞かせていただきました。本当にありがとうございました。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 中川構成員、どうぞ。
○中川構成員 遅くなって申しわけございません。
 先日、静岡がんセンターを訪問する機会がありまして、よろず相談など、大変勉強になったのですが、そちらにもやはりサロンがありました。ただ、これは病院が運営していました。物すごくきれいで、ホテルのロビーみたいなところなのです。ただ、病院の職員の方が運営しているのと、このきららサロンのような形で病院の外からボランティアでなされるのと、かなり違うと思いますし、また、こういったことがどうしてできるようになったのか。前川構成員にちょっとお尋ねしたいのです。2ページ目に、当時の院長先生にお願いした。そこですんなり事が進んだのですか。すごいですね。
○花岡座長 前川構成員、いかがでしょうか。
○前川構成員 私、山口県の中間地点に住んでいるのです。近くのがん拠点病院に院内患者サロンをとお願いしたのですけれども、外の者に患者サロンをさせると病院の悪口になるのだと断られたのです。それで、県を通して、県の方に言ってみていただけませんかと言って、院長先生にお声をかけていただきましたら、院長先生も御自分もがんの経験があったのではないかと思います。それと、御自分ががん患者さんをいっぱい診てこられていて、それはいいことだという、その一言でできました。だから、トップの考え1つだと思います。
○中川構成員 この院長の前川先生と関係はないのですか。
○前川構成員 この前川先生は2代目でして、実はその前の院長先生がゴーサインを出してくださいました。全然関係ないです。
○中川構成員 こういった例が自然発生的にでき上がっていくというのは、非常に重要だと思うのです。ですので、事務局としても、もしあれでしたらごらんになるとか、そういうこともお考えいただければという気がします。
○花岡座長 ありがとうございます。
 小松構成員、どうぞ。
○小松構成員 前川構成員のこの冊子を見ながら、とても感銘を受けているところです。
 私は、聖路加国際病院でスマイルコミュニティという、患者さんたちのボランティアのコミュニティを一緒に立ち上げながら、ピアサポートという形でブレストセンターの中でこういうサロン的なことをさせていただいています。それは今、立ち上がっていくところで、おっしゃったように病院の障壁がとても強くて、医療者が関心を持つことがないと、いろいろな病院の中に根づいていくことが難しいのだなと思って、医療者の中でこういうことがあるのだということを広げていくことも、この緩和ケア推進検討会の中で論議されるといいのかなと思っています。
 もう一つは、傾聴ということで、これはずっとやっていくと疲れてしまう部分もあって、実際にやっているボランティアの方々とお話をしていて、コミュニケーションとか、さまざまな傾聴に関連した勉強を少しすると、自分の中にも自信がついてということがあって、私たち、一緒にインターネットでできるeラーニングをつくって、それをブラッシュアップみたいな形で使って、バーンアウトしないように。がん経験者の方々でやっていくというところでは、医療者もその働きをただお願いするだけじゃなくて、一緒に育っていく環境をつくって継続していくことがすごく重要だなと、体験的には思っているところです。
 一緒に頑張っていきましょう。
○花岡座長 ありがとうございます。
 時間の関係がございますので、この議題につきましては、ここで打ち切らせていただきたいと思います。
 それでは、本日の議題に移りたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 前回の検討会におきまして、本日、緩和ケア研修についての取りまとめを行う予定としておりましたが、看護師に対する研修につきましては議論を行う時間が十分にとれませんでした。そのために、今回、看護師に対する緩和ケア研修をテーマに、さらに御意見を伺いたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 まず、事務局から資料2、3について説明いただきまして、その後、平成25年度の予算案にて、事務局におきまして看護協会への委託事業としての実施を予定している「がん医療に携わる看護研修事業」につきまして、松月構成員、そして小松構成員より御説明いただいて議論を行う形にしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、事務局より資料の説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、事務局より、資料2、そして資料3について説明をさせていただきたいと思います。
 資料2ですが、こちらは前回の検討会での議論を受け、「緩和ケアに関する研修体制についてのとりまとめ(案)」としてまとめております。
 まず、医師を対象とした緩和ケア研修について。
 その中でも、1つめの項目として、研修会の受講者を増加させる施策といったことで、
現在の緩和ケア研修会開催指針では、2日間連続での研修を行う一般型研修を推奨して
いるが、地域の実情にあわせて単位毎に分割して受講できる単位型での開催も検討される必要がある。
 次に、研修受講者のモチベーションを向上させるため、プログラムに選択部分を設けることで、例えば研修医向け、診療所医師向け、腫瘍医向け等、受講者によって研修内容を改変できるような制度を導入することが求められる。
 初期研修医や後期研修医に対して緩和ケア研修会の受講を強く推奨することが有効だと考えられる。
 開業医の研修会受講も想定し、医師会の協力もいただき、緩和ケア研修会に関する情報提供を院内のみならず院外へ向けて、広く行う体制が求められる。
 各拠点病院から、自施設のがん診療に携わる医師・歯科医師と緩和ケア研修会修了者について報告を求めることが必要である。
 その際、(1)として、がん患者の主治医や担当医となる者。(2)として、がん患者の主治医や担当医となることは想定されないが、主治医等から診察依頼を受けた場合、また当直業務などでがん患者に対する診療を行うことがある者。(3)として、病理診断医や放射線診断医など、がん患者との日常的な対面は想定されない者に分類する。
 院内掲示やHPでの公表、バッチの着用等により、対面した患者が研修会修了の有無について簡単に把握できる体制を整備してはどうか。
 続いて、裏のページ、二つ目の項目になりますが、患者の視点を取り入れた研修といった項目で、
患者やその家族による講演を組み込むなど、研修会プログラムヘの参加を検討することや、患者やその家族に対するインタビュー等を収録したDVD教材の活用等が考えられるが、最初から研修会への参画を求めるのではなく、「研修会責任者が患者やその家族と連携し合同会議を行い研修内容について議論する」等の段階を踏みつつ進めることが望ましい。
 続いて、地域の実情に合った研修会の実施として、都道府県や2次医療圏によっては、研修会の受講率に差があることから、拠点病院に研修会修了者の報告を求めることにより受講率を把握した上で、一定以上の受講率を維持している医療圏や拠点病院については、2つの拠点病院合同で研修会を開催できるようにするなど、効率的な研修会実施方策を検討してはどうか。
 都道府県単位で、それぞれの拠点病院の研修会への取り組みについて相互監査を行い、成功事例や困難事例などについて共有し検討する枠組みを確保することが望ましい。
 三つ目の項目は、指導者研修会の今後のあり方ですが、
指導者の数は一定程度確保されてきており、今後は指導者の質を上げることに注力する必要がある。このため、指導者研修会修了者に対して、スキルアップ研修会の実施等が望まれる。
 次に、看護師を対象とした緩和ケア研修について。
 従来からの看護師の院内教育の中での普及を図ることとし、院内教育の質を均てん化するため、院内教育において指導的立場となる者の教育体制の構築、また院内教育における標準的テキストの開発等を行うことが求められる。
 上記体制の普及のため、各拠点病院に対して、看護師に対する緩和ケア研修の指導者を定め、報告を求めることが必要である。
 以上でございます。
 続いて、資料3をごらんください。
 こちらは、御紹介いただきましたとおり、平成25年度予算案に計上しております「がん医療に携わる看護研修事業」についての説明資料でございます。予算案は2,000万円を計上しております。
 背景として、がん治療の多様化と看護業務の多様化を背景に、がん看護へのニーズが高まってきているが、実施される教育が均一化されておらず、教育の質が担保されていない。また、がんと診断されたときからの緩和ケアを実現するためには、医師だけではなく、看護師などによるケアの充実が求められているといったことがあるかと考えております。
 そこで、こういった現場でのがん看護のニーズの増加を受け、現場を支えるためには、先ほどの資料2にも記載があるところですが、看護師を対象とした緩和ケア研修について、従来からの看護師の院内教育の中での普及を図ることが重要であろうと考えております。そういった研修を支えるために、今回、対象として専門看護師や認定看護師などを想定し、指導者研修会を行う。そして、彼らが現場に戻って教育の軸となって教育を行うための指導者研修会を行う。そのときに、標準化されたテキストなどを使用することができるように、教材の開発を行うといった事業を計画しており、委託先として日本看護協会を想定しているところでございます。
 以上です。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 それでは、松月構成員よりお話を伺いたいと思います。お願いいたします。
○松月構成員 それでは、資料4をごらんいただきたいと思います。資料4の最後の2枚は、別紙1、2ということで、そちらはまた適宜ごらんいただきたいと思います。
 それでは、1つおめくりいただきまして、2ページ目からでございますが、これは先ほどがん医療にかかわる看護研修事業のポンチ絵の中にあった緩和ケアの現状でございます。この中で特に詳しく述べたいところは、がんの治療の多様化に伴い、一般の看護師たちのケア内容も非常に多様化しております。こういう中で、看護師は患者のQOLの維持とか向上を図る緩和ケアを行いたい、尊厳のある最期を支えたいということを常に活動としてやっております。この中には、がんと診断されたときからのケアを初めとする緩和ケアということが当然求められております。
 しかし、緩和ケアに関する教育は、現行の基礎教育ではとても不十分であり、新人看護師研修や継続教育などで実施されておりますが、これは各医療機関ごとばらばらの内容になっており、教育が均一化されておりませんので、そこを一本化することにより、この指導者研修ということを考えたいと思いました。
 緩和ケアに関する定義ですが、終末期ではなく、今回は診断されたときからを考えたいと思っております。
 3ページ目をおめくりください。
 緩和ケアに関わる介護教育・研修の現状ですが、現在、日本看護協会はがん看護領域の資格認定者として認定しておるものですが、がん看護専門看護師が432名、緩和ケアの認定看護師が1,288名、がん化学療法看護認定看護師が1,005人、がん性疼痛の看護認定看護師が631名、乳がんの看護認定者が187名、がんの放射線療法の認定者が103名おりまして、現在3,646名の者がおります。これが毎年どのぐらいの割合でふえていくのかということですが、過去のふえる率から計算いたしますと、520名程度の増加が見込まれております。専門看護師に関しましては、1.2倍レベルということでございます。
