悪性リンパ腫、特に非ホジキンリンパ腫と放射線被ばくとの因果関係について
I 疫学調査の概要
放射線被ばくと悪性リンパ腫との因果関係については、これまで種々の疫学調査が実施されているところである。そこで、最新の医学的知見について、文献を系統的に検索し、検索された文献を基にして悪性リンパ腫、特に非ホジキンリンパ腫と放射線被ばくとの因果関係を判断することとした。
文献は、主として米国国立衛生研究所(the National Institutes of Health (NIH))の一部門である国立医学図書館 (the National Library of Medicine (NLM))にある文献検索システム(National Center for Biotechnology Information(NCBI))を用い、キーワードとして放射線(radiation)、リンパ腫 (lymphoma)、疫学 (epidemiology)を用いて検索した。
放射線被ばくに伴う悪性リンパ腫に関する疫学調査は、
(1) 職業被ばくを対象にした疫学調査
(2) 広島・長崎の原爆被爆者を対象にした疫学調査
(3) 放射線診療を受けた患者を対象にした疫学調査
(4) 原子力施設、核実験等の周辺住民を対象にした疫学調査
に大別される。
上記の疫学調査の結果の概要を以下に示す。なお、悪性リンパ腫に関する文献と各文献の概要を表1に示す。
1 悪性リンパ腫(Malignant Lymphoma)の疫学
(1) 悪性リンパ腫の疾病分類
異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病のデータに対して体系的な記録、分析、比較などを行うために、疾病の分類に当たっては、国際疾病分類:ICD; International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems) が用いられている。疾病分類(ICD)は、医学の進歩等により、時代とともに大きな変遷をしている。したがって、悪性リンパ腫の分類についても、疫学調査が実施された時期(報告書の公表された時期等)によって疾病分類が異なっているので、この点に注意する必要がある。
現在は、WHOが1990年に勧告したICD-10が用いられている。リンパ組織から発生する悪性腫瘍のICD-10分類を表2に示す。 WHOは、1990年にICD-10が勧告された後、新しい疾患概念、急速な臨床医学的知見の蓄積や、医学用語の変化、分類表の一層の明確化等に対応するために、1997年以降、ICD-10に改善を加えたものを適用することを勧告している。
悪性リンパ腫の病型分類は、現在、WHOにより2001年に提案された新WHO分類 (WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues、WHO Classification of Tumours, Volume 3 (IARC WHO Classification of Tumours, No 3) 2001年 Jaffe, E.S., Harris. N.L., Stein, H., Vardiman, J.W編集、IARC Press、Lyon CEDEX , France.)が用いられている(表3)。これは、1994年に提唱されたREAL (revised European-American classification of lymphoid neoplasms)分類を改訂したものであり、古典的な病理組織学的所見に基づいた病型分類に加えて、近年著しく進歩を遂げた免疫学的手法、染色体検査、遺伝子解析技術等が取り入れられている。
日本では、2006年1月から、WHOより勧告された内容に基づき2003年までの情報を集積し改善を加えたICD-10(2003年版)準拠が適用されている。
なお、ICDの改正は、ほぼ10年間隔で行われてきているが、ICD-11の勧告は、2015年に行われる予定である。
(2) 悪性リンパ腫の罹患率等
ア 悪性リンパ腫の罹患率及び死亡率
悪性リンパ腫の日本及びアメリカの罹患率(morbidity)及び死亡率(mortality)を下表に示す。
悪性リンパ腫の罹患率及び死亡率 | |||||||
罹患率* | 死亡率* | ||||||
合計 | 男性 | 女性 | 合計 | 男性 | 女性 | ||
日本 2001** | |||||||
悪性リンパ腫 | 6.4 | 7.6 | 5.2 | ||||
アメリカ(13地域)1998-2002 | 1998-2002*** | ||||||
悪性リンパ腫 | 21.8 | 26.3 | 18.2 | 8.6 | 10.8 | 7 | |
ホジキンリンパ腫 | 2.7 | 3 | 2.4 | 0.5 | 0.6 | 0.4 | |
非ホジキンリンパ腫 | 19.1 | 23.2 | 15.8 | 8.1 | 10.2 | 6.6 | |
*:100,000人当たり | |||||||
**:国民衛生の動向 2003年 | |||||||
***: D.Rodriguez-Abreu et al.: Epidemiology of heamatological malignancies. Annals of Oncology 18 Supplement 1, 13-18,2007 |
下表に日本における悪性リンパ腫の年齢別の死亡率を示す
悪性リンパ腫の年齢別死亡率(人口10万人対) | |||||||||||||
年齢 | 20-24 | 25-29 | 30-34 | 35-39 | 40-44 | 45-49 | 50-54 | 55-59 | 60-64 | 65-69 | 70-74 | 75-79 | |
死亡率 | 男 性 |
0.5 | 0.4 | 0.7 | 0.8 | 1.5 | 2.7 | 4.9 | 6.6 | 10.0 | 17.2 | 28.2 | 41.4 |
女 性 |
0.3 | 0.3 | 0.3 | 0.5 | 0.9 | 1.3 | 2.7 | 3.8 | 5.4 | 8.8 | 13.0 | 22.6 | |
厚生の指標 2006年 |
