厚生労働省


予防接種後副反応報告制度について

予防接種後副反応報告は、医師が予防接種後の健康被害を診断した場合又は市町村が予防接種を受けた者若しくはその保護者等から健康被害の報告を受けた場合に、「予防接種実施要領」(平成17年1月27日健発第0127005号厚生労働省健康局長通知)及び「インフルエンザ予防接種実施要領」(平成17年6月16日健発第0616002号厚生労働省健康局長通知)に基づき厚生労働省へ報告するものである。

当該報告制度は、予防接種後の被接種者の健康状況の変化についての情報を収集し広く国民に提供すること及び今後の予防接種行政の推進に資すること等を目的として、平成6年の予防接種法改正に伴い実施されてきたものであり、本集計報告書は、厚生労働省に報告された予防接種後副反応報告書を、報告基準にある臨床症状ごとに単純集計し、まとめたものである。

当該報告制度の留意点は以下のとおりである。

(1)  本報告は、予防接種法に基づく定期接種として実施された予防接種を対象としており、いわゆる任意の予防接種は報告・集計の対象とはなっていない。

(2)  報告するかどうかの判断は報告者が行うため、各都道府県の接種対象者人口などを考慮しても報告数に県ごとのばらつきが大きく、副反応数の発生率などについてはこのデータからは分析できない。

ワクチン別の副反応発生頻度については本報告ではなく、平成8年度より実施している予防接種後健康状況調査事業の報告書を参照していただきたい。

(3)  本報告は、予防接種との因果関係の有無に関係なく予防接種後に健康状況の変化をきたした症例を集計したものであり、これらの症例の中には、予防接種によって引き起こされた反応だけでなく、予防接種との関連性が考えられない偶発事象等も含まれている。 集計に当たっては、予防接種との因果関係がないと思われるもの、もしくは、報告基準の範囲外の報告等についても排除せず、単純計算してまとめている。

(4)  本報告は、予防接種健康被害救済制度と直接結びつくものではない。救済措置の給付を申請する場合には、別途、各市町村でまとめた書類の提出が必要である。


予防接種後副反応報告書集計報告

I 総 論

本集計報告書は、平成17年4月1日から平成18年3月31日までの間に厚生労働省に報告された予防接種後副反応報告を報告基準にある臨床症状ごとに単純集計し、まとめたものである。

1 対象とされたワクチンは、定期接種として実施されたジフテリア・百日せき・破傷風混合(以下「DPT」という)、ジフテリア・破傷風混合(以下「DT」という。)、麻しん、風しん、日本脳炎、ポリオ(急性灰白髄炎)、BCG、インフルエンザである。

2 報告書の集計は、第1報が提出された日時で行い、第2報以降で症例の転帰が明確にされたものなど変更があったものについては追記した。また、既に前回集計報告(平成16年3月31日まで)にて集計され、今回次報として報告されているものについては集計していない。

3 期間中の都道府県別、ワクチン別の報告数を第1表にまとめた。
 報告された症例数(副反応件数)はDPT(DTを含む)199件、麻しん21例(24件)、風しん12例(13件)、日本脳炎19例(24件)、ポリオ13例(13件)、BCG102例、インフルエンザ56例で報告された総数は、223例(273件)であった。
 副反応が重複しているものがあるので、解析については件数で示した。(なお、DPT(DT)ワクチンは1期4回、2期1回の計5回、日本脳炎ワクチンは1期3回、2期1回、3期1回の計5回、ポリオワクチン(経口)の2回の各々の総計である。)

4 まとめに使用した分類は報告基準を基本とした。報告の中で通常の副反応と思われるもの、明らかに予防接種との関連性が考えられないものが基準外報告となっている。

5 死亡・重篤・入院等の重症例に関しては、副反応の概要の詳細につき付記する。

(参考)ワクチン別接種者数
(平成17年4月〜平成18年3月)

ワクチン 接種者数
DPT 4,181,984
D T 741,402
麻しん 1,066,942
風しん 1,585,128
日本脳炎 950,060
ポリオ 2,043,519
BCG 994,037
インフルエンザ 12,932,115
24,495,187

II 各 論

1.DPT,DTワクチン(表2−1〜3参照)

報告されたDPT・DTワクチン接種後の副反応報告件数は199件(男122件、女77件)、82件(41.7%)が24時間以内の報告であり、1〜3日105件(53.3%)、4〜7日は1件、8〜14日は6件、15〜28日は2件、29日以降は2件であった。

