補装具評価検討会(第I・II類合同)
第10回議事要旨
日時:
平成21年12月22日(火)
10:00~12:00
場所:
経済産業省別館 1014号会議室
出席:
伊藤 利之 (横浜市総合リハビリテーションセンター 顧問)
樫本 修 (宮城県リハビリテーション支援センター 所長)
黒田 大治郎 (神戸学院大学総合リハビリテーション学部社会リハビリテーション学科 教授)
中邑 賢龍 (東京大学先端科学技術研究センター 特任教授)
森本 正治 (大阪電気通信大学 医療福祉工学部 医療福祉工学科 教授)
山内 繁 (早稲田大学 人間科学学術院 特任教授)
石井 喬志 (有限責任中間法人日本補聴器販売店協会 理事)
稲垣 平八 (社団法人 日本義肢協会 理事長)
大濱 眞 (社団法人全国脊髄損傷者連合会 副理事長)
松枝 秀明 (一般社団法人日本車いすシーティング協会 副代表理事)
佐野 昇 (社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 事務局長)
欠席:
君塚 葵 (心身障害児総合医療療育センター 所長)
坂本 洋一 (和洋女子大学 生活科学系社会福祉学研究室 教授)
諏訪 基 (国立障害者リハビリテーションセンター研究所 所長)
田内 光 (国立障害者リハビリテーションセンター病院 副院長)
飛松 好子 (国立障害者リハビリテーションセンター病院 診療部長)
仲泊 聡 (国立障害者リハビリテーションセンター病院第三機能回復訓練部 部長)
野田 徹 (東京医療センター感覚器センターリハビリテーション研究部 部長)
三上 真弘 (学校法人帝京科学大学医療科学部 教授)
宮田 広善 (全国肢体不自由児通園施設連絡協議会 会長)
亀田 英俊 (東京都身体障害者福祉センター 障害認定課 判定担当係長)
議事:
1.補装具の価格改定等について
(1)今回の価格改定等の考え方
政府の方針として、障害者自立支援法は廃止し、新たな福祉法制を実施することとなっており、補装具制度についても検討の対象に含まれると思われる。しかしながら、補装具については、実態を踏まえた価格改定を行うとともに、価格改定のルールを明確にすることにより、良質な補装具の安定的な供給体制の確保を図ることが当面の課題とされていることから、今回の改定においては、構造や価格の調査結果を踏まえ、基準価格の改定や加算項目の追加、耐用年数の見直し、支給基準の明確化等、特に緊要度の高い課題に対応するものとしたところである。
(2)見直しの基本方針
- [1]基準価格の改定について
- 調査により実勢価格とのかい離が見られる基準価格について、所要の改定を行う。
- [2]加算項目の追加について
- 車いす等において、基本構造に加えて障害状況や生活環境に応じて付加されるオプション項目及びその価格を設定する。
- [3]耐用年数の見直しについて
- 素材の変化や製作技術の進歩等により、耐用年数の変化がみられるものについて、所要の見直しを行う。
- [4]支給基準の明確化
- 現行の支給基準では対象者が実態に即していないもの及び支給対象機種の多様化により分類が必要なものについて、所要の改定を行う。
(3)種目別の見直し方針
- [1]義肢、装具、座位保持装置について
- 義肢、装具、座位保持装置の基準価格について、一定数の義肢装具等製作事業者に対し素材費と人件費に関する実態調査を行い、これにより得られた結果を踏まえ、これまでの改定方法による価格との差を検証することにより、所要の改定を行うこととする。
なお、今回の改定は、実勢価格と基準価格における差の解消を図ることを最大の目的としており、厚生科学研究に基づき設定した基本的な価格体系まで見直すことは想定していない。 - [2]車いす等について
- 車いすや電動車いす等、完成品として市販されている補装具について、改めて一定数の業者を選定して市場価格等の調査を行い、この調査結果を踏まえ、基準価格を検証するとともに、これまでは基準がないため特例補装具として障害の状況に応じて給付されていた基本構造以外のオプションや高齢の視覚障害者が身体を支えるための盲人安全つえ等について、新たに基準価格を定めることにより、利用者のニーズに沿った給付が行えるよう、所要の改定を行うこととする。併せて、車いすについては、その耐用年数が、現在5年とされているところであるが、耐久性についての向上が図られたことや、平成18年に車いすのJISが改正されたこと等を踏まえ、今回、これまでの5年から電動車いす並びの6年へと1年延長することとする。
(4)委員からの意見
[1]義肢の制度想定額と実際価格の隔たりが大きかった理由に、チェックソケットの素材について透明プラスチックを使用する場合がほとんどであり、素材費を押し上げている状況から透明プラスチックを使用した場合の加算を設けることは検討に値する旨の説明があったが、改定する場合は使用する際のガイドラインも示した方が良い。
