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2022年 結核登録者情報調査年報集計結果について


 当該年報は、2022年1月1日から同年12月31日の間に、新たに登録された結核患者及び潜在性結核感染症(LTBI)の者と、2022年12月31日現在に登録されているすべての登録者に関する状況について、感染症サーベイランスシステム(NESID)上の結核登録者情報システムに全国の保健所から入力されたものを、「結核登録者情報調査年報」として取りまとめたものである。


2022年 結核登録者情報調査年報集計結果

 

2022年 結核登録者情報調査年報集計結果について

~表ごとの解説~

諸外国と日本の結核罹患率について

2022年の結核罹患率(人口10万対)は8.2であり、前年と比べ1.0の減少となっている。前年に結核罹患率は9.2と結核低まん延国の水準である10.0以下に達したが、2022年も継続している。
日本の結核罹患率は、米国等他の先進国の水準に年々近づき、近隣アジア諸国に比べても低い水準にある。
2020年からの結核罹患率の減少については、新型コロナウイルス感染症の影響も考えられる。
 

結核罹患率の都道府県別おもな順位について

 都道府県別の結核罹患率(人口10万対)は、大阪府、大分県、長崎県、徳島県、和歌山県の順に高く、福島県、山形県、新潟県、岩手県、長野県の順に低くなっている。大阪府の結核罹患率は12.7であり、最も低い福島県の結核罹患率4.6の2.8倍となっている。
 

結核の死亡数及び死亡率の年次推移について

 2022年の結核による死亡数は1,664人(概数)で、前年の1,845人に比べ181人減少している。死亡率(人口10万対)は1.4で前年から0.1減少している。
 

新登録結核患者数及び罹患率の年次推移について

( 1 ) 2022年に、新たに結核患者として登録された者の数(新登録結核患者数)は10,235人で、前年より1,284人(11.1%)減少している。減少率を見ると、2021年の前年からの減少率は9.6%(12,739人→11,519人)の減少であったが、2022年の減少幅は1.5ポイントの拡大となっている。(表4-1)

( 2 ) 2022年の結核罹患率(人口10万対)は8.2であり、前年の9.2より1.0(10.9%)減少し、結核低まん延の水準である罹患率10.0以下の状態が継続している。減少率を見ると、2021年の前年からの減少率は8.9%であることから、減少幅は2.0ポイントの拡大となっている。(表4-1、図1)

( 3 ) 喀痰塗抹陽性肺結核の患者数は3,703人で、前年より424人(10.3%)減少している。(表4-2)

( 4 ) 喀痰塗抹陽性肺結核の罹患率(人口10万対)は3.0であり、前年の3.3より0.3減少している。喀痰塗抹陽性肺結核の患者が全体に占める割合は36.2%で、前年から0.4ポイントの増加となっている。(表4-2)
 

年次別・年齢階級別 新登録結核患者数および潜在性結核感染症新登録者数について

( 1 ) 年齢階級別の新登録結核患者数では、0~14歳の小児結核は35人で前年から6人(20.7%)の増加となっている。0~4歳と5~9歳以外の年齢階級では新登録結核患者数は減少となっている。減少数が最も大きかったのは80~89歳で281人(8.2%)の減少となっている。各年齢階級別で全体に占める割合は、80~89歳が30.9%と最も大きくなっている。90歳以上は209人の減少で、これまでの増加傾向にあった全体に占める割合も13.9%と0.3ポイントの減少となっている。(表5-1)

( 2 ) 年齢階級別の喀痰塗抹陽性肺結核新登録患者数では、0~14歳の小児結核の発生は2人となっている。1人の増加であった5~9歳を除いた他の年齢階級では患者数は減少となっている。減少数が最も大きかった年齢階級は80~89歳で133人(9.7%)の減少となっている。各年齢階級別で全体に占める割合は、80~89歳が33.5%と最も大きくなっている。(表5-2)

( 3 ) 小児結核患者(14歳以下)のうち、重症結核例である粟粒結核及び結核性髄膜炎患者の2022年での発生はなかった。(表5-3)

( 4 ) 2022年に新たに登録された潜在性結核感染症の者の数は5,025人で、前年より115人(2.2%)の減少となっている。0~4歳は279人で、全体の5.6%となっている。最も登録者が多かった年齢階級は70~79歳の1,093人で全体の21.8%となっており、60歳以上が52.0%と半数以上を占めている。(表5-4)

( 5 ) 新登録結核患者数に対する潜在性結核感染症新登録者数の比は、14歳以下の年齢階級では5.3以上となっており、潜在性結核感染症新登録患者数の方が多くなっている。特に0~4歳は13.3となっている。また、15歳以上の年齢階級は全て1.0以下となっており潜在性結核感染症新登録患者数の方が少なくなっている。(表5-5)

