厚生労働省

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第3回今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会 議事要旨

日時:

平成20年11月5日(水) 16:00〜18:00

場所:

厚生労働省専用第12会議室

出席者:

佐藤座長、上西委員、佐藤委員、原委員、増田委員、両角委員

ヒアリング対象者:

東京都(労働相談情報センター)、東京労働局

議事要旨

1 東京都(労働相談情報センター)から、

(1) 労働者及び事業主の労働関係法制度に関する基本的な知識の把握状況(就業形態、企業規模等に応じた特色等)

(2) 労働者の権利に関する知識が十分に把握されていないとされる背景等

(3) 労働関係法制度に関する基本的な知識等が十分でないことに起因して発生した具体的な事例の紹介とその背景等について説明が行われた。

その後、相談に訪れる者の知識の状況等について質疑応答が行われた。

(説明の主な内容)

・ 正規雇用の場合に比べ非正規雇用の方が、労働関係法制度に関する基本的な知識について労使ともに正確な理解がされていない傾向があると思われる。

・ 企業規模別に見ると、小規模企業からの相談が中心になっている傾向がある。

・ 業種別に見ると、比較的新しい企業(例えば情報関連、介護関連など)において、認識が十分ではない傾向があると思われる。

・ 最近はインターネットなどの普及などによって、必要な情報はかなり入手しやすくなっているが、労使ともに、必要な知識を知っていながら、やらない、やりたくない、自己流の解釈をするといったことに起因するトラブルも見られる。

・ 国際化の進展の中での競争の激化による利益最優先の意識や市場経済の浸透に伴う労働力をコストととらえ過ぎる意識の増大、遵法意識の低下等、事業主側の意識の低下が目立つ傾向があるように思われる。

・ 労働側にとっても、十分な知識がないと、拒否できない事例が目立つ。

・ 相談を受ける中で、しばしば出てくるのは、

[1] パートタイム労働者にも有給休暇の適用もあるということを事業主が認識していない事例

[2] 退職金は、労働基準法上に根拠があるわけではなく、就業規則に明記されている場合に支給義務があることを労働者が認識していない事例

[3] 解雇と退職の違いを理解できておらず、労働者が事業主の求めるままに退職願を書いてしまう事例

[4] 試用期間中であっても、14日経過すれば労働基準法の適用があることを事業主が認識していない事例

[5] 事前連絡もなく勝手に仕事を辞めてはいけないことを労働者が認識していない事例

[6] 給与の全額払い・一括払いの原則及び相殺の禁止を事業主が認識していない事例
等である。

・ 退職に関するルールについては、最低限の知識として認知すべきものであると考えられる。

・ 中学校卒業後に社会に出る者もいるが、高校進学率や高校生のアルバイトの状況などを考えると、高校段階から知識を付与する教育を行う配慮や措置を行うことが適切と考える。

(説明に対する主な意見等)

・ インターネットの普及等により必要な情報がかなり取りやすくなったといっても、何も知らないとおかしいと気付かないのではないか。まずは遭遇した事態をおかしいと思って調べようとするためのミニマムな知識が必要である。調べようと考えるためにどのような知識が必要かについても把握する必要があるのではないか。

・ 民法に基づく契約についての基本的知識はインターネットでは入手しにくいと思われるが、相談に来る者は労働契約についての基本的知識を把握しているのか。

→ 労働は契約であり尊重しなければならない、という意識が労使ともに十分認識されていないと思われる。

2 東京労働局から、

(1) 東京労働局における相談の現状

(2) 労働者及び事業主における労働関係法制度に関する基礎的な知識の認知状況

(3) 労働者又は事業主に基礎的な知識があれば回避できたと考えられるトラブルの具体的事例

(4) 最低限の知識として認知されるべき知識の内容等について説明が行われた。

その後、相談を受けようと思ったきっかけや相談の内容について、質疑応答が行 われた。

(説明の主な内容)