 では、それ以外の一般看護師の緩和ケア教育はどういうことを今までやってきたのかということですが、最後から2枚目の別紙1をごらんいただきたいと思います。
 ナースのためのホスピス緩和ケアというのを平成10年から行っております。ただ、これは4年間で一度フェーズが変わりまして、平成14年度からは講義を16日間、臨地実習15日間の合計31日間の定員50名で開催してきております。ただ、この教育を受けたナースは専門認定看護師ではなく、普通の看護師として勤務しております。その数ですが、11年間で1,000人を育てました。
 それ以外にも、その裏をおめくりいただきたいのですが、緩和ケア関連研修として、がん終末期における緩和ケアA・Bと書いてございますが、2日間、1日コースというものは、今、申し上げた長い研修と並行して、対象100人、対象30名で実施してきております。そのようなものが、看護協会がこれまでやってきた研修でございます。
 その他といたしまして、資料の3ページ目にお戻りいただきたいと思いますが、日本緩和医療学会などが厚労省の委託を受けて指導者研修や緩和ケア研修会を実施しておりますし、都道府県補助金として、がんと糖尿病における質の高い看護師の育成ということも、これは看護課のほうの予算でやっているものがございます。それ以外にも、各医療機関が院内教育として緩和ケアに関する研修を企画・実施しております。
 その一例ですが、最後の資料、別紙2をごらんください。
 これは、ある大学病院の看護師の集合研修の一覧表でございます。4月から3月まで行われている研修でございますが、この中のピンクの部分ががん看護に関する研修でございます。院内で行っております看護師の研修には、2種類ございます。1つが、保助看法補助要綱上の努力義務としてうたわれております教育研修です。それ以外に、勤務が終わった後、自主的に、または半強制的に行わせるような時間外の研修というのもございますが、ここの一覧表は勤務時間内で実施しているものでございます。この研修をごらんいただきますとおわかりいただけますのは、新人から、大学病院でありますと、糖尿病とか輸血についてとか、そういう研修をたくさんしなければいけない現状があるということでございます。
 では、そういう中で、今回、看護協会のほうで委託を受けます教育のフレームにつきましては、次の資料をごらんください。看護師の効果的な緩和ケア教育・研修についてです。
 左の端に指導者研修、水色の絵がございますが、この指導者と申しますのは、先ほど御紹介いたしました専門看護師と認定看護師、全国で3,600人いるナースのことを指しております。その者たちに統一した均一のカリキュラムで指導者研修を行います。それを行って、院内に認定看護師・専門看護師が戻りましたら、院内で研修をスタートするわけです。この中にがん看護CNSと書いてありますが、このCNSは専門看護師の略でございます。それから、がん看護領域のCNと書いてありますが、これは認定看護師の略でございます。
 一般の看護師に対して均一的な教育・指導を行うことで、患者さんに直接ケアが届くのではないか、直接の診断された初期からの緩和ケアの橋渡しができるのではないかと考えております。放射線療法室では、同じように一般の看護師に対して、患者さんの心の痛み、体の痛み、社会的な痛みを拾い上げることを考えております。それが看護外来や病棟になります。
 この病棟におきます均一的な教育・指導を指導者が一般の看護師に行う途中に、リンクナースと書いてございます。この研修を受けたリンクナースというのは、先ほど申し上げた看護協会などで行っております、資格にはならないけれども、既にがんの看護の研修を受けたナースを指しております。この研修を受けたリンクナースを、1年間、あなたはがん看護の研修について、この病棟の面倒を見てくださいねという人を任命します。そうすることによって、一般の看護師への教育をその病棟で広めるということです。一度教育をすれば、すぐに実践できるわけではありませんが、日常的にリンクナースがいつも病棟にいることで、一般のナースの質が上がってくると考えております。
 それから、各科診療外来というのがございますが、指導者研修を受けたナースと、既に何らかの研修を受けた外来看護師と、がん看護については余り学んでこなかった一般看護師を一緒に置くことで、イメージとして考えておりますのが、例えば生活のしやすさに関する質問票の一部のようなものを、一般の看護師が使う、またはそれを使える、患者さんに対して声をかけることができれば、この緩和ケアセンターまたは緩和ケアチームの活動と大きくつながることができますので、多くのがん患者さんに診断された初期からの緩和ケアが広がるのではないかと考えております。
 拠点病院におけます外来診察室の扉というのは、地域医療とつながっていると思います。それを強化することで、さらに多くの患者さんに拠点病院のノウハウを広げていくことができるのではないかと思っております。ひいては、院内、訪問看護ステーション、地域とのつながりが広がっていくのではないかと考えております。
 がんと診断されたときからの緩和ケアに関する知識・技術を広く普及し、ケアを提供するには、緩和ケアに関する適切な治療と技術をもとに教育指導が行える指導者の育成を行うことが必要である。指導者は、特にリンクナース、外来看護師が各部署において一般の看護師への指導が行えるよう、均一的な教育・指導を行い、がん看護全体の実践力を高めることができ、そのケアが受けられる患者さんの数が広がるのではないかと考えております。
 5ページ目をおめくりください。
 では、具体的にどんなことを考えているのかということですが、目的は先ほどから申し上げているとおりでございます。では、最初に何をするのかということです。(1)がん拠点病院における看護師を育成するための指導者研修会用教材を作成する。それから、作成した教材を用いて認定看護師・専門看護師の指導者研修を実施する。これは、本会内に特別委員会を設置して教材を作成したいと思っております。この研修の対象者は、専門看護師・認定看護師ということでございます。
 ただ、これだけでは絵に描いたもちでございますので、それを患者さんのところまで届けるためには、先ほど、ある大学病院の研修の例を御紹介したと思いますが、全体で123ある研修の中のわずか4つでございます。そのためには、通知を出していただくとか、もう少しこれを強化しろとか、この研修を受けたナースが院内でその研修が実施できるような体制を、拠点病院の中の要件に入れていただくとかをしないことには、教育しただけでは患者さんの手元にはなかなか届きませんので、そこをぜひお願いしたいと思っておりますし、患者さんのもとに届けなければ、研修しただけでは何も意味がありません。
 特に外来の看護師は非常に目まぐるしく、忙しく動き回っておりますので、その看護師は簡単なチェックリストで患者さんに声をかける、またはその調査をすることに関しまして、カウンセリング料のような診療報酬をつけていただかないと、これは決して手元に届くものではありませんので、ぜひそういう後押しをお願いしたいと思っているところでございます。
 以上でございます。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 続きまして、小松構成員にお願いしたいと思います。
○小松構成員 私は、資料5でございます。松月構成員と、看護師の効果的な緩和ケアの教育・研修について一緒に話し合いながら、具体的にどんな研修の内容になるのかという、きょうはテンタティブなものでございますが、私どもが考えているものを資料に出させていただきました。
 1つ目は、ここに書いてありますように、患者やその家族の緩和ケアのニーズの確実な把握と相談支援を実施できるということを達成目標として挙げたいと思っています。松月構成員がおっしゃったように、診断時からの緩和ケアということで、今後、拠点病院と一般の病院も含めてですが、痛みやさまざまな苦痛に関するチェックリストが入ったり、電子カルテの中にその経過が記載されることが起こっていくことになりますけれども、その裏側、その苦痛を持っていらっしゃる患者さんの生活全体に関しては、ニーズとして看護師が外来等で把握するということが重要であろうと考えます。
 ですので、チェックリストの使い方のみならず、そこから患者さんの情報を整理しつつ、患者さんたちが診断を受けられてどういうふうに悩んでおられるのか。あるいは治療に伴う苦痛に関して、どういうふうにご自身で対処しようとされているのかといったことも引き出すような形で、ニーズを把握するということができればいいかなと思っております。
 2つ目は、身体的・精神的な苦痛の評価をきちんと的確に行えるということと、その中で看護師が行える緩和ケアを実施できるということ。たくさん欲張らないで、基本的なところを必須に、ガイドライン等が今、たくさん出ていますので、その考え方等も含めて質を担保していくことを考えております。
 3つ目が非常に大事なところでございますが、今回、診断時からの緩和ケアという部分では、専門的な緩和ケアが必要な方たちがきちんと専門職の方々につながっていく。あるいは、地域につながっていくというところのコーディネーション、調整という力を看護師はつけていく必要があるだろうということが、これまでの論議の中でもありましたから、その力をつけていくことが3つ目の目標になるのではないかと思っております。
 4つ目は、特に指導者研修として、今の1、2、3が一般の看護師ができるような形で研修のテキストブックがつくられ、それを具体的にそれぞれの施設や地域で展開していくときに必要な能力をつけていただくという部分でございます。教育を企画・運営できる能力かと思っております。
 あと、先ほど終えました先生から御提示があったように、研修体制についてはさまざまな課題もここに出ております。絵に描いたもちにならないように、患者さんにとっては一番最初のインタフェースに看護師がなるわけでございまして、そこでのコミュニケーションや、さまざまな患者さんたちの情報を整理していくときに待つ姿勢、あるいは擁護する姿勢という部分を、知識だけではなく、態度や行動としてつけていくという意味では、さまざまな小グループやディスカッションを工夫していく必要があるだろうと思っておりまして、この中での講義だけではなく、ワークショップや事例検討やロールプレイ等々を入れていく必要があるのではないかと思っております。
 もう一つは、この研修についての評価ということでは、実績報告書やレポート等で、実際に一般の看護師の方たちに、自施設あるいは地域の中でどんなふうに広げていけているのだろうかということについても、調査等でフィードバックをいただくということをしたいなと考えているところでございます。看護の中では、さまざまな研修プログラムがそれぞれの努力によって進んでいるところであります。
 1つには、緩和医療学会の中ではELNECというものもございますし、あるいはもう既にがんに強い研修というものが、厚労省の看護課を通して地域にも根差しているし、看護協会の中でもあります。そういった人たちの知恵を結集した形で、欲張らない形で必須なものにしていくということが大事かなと思っておりますし、特に精神的な苦悩や身体的な苦痛の緩和というところでは、医師や薬剤師の方々の力をいただきながら、専門的な質を担保していくということが必要かなと考えているところでございます。
