厚生労働省

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厚生労働省所管団体に係る環境自主行動計画の
フォローアップについて

平成22年6月2日

厚生労働省環境自主行動計画フォローアップ会議

1.環境自主行動計画のフォローアップについて

環境自主行動計画とは、地球温暖化の防止等に取り組むため、各業界団体が自主的に策定した環境行動計画であり、CO2排出抑制に係る数値目標を設定するとともに、これを達成するための具体的な対策を定めている。
政府が定める「京都議定書目標達成計画」では、環境自主行動計画の透明性・信頼性・目標達成の蓋然性が向上されるよう、政府は、関係審議会等により定期的なフォローアップを行うことを定めており、関係各省庁において、所管団体の環境自主行動計画のフォローアップが実施されているところである。
 厚生労働省所管団体では、日本生活協同組合連合会、日本製薬団体連合会及び私立病院において環境自主行動計画が策定されている。
 厚生労働省においては、政策統括官(労働担当)が有識者を参集して「厚生労働省環境自主行動計画フォローアップ会議(以下「FU会議」という。)を開催し、所管団体に係るフォローアップを実施している。平成21年度におけるFU会議は、平成22年2月18日に開催され、上記3団体からヒアリングを行い、進捗状況の評価等を行った。

2.各団体の自主行動計画に係るフォローアップ

〔1〕生協
(1)目標設定

生協では、商品供給高(売上高)1億円当たりのCO2排出量を原単位として削減目標を設定しており、2008年度から2012年度までの平均排出量(原単位による排出量)を2002年度と比べて4%削減することを目標としている。
 また、生協においては、上記の目標と併せて、向こう3年間の行動計画を策定し、年度毎に計画を更新していくローリング方式により、計画の策定・管理を行っている。

 なお、昨年度の第2回FU会議での指摘事項を踏まえ、原単位による目標値に加えて、CO2排出量(総量)による目標値を設定し管理することとしている。
(2)目標達成の見込み

昨年度のFU会議において、CO2排出量の算定にあたり、電気使用量に係る排出係数として、環境省「事業者からの温室効果ガス排出量算定方法ガイドライン(試案)」における固定値だけではなく、当該年度の「電気事業連合会公表の係数」又は「各電力会社別の係数」を用いた排出量についても算定するべきであるとの指摘を踏まえ、今年度はこれまでの排出係数(固定値)以外に、電気事業連合会の係数を用いて算定した。
 原単位による排出量の推移を見ると、電気事業連合会の係数(調整後)を用いて算定した場合及び環境省「事業者からの温室効果ガス排出量算定方法ガイドライン(試案)」における固定値を使用した場合ともに、2008年度に初めて基準年度(2002年度)の水準を下回る結果となった。

 こうした排出量の推移に鑑みれば、排出削減に向けた取組を今後とも積極的に進めることにより、目標値を達成できる可能性は十分あると考えられる。 (表-1)

(表−1)

 

2002

年度

2006

年度

2007

年度

2008

年度
供給高(千億円)
           02年度比
22.2
100.0%
23.4
105.6%
24.0
108.1%
24.0
108.0%
CO2排出量 係数0.378
02年度比
69.7
100.0%
75.8
108.7%
75.5
108.3%
73.1
104.8%
調整前※
02年度比
67.5
100.0%
74.5
110.3%
79.6
117.8%
76.1
112.7%
調整後※
02年度比
67.5
100.0%
74.5
110.3%
79.6
117.8%
67.3
99.6%
原単位 係数0.378
02年度比
31.4
100.0%
32.4
103.0%
31.5
100.2%
30.5
97.1%
連調整前
02年度比
30.4
100.0%
31.8
104.5%
33.2
109.0%
31.8
104.4%
調整後
02年度比
30.4
100.0%
31.8
104.5%
33.2
109.0%
28.1
92.3%
※“ガイドライン”とは、「環境省『事業者からの温室効果ガス排出量算定方法ガイドライン(試案Ver1.6)』(平成15年7月)」の排出係数。
※“調整前・後”とは電気事業連合会のCO2排出係数で京都クレジットによる調整前後の係数。
(3)削減対策

・これまでも様々な温暖化対策を実施してきているところであるが、扉付のショーケースの積極的な導入、LED照明の導入、1灯管蛍光器具の導入などは、温暖化対策に直接つながるものであり、引き続き積極的に推進することを期待する。

