厚生労働省所管団体に係る環境自主行動計画の
フォローアップについて
平成21年3月31日
厚生労働省環境自主行動計画フォローアップ会議
1.環境自主行動計画のフォローアップについて
環境自主行動計画とは、地球温暖化の防止等に取り組むため、各業界団体が自主的に策定した環境行動計画であり、CO2排出抑制に係る数値目標を設定するとともに、これを達成するための具体的な対策を定めている。
政府が定める「京都議定書目標達成計画」では、環境自主行動計画の透明性・信頼性・目標達成の蓋然性が向上されるよう、政府は、関係審議会等により定期的なフォローアップを行うことを定めており、関係各省庁において、所管団体の環境自主行動計画のフォローアップが実施されているところである。
厚生労働省所管団体では、日本生活協同組合連合会及び日本製薬団体連合会において環境自主行動計画が策定されており、さらに平成20年8月には、私立病院において環境自主行動計画が策定された。
厚生労働省においては、政策統括官(労働担当)が有識者を参集して「厚生労働省環境自主行動計画フォローアップ会議(以下「FU会議」という。)を開催し、所管団体に係るフォローアップを実施している。平成20年度におけるFU会議は、平成21年1月26日に開催され、上記3団体からヒアリングを行い、進捗状況の評価等を行った。なお、私立病院の環境自主行動計画については、今回が初めてのフォローアップである。
2.各団体の自主行動計画に係るフォローアップ
〔1〕生協
(1)目標設定
生協では、商品供給高(売上高)1億円当たりのCO2排出量を原単位として削減目標を設定しており、2008年度から2012年度までの平均排出量(原単位による排出量)を2002年度と比べて4%削減することを目標としている。
なお、生協においては、上記の目標と併せて、向こう3年間の行動計画を策定し、年度毎に計画を更新していくローリング方式により、計画の策定・管理を行っている。
京都議定書では、CO2排出量の削減を求めることから、CO2排出量を一層強く意識した取組を行うべきであり、将来的には、原単位による目標値に加えてCO2排出量による目標値の設定についても検討すべきである。
(2)目標達成の見込み
原単位による排出量の推移を見ると、2004年度までは増加傾向にあったが、それ以降は逓減を続け、2007年度には初めて基準年度(2002年度)の水準を下回った。こうした排出量の推移に鑑みれば、排出削減に向けた取組を今後とも積極的に進めることにより、目標値を達成できる可能性は十分あると考えられる。(表−1)
ただし、CO2排出量の算定に当たり、電気使用量に係る排出係数として、環境省「事業者からの温室効果ガス排出量算定方法ガイドライン(試案)」における固定値を使用しているが、当該年度における排出実態を正確に把握する観点から、固定値ではなく、当該年度の「電気事業連合会公表の係数」又は「各電力会社別の係数」を使用することが求められている。したがって、次年度以降のフォローアップにおいては、当該年度におけるいずれかの排出係数を用いた排出量についても算定するべきである
(表−1)
基準年度 (2002年度) |
2004年度 | 2005年度 | 2006年度 | 2007年度 | 目標 (2010年度) |
|
CO2排出量(万t-CO2) | 70.0 | 74.9 | 74.8 | 76.2 | 75.8 | 76.6 |
(基準年度比) | 1.00 | 1.07 | 1.07 | 1.09 | 1.08 | 1.09 |
供給高(千億円) | 22.0 | 22.3 | 22.5 | 23.3 | 23.9 | 25.9 |
(基準年度比) | 1.00 | 1.01 | 1.02 | 1.06 | 1.09 | 1.18 |
原単位による排出量 (t−CO2/億円) |
31.9 | 33.7 | 33.3 | 32.8 | 31.7 | 29.6 |
(基準年度比) | 1.00 | 1.07 | 1.04 | 1.03 | 0.99 | 0.93 |
(3)削減対策
