市町村における児童家庭相談体制の整備

(1) 市町村の児童家庭相談の役割
 〔1〕 市町村が担う機能について
 ○  市町村は、平成17年4月から第一義的な児童家庭相談窓口となったところであり、単なる児童相談の初期窓口の役割を果たすだけではなく、個別事例の援助方針を関係者と決め、実際に援助を行っていく役割を果たすことが求められる。すなわち、(1)相談・通告の受付、(2)受理会議(緊急受理会議)、(3)調査、(4)ケース検討会議、(5)市町村による援助、児童相談所への送致等、(6)援助内容の評価、(7)相談援助活動の終結といった、児童家庭相談におけるすべての過程において、市町村が第一義的な役割を担うことが必要である。

 ○  市町村が、こうした援助を行うに際して有効となる、虐待を受けた子どもなど要保護児童の適切な保護を図るために必要な情報の交換を行うとともに、要保護児童等に対する支援の内容に関する協議を行う要保護児童対策地域協議会(以下「協議会」と略す)の設置促進を図るべきである。

 〔2〕 都道府県との役割分担・連携について
 ○  市町村が第一義的な児童家庭相談の窓口となって約1年が経過した。当面は都道府県が市町村との関係で相当程度の役割を果たすこともやむを得ないとしても、市町村合併により平成18年4月1日には市町村数が1,820となり市町村規模が大きくなることも踏まえ、今後は、市町村の事例に対する見立ての力や対応力を高め、児童福祉法第27条の措置を要する場合や医学的・心理学的判定を要する場合など児童相談所に送致する場合を除き、市町村が中心となって対応する事例を増やしていくべきである。

 ○  その際、市町村には、一時保護や立入調査、児童福祉施設への入所などの措置権限がないことも踏まえ、児童相談所が担っている機能をそのまま担うことを期待するのではなく、地域子育て支援サービスや母子保健事業の実施主体であるなど日常的に住民と接し、身近な機関である市町村の特性を踏まえ、子育て支援や虐待予防の観点を重視した取組を進めることが必要である。

 ○  市町村は受容的な関わりを基本とする事例が多いものと思われるが、事例の進展によっては、都道府県と密接な連携を取りながら、必要とされるサービスが適切に受けられるよう積極的な関わりを持つ必要がある。


(2) 市町村の相談体制
 〔1〕 市町村の相談窓口
 ○  市部において、福祉事務所に設置されている家庭児童相談室は、児童家庭相談の重要な役割を担っており、近年、新たに設置する自治体が増加している。こうした市家庭児童相談室については、これまでの児童家庭相談の経験を基に、市の児童家庭相談の中核となることが期待される。また、今後、市町村合併により一定の人口規模の市が多く誕生することに伴い、さらに設置が促進されることが期待される。

 ○  町村部においては、法施行に対応して役場に相談窓口が設置された事例が多いが、いずれにせよ「主たる相談窓口」が児童家庭相談を責任を持って受け止められるよう、組織、人材など必要な体制を各市町村で構築すべきである。

 ○  なお、法施行後間もないことから、プライバシーが確保され安心して相談できる部屋がないなどハード面においても不十分な市町村が見られるが、今後は相談室の確保などハード面においても必要な整備を進めることが必要である。

 ○  相談窓口の担当職員については、ソーシャルワークを担う社会福祉士などを福祉職として採用することや児童福祉司相当の資格要件の前提となる指定講習会に積極的に参加させるなど、児童福祉司任用資格相当の職員の確保に努めることが望ましい。

<実践例>
 神奈川県相模原市は、児童家庭相談体制の充実や改正後の児童福祉法、児童虐待防止法に対応するため、平成17年4月に新たに「こども家庭支援センター」を設置した。センターには、これまで保健・福祉の総合相談窓口に配置されていた家庭児童相談員を配置換えするなどし、児童家庭相談の窓口を明確化した。

 福岡県水巻町では、教育委員会に「児童少年相談センター(ほっとステーション)」を設置し、4名の相談員体制で、0歳から19歳までの子どもの発達段階に応じた本人と家族からのあらゆる問題・相談に対応している。

