秋葉副大臣会見概要(新たながん研究戦略の策定)
説明のポイント
- 今後のがん研究の方向性と具体的な研究事項等を明示する新たな総合的ながん研究戦略を策定するため、文部科学省、経済産業省と協働の上、「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」を設置し、4月15日より検討を開始する。
- これまで政府のがん研究に関しては、1984年からの「対がん10ヵ年総合戦略」、1994年からの「がん克服新10か年戦略」、2004年からの「第3次対がん10か年総合戦略」に基づいて進めてきたところである。
- また、2006年には「がん対策基本法」が成立し、2007年からは「がん対策推進基本計画」に基づいたがん対策を進めているが、2012年6月に閣議決定された「がん対策推進基本計画(第二期)」の中でも「新たながん研究戦略」を2年以内に策定することが目標として掲げられている。
- がんが日本人の死亡原因の第一位となったのは1981年のことであるが、現在、「日本人の2人に1人はがんにかかり、亡くなる方の3人に1人はがんで亡くなる」時代となっている。
- がんと聞くと恐いというイメージを強く持つ国民が多いのではないかと思うが、お示ししたように、国立がん研究センターのデータでは、がんと診断されてから5年間生存できる方の割合が、1963年と比較して35年後の1998年においては、男性では約30%、女性では約15%改善してきている。(男性:29.5 → 58.8%、女性:50.5 → 66.0%)
- このようにがん研究を推進することにより、がん患者の生存率は着実に向上しており、今後も今回検討を開始する「新たながん研究戦略」に基づいて、がん研究を強力に推進することにより、「早期発見、生存率の更なる改善、より低侵襲な治療の実現等」を目指してしっかり取り組んでいきたい。
会見の詳細
《冒頭》
(副大臣)
皆さん、こんにちは。秋葉賢也です。今日は、再来週ですね、4月15日の月曜日からですね、今後のがん研究のあり方に関する有識者会議をスタートさせることになりました。ご案内の通り、1984年に対がん10か年総合戦略をたてまして、10年ごとに取り組んできたわけでございますが、最初の10年間というのは、本当に、基本的な、これから取り組んでいくべき中でも、がん自体の本体解明を図ることに主眼が置かれていたわけでございますけど、皆様のお手元のパネルのとおり、1枚目見ていただければですね、お分かりのとおり、94年にはですね、がん克服新10か年戦略という形で、がんの本態解明からですね、がんの克服へということに主眼が移って、2度目の10か年計画ということで取り組んできたわけでございます。そして、現在は、この第3次ということで、対がん10か年の総合戦略が、今年で終わるわけでございます。この3次の戦略の中では、がんの罹患率、それから、死亡率の激減を目指してということで、従来のがん研究の推進に加えまして、がん予防の推進、それから、がん医療の向上とそれを支える社会環境の整備ということに重点を置いて、取り組んできたわけでございます。今度、来年の4月から、今回検討を開始します2014年からの、新たながんの研究戦略につきましては、この10年の間に、がん対策基本法が成立をするなど、必要な法制上の措置も、整ったことを受けまして、がん対策基本計画の記載に基づいて、がん研究に特化した戦略を、具体的に定めてまいりたいと考えております。このパネルの2枚目、下段にございますとおり、今後のがん研究のあり方に関する有識者会議を4月15日に開催いたしまして、この夏ぐらいまでに遅くても中間報告を取りまとめて、来年からのこの第4次になるわけですけれども、しっかりとした戦略の中に活かしていきたいというふうに思っております。そういうわけで、今日の報告は、がん対策についての来年からの新10か年戦略のあり方についてということでございますけれど、そもそも今がんの状況というのはどうなのかということを改めて皆さんにも御報告をさせていただきたいと思います。意外と私たちも日常生活の中で、ぴんとこないというか私自身もですね、二人に一人は必ずがんになっていると、統計的にはですね、男女比でも少し差がありますけど、そういう状況になっております。男性の場合には、生涯にがんに罹患する確率は55.7%、女性の場合でも、41.3%ということでですね、男性の場合は過半数の人が罹っていると。この下のグラフはですね、日本人の三人に一人はですね、このがんが原因で死亡しているというデータであります。ちょうど、この81年に、今までは、いわゆる脳卒中がですね、死因の第1位を占めていたわけですけれども、1981年に初めて脳卒中をがんが上回った年でございます。