厚生労働省


第11回ILO懇談会議事要旨

1.開催日時:

平成20年8月29日(金)10:00〜

2.場所:

厚生労働省共用第9会議室(18階)

3.出席者:(敬称略)

(1)労働者側
日本労働組合総連合会国際代表

中嶋  滋

日本労働組合総連合会総合労働局長

長谷川  裕子

日本労働組合総連合会総合国際局長

生澤  千裕

(2)使用者側
日本経団連国際協力センター参与

鈴木  俊男

日本経済団体連合会労政第二本部副本部長

遠藤  寿行

日本経済団体連合会労政第二本部国際労働グループ長

高澤  滝夫

(松井日本経団連国際労働次席代表の代理)

(3)政府側
厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当)

村木  太郎

厚生労働省大臣官房国際課長

勝田  智明

厚生労働省大臣官房国際課国際企画室長

板谷  英彦

4.議題

○報告案件

議題1 第303回理事会に向けたわが国の対応

1)政府からの報告

・第97回ILO総会について

2)意見交換

○協議案件

議題2 2008年 年次報告について

1)政府からの説明

2)意見交換

議題3 第98回ILO総会議題「HIV/エイズと仕事の世界」について

1)政府からの説明

2)意見交換

5.議事要旨

議題1:第303回理事会に向けたわが国の対応

村木大臣官房総括審議官(国際担当)からの挨拶、勝田国際課長からの出席者紹介に引き続き、政府側より資料1に基づき第97回ILO総会の概要説明がなされた。

(公正なグローバル化の社会正義に関するILO宣言について)

[労]

今回の総会で、「公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言」が採択された。これは、ILOの機能強化、加盟国政労使の機能強化を行い、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進・促進していくための宣言で、日本国内だけではなく、アジアで、世界で、いかにディーセント・ワークを促進していくかという観点が重要である。

依然として、国内で派遣労働者を中心とした非正規労働者等の問題など、ディーセント・ワークに逆行する事態があり、また日系企業が、海外で生産活動をする際に様々な問題が生じている。それを解決するためには、ディーセント・ワークの促進が必要であり、政労使の立場は違うが、改善の方向に持って行くために意見を寄せ合わなければならない。

また、「過労死」が、日本発ということで、フランスや韓国のマスコミから取材される。国内でのディーセント・ワークの具体例として、ILOの労働時間関係の条約を批准して頂きたい。

[使]

わが国でディーセント・ワークを推進していくにあたっては、わが国政労使が、わが国の文脈において、その内容や進め方についてよく議論するのは勿論であるが、各国の事例も参考にするという姿勢を持つことが必要である。

海外の日系企業においては、日本人駐在員・派遣者などが、労使関係や企業の社会的責任について熟知した上で派遣されているとは限らない。海外での問題を防ぐには、まず派遣される日本人社員に対して適切な教育研修を施すことが大切である。

[政]

ディーセント・ワークの実現に向けて、日本の政労使が協力していくことは、国内的にも、国際的にも重要である。ディーセント・ワークは多義的であり、対象も幅広い。国内的にどこに重点を置いていくかは政労使三者で議論し、整理する必要があるが、ワーク・ライフ・バランスの推進は、一つのアイデアだと考える。

(条約勧告適用委員会について)

[労]

本年の条約勧告適用委員会のジェネラル・サーベイで取り上げられたILO第94号条約(労働条項(公契約))について、委員会の議論の中で重要なことと理解され、ILOとしても活動を強化している。連合としても重要なことと認識しており、日本政府としても条約批准及び政労使三者の研究会設置なども検討してもらいたい。

委員会で特別審議されたミャンマー問題については、状況が改善されていない中で、わが国としても対策を考えていく必要がある。

[政] ミャンマー問題については、外務省と良く相談しながら進めていきたい。

(戦略的政策枠組み(Strategic Policy Frameworkについて)

[労]

ILOの予算の組み方が、非常に曖昧である。過去の実績を基にしており、例えば達成率が120%であれば、それが次期予算でも認められる。来年3月のILO理事会に向けて、どういった議論を行っていくかを考えることが大事である。予算を決定するためには、ILO事務局が何をするかを適切に決めておかなければならない。

One-UNとの関係については、ILOとUNDPとの共同プロジェクトがあるが、UNDPは政府のみで、労使は口を挟めない構造となっている。この共同プロジェクトの中で、労使の役割の低減化を防ぐため、三者構成主義の重要性を強調していく必要がある。

[使]

技術協力等、ILOのプロジェクトは、事業内容が実行の過程で修正されたものが数多くある。ILO事務局は、最初に承認された事業の原型を変えないよう努力することが求められる。もし変更の必要が生じた場合は、説明責任の観点から、政労使三者が納得できるようにすべきである。

[政]

ILOの現状として、事業の評価だけとなっており、評価した結果を次の計画予算(Programme&Budget)につなげることが重要である。また、財政面の規律を保っていくこと、ILOのマンデートの促進という視点も必要である。わが国を含めたILO理事会メンバーが出来ることは、数値目標を詳細に決めるために、前々回の決算の詳細な研究、未達成事業の原因究明を実施し、理事会で予算にプライオリティーを付ける作業を行うということである。

また、事業予算に加えて、ILOの情報関係・建物関係予算についても、透明性と規律を高めていかなければいけない。

議題2:2008年年次報告について

政府側より、2008年の日本政府年次報告案について資料2−1から2−10を用いて説明がなされた後、意見交換が行われた。

(27号条約にかかわるやりとり)

[労]

国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドラインが出た後も、事故が発生しており、対応として不十分。ガイドラインに強制力をもたせるべき。

(29号条約及び181号条約にかかわるやりとり)

[労]

派遣元と派遣先の責任分担は、派遣先の責任が軽く、労働者保護が十分にされない。派遣先でも団体交渉に応じる義務を負わせるべき。

(81号条約にかかわるやりとり)

[労]

日本では非正規雇用に女性が多く、セクハラも多い。問題が表にでにくいため、女性監督官の拡充が必要。監督署の統廃合による、監督制度の実効性に疑問がある。

(121号条約及び142号条約にかかわるやりとり)

[労]

労災病院については、統廃合により減少しているが、治療や研究が優れており、統廃合を進めるべきではない。独立行政法人雇用・能力開発機構の統廃合で、労働者の能力開発が担保されるのか、懸念している。

議題3:第98回ILO総会議題「HIV/エイズと仕事の世界」について

政府側より資料3に基づき、「HIV/エイズと仕事の世界」に関する質問票について概要説明がなされた。

[労]

日系企業がアフリカに進出した際、労働力確保がHIV/エイズの影響により非常に深刻なものとなっている。質問票の回答作成にあたっては、日本をベースとした回答も必要であるが、日系企業がアフリカで活動した際に、新しく出来る国際労働基準がどのような役割を果たすかを考えるべきである。地域ベースでセミナーなどを開催したとしても、男性は参加しない。そのため、職場をベースとしたセミナーで、男性が参加するようにすれば、男性の意識改善も期待できるため、職場における対策が重要である。

[使]

既に策定されている「HIV/エイズと働く世界に関するILO行動規範」を尊重すべきである。また、HIV/エイズについては、職場の問題としても認識出来るが、それ以外の問題でもあり得るし、感染予防や学校教育段階での取り組みについても回答案に追記した方が良い。

[政]

今回の質問票については、労働安全衛生の観点に加え、一般的な保健対策も含めて回答案を作成し、前向きな回答としている。

-了-

照会先:

厚生労働省大臣官房国際課国際労働機関第二係

03-5253-1111(内線7310)

03-3595-2402


トップへ