[2]車いすの耐用年数の件に関連して、耐用年数どおりの運用しか認めていない市町村や更生相談所があることから、耐用年数に達していなくとも支給できる例示も含めて、障害者(児)の状況に則した制度の運用についてさらに周知徹底を行うべきである。
[3]車いすの耐用年数の件で、JISの改正そのものが直接的に作用して車いすの耐久度が増すかの表現があったが、JIS表示制度の改正もあり全体として耐久性の高い車いすが出てきているので、そのような表現とすべきである。
[4]電動車いすは、車高全体の高さが高く国産自動車に乗車出来ない場合があり、特例補装具として車高を低くした電動車いすを製作せざるを得ない。また、電動車いすは、強度を高めるため補強しなければならない状況もあり価格が上がってしまう。具体的に特例補装具の事例集を作成してほしい。
[5]重度障害者用意思伝達装置は、コミュニケーション機器として重要だが、必要ない人のところにまで入っていて、使われていない実態がある。もう少し簡便な装置でもいいのではないか。コミュニケーション方法をレベル1~という形で分けてみたらどうか。使用期間も短期の方もいるので、レンタルも検討していく必要があるのではないか。
意思伝達装置には、コミュニケーションレベルの問題、試しの問題、そして更生相談所の直接判定の問題、いくつか課題があることから、支援の在り方等について今後も検討課題としてはどうか。今回は、現行で1つの基準となっているものを機能や用途別に分類することとしてはどうか。
2.補装具の価格改定についてのこれまでの議論の整理について
平成20年度から2年間に渡り、補装具の価格改定等について議論してきた。事務局においてこれまでの意見等を整理した以下の案が提示され了承された。
- 改定時期について
従来は物価変動等を勘案し毎年行ってきたが、障害福祉サービスと同様に数年に1回の改定としてはどうか。
- 義肢、装具、座位保持装置について
人件費については、義肢等製作事業者に対する調査を実施の上、事業者毎に製造・営業に係る平均人件費単価を算出。極端な小規模、大規模の事業者を除いて平均値を算出し、制度で想定している人件費単価と比較。毎月勤労統計調査結果も参考にしつつ決定してはどうか。
素材費については、義肢等製作事業者及び素材販売事業者に対する調査を実施。素材毎に変化率の平均を算出し、物価指数等の指標も参考にしつつ決定してはどうか。
その他、新材料の使用等があり得るため、制度で想定している製作法との変化等についてヒアリングを実施してはどうか。 - 完成用部品について
原価率の平均値等を参考に、個別に設定。また、輸入品の場合、医療機器と並び、外国平均価格の一定割合をこえないように調整。さらに、適切な部品の選定に資するよう機能別に分類して通知で示してはどうか。
- 車いす、電動車いす、補聴器等について
地域や事業規模が多様となるように調査対象を抽出。卸価格、出荷数量、製造原価、輸入価格、販売店販売数量、販売価格、販売管理費等を調査するとともに、ヒアリング調査を実施の上、一定の市場を形成しているものについては、実勢価格の加重平均値を基本として価格を決定し、メーカーが限定されている等の理由から市場の形成がなされていないものについては、原価計算方式により価格を決定してはどうか。
- その他
眼鏡、義眼等については、補装具取扱店の抽出など、調査が円滑にできるような環境を作り上げていく必要があるのではないか。
重度障害者意思伝達装置については、スイッチの適合や再適合等、むしろ販売後のフォローの負担が大きく、サポート事業の形態のほうが馴染むのではないかとの意見があった。今後、意思伝達装置の補装具費支給の在り方等を検討していく必要があるのではないか。
3.追加調査等が必要とされたものについて
これまでの調査で必ずしも十分でないと指摘のあった以下の項目について、追加の調査等を実施し、次回検討会にて報告することとなった。
- 補聴器本体、FM補聴機器、骨導式ポケット型補聴器等の市販価格と販売数量の調査及びイヤモールド等の原価内訳等の調査。
- 義眼の国内製造事業者の原価内訳等の調査。
- 身体を支えることが出来る盲人安全つえの販売価格等の調査。
- 遮光眼鏡の支給基準の明確化について、日本ロービジョン学会に対し支給基準案の作成依頼。
- 重度障害者用意思伝達装置の購入基準案の再整理等。
【照会先】
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室 高木
電話(代表):03-5253-1111(内線3089)
FAX:03-3503-1237