人材育成事例147
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株式会社永田プロダクツは現社長の父である会長が昭和42年に自宅で個人事業所として創業した。当時は自動車解体が主たる事業であったが、その誠実な人柄で少しずつ解体した部品の注文が県内や秋田県からも入るようになった。そして、その実績が広まり手狭になったこともあり、昭和53年には工業団地に移転して業容を拡大していった。 現社長は昭和63年に入社して専務取締役として経営に参加した。そして、これからは、自動車の解体からリサイクル化の時代が来るとの判断から、経営の近代化や組織体制の強化に乗り出した。具体的には、平成3年には、リサイクル部品の販売を全国展開しているNGPというグループに参加した。そして、平成8年には旧本社を新築して、全国展開を強化するために社内LANを整備してITツールを業界でも先駆けて実践した。 さらに、平成12年には山形市にもリサイクルパーツセンターを開設、平成14年には酒田北港付近に北浜リサイクルセンターも操業を開始した。その間、従業員は増え続けて現在53名体制で運営している。 また、自動車リサイクル分野については国内のみならす、日本車の人気の高い海外へのリサイクル部品の輸出、中古自動車のリース事業など、本業から派生する周辺分野への事業の多角化も図っている。 (株式会社永田プロダクツ ウェブサイト) |
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社長は、事業の拡大や多角化には人材の育成が不可欠との強い信念を持って経営にあたっている。また、企業の理念としては「お客様第一」であり、具体的には下記としている。 <企業理念> 私たちはお客様に、「お客様第一」の実践とリサイクルを通じ、顧客満足と環境保全を提することで社会に貢献する。 また、企業方針として下記として社員に伝えている。 <企業方針> 1.お客様を中心にした考え方、行動をしよう。
2.喜んでいただける商品を生産、納品しよう。 3.安心して働くことのできる夢ある企業を創ろう。 4.適正処理を通じて環境へ貢献できる企業になろう。 以上は多くの企業で標榜しているが、当社はこれを実践するのは社員であり、社員以外はないとの考え方である。そのため、就業時間中は徹底した人間教育の時間であると位置づけて、座学や計画的な教育より、仕事を通した人間成長に力点を置いている。 <具体的信条> ・豊かな人生を生きるため
・社員とその家族が幸福になるために ・人間らしい考え方、行動ができるように ・楽しく仕事をするために ・感動しよう 以上を踏まえて、社員の人間成長について社長は心の中に信条を強く持って経営を行っている。 このことは社長一人で出来ることではなく社員も同じ気持ちになって、一緒に築き上げなければ、その実現はないことを繰り返し社員に伝えている。 そのために会社があり、社長はその実現のために社員の人間成長の責務を負っていると自分に課して経営にあたっている。 |
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(1)全社員
1)朝礼
これは他社の一般的な朝礼とは異なり、社長は教育の場として位置づけている。挨拶、声、表情、発言内容を社長や他の役員が聞いて、上述の考え方や心構えに沿っていないとすると、そこでやり直しや社長の講話がある。
2)勉強会
外部から講師を招へいして、社長も含めた全社員が参加して月一回は勉強会を行っていて、10年以上続いている。特徴的なのは、知識や情報の伝達ではなくて、人間の根元的な理解の仕方、考え方、感じ方、正しい行動、先人からの学びなどを分かりやすく講義を受けるものである。
3)アドバイザーによる助言
以前、大手自動車メーカーで設計・開発を行っていた専門家と契約して、社員が困ったことや悩んでいることが生じたら、いつでも社員はダイレクトにその専門家に相談できる体制を取っている。例えば、リーダーとしての悩みがあり会社や上司にはなかなか相談できないことのテーマであれば専門家に電話やメールして助言を受けるのである。 また、その専門家は適宜来社するので面談でも助言でも受けられるようしている。
4)自動車の知識に関する力量評価
定期的に自動車に関するテストを行って、必要な知識を持っているかどうかの筆記試験を行う。その評価結果に従って、上司が個人毎に指導や対応を行っている。
5)感性の情操
これは、特別時間を決めて行っている育成ではないのが特徴である。新本社を訪問すると、これまでの会社のイメージと大分異なる。次のような雰囲気であり、感性への刺激や感動へつながる仕掛けや演出がなされている。
a)芸術作品の展示
玄関に入ると吹き抜けのエントランスホールがあり、まず目に飛び込むのが赤色のランボルギーニ社製カウンタックである。実際に走行が出来る本物の車である。そして、廊下や階段の踊り場、壁面には、「書」、「絵画」、「(トヨタ2000GTなどの)多彩なイラストレーション」が掲示されており、それらは日本のそれぞれの分野の著名な人が書いた本物である。
b)ホールの活用