 福岡県中間市は、主たる相談窓口が庁内の「明るい街づくり課」(平成18年1月1日より機構改革により「子ども育成課」となる)であり、課に隣接する部屋(6名程度の利用が可能)を専用の相談室(課と行き来ができるドア有り)として設置し、対応している。

 〔2〕 受理会議、ケース検討会議などの体制について
 ○  受理会議やケース検討会議について、平成17年6月1日現在の市町村における児童家庭相談業務調査結果(以下「相談業務調査」と略す)では、半数程度の市町村が開催しておらず、特に町村では相談に関して相談担当者個人に委ね、組織的な判断や対応がなされていない状況が多々みられることから、各市町村、特に町村部において、組織的な判断や対応を行うことのできるような体制を早急に整備する必要がある。

 〔3〕 夜間・休日等の体制について
 ○  夜間・休日等の対応について、相談業務調査では、半数の市町村が対応しておらず、夜間・休日の対応体制の整備が急務である。

 ○  体制の整備に当たっては、相談件数の多寡や相談内容、自治体の規模、職員体制等を勘案して、複数市町村で合同して体制整備をするなど、それぞれの自治体に応じた体制とすべきである。

 ○  なお、その際には、各自治体の住民が、その自治体の夜間・休日等の連絡先を把握できるよう、住民向けに周知を徹底することが必要である。


(3) 市町村の職員体制の確保・専門性の向上
 〔1〕 必要な職員の確保について
 ○  相談業務調査では、市町村の相談担当職員の7割は兼務である。また、相談担当職員の37%は一般行政職であり、児童福祉司任用資格相当の職員は8%弱、社会福祉士は2%にすぎないなど、各市町村とも人材確保に苦心している状況である。特に小規模な町村では、一人の相談担当職員で他の業務と兼務しながら対応している例も多く、相談窓口の人事ローテーション、専門性の確保が難しいとの指摘もある。

 ○  相談窓口の担当職員については、先にも述べたとおり、児童福祉司任用資格相当の職員の確保を図ることが望ましいが、当面それが困難であり、市町村において現有の職員で対応せざるを得ない場合には、保健師、保育士など子どもとその家族に対する直接援助について基礎的な素養のある者を充てるなどの工夫が考えられる。

 ○  非常勤職員の活用や学校の教職員の活用など多職種がチームを組んで対応する体制についても検討すべきである。

 ○  少なくとも市レベルにおいては、児童福祉司任用資格相当の職員の確保を中心に、保健師、保育士、教職員などの多職種による対応を積極的に検討することが必要である。

<実践例>
 神奈川県相模原市は、前述のとおり、平成17年4月に「こども家庭支援センター」を設置した。センターには、これまで各機関で児童虐待対応に当たっていた職員を集約し、保健師、福祉職、保育士など多職種の専任正規職員とともに、非常勤職員の家庭児童相談員や心理相談員を配置している。

 福岡県中間市は、平成元年度から専任(正規)の相談担当職員を1名配置した。女性からの相談が比較的多いという観点から、女性の職員を充て対応している。さらに警察退職者を3名、嘱託職員としており、非行相談にも力を入れている。

 〔2〕 専門性の向上、対応力の強化について
 ○  相談業務調査では、4割の市町村において、相談担当職員が資質向上のための研修を受けておらず、少なくとも、こうした職員に対して研修を受講する機会を確保すべきである。

 ○  このため、市町村では、日頃から自主的な研修を行うことはもちろん、近隣の市町村との共同実施や都道府県が研修を実施する場合に参加するなど、積極的な研修の機会の確保に努めるべきである。なお、市町村において児童家庭相談を担当する職員の資質向上を図ることを重視し、全国社会福祉協議会が実施している「児童福祉司資格取得通信教育研修」の受講対象が、現行の都道府県・指定都市・児童相談所設置市の職員に加え、平成18年度から市町村の職員まで拡大されるので、こうした研修も活用することが重要である。

 ○  研修を行っても市町村の担当職員がすぐに人事異動してしまうという課題も指摘されており、市町村職員を対象とした研修を行う場合には2〜3年周期で研修プログラムを組む必要がある。

