第14回ILO懇談会議事要旨
1.日時:平成22年4月27日(火) 10:00〜12:00
2.場所:経済産業省別館817号会議室(8階)
3.出席者:(敬称略)
(1)労働者側
日本労働組合総連合会国際顧問中嶋 滋
日本労働組合総連合会総合労働局長新谷 信幸
日本労働組合総連合会総合国際局長生澤 千裕
(2)使用者側
日本経済団体連合会国際協力本部長横尾 賢一郎
日本経済団体連合会国際協力本部副本部長松井 博志
日本経済団体連合会国際協力本部主幹高澤 滝夫
(3)政府側
厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当)村木 太郎
厚生労働省大臣官房国際課長高倉 信行
厚生労働省大臣官房国際課国際企画室長麻田千穂子
4.議題
(1)第307回ILO理事会の報告
(2)未批准条約について
・第153号条約について
・第183号条約について
(3)その他
5.議事要旨
(1)議題1 第307回ILO理事会の報告
村木総括審議官からの挨拶、高倉課長からの出席者紹介に引き続き、政府側より資料1に基づき今年3月に行われた第307回ILO理事会の概要説明がなされた。
【発言概要】
(労働者側)
1)2011年の総会議題の選定について
総会議題は、通常総会の約2年前に確定するものであるが、本理事会で来年の総会議題が決定されず、6月の理事会で議論することと なった。事務局の準備が間に合うかどうか懸念を感じている。我々としても討議のための準備があり、早く決定することが必要である。
2)ミャンマー案件について
本件の審議は第29号(強制労働)条約違反について行うものであるが、本理事会では結社の自由の欠如についても懸念が示された ことが注目される。今年予定の総選挙が非民主的な選挙となるのではないか懸念がある。
3)PFA(計画財政管理委員会)について
ネットプレミアム(ドルの先物買いにより生じた差益)の取扱いに係る審議において、日本政府が果たした役割を評価する。 日本政府は独自の観点から建設的な意見を主張し、最終的な決定は日本政府の意見を踏まえたものとなり、全体の同意を得ることができたと考えている。
一方、日本の分担金が来年から15億円近く減少するが、それをいかに使うかが問われている。 すべてを他の国内施策に使うのではなく、ILOの活動の促進、例えばマルチバイを含む任意拠出金の拡充に使われるべきである。
4)WP/GBC(理事会及び総会の機能に係る作業部会)について
ILOは国連機関の中で唯一の三者構成機関であり、三者構成主義であるからこそ実効性ある効果的な対応が可能となる。 三者構成主義の実体を損なうような簡素化や効率化があってはならない。
(使用者側)
1)2011年の総会議題の選定について
若年者雇用の問題は世界的に早急な対応が求められていることから、使用者側としては「若年者の起業家精神」を 総会の議題としたいと考えている。
2)LILS(法令問題及び国際労働基準委員会)について
ILO条約の有権解釈機関の設置に関して、使用者側は、現在の条約勧告適用専門家委員会のあり方に関する疑問が問題意識の 根本にあるものの、別の機関を設置することが望ましいとまでは必ずしも考えていない。
3)WP/GBC(理事会及び総会の機能に係る作業部会)について
理事会会期は約3週間と長期にわたるため、議論すべきことを絞り、より効率的なものにできないかと考えている。 例えば、同じようなテーマの議論を様々な委員会で行っている。委員会毎に役割が違うのかもしれないが、整理すればより効率的に議論が進むのではないか。
(政府側)
総会議題に関しては、早期に決まることが望ましいと考える。ネットプレミアムの取扱に関しては、最終的な決定は日本政府としても十分支持できる ものであったのでコンセンサスに参加した。分担金が減る分をそのままとするのではなく、日本の貢献を維持したいという労働者側の考えは、我々も共有している。 理事会機能の改革に関しては、政府としても重複している部分の効率化を実施すべきという立場であるが、過度の効率化とならないよう配慮していきたい。
(2)議題2 未批准条約について
政府側より、資料2−1〜2−2に基づき、第153号条約、第183号条約、第105号条約、第111号条約について説明がなされた後、意見交換が行われた。
1)153号条約について
(労働者側)
自動車運転者の労働時間がとても長い状況であり、この状況を改善するため、条約の批准に向けてぜひご協力いただきたい。国内法を整備して改善基準告示を罰則を持った法令とすることが重要である。
(使用者側)
告示の法制化については、運転者のみに違う規制をする仕組みがよいのかという疑問がある。
(政府側)
国内施策の推進とともに、リファレンスとしての条約の批准についても検討していきたい。国土交通省とも連携してやっていきたい。
2)183号条約について
(労働者側)
女性の労働権の保障として重要な条約。育児時間中の有給が難しいとのことだが、実際、3割以上の会社において有給となっている。 育休中の所得保障のように、失業保険の中の給付もあるので、工夫できるのではないか。
(政府側)
日本は本条約を批准はしていないが、産前産後休業中の所得保障や、妊娠・出産したこと等に対する不利益取扱いの禁止等、法改正時のリファレンスとなっている。
(使用者側)
本条約の問題点は、第一に、ノーワーク・ノーペイの原則に反することである。条約は批准していないが、これまで多くの点に 改善があった。我が国では育児時間や短時間労働の賃金扱いは労使の話合いに委ねられており、条約の定めるように賃金の支払いを義務化することは適当ではない。
第二に、条約が労働者に産休後の原職復帰の権利を認めているのであれば問題となる。条約を批准する場合には、 均等法で事業主に原職復帰等の措置をとることを求めているところ、これを労働者の権利とする転換が必要となるのであれば、法的な課題も出てくる。 スムーズな復帰のために、事業主が決める方が柔軟な対応が可能と考えている。
-了-
照会先:厚生労働省大臣官房国際課国際労働機関第二係
03-5253-1111(内線7310)
03-3595-2402