・生協では、CO2排出量を従来店舗より20%程度削減した店舗づくりを目標に、 個々の対策ごとに削減量と投資効果を推定する「エコストア・コンセプト」の研究・実証が行われている。こうした取組は、各店舗における効果的な削減対策の推進に資するものであり、評価できる。今後は、エコストア・コンセプトの取組から得られたノウハウを全国の店舗に普及するなどにより、投資効果にも配慮した効果的な削減対策の推進を期待する。
・第1回FU会議における指摘を踏まえ、全国880店舗を対象として売場面積・営 業時間当たりのCO2排出量を収集・分析し、グラフ化することにより、同じ店舗規模であっても単位当たり排出量に大きな相違があることがわかった。こうした分析は、各店舗の排出状況を把握し、今後の取組を促す意味で大きな意義を有するものである。今後は、こうした相違を生じている原因を分析し、各店舗の実情に即した取組に期待する。
・生協においては、一般家庭におけるCO2対策を促進する取組として、「家庭における省エネ活動」、「マイバッグ持参・ノーレジ袋」、「環境に配慮した商品の利用」等のキャンペーンを実施している。今後とも、会員制という双方向のチャンネルを活用した取組に期待する。
(4)カバー率の向上
都道府県別には2県を除いてその地域の大手〜中堅の生協が策定しており、供給高ベースでは大半をカバーしている。しかし小規模の生協で策定されていないため、生協数ベースでは約4割にとどまっている。地域に密着した事業者として、CO2削減への国民機運の向上に資する意味においても、未策定の県の生協などさらに参加生協数を増加させるよう努めるべきである。
〔2〕製薬業界
(1)目標設定
製薬業界では、CO2排出量により目標値が設定されており、2010年度(2008〜2012年度の平均値)におけるCO2排出量を基準年度(1990年度)のCO2排出量以下にすることを目標としている。
(2)目標達成の見込み
CO2排出量の推移を見ると、2006年度は前年度から減少しているが、2007 年度には増加に転じている。CO2排出量が増加した主な要因には、電気事業者に係る排出係数の悪化が影響しており、排出係数が前年度と同じであればCO2排出量は引き続き減少していた。
しかし、いずれにしても、基準年度(1990年度)の排出量を大幅に上回る状況が続いており、目標値の達成は極めて厳しい状況となっている。(表―2)
ただし、売上高を原単位とした排出量の推移を見ると、基準年度と比べて大幅な改善が見られ、省エネ対策の効果は着実に表れている。今後とも、さらに削減対策を徹底し、目標年度までにできる限り目標値に近づけるよう、努力を継続することが求められる
(表−2)
基準年度 (1990年度) |
2005年度 | 2006年度 | 2007年度 | 目標 (2010年度) |
|
CO2排出量(万t-CO2) | 175.0 | 239.0 | 231.9 | 236.0 | 175.0 |
(基準年度比) | 1.00 | 1.37 | 1.33 | 1.35 | 1.00 |
売上高(億円) | 42,913 | 77,293 | 78,418 | 80,521 | ― |
(基準年度比) | 1.00 | 1.80 | 1.83 | 1.88 | ― |
(参考)原単位による 排出量 (t−CO2/億円) |
40.8 | 30.9 | 29.6 | 29.3 | ― |
(基準年度比) | 1.00 | 0.76 | 0.73 | 0.72 | ― |
(3)削減対策
・ 製造部門においては、重油、灯油から都市ガス等へのエネルギー転換が最も大きな成果を上げており、削減対策としてのポテンシャルも依然として高いことから、今後とも技術情報の共有化等を進め、対策を強化すべきである。
・ 製造部門・研究部門を通じて、空調設備によるエネルギー使用量が大きいことから、省エネ機器への転換などの対策を強化すべきである。
・ 前回のFU会議における指摘を踏まえて、製造部門と研究部門の原単位指数(万t−CO2/億円,万t−CO2/千平方メートル)を調査したところ、基準年度と比べて2008年度における研究部門の指数が悪化していることが判明した。GLP基準により厳格な管理が求められる中で排出量の削減には困難な面もあるが、今後は、ヒートポンプの導入等により研究部門における対策を強化すべきである。
