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2023年 結核登録者情報調査年報集計結果について
当該年報は、2023年1月1日から同年12月31日の間に、新たに登録された結核患者及び潜在性結核感染症(LTBI)の者と、2023年12月31日現在に登録されているすべての登録者に関する状況について、感染症サーベイランスシステム上の結核登録者情報システムに全国の保健所から入力されたものを、「結核登録者情報調査年報」として取りまとめたものである。
2023年 結核登録者情報調査年報集計結果
2023年 結核登録者情報調査年報集計結果について
~表ごとの解説~
諸外国と日本の結核罹患率について
2023年の結核罹患率(人口10万対)は8.1であり、前年の8.2に比べ0.1の減少となっている。2021年に結核罹患率は9.2と結核低まん延国の水準である10.0以下に達し、2023年も継続している。
日本の結核罹患率は、米国等他の先進国の水準に年々近づき、近隣アジア諸国に比べても低い水準にある。
結核罹患率の都道府県別おもな順位について
都道府県別の結核罹患率(人口10万対)は、大阪府、大分県、奈良県、兵庫県、京都府の順に高く、岩手県、山梨県、山形県、宮城県、長野県の順に低くなっている。大阪府の結核罹患率は13.1であり、最も低い岩手県の結核罹患率3.6の3.6倍となっている。
結核の死亡数及び死亡率の年次推移について
2023年の結核による死亡数は1,587人(概数)で、前年の1,664人に比べ77人減少している。死亡率(人口10万対)は1.3で前年から0.1減少している。
新登録結核患者数及び罹患率の年次推移について
( 1 )2023年に、新たに結核患者として登録された者の数(新登録結核患者数)は10,096人で、前年より139人減少している。減少率を見ると、2023年の前年からの減少率は1.4%(10,235人→10,096人)と、2022年の前年からの減少率11.1%(11,519人→10,235人)に比べ、9.7ポイントの大幅な縮小となっている。(表4-1)
( 2 )2023年の結核罹患率(人口10万対)は8.1であり、前年の8.2より0.1(1.2%)減少し、結核低まん延の水準である罹患率10.0以下の状態が継続している。減少率を見ると、2023年の前年からの減少率は1.2%と、2022年の前年からの減少率10.9%に比べ、9.7ポイントの大幅な縮小となっている。(表4-1、図1)
( 3 )喀痰塗抹陽性肺結核の患者数は3,524人で、前年より179人(4.8%)減少している。(表4-2)
( 4 )喀痰塗抹陽性肺結核の罹患率(人口10万対)は2.8であり、前年の3.0より0.2減少している。喀痰塗抹陽性肺結核の患者が全体に占める割合は34.9%で、前年から1.3ポイントの減少となっている。(表4-2)
年次別・年齢階級別 新登録結核患者数および潜在性結核感染症新登録者数について
( 1 ) 年齢階級別の新登録結核患者数は、15歳以上から39歳以下までの年齢層で増加がみられ、特に20~29歳では前年より265人(34.1%)の増加となり、これは主に外国出生結核患者の増加によるものである。また、50~59歳で29人(4.0%)の増加となっている。0~14歳の小児結核は37人で前年から2人(5.7%)の増加となっている。60歳以上の年齢層では減少となっており、減少数が最も大きかったのは80~89歳で239人(7.6%)の減少となっている。各年齢階級別で全体に占める割合は、80~89歳が28.9%と最も大きくなっている。90歳以上の結核患者数は前年から15人の減少であったが、全体に占める割合は14.0%と0.1ポイントの増加となっている。(表5-1)
( 2 ) 年齢階級別の喀痰塗抹陽性肺結核新登録患者数では、15歳以上から39歳以下までの年齢層で増加がみられ、特に20~29歳では前年より42人(21.2%)の増加となっている。0~14歳の小児喀痰塗抹陽性肺結核発生は1人となっている。減少数が最も大きかった年齢階級は80~89歳で78人(6.3%)の減少となっている。各年齢階級別で全体に占める割合は、80~89歳が33.0%と最も大きくなっている。(表5-2)
( 3 )小児結核患者(14歳以下)のうち、重症結核例である粟粒結核は2人、結核性髄膜炎は3人の発生となっている。粟粒結核は11歳の2人で、うち1人は外国出生患者となっている。結核性髄膜炎は0歳、1歳、3歳で各1人の発生となっている。(表5-3)
( 4 ) 2023年に新たに登録された潜在性結核感染症の者の数は5,033人で、前年より8人(0.2%)の増加となっている。0~4歳は283人で、全体の5.6%となっている。20~29歳では664人と、前年の462人から202人(43.7%)の大幅な増加となっている。最も登録者が多かった年齢階級は70~79歳の982人で全体の19.5%となっており、60歳以上が49.3%と約半数を占めている。(表5-4)
( 5 ) 新登録結核患者数に対する潜在性結核感染症新登録者数の比は、14歳以下の年齢階級では2.3以上となっており、潜在性結核感染症新登録患者数の方が多くなっている。特に0~4歳は14.2となっている。また、15歳以上の年齢階級は全て1.0未満となっており潜在性結核感染症新登録患者数の方が少なくなっている。(表5-5)