男女ともに、年齢の増加に伴い悪性リンパ腫による死亡率は増加し、特に男女ともに50歳以降急増する(特に非ホジキンリンパ腫)。悪性リンパ腫の死亡率は、いずれの年齢層においても、女性に比べ男性が高い。
イ ホジキンリンパ腫
欧米諸国でのホジキンリンパ腫の罹患率は人口10万人当たり3人程度であり、非ホジキンリンパ腫の罹患率に比べて低い。
日本でのホジキンリンパ腫の罹患率は、悪性リンパ腫の5%程度で、大部分が非ホジキンリンパ腫である。
ホジキンリンパ腫の年齢別の罹患率では、25〜30歳及び55歳以上の2つのピークがあるとされている。
ウ 非ホジキンリンパ腫
1970年代から1990年代にかけて世界的に非ホジキンリンパ腫の発生率が急増してきた。過去25年間の他のがんの発生率の増加は25%以下であるのに対して、非ホジキンリンパ腫の増加は80%以上である。65歳以上の年齢層では3倍に増加した。この増加の原因として診断技術の向上やエイズ患者の増加などがあげられている。
非ホジキンリンパ腫の発生率は男性で若干高い。
非ホジキンリンパ腫の組織型では、日本人の場合B細胞性リンパ腫が、70%を占めるといわれている。HTLV-1のキャリアの多い九州地区を除くと75%がB細胞性リンパ腫である。中でも、びまん性大B細胞リンパ腫の頻度が最も高く、非ホジキンリンパ腫の約30〜45%を占めるといわれる。
(3) 悪性リンパ腫の発生要因について
ア ホジキンリンパ腫の発生要因
主なリスク要因として、家族歴と、EBV(Epstein-Barr Virus)の感染があげられる。EBVの感染者のホジキンリンパ腫のリスクは4倍以上高いとされている。
わが国のホジキンリンパ腫全体におけるEBV検出率は50%であるといわれている。
有機溶剤、除草剤、木材粉じんなどの種々の職業因子がホジキンリンパ腫のリスクを増加させる可能性が検討されているが、現在までのところ疫学的なエビデンスは限られており、議論の余地がある。
イ 非ホジキンリンパ腫
非ホジキンリンパ腫の最近の急激な増加を説明することは難しいが、以下のようなリスク要因があげられている。
(ア) 免疫不全等
先天性の免疫不全及び後天性の免疫不全が関係している。
若年者のAtaxia-telangiectasiaや、Wiskott-Aldrich syndromeを持つ患者、X-linked lymphoproliferative disorderやsevere combined immunodeficiencyの患者の非ホジキンリンパ腫の発生率が高いとされている。
免疫不全を引き起こす薬剤の治療を受けた患者の非ホジキンリンパ腫のリスクも高い。
EBV感染による免疫コントロールの喪失が非ホジキンリンパ腫(特にバーキットリンパ腫、鼻NK/T細胞リンパ腫など)の発生に関連する可能性が示唆されている。
自己免疫疾患(rheumatoid arthritis, Sjogren syndrome, systemic lupus erythematosus, celiac sprue)を持った患者の胃の非ホジキンリンパ腫の発生のリスクの増加が報告されている。
(イ) 細菌感染
日本では、胃に原発する悪性リンパ腫(多くはMALTリンパ腫)が多く、Helicobacter pyloriの感染による慢性炎症が原因と考えられており、非ホジキンリンパ腫の発生との間に関連があることが指摘されている。
Chlamydia psittaciとocular adnexaのリンパ腫との関連が指摘されている。
(ウ) ウィルス感染
日本に多い成人T細胞白血病/リンパ腫の発症には、HTLV-Iウィルスの感染が関連している。HHV-6感染と原発性滲出液リンパ腫との関連性も指摘されている。C型肝炎ウイルスもリンパ腫の発症に関与しているといわれている。
(エ) 農薬及びその他の化学物質のばく露
除草剤、害虫駆除剤、肥料を職業的に扱っている作業者と非ホジキンリンパ腫の発生との関係が疫学的に明らかにされている。
また、有機溶剤を扱っている職業人のリスクの増加も指摘されている。
有機塩素系殺虫剤、ポリ塩化ビフェニールなどが非ホジキンリンパ腫を増加させることも疫学的に検討されている。
(オ) ダイエットや生活習慣
動物性のタンパク質や脂肪の摂取が非ホジキンリンパ腫のリスクと関連しているとされている。
アルコール摂取や喫煙に関しては一致した疫学調査結果は得られていない。
(カ) 遺伝子異常
マントル細胞リンパ腫では、CD5, CD19, CD20が陽性で、t (11;14)(q13;q32)の染色体異常が認められ、CYCLIN D1遺伝子の過剰発現ががん化に関連していると考えられている。
B細胞由来の濾胞性リンパ腫では、表面マーカー上、約75%の症例でCD5陰性CD10陽性で、約90%の症例でt (14;18)(q 32;q21)の染色体異常が検出される。また、BCL2遺伝子の再構成、BCL2蛋白の過剰発現も認められ、これらががん化に関与していると考えられている。
アフリカに多く認められるバーキットリンパ腫では、約80%の症例で染色体異常t (8;14)(q24;q32)が認められ、がん遺伝子MYCの過剰発現ががん化に関連していると考えられている。
2 放射線被ばくと悪性リンパ腫、特に非ホジキンリンパ腫の誘発との関係
(1) 職業被ばく
ア 原子力施設及び放射線施設における作業者を対象にした疫学調査
アメリカ、イギリス、日本などで原子力施設の作業者を対象にして放射線とがんの因果関係を明らかにするための疫学調査が継続して実施されている。さらに、個々の施設ごとの疫学調査では、悪性リンパ腫をはじめとしたがんの発生数が少なく、統計的な検出力が低いので、検出力を高めるために複数の施設の調査結果をまとめて解析したものも報告されている。
(ア) 米国の原子力施設等を対象にした疫学調査
(1) 米国の放射線科医と他科の医師(放射線科医に比べて被ばく線量が低い)の死因に関する1920-1969年の50年間の調査報告(Matanoski GM ら,1975)1)
