年金積立金管理運用独立行政法人の運営の在り方に関する検討会
(第2回)の議事要旨
1.日時:平成21年12月24日(木) 14:00~16:00
2.場所:経済産業省1014会議室
3.出席者
【メンバー】(敬称略)
浅野幸弘、植田和男(座長)、小島茂、小幡績、末吉竹二郎、富田邦夫、富田俊基、
村上正人、山崎元、山崎養世、米澤康博
【総務省】
階猛総務大臣政務官
【厚生労働省】
長浜博行厚生労働副大臣、山井和則厚生労働大臣政務官
4.議事要旨
(1) 次期中期目標における運用目標について
○ 厚生労働省から資料4について説明があった後、次期中期目標に置ける運用目標について議論を行い、以下のような意見が出された。
- 平成21年財政検証の長期の運用利回りの名目値は、足下の経済情勢からすると、非常に高い数字。これにこだわると、誤った判断をしかねない。
年金財政上は、「賃金上昇率+1.6」が基本的な数字となっており、これを目標とするのが最も合理的。「+1.6」は全額国債と同じ程度のリスクで、国債の利回りに0.4%上乗せしたもので、極めて低いリスクを取りに行っているもの。 - 賃金にスライドする将来の給付につなげるための運用であり、年金財政との関係を考えて、「賃金上昇率+α」に賛成。ただし、「+1.6」は、マクロ経済スライドが機能せず、財政が悪化したため「+1.1」から引き上がったものではないかと考えられ、疑問。賃金と相関関係のある資産がないという指摘については、短期では無いが、5年なら5年で見ると、例えば、賃金上昇率と債券や株式のリターンとの相関関係が出てくる。
- マクロ経済の基本的な関係式から考えると、過去のデータを分析してみても、「+1.6%」を確保することは難しいのではないか。
- 世界に分散投資をする年金の運用は、国内のマクロ経済の状況に基づいた議論だけでは測れない。また、国内だけに限っても、財市場のフローのGDPと資産市場の動きの相関が落ちてきている。賃金は下がり続けているが、それでも国債金利ですらプラス1%を超えている。したがって、年金制度やその財政状況、国内のマクロ経済に縛られた運用目標ではなく、運用の世界の状況、金融資産市場の動向に基づいた適切な利回りを目標として設定すべき。例えば、現在7割国債を持っているとすれば、残りの3割についてリスクをとった運用をして、その部分について、例えば4%といった目標を設定すべき。
- 財政検証の数字は、足下の財政収支を考慮した内閣府の短期的な見通しと、長期的な年金財政の均衡を考慮した数字をつなげた、木に竹を接いだような数字で、現実的ではない。また、分散投資効果が0.4%とのことだが、パッシブ運用だけでは得られず、これもリスクの高い運用への要因となっている。
- 年金給付をまかなうための運用という目的からすると、「賃金上昇率+α」を目標とするのは整合的。名目値で考えると、金利情勢等の外的要因によってリスクの取り方が変わる可能性があるため、実質ベースで話をすべき。賃金上昇率とポートフォリオ策定との関係については、技術的に、(賃金上昇率と)金利やインフレといったものとの関連を分析して、ポートフォリオに反映させるべき。国民の年金なので、取って良いリスク、取るべきではないリスクというものを考えていくと、目標としてどれだけ上乗せすることが妥当なのかが分かってくるのではないか。
- 年金財政上、「賃金上昇率+1.6」が必要だからそれを目標にするというのではなく、「賃金上昇率+α」でαをどのくらいに設定したらリスク・リターンがどうなるかということを、財政の方へフィードバックして、財政の方を見直すという枠組みに見直すべき。
- 運用の目的、あるいは、年金の目的は何なのかから議論しないと、国民が納得できる運用目標の設定はできないし、評価も正しくできないのではないか。また、今日のリスクと10年後のリスクは明らかに変わるものであり、そういう意味でのリスクファクターのとらえ方などは、目的にどのくらい反映されているのか。
- 年金制度と関係のない運用目標はあり得ず、「賃金上昇率+α」を目標とすべき。賃金上昇率が予測できないといった指摘については、他の指標を関連づけて、目標設定すればよい。国民にも説明しやすく、理解しやすいのではないか。
- 実際の運用結果を評価するための基準になるものとして有効な目標を設定しなければ意味がないのではないか。実際の運用環境を考慮して、どの程度のリスクをとって運用するかをポートフォリオの基本とするべき。また、運用資産を分割するより全体をまとめて最適化して最適ポートフォリオを作る方が効率が高く、金額の大きいものは特に厳密に行うべき。
- 今まで、賃金上昇率+1.1%の目標を与えているが、その目標にこたえるためには,賃金上昇率の決定に一番シミュレートする金融資産の複合ベンチマークを作っていなければならないが、現実にそんなことは不可能なので、誰もやっていない。実行可能性ということでは、インフレ連動というのは、直接、運用組織に与えるベンチマークとしては極めて難しい。また、「賃金上昇率+α」とした場合、賃金上昇率という運用資産はないので、それに近似するものを見つける必要がある。
- 「賃金上昇率+α」という目標は、賃金上昇率の代替変数が見つからない中で、目標を設定したとしても、その達成について検証ができないのではないか。むしろ、どうしたらベストのパフォーマンスが達成できるかということを考えていく方が、シンプルであり、かつ検証がしやすいのではないか。
- 公的年金の積立金は、保険料の上昇を抑える、あるいは年金財政を安定化させることが目的であり、その目的に沿って、運用の在り方を考えるべき。年金給付は、賃金上昇率に伴って決まってくるものであるため、賃金上昇率を基本にそれをどのくらい上回るかが基本ではないか。1.1%がいいのか、1.6%がいいのかの議論はあるが、結果は過去5年なら5年の賃金上昇率に対してどうだったかということで検証できるのではないか。
(2) 今後の検討会の進め方について
○ 厚生労働省から資料6について説明し、以下のような意見が出された。
- 組織全般のガバナンスの問題であるため、GPIF理事長から話が聞きたい。
- 基本ポートフォリオは運用の結果を大きく左右するため、基本ポートフォリオの策定プロセスの話が聞きたい。
- 運用委員会に限らず、ガバナンス全体についての議論が必要。
(照会先)年金局総務課 企画調査係
TEL 5253-1111(内線3358)