 ○  市町村職員が児童相談所で数日間、短期的な研修を行うことや児童相談所の援助方針会議への参加などに取り組む市町村もあり、市町村と都道府県・児童相談所との人事交流(1〜2年程度)が市町村の相談担当職員の人材育成に効果的と考えられるため、こうした工夫を各市町村で採用すべきである。

 ○  市町村の対応力に関し、例えば、業務マニュアルを作成している市町村が現状では5割程度にとどまっており、それぞれの自治体に適した業務マニュアルの作成が必要である。

<実践例>
 神奈川県横須賀市は、平成17年度から、児童家庭相談担当職員を1人あたり4日間、県の児童相談所で研修させており、ケース検討会議への出席や児童福祉司との同行訪問など、実践での児童相談所の動きについて研修している(横須賀市は平成18年度から児童相談所設置市)。

 神奈川県相模原市は、平成15年度から2年間、県との人事交流により、市職員を児童相談所に派遣した。また、17年度には、児童相談所の援助方針会議に市の相談窓口である「こども家庭支援センター」の全職員が参加し、児童相談所における組織的な判断について研修を行った。さらに、18年度には、再度の人事交流により2年間市職員を児童相談所に派遣するとともに、「こども家庭支援センター」に県職員である児童福祉司経験者が派遣されている。

 東京都葛飾区では児童家庭相談を担当する職員を、順次、児童相談所へ派遣し研修を受けさせている。研修期間は4か月から2年までと様々であるが、家庭訪問、面接、通告時の対応等を体験している。児童家庭相談の中でも特に虐待相談の場合、家庭状況の把握、児童との面接、リスク判断、援助の組み立て等において実践的な技術を要するため、児童相談所での研修は大いに役立っている。
 また、研修は技術の習得とともに、児童相談所の行う行政権限の発動(一時保護等)を伴う対応がどのような場合に可能であるか等、児童相談所の判断基準や機能に関して事例を通じて体験する事で、児童家庭相談における市町村が担うべき役割の確認ができている。

 ○  前述のとおり、市町村と児童相談所とが共通のアセスメントシートを用いるなど、アセスメントのための共通指標を用いることも検討すべきである。

<実践例>
 神奈川県相模原市では、市が児童虐待として関わっている約400件の全ての事例について、通常の対応とは別に、事例の状況と支援の効果を確認するとともに、今後の支援方針を検討するための「定例ケース会議」を半年に1回開催している。その際に共通の認識で事例検討をするためのツールとして、「育児困難家庭のための支援評価シート」を独自に作成し活用している。

 ○  外部人材の活用は町村では9割以上が、市部でも約8割が行っておらず、民間有識者の任期付き採用や市町村児童福祉審議会の活用などによる外部人材の活用にも取り組むべきである。


(4) 要保護児童対策地域協議会(虐待防止ネットワーク)による取組
 〔1〕 要保護児童対策地域協議会の設置等について
 ○  協議会の設置率は平成17年6月1日現在で4.6%となっており、虐待防止ネットワークと合わせた設置率で見ても50%強であるのが現状である。

 ○  協議会又は虐待防止ネットワーク(以下「協議会等」と略す)を設置していない理由として「人材の確保が困難」とする自治体が多く、調整機関のコーディネーターなどの人材確保や資質の向上が課題である。しかしながら、複雑な要因が絡み合って発生する虐待などについては、多様な関係機関、関係者の情報と援助方針の共有化、またそれを踏まえた支援が不可欠であることから、各市町村は早急に協議会等の設置を検討すべきである。その際、小規模な市町村においては、他の協議会との合同開催や事実上の共同設置を行うことも考えられる。

 ○  なお、協議会等を設置した後も、具体的な事例を扱っていないところが見られるが、児童相談所の協力も得て、事例研究会を行うなどにより参加者間で事例の取扱いについての共通認識を形成していくことが、ネットワークを機能させていく上で重要である。

<実践例>
 三鷹市では、子ども家庭支援センター(※)が中核機関となって、子どもと家庭に関するあらゆる相談に応じるほか、児童相談所をはじめとした地域の援助機関やサービスをネットワーク(三鷹市子ども家庭支援ネットワーク)でつなぎ、市全体の子ども家庭支援システムを強化してきた。なお、17年3月から、このネットワークは協議会に移行したところである。
 ※ 「子ども家庭支援センター」は東京都の単独補助事業であり、実施主体は区市町村。