非ホジキンリンパ腫と他のリンパ腫を分けたデータが少なく、また線量に関しても記載がない。リンパ腫による放射線科医の死亡率は1920-1929年(全年齢)に比べると1930-1939年(74歳まで)には3.2倍になっていた。また1930-1939年と1940-1949年(64歳まで)でのリンパ腫による死亡率は、1920-1929年に比べて10倍であった。他方他科の医師では、有意差はなかった。放射線科医においては、リンパ肉腫・細網肉腫、ホジキン病、白血病・その類縁疾患を除くリンパ系もしくは造血組織の悪性新生物による死亡率は、米国白人(1960年)に比較して1930-1939年(74歳まで)、1940-1949年(64歳まで)ともp < 0.05で有意に高かった。非ホジキンリンパ腫としてのデータはない。
(2) 1926年から1980年の間に登録された米国の放射線技師71,894人(731,306人年、77.9%は女性)を対象とした造血器がん発生に関する疫学調査(Linet MS ら,2005)2)
慢性リンパ性を除く白血病のRR(相対リスク、以下同じ)は、1950年以前に5年間以上勤務した技師(RR=6.6、95%CI(信頼区間、以下同じ) 1.0〜41.9)及びX線検査のために50回以上患者を支持したことのある技師(RR=2.6、95%CI 1.3〜5.4)で有意に高い。多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫では有意の増加は認められない。
(3) 米国ウラン鉱山の労働者のがんによる死亡率調査報告(Archer VE ら,1973)3)
1950年、1951年、1953年に6つのウラン鉱山で働いた715人の労働者の健康診断が行われた。1950年から1967年の間に104人が死亡した。このうち白血病を除くリンパ系及び造血組織の悪性腫瘍による死亡はSMR(標準化死亡比、以下同じ)p<0.05で有意に高かった。非ホジキンリンパ腫としてのデータはない。
(4) 米国南カリフォルニアの原子力労働者の外部被ばく線量とがん死亡率との関係の報告(Ritz B ら,1999)4)
対象は4,563人で、1950-1993年に875人が死亡し258人が悪性腫瘍だった。全体のがんによる死亡率は、対照白人に比べて低かったが、白血病による死亡率は高かった。非ホジキンリンパ腫のみの結果はないが、200 mSvを超える労働者では白血病を含む造血リンパ組織がんでの死亡率は有意に高かった(p=0.003)。非ホジキンリンパ腫としてのデータはない。
(5) 米国の15か所の原子力発電所で、低線量被ばくした労働者死因調査報告(Howe GR ら,2004)5)
1979年から1997年までの18年間にわたり、15の原子力発電所で働く労働者(53,698人)を調べた。非ホジキンリンパ腫のERR(過剰相対リスク、以下同じ)は、61.3(95% CI: -2.15, 313)であり、統計学的な有意な増加は認められなかった(p=0.076)。またtrends test for categorical analysis の両側検定でp=0.22であった。慢性リンパ性白血病を除く白血病のERR/Svは、5.67(95% CI: -2.56, 30.4)で、p=0.28で有意な増加は認められなかった。
(6) 米国ポーツマス海軍原子力艦造船所におけるがん死亡率の調査報告(Rinsky RA ら,1981)6)
1952-1977年までに雇用され、放射線に被ばくした労働者7,615人(被ばく線量0.00001-0.91414 Sv)、15,585人の非放射線労働者、検出線量以下の1,345人の労働者を比較した。白血病を含むすべてのリンパ造血組織由来のがんに差はなかった。線量―反応関係も認められなかった。
(7) アイダホ国立工学環境研究所に1949年から1991年までに勤務経験のある63,561人を対象とした死亡率コホート調査結果報告 (National Institute for Occupational Safety and Health,2005)7)
ほとんどのがんは放射線との関係は認められなかった。電離放射線被ばくとの関連性の証拠を多少示したがんの例として白血病(慢性リンパ性を除く)、非ホジキンリンパ腫、脳腫瘍などがあるが、統計的に有意ではなかった。特定のがんによる死亡率は増加し、非ホジキンリンパ腫はコホート全体で死亡率の増加を示した(SMR=1.26, 95%CI:1.05-1.50)。非ホジキンリンパ腫の10mSv当たりのERRは0.0199であった。
(8) National Institute for Occupational Safety and Health,2005の疫学研究が完結した結果報告(Schubauer-Berigan MK ら,2005)8)
非ホジキンリンパ腫による死亡率は、一般人口に比較し増加した(SMR=1.26、95%CI:1.05、1.50)。死亡率は、1mSv未満しか受けていない作業従事者に比較して、100mSv以上の集積線量を有している作業従事者において高かった。10mSv当たりのERRは、非ホジキンリンパ腫に関して0.020(95%CIの上限:0.100)、慢性リンパ性を除く白血病の10mSv当たりのERRは0.054(95%CI:-0.0037、0.34)、及び多発性骨髄腫の10mSv当たりのERRは0.064(95%CI:-0.02、0.35)であった。
(イ) オーストラリアの作業者を対象にした疫学調査
オーストラリアの694人の職業被ばく(放射線、紫外線、通信用電波、低周波)における、非ホジキンリンパ腫の発生を、population-based case control studyにより検討した報告(Karipidis KK ら,2007)9)
調査対象は2000年1月1日から2001年8月31日の間に初めて診断された非ホジキンリンパ腫症例は694例であった。オーストラリア国内の2つの地域から年齢、性、居住地域をマッチさせた住民694例を対照群として比較した。放射線と低周波被ばくでは、非ホジキンリンパ腫と有意な相関(OR、p for trend)が認められなかった。紫外線とは弱い相関が観察された。
(ウ) 日本の原子力発電施設がある自治体の住民を対象とした疫学調査
(1) 日本で原子力施設を持つ自治体20と持たない自治体80を選び住民のがん死亡率を比較検討した報告(Yoshimoto Y ら,2004)10)