これを受けて、84年にがん対策の戦略ができたという形になるわけでありまして、非常に我が国の死亡の原因が、この年からですね、ずっとがんが占めてて、いまだに、残念ながら右肩上がりになっているということでございます。それから、次の資料を見ていただければ、そういうことで、三人に一人はですね、がんで亡くなっているわけでございますが、では、どんながんで亡くなっているのか、というのは、この3枚目の資料でございます。1位は、肺がんで、7万人を超える方、約20%、肺がんが一番多い。2番目は、胃がんで、約5万人で、約14%。3番目が大腸がんと、4番目が肝がん、5番目が膵がん、そして6番目が乳がんという形で、この5年ぐらいは、およそこういった順位になっているわけであります。そして、ちょっとパネルは用意しておりませんけれども、記者の皆さんに配布させていただいている資料にはですね、そうだごめんなさい、次のパネルで、(死亡原因として多いがんは)どんながんなんだというのは、今説明した資料なんですが、この背景の中で、今日皆さんに、特に私が強調したいのはこのパネルなんですね。つまり、国立がんセンターがオープンしたのは1963年なんですが、私がちょうど生まれた頃なんですね、1962年に生まれたわけなんですが、小学生の頃ですね、ある愛の詩という映画を観ました。ラブストーリーというですね、エリック・シーガルさんが原作でですね、皆さん御覧になった方があるかどうか分かりませんが、その映画の中で女性がですね、白血病で亡くなるんですね、若くして。私、その映画を観た時に、この白血病という病気は何なんだろうとかですね、いわゆるがんだということを知って、そのがんというのは、私がこの映画を観たのは小学校4年生か5年生ぐらいだったんですけれども、自分が大人になった時には、がんというのは根治できるかどうか分からないけど、かなり治る病気になっているんじゃないかなと。個人的に、その映画に感動したものですからね、女性が、そういうハッピーエンドでなかったという中で、映画のストーリーとは直接関係ないんですけれども、がんということに非常に興味を持ってですね、それが自分が大人になった時に、かなり克服されているだろうし、そうなってほしいなという思いがずっとありました。そういう中で、今現在ですね、実際がんの、これは生存率のデータですけれども、平たく言えば、どれくらい症状を緩和して、従来なら死亡していたり、重篤になったりしたものが改善されていたのかというのをしっかりと検証したいなということでですね、毎年国立がんセンターが5年ごとに発表してきたデータではあるんですけど、これを35年分並べる資料を今日作らせていただいたということでございます。この資料を見ていただくとですね、がん患者の5年生存率はこの35年間で大きく改善しています。今現在でも、がんで苦しんでいる方、たくさんいらっしゃるわけですけれども、着実に早期発見であるとかあるいは効果的な抗がん剤ができたり、あるいは手術法が格段に進歩したり、医療機器が進展等々もあってですね、この35年の中で、1963年、男性は29.5%だったものが58.8%。女性は50.5%だったものが、男性と比べればそれほど伸び率はそんなにないかもしれませんけれども、66.8%ということで、男性では30%ですね、生存率が改善し、女性では15%改善してきたと。根治されたということでは、もちろんありませんけれども、かなりがん対策の取組の成果等々もあって、改善をされてきたということが言えるんじゃないかなと。特にですね、この下に色々トピックを記入させていただいていますが、1967年には胃がんに対する抗がん剤の承認がなされました。また、1975年にはですね、CTの国内導入が初めてはかられた。それから、1983年には、ここにも書いておりますけども、MRIの装置が導入をされたと、それから肺がんに対する効果的な抗がん剤が承認された、そして、またこの年から胃がん検診なども始まっているわけであります。また、それから1987年にはですね、肺がんの検診や乳がん検診も、この年から始まりました。それから、1994年には、それに大腸がん検診も追加をされてきたということで、10か年戦略の中でですね、着実に対策を講じてきた成果で、こうした改善率が現れてるんじゃないかなと思っておりますので、私が映画を観た頃に受けた時にはですね、がんになった時には、なかなか厳しいという状況から見ればですね、だいぶ、がんの種類によっても違いますし、一概に言えない面もありますけれども、全体として見ればこうした改善がはかられたということでございます。そして、皆様のお手元には、さっき6つの疾患を見ていただきましたが、それぞれ6つの疾患ごとにですね、どういった改善がはかられたのか、ということを資料としてお配りをしておりますので、別途ご覧をいただければなというふうに思っております。そういうことで、元の資料に移りますけど、この第4次の戦略においてもですね、着実にがんの罹患といいますか、治癒というものが進歩するようにですね、しっかりと取り組んでいきたいと思っておりますし、来週再来週から始まる有識者の会議においてもですね、活発なご議論いただきながら、この夏を目途にですね、中間とりまとめをさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。今日は、以上です。