 以上でございます。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 ただいまの御両人の御発表も踏まえまして、御意見のある方に御発言をお願いしたいと思います。また、資料2の、今までの議論をまとめました医師に関する緩和ケア研修についても、もし御意見がございますれば御発言をお願いしたいと思います。いかがでございましょうか。
 中川構成員、どうぞ。
○中川構成員 放射線治療領域では、がんの放射線治療認定ナースの役目は非常に高くて、こういったナースがいるかいないかで、放射線治療部門のクオリティーがかなり変わってきているというのを本当に実感しています。一方、資格を取るのにかなり大変なのですが、これをどうやって推進していくのか。資格は取ったけれども、それを担保する制度がないとなかなか広がらないのもたしかだと思います。
 資料4の4ページ目、何回か前のこの検討会で、例えば外来化学療法室とか放射線治療室、そして相談室が横の連携をとっていくことが非常に重要だと申し上げたかと思います。そういう意味では、私が思っているような形をとっていただいているのですが、多くの相談室にナースがいますね。ですから、私はこの中に相談室を入れたほうがいいのではないかと感じました。いずれにしても、こういった取り組みは大いに必要で、現場からも期待しているところでございます。
○花岡座長 ありがとうございます。
 松本構成員、どうぞ。
○松本構成員 ありがとうございました。患者・家族の立場としては、看護師の皆様がますます専門的なことを身につけて、私たちに近くいてくださることを願うものです。
 2点申し上げたいと思います。
 まず1点は、先ほど松月構成員からもお話がありましたけれども、教育を受けた看護師の方々がきちんと動ける体制をつくっていくということも、同時に考えていかなければいけないと思っております。今、もちろん研修体制のことを話し合ってはいますけれども、そういったことも今後の議論の重要なテーマかと思っております。というのは、地域の病院、私がおりますような地域ですと、非常に高い専門性を持った看護師の方が長く医療機関にいらっしゃらない。いつの間にか首都圏とか近畿圏へ異動なさってしまって、私たちとしてはとても寂しい思いをすることがあります。不利益をこうむることがありますので、働ける環境をつくるということも大事かと思っております。
 もう一点、これは松月構成員にお尋ねいたします。教育の中で、これから細かい内容は検討なさるのだと思いますけれども、先ほど小松構成員からコーディネーションも大事だというお話もありましたけれども、緩和ケアというのは診断されたときから切れ目がないということが私たちにとってはとても大事で、例えば地域連携も含めたコーディネーションについても、何かこの研修の中に入ってくる予定かどうかということが、もし今の時点でわかれば教えてください。
○花岡座長 松月構成員、いかがでしょうか。
○松月構成員 どうもありがとうございます。時間がなくて、その部分にほとんど触れられなかったのですが、拠点病院が核となって、地域との医療のネットワーク、それから生活をサポートするネットワークというものがあって、この研修があると私は思っております。それと同時に、地域での連携パスを通じて、または顔と顔が会わせられる検討会などが拠点病院の要件に義務づけられておりますが、それを頻回に実行することによって、そちらとつなげることが私はできると思っております。
 その中における第一線にいる外来看護師、一般の看護師との太いネットワークというものを、この研修の中にはぜひ入れたいと思っておりますので、そういう院内でのネットワークづくり、または院外も含めたネットワークづくりを働きかけることも、ぜひこの中に入れたいと思っております。
 ありがとうございました。
○花岡座長 田村構成員、どうぞ。
○田村構成員 お話、ありがとうございました。
 私自身は、緩和の認定看護師さんの養成にずっとかかわってきて、看護では、こういう専門の看護師さんをたくさん養成したり、支援したりしているのですが、患者さん側の相談とかを受けている側から言うと、そういう看護師さんが大きい病院の中で埋もれてしまっている。担う人が足りないということに対しても、そういう研修を受けた方をたくさんつくっていくことと同時に、大事な人的な資源を無駄にしないで患者さん、家族に生かして使っていけるような仕組みをつくるということをしなければならない。むしろそちらのことのほうが大事じゃないかなと常に思うのですね。
 認定コースで学ばれて、そういう領域で力を発揮したいと思って自施設に戻られても、活躍の場がないというのが、信じられないくらい、ほとんどなのです。それで、一緒に学んだ方もモチベーションを保つことが難しくなっておられるという現状もあるので、今、相談支援で点数をつけるという政策誘導的な部分も、仕組みに必ず、研修を積んだ人間を配置するということを保障するでしょう。また看護協会としても、職能団体としてあるべき配置の仕方のひな形といいましょうか、そういうところも発信していただく。それがすごく大事かなと思います。
お話、ありがとうございました。
 私自身は、緩和の認定看護師さんの養成にずっとかかわってきて、看護のほうでこういう専門の看護師さんをたくさん養成したり、支援したりしているのですが、患者さん側の相談とかを受けている側から言うと、そういう看護師さんが大きい病院の中で埋もれてしまっているというか、人が足りないということも、そういう研修を受けた方をたくさんつくっていくことと同時に、大事な人的な資源を無駄にしないで患者さん、家族に生かして使っていけるような仕組みをつくるということをしなければ、むしろそちらのことのほうが大事じゃないかなと常に思うのですね。
 認定で学ばれて、そういう領域で力を発揮したいと思って自施設に戻られても、活躍の場がないというのが、信じられないくらい、ほとんどなのです。それで、一緒に学んだ方もモチベーションを保つことが難しくなっておられるという現状もあるので、今、相談支援で点数をつけるという政策誘導的な部分も、仕組みに必ず配置するということを保障するでしょうし、また看護協会としても、職能団体としてあるべき配置の仕方のひな形といいましょうか、そういうところも発信していただく。それがすごく大事かなと思います。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ、加賀谷構成員。
○加賀谷構成員 ありがとうございます。
 松月構成員にお伺いしたいのですが、看護協会と地域のがん拠点病院との関係がちょっと見えないのです。これは、直轄でそれぞれの拠点病院に話が行くのか、あるいは必ずそれぞれの都道府県の看護協会を通して流れていくようになるのでしょうか。
○花岡座長 松月構成員、いかがでしょうか。
○松月構成員 ありがとうございます。
 専門看護師・認定看護師を教育して認定しているのが、実は看護協会なのですね。これは、職能団体が認定している制度でございますので、私たちはその人たちに対するネットワークを持っております。看護協会を通じて、会員になっている多くの病院の看護部長さんたちを集めている会が別にございますので、そちらでは看護部長さん、こういうことをやるので、足を引っ張らないように、この枠をちゃんと設けてあげてねというものは、協会から発信いたします。それから、この自治体の研修対象になっている指導者研修を受ける人に対しては、そちらのネットワークを通じて、ぜひあなたは参加しなさいという形で働きかけをいたします。
 5年ごとの更新制度がありますので、この数は実際に現場で今、活動している数を把握しておりますので、そういう意味では、病院を通じても当然できますが、当の受講対象者に直接働きかけることができるような仕組みになっております。
○花岡座長 どうぞ、大西構成員。
○大西構成員 松月構成員、小松構成員、ありがとうございました。
 きょう、見ていて思ったのですけれども、せっかくこれだけいい研修をつくるのですし、あと、いろいろな代表が集まっていますし、そういう人たちとの連携をうまくして、この研修内容を固めていけば、もっとよりよいものになるのではないかなと思いました。
○花岡座長 どうもありがとうございます。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、時間の関係がございますので、緩和ケアの研修体制につきましては、私と事務局にて次回検討会までに取りまとめたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 続いて、議題2として掲げております「緩和ケアにおける地域連携について」という項目に移りたいと思います。
 これまで、拠点病院における緩和ケアの提供体制につきましては、拠点病院を中心とした議論を行いまして、その中で地域連携体制についてということで、早期からの療養場所に関する意思決定支援、それから地域連携に関する協議会や退院時カンファレンスの開催などの必要性について、前回取りまとめたところでございます。
 今回、地域連携につきまして、拠点病院である東大医科研病院緩和ケアチームとしてかかわっておられます岩瀬構成員、拠点病院である北里大学病院にて取り組んでおられる小野沢参考人から、また在宅医療に取り組んでおられる武藤構成員から御発表いただきまして、地域連携における具体的施策について議論を深めることにしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 まず、事務局より資料6の説明をお願いいたします。
○事務局 よろしくお願いいたします。資料6について説明させていただきます。
 「緩和ケアに関する地域連携の取り組みの現状」としまして、まず表のページに予算事業にて取り組んでいる内容を御紹介させていただきます。上段の黒四角の2つ目、事業の目的・概要の部分ですが、2つの事業を御紹介させていただきます。在宅緩和ケア地域連携事業、そして緩和ケア推進事業。この緩和ケア推進事業というのは、この検討会でも議論を進めてきた緩和ケアセンターの整備を行う事業でございます。
 まず、上の在宅緩和ケア地域連携事業ですが、これは何をする事業かと申しますと、がんの拠点病院において都道府県と連携しまして、2次医療圏の在宅療養支援診療所の協力リストを作成する。こういったことでネットワークを構築した上で、医療圏内の在宅緩和ケアを専門とする医師などと協力して、在宅療養支援診療所の医師に対し、がん緩和ケアに関する知識と技術の研修を行い、在宅緩和ケア地域連携体制の構築を図るといった事業でございます。
 下の緩和ケアセンターを整備する事業の中で、この検討会でも議論を進めてきたところですが、今度は在宅緩和ケアを受ける患者さんの状態が悪くなったとき、急変したとき等に緊急入院病床の確保を行って、患者さんや在宅緩和ケアを提供する医師・医療従事者が在宅緩和ケアを含めた在宅療法を安心して行うことができる環境を整備することを目的として行っている事業でございます。
 続いて、裏のページをごらんください。
 上段は、がん診療連携拠点病院の指定要件の中で、病病連携・病診連携の協力体制といった項目で、現在の指定要件として掲げている項目でございます。