年齢別に見ると0歳児が33件、1歳代が62件、2歳代が54件、3歳代は15件の報告があった。

報告された副反応でもっとも多かったのは接種局所が肘を越えた異常腫脹で103件(52.2%)であった。その他39℃以上の発熱は23件、全身の発疹7件、けいれん4件、じんましん7件、脳炎・脳症が2件、その他の神経障害が3件報告された。また今年度はITPが6件報告された。

以下に特記すべき報告例につき記載する。

1) ネフローゼ再燃

3歳2ヶ月の男児で1期追加接種後翌日、肘を超えない程度の局所反応あり、2日目に浮腫、蛋白尿を認め、ネフローゼの再発と診断された。この症例は平成16年のインフルエンザワクチン接種後も同様のエピソードがある。医学的な因果関係は不明と思われる。

2) 急性小脳失調症

イ) 1歳8ヶ月の女児で、2回目接種後4時間で歩行不能、1日で回復している。報告者はその症状より急性小脳失調症と診断。

ロ) 3歳2ヶ月の女児。1期1回目接種8日後に歩行時のふらつき等出現。8日後退院している。

何れも医学的因果関係は不明である。

3)  脳症・脳炎

ADEM   1歳11ヶ月の男児で、1期追加接種後14日目に意識障害、両下肢不全麻痺が出現。MRI検査にてADEMの診断であったが、MSの可能性も否定できないと報告されている。

急性脳炎  11ヶ月の男児。1期2回目接種後2日より発熱、翌日よりけいれん重積状態。MRIにて急性脳炎・脳症と診断された。ウイルス性感染によるものも否定できないと報告されている。

何れの例も医学的に明確な因果関係があるとはいえない。

4) ITP

イ)2歳1ヶ月の男児 接種後16日口腔内出血、血小板6千にてITPの診断。

ロ)4ヶ月男児1期1回目、接種ご当日より下肢、腹部に出血班、翌日検査にて血小板数千、骨髄検査にてITP の診断。回復している。

ハ)5ヶ月女児1期初回接種後4日目より全身に点状出血、血小板5千にてITPの診断。回復している。

ニ)1歳3ヵ月女児2日頃より下肢に紫斑、2日後ITPの診断。20日目回復退院している。

ホ)8ヶ月女児1期初回接種後2日下肢に紫斑。血小板1万6千よりITPの診断。回復している。

ヘ)4ヶ月女児1期2回接種後3日、顔面、下肢に出血班。翌日全身に。血小板4千にてITPの診断。回復している。

このように6例のITPの報告を得たのは今年度が初めてである。ワクチンロット間に共通性はない。発症年齢は低く、発生までの時間が短い例がある。ワクチンとの因果関係は不明であるが、発生頻度から考えて今後の観察が必要である。

5) アレルギー性紫斑病

イ)7歳5ヶ月男児。1期追加接種後9日目に発症。約3ヵ月で回復している。

ロ)7歳男児。1期追加接種後9日目に発症診断。約2週間入院。

2例の報告である。ロットは同一。発症年齢、発症日もほぼ同じであるが、ワクチンとの因果関係は不明で、今後の観察が必要である。

6) 死亡例

8ヶ月女児。1期3回目接種後10日目より発熱、。夜間自宅にて心肺停止に家族が気づく。剖検は行われていない。診断書は心筋炎である。 この症例のワクチンとの因果関係はないものと思われる。

DT

1例ADEMが報告されている。12歳7ヶ月の男児、2期接種後1ヵ月半より頭痛、嘔気あり。2週後発熱、麻痺出現、意識消失。MRIにてADEMの診断。軽快後退院したが再度症状出現にて再入院している。その後回復したが報告者はMSも考慮に入れ、観察中である。

この症例とワクチンとの因果関係は発症の時期から考え、ないものと思われる。

2.麻しんワクチン(表3−1〜3参照)

麻しん副反応報告総症例数は21例(男13例、女8例)であった。報告件数は24件になった。7件(29.2%)が24時間以内の副反応であり、1〜3日1件(4.2%)、4〜7日2件(8.3%)、8〜14日12件(50.0%)、15〜28日1件(4.2%)、29日以上1件(4.2%)であった。

報告症例21例はすべて1歳台であった。

副反応から回復していると報告されたのが13例(15件)であった。回復状況が不明は5例(6件)あり、回復していないと報告されたのが3例(3件)であった。

回復していない3例のうち1例は1歳男児、接種後10日目に血小板減少性紫斑病を発症、発症後5日目に報告された例である。他の2例は発熱例で、その後の経過が報告されていない例である。

[まとめ]

