年金積立金管理運用独立行政法人の運営の在り方に関する検討会
(第7回)の議事要旨
1.日時:平成22年5月17日(月) 18:00〜20:00
2.場所:厚生労働省 専用21会議室
3.出席者
【メンバー】(敬称略)
浅野幸弘、植田和男(座長)、竹詰仁(小島茂委員の代理)、小幡績、富田邦夫、富田俊基、村上正人、山崎元、山崎養世、米澤康博
【総務省】
原口一博総務大臣、階猛総務大臣政務官
4.議事要旨
(1) 原口総務大臣挨拶
○ 原口総務大臣ご挨拶
先生方から大変貴重なご意見を承っており、感謝。日本の年金制度、暮らしの安心、老後の安心ということで、皆様方がここでしてくださっている議論がまさに日本の進路になる。座長はじめ、お一人お一人に感謝したい。
(2) ヒアリング
○ 検討会メンバーの山崎元 楽天証券経済研究所客員研究員からのヒアリングが行われ、その後、小幡績 慶應義塾大学経営管理研究科准教授からのプレゼンテーションがあった。
○ 山崎氏からのヒアリング
◆説明の概要
- KKRの運用方針は、GPIFよりも保守的なもの。経済前提はGPIFと同様であり、両者の違いは運用目標の違いによるもの。GPIFは賃金上昇率に対する目標を設定しているが、KKRは賃金上昇率のデータが手に入りにくいこともあり、物価上昇率に対する運用目標を設定。
- 基本ポートフォリオは5年にわたるものだが、経済前提が前後で大きく異なるので、向こう11年分のリターンを、幾何平均を取って「物価上昇率+1.6%」として、運用目標を設定。
- 国内債券については、GPIFの運用計画からの逆算及び超長期債の利回りに期間スプレッドを乗せて1.6%と想定。国内株式、外国株式、その他について、ヘッジコストなどのコストを引いた上で期待リターンを計算。
- 2010年策定の基本ポートフォリオは、国内債券が80%、内外株式が5%、短期資産が3%。そのほか、不動産や貸付金など、国家公務員共済制度に伴うものがある。国内債券の内訳は、55%が預託金。キャッシュフローを負債に合わせるための超長期の債券ポートフォリオ作る上で、任意の預託制度を活用。
- KKRのリスクの前提と期待リターンより、ポートフォリオのリスクを計算し直したところ、負債のリスクもあわせて計算すると、4.3%くらいの標準偏差となる。
- 一方、GPIFのポートフォリオをサープラス・リスクで最適化をして、もう少し現実的なものにすると、国内債超長期のカテゴリーが83%、国内株式10%、外国株式6%。更に現在のKKR程度のサープラス・リスクで最適化すると、国内債超長期は91%。このときの期待リターンは1.8%、リスクは1.6%となり、期待リターンを高めながらサープラス・リスクを相当程度落とすことができる。
- 現在のKKRの基本ポートフォリオは、預託金を使っていることでポートフォリオを長期化できており、かつ、利回りをアップしている。GPIFについてもKKRの考え方からいうと、制度的に可能かは分からないが、預託金を使うなどして、ポートフォリオを長期化し、リスクを落とし、リターンとリスクの効率を改善することができるのではないか。
- 年金積立金は国民のものであり、リスク運用は基本的に自分ですればいいし、国が無理なリスク運用をすることは基本的には必要ない。また、公的年金が株式投資をする場合、民間企業の大株主になることになり、議決権行使をしなければ空洞化が起こり、行使すれば民間企業に政府が介入することになる。したがって、制度を大きく変えることができるのであれば、本来は株式投資をしない方が良い。
- 前提条件として株式投資がやめられないとすると、現在のプロセスの中での問題として、年金財政の予定利率は、本来は、リスク許容度や損失の可能性の許容度を考え、現実に資本市場で実現可能なリターンを前提として考えるべき。また、年金資産の運用リスクを計測する際には、負債に対する相対的なリスクを意識すべき。全てについてALM、LDI的なアプローチをするのがいいかどうかは分からないが、経済的な現実として、負債、資産の価値は変化するので、それを明らかにした上で財政状況を国民に説明する必要がある。また、長期的にはつじつまが合うからといって、短期的な時価評価から逃れるのは適当でない。
- 資産配分は、もう少しきめ細かく見直すべきであり、現在の乖離許容幅は大きすぎて、放任に近い。リスク推計についても、非常に大きな変動のあった期間を含む長期間の推計を使っており、最終的に債券並みのリスクだから低リスクの運用という理屈になっているが、特に債券の普通のリスクは今はもっと小さく問題。
- 運用委員会は、最低月1回の開催と責任の強化が必要。KKRでは年数回だが、年に数回のインプットで運用に適切な判断はできない。