分析期間は1972-1997年であり、悪性リンパ腫で2,728人が死亡、原子力施設のある自治体は490人、そうでない自治体は2,238人だった。総数、性別、死亡時の年齢による比較でも差はなかった。全悪性リンパ腫や非ホジキンリンパ腫(原子力施設のある470人、そうでない自治体2,114人)に関してもERRに差はなかった。
(2) またYoshimoto Y ら,2004の研究には、非常に多くの症例があり地理的にもマッチしていることから、その妥当性を支持する論説(Laurier D,2004)11)がある。
(エ) 英国の核燃料公社(BNFL)のスプリングフィールド事業所における労働者調査
1946年から1995年の間に、英国の核燃料公社(BNFL)のスプリングフィールド事業所で、かつて雇用された労働者のコホート調査(McGeoghegan D ら, 2000)12)で、ウラン工場における労働者のがん罹患率と死亡率を調査した。主な作業はウラン燃料組立て及び六フッ化ウラン生産であった。対象は19,454人の現在・元社員(うち13,960人は放射線労働者)である。フォローアップ期間の平均値は24.6年だった。1995年の終わりまでには4,832人が死亡したが、このうち3,476人が放射線労働者で1,356人は非放射線労働者であった。全死亡のSMRは、放射線労働者及び非放射線労働者に対してそれぞれ84と98だった。全がんについては、SMRはそれぞれ86と96だった。ホジキン病の罹患率・死亡率と累積外部被ばく線量は有意であった。非ホジキンリンパ腫については、罹患率とは強い相関関係があったが(p<0.0002)、死亡率についてはなかった。
(オ) 多国にまたがる労働者の調査
(1) 15か国の原子力施設労働者における低線量の放射線によるがんリスクを検証した調査報告(Cardis E ら,2007)13)
外部被ばく線量をモニターした407,391人の原子力施設労働者、5.2百万人年を追跡した。全死亡と線量に統計学的に有意差がある。全死亡(18,993人)のERRは0.42 /Sv, 90% CI 0.07, 0.79であった。これは主にがん死亡(5,233人)の線量による増加が関与(ERR/Sv 0.97, 90% CI 0.28, 1.77)している。31 種類のがんでは、肺がんで有意な増加が認められた(ERR/Sv 1.86, 90% CI 0.49, 3.63; 1,457死亡)。多発性骨髄腫は borderline significant (p=0.06、ERR/Sv 6.15, 90% CI <0, 20.6; 83死亡)であった。非ホジキンリンパ腫では有意な増加は認められなかった(Trends test; p=0.26, ERR/Sv= 0.44,RR/100mSv=1.04)。
(2) 米国、英国、カナダ3か国の原子力労働者における調査
米国、英国、カナダの原子力施設労働者におけるがんによる死亡率と低線量率外部被ばく線量に関するコホート調査報告(Cardis E ら,1995)14)
対象は6か月以上雇用された95,673人(男85.4%)で、2,124,526人年の追跡が行われた。15,825人が死亡し、 そのうち3,976人ががんによるものであった。慢性リンパ性を除く白血病(p=0.046)、多発性骨髄腫(p=0.037)で有意な増加が認められた。非ホジキンリンパ腫に関して、有意な増加は認められなかった(Trends: -0.25、片側 p=0.600)。
イ 父親が施設労働者として被ばくした子供の調査例
(ア) West Cumbria地域で母親の妊娠以前に父親が職業被ばくをし、その両親から生まれた24歳以下の子供で、1968-1985年に白血病もしくは非ホジキンリンパ腫と診断された41例について、父親の被ばくと有意な相関関係があった(Wakeford R ら,1996)15)。特に非ホジキンリンパ腫は、Seascale地域の0-14歳で認められた。
(イ) 英国の再処理施設周辺の小児白血病と非ホジキンリンパ腫の発生率に関する総説(Kinlen LJ,1993)16)
原子力施設周辺の子供の白血病と非ホジキンリンパ腫が、母親の妊娠以前に父親が放射線被ばくをしたこと(paternal preconceptional irradiation (PPI)) と関係あるとする仮説を否定した。人工的な因子が関与としている。
(ウ) 英国セラフィールドの小児の白血病と非ホジキンリンパ腫に関するケースコントロール調査報告(Gardner MJ ら,1990)17)
1950-1985年に診断された25歳以下の白血病52例、非ホジキンリンパ腫22例、ホジキン病23例と、性別と年齢がほぼ一致したコントロール対照群1,001例との比較調査で、分析方法の適切さを調べた。調査項目、妊娠中の母親の放射線診断や感染症の有無、生まれたときの施設からの地理的分布、施設から放出された放射性核種による被ばくを助長する趣向や海産物の摂取、親の職業や職業被ばく歴などはすべて適切であった。
(エ) 上記(ウ)の論文の調査報告(Gardner MJ ら,1990)18)
白血病と非ホジキンリンパ腫に関するRRは、セラフィールドの近郊で生まれた子供、そして父親が施設で雇われていた、特に妊娠以前に高い被ばく歴がある父親の子供で高かった。対照群に対する相対危険度は、セラフィールドから5 km以上離れたところで生まれた子供で0.17(95%CI 0.05〜0.53)、妊娠したときにセラフィールドで雇用されていた父親の子供で2.44(1.04〜5.71)、100mSv以上の放射線被ばくをした父親の子供で6.42(1.57〜26.3)であった。白血病の高い発生率、特に非ホジキンリンパ腫のセラフィールドの近くの子供のリスクは、妊娠の前にプラントで職業上放射線に全身被ばくした父の外部線量に関係している、としている。
(オ) イギリスのWest BerkshireとNorth Hampshireで親が原子力施設で働く労働者の子供の白血病と非ホジキンリンパ腫に関するケースコントロール調査報告(Roman E ら,1993)19)
1972-1989年で、父親が原子力施設で働き、放射線被ばくをした労働者の子供では、5歳までに白血病を発症する可能性がある。