麻しん予防接種後副反応報告症例数は減少している。特に重篤な副反応(例えばワクチンによる麻疹脳炎後遺症)の報告はなかった。

3.風しんワクチン(表4−1〜3参照)

風しん副反応報告総症例数は12症例(男5例、女7例)であった。報告件数は13件であった。5件(38.5%)が24時間以内の副反応であり、1〜3日0件、4〜7日2件(15.4%)、8〜14日2件(15.4%)、15〜28日3件(23.1%)、29日以上1件(7.7%)であった。

年齢別では、1歳台9例、2歳台2例、4歳台1例であった。

回復していると報告されたのが8例(9件)であった。回復していないと報告されたのが、2例(2件)あった。回復していない2例のうち1例は血小板減少性紫斑病、他の1例は接種部位を中心として上腕から耳に及ぶ発疹例であった。

[まとめ]

風しん副反応報告件数は少ないが、血小板減少性紫斑病は今期2例(1例回復、1例回復していない例)が報告された。

4)日本脳炎ワクチン(第5−1〜3表参照)

報告された日本脳炎ワクチン接種後の副反応の症例数は19例(男10例、女9例)、件数は24件(男11件、女13件)であった。

最も多い副反応は基準外報告8件(33.3%)で局所反応、発熱などの全身反応、およびその他であった。次に多かったのは39℃以上の高熱7件(29.2%)で接種3日以内に多かった。次いで脳炎・脳症、その他の神経異常がそれぞれ2件ずつ、けいれんが1件あった。残りはアナフィラキシー、全身蕁麻疹、全身の発疹、その他の異常反応が1件ずつあった。

これらの副反応の発現は多くは3日以内であった。脳炎・脳症の1件は接種後3日以内、他の1件は8〜14日に発現し、けいれんは24時間以内であった。基準外報告は接種後1〜28日と広範にわたり一定の傾向はなかった。

副反応報告から重篤な副反応の記載事項をあげると、まず脳炎・脳症の1件は4歳1ヶ月の女児で、ワクチン接種2日後39℃の発熱。翌日接種医を受診、風邪と診断される。しかし接種19日後再び39℃の発熱、再び風邪と言われたが、解熱せずその4日後某大学病院に入院した。意識障害ありADEMと診断され16日間入院した。アデノウイルスが検出されたためこれがADEMの原因と言われたが、新聞で日脳ワクチンによりADEMが起こることを知り、主治医にワクチン接種をしたことを告げたところワクチンによる影響も排除できないとのことで報告された。脳波異常があるため経過を見られている。他の1件は4歳4ヶ月の男児で、接種後13日目に発熱し受診した。いったん帰宅したが、翌日、持続する高熱、けいれん、意識障害のため再受診し入院した。脳炎の診断の下35日間加療、退院後リハビリを受けた。全身蕁麻疹の1件は3歳4ヶ月の男児で、接種後より接種局所の高度の発赤から始まり、四肢、顔面、体幹へと波及。翌日一旦軽快した。翌日再び悪化したが3日目までには消失し治癒した。

その他の異常反応の1件は10歳女児で、接種後、気分不良、嘔気があった。診察時接種部位の左上腕伸側から指先までの上肢のしびれ感、触れると過剰な痛みあり、筋力低下を認めた。その後症状は軽減し、ビタミン療法のみで急速に治癒した。主治医は単純な神経障害でなく、いわゆる反射性交感神経ジストロフィーの病態を疑った。

基準外報告の内訳は発熱など4件、局所反応、その他は2件ずつあった。

年齢別にみると、副反応は2〜15歳の全接種年齢層にみられ、特に4歳群、10〜15歳群がやや目立った。また種類では39度以上の高熱と基準外報告が比較的多かった。男女差はなかった。

予後別にみると、いずれの副反応もその詳細は無記入が多かったが16件は回復、死亡例はなかった。回復していないと報告されたものは3件で、いずれも神経系副反応で、脳炎・脳症、けいれん、その他の神経障害が1件ずつ報告された。即時性全身反応例、高熱症例や神経系副反応例の多くは入院している。即時性全身反応例は後遺症を残した症例がなく予後が良かった。対照的に脳炎・脳症群など中枢神経系副反応を来した症例は後遺症を残す事もあり、予後は比較的悪かった。

尚、本報告の内「日本脳炎ワクチンの項」については平成17年5月30日の厚生労働省健康局結核感染症課から出された「日本脳炎予防接種の積極的接種勧奨差し控え」の通知の影響を受けたのか、報告数が従来のものと比較し減少していることを付記する。