新社屋には、100人程度が入れるホールがあり、一般解放されている。見学者を最初に案内するところには200インチの大型スクリーンが設置してあり、工場内のライブ映像を流すことができるようになっている。ゆえに、社員は上司だけでなく一般の人にも誇れる仕事しなければならない。また、ホールにはピアノも置いてあり、クリスマスパーティにはバンド演奏や寸劇など社員の企画で定期的にイベントを行っている。
c)厨房の設置
ホールの脇には厨房が設置されていて、イベントの際には社員自ら料理を作って、振る舞っている。 また、2007年に女性社員からの提案で社内ベンチャーとして立ち上げたセミナーの企画運営事業の会員向けカルチャー講座の料理教室の会場とも使用している。こういった企画運営も社員教育として位置づけている。
d)ネーミング
会社の会議室は全て太陽系の惑星の名前が付いている。具体的には、ヴィーナス、マーズ、サターンなどである。他の会社は第一会議室など無機的なネーミングであるが、当社は会議室のみならず会社全体が太陽系(工場棟はアポロ、事務棟はルナというように)に関するネーミングにしている。これも、これまで使われなかった部分の脳を刺激するようにしている。 信条に述べたように、仕事はとにかく楽しくがコンセプトの一つなのでその舞台としてのネーミングである。
e)コミュニケーション能力の向上及び一体化
【壁一面のホワイトボード】
打合せをする時には、社員や経営者が思い立った時にいつでも出来るように、オフィスの壁一面がホワイトボードになっていて、アイデアを交換する場として利用することで、社員のコミュニケーションの能力を高めている。 【事務棟(ルナ)の吹き抜け構造】事務棟の1階と2階の間が吹き抜け構造になっている。これは極力仕切りを無くすとともに、パーティションも最小限である。事務棟に入るとそのフロアが全て見渡せ、しかも少し声を大きくすると1階と2階で直接に会話もできる。ゆえに、トラブルや非常事態が起きてもお互いに直ぐに分かる。これにより文字通りに風通しが良くなり社内コミュニケーションを密にして一体感を高まった。 以上は全て、社長がこれまでの既成概念から離れて、社員の感性への刺激と情操も含めて人間育成の場にするために実施したことである。 (2)新入社員 最近は新卒者のみの採用なので、一定のプログラムを決め、当社独自のテキストを作成して2日間(a~f)の新入社員の教育を行う。その概要は次の通りである。 a)
社長講話:会社の理念、考え方、文化など。
b)各部門長の説明:当該部門の仕事の内容、事業計画等 c)総務部門の説明:就業規則、各種手続き等 d)コミュニケーション:先輩社員等とのコミュニケーション e)5Sや自動車リサイクル法など業務に直結する知識 f)各部門の体験:一週間かけて各部門を体験する。 この時点から、上司になる部門長と新入社員の関係が始まっており、部門長も新入社員から見られているという緊張感を感じ、部門長も自分自身の成長を意識させるきっかっけとなっている。 (3)管理職
1)部門長会議
月に2回行っている。内容としては、部門目標の達成状況、取り組み状況、諸課題の検討の場としている。
2)事業計画発表会
社長の方針を受けて、年1回、各部門長は自分の部門の事業計画を全社員の前で発表する。そうすることで、部下たちへ方針を伝え、また、目標を明示することで部門長がリーダーとしての責任感を感じる機会になっている。 これらで、中間管理職の育成を図っている。
3)個別指導
管理職といっても、人間性、経験年数、年齢、キャリア等が違うので、社長や役員が個別指導を重点に行っている。事例として最近は次のようなことがあった。工場の部門長A氏が1日40台解体すると事業計画で発表していたのに、社長が在社していた日に19台しか解体していなかった。それを聞いた社長は「説明を聞いてもその理由は解体できない理由ではない。」とのことで、17時以降に社長は「他の社員は帰っても良いので俺とAで残りを解体するから一緒にやろう。」と言って、深夜までかかってやりきったという。 この例では、もし部門長Aが目標未達成な状態を繰り返せば、部下からの信頼が低下してリーダーとしてやっていけなくなってしまう。 社長は、そのような場面で必要な教育を判断して、個別指導を繰り返すことが管理職を育てるには必要であると考えている。リーダー教育はまさに仕事を通じての個別的な実践指導が重要であることを示している。 |
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社長は、社員の人間的成長と会社の成長は一体と考えており、仕事上の課題を社員が自らが発見し気づいて、解決して伸びていく空気が充満している企業文化をより強化することが目標である。そのためには、外部の講師も招きながら、社員一人一人が仕事を最大の育成の場としてとらえて成長してもらうことである 今後の課題は次のような人材育成を行うことである。 1)しあわせの具体的イメージは個人個人が異なる。社員全員が自分のしあわせの具体的イメージを明確にして、それに応じた仕事を遂行する力を付ける。
2)リーダーは特にその立場に応じて、課題を見つけてそれを解決すべく『P・D・C・A』を適切に遂行できるようにする。
3)そして、結果として経営人材を輩出するような企業文化を作る。
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