(カ) 英国Dounreay原子力施設の周囲の小児期白血病及び非ホジキンリンパ腫について、父親が原子力施設で働いていることとの関連を検討したケースコントロール調査報告(Urquhart JD ら,1991)20)
1970-1986年に診断された15歳未満の小児白血病及び非ホジキンリンパ腫の14例と、性別や年齢などが一致した55の対照を比較した。検討した因子は、出生前の腹部のX線検査、服用した薬及び妊娠中のウイルス感染、父親の職業、放射線被ばく線量、非電離放射線被ばく歴などであった。相対リスクは、出生前のレントゲン写真、親の社会階級、妊娠以前の被ばく線量等とは関連がなかった。父の職業あるいは外部被ばくは、白血病及び非ホジキンリンパ腫の発生率について説明ができなかった。白血病及び非ホジキンリンパ腫の発生は、さまざまな要因が組み合わさって生じた可能性が示唆された。
(2) 原爆被ばく
原爆被爆者の疫学調査結果によると、原爆放射線被ばくとホジキン病との間には有意な関係が認められていない。
非ホジキンリンパ腫と放射線被ばくとの関係に関する疫学調査の結果は一致していない。
初期の疫学調査では、100rad(ラド、1Gy)以上の被爆者(長崎の被爆者はこれよりも高いとされている)では、悪性リンパ腫の増加が認められるという報告が多いが、DS86(Dosimetry System 1986)を用いて評価された1950年〜1985年を対象にしたLSS調査(死亡率)(Shimizu Y ら,1991)21)22)では、悪性リンパ腫の有意な増加は認められていない。しかし、1950年〜1987年を対象にしたLSS調査(発生率)(Preston DL ら,1994)23)では、男性の被爆者の非ホジキンリンパ腫の発生率の増加が認められている。
DS86を用いたLSSの1950〜1985年の結果及び1950〜1987年の結果を下表にまとめて示す。
| |||||||||||||||||||||
注)linear……直線 quadratic……二次曲線 | |||||||||||||||||||||
ERR/Sv = 1シーベルト当たりの過剰相対リスク | |||||||||||||||||||||
(単位:被ばく線量当たりのリスク増加率) | |||||||||||||||||||||
EAR/104PYSv = 104人年シーベルト当たりの過剰絶対リスク | |||||||||||||||||||||
(単位:被ばく線量当たりの増加数の絶対値) | |||||||||||||||||||||
AR/0.01 Gy(%) = 0.01グレイ当たりの寄与リスク | |||||||||||||||||||||
(単位:%) |
また、白血病については、ERR/Svは3.9、EAR/104PYSvは2.7、AR/0.01 Gy(%)は50%であると報告されている。
(3) 医療被ばく
医療被ばくと悪性リンパ腫との関連について検討した疫学調査としては以下のものがある。
放射線治療患者(原疾患)
・子宮頸部がんの患者
・子宮内膜がん患者
・ホジキンリンパ腫患者
・強直性脊椎炎患者
・婦人科良性疾患患者
・頭部白癬症患者
放射線(X線)診断
・頻回の透視を受けた結核患者(人工気胸術のため)
・一般患者
・出生前の放射線診断
放射性物質による診断・治療
・トロトラスト注入患者
・I-131投与患者
これらの疫学調査の中で、放射線被ばくによる非ホジキンリンパ腫の誘発の可能性を示唆している疫学調査は、(1)ホジキンリンパ腫に対して放射線治療が実施された患者、(2)強直性脊椎炎の治療患者、(3)トロトラスト注入患者、及び(4)子宮頸がんに対する放射線治療患者の4つの対象を追跡した結果である。
ア ホジキンリンパ腫に対して放射線治療が実施された患者(Lin HM ら,2005)24)
ホジキンリンパ腫に対して放射線治療が実施された場合に、二次がんとしての非ホジキンリンパ腫のリスクが5〜20倍増加することが示唆されている。しかし、多くの症例では、放射線治療と化学療法とが併用して行われていることに留意する必要がある。
イ 強直性脊椎炎の治療患者(Darby SC ら,1987)25)
X線治療が実施された強直性脊椎炎の患者(14,106人)を対象にした疫学調査の結果、ホジキンリンパ腫に関しては、期待数3.80例に対して5例の観察数があり、O/Eは、1.32であるが統計的に有意な増加ではない。これに対してその他のリンパ腫(ICD-7 200, 202, 205)に関しては期待数7.14例に対して16人が観察されており、O/Eは、2.24で統計的に有意な増加(p<0.01)が認められている。照射後25年以降のO/Eは、1.13に減少している。リンパ組織の線量評価は行われていないが、食道、骨の線量はそれぞれ5Gy、3Gy程度である。
ウ トロトラスト注入患者を対象にした疫学調査(Visfeldt J ら,1995)26)
トロトラスト注入患者に対する疫学調査は、ドイツやデンマークで実施されている。ドイツの調査(2,326人)では、期待値4例に対して15例の非ホジキンリンパ腫の患者が観察されており、デンマークの調査(1,003人)では、期待値1.5例に対して4例の非ホジキンリンパ腫が観察されている。しかし、いずれの疫学調査も統計的に有意ではない。
エ 子宮頸がんに対する放射線治療(Boice JD Jr ら,1985)27)
子宮頸がんの放射線治療患者のプールデータ(182,040人)の分析の結果、非ホジキンリンパ腫の期待数55例に対して、68例の症例が観察されており、放射線被ばくと非ホジキンリンパ腫との間に弱い関係があることが示唆されている。
いずれの疫学調査も、リンパ節等の線量評価は実施されていないが、トロトラスト注入患者を除き、治療のために放射線照射が行われているので、Gyオーダーの線量が照射されている。また、いずれの疫学調査も非ホジキンリンパ腫の症例数(プールデータを除く)が限られており、統計的な検出力が十分ではない。
ホジキンリンパ腫の治療後の患者に非ホジキンリンパ腫の増加がみられているが、併用された化学療法剤による免疫抑制、免疫機能の変化が増加に関係している可能性が高いことが指摘されている。強直性脊椎炎患者に対する放射線治療後の悪性リンパ腫の発生も免疫機能の抑制が増加に関係している可能性が指摘されている。