5.ポリオワクチン(第5−1〜3表参照)

ポリオワクチン接種後の副反応症例として報告された数は合計13例(男6例、女7例)で、件数は同じく13件であった。

日数別に見ると13件中9件(69.2%)が24時間以内、1〜3日1件(7.7%)、4〜7日0件、および8〜14日が3件(23.0%)、であった。

各年齢別にみると0歳代6件、1歳代4件、2歳代,3歳代、4歳代各1件であった。

副反応として報告された中で、麻痺例は1件、その他の異常反応3件、基準外報告(全身反応)9件であった。

麻痺例は,免疫不全のない1歳8ヶ月女児例で、2回目のポリオ服用後13日目に左足をかばうような動きがあり、16日目に左下肢の軽度弛緩性麻痺が医師によって確認された。その後の報告では麻痺は回復したとのことである。

その他の異常反応3件は、急性下痢症、腸重積、足を突っ張る(便よりポリオウイルス3型分離、発症約1ヶ月後には回復が確認されている)の各1件である。

基準外報告(全身反応)の9件は、じんましん5件、発熱2件、喘息発作1件、一過性右下肢運動障害1件(腱反射なし、麻痺なし)であった。

上記報告例の中に死亡例はない。

6 BCGワクチン(表7−1〜3参照))

報告された今期のBCGワクチン接種後の副反応件数は102件(基準外報告3件を含む)であった。本事業の開始以来の報告件数は累計で982件となった。

今期の報告事例102件についてみると、性別では男64件、女38件と明らかに男で多く、年齢別には0歳83件(81.4%)、1歳14件(13.7%)が大半を占め、ほかに5〜9歳が1件、10〜15歳が3件、15歳以上が1件あった。

副反応の種別では、腋窩リンパ節腫大61件(59.8%)が最も多く、次いで皮膚結核様病変が23件(22.5%)、接種局所の膿瘍・潰瘍7件(6.9%)が多かった。他には骨炎1件が注目される。他にケロイド(その他の異常反応6Cその他に分類)が6件、急性の局所反応が1件みられた。

腋窩リンパ節腫脹例61件は0歳児が51件、残り10件は1歳児であった。男児が45件と全体の73.8%を占めており、性差が明らかである。その発生時期は、8日〜2カ月に38件(62.3%)が集中しており、その後3カ月までに累計54例(88.5%)が発生していた。3ヶ月を経過した後に発生した者は7件(11.5%)であった。報告時点までに「回復している」と答えた者が16件(経過の記載ある者の48.5%)、「回復していない」と答えた者が17件(同51.5%)であった。経過中に入院した者が2件あった。

皮膚結核様病変の23件は全員が0歳児でみられており、うち男で13件、女で10件みられた。発生時期は接種後1〜3日で1件、8日〜1ヵ月2件、〜2ヶ月16件、〜3ヶ月2件、さらに〜4ヵ月2件であった。報告時点までに「回復している」が9件、「回復していない」が7件であった。臨床的には3例が接種部位近傍の皮下結節(真性皮膚結核様病変)、その他がいわゆる結核疹であり、そのうち1例は接種部位周囲の発疹、19件は全身散布型の皮疹で、腺病性苔癬、壊疽性丘疹状結核疹、膿庖性丘疹、小丘疹性紅斑などと記載されている。後者のうち2例は腋窩リンパ節腫大を伴っていた。発熱を伴う者もあった。なお、全身性皮疹を示した1例は皮膚生検で抗酸菌陽性、髄液細胞数上昇、肝病変や虹彩炎があり、全身播種性BCG炎を疑われている。

接種局所の膿瘍・潰瘍の7件中、5件は0歳児、他が1歳児であった。その発生時期は8日〜1月、〜2月が1件づつ、〜3カ月が2件、3ヶ月を越えるものが2件みられた。1か月以内のものについてはコッホ現象である可能性もある。回復状況については「回復している」が5件、「未回復」が2件であった。

ケロイド形成の6件は、1件が1歳児、5〜9歳が1件、10-15歳が3件、15歳以上が1件であった。性別では男1件、女5件であった。接種後〜5ヵ月が1件、他は6か月以降であり、すべて再接種で接種後1年以上経過してから発見されたものであった。

骨炎の1件は、生後4ヵ月で接種し、接種後10か月に左第7肋骨尖端部が腫大し、同部を切開排膿し、BCGを分離したものである。

[まとめ]