 〔2〕 要保護児童対策地域協議会の役割について
 ○  協議会等を設置している市町村においては、代表者会議や実務者会議よりも、個別ケース検討会議を開催している市町村数が多く、個別事例対応に活動の重点が置かれている様子がうかがえる。協議会等が担うべき役割や協議会等と市町村の相談窓口との関係については、一様に定められるものではなく、各市町村の実情に応じて組み立てていくべきことがもとより基本である。しかしながら、個別の事例について地域資源を総動員しながら対応することが効果的であると考えられることから、市町村の相談窓口で事例を受け付けた上で、協議会等で受理会議(緊急受理会議を含む)、調査、援助方針の決定とこれを踏まえた継続的な援助など、個別ケース対応についての役割を担うという取組について各市町村で検討すべきである。

 ○  一方、児童相談所との役割分担の明確化なども課題として挙げられており、個別事例を協議会等が担う場合でも、児童相談所との関係をルール化する必要がある。

<実践例>
 大阪府泉大津市の「泉大津市虐待防止ネットワーク(CAPIO)」では、具体的な事例に即応することに活動の主眼を置き、虐待の通報や相談があった場合、まず事務局(市児童福祉課)に情報が集められ、その後、事務局、児童相談所及び実務者会議座長の三者で緊急度判定会議を開催、必要に応じて臨時実務者会議を開催し、対応チームを編成する仕組みを取っている。

 〔3〕 要保護児童対策地域協議会の人材について
 ○  市町村には、繰り返しになるが、児童相談の初期窓口としての役割を果たすとともに、個別事例の援助方針を関係者と決め、実際に援助を行うという役割を有している。

 ○  そのためには、個別事例の援助方針を決めるために協議会の開催の事務や個別事例の支援の実施状況の把握等を行うことが不可欠であり、調整機関のコーディネーターは、こうした事務を担い協議会の活動の要となることが期待される。しかしながら、協議会を設置している市町村のうち、常勤で配置されているのは約6割にとどまり、非常勤では適時適切に協議会の開催事務を行うことが困難であるため、常勤での配置が必要である。
 また、コーディネーターには個別事例の援助方針を関係者と決め、援助状況の把握等を行うことも求められており、その力量アップのためにスーパーバイザーを確保することや専門職の雇用等の人材確保も、検討すべきである。

<実践例>
 三鷹市子ども家庭支援ネットワークでは、精神科医、小児科医、弁護士、臨床心理士、精神保健福祉士など8名の外部専門家からスーパーバイズを受けている。


(5) 子育て支援サービスの活用による総合的支援の実施
 〔1〕 地域子育て支援サービス、母子保健事業などにおける虐待の発生予防、早期発見・早期対応、親子への継続的支援
 ○  市町村は、新生児訪問や乳幼児健康診査などの母子保健事業等を通じて、全ての親子を視野に入れた虐待の発生予防、早期発見を行うことができ、また支援を要する家庭に対し、育児支援家庭訪問事業などにより家庭へ訪問することや保育サービス等を活用して継続的な支援を行うことができる。

 ○  具体的には、まず、次世代育成支援対策推進法に基づき、全ての市町村は平成17年3月中に次世代育成支援・子育て支援に関する市町村行動計画を作成することが義務付けられているが、この行動計画に基づき、つどいの広場(「子育てサロン」「ふれあい親子サロン」なども含む)や地域子育て支援センターなど地域における子育て支援の拠点を整備する市町村も多い。つどいの広場は、親子が気軽に集い、スタッフによる身近な子育て相談なども可能であり、また地域子育て支援センターに市町村の児童家庭相談体制の一端を担わせている自治体もあることから、こうした子育て支援の拠点において、交流や相談などを通じて、児童虐待の発生予防、早期発見等の役割を担うことが期待される。