 そして、下の段は、がん患者の地域連携に関する診療報酬について、主な項目をまとめた表になります。全部で7つ紹介させていただいておりますが、上段3つが在宅医療を行っているような患者さんを夜間とか休日に受け入れることを評価するような診療報酬。そして、下の段4つに関しては、拠点病院等に入院している患者さんの退院支援などを行うことを評価したような診療報酬でございます。
 簡単でございますが、地域連携の取り組みの現状として説明させていただきました。以上です。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 それでは、岩瀬構成員、よろしくお願い申し上げます。
○岩瀬構成員 東大医科研病院緩和医療科の岩瀬でございます。私は、チーム医療から見たがん患者さんの意思決定支援と地域連携ということで、まとめてまいりました。
 まず、めくっていただいて2ページです。
 がんという病気の自然史経過において、医療者サイドとしまして、いろいろなタイミング、内容で意思決定支援をしなければならないと考えております。診断時からの緩和ケアということは当然のことでありまして、まず最初にがんという診断を受けてから治療に入るところでも、意思決定支援というものが当然必要になってくると考えられますし、治療中においても、有害事象を初め、いろいろな苦痛が発生することがあります。そこでも治療をどうするのかといったことに関しても、意思決定支援が必要になると考えられます。
 その後、治癒する方とがんが再発される方に分かれると考えますけれども、その後も治療が続いていきまして、最終的には主治医が治療適応がないと判断し、在宅のほうで療養するという意思決定の総合的な、最終的な支援というものも必要になってくると考えております。そういった流れの中で、緩和ケアセンター構想というものが今ありますけれども、がん拠点病院は横断的に多職種が支援できる体制をつくっていく必要があると考えております。
 その中身を挙げてみたのですけれども、1つは、スクリーニングが大切であって、そういったところから支援のタイミングを図っていくことも考えなければならないと思いますし、2段目の看護師によるカウンセリングが一番患者さんに寄り添う形で、一番初めに意思決定支援というものの必要性をキャッチするものではないかと考えております。
 それから、専門的な緩和ケアの提供ということで、緩和ケア外来、それから患者さんが直接訪ねていただく相談窓口の整備ということも、緩和ケアセンター構想の中でこれまでも挙がってまいりましたが、そういった形で一番よいタイミングで意思決定の支援をしていく必要があると考えました。
 次に、3ページ目ですけれども、これは拠点病院において多職種が協働するための概念図をあらわしたものです。緩和ケアセンターの構想がありますが、これが概念図になるのではないかと考えました。中心的な存在として、ジェネラルマネージャーがいて、いろいろな多職種が横断的に動ける体制をつくる。それが意思決定支援、地域連携ということに関して非常に重要であると考えました。
 4ページですけれども、実際に在宅へ移行されるがん患者さんの事例において、多職種がどのような協働をしていくか。その主な仕事として、必要な専門職の方とその内容を挙げ、活動場所を並べてみました。これは私の経験的なところから述べているものなのですけれども、こういった専門職の方々が右に挙げたような仕事をこなして、がん患者さんの在宅の連携活動というものを担っていくと考えます。
 5ページですが、実際の地域連携を実践しようとしたときに、我々が特に必要なことと考えていることがございます。
 1つは、今、申し上げたとおり、多職種が協働して事例に対応できる体制を構築するということですけれども、実際現場では、その患者さんの家族の正確な情報を共有するということが多職種間で必ず必要になってまいりまして、その事例をフレーミングする枠組みや記述ができる言葉を、その多職種のスタッフが持つ必要があると常々考えております。
 それから、患者さん中心のコミュニケーションが実践できることが大事ですし、そのそれぞれの地域のリソースを知っておくことが重要と考えております。
 6ページですけれども、我々の医療チームから見た、在宅へ移行される患者さん、家族の事例をこのような形でいつも分類して、いつも対応しておるのですけれども、大きく4つに分かれると考えております。
 1つは、単純型。これは比較的簡単に状況が理解できる事例のことを指します。それから、複雑、複合、無秩序という形で分けておるのですけれども、複雑、複合にいくにつれて、単純ではないが、理解が可能な範囲のものから、なかなかうまく理解できず、ある程度予測可能なレベルのものがだんだん多くなります。
 難しいのは、この理解も予測も不可能な領域というものがあって、7ページ以降にまとめました。
 8ページを見ていただきたいのですが、複合型にいきますと個別性が非常に高くなってきて、いろいろな要因が影響していることもあり、時間軸とか地域性も関与してきて、一般的な対応方法を絞り込むことがなかなか難しいという事例がございます。
 下に例を挙げてみたのですけれども、このようにいろいろな病態をお持ちの患者さん、それから家族の問題があることになってきますと、在宅へ移行するという連携の中で非常にいろいろな問題が挙がってきて、それをスムーズに解決することがなかなかできなくなってまいります。
 9ページには、一番難しい無秩序のタイプを書いてあるのですけれども、例えば患者さんが独居で社会的な孤立をされていたり、いろいろな法的・家族的な問題を抱えておられて、病態もいろいろなものがあるということになってまいりますと、どのようにマネジメントするかが非常に難しくなってまいります。
 10ページですけれども、我々が分類したタイプと意思決定を考えてみたところ、単純型と我々が呼んでいるものは、非常にスムーズに支援ができます。複雑になりますと、その意思決定を支援するのに非常に時間を要します。複合になってまいりますと、この意思決定を支援すること自体が難しくなってまいります。そういった分類をしつつ、多職種が情報を共有できるようなやり方を常に考えて対応しているのですけれども、漠然と対応するとなかなか難しいところがございまして、私どもはこういった分類方法を考えてみるのもどうかと考えて、本日提供させていただきました。
 11ページには、分類と地域連携の実情を結びつけて考えてみたのですけれども、我々が単純型と呼ぶものは、主治医の先生とソーシャルワーカー、それから緩和ケア専従という形でいらっしゃる看護師で十分対応可能ということが言えます。複雑になってまいりますと、緩和ケア医や薬剤師の先生方の介入が必要となってまいりまして、さらに精神科医とか心療内科の先生、心理士などの多職種が協働して対応できる体制がないと、なかなか難しくなってきます。複合型は、その発展型になります。
 12ページには、実際の単純から無秩序までのタイプに分けたときの、必要な多職種の段階を経て分けてみたのですけれども、これは結局、先ほどのページと同じことを言っておるのですが、単純型であると主治医の先生にソーシャルワーカーが一緒に協働して、そこに緩和ケアの専従看護師の方がいれば、十分に対応できる。だんだん複雑・複合となってくるにつれて、多職種、専門職がこれだけいないと地域との連携も難しくなると感じております。
 13ページでは、入院中のがん患者さんの意思決定支援から、そのネットワークの中で在宅医療へ移っていかれる方の具体的な流れを挙げてみたのですけれども、まず主治医の先生ががん治療の適応がないということを判断されたときに、患者さんと家族が療養場所を相談することになります。
 もちろん、この主治医の先生の治療適応がないという判断を簡単に受け入れられるものではありませんから、療養場所の相談の前に、患者さんの病気の治療に対する思いというものを傾聴するところから始めることが重要かと考えております。患者さんと家族の療養場所、その意思決定を相談していく過程で、主治医の先生、緩和ケア医、緩和ケアの専従医、看護師が意思決定を支援していくことになるかと思います。そして、患者さんと家族が在宅、おうちを希望されたときには、ソーシャルワーカーによって保険の申請等の指導があったり、いろいろなアドバイスが必要になってくると思います。
 それから、ケアマネジャーが決定して、在宅医の先生、訪問看護ステーションの選択ということがこの後起こり、その後、実際連携していくわけですけれども、ここで先ほどから申し上げているような分類に応じて、患者さんのいろいろな病態とか問題、どんなケアが必要なのか、家族のダイナミクスを評価する作業が必要になってまいりまして、それを正確に情報共有して適切な環境をつくるためには、緩和ケア医や緩和ケアの専従看護師がベースにいらっしゃって、必要に応じていろいろな専門職の方と協働していかないと、こういったことが評価できないということになると考えます。
 そして、在宅医の先生と訪問看護師による情報提供を拠点病院のほうからしていくわけですけれども、ここは非常に重要でして、実際によいケアを切れ目なく受けていくためには、その情報提供書の質、それから退院前のカンファレンスの実施等が重要になってくると考えます。
 そして、実際に在宅医療というものが開始されていくわけなのですけれども、送り出したら終わりではなく、我々はそこからが本番だと考えているのですけれども、当然がんは進行いたしますし、緊急入院体制というものを維持していかなければならなくなります。その緊急入院の体制というのは、検討会でも、ベッドを確保する等でいろいろ議論しているところでありますけれども、実際に緊急入院してきた方を受け入れる側としては、そこでも正確な直近の情報というものがないと、よい対応ができないことになりますので、拠点病院から在宅へ移行した後の緊急につながる体制、情報の共有をどうするのかという現実的な問題。そして、そのシステムをどうすればいいのかということが重要であると考えます。
 ということで、最後、14ページと15ページにまとめをいたしましたが、まずがん患者さんの意思決定支援というものが診断時から必要になってくるだろうということです。
 それから、治療前、治療中の意思決定支援というものは、担当の看護師によるカウンセリングで見出されるはずだと考えますし、患者相談窓口がいつでも利用できることが患者さんに届くようにアナウンスされていないといけないと考えます。
 それから、患者さんの意思決定に関しては、主治医のみならず、多職種で支援することができます。そして、患者さんが主治医の治療適応判断を受け入れられないときがありますけれども、そのときの意思決定支援は非常に難しいと思います。
 それから、療養場所の意思決定に関しましては、病態とか時間軸、それから地域性など、多くの関係因子が存在いたしますので、主治医のみならず、多職種で協働して支援することが望ましいと考えます。
 最後に、15ページですが、地域連携のまとめとしまして、在宅医療では、特定の個人・家族・地域全てにかかわってきますので、事例としては非常に複雑なものから複合的なもの、無秩序な構造を持つものが多いということが言えます。
 それから、こういった複雑な構造を持つ事例に関しては、院内・院外の多職種が協働しないと、質の高い在宅医療は実現しないと考えられます。
 そして、その多職種が協働するためには、事例の情報を漏れなく、そして正確に共有する必要がありますので、多職種で正確な情報を共有する一つのツールとして、多職種同士が、専門職が相互理解していくために、事例をフレーミングする枠組みや記述する言葉を持つ必要があると考えます。