《質疑》
(記者)
今度の中間取りまとめなんですけども、早期発見、生存率の更なる改善とありますが、もうちょっと具体的にどういったことをテーマなりとか盛り込んでいきたい課題とかを教えていただけないでしょうか。
(副大臣)
御案内のとおり、2004年からの3次の10カ年総合戦略では、かなり法制度も整って参りましたし、いろんな成果が上がってきてますけれども、今度新たな14年度からやるものにつきましてはですね、がん対策基本計画の記載をベースにしながらですね、特にまだ不十分な面もございますですね、いわゆるがん研究ですね、いろんながんの種類があるわけでありますけれども、すべてが十分に、研究費の投入にしても、みられているわけではありませんのでですね、がん研究ということにさらに特化したですね戦略を固めておきたいというふうに考えております。または、今後どういう優先順位にしても力点の置き方にしてもっていうのはまさにこれからですねこの有識者会議の皆さん、ここにメンバー構成も書かせていただいておりますけれども、この方々に十分御議論いただいてですね、しっかりと実効性のあるものを作っていきたいなというふうに思っております。
(記者)
4月15日の会議で事務局が文科省、厚労省、経産省とありますが、経産省が入るのはこれは初めてですか。
(副大臣)
はい。初めてです。この表にございますように1994年から関係の役所ということで文科省や科学技術省ということで入っていただいたんですが、経済産業省に入っていただくのは初めてでございます。
(記者)
特に経産省が加わった理由みたいなものはありますか。
(副大臣)
それじゃあ、ちょっと事務局の方から。
(事務方)
はい。医薬品医療機器のですね、やはりその開発という意味で産業を所管されている経産省にも入っていただいて、国全体で国家的ながん戦略を作ることを考えております。
(記者)
より低侵襲な治療の実現ということですけれども、具体的に何か決めてらっしゃったことがあったら教えていただきたいということと、もう一点はがん検診も重要だと思われるんですが副大臣から何かコメントがありましたらお願いします。
(副大臣)
がん検診についてはこれまでもですね、対象疾病を追加してまいりました。また、先般は予防接種法の改正案も通りましてワクチンの方の体制の中でも子宮頸がん(の原因となるヒトパピローマウイルス)についても対象とされてきているところでございまして、まあこれからも必要に応じて有識者会議でしっかりと御議論をいただいてですね、必要なものについてはさらに加えていくというような形にもなるんだと思いますが、いずれにしても、この有識者会議の御議論を待ってということにはなろうかと思います。前段の低侵襲のものについてはちょっと事務局からお答えさせていただきます。
(事務方)
4ページをご覧いただきたいと思います。低侵襲な治療法の一例といたしまして、4ページの1989年のところに書いてございます、乳がんに対する乳房温存手術の開発、これは本当に一例でございますけれども、こういった侵襲度の低い治療法の開発というものもですね、重要な研究だと考えております。
(記者)
テーマなんですけれども、先ほどおっしゃられたとおり、これから今から事務局案としてこれまでにないトピック的な全く新しい論点に何か入れたりという手はお考えでしょうか。
(副大臣)
まあ、基本的にはやはり有識者の皆さんからいろいろとまず第1回目の会議ではいろんなご意見をいただいてくるということになると思いますが、事務局としてはこういうふうにとか特に想定はあるか。
(事務方)
いいえ、ないです。
(副大臣)
とくにまあ、私もお答えしておりませんので、これを入れてやるということではなくて、ただ、最初に言及しましたとおり、がん研究に特化した戦略というのは事務局案ということではありますけれども、特に注視をしてこの4次戦略には盛り込んでいきたいという考えでおります。
(記者)