・全国の店舗を対象として売場面積・営業時間当たりのCO2排出量を収集・分析し、グラフ化することは他のチェーンストアも含めて学んでいくべきところであるので、このような分析は非常に評価できるところである。

・2020年に向けた長期的な目標を作っていく方向にあるという前向きな姿勢は評価できる。生協は都道府県に根付いて組織活動を行っていることから、2020年、2030年といったスパンでの温暖化対策に係る計画・目標を立てている都道府県と協力をして、今後も温暖化対策を推進することを期待する。

(4)カバー率の向上

都道府県別に見ると、2008年度末時点で未策定であった秋田県と新潟県が自主行動計画を策定し、都道府県単位では全ての都道府県で策定された。各都道府県の中で供給規模の大きい生協のほとんどが策定したところであり、商品供給高では地域生協の中での自主行動計画策定生協の割合は90%を超え、大部分の生協で策定している。
 今後は、地域に密着した事業者として、CO2排出量削減への国民機運の向上に資する意味においても、さらに参加生協数を増加させることを期待する。

〔2〕製薬業界
(1)目標設定

製薬業界では、CO2排出量に目標値が設定されており、2010年度(2008〜2012年度の平均値)におけるCO2排出量を基準年度(1990年度)のCO2排出量以下にすることを目標としている。

(2)目標達成の見込み

CO2排出量の推移を見ると、2003年度以降、基準年度の排出量を大幅に上回る状況が続いていたが、2008年度は排出係数の低下及びエネルギー転換の影響により、前年度と比較して大幅な減少が見られた。
 また、売上高を原単位とした排出量の推移を見ると、2003年度以降減少傾向にあり、基準年度と比べて大幅な改善が見られ、温暖化対策の効果は着実に表れている。(表-2)
 今後とも排出削減に向けた取組を積極的に進めることにより、目標値を達成できる可能性は十分あると考えられるが、生産量(売上高)の増加による排出量の増加も予想されることから、更なる取組に期待する。

(表−2)

  基準年度
(1990年度)
2006年度 2007年度 2008年度 目標
(2010年度)
CO2排出量(万t-CO2) 165.2 206.1 211.4 176.7 165.2
(基準年度比) 1.00 1.25 1.28 1.07 1.00
売上高(億円) 45,916 72,197 73,866 74,912
(基準年度比) 1.00 1.57 1.61 1.63
〔参考〕
原単位による 排出量
(t−CO2/億円)
36.0 28.5 28.6 23.6
(基準年度比) 1.00 0.79 0.80 0.66
※ 排出量の算定にあたり、調整後排出係数を使用。
(3)削減対策

・東京都等の自治体の排出量規制に係る動向等も踏まえ、2011年度、2012年度の設備更新を含めたより具体的なCO2排出量削減のための計画を策定することを期待する。

・CO2排出量の増加及び減少要因を定量的に把握していることは評価できる。

・営業車両からのCO2排出量について、ハイブリッド車などの低公害車の導入を積極的に進めており、評価できる。しかし、営業車両からのCO2排出量は自主行動計画の対象外ではあるものの、業界全体CO2排出量の約10%と無視できない状況であるため、現在行っている東京都内をモデルとした走行距離や燃料使用量の把握などの情報を、全国レベルで有効利用することにより、業界全体の営業車両からの排出量の削減に努めることを期待する。

(4)カバー率

大手製薬企業を中心にカバーされており、昨年度、日本OTC医薬品協会と日本ジェネリック製薬協会に参加を呼びかけた結果、フォローアップ対象企業が2008年度調査時点での企業数比較で57社から74社に増加したが、1990年度におけるデータの把握状況を改めて検証した結果、エネルギーデータを把握していない企業があることが判明し、昨年度より7社減り67社となった。日本製薬団体連合会の業種別団体(14団体)に加盟している企業数で見ると、カバー率は18.4%となっており、売上高規模では83.6%をカバーしている。今後とも長期的な視点から参加企業数の増加に向けた取組に期待する。

 
〔3〕私立病院
(1)目標設定

私立病院では、延べ床面積当たりのCO2排出量を原単位とした目標値を設定しており、基準年度(2006年度)から2012年度まで毎年度、年率1.0%削減することを目標としている。