( 6 ) 2023年の職業別にみた潜在性結核感染症新登録者数では、医療職(看護師・保健師、医師、その他の医療職)は844人で、割合は16.8%となっており、前年の17.1%から0.3ポイントの減少となっている。一方、医療職、接客業、教員・保育士以外の常用勤労者では142人(19.3%)の増加となっている。また、高校生以上の生徒学生で98人(42.1%)の増加となっている。乳幼児、保育園・幼稚園児、小中学生、高校生以上の生徒学生の登録者数は650人で、割合は12.9%となり、前年の11.2%から1.7ポイントの増加となっている。(表5-6)
( 7 ) 外国生まれ新登録結核患者数は1,619人と、前年の1,214人から405人(33.4%)の大幅な増加となっている。これは、新型コロナウイルス感染症流行以前の2019年の患者数1,541人を超えたものとなっている。また、新登録結核患者における外国生まれの者の割合も16.0%と、前年の11.9%から4.1ポイントの大幅な増加となっている。特に、20~29歳では外国生まれ新登録結核患者数は前年に比べて282人(46.8%)増加して884人となっており、同年齢階級での割合は84.8%と前年から7.3ポイントの増加となっている。30~39歳においても外国生まれ新登録結核患者数は61人(22.3%)増加して334人となり、割合は前年の54.3%から61.6%と7.3ポイント増加している。(表5-7)
( 8 ) 外国生まれ新登録結核患者のうち、入国5年以内の者は、前年の513人から375人(73.1%)増加し888人となっている。外国生まれ新登録結核患者のうちで占める割合も54.8%と半数以上は5年以内の入国の者となっている。最も患者数が多い20~29歳の年齢階級では、前年から262人(73.4%)増加して619人となっている。 (表5-8)
( 9 ) 日本生まれ新登録結核患者数は、前年の8,673人から467人減少して8,206人となっている。年齢階級別では80~89歳の患者数が最も多く2,794人で日本生まれ新登録結核患者の34.0%となっている。15歳以上の年齢階級では、50~59歳で23人(3.6%)の増加となった以外では患者数は減少となっている。減少数が最も大きかったのは80~89歳で222人の減少となっている。90歳以上も2020年以降は減少傾向となっているが、2023年は4人の減少にとどまっている。(表5-9)
年次別・年齢階級別 結核罹患率について
( 1 ) 年齢階級別の結核罹患率は、70歳以上の高齢層で高くなっている。60~69歳の罹患率は5.8で全年齢の罹患率より低いが、70~79歳で11.9、80~89歳で29.6、90歳以上では51.6となっている。全体としては、外国生まれ患者の影響がある若年層を除いて、年齢階級別罹患率の年次推移は減少傾向となっている。(表6-1)
( 2 ) 菌喀痰塗抹陽性肺結核の罹患率も、同様に、高齢層ほど高くなっている。70歳代までは5未満だが、80~89歳で11.8、90歳以上では21.6となっている。(表6-2)
( 3 ) 新登録結核患者のうち、日本生まれの患者の結核罹患率は、前年から0.3減少の6.8となっている。外国生まれ結核患者の影響が除かれた20~29歳の罹患率は1.3、30~39歳で1.6となっており、全体の罹患率からは低くなっている。(表6-3)
新登録結核患者数及び結核罹患率 都道府県別・年次推移について
( 1 ) 都道府県別の新登録結核患者数は、47都道府県のうち18の道府県で増加している。新登録結核患者数が最も多いのは東京都の1,190人で、次いで大阪府の1,145人となっている。(表7-1)
( 2 ) 都道府県別の結核罹患率は、47都道府県のうち18の道府県で前年から増加している。一方、結核低まん延の水準である罹患率が10.0以下の都道府県の数は、43に達している。最も低い岩手県の罹患率は3.6となっている。罹患率が最も高い大阪府は13.1で岩手県の3.6倍となっている。(表7-2)
年末時結核登録者数及び有病率の年次推移について
2023年末現在の結核登録者数は22,426人と、前年の24,555人より2,129人減少している。そのうち、活動性全結核の患者数は6,794人と、前年より12人増加している。また、2023年末の結核有病率は、前年の5.4から0.1増加し、5.5となっている。(表8)
新登録結核患者の疫学的特徴について
< 再治療者>
2023年新登録結核患者のうちの再治療者は、前年の384人から41人増加して425人となっている。このうち、前回治療年が2010年~2019年の者は120人、2020年以降の者は145人となっている。前回治療年が2010年以降の者は再治療者のうち62.4%となっている。(表9)
< 発見の遅れ>
(ア) 2023年の新登録肺結核患者のうち有症状の者の中で、受診が遅れた(症状発現から受診までの期間が2か月以上)患者の割合は、前年と同じ19.9%となっている。このうち30~59歳の有症状菌喀痰塗抹陽性肺結核患者に限定すると、受診が遅れた患者の割合は40.0%で、前年から7.6ポイントの大幅な増加となっている。 (表10-1)