先ほど御紹介いただいた生存率なんですけど、これ98年のデータになってますけど、発射台は今回新たに会議を始めるにあたって、その生存率の改善も入っていると思うんですが、発射台どこにして、数値目標を例えばさらにそこから何%底上げするとか、そういったことまで考えてらっしゃるんですか。
(副大臣)
そうですね。有識者会議での議論ということにもよってくると思いますけれども、これ実はですね、今日皆さんにお示しした3枚目のパネルですけれども、98年までしかないんですね。これはとりあえず国立がんセンターの患者さんを中心にずっと追ってきたんですけれども、私もですね、これ本来ならば2003年のまでここに公表できればなと思っていたんですが、なかなかこの98年以降は患者さんのフォローアップというものが大変難しくなってきている面もあって、なかなか98年以降は生存率の推移というデータが取りづらくなってきておりまして、それで98年までということに実際なっているんですね。ですから、こうしたデータの把握の仕方っていうような課題もございますから、なかなかまたその数値目標が本来馴染むのかっていうようなこともありますし、色々な論点はもちろんあるわけですけれども、有識者会議の皆さんの御意見も頂きながらですね、御指摘のとおりなるべく具体的な目標を掲げた方が分かりやすいわけでありますし、それから本当に私が今日一番皆さんにお伝えしたいのは、やはりこの生存率がですね、かなり改善をしてきているということは、がんで苦しまれている患者の皆さんにとってもですね、また二人に一人ががんに罹患するという現況を鑑みても、非常に勇気づけられる数字ではなかろうかなと。色々な個人差あるいはその疾病による違いとかっていうのはありますけれども、間違いなく薬の面においても技術の面においても、また医療機器の面においてもですね、間違いなく進歩してきたんだということが言えると思いますので、今度の4次戦略でもさらにですね、特化してがん研究を充実させることによってですね、さらなる進歩を遂げていけるように取り組んでまいりたいと考えております。
(記者)
確認なんですけど、細かい話は事務方でも結構なんですが、この66%と58.8%、ここから足下は今横ばいとは見られるんですか。それとも下がっちゃってるとか上がっちゃってるとか、定性的にはどうなんですか。
(事務方)
先ほど副大臣が仰られましたように、なかなか正確なデータが把握しづらいという状況がございます。下がってるという傾向があるという理解はしておりません。
(記者)
まあ大体6割程度と。
(事務方)
そうです、はい。
(副大臣)
いずれどこかで頭打ちが来る可能性は否定できないわけですが、私どもとしては今のところ右肩上がりで推移はしてきているだろうというふうな推定はしております。
(記者)
がん研究の部分とちょっと別件で恐縮なんですけれども、中国の鳥インフルエンザの関係でお尋ねしたいんですが、これまでに9人が感染報告されているということですが、WHOはですね、パンデミックの段階からは程遠い状況だってふうなコメントが出されているようなんですけれども、現状どう見てらっしゃるのかと、今後の対応についてお願いします。
(副大臣)
今般中国で鳥インフルエンザH7N9というもののヒトの感染につきましてはですね、今日も今朝副大臣会議が官邸でございまして、話題にもなったわけでございますが、現時点ではですね、とりあえずヒトからヒトへの感染というのは確認はされておりません。引き続きですね、必要な情報収集を精力的に行っていきたいというふうに思っております。また今後不測の事態が起きた際には速やかな対応、対策が取れますようにですね、職員にその検討、準備を進めるよう指示したところでございまして、省内的にはそうした体制が今組まれつつあるという状況でございます。厚生労働省といたしましては引き続きですね、WHO等を通じて情報収集に努めてですね、今後の発生動向を注視してまいりたいと考えているところでございます。
(記者)
現段階では省内に何か特別な対応チームとかそういったものを作られているということではないんでしょうか。
(副大臣)
まだチームというふうにしているわけではありませんが、関係者を集めての会議はすでに行っているところでございまして、省内だけではなくて、それぞれの関係省庁との連携も含めて、この件については注視をしていくということでの連絡が徹底しているという状況でございます。それから実際に確認云々ということになってまた次のステージということにはなるんだろうと思いますが。
(記者)
11ページの第4次戦略のところなんですけども、確認なんですが、これ10か年っていう言葉が入ってないんですけども、10か年戦略と理解で良いですよね。
(副大臣)
そうです。
(了)
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