第13回ILO懇談会議事要旨
1.開催日時:平成21年10月2日(金)10:00〜
2.場所:厚生労働省仮設第2会議室
3.出席者:(敬称略)
(1)労働者側
日本労働組合総連合会国際代表中嶋 滋
日本労働組合総連合会総合労働局長長谷川裕子
(長谷川氏が途中出席するまでの代理:
日本労働組合総連合会雇用法制対策局部長村上 陽子)
日本労働組合総連合会総合国際局長生澤 千裕
(2)使用者側
日本経団連国際協力センター参与鈴木 俊男
日本経済団体連合会国際協力本部主幹高澤 滝夫
(3)政府側
厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当)村木 太郎
厚生労働省大臣官房国際課長高倉 信行
厚生労働省大臣官房国際課国際企画室長麻田千穂子
4.議題
○報告案件
議題1 第306回理事会に向けたわが国の対応
1)政府からの報告
・第98回ILO総会について
2)意見交換
○協議案件
議題2 2009年 年次報告について
1)政府からの説明
2)意見交換
5.議事要旨
議題1:第306回理事会に向けたわが国の対応
村木大臣官房総括審議官(国際担当)からの挨拶、高倉国際課長からの出席者紹介に引き続き、 政府側より資料1に基づき第98回ILO総会の概要説明がなされた。
(グローバル・ジョブズ・パクトについて)
[労]
グローバル・ジョブズ・パクトが採択されたが、日本政府としてはこの文書を受けてどのよう な検討をしているのか、今の時点の動きについて教えてほしい。
[政]
グローバル・ジョブズ・パクトは各国が自国の状況を踏まえて取るべき政策オプションを示し たものであるが、日本では雇用調整助成金等すでに対応しているものが多く、日本の施策はかなりグローバル・ジョブズ・パクトに対応したものだと考えている。日本政府としては、グローバル・ジョブズ・パクトと日本の政策の整合性を整理し、今後の対応を決めていきたい。
OECD雇用労働大臣会合等において、経済雇用危機に対する各国の施策について議論がなされているが、全体的には日本政府が行っている雇用施策と同じ方向の施策を各国の政府当局も行っている。グローバル・ジョブズ・パクトはこうした各国の取組が反映された内容となっている。
[使]
グローバル・ジョブズ・パクトは政策のカタログであるが、戦略的に活用する方策を考えるべ きである。
議題2:2009年 年次報告について
政府側より、2009年の日本政府年次報告案について資料2−1から2−10を用いて説明が なされた後、意見交換が行われた。
[使]
各報告について、事実に反していないかどうか、という観点からチェックしている。事実に反 していないと確認したので、それ以上の意見はない。
(27号条約にかかるやりとり)
[労]
政府は「国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドラインの取り組み状況等に関する実態調査」にて、安全上の問題は減っていると述べているが、重大事故は頻発している。
ガイドラインに基づく確実な取り組みが重要であり、この点ガイドラインに強制力がないのが問題である。また、世界の物流がコンテナ輸送に切り替わっている中、27号条約が実態に十分に対応しているとは言い難い。ILOは、早急にコンテナ輸送に対応した新条約作りに取り掛かるべきであると考える。
(88号条約にかかるやりとり)
[労]
職業安定所の配置について、地域の労使に対するサービスの低下防止および雇用対策の効果的な実施という観点も、十分に踏まえるべきである。再編については労働政策審議会の承認事項とすべきである。
(100号条約にかかるやりとり)
[労]
○ 依然として男女賃金格差は大きい。政府も対策を行っているが、対応は小さくて遅い。男女間の賃金格差縮小には、男女雇用機会均等法に性別を理由とする賃金差別の禁止を加えることや、労働基準法の第3条(均等待遇)に「性別」を加える改正が必要と従前から考えている。
○ 全てのパートタイム労働者を差別禁止の対象とするよう法の改正を求める。
○ 政府は、性差別の有無の判断に関して、同一の「雇用管理区分」に属する男女を比較する方針をとっているが、これは異なる職務についても差別を禁止する「同一価値労働同一賃金原則」に馴染まず、指針から削除すべきである。
○ 政府が強い意思を持って、職務の価値を測る客観的な職務分析手法に関する情報を収集・提供することを求める。
(122号条約にかかるやりとり)
[労]
特に連合意見の「2」で記載したとおり、雇用・労働政策決定における労使代表との協議を十分尊重すべきであり、労働者代表が参加していない経済財政諮問会議、規制改革会議等で決まった議論が雇用・労働政策の前提となっているのはゆゆしき問題。
(87号条約にかかるやりとり)
[労]
政府の報告においては、消防職員の団結権の否定、公務員のスト権、公務員制度改革について、従来から繰り返し述べてきたことを再掲しているに過ぎない部分がほとんどである。政権交代後の動きも考慮しつつ、報告を求められた期間である2007年6月から2009年5月までに絞って、どのような動きがあったか書くべきである。
組合費をチェックオフすることを禁止した大阪の新たな条例については何も書いていないが、このことを入れるべき。
(98号条約にかかるやりとり)
[労]
第6条の「公務員の地位」について、英語では「public servants engaged in the administration of the State」であり、「国の運営に携わる公務員の地位」とすべきであるが、日本政府は該当部分を単に「公務員の地位」と翻訳し、その理由について仏文を翻訳したと説明してきたところである。しかし、この点は1978年に採択された151号条約の前文にも関連記述があるとおり、ILOは英文が正しいという見解を表明しており、国の運営に携わる権限を持たない大部分の国家公務員や、地方公務員まで団体交渉権が制約されるとはされていないということである。公務員が一律に団体交渉権を与えられていない状況というのが、この条約の国内適用における一番の問題である。
(144号条約にかかるやりとり)
[使]
ILO懇談会は144号に基づき設置されている。その趣旨は、ILOから何を受信しているか、また日本からILOへの発信がILOからの質問と整合性があるかをチェックすることであると理解している。
[労]
144号条約の正式名は、「国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する条約」 であり、未批准条約の批准、既批准条約の適用等に関して、政労使が効果的協議を行うことが規 定されている。144号条約に基づいて設置されているILO懇談会はそういう場であり、国際労 働基準の国内適用を促進するための実質的な三者協議を行う場である。
-了-
照会先:厚生労働省大臣官房国際課国際労働機関第二係
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