( 6 ) 職業別では、2022年の潜在性結核感染症新登録者における医療職(看護師・保健師、医師、その他の医療職)は857人で、割合は17.1%となっており、前年の19.6%から2.5ポイントの減少となっている。一方、無職・その他の割合が、前年の41.7%から43.5%に増加となっている。乳幼児、保育園・幼稚園児、小中学生、高校生以上の生徒学生の割合は11.2%で、前年の9.1%から2.1ポイントの増加となっている。(表5-6)

( 7 ) 外国生まれ新登録結核患者数は、前年から99人減少して1,214人となっている。しかし、新登録結核患者における外国生まれの者の割合は11.9%と前年の11.4%から0.5ポイントの増加となっており、増加傾向が続いている。20~29歳では外国生まれ新登録結核患者数は前年に比べて73人の減少で602人となっているが、同年齢階級での割合は77.5%と前年から4.9ポイントの増加となっている。30~39歳では外国生まれ新登録結核患者数は3人減少して273人となったが、割合は前年の46.2%から54.3%と8.1ポイント増加し、同年齢階級で半数以上を占めている。(表5-7)

( 8 ) 外国生まれ新登録結核患者のうち、入国5年以内の者は、前年の568人から55人減少し513人となっている。最も患者数が多い20~29歳の年齢階級では、前年から27人減少して357人となっている。(表5-8)

( 9 ) 日本生まれ新登録結核患者数は、前年の9,809人から1,136人減少して8,673人となっている。年齢階級別では80~89歳の患者数が最も多く3,016人で日本生まれ新登録結核患者の34.8%となっている。10歳以上の年齢階級では患者数は減少となっており、減少数が最も大きかったのは80~89歳で258人の減少となっている。90歳以上も2020年以降は減少となり、2022年は210人減少して1,356人となっている。(表5-9)
 

年次別・年齢階級別 結核罹患率について

( 1 ) 年齢階級別の結核罹患率は、70歳以上の高齢層で高くなっている。60~69歳の罹患率は6.1で全年齢の罹患率より低いが、70~79歳で12.6、80~89歳で32.6、90歳以上では54.0となっている。全体としては年齢階級別罹患率の年次推移は減少傾向となっている。(表6-1)

( 2 ) 菌喀痰塗抹陽性肺結核の罹患率も、同様に、高齢層ほど高くなっている。70歳代までは10未満だが、80~89歳で12.8、90歳以上では22.9となっている。(表6-2)

( 3 ) 新登録結核患者のうち、日本生まれの患者の結核罹患率は、前年から0.9減少の7.1となっている。外国生まれ結核患者の影響が除かれた20~29歳の罹患率は1.4、30~39歳で1.7となっており、全体の罹患率からは低くなっている。(表6-3)

 

新登録結核患者数及び結核罹患率 都道府県別・年次推移について

( 1 ) 都道府県別の新登録結核患者数は、47都道府県のうち11の県で増加している。新登録結核患者数が最も多いのは東京都の1,193人で、次いで大阪府の1,118人となっている。(表7-1)

( 2 ) 都道府県別の結核罹患率は、47都道府県のうち11の県で前年から増加している。一方、結核低まん延の水準である罹患率が10.0以下の都道府県の数は、40に達している。最も低い福島県の罹患率は4.6となっている。罹患率が最も高い大阪府は12.7で福島県の2.8倍となっている。(表7-2)

 

年末時結核登録者数及び有病率の年次推移について

2022年末現在の結核登録者数は24,555人と、前年の27,754人より3,199人減少している。そのうち、活動性全結核の患者数は6,782人と、前年より962人減少している。また、2022年末の結核有病率は、前年の6.2から0.8減少し、5.4となっている。(表8)
 

新登録結核患者の疫学的特徴について

< 再治療者>
2022年新登録結核患者のうちの再治療者は、前年の460人から76人減少して384人となっている。このうち、前回治療年が2010年~2019年の者は122人、2020年以降の者は125人となっている。前回治療年が2010年以降の者は再治療者のうち64.3%となっている。(表9)

< 発見の遅れ>
(ア) 2022年の新登録肺結核患者のうち有症状の者の中で、受診が遅れた(症状発現から受診までの期間が2か月以上)患者の割合は、前年から0.9ポイント減少して19.9%となっている。このうち30~59歳の有症状菌喀痰塗抹陽性肺結核患者に限定すると、受診が遅れた患者の割合は32.4%で、前年から6.5ポイントの減少となっている。(表10-1)

(イ) 診断が遅れた(受診から結核の診断までの期間が1か月以上)患者の割合は、前年から1.6ポイント減少して21.5%となっている。このうち30~59歳の有症状菌喀痰塗抹陽性肺結核患者に限定すると、診断が遅れた患者の割合は13.5%で、前年から3.0ポイントの減少となっている。(表10-2)