・ 削減目標の達成が極めて厳しい状況にあり、製薬各社においては、排出量取引の活用も含めた総合的な取り組みが求められる。2008年10月から実施されている国内試行排出量取引スキームには、製薬業界から6社が参加表明しており、前向きな取組が評価できる。
(4)カバー率
大手製薬企業を中心にカバーされているが、日本OTC医薬品協会と日本ジェネリック製薬協会に参加を呼びかけた結果、フォローアップ対象企業が2008年度調査時点での企業数比較で57社から74社に増加し、医薬品製造業全体の会社数ベースでカバー率が4.7%から6.0%に改善した。なお、売上高ベースでは82.8%をカバーしている。今後とも長期的な視点から参加企業数の増加に向けた取組に期待する。
〔3〕私立病院
(1)目標設定
私立病院では、延べ床面積当たりのCO2排出量を原単位とした目標値を設定しており、基準年度(2006年度)から2012年度まで毎年度、年率1.0%削減することを目標としている。
(2)目標達成見込み
2007年度のCO2排出原単位の実績は、基準年度比で4.1%減となり、目標とした年率1.0%減を超える削減が達成されており、今後とも引き続き削減対策を進めていくことにより、目標値を達成できる可能性は十分あると考えられる。(表―3)
また、京都議定書では、CO2排出量の削減が求められることから、CO2排出量を一層強く意識した取組を行うべきであり、将来的には、原単位による目標値に加えてCO2排出量による目標値の設定についても検討するべきである。
(表―3)
2006年度 (基準年) |
2007年度 (実績) |
2012年度 (目標) |
|
CO2排出原単位 (kg-CO2/平方メートル) |
127.1 | 121.9 | 119.7 |
(基準年度比) | 1.00 | 0.96 | 0.94 |
活動量 (延べ床面積、千平方メートル) |
64,271 | 65,793 | (参考値) 73,209 |
(基準年度比) | 1.00 | 1.02 | 1.14 |
CO2排出量 (万t-CO2) |
817.0 | 802.3 | (参考値) 876.1 |
(基準年度比) | 1.00 | 0.98 | 1.07 |
(3)削減対策
・ 病院は、24時間稼動施設であり、熱源対策が重要であることから、重油、灯油から電力・都市ガス等へのエネルギー転換を推進し、また、コージェネレーションの活用についても、病床規模等に応じた導入メリットも勘案しつつ、その推進を図るべきである。
・ ESCO事業については、既にいくつかの病院で導入されているが、導入した病院における利点や課題等を検証した上で、他の病院に対しても情報提供を行うことが望まれる。
・ 入院患者等が使用するテレビ、冷蔵庫などについても、省エネ機器への転換を進めるなどの対策を進めるべきである。
(4)カバー率
実態調査に回答した病院のうち有効回答は、1223病院であり、4病院団体(日 本病院会、全日本病院協会、日本精神科病院協会、日本医療法人協会)に加入する私立病院全体(重複を除く。)の16.2%となっている。今後、4病院団体に加入する病院に対して、自主行動計画の内容等について周知と意識啓発を進め、回収率の向上を図ることが望まれる。
<第2回厚生労働省環境自主行動計画フォローアップ会議の開催実績>
1.参集者
江原 淳 佐藤 洋 ○ 高村 ゆかり 中津 鎮彌 村田 勝敬 ◎ 森口 祐一 吉田 麻友美 |
専修大学ネットワーク情報学部教授 東北大学大学院医学系研究科教授 龍谷大学法学部教授 元日本製薬工業協会環境安全委員会専門委員 秋田大学医学部社会環境医学講座環境保健学分野教授 独立行政法人国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター長 株式会社日本スマートエナジー審査担当執行役員 |
◎:座長○:座長代理(敬称略・五十音順)
2.開催経緯
○ 平成21年1月26日(月) 第2回会合開催
・業界ヒアリング(生協・製薬業界・私立病院)
・フォローアップ内容についての取りまとめ
○ 平成21年3月31日(火) 報告書取りまとめ
【照会先】
厚生労働省政策統括官
労働政策担当参事官室
(代表)03−5253−1111
(内線)7718