(4) 原子力施設、核実験場周辺などの公衆被ばく
原子力施設、核実験等の周辺住民を対象にした疫学調査
ア スペインの住民調査(Lorez-Abente G ら,1999)28)
1975-1993年の間の7つの原子力発電所と5つの核燃料施設周辺の造血器腫瘍による死亡を調査した。30 km以内の489の町と対照として50-100 kmの人口、地理の他収入など社会的な因子を考慮し477の町を選んだ。本文では非ホジキンリンパ腫の記載はないが、RR等差は認められなかった。
イ チェルノブイリ事故後のベラルーシにおける造血器悪性腫瘍の調査(Ivanov E ら,1996)29)
1979-1985年と1986-1992年を比較したところ、非ホジキンリンパ腫(189例)を含めて急性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病に、子供では有意な増加はみられなかった。しかしながら大人では、1979-1985年(1,533例)と1986-1992年(2,444例)を比較すると後者の発症率が有意に(p<0.001)高かった。ホジキン病以外はすべて高かった。しかしながらCs137の汚染量とは相関がなかった。
ウ 1968-1991年の間、英国のDounreay原子力発電所から25 km以内の地域の子供(0-14歳)と若者(15-24歳)の白血病と非ホジキンリンパ腫の症例を、スコットランドの国民データと比較した報告(Black RJ ら,1994)30)
1968-1991年では、期待値が5.2例であるのに対し12例が発症し(p=0.007)、有意に高いことが示された。この12例に非ホジキンリンパ腫は2例しか含まれない。1985-1991年では4例が発症(非ホジキンリンパ腫は2例)したが、p=0.059と有意差はなかった。
エ 1963-1990年の英国セラフィールド施設周辺におけるがん発症率(incidence)、特に子供の急性リンパ性白血病と非ホジキンリンパ腫の調査報告(Draper GJ ら,1993)31)
1984-1990年では、0-24歳の全がん発症率が平均より高く、特に4例のうち2例が非ホジキンリンパ腫によるものであった。1963-1983 年でもリンパ性白血病と非ホジキンリンパ腫の発症率が高かった。
オ 米国TMI(スリーマイル島)事故(1979)以前と以後、1974年から1984年まで1,776例の骨髄検査から白血病、リンパ腫、骨髄腫の発生率を調べた報告(Berkheiser SW,1986)32)
近郊の病院(Polyclinic medical center, 非ホジキンリンパ腫は297例)と対照の病院(York hospital、非ホジキンリンパ腫は383例)が選ばれた。3つの疾患とも差はなかった。
カ イングランドとウェールズの原子力施設近郊の小児白血病と非ホジキンリンパ腫の分布を調べた報告(Bithell JF ら,1994)33)
23 km以内の23施設からと、対照として6か所が選ばれた。また小児は15歳未満で、1966-1987年までとした。小児白血病と非ホジキンリンパ腫とも近郊地域でのリスク(O/E)の増加を示すものはなかった。しかしながらセラフィールド(p=0.00002)とBurghfield(p=0.031)ではlinear risk score testでは有意であった。一方対照地域でも一か所はp=0.020と有意であった。
キ 1959-1980年にイングランドとウェールズ原子力施設の近郊では、がんによる死亡率は増加していなかった。施設がある自治体での非ホジキンリンパ腫のstandardized relative risk は対照自治体に比べてむしろ低かった(p=0.034)(Forman D ら,1987)34)。
ク チェルノブイリ事故後の、ヨーロッパの小児白血病とリンパ腫の発生率を調べた報告(Parkin DM ら,1992)35)
0-14歳の小児の白血病の発生率が、1980-1988の間、ヨーロッパ20か国で検討された。
1987-1988年(事故後8-32か月)の白血病のリスク(O/E)を、30の地域で受けた放射線の平均的な線量と比べた。発生率は被ばくとは関係なかった。
II 疫学調査の結論
疫学調査結果をまとめると、非ホジキンリンパ腫と放射線被ばくとの関連は、以下のように結論づけることができる。
1 放射線被ばくと非ホジキンリンパ腫との関連を示唆した論文としては、
原爆被爆者を対象にした疫学調査(LSS(Life Span Study))
放射線診療を受けた患者を対象にした疫学調査
放射線作業者を対象にした疫学調査
などがある。一方、原爆被ばく、医療被ばく、職業被ばくに関する疫学調査結果においても放射線被ばくと非ホジキンリンパ腫の発生との有意な関連はないとする論文も存在し(Cardis E ら,200713)、Cardis E ら,199514) ほか)、疫学調査の結果は一致していない。
非ホジキンリンパ腫と放射線の関連を示唆した論文でも、放射線被ばくによる白血病のリスクに比べると非ホジキンリンパ腫のリスクは小さいとされている。
2 非ホジキンリンパ腫と放射線被ばくとの線量反応関係を明らかにした疫学調査は存在しない。
3 放射線治療患者の場合のように高線量の被ばくの場合で非ホジキンリンパ腫の誘発を示唆している論文も、放射線照射の対象になった原疾患や放射線治療と併用して行われた化学療法等に伴う免疫系の機能抑制が非ホジキンリンパ腫の発生に関連している可能性があることを示唆している。
疫学調査の結果から、1 Gy以下の放射線被ばくと、非ホジキンリンパ腫の発生との関係を肯定することも、否定することも難しい。しかし、仮に、両者の間に関係があるとしても、放射線被ばくとの関係が明らかであるとされている白血病(慢性リンパ性白血病を除く)に比べると、両者の関係性が弱いことは疫学調査の結果からは明らかである。
III 悪性リンパ腫、特に非ホジキンリンパ腫と放射線被ばくとの因果関係
疫学調査の検討からは、上記のとおり結論づけられるものであるが、労災認定における因果関係の判断に当たっては、以下のとおりとすることが妥当である。