- パッシブ運用を多く使うこと自体はいいことだが、インデックスの入れ替えなどパッシブファンドが負ける状況やリスクもあり、運用機関のモニタリングも必要であるため、事務作業は誰でもできるという意見は現実的ではない。
- 成功報酬やファンド・オブ・ファンズなどは最終的にどこでどれだけ手数料がとられているのか把握できないので、行うべきではない。
- また、そういう意味で、国家ファンド的な運用は行うべきではない。例えば、10兆円の国家ファンド的な運用を行うと、少なく見積もっても年間2000億円相当の手数料が実質的な利益の配分ということになる。
◆主な質問・意見
- ここでは収益の標準偏差のリスクとALM上のリスクの2つが述べられている。30年の日本の長期債で運用しても、金利変動による大きなリスクがある。また、92%を国内債券に振り分けると、例えば国内金利が上がることで9割以上のリスクが決定される。株式などでの運用により、様々なリスクの分散効果があるが、ここではそれが無視されている。年企積立金は、国家が運用している国家ファンドであり、財政的に与えられた目標を超えないことがリスクであるのに、リスクの意味が統一されていないことが問題。
- テクニカルな議論も踏まえて基本ポートフォリオの策定をする必要があると思うが、今の運用委員会でそれができると考えているか。また、国の運用でリスクを取るのは適切でないとのことだが、公的年金制度の役割として、国が世代間の負担をリスクシェアするために資金を積み立てて運用することにも意義があるのではないか。
- 制度にとって何をリスクと考えるかの定義がそれぞれで異なっており、そのところの認識が揃わないと、議論が収束しないのではないか。
- 預託金は非市場性国債と同じなので、金利リスクはない。
- 国債で運用するということは、目標収益率を完全に下回るのでリスクが100%ということになり、国民生活が脅かされるという違うリスクも発生してくる。
- それは目標設定の仕方に問題があるということ。公的年金制度として必要なのは、市場の失敗があるためであるが、運用については民間でもできる。公的年金制度と運用は分けて考えるべき。
- そのような議論が正しいとすると、100%ライアビリティ・マッチングした非市場性国債などにすれば、運用は必要ないということになるのではないか。
- 公的年金制度と運用は別だと言っても、国債に投資していればリスクがないという訳ではない。インフレリスクや経済変動のリスクを国債でカバーできるのか。適切な運用により、経済全体がおかしくなるリスクを小さくする必要もあるのではないか。
- 年金のような、負債サイドがインフレや賃金上昇率とともに動く場合、国債で持っていれば安全ということはない。インフレになるような場合には、超長期国債は非常にリスクが高い。
- 現在の制度では、年金制度が維持できないことが運用におけるリスク。保険料と給付が決まっているので、あまりリスクが取れないことから、基本は国債。インフレ連動債が一番いいが、規模が小さい。株式などは違うリスクが多く入るため、国債中心にやるべき。
◆主な回答
- ハードル・レートは目標、サープラス・リスクは最終的な運用額がどの程度変動するかという程度を数値的に表したもの。サープラス・リスクは基本的にボラティリティと同じような年率の標準偏差の単位で言うことが一般的であり、ハードル・レートはそれに対して運用がうまくいくかいかないかに対する程度を計るもの。言葉の定義を整理すれば良い。問題はハードル・レートの決め方。
- 運用委員会について、金融機関との利害関係、特に年金運用ビジネス等との利害関係を持っていない人で、専門的な検討に耐えうる人が委員になるべき。専任であることを求めるのは厳しいが、資本市場の変化を考えると、月に1回くらいは会合に参加するのが普通。また、報酬が安すぎるため、例えば、その仕事に相当のリソースをさくのに十分な報酬で、かつ、その職を失ったときに少し残念だなと思うくらいの報酬にすべき。
- 公的年金が国民の代わりにリスクを取った運用をすべきという面もあるが、国と国民の間のお金のやりとりに、株式や外貨投資といった不確実性を挟む必要はない。ただ、国にリスクを取らせてリターンを目指す運用をすることについて一定の合意が取れれば、その合意の中で効率的な運用を行うという考え方はある。
- 預託金についてもその実質的な経済価値について時価評価すべき。経済実態に沿った情報開示を行うことに問題はない。
○ 小幡氏からのお話
◆説明の概要
