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IDESコラム vol. 16
感染症エクスプレス@厚労省 2018年3月30日

「春は異動の季節、われわれIDES3期生も、海外に飛び立ちます」

IDES養成プログラム 3期生:西島 健

 東京では桜が満開です。先日仕事中の移動でバスに乗ったら、今期初めてゆっくりと桜を眺めることができました。たまには電車でなくバスもよいものですね。

 さて、桜の季節は別れと出会いの季節でもあります。新たな職場や学校など、新しい環境に移る方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 この4月以降、われわれ4人は、アメリカの疾病予防管理センター(CDC)、イギリスのイングランド公衆衛生庁(PHE)、世界保健機関本部(WHO)、そしてフィリピン世界保健機関西太平洋事務局(WPRO)にそれぞれ赴任します。

 私西島は、フィリピンへの派遣が決まりました。これまでのIDESの中で、初めてのアジアの国への派遣になります。海外生活も、学生以来のこととなり、何を準備すればよいかよくわからないままにあわただしく過ごしています。
 そんなときに、一つ大事なことを思い出しました。

 「そうだ、ワクチン打とう。」

 海外に行くときは、自分がワクチンでしっかり守られているかどうかを確認する良い機会です。それは、先進国でも途上国でも、どこの国に行く場合も当てはまることをお忘れなく。昨年、ヨーロッパで麻しんが流行したことも記憶に新しいところです。

 まずは、自身のワクチン歴を振り返りましょう。記憶に頼ると間違うこともあるので、母子健康手帳やワクチン接種記録など、紙に記録したものを確認できると安心です。海外に行く際は、定期接種で打つことになっているワクチンに漏れがないかも確認しましょう。

私39歳男性のワクチン歴は、以下でした。
○以前病院に入職した際に、麻しん、風しん、水痘の抗体価が十分にあることを確認。流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の抗体は微妙な抗体価。
○医療従事者なのでB型肝炎ワクチンは3回接種し、抗体価が十分にあることを確認。
○黄熱ワクチンは以前アフリカに行った際に接種し、イエローカードも手元にあることを確認。
○A型肝炎は20年前メキシコに行った際に一度だけ接種。

 そして、赴任地であるフィリピンに行く際に、打っておくべきワクチンを確認します。厚生労働省(厚生労働省検疫所 FORTH)や外務省のウェブサイトで調べ、それに加えて、アメリカのCDCのサイトも確認しました。

フィリピンに行く際に推奨されるワクチンは、
FORTHのウェブサイトによると、
○A型肝炎
○B型肝炎
○日本脳炎
○狂犬病
○破傷風

アメリカのCDCのウェブサイトによると、
○A型肝炎
○B型肝炎
○日本脳炎
○狂犬病
○腸チフス

でした。2つのウェブサイトは、ほぼ同じワクチンを勧めています。
(※腸チフスワクチンは本邦未承認のワクチンです)

その他、私が打つべきワクチンとして、
○流行性耳下腺炎やフィリピンで流行しているジフテリアは打っておくべきだろう。
○麻しん・風しんの抗体価は十分あるが、自分の年代から考えてそれらのワクチンを2回はおそらく接種していないため、もう一度打っておいた方がよいか。
 と考えました。

 以上を踏まえると、私が打っておくべきワクチンは、A型肝炎、日本脳炎、狂犬病、破傷風、流行性耳下腺炎、ジフテリア、(腸チフス)でしょうか。狂犬病は複数回の接種が必要で、渡航までに間に合わないのでフィリピンで打つことにして、残りのワクチンのうちどれを打つかは、トラベルクリニックの先生と相談しようと思います。

 私がワクチンを打ちに受診するタイミングは渡航直前となってしまいそうですが、間隔を空けて複数回打つ必要があるワクチンもあるため、本当は渡航の数か月前に受診することが望ましいんですよね・・・皆さま、ワクチン接種はどうか計画的に。

 われわれIDES3期生にとっては、この時期は、ワクチン接種歴だけでなく、厚生労働省などの行政機関での日々も振り返る時期になります。この一年間行政の世界に飛び込み、この世界の厳しさと面白さを垣間見ました。これまでの臨床・研究とは全く違う世界で戸惑うことも多かったですが、世の中で起こっていることがすぐ仕事に跳ね返ってきたり、行政のダイナミックさを時折経験できたり、何よりも真摯にこの仕事に打ち込んでいる上司同僚や、この仕事につかなければ会うことができなかったような方々に会えたことは、大きな財産になりました。周りの方々に温かく支えていただいたことに感謝し、4月から海外に赴任します。

 われわれIDES3期生で書きつないできたこのコラムも、今回で一旦の区切りを迎えます。
 次回からは、海外赴任をそろそろ終えようとしている、われわれの先輩IDES2期生5名によるコラムが始まる予定です。どうぞお楽しみに。

●当コラムの見解は執筆者の個人的な意見であり、厚生労働省の見解を示すものではありません。
●IDES(Infectious Disease Emergency Specialist)は、厚生労働省で2年前の平成27年度からはじまったプログラムの中で養成される「感染症危機管理専門家」のことをいいます。


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