1 悪性リンパ腫、特に非ホジキンリンパ腫は、一般的にリンパ性白血病の類縁の疾患として取り扱われており、両者は類縁疾患とみなすことができる。このことを踏まえると、悪性リンパ腫、特に非ホジキンリンパ腫については、認定基準(昭和51年11月8日付け基発第810号「電離放射線に係る疾病の業務上外の認定基準について」)において白血病の認定の基準として定められている放射線被ばく線量を参考として、判断を行うことが適当と考えられる。
2 統計的有意性を認めている原爆被爆者を対象にした疫学調査(LSS)では、非ホジキンリンパ腫に関して直線性の線量反応関係を仮定した上で、全白血病と非ホジキンリンパ腫の放射線のリスクは下表のとおりであるとされている。
| ||||||||||||
(注)1 ( )は、男性のみの値である。 2 全白血病に関しては、被ばく時年齢や到達年齢がリスクに大きな影響を与えるが、時間平均値として表す。 3 資料出所:Radiation Reseach 137,S68-S97.1994 |
このリスク比率によると、(1)非ホジキンリンパ腫とリンパ性白血病は類縁疾患ということができるが、放射線によるリスクは全白血病とは異なることが認められること、(2)非ホジキンリンパ腫では男性における過剰リスクについてのみ有意差が認められており、そのリスクは全白血病のリスクの1/5〜1/6程度であることから、非ホジキンリンパ腫のリスクは、全白血病のおおむね1/5に相当するものと判断することが適当である。
なお、一定の因果関係を認めることができるとされるのは、非ホジキンリンパ腫であるので、悪性リンパ腫の労災認定に当たっては、病理診断等を総合的に、慎重に考慮した上で、判断する必要があることを付言する。
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
注)RR:相対リスク CI:信頼区間 ERR:過剰相対リスク SMR:標準化死亡比 SRR:標準化率比 ER:過剰リスク 104PYSv:104人年シーベルト トロトラスト ドイツの会社が開発した血管造影剤の商品名、二酸化トリウムのコロイド製剤。 |
表2 ICD10によるリンパ組織の悪性新生物の分類(国際疾病分類第10回修正)
C81 ホジキン病
C81.0リンパ球優勢型
C81.1結節硬化型
C81.2混合細胞型
C81.3リンパ球減少型
C81.7その他のホジキン病
C81.9ホジキン病、詳細不明
C82 濾泡性(結節性)非ホジキンリンパ腫
C82.0中細胞型、濾泡性
C82.1中細胞及び大細胞混合型、濾泡性
C82.2大細胞型、濾泡性
C82.7濾泡性非ホジキンリンパ腫のその他の型
C82.9濾泡性非ホジキンリンパ腫、詳細不明
C83 びまん性非ホジキンリンパ腫
C83.0小細胞型(びまん性)
C83.1小切れ込み核細胞型(びまん性)
C83.2小細胞及び大細胞混合型(びまん性)
C83.3大細胞型(びまん性)
C83.4免疫芽球型(びまん性)
C83.5リンパ芽球型(びまん性)
C83.6未分化型(びまん性)
C83.7バーキット腫瘍
C83.8びまん性非ホジキンリンパ腫のその他の型
C83.9びまん性非ホジキンリンパ腫、詳細不明
C84 末梢性及び皮膚T細胞リンパ腫
C84.0菌状息肉症
C84.1セザリー病
C84.2 Tゾーンリンパ腫
C84.3リンパ類上皮性リンパ腫
C84.4末梢性T細胞リンパ腫
C84.5その他及び詳細不明のT細胞リンパ腫
C85 非ホジキンリンパ腫のその他及び詳細不明の型
C85.0リンパ肉腫
C85.1 B細胞リンパ腫、詳細不明
C85.7非ホジキンリンパ腫のその他の明示された型
C85.9非ホジキンリンパ腫、型不明
C96 リンパ組織、造血組織及び関連組織のその他及び詳細不明の悪性新生物
C96.0レッテラー・ジーベ病
C96.1悪性組織球症
C96.2悪性肥満細胞腫
C96.3真性組織球性リンパ腫
C96.7リンパ組織、造血組織及び関連組織のその他の明示された悪性新生物
C96.9リンパ組織、造血組織及び関連組織の悪性新生物、詳細不明
表3 悪性リンパ腫の新WHO分類(2001)*
(1) B細胞腫瘍
1) 前駆B細胞腫瘍
前駆Bリンパ芽球白血病/リンパ腫
2) 成熟B細胞腫瘍
慢性リンパ性白血病/小リンパ球リンパ腫
B細胞前リンパ球白血病
リンパ形質細胞リンパ腫
脾辺縁帯B細胞リンパ腫
ヘヤリー細胞白血病
形質細胞腫瘍
骨孤立性形質細胞腫
骨外性形質細胞腫
MALT関連節外性辺縁帯B細胞性リンパ腫
節性辺縁帯B細胞リンパ腫
濾胞性リンパ腫
マントル細胞リンパ腫
びまん性大B細胞リンパ腫
縦隔(胸腺)大B細胞リンパ腫
血管内大B細胞リンパ腫
原発性滲出液リンパ腫
バーキットリンパ腫/白血病
(2) T細胞およびNK細胞腫瘍
1) 前駆T細胞腫瘍
前駆Tリンパ芽球白血病/リンパ腫
芽球NK細胞リンパ腫
2) 成熟T細胞およびNK細胞腫瘍
T細胞前リンパ球白血病
T細胞大顆粒リンパ球白血病
攻撃性NK細胞白血病
成人T細胞白血病/リンパ腫
節外性NK/T細胞リンパ腫/鼻型
腸症型T細胞リンパ腫
肝脾T細胞リンパ腫
皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫
菌状息肉腫
セザリー症候群
原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫
末梢T細胞リンパ腫、非特異
血管免疫芽球T細胞リンパ腫
未分化大細胞リンパ腫
(3) ホジキンリンパ腫
結節性リンパ球優勢ホジキンリンパ腫
古典型ホジキンリンパ腫
結節硬化型ホジキンリンパ腫
リンパ球豊富古典型ホジキンリンパ腫
混合細胞型ホジキンリンパ腫
リンパ球減少型ホジキンリンパ腫
*WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues、WHO Classification of Tumours, Volume 3 (IARC WHO Classification of Tumours, No 3) 2001年 Jaffe, E.S., Harris. N.L., Stein, H., Vardiman, J.W編集、IARC Press、Lyon CEDEX , France.