今期の報告事例はリンパ節腫大が大半を占める点はいつもと同様であるが、先期に増加した皮膚結核が一層多く報告されており、注目される。法改正によって平成17年4月よりBCG接種が生後6か月までに行われることになったことと関連するものと思われる。接種局所の潰瘍・膿瘍、ケロイドがこれに次いでいた。

リンパ節腫大は典型的なものは1〜3カ月頃に発生し(頻度は0.7%程度)、ときに化膿して穿孔・排膿することもあるが、数ヶ月の経過でゆっくりと自然治癒する。多くは単個であるが、まれに複数個、またまれに腋窩以外の部位(胸壁、鎖骨窩部など)に発生することもある。乳児に多い反応であることから、接種月齢が低くなるにつれて今後は増加の可能性がある。

今期かなり増加した皮膚結核様反応は、その多くが「結核疹」と総称される多彩な病変で、多くは接種後数週間で発症し、全身に発疹が散布する。発熱を伴うこともあるが、予後は良好である。化学療法を不要とする専門家も多い。今回見られたもう1つの皮膚病変の型はBCG(菌)が接種局所から離れた部位の皮膚に転移し、そこで増殖して病変(肉芽腫)を作ったものである。

ケロイドは多くは再接種でみられるが、年余を経て臨床的に問題となることがあるので、再接種が廃止された今後も新たな発生は多少なりとも続くと思われる。また今期報告されたように、初回接種においても発生することもまれながらある。

接種局所の膿瘍・潰瘍のかなりのものは通常の局所変化の強調されたものであるが、早期に発生するものはコッホ現象の可能性がある。今期報告された「局所の急性反応」1例は、接種当日に局所に発赤を起こしたものであるが、これが該当するかも知れない。

今回はBCG接種副反応としては非常にまれな骨炎が1件報告された。

インフルエンザ (表8−1〜3参照)

平成17年4月1日〜平成18年3月31日の間に厚生労働省に報告された、インフルエンザワクチン接種後に見られた健康異常は、56症例(男:22例、女33例、性別報告なし1例)であった。50例は平成17年10月〜12月に接種された分であるが、6例は平成15〜16年度に接種された分で、前年度までの報告書に集計されていない症例である。報告例の年齢構成は第8−2表に示す通りであり、検討対象はすべて60歳以上、そのうちの25例(44.6%)は75歳以上の後期高齢者であった。

即時性全身反応は2例に見られた。全身の発疹がみられたものは7例であった。39℃以上の発熱は7例にみられているが、たまたま肺炎や急性ウイルス疾患を合併したと思われる症例も報告されている。脳炎・脳症・けいれんの例はなかった。2例でGuillain-Barre症候群の関与が疑われる運動障害、各2例で、散在性脊髄炎等の関与が疑われる知覚障害が報告されている。

 ワクチン接種後、発症までの日数は資料第8―1表に示す通り、24時間以内が21例(37.5%)、1〜3日23例(41.1%)、4〜7日6例(10.7%)、15〜28日1例(1.8%)であった。

 報告時点の予後を回復状況別に第8―3表に示すが、回復しているもの19例、回復していないもの7例件であり、29例はその後の経過が報告されていない。死亡例は3例見られたが、概略は以下の通りである。(1)66歳男性。ワクチン接種後36時間に突然苦しみだして病院に運ばれ、高度の低酸素血症、アシドーシス、CRP高値、白血球増多が指摘されている。救命救急処置により一旦は回復したが、翌日には死亡している。窒息、肺梗塞などの急性病態が疑われ、ワクチン接種との因果関係は薄い。(2)81歳女性。ワクチン接種後5日目、入浴中に突然死した。ワクチン接種と死亡との因果関係は薄い。(3)90歳女性。ワクチン接種翌日突然発症の胸腹部痛、嘔吐、ショックで病院に運ばれ、救命処置を行うも、5日後に死亡、腹部大動脈瘤破裂が判明している。死亡とワクチン接種に因果関係は考えがたい。

[まとめ]

検討対象のほとんどは高齢者であり、種々の疾患を発症し死亡に至ることも少なくない宿主である。ワクチン接種後に見られたこれらの症状は、この報告書のはじめに述べられているように、予防接種との関連性が考えられない偶発事象なども含まれている。神経障害の例の因果関係については、今後、病歴にもとづく検討が必要であろう。

1. 報告基準(PDF:6KB)
2. 集計表    (平成17年度)(PDF:477KB)
3. 集計表累計 (平成8〜17年度)(PDF:176KB)

照会先

厚生労働省健康局結核感染症課予防接種係

TEL:(03)5253−1111

FAX:(03)3581−6251

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