(イ) 診断が遅れた(受診から結核の診断までの期間が1か月以上)患者の割合は、前年から1.0ポイント増加して22.5%となっている。このうち30~59歳の有症状菌喀痰塗抹陽性肺結核患者に限定すると、診断が遅れた患者の割合は15.0%で、前年から1.5ポイントの増加となっている。(表10-2)
(ウ) 発見が遅れた(症状発現から結核の診断までの期間が3か月以上)患者の割合は、0.8ポイント増加して21.3%となっている。このうち30~59歳の有症状菌喀痰塗抹陽性肺結核患者に限定すると、発見が遅れた患者の割合は40.4%で、前年から10.9ポイントの大幅な増加となっている。(表10-3)
< 薬剤耐性>
2023年の新登録肺結核培養陽性結核患者5,515人のうち、薬剤感受性検査結果が判明した者(INH、RFP両剤感受性検査結果判明者)は4,526人で、割合は82.1%となり、前年の78.1%から4.0ポイント増加となっている。このうち、多剤耐性肺結核患者数(INH、RFP両剤耐性の者)は35人で、前年より9人の増加となっている。また、多剤耐性肺結核患者35人のうち、19人が外国出生患者となっている。新登録肺結核培養陽性結核患者の多剤耐性結核割合は0.6%で前年から0.1ポイント増加となっている。また、薬剤感受性検査結果が判明した者のうち、主要4剤(HRSE)全ての薬剤に対し感受性のある患者の割合は87.0%となっている。(表11)
< 糖尿病、HIV合併>
2023年の新登録結核患者のうち、糖尿病合併患者は1,696人で、新登録結核患者の16.8%となっている。また、HIV検査を実施した患者は650人で、新登録結核患者の6.4%にあたり、このうちHIV陽性は14人で、新登録結核患者の0.1%となっている。(表12)
< 医療従事者>
(ア) 2023年の新登録結核患者のうち、看護師・保健師からの登録患者は91人で、前年の113人から22人の減少となっている。新登録結核患者のうちの割合は0.9%と前年から0.2ポイントの減少となっている。年齢階級別では、40~49歳が最も多く25人となっており、同年齢階級新登録結核患者の5.1%となっている。 (表13-1)
(イ) 2023年の新登録結核患者のうち、医師の登録患者は24人で、前年より4人増加となっている。新登録結核患者中の割合は0.2%となっている。30歳から79歳の各年齢階級別新登録結核患者中割合は0.3~0.4%となっている。(表13-2)
(ウ) 2023年の新登録結核患者のうち、理学療法士、作業療法士、検査技師、放射線技師など、看護師・保健師・医師以外の者で医療機関に勤務する者の登録患者数は204人で昨年の192人から12人の増加となり、新登録結核患者のうちの割合は2.0%となっている。年齢階級別では、20~29歳が最も多く65人で、同年齢階級新登録結核患者の6.2%となっている。(表13-3)
< 無職臨時日雇など>
2023年の新登録結核患者のうち、登録時の年齢が20~59歳であり、登録時の職業が無職臨時日雇等であった者は453人で、前年の513人から60人減少している。新登録結核患者のうちの割合は16.0%で前年から4.0ポイントの減少となっている。年齢階級別での患者数は、50~54歳と55~59歳が同数で最も多い93人で、それぞれ同年齢階級の24.1%と24.7となっている。
また、男性の患者に占める無職臨時日雇等の者の年齢階級別割合は55~59歳が最も高く23.3%となっているが、前年からは11.9ポイントの減少となっている。(表14-1、14-2)
< 治療成績>
2022年の新登録結核患者の2023年末での治療成績は、治療成功が64.9%、死亡27.0%、失敗0.1%、脱落・中断1.9%、転出1.6%、治療中4.3%、不明0.2%となっている。60歳以上から年齢階級の上昇にともなって死亡割合が増加し、60~69歳で14.3%、70~79歳で22.8%、80~89歳で39.9%、90歳以上で58.4%となっている。死亡の影響が少ない59歳以下の年齢階級の治療成功割合は82.1%~89.9%となっている。20歳以上では脱落・中断は60~69歳で最も高く2.6%となっている。(表15-1)
2022年の新登録再治療結核患者の2023年末での治療成績は、治療成功が66.3%、死亡23.4%、失敗0.3%、脱落・中断3.1%、転出1.0%、治療中5.7%、不明0.3%となっている。(表15-2)
2022年の潜在性結核感染症新登録者のうち治療を開始した者の2023年末での治療完了率は85.0%となっている。脱落・中断は7.0%となっているが、高齢になるにつれて脱落・中断は高くなる傾向があり、80~89歳では9.7%、90歳以上では16.0%となっている。(表15-3)
2021年の新登録結核患者で多剤耐性結核患者の2023年末での治療成績は、対象50人のうち治療成功62.0%、死亡16.0%、失敗0.0%、脱落・中断4.0%、転出6.0%、治療中12.0%、不明0.0%となっている。(表15-4)
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