・ 昨年1年間の相談件数が東京都全体で13万件で、うち個別労働関係紛争に係る相談は約2万件、9割は労働者からである。2万件のうち、一番多いのが退職関係で半分程度、次いでパワーハラスメントを含めたいじめ・嫌がらせが全体の約14%を占めている。いじめ・嫌がらせは3年前に比べると、倍増している。労働者の就労状況別の件数は、正社員が61%、パート・アルバイトが12%、派遣労働者が7.4%、期間契約社員が9%となっている。また、ほとんどが労働組合のない労働者や事業主からの相談である。

・ 大企業では、労働時間の管理や時間外等の割増賃金、管理監督者の取扱い、近年はパワハラなどの人格権侵害、精神疾患による休職後の復職といったことが問題として出てきている。他方、中小零細では、労働条件の明示や解雇手続き、年次有給休暇の取扱いなど、基本事項が問題になることが多い。

・ 労働者については、基本的な知識を把握していない者が多いという印象を受ける。

・ 具体的な相談事例としては、

[1] 労働条件を書面で明示することを労使双方ともに認識していない事例

[2] 労働条件の不利益変更は、労働者の事前合意や引き下げについての合理的理由が必要であることを事業主が認識していない事例

[3] 民法上の契約解除の方法等を労使双方ともに認識していない事例や労働者に義務を果たす意識・他者への配慮が希薄である事例

[4] 法令知識や労務管理経験の少ない若い労働者が店長を任されることの多い多店舗展開をしている企業において、解雇の手続き等を事業主が認識していない事例

[5] 解雇と退職の違いを認識できておらず、労働者が事業主の求めるままに退職届を提出してしまう事例

[6] パワハラなどの人格権侵害についての不法行為責任やパワハラ等に対する社内教育の徹底等の必要性を事業主が認識していない事例
等が挙げられる。

・ 有給休暇の取得等に関して、勤労することへの美意識が根強く残っており、労働者・事業者ともに意識改革が求められるのではないか。

・ 若い労働者が店長として労務管理を任されることが多くなっている中で、社内教育の徹底や学生時代における基本的知識の付与が重要である。

・ 労使ともに、退職の手続きや雇用保険制度の基本的な内容について把握することが重要である。

(説明に対する主な意見等)

・ 総合労働相談コーナーで相談できることを認知することとなった主なきっかけ は何か。

→ インターネットで東京労働局のホームページを見ての相談が一番多く、東京都やその他の相談機関等からの紹介という例もある。

・ パワハラ防止についての法律的根拠がない中で、どのような救済策があるのか。

→ 法律的根拠ができれば、行政指導という形で救済策をとりやすくなると思う。

一方で、働くことに責任が伴うことや社会的ルールとしてどのようなことをわきまえておくべきかということを労働者側も認識しておくべきと考えられる。

・ 最初に労働条件を書面でもらうことは、トラブルを防ぐ観点からも、法知識を得ることと同様に大切である。

→ 最初に条件が明確にされていればトラブルが防げるケースは多いと思われる。

3 その他、本研究会のテーマに沿って、次のような意見等が出された。

・ 労働基準法等の強行法規で労働者に保障されている権利の問題と契約の問題の区分・整理が必要と考える。

・ 労働者には果たすべき義務があるが、その義務を履行しなければ権利が得られないわけではない。労働者の権利には、義務との対応関係の下で保障されるものと義務とは関係なく保障されるものがあるので、これらを区別して教える必要があるのではないか。

・ 就労以前に知っておくべき知識等が高校生くらいの段階で教えられていないのではないか。

・ 学校教育の現場において、労働法制度に詳しい教師が少ないのではないか。

・ 法律だけを教えても、誰かに相談するなどの行動を起こせないこともある。日常的な人間関係の築き方も含めて考えていくことが必要ではないのか。

・ 本研究会においては、教育でどのようなことを教えるかということに限らず、教育を通じて労働者本人が働くことについて自覚できるようにするかということも検討を行うべきである。

照会先

: 厚生労働省政策統括官付労働政策担当参事官室 企画第2係

TEL

:03−5253−1111(内線7992)


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