 以上でございます。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 続いて、小野沢参考人、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○小野沢参考人 よろしくお願いいたします。本日は、お招きいただきまして、どうもありがとうございます。
 まず、私の背景を少し説明しろということでしたので、説明させていただきます。資料の13ページをごらんいただきますと、私、もともとは昨年4月まで亀田総合病院というところで在宅医療をしておりました。在宅医療のみならず、実はここに地域医療支援部というものがありまして、そこに相談室があったのですが、そこの室長と在宅医療部長と兼ねておりました。ですから、言ってしまえば、送り出し側と受け取り側を両方やっていたということでございます。
 この亀田総合病院があります南房総という地区は、今は高齢化率が31から40%という地域でございます。後でまた御説明しますけれども、例えば今、私が活動しております相模原市と比べますと、人口構成でちょうど20年先行しております。ここで亀田病院は、今から十数年前、2000年の介護保険の時点で高齢化が激しくなって、下手をすると急性期病院としての機能を果たせなくなるのではないかという危惧がありまして、相談室を整備いたしました。どう整備したかというと、そのときの相談員がやっている相談内容をタイムスタディーしまして、20人ぐらい必要だということで、整備して今、当たっております。
 こんなところで送り出し側と受け取る在宅医療の側と両方を経験していたわけですけれども、かなり理想的な環境がここにはあったと思います。それでも、がんの患者さんの何割が御自宅で亡くなっていたかというと、2割弱です。ですから、これだけ整備したとしても3割に届かないです。なぜだろうということを常々考えていたのですが、外側の環境を幾ら整備しても、患者さんの内側、要は心の中の本当の希望というのを、実は誰も聞いていないのだということに気がつくわけです。
 きょうの資料に入ります。今、がんになります。そして、治療がうまくいけば非常に進んでおりますので、多くの方が治ります。ところが、不幸なことに、治癒不可能な悪性腫瘍にかかられる方も数多くいらっしゃいます。そういった方がこれからどんどんふえるわけです。
 例えば相模原市の死亡予測というのが最初に書いてありますが、2011年の国勢調査ですと、相模原市の死亡数は大体5,200人です。これが2031年になりますと、1万人を超えてきます。今、大体3割ががんで亡くなっているのですけれども、もしかするとがんで亡くなる方は減るかもしれませんが、これがそのままの割合で20年続いてしまいますと、3,000名ががんで亡くなるということになります。
 こうなったときに何が起きるのかということを非常に危惧するわけです。亀田総合病院はソーシャルワーカーが20名おります。これは普通の病院としてはとんでもない数で、これだけそろえているところは多分ないです。では、どうやって出した20名かと申しますと、これは実はADL障害のある人を困らないようにしようということで算出しております。ですから、がんの意思決定支援に関しては、ここには入っていないのです。それでも20名いるということです。
 次のページに進みます。では、鴨川でどんな状況になるのかというと、2.療養場所の選択:意思決定支援の必要性を見ていただきますと、私たち、あそこで在宅医療を始めましたのは1997年になります。田舎というのは、多くの病院が在宅医療をしております。これはクリニックではなくて、地域の病院がしているのです。亀田病院も御他聞に漏れず、地域の先生方は高齢化していらっしゃったので、自分たちで始めました。これが十数年続いております。
 これは2007年、慶應大学の池上先生と協働で、鴨川と東京都町田市でアンケート調査をいたしました。厚生労働省のほうで最期の療養場所はどこがいいですかという調査をしていたのにのっとって、医師、看護職、介護職に同じ調査をしております。私たちは、そういうふうに在宅医療がそれほど珍しくないという環境の鴨川市で、医師が最期、どこで過ごしたいかというのを見てみますと、2割以上が家で最期まで私はいるのだとおっしゃった。看護職は25%で、介護職に至っては35%です。
 実は、これは町田市とかなり違います。町田市は、医師で、家で亡くなりたいという方は1割ぐらいしかいらっしゃらない。要は、鴨川で在宅医療を身近で見ながら過ごしている医師という職業の方は、私は家で死ねるのだと思っていらっしゃるということです。これを見ますと、もしかすると私たち、医師ではない亀田病院の患者さんは、2割弱しか家で亡くなっていないということを考えると、まだまだやれることがあるのではないかということです。
 あと、ざっと書いてありますけれども、次の4ページのグラフを見ていただきます。このグラフは何かと申しますと、悪性腫瘍の方、皆さん、1回ではなく、数回入院されます。最後の入院のときの転帰先です。最後の入院ですから、複数回入院したということで、単純に治られた方、早期の方は入っておりません。このデータは、亀田総合病院の相談室でとっておりますので、相談に来るような、ちょっと重症の方になります。最後の転帰先を見ていただきますと、亡くなったのが半分、自宅に帰られたのが17%、在宅医療を利用されたのが11%、一般病院が14.1。
 帰られた、無事にどこかに転帰された方の約3分1が在宅医療を利用されているのですけれども、ここでの大きな問題は、半数が死亡退院になってしまったところだと思います。私は、なぜこうなるのかということをちょっと考えてみますに、完全な私見なのですけれども、日本というのは非常にありがたい医療環境にあって、WHOでも評価してくださっているように、恐らく世界一と言っていいぐらいの医療環境です。ですから、どんな状況であっても、入院したいとおっしゃれば入院できます。経済的なことで退院を余儀なくされる方は、ほとんどいらっしゃらないです。
 そうすると、治療があると言われると、実際にはないにもかかわらず期待して、亡くなるまでずっと病院にいる方が実は多いのではないかと思っております。そういう恵まれた環境だからこそ、もう少し丁寧に、その人の心の中に沈んでしまっている、本当は最期の人生をどう生きたいのだという思いをきっちり外に出してあげることが、実はこの日本では非常に重要な要素を占めるのではないか。
 経済的なことで入院ができないということになってしまいますと、例えば米国だとホスピスに入ればただですから、そこのホスピスプログラムに入られるわけですけれども、そうすると治療の手立てがなくなります。ところが、日本はどこにいても治療がきっちり受けられる。だからこそ、治癒不可能だとわかった場合に、どういう人生をあなたは送りたいのでしょうかということを、全員に丁寧に、きっちり聞く必要が私はあると考えております。
 次に、がん相談支援センターの現状ですけれども、実際にこういうことが今のがん拠点病院に可能なのかということですが、私は絶対に不可能だと思います。私、千葉県で難病相談支援センターの会議とがん拠点病院の会議、両方出ていましたが、ほとんど全員同じメンバーです。要は、専任と言いながらも、がんだけやっている人はほとんどいない状況です。これでは、全員の患者さんに本当はどうしたいのでしょうということを、時間をかけて聞くなどということは不可能なわけです。
 もう一つ、では、実際に終末期の人が病院にどれぐらいいるのかということが実はわからない。入院は簡単にわかります。入院は、きょう、誰が入院していて、どの方が終末期なのか、調べればいいわけで、簡単にわかるのですが、実際に終末期の方がいらっしゃるのは外来なのですね。外来で何人いるのだろうと、私、亀田病院でずっと調べたかったのです。ところが、人員の問題もあってなかなか調べられなかった。
 北里大学に来たら優秀なナースが大量にいて、調べたいのだけれどもと言ったら1カ月で調べてくれました。外来をやっていらっしゃる先生の横について、その先生がこの人の治療はどのぐらいの状況なのか、医者が思っている今の治療状況を、医者にアンケートをとった。患者さんが来るとアンケート。
 それを調べたのが、次の表1です。「外来における医師が認識している治療レベル毎の治療場所の予定」と書いてありますが、治療場所です。最後の割合のところが、医師が考えている今の治療レベルの割合になります。例えば終末期だと思っていらっしゃる方は、外来患者さんのうちの3.2、治療困難が4.2、低有効治療中が9.3。これを合わせますと大体16ぐらいです。ただ、それぞれのレベルによって外来の受診頻度が異なりますので、それに重みづけをして推定をしてみます。要は、実患者が何人いるのかというのを出してみます。
 予約間隔中央値がここに書いてありますが、こういったデータを集めてみると、治療困難だ、化学療法でも低有効のものをしていると医師が認識している以上の人が、北里大学病院ですと700名ぐらいいる。これは外来です。そうすると、700名であれば何とかなる。これが1,000、2,000になってしまうと厳しいですけれども、700であれば、全員リストをつくって数カ月の間に一生懸命会って、ちゃんと話をすることをやろうと思えばできる。この700名の方も順繰りに終末期になられるわけでしょうから、最初は大変ですけれども、後は新規にこのカテゴリーに入ってきた方だけをやればいいわけで、恐らく何とかなるレベルであることがわかりました。
 その次に、では相模原市ではどうなのかということが書いてありますが、相模原市の年間のがん死亡者数は大体1,500です。そうしますと、ある年に1,500名亡くなっているわけですから、その1,500名の方たちはどこかの時点で終末期に近い状況、治療が難しくなっているわけで、出口が1,500であれば、その1年間に入ってきたのも多分1,500だろうという推定をすると、この人たち1人について1人が丸1日かけて、分割してもいいですが、1人の勤務時間の8時間をかけて丁寧に話を聞いたとすると、1年間で1,500人日分、相談支援の要員がいればいいということになります。これは、わずか6名分の年間労働時間に匹敵するわけです。
 そうすると、相模原市71万人にたった6人、そういう人がいればいいわけです。これは不可能ではない。実際、これをもしやったとして、どんな効果があるのかですけれども、在院日数があります。死亡退院とそれ以外の退院では、死亡退院になるケースのほうが在院日数は長いということです。
 次のページを見てみますと、最終入院だけを見た場合の在院日数の比較が載っています。在宅医療になった方、死亡退院された方、それから一般病院の中にホスピスも入っていますが、に転院された方の在院日数を見てみますと、在宅医療が一番短いのです。ですから、がんで亡くなる方のある割合の方が、私は家で家族に囲まれて亡くなりたいのです。今はひとり暮らしだけれども、遠くにいる娘と最期の時間を過ごしたいと、それがもしかなえられたとすれば、在院日数が短くなった分、相模原市全体で1,300床日、ベッドが節約できる。節約と言うとちょっと聞こえが悪いですが、そういった効果があります。
 では、その在宅医療の受け取り側はどうかという話なのですけれども、在宅医療の資源は、私は現状でも結構あるのではないかと思っております。鶏が先か卵が先かという問題なのですが、在宅医療をやっていらっしゃる多くの先生方は軽症者に対応していらっしゃるのです。この理由は、別に軽症者を診たいからというわけではなくて、そういう方も実はいらっしゃるのですけれども、そうでない方もいらっしゃる。ただ、その方も軽症者を見る。なぜかと言えば、重症の方が退院してこないからです。これは、急性期病院もしくはがん拠点病院がきっちりこういったサービスをして、私は家で亡くなりたいのだという方を地域にどんどん帰す取り組みをしていけば、地域のほうがそれを受け入れざるを得ないというか、受け入れるような体制を多分自分でつくっていくと思うのです。