- 国が運用しないこととした場合には、個人に返して、個人が運用することになるが、GPIFは規模が圧倒的に大きいので、個人で運用するよりも、様々なメリットがある。例えば、手数料が安くなる、情報が入って来やすい、金融市場をリードする投資家として行動できるので、リターンも基本的には取りやすい。また、長期の運用であるため、普通の投資家が取れないリスクが取れる。
- デメリットとして一般的に言われるのは、規模が大きすぎること、運用は必ず失敗するということ。前者は規模のメリットとのバランスの問題であり、デメリットを減らす工夫は可能。後者については、一般的には個人の運用の方が失敗する。手数料を除けば、平均的には、機関投資家やファンドの方が有利。また、個人も金融機関に委託することを考えると、手数料についてはGPIFでまとめて委託した方が有利。以上より、国で運用する意味はある。
- デメリットをどう減らすかが問題であるが、国民からGPIFに委託することでエージェンシー問題や組織としての歪みも生じる。組織の目標と運用の目標のずれを減らすためには、国民に対する広報も含めて、ガバナンスの強化が必要。組織のあり方を改善し、同時にそれに併せた人材も考える必要がある。この検討会のようなガバナンスについて議論する場を継続的に持つべき。
- ガバナンスの改革については、GPIFと運用委員会の責任と権限が不明確。例えば、現在は資産配分の決定の際に、運用委員会の議を経てGPIFが決定をするが、結果的にアセットアロケーションに問題があった場合に、どちらが最終的に責任を持つのかを明確にすべき。また、監視と執行を分離し、運用委員会は、GPIFの人事や資産配分決定、運用委託のプロセスの監視に徹すべき。
- 運用の実質的な意思決定はGPIFが一義的に担い、権限と責任の両方を負う。そのためには、明確な目標が必要であり、運用の長期的なパフォーマンスに連動したインセンティブが必要である。インセンティブは金銭的なものだけでなく、名誉や尊敬なども踏まえた総合的な仕組みが必要。
- 必要な人材として、運用経験者であり、かつ、運用者を監督・管理する人材が必要。外部の運用機関を選定する能力・経験のある人は限られているが、単に金融機関の経験者というのとは全く異なる人材が必要。また、会計やコンプライアンスのようなバックオフィス業務と実際の運用業務に必要な人材は分けて考える必要がある。経費の面でも、前者は経費削減が他の組織同様当てはまるが、後者は必要な経費を柔軟に使えるような構造にするべき。
- 補論として、インデックス運用が基本であるが、厳密にインデックスにトラックして、トラッキングエラーを少なくすることを目標とするより、様々な新しいインデックスをGPIFが最初に取り入れることで日本の市場も変わっていくので、それを取り入れる議論をすべき。
- 公的年金の大きな役割としてインフレヘッジがあるが、100%国債では、インフレヘッジにはならず、分散投資にもならない。現在は不動産での運用は行っていないが、利回りや賃料が確実に入ってくるため、名目金利が確定する国債と同様の効果を持つことから、リアルなものへの投資は、分散としては必要ではないか。
◆主な質問・意見
- GPIFの主な役割は経済情勢の変動に従って資産配分を見直すことであるのに、全額国債にするということは資産配分をしないということ。それが混同して議論されていることが大きな問題。国債を時価評価すると、金利が上がった際、時価評価損を抱えるので、それは1つのリスクを抱えるということ。
- 株式会社における取締役と執行役員の関係について、年金積立金の運用に当てはめた場合に、株主は国民であり、その代表である厚生労働大臣が国民の代表として社長以下の経営陣に経営を委託している。理事長は社長であり、社長以下の内部の取締役会が理事会となるべき。理事会がきちんと組織され、理事長専決ではなく、見識と国民に対する責任感と情報を持つ人を理事にした上で、執行部隊の役割と完全に分かれていることが大事。
- 目標を与えるのは厚生労働大臣であるが、年金財政から要請される明確な数値目標がないと、仕事を与えたことにならないのではないか。
- 手数料など、広い意味でのコストはどのくらいかかっているのか。
- 運用委員会が監視に徹することには賛成。非常勤の委員に決定権の一部を預けることには無理がある。ただ、GPIFをどういう執行体制にするかをきちんと議論しなければ結論につながらない。
- 株式会社に例えるならば、消費者やお客様がいるはずで、年金保険料の拠出者が株主で、年金受給者がお客様になるのではないか。そうすると、株主の意見が会社運営に反映される仕組みや、お客様の立場に立った商品などが必要となる。GPIFの目標のところで、「長期的な運用パフォーマンス」とあるが、長期とはどのくらいか。現在の5年の中期目標との関係をどう整理すべきか。