(ウ) 発見が遅れた(症状発現から結核の診断までの期間が3か月以上)患者の割合は、1.5ポイント減少して20.5%となっている。このうち30~59歳の有症状菌喀痰塗抹陽性肺結核患者に限定すると、発見が遅れた患者の割合は29.5%で、前年から6.6ポイントの減少となっている。(表10-3)

< 薬剤耐性>
2022年の新登録肺結核培養陽性結核患者5,231人のうち、薬剤感受性検査結果が判明した者(INH、RFP両剤感受性検査結果判明者)は4,086人で、割合は78.1%となり、前年の77.1%から1.0ポイント増加となっている。このうち、多剤耐性肺結核患者数(INH、RFP両剤耐性の者)は26人で、前年より15人の減少となっている。また、多剤耐性肺結核患者26人のうち、14人が外国出生患者となっている。新登録肺結核培養陽性結核患者の多剤耐性結核割合は0.5%で前年から0.2ポイント減少となっている。また、薬剤感受性検査結果が判明した者のうち、主要4剤(HRSE)全ての薬剤に対し感受性のある患者の割合は88.5%となっている。(表11)

< 糖尿病、HIV合併>
2022年の新登録結核患者のうち、糖尿病合併患者は1,614人で、新登録結核患者の15.8%となっている。また、HIV検査を実施した患者は633人で、新登録結核患者の6.2%にあたり、このうちHIV陽性は25人で、新登録結核患者の0.2%となっている。(表12)

< 医療従事者>
(ア) 2022年の新登録結核患者のうち、看護師・保健師からの登録患者は113人で、前年の116人から3人の減少となっている。新登録結核患者のうちの割合は1.1%と前年から0.1ポイントの増加となっている。年齢階級別では、40~49歳が最も多く33人となっており、同年齢階級新登録結核患者の6.0%となっている。  (表13-1)

(イ) 2022年の新登録結核患者のうち、医師の登録患者は20人で、前年より7人減少となっている。新登録結核患者中の割合は0.2%となっている。30歳から69歳の年齢階級別新登録結核患者中割合は0.4~0.7%となっている。(表13-2)

(ウ) 2022年の新登録結核患者のうち、理学療法士、作業療法士、検査技師、放射線技師など、看護師・保健師・医師以外の者で医療機関に勤務する者の登録患者数は192人で昨年の212人から20人の減少となり、新登録結核患者のうちの割合は1.9%となっている。年齢階級別では、20~29歳が最も多く54人で、同年齢階級新登録結核患者の6.9%となっている。(表13-3)

< 無職臨時日雇など>
2022年の新登録結核患者のうち、登録時の年齢が20~59歳であり、登録時の職業が無職臨時日雇等であった者は513人で、前年の600人から87人減少している。新登録結核患者のうちの割合は20.0%で前年から0.1ポイントの増加となっている。年齢階級別での患者数は、55~59歳が最も多い114人で、同年齢階級の31.6%となっている。
また、男性の患者に占める無職臨時日雇等の者の年齢階級別割合においても55~59歳が最も高く35.2%となっており、前年から5.6ポイント増加となっている。(表14-1、14-2)

< 治療成績>
2021年の新登録結核患者の2022年末での治療成績は、治療成功が64.2%、死亡25.5%、失敗0.1%、脱落・中断1.7%、転出2.6%、治療中5.6%、不明0.2%となっている。60歳以上から年齢階級の上昇にともなって死亡割合が増加し、60~69歳で9.8%、70~79歳で21.6%、80~89歳で39.1%、90歳以上で58.3%となっている。死亡の影響が少ない59歳以下の年齢階級の治療成功割合は77.9%~100.0%となっている。脱落・中断は40~49歳で最も高く2.2%となっている。(表15-1)

2021年の新登録再治療結核患者の2022年末での治療成績は、治療成功が65.4%、死亡22.6%、失敗0.0%、脱落・中断3.0%、転出2.6%、治療中6.3%、不明0.0%となっている。(表15-2)

2021年の潜在性結核感染症新登録者のうち治療を開始した者の2022年末での治療完了率は85.2%となっている。脱落・中断は6.9%となっているが、高齢になるにつれて脱落・中断は高くなる傾向があり、80~89歳では8.3%、90歳以上では12.0%となっている。(表15-3)

2020年の新登録結核患者で多剤耐性結核患者の2022年末での治療成績は、対象55人のうち治療成功70.9%、死亡18.2%、失敗0.0%、脱落・中断0.0%、転出7.3%、治療中1.8%、不明1.8%となっている。(表15-4)

 

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