 ですから、両方を一緒にやらなくてはいけないのですが、急性期病院もしくはがん拠点病院の相談支援の体制をまずは充実させて、患者さんの中にある、最期の日々をどう生きたいのか、私はこんなふうに過ごしたいのだということをちゃんと聞き出して、そしてその希望をかなえるような体制をとることが必要かなと思います。
 実際に家族の負担はどうなのだという話もあるでしょうが、9ページ、10ページに書いてありますが、在宅医療に依頼があってから亡くなるまでの期間が短いこと。あとは、ほかの病気に比べて介護負担が多くはないことを見ると、在宅に大量にがんの患者さんを抱えたからといって、社会が非常に疲弊してしまうことは、私はないと考えております。逆に、非常にいい効果が地域全体にもたらされるのではないかと考えております。
 ですから、ぜひこういった場で意思決定の支援をきちんとして、患者さんたちが最期、自分がどこで、どう過ごしたいのか、どんな生を生きたいのかということをちゃんと医療者に伝えられるような仕組みづくりをお願いできればなと考えております。
 御清聴、ありがとうございました。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 続きまして、武藤構成員、よろしくお願いいたします。
○武藤構成員 祐ホームクリニックの武藤です。今日は、発言の機会を頂戴しまして、ありがとうございました。
 私の資料は、次の資料、拠点病院に求められる緩和ケアの提供体制についてのとりまとめに準じて書いてあります。在宅医療をやっている立場から、このとりまとめに対し改めてコメントさせていただきます。
 私どもの医療法人は、2010年に文京区に設立しました在宅医療専門のクリニックでございます。2011年9月には、宮城県石巻でもクリニックを立てました。現在、常勤6人と非常勤22名の医師、延べスタッフ60名の体制で運営しております。今まで延べ1,400人弱の患者様を看ており、そのうち426人はもう亡くなられております。その中で私どもが在宅でみとった方は大体55%で、石巻では入院先がなかなかないものですから、7割ぐらいであります。がんの方に限って言いますと、文京区でも大体6割の看取り率です。
 コメントとして幾つかございますけれども、まず「患者とその家族等の心情に配慮した意思決定環境の整備」というところで申し上げます。もちろん、入院の患者様に対しての意思決定支援が必要だということは当然ですが、今までの議論にもございましたように、外来通院患者さんの意思決定支援をどうするのかも非常に重要であろうかと思います。外来で化学療法をしている方もいる。
 中には、外来に行っても採血結果が悪くて化学療法ができない方も当然いらっしゃいます。在宅医療も同時に入ることによって、外来に行く前に採血をして化学療法が可能な時のみ通院することもできます。御本人は通院そのものが負担になっていることも多くあります。ある時期から在宅療法も外来と並列で走る。そうすることによって、緩和ケアが最初から最期まで行われることが可能なのではないだろうかと思っています。ただ、これを推進するためにも、拠点病院、病院の中に早目に在宅医療を導入する仕組みが必要であろうと思っています。
 それから、入院患者様の場合には、緩和ケアのチームが同時に入ることが多いかと思いますが、退院とか転院の判断は基本的には主科の先生がなさっていると理解しております。したがって、その主科の主治医の先生の判断を支える、推進するチームが必要です。このチームには少なくとも看護師さんとMSWの人は必須だ思います。もちろん送り出すことを推進することも大事ですが、療養環境を見ながら、必ずしも在宅ではない選択肢も当然考えていかなければいけないわけであります。ただ送り出すのではなくて、生活状況も知っているMSWの人にもきちんとチームに入っていただければと思います。
 2番目として、「苦痛のスクリーニングの徹底」で、苦痛のスクリーニングは病院において非常に重要であるということが取りまとめで書いてありますが、在宅に移られても、同じスクリーニングのフォーマットで評価し、必要があれば対応していくことができれば、一貫した治療、ケアができるのではないかと思っています。在宅移行時にも分断されずに、シームレスに苦痛に関する情報共有を実現する仕組みが重要ではないだろうかと思っています。
 3番目としまして、「基本的緩和ケアの提供体制」ということで、院内での質の高い基本的緩和ケア提供のための体制が大事ということでありますが、きょうの議論、また今までの議論にも書いてありましたように、拠点病院が中心となって、在宅医、訪問看護師、訪問薬剤師などにも、ぜひ知識を提供していただきたいと思います。拠点病院の多くは、地元の患者さんが来ていることがとても多いわけでありますから、その地域周辺の在宅医療にかかわる医療・介護従事者に対しての教育というものを、ぜひ考えていただければと思います。
 また、最近、在宅医療をやっているクリニックが増えているようにも思いますが、中には基本的には施設専門で、余り重症の方を見ないところや、報道等では業者と結託してやっているようなところもあるようですが、全ての在宅クリニックが緩和ケアをやっているわけではありません。
 先日、文京区の医師会でも報告がありましたが、往診をしている先生の半分以上が在宅医療をやっている時間が月に5時間以内でした。ということは、週に1時間ということですから、基本的にそういう人は緩和ケアをやっていないと考えられるわけです。ですから、裾野を広げることをしっかりやっていかないと、幾ら病院から出そうとしても受け手側が足りないという大きな問題になります。
 4番目に、「専門的緩和ケアのアクセスへの改善」では、院内をつなげるリンクナースの推進が書いてあったかと思いますが、緩和ケアチームと在宅医をリンクするような機能が拠点病院にあることが望ましいと思います。例えば主科の先生からは、診療情報提供書でいろいろな情報をいただきますが、緩和ケアチームの先生からは必ずしも診療情報提供書などをいただきません。在宅に移っても、緩和ケアチームの先生にいろいろとコンサルできるような仕組みがあると、ある程度安心して在宅医が診ていくことができるのではないだろうかと思います。
 5番目は、繰り返しになるのですけれども、専門的緩和ケアの提供体制ということでは、在宅にかかわるリソースに対しての質向上の観点からも、ぜひ御支援いただければと思います。
 6番目の相談支援の提供体制ということは、ぜひお願いしたいと思います。
 7番目の「切れ目のない地域連携体制の構築」ということで、ここにはマップや医療機関名のリストということが一つの例として挙げられていましたけれども、患者さん、御家族が判断する上で、もう少し詳細な情報があったほうがよいのではないだろうかと思います。実際の症例数や医師数、看取り件数など、ここは本当に緩和ケアをきちんとやってもらえるクリニックなのだろうかといった観点から、少し細かい情報もあるとよいと思います。また、連携している開業医を集めて、少なくとも年に1回、情報交換をしてアップデートするようなことがないと、どうしてもだんだんと情報は古くなりますので、こういった仕組みも御検討いただければと思います。
 最後に、繰り返しにはなるのですが、退院、意思決定支援の重要性というのは私も重々承知をしている上で、例えば文京区であっても、石巻市であっても、私どものようなクリニックができたために、がん患者が退院することがふえたと、結構多くの病院から聞くことがあります。ですから、受け手側がしっかりしないと、結局は患者さんを出せないという事情もあるわけですので、この点もぜひ拠点病院の問題意識としてお持ちいただければと思います。
 以上です。ありがとうございました。
○武藤構成員 祐ホームクリニックの武藤です。きょうは、発言の機会を頂戴しまして、ありがとうございました。
 私の資料は、次の資料、拠点病院に求められる緩和ケアの提供体制についてのとりまとめに準じて書いてあります。在宅医療をやっている立場から、改めてこういったところも観点としてあったらよいのではないだろうかと考えております。
 もともと私どもの医療法人は、2010年に文京区に建ちました在宅医療専門のクリニックでございます。2011年9月には、宮城県石巻でもクリニックをつくってやっております。現在、常勤6人と非常勤22名ということで、スタッフ52名の体制で運営しておりまして、今まで延べ1,400人弱の患者様、そのうち426人はもう亡くなられております。その中で私どもが在宅でみとった方は大体55%で、石巻は入院先がなかなかないものですから、7割ぐらいでありますけれども、がんの方に限って言いますと、文京区でも大体6割は私どもが在宅でみとっているということになります。
 コメントとしまして幾つかございますけれども、まず患者とその家族等の心情に配慮した意思決定環境の整備というところで申し上げます。もちろん、入院の患者様に対しての意思決定支援が必要だということは当然でございますが、今までの議論にもございましたように、外来通院患者さんの意思決定支援をどうやっていくかといったところも非常に重要であろうかと思います。中には、治療をやることがなくて、ただ外来に通っている方もいらっしゃるわけでありますが、外来で化学療法をしながら通っていらっしゃる方もいる。
 こういった方々は、御存じのように実際に状態が悪くて、外来に行っても化学療法ができない方も当然いらっしゃるのですが、在宅医療と同時に入ることによって事前に状況がわかって、今であれば在宅化学療法ができる状態で受診する体制ができますと、御本人は通院そのものが負担になっていることも多いわけでありますから、ある一定の時期に在宅療法も並列で走る。そうすることによって、緩和ケアが最初から最期までいくことが可能なのではないだろうかと思っています。ただ、これを推進するためにも、拠点病院、病院の中に早目に在宅医療を導入する仕組みが必要であろうと思っています。
 それから、入院患者様の場合には、緩和ケアのチームが同時に入ることが多いかと思いますが、退院とか転院の判断は基本的には主科の先生がなさっていると理解しております。めくっていただきますと、したがって、その主科の主治医の先生の判断を支える、推進するチームが必要であろう。いろいろなチームの構成員はあろうかと思いますが、少なくとも看護師さんとMSWの人は必須ではないだろうかと思っています。特に在宅は、もちろん送り出すことを推進することも大事なのですが、療養環境を見ながら、必ずしも在宅ではない選択肢も当然考えていかなければいけないわけでありますから、ただ送り出すのではなくて、いろいろなことを知っているMSWの人もきちんと入っていただければと思います。
 2番目としましては、苦痛のスクリーニングの徹底ということで、苦痛のスクリーニングは病院において非常に重要であるということが取りまとめで書いてありますが、在宅に移られても、その同じようなスクリーニングのフォーマットで判断し、必要があれば対応していくことができれば、一貫した治療、ケアができるのではないかと思っています。ですので、在宅時で分断されずに、シームレスに苦痛に関する情報共有を実現する仕組みが重要ではないだろうかと思っています。