- 運用委員会が監視に徹することとした場合に、基本ポートフォリオの策定や弾力的な運用の主体はどこになるのか。KKRとGPIFは大差ないと思っているが、負債を考慮しているところが大きなポイントで、いいところは取り入れる必要があるが、当局との関係はどこがかかわるのか。うまく立て付けができるようにGPIF内の組織を考える必要がある。
- 普通は、理事長がいれば理事会が置かれ、明確に監視機関になることが多いが、現在の運用委員会の役割は何か。理事長の仕事は、会社であれば外部取締役であり、執行を監視する役割は理事会にあるが、日本の場合は理事会などが機能しにくい。
- 各資産や各国の資産の期待収益率を推計することが運用の仕事のほとんど。経済的な分析など、リサーチ・研究部分が必要になる。GPIFのような巨大な組織では、個別の資産における証券の分析ではなく、各資産クラスや主要国について、経済的な分析をして予測する機能が今後は必要ではないか。
- 市場のリーダー的な投資家が影響力が大きく、勝ちやすいということは運用の常識ではない。大きいことは必ずしも有利ではないが、手数料を小さくできること、分散投資ができることは有利。また、個々の資産や期待リターンについて考えることは必要。運用委員会が資産配分の決定や運用委託プロセスの監視にかかわった場合、年何日くらいの開催が必要と考えるか。
- 責任と権限の問題は、リスクをどう考えるかということ。リスクを運用上のものに限定して議論しているが、根本からリスクとは何かを議論することが必要。
- 実行部隊は専任であることが前提で、その業務執行に対して専門的知見を持ってコメントし是正するのが理事会など。国民に対して説明できる体制とすることがこの検討会で決めるべきこと。運用の専門家などを採用、あるいは養成できるような組織に変えることこそ、議論のアウトプットとしていただきたい。また、政府が運用目標を責任を持って与え、GPIFがその目標をクリアする責任を持つという関係を明確にすべき。
◆主な回答
- 手数料は年間300億弱。(事務局からの回答)
- 株式会社との対比については、株主は国民であり、その代表が厚生労働大臣、社長は理事長、社長以下の内部の取締役は理事会となるというのが正しいと考える。
- 長期的な運用パフォーマンスの期間は、整合性を取るべき事項もあるが、最低5、10年くらいのイメージ。
- GPIFの執行体制について、理想は、常勤の理事からなる理事会を作り、その下に実際に運用に携わる人材がいなければならないが、実際は経費との関係もある。ただ、そこはお金をかけても整備すべき。
- 資産配分の決定自体はGPIFが行い、運用委員会はその監視をするという意味であるが、現実的には月1回以上、必要に応じて臨時の会を開くべき。
(3) 中間とりまとめに向けた議論
○ 議論に入る前に、座長よりコメントがあり、その後、資料5「検討会で出された主な意見の整理(案)」について事務局から説明し、議論を行った。
◆座長からのコメント
- 現在の体制では、基本ポートフォリオを変えるには、厚生労働大臣、財務大臣の了解が必要であり、機動的な運用を行うことは難しい。乖離許容幅を利用して、裁量的に運用する余地もあるが、5年間の中期目標期間中のポートフォリオを長期のポートフォリオとどう変えるか、その期間中のパフォーマンスの評価をどうするかなどをはっきりさせないと、GPIFも困るだろう。
- 全体の基本的な体制を見直すことをしないとある程度以上判断の入った運用をする方向には行かないと思うし、逆に、非市場性国債だけのポートフォリオにして、体制をシンプルにするという選択もあるのではないか。
- 今後の運用においては、年金財政上の「負債」を考慮した運用、ALMやLDI的な観点を考えて、もう少しきめ細かい分析、対応をすべきではないか。
- 年金の支払いなどが賃金上昇率にある程度依存するので、「賃金上昇率+α」という目標設定にはある程度の根拠があるが、それにトラックするポートフォリオの作成は自明ではない。現在使われている手法以外にも、賃金上昇率というマクロの変数と運用というファイナンス的な部分を連関させる、マクロファイナンス的な分析手法を利用できる余地があるのではないか。
- 年金財政からの4.1%という数字は、経済的には苦しい見通し。それがGPIFには「賃金上昇率+α」という目標として与えられるが、そのプロセスには改善の余地があるのではないか。
- デフレでマクロ経済スライドが機能しない問題が年金財政を苦しくしており、今後しばらくはそれが続くと考えられる。年金財政を均衡化する仕組みが機能しないことと、運用収益が低下しているということの2つの問題が発生しており、これにどう対応するかは大きな問題である。このような情勢が見込まれる場合に、「賃金上昇率+α」という目標の考え方は、そのままでは少し苦しいのではないか。