(2)目標達成見込み

2008年度のCO2排出原単位の実績は、基準年度比11.6%減、前年度比も7.9%減となり、目標とした毎年度、年率1.0%減を大幅に超える削減が達成されている。今後とも引き続き削減対策を進めていくことにより、目標を達成できると考えられる。(表-3)
 しかし、京都議定書では、CO2排出量の削減が求められることから、CO2排出量を一層強く意識した取組を行うべきであり、将来的には、原単位による目標値に加えてCO2排出量による目標値の設定についても検討するべきである。

(表―3)

  2006年度
(基準年)
2007年度 2008年度 2012年度
(目標)
CO2排出原単位
(kg-CO2/平方メートル)
127.1 121.9 112.3 119.7
(基準年度比) 1.00 0.96 0.88 0.94
活動量
(延べ床面積、千平方メートル)
64,271 65,793 63,072 73,209
(基準年度比) 1.00 1.02 0.98 1.14
(参考)CO2排出量
(t-CO2)
817.0 802.3 718.8 876.1
(基準年度比) 1.00 0.98 0.88 1.07
(3)削減対策

・エネルギー転換工事の推進により、CO2排出量の削減に大きな効果が見られる。また、エネルギー転換工事の結果、エネルギー使用量も減少しており、引き続きこれらの取組を期待する。

・ある一定の延べ床面積(中規模)の病院において、エネルギー消費原単位が小さいことが分かった。今後は、病院の規模に応じて対策を検討することも重要である。

・エネルギーの絶対消費量の削減という観点から、個々の病院において、省エネ製品の導入を更に推進することを期待する。

・アンケート実態調査への回答病院に対し、温暖化対策の取組状況についてデータをフィードバックすることにより、個々の病院の取組を一層促す効果が期待されるものであり評価できる。

(4)カバー率

実態調査に回答した病院のうち有効回答は、1,513病院であり、4病院団体(日本病院会、全日本病院協会、日本精神科病院協会、日本医療法人協会)に加入する私立病院全体(重複を除く。)の26.6%となり、前年度の1,223病院(カバー率21.5%)に比べ、大きく増加した。今後、4病院団体に加入する病院に対して、自主行動計画の内容等について周知と意識啓発を進め、回収率の向上を図ることが望まれる。

〔4〕その他
(1)国内クレジット制度について

国内クレジット制度は、大企業等の資金・技術により中小企業等(自主行動計画に参加していないもの)が排出を削減した場合、当該大企業等がその排出量を自らの削減分として自主行動計画等に反映させる仕組みである。
 しかし、私立病院は自主行動計画を作成しているため、国内クレジット制度を活用して、資金・技術提供を受け、排出削減につなげることができないが、公立病院は自主行動計画に参加してないため、国内クレジット制度を活用して、排出削減することができるという、当該制度の不公平感に対する意見があったところである。また、生協についても同様なことが起こりうると考える。
 当FU会議としても、国内クレジット制度の不公平感については大きな課題と考えており、厚生労働省としても制度所管省庁に検討をすべきとであるとの要望を行うべきである。

(2)電力排出係数について

電力使用に伴うCO2排出量算定に使用する排出係数について、固定値を使用するのか、調整前又は調整後の係数を使用するかによって取組に対する評価も変わってくるものである。現在、当FU会議の対象としている生協、製薬、私立病院の使用する係数は三者三様であるが、取組に対する評価に当たり、どの排出係数を使用するかについては、国全体の評価の枠組みに関わることであり、今後の課題と考える。


<第3回厚生労働省環境自主行動計画フォローアップ会議の開催実績>

1.参集者

江原  淳

佐藤  洋

○ 高村  ゆかり

中津  鎮彌

村田  勝敬

◎ 森口  祐一

吉田  麻友美

専修大学ネットワーク情報学部教授

東北大学大学院医学系研究科教授

龍谷大学法学部教授

元日本製薬工業協会環境安全委員会専門委員

秋田大学医学部社会環境医学講座環境保健学分野教授

独立行政法人国立環境研究所

循環型社会・廃棄物研究センター長

株式会社日本スマートエナジー 代表取締役

◎:座長○:座長代理(敬称略・五十音順)

2.開催経緯

○ 平成22年2月18日(木)  第3回会合開催

・業界ヒアリング(生協・製薬業界・私立病院)

・フォローアップ内容についての取りまとめ

○ 平成22年6月2日(水) 報告書取りまとめ

【照会先】

厚生労働省 政策統括官

労働政策担当参事官室

(代表)03−5253−1111

(内線)7718


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