 3番目としまして、基本的緩和ケアの提供体制ということで、もちろん院内での質の高い基本的緩和ケア提供のための体制が大事ということでありますが、きょうの議論、また今までの議論にも書いてありましたように、拠点病院が中心となって、この在宅医、訪問看護師、訪問薬剤師などにも、ぜひ知識を提供するようなことをしていただきたいと思います。拠点病院の多くは、地元の患者さんが来ていることがとても多いわけでありますから、その地域周辺の在宅医療にかかわる医療従事者、介護にかかわる人たちに対しての教育というものを、ぜひ考えていただければと思います。
 また、最近、在宅医療をやっているクリニックがふえているようにも思いますが、中には基本的には施設専門で、余り重症の方を見ないところや、報道等では業者と結託してやっているようなところもあるようですが、緩和ケアをやっているクリニックが必ずしも全てでないということと。
 あと、先日、文京区でも報告があったのですけれども、開業の先生の半分以上が在宅医療をやっている時間が月に5時間以内。ということは、週に1時間ということですから、基本的にそういう人は緩和ケアをやっていないと考えられるわけです。ですから、裾野を広げることをしっかりやっていかないと、幾ら病院から出ても受け手側が足りないということはどうしてもあるわけですから、こういったところも必要ではないだろうかと思っています。
 4番目に、専門的緩和ケアのアクセスへの改善ということで、リンクナースのことはここに書いてあったかと思いますが、緩和ケアチームと在宅医をリンクするような機能が拠点病院にあることが望ましいと思います。例えば主科の先生からは、診療情報提供書でいろいろな情報をいただくことが多いのですけれども、緩和についての御相談などをしたい場合に、緩和ケアチームの先生からは必ずしも診療情報提供書などをいただいていないわけでありますから、ここで在宅に移っても、いろいろとコンサルできるような仕組みがあると、ある程度安心して在宅で診ていくことができるのではないだろうかと思います。
 5番目は、繰り返しになるのですけれども、専門的緩和ケアの提供体制ということでは、在宅にかかわるリソースに対しての質向上ということも、ぜひ御支援いただければと思います。
 6番の相談支援の提供体制ということは、ぜひお願いしたいと思います。
 7番の切れ目のない地域連携体制の構築ということで、ここにはマップや医療機関名のリストということが一つの例として挙げられていましたけれども、患者さん、御家族が判断する上で、もう少し詳細な情報があったほうがよいのではないだろうか。といったところで、実際の症例数や医師数、みとり件数など、ここが本当に緩和ケアをきちんとやってもらえるクリニックなのだろうかといった、少し細かい情報もあるとよいのではないだろうかということと。あとは、そういった先生たちを集めて、年に1回、少なくとも情報をアップデートするようなことがないと、どうしてもだんだんと古くなりますので、こういった仕組みも御検討いただければと思います。
 最後に、少し繰り返しにはなるのですが、もちろん退院、意思決定支援の重要性というのは私も重々承知をしている上で、例えば文京区であっても、石巻市であっても、私どものようなクリニックができたために、がん患者が退院することがふえたと、結構多くの大学病院から聞くことがあります。ですから、受け手側がしっかりしないと、結局は出せないという事情もあるわけですので、この点もぜひ拠点病院の問題意識としてお持ちいただければと思います。
 以上です。ありがとうございました。
○花岡座長 どうもありがとうございました。がん患者さんの地域連携については、拠点病院や在宅医、患者さんなどのさまざまな立場の意見をもとに検討を進める必要があると思います。今回、拠点病院、そして在宅医療の側から、早期からの意思決定支援について御発表いただきました。緩和ケアの観点から考えますと、患者さんの思いを酌み取り、望む場所での療養を実現させることは非常に重要なことだと思っております。また、そういったことは各施設の担当者個人に任せるのではなく、組織としてある程度制度化した上で取り組むことが望ましいことではないかと思います。
 今回、具体例として意思決定支援にかかわる専門的人材、チームの配置を行ってはどうかという提案がございましたが、その他の御提案でも結構ですし、こういった具体策についての御意見がある方がおられましたら、御発表をお願いしたいと思います。
 田村構成員、どうぞ。
○田村構成員 日々、患者さん、御家族の意思決定支援とその連携をしている、相談を受けているソーシャルワーカーの立場から、本当に現実的に変えていけたらいいなと思うたくさんの御示唆のある御発表、ありがとうございました。
 私のほうから、実際の臨床の部分も含めて、ちょっとお話をさせていただこうと思うのです。意思決定支援というものに関して、私どもは緩和ケア病棟があるがん専門病院でして、緩和ケア病棟のためにといいますか、入院を目的にということで紹介された緩和ケア外来で、ソーシャルワーカーが入ってお話を受けている中でしていることのほとんどが意思決定支援です。そこで、「どんなふうに過ごしたかったのだろう、本当はどういうふうに過ごしたい?」ということを初めて問いかけられたとおっしゃる方が少なくないのです。
 それは結局、小野沢先生がおっしゃった、どう過ごしたいかということを深く聞くことなく、例えば緩和ケア病棟のあるリストとか在宅療養支援診療所の場所とか訪問看護ステーションとか訪問を受けられるとかケアの断片の情報を持たされて、これはとても在宅が難しいなということで、緩和ケア外来から入院を希望しているということで、多くの拠点、いろいろな病院から見えるのです。
 よく聞くと、リアルニーズといいますか、患者さん、御家族が本当はどうしたいのかということを明確にすることを、当事者と一緒に、何がその人にとって価値があるのか、何を譲れて、何を一番にしたいのかということを一緒にやりとりをすること。それも、ただの情報量としての情報ではなくて、マッチングですね。その方の御様子とか家族の力量なども全部総合した上で、それをアセスメント上で、どんな情報がこの方にとっては使えるものだろうか、というマッチングをして提供しながら、その中で何が自分にはフィットするのだろう、これでこんな過ごし方ができるのではないかと行き着くまでを、相談支援でしているのですね。
 そうなりますと、皆さんが、すべて緩和ケア病棟で過ごしたいとは、決してならないのです。例えば、全くの在宅とか全くの入院ではなくて、今いろいろな資源の使い方があります。いろいろ問題はありますが、お泊まりデイを初め、いろいろなことを縫いながら、その人の暮らしをつくっていくための支援は、その方が大事な時間を納得して過ごしていただくことが最も大事ですし、コストの部分でも、相談に時間、マンパワーをかけるお金が、実際の資源を使うお金よりも、先生は計算を出しておられましたけれども、ずっと小さいと痛感します。
 ですので、がん情報支援センターでは情報を提供するのですけれども、本当の目的は意思決定支援、過ごし方、時間をどこでどんなふうに過ごすのかというところが最も大事じゃないかなと私自身は思っております。
 それから、岩瀬さんがつくってくださった13ページで、在宅を希望した段階でソーシャルワーカーが、となりますけれども、実際には、1の段階で療養場所。医療であったとしても、サクションが頻回であればあの病院は大丈夫ですよ、医療行為頻回では、あそこはだめですよ。など、一時が万事、この人の状況でどんな支援がフィットするかということは、検討の始めの段階から重要でそこからソーシャルワーカーが入っていったほうが妥当だということで、当院の場合はそういう形で相談支援を進めております。
 以上です。
日々、患者さん、御家族の意思決定支援とその連携をしている、相談を受けているソーシャルワーカーの立場から、本当に現実的に変えていけたらいいなと思うたくさんの御示唆のある御発表、ありがとうございました。
 私のほうから、実際の臨床の部分も含めて、ちょっとお話をさせていただこうと思うのですが、意思決定支援というものに関して、私どもは緩和ケア病棟があるがん専門病院でして、緩和ケア病棟のためのといいますか、入院を目的にということで紹介された緩和ケア外来で、ソーシャルワーカーが入ってお話を受けている人のしていることのほとんどが意思決定支援です。そこで、どんなふうに過ごしたかったのだろう、本当はどういうふうに過ごしたいということを初めて問いかけられたとおっしゃる方が少なくないのです。
 それは結局、小野沢先生がおっしゃった、どう過ごしたいかということを深く聞くことなく、例えば緩和ケア病棟のあるリストとか在宅療養支援診療所の場所とか訪問看護ステーションとか訪問を受けられるとかケアの断片の情報を持たされて、これはとても難しいなということで、緩和ケア外来から入院を希望しているということで、多くの拠点、いろいろな病院から見えるのです。
 よく聞くと、リアルニーズといいますか、患者さん、御家族が本当はどうしたいのかということを明確にすることを、当事者と一緒に、何がその人にとって価値があるのか、何を譲れて、何を一番にしたいのかということを一緒にやりとりをすること。それも、ただの情報量としての情報ではなくて、マッチングですね。その方の御様子とか家族の力量なども全部総合した上で、それをアセスメント上で、どんな情報がこの方にとっては使えるものだろうかというマッチングをして提供しながら、その中で何が自分にはフィットするのだろう、これでこんな過ごし方ができるのではないかと行き着くまでの相談支援をしているのですね。
 そうなりますと、皆さんが緩和ケア病棟で過ごしたいとは、決してならないのです。例えば、全くの在宅とか全くの入院ではなくて、今いろいろな資源の使い方があります。いろいろ問題はありますが、お泊まりデイを初め、いろいろなことを縫いながら、その人の暮らしをつくっていくための支援は、その方が大事な時間を納得して過ごしていただくことが最も大事ですし、コストの部分でも、相談に時間、マンパワーをかけるお金が、実際の資源を使うお金よりも、先生は計算を出しておられましたけれども、ずっと小さいと痛感します。
 ですので、がん情報支援センターでは情報を提供するのですけれども、本当の目的は意思決定支援、過ごし方、時間をどこでどんなふうに過ごすのかというところが最も大事じゃないかなと私自身は思っております。
 それから、岩瀬さんがつくってくださった13ページで、在宅を希望してソーシャルワーカーがとなりますけれども、1の段階で療養場所。医療であったとしても、サクションが頻回であればあの病院は大丈夫ですよ、医療は、あそこはだめですよ。一時が万事、この人の状況でどんな支援がフィットするかということは、そこからソーシャルワーカーが入っていったほうが妥当だということで、当院の場合はそういう形で相談支援を進めております。
 以上です。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 木澤構成員、どうぞ。
○木澤構成員 大変ありがとうございました。本当によくわかる、身に詰まされる発表で、すごく大切なことだと伺いました。
 1つだけ気になっているところがあって、意思決定支援を進めたり、地域連携を進めていく上で、もう一つどうにかしなきゃいけない観点ければならない視点があると考えました。私も相談支援部門を、小野沢先生と同じように難病とがんと、両方やっていたので、事情は非常によく存じ上げているのつもりですけれども、相談員とナースをふやしていくことは非常に重要なことだと理解しています。今、田村さんがおっしゃったことは現実だと思います。