(疾患名の邦訳の一部は大島孝一:悪性リンパ腫の基礎1.分類.日内会誌97:1515-1523,2008によった。)
悪性リンパ腫に関する疫学調査の文献一覧
1. Matanoski GM et al. : The current mortality rates of radiologists and other physician specialists: specific causes of death. Am J Epidemiol 101, 199-210 (1975)
2. Linet MS et al. : Incidence of haematopoietic malignancies in US radiologic technologists. Occup Environ Med 62, 861-867 (2005)
3. Archer VE et al. : Cancer mortality among uranium mill workers. J Occup Med 15, 11-14 (1973)
4. Rits B et al. : Effects of Exposure to External Ionizing Radiation on Cancer Mortality in Nuclear Workers Monitored for Radiation at Rocketdyne/Atomics International. American Jarnal of Industrial Medicine, 21-31 (1999)
5. Howe GR et al. : Analysis of the Mortality Experience amongst U.S Nuclear Power Industry Workers after Chronic Low-Dose Exposure to Ionizing Radiation. Rad.Res 162, 515-526 (2004)
6. Rinsky RA et al. : Cancer mortality at a Naval Nuclear Shipyard. Lancet, 231-235 (1981)
7. National Institute for Occupational Safety and Health : An Epidemiologic Study of Mortality and Radiation-Related Risk of Cancer Among Workers at the Idaho National Engineering and Environmental Laboratory, a U.S. Department of Energy Facility. Occupational Energy Research Program Final Report, (2005)
8. Schubauer-Berigan MK et al. : Non-Hodgkin lymphoma and hematopoietic cancer mortality among Idaho National Engineering and Environmental Laboratory workers. Health Physics 89, S77-S78 (2005)
9. Karipidis KK et al. : Occupational exposure to ionizing and non-ionizing radiation and risk of non-Hodgkin lymphoma. Int Arch Occup Environ Health 80, 663-670 (2007)
10. Yoshimoto Y et al. : Research on potential radiation risks in areas with nuclear power plants in Japan : leukaemia and malignant lymphoma mortality between 1972 and 1997 in 100 selected municipalities. J Radiol Prot 24, 343-368 (2004)
11. Laurier D : Risk of leukaemia and malignant lymphoma in the vicinity of nuclear installations: the Japanese position. J Radiol Prot 24, 341-342 (2004)
12. McGeoghegan D et al. : The mortality and cancer morbidity experience of workers at Springfields uranium production facility , 1946-95. J Radiol Prot 20, 111-137 (2000)
13. Cardis E et al. : The 15-Country Collaborative Study of Cancer Risk among Radiation Workers in the Nuclear Industry : Estimates of Radiation−Related Cancer Risk. Radiation Res 167, 396-416 (2007)
14. Cardis E et al. : Effects of Low Doses and Low Dose Rates of External Ionizing Radiation : Cancer Mortality among Nuclear Industry Workers in Three Countries. Radiation Res 142, 117-132 (1995)
15. Wakeford R et al. : Leukaemia and non-Hodgkin's lymphoma in young persons resident in small areas of West Cumbria in relation to paternal preconceptional irradiation. Br J Cancer 73, 672-679 (1996)
16. Kinlen LJ : Childhood leukaemia and non-Hodgkins lymphoma in young people living close to nuclear reprocessing sites. Biomed Pharmacother 47, 429-434 (1993)
17. Gardner MJ et al. : Methods and basic data of case-control study of leukaemia and lymphoma among young people near Sellafield nuclear plant in West Cumbria. BMJ 300, 429-434 (1990)
18. Gardner MJ et al. : Results of case-control study of leukaemia and lymphoma among young people near Sellafield nuclear plant in West Cumbria. BMJ 300, 423-429 (1990)
19. Roman E et al. : Case-control study of leukaemia and non-Hodgkin's lymphoma among children aged 0-4 years living in west Berkshire and north Hampshire health districts. BMJ 306, 615-621 (1993)
20. Urquhart JD et al. : Case-control study of leukaemia and non-Hodgkin's lymphoma in children in Caithness near the Dounreay nuclear installation. BMJ 302, 687-692 (1991)
21. Shimizu Y et al. : Risk of cancer among atomic bomb survivors. J Radiat Res 32 (Suppl 2), 54-63 (1991)
22. Shimizu Y et al. : Mortality among atomic bomb survivors. J Radiat Res 32 (Suppl), 212-230 (1991)
23. Preston DL et al. : Cancer incidence in atomic bomb survivors. Part III. Leukemia, lymphoma and multiple myeloma, 1950-1987. Radiat Res 137, S68-S97 (1994)
24. Lin HM et al. : Second malignancy after treatment of pediatric Hodgkin disease. J Pediatr Hematol Oncol 27, 28-36 (2005)
25. Darby SC et al. : Long Term Mortality after a Single Treatment Course with X-rays in patients Treated for Ankylosing Spondylitis. B.J.Cancer 55, 179-190 (1987)
26. Visfeldt J et al. : Pathoanatomical aspects of malignant haematological disorders among Danish patients exposed to thorium dioxide. APMIS 103, 29-36 (1995)
27. Boice JD Jr et al. : Second cancers following radiation treatment for cervical cancer. An international collaboration among cancer registries. J Natl Cancer Inst 74, 955-975 (1985)
28. Lopez-Abente G et al. : Leukemia, lymphomas, and myeloma mortality in the vicinity of nuclear power plants and nuclear fuel facilities in Spain. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 8, 925-934 (1999)
29. Ivanov E et al. : Hematological malignancies in the Republic of Belarus after the Chernobyl accident. Bull Soc Sci Med, 41-45 (1996)
30. Black RJ et al. : Leukaemia and non-Hodgkin's lymphoma: incidence in children and young adults resident in the Dounreay area of Caithness, Scotland in 1968-91. J Epidemiol Community Health 48, 232-236 (1994)
31. Draper GJ et al. : Cancer in Cumbria and in the vicinity of the Sellafield nuclear installation, 1963-90. BMJ 306, 89-94 (1993)
32. Berkheiser SW : Review of leukemia, lymphoma, and myeloma before and after the TMI accident. Pennsylvania Med, 50-52 (1986)
33. Bithell JF et al. : Distribution of childhood leukaemias and non-Hodgkin's lymphomas near nuclear installations in England and Wales. BMJ 309, 501-505 (1994)
34. Forman D et al : Cancer near nuclear installations. Nature 329, 499-505 (1987)
35. Parkin DM et al : Childhood leukaemia following the Chernobyl accident: the European Childhood Leukaemia-Lymphoma Incidence Study (ECLIS). Eur J Cancer 29A, 87-95 (1993)