- 逆に、デフレが短い期間で終わるという見通しを持つのであれば、債券のリスクやインフレリスクを無視できなくなることから、それも含めて、マクロ的な見方をきちんと持って、その上で運用を考えることが大事。
◆意見の整理(案)に対する主な意見
- GPIFの在り方についてのこれまでの意見のまとめという意味では良いが、GPIFの在り方を考える前提として、年金制度との関係がどうか、あるいは、経済をどう見るかによって、GPIFの在り方も変わるという意見があったが、その部分の取扱はどうするのか。
- 2ページの一番下「運用目標の設定については、運用と年金制度や年金財政とをセットで議論するプロセスが必要ではないかという意見があった。」を充実させるという対応があるのではないか。
- その意見には賛成であり、その点は重要であるため、その部分に書き込むか、別途議論する場を設けるかしてほしい。
- 同じく賛成。厚生年金の積立金は労使の拠出金であり、拠出者が意見を言えるのが当然。運用方針の決定プロセスに、拠出者が参加できる仕組みが必要。
- GPIFの運用目標は現在、「暫定」となっており、運用委員会では大臣から与えられた中期目標の文言を精査して、従前のポートフォリオを継続している。「暫定」の目標では、この検討会や年金制度の見直しをして、決めるということになっているが、その整理はどうするのか。
- 運用目標を「暫定」としているのは、検討会における検討と、年金制度の本格的な見直しの2つの要素があり、今後、運用目標を見直すこともあり得るということ。
- その運用目標はどこが作るのか。
- 最終的には厚生労働大臣が決めることとなるが、その際に、経済前提専門委員会のようなものを別途作るかなどは未定。
- 運用の失敗は、結局、国民負担につながるが、それが本当にこの場で共通認識されているのか。運用に失敗すると、保険料の引き上げ、あるいは給付の引き下げになり、それを長期的に行うと、国民負担を増大させないと年金が払えなくなる。積立金運用に何を求めるかという基本的なことを書く必要がある。国民全体からすると重い問題だということを最初に共通認識する必要がある。
- 国債を時価評価した場合、金利が上昇すると価値も下がるので、財政再計算が必要になるという意味では国債の運用も全くリスクがないという訳ではなく、国債運用しているから年金財政が万全ということはない。
- 国民全体の重い問題だという話は、全て非市場性国債で運用する話とは別の問題。また、マーケットが完全であれば、国債市場において30年先の経済成長率などは金利に織り込まれる。
- この議論は平行線であるが、仮に4.1%という目標に無理があると、余計なリスクを抱え込むことになるという指摘はその通りだと思う。
- 長期国債について、金利が上がると価値は半分になるが、債務の価値も半分になる。ALM的なリスクの考え方をしてはどうか。運用目標は基本的には年金財政が前提とする運用利回りだが、これが現実的かどうかが問題。どのくらいのリスクを取れば実現が可能かを分かりやすい形でコミュニケートされた上で運用目標が決まるべき。そういう意味で、年金財政との問題も含めて考えるべき。最終的に5年という単位で計画を立てるので、現在の状況であれば名目の運用利回りで何%の運用が可能かが明示される形で運用目標が出てきて、それと年金財政の前提としている利回りとの対応関係が国民に分かることが必要。賃金上昇率で考える場合も、正確にコミュニケートしていくべき。
- 8ページのロ「ポートフォリオを固定し、インデックス運用のみを行うならば大きな運用組織は必要がない」について、基本ポートフォリオは固定しておらず、検証の結果、見直しをする必要がないから、変更しなかったもの。また、逆から読むと「大きな組織が必要であれば、基本ポートフォリオを見直さなければならない」と読めなくもないので、まとめる際には工夫が必要。
- 議論を複雑にしているのは、平成21年財政検証が現実離れしているため。早急に、リーマン・ショックの影響を受けた後の今の実体経済にあった年金の財政検証をやり直すべきではないか。
- 名目の数字が強調されすぎると間違った議論になる可能性がある。この検討会では、賃金上昇率と資本市場(のリターン)の関係等を踏まえて、現行の制度がどうしたら成り立つかという条件をもう一度共有認識として持ち、最低限のリスクで、できるだけ負担にならないように行う運用方法はどのような方法かを突き詰めるべき。
(照会先)年金局総務課 企画調査係
TEL 5253-1111(内線3358)