 もう一つの問題は、相談窓口そこにたどり着けた人はいいのです。が恐らくたどり着かない人が相当数いるということを分かっておかないといけない。例えばイギリスのリサーチなどでもそうなのですけれども、終末期の意思決定支援を全員に勧めても、たどり着く実際にするのは人は約半分。なぜかというと、否認という心理機転があるからです。自分はまだそんな状態ではなく、まだ治療が続けられると感じたりするし、そこに行くこと終末期の意思決定をすることは時に」は非常につらいことであるので、そこにたどり着くきっかけは主治医じゃないと難しい。になります。そこのキューを出すのはその話し合いのきっかけを切り出すのは、主治医や担当している看護師でないと難しい。ですので、体制を整備しても実際にアクセスできされないという問題を、果たしてどう改善していくのかということが非常に大きな問題だと思います。
 それは、文化の開放やエデュケーションや教育の影響が大きいだったりすると思うので、そこは地道にやっていかなければいけないだろうと、さまざまなリサーチの結果を見ていて思います。日本では、さまざまな文化的背景から、恐らくもっとそういう否認などの影響から終末期の意思決定が行われにくい状況がより強いと思われるので、そこが一番体制の整備とともにやっていかなければいけない大きな問題だろうなと思います。ですので、基本教育の中に意思決定支援の部分をある程度、院内に適切な人材を整備しつつ、それと並行するように、全てのがんにかかわる医師、及び、がんばかりでなく、全ての難治性疾患に係る医師がそういう終末期の意思決定ができたり、ただ、行け行けどんどんではなくて、患者さんと治療の目標を確認していけるような仕組みをつくれればいいなと、心から思います。
 以上です。
○花岡座長 ありがとうございました。
 松本構成員、どうぞ。
○松本構成員 どうもありがとうございます。
 私たちの仲間が治療をもう中止することになったときに言っていた言葉があるのです。それは、緩和ケア登録をしなさいとか、こういうステーションがありますという、まさに先ほど田村構成員がおっしゃったような断片的な情報提供しかなかった。僕が一番聞いてほしかったのは、これからどう生きていきたいですかということを誰も医療者が問うてくれなかった。これがとてもつらいということを言っていたのを、今、思い出しました。
 先ほどの岩瀬構成員、そして小野沢参考人、武藤構成員からの御発表、ありがとうございました。これらの発表を聞かせていただきまして思ったことが、意思決定支援についても、地域連携についても、私たちは司令塔が今ないのではないか。どなたに、どういうふうに相談すればいいのかということが、何か細切れになっているような気がいたしました。
 先ほど岩瀬構成員の御発表資料の13ページの御説明の中で、退院前カンファレンスがあって退院していく。そこからがスタートだと思いますということを岩瀬構成員がおっしゃいました。その後、在宅医療に移られた後も、もしも何かあったときに緊急入院体制を維持する。そのときには、直前の情報を把握していることが必要だということをおっしゃいました。こういった点から見ても、それから、先ほどの武藤構成員の御発表資料の中にも、緩和ケアチームと在宅医をリンクするような機能が拠点病院にあることが望ましいということを考えましても、何か拠点病院の中でそういった司令塔のような役割を果たす、ずっと連続して患者家族を支援していくような役割が必要なのではないかなということを思いました。
 例えば、緩和ケアセンターにジェネラルマネージャーを置くということが言われております。これは、院内の機能を統率するということもあるのだと思いますけれども、例えばこういうジェネラルマネージャーのような役割の方が司令塔になり得るのかどうか。それとも、新たに別にそういった役割が必要なのか。それとも司令塔という1人ではなくて、その時々に応じた人たちが対応していけばいいとお考えなのか、そのあたりの御意見を伺えればと思います。どなたにお尋ねすればよろしいのか。岩瀬構成員、お願いできますでしょうか。
○花岡座長 岩瀬構成員、お願いいたします。
○岩瀬構成員 司令塔の話なのですが、ジェネラルマネージャーは緩和ケアセンター全体を見ないといけないので、個々の患者さん、家族の司令塔になるのは難しいと考えているのです。やはり看護師さん、カウンセリングを行う、診断時から寄り添える方というのが、担当者として患者さんと家族に1人つくことが必要な条件ではないかと私は考えております。
○花岡座長 小野沢参考人、いかがでございましょうか。
○小野沢参考人 非常に難しい問題で、先ほど木澤先生がおっしゃったように、意思決定支援というのは多分生半可なことではできないと思います。実は今、幾つかの病院で入院時にアセスメントを全員にするという試みを始めています。私が北里に来たのも、それをつくりたいと呼ばれたのです。ちょっとチャンスで、要は問題のある人をほぼ全員把握できる体制を幾つかの病院で整えつつあるのです。
 がん治療センターの佐々木先生という方、それから近藤まゆみさんという非常に優秀な看護師の方と一緒に、早期からとにかく顔見知りになろう。治る人は治ってしまう。それでいいわけで、治らなかった場合には、あの人に相談できるねというのを拠点病院の中で誰か1人つくる。化学療法も外来ベースですので、何度も外来に来るたびに顔を会わせて、がん治療センターの中にそういった部門を置こうかということを考えております。
 例えば今のお話ですと、がん専門看護師なり、ソーシャルワーカーなり、職種は問わず、ある人にとって非常に気の合う人が生涯の司令塔になればいいのではないか。1人に対して、その人がかかわるのは恐らく数年でしょうから、それほどの大人数がいなくても何とかなるのではないかという気がしております。ですから、私たちはその方向で、北里大学で試みを少ししてみようかと思っておりますけれども、うまくいくかどうか、これからの課題だと思います。
○花岡座長 ありがとうございます。松本構成員、よろしゅうございますか。
○松本構成員 はい。
○花岡座長 中川構成員、どうぞ。
○中川構成員 この患者さんの意思決定支援の問題は、多分緩和ケアの最も本質的なところだと思うのですが、岩瀬構成員の資料の14ページの上から4つ目、患者さんが主治医の治療適応判断を受け入れられないとき、その意思決定支援は難しいということ。これが非常にポイントであって、しかもこれは小野沢参考人もおっしゃいましたが、拠点病院というのががん治療の最先端病院でもあるということなのですね。とりわけ私どものような大学病院には、拠点病院でもありますけれども、治癒を最期まで求めてこられる。結果的には木澤構成員がおっしゃったような否認につながる。もっと言うならば、緩和という言葉だけは聞きたくないとおっしゃるような患者さんも少なくないのです。
 ですから、ここのところをどう考えていくのかというのが非常に重要で、先ほど小野沢参考人から気の合う人という話が出ましたが、こういった政策決定あるいは行政の場ではシステムをつくっていく必要があって、このシステムづくりが非常に難しいと思います。恐らく田村構成員がおっしゃったような、この問題に長く、しかも熱心に取り組まれた施設の好事例を学ぶことが大変重要な気がするのです。ですから、そういった事例をシステムとして教えていただいて、それを共有していくことが必要じゃないかと思いました。
 小野沢参考人、今、申し上げた岩瀬構成員の上から4つ目、これについて御意見があれば教えていただきたい。
○小野沢参考人 私は、これはもう受け入れるしかないと思います。多分、冷たい言葉で言ってしまえば、これも確率論なのだと思います。例えば、全くかかわらなければ、もしかしたら全員が治療にすがるかもしれないけれども、きっちりかかわれば半分かもしれない。まずは、そこでいいかなと。きっちりかかわってもらって救われる人がかなりいると思うのです。
 それでも、いや、おれは治療を受けたいのだというと、それもその人の立派な生き方なので、私たちは全力で支援する。少なくともこの日本という国は、それを許してくれるわけです。こんないい国はないわけで、これはそれでいいのではないか。それで思う存分闘って亡くなるのであればしようがない。だけれども、中にはそれをしたくない方もいる。そっちをまずは救うべきかなと私は思います。
○花岡座長 中川構成員、よろしいですか。
○中川構成員 はい。
○花岡座長 田村構成員、どうぞ。
○田村構成員 この4番目の患者様のような最期まで闘いたいという方の意思決定支援ということで、当院に緩和で来た方でもそういうことをおっしゃって、いろいろなところにセコンドをとりに行くことをしているのですね。もう出した病院は、それをしないわけです。そんなの、ばかばかしいというか、一度話をしたので、そこまではしませんとおっしゃるのですね。私どものほうでいろいろなところに、そうやって現実吟味をする機会。そして、そこまでやっても、先生がおっしゃったように、そういう生き方をしたい自分なのだという明確化を自分の中で落とし込んでいくことを助ける。そういう生き方を支援するという意味で、これも意思決定支援だと思って、私どもはそういう形でかかわっています。
 先週も、3つ目とか、可能性をかけたい、セコンドオピニオンに高いお金を払っていらっしゃる方の支援をしましたけれども、それも生き方の一つだと思っております。
○花岡座長 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ、大西構成員。
○大西構成員 私も岩瀬構成員の4番目の、治療適応判断を受け入れない場合、私たち精神科の領域にいきますと、判断能力があるかないかがよく問題になります。我々精神科医や心療内科医が適切な判断能力があるかどうか、そこも検討事項に入れていただくのが大事かなと思います。例えば鬱病に罹患していて判断能力を落ちていないかということも考えて取り組んでいくことが、この緩和ケアの質を上げていくのではないかと思っております。
○花岡座長 ありがとうございます。ほかにはよろしゅうございますか。
 お時間が迫っておりますので、今回の議論はここまでとしたいと思います。次回検討会までに、緩和ケアにおける地域連携につきまして、事務局として案を取りまとめていただきたいと思います。次回検討会におきましては、取りまとめについて議論いただくことにしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 また、検討会の資料につきましては、今回と同様に、事務局より皆様へ事前に整理していただくことにいたしますので、この点についてもよろしくお願い申し上げます。
 その他、事務局からの御連絡事項はございますでしょうか。
○がん対策推進官 次回、第11回緩和ケア推進検討会の開催につきましては、また構成員の皆様方の御都合も伺い、調整させていただいた上、速やかに御連絡させていただきたいと思います。
 以上でございます。
○花岡座長 どうもありがとうございました。
 それでは、時間が参りましたので、本日の検討会を終了したいと思います。
 構成員の皆様、長時間にわたり、まことにありがとうございました。


(了)
照会先: 健康局がん対策・健康増進課

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