<実践例>
 旧新津市(現新潟市)では、24ある地域子育て支援センターのうち、1か所をNPO法人に管理・運営を委託(センター名:「育ちの森」)しており、親と子の遊び場の提供、講座の開催、一時保育、電話・Eメール相談等を実施し、親同士、子ども同士が、遊びやスタッフとの交流を通して、仲間づくりや母親の育児不安・孤立感の緩和、密室育児にならないような支援を行っている。また、スタッフ1名が新津虐待予防ネットワークに委員として参加し、センター内で解決できない問題があったときは関係機関と連絡をとり、相談者の悩みが解決するよう継続的に援助を行っている。さらに、スタッフ全員で虐待に関する専門家研修を受けたり、母親が虐待していると分かった場合、どのように対処しどこにつなげるかなど職員間で研修を実施している。

 ○  市町村の母子保健事業は母子健康手帳交付時や新生児訪問から親子と関わりがあるため、虐待の発生予防、早期発見と重症化予防という役割は大きい。特に、児童虐待により死亡に至った事例では生後4か月以下の乳児が占める割合が高いが、現状では新生児訪問の訪問率は20%程度に過ぎないため、医療機関との連携の強化、新生児訪問の活発化、乳幼児健康診査の未受診者把握など市町村において母子保健事業に改めて積極的に取り組むことが望まれる。なお、虐待の発生予防などの観点から、母子保健分野には一定程度の経験を積んだ保健師を配置することが望まれる。

 ○  こうした事業を通じて、支援を要する家庭を把握した場合には、育児支援家庭訪問事業が、家庭に入って個別具体的かつ継続的に支援することにより対象者の問題解決を目指すことから、効果的と考えられる。しかしながら、現状では育児支援家庭訪問事業に取り組む市町村は408市町村にとどまっており、未実施の市町村においては早期の事業化を検討すべきである。

 ○  保育サービス等を活用して継続的に親子を見守り、支援することやファミリー・サポート・センター事業の紹介、さらには緊急一時保育、ショートステイ、トワイライトステイといったレスパイトサービスの提供もこうした家庭に対する支援として有効と考えられるので、これらの事業を担当する部門と児童家庭相談窓口を担う部門とが協力しながら、このようなサービス提供を行うべきである。

 ○  育児支援家庭訪問事業や保育サービス、レスパイトサービスなどの整備を行うことにより、親子の抱える問題や重症度に応じた身近なサービス基盤を市町村において確保していくことは、市町村の相談への対応力を向上させることにつながるものであり、その面でも有効と考えられる。

 ○  なお、民生委員・児童委員、主任児童委員についても、地域の親子の把握・支援という観点から、その役割が期待される。

<実践例>
 東京都目黒区では、児童虐待等の通報があった場合、児童相談所や子ども家庭支援センター(※)から主任児童委員に調査の依頼がある。主任児童委員は、当該区域を担当する児童委員と共に実態調査や見守りを行い、緊急対応が必要な事例は、児童相談所が即対応し、継続的な支援が必要な事例については、子ども家庭支援センターで関係者会議を開催し、役割分担を行う。児童相談所の指導により見守りや支援については、関係者による月1回のモニタリング会議で情報交換と経過状況などの確認を行っている。

 〔2〕 市町村児童家庭相談窓口等との連携、要保護家庭の支援
 ○  地域子育て支援サービスや母子保健事業等において、気になる相談があった場合や気になる親子と出会った場合には、適切に市町村の児童家庭相談窓口や児童相談所等につなぐ工夫が必要である。

 ○  特に、母子保健と児童家庭福祉を担当する組織が分かれている自治体においては、それぞれの職種や立場の違いなどによって、事例の見立て方や援助方針の共有が難しいとの指摘もなされていることから、こうした地域子育て支援サービスや母子保健事業に従事する機関を含めての協議会を活用して共通理解を深める等の工夫も検討すべきである。

 ○  里親や児童養護施設などは、都道府県が委託等の措置を行うため市町村との関係は必ずしも深くないが、市町村の児童家庭相談窓口の担当職員は、里親等の制度や地域における里親等の現状についての理解を深めておくべきである。


(7) 政令市の扱い
 指定都市の7割は、各「区」が設置する「子育て支援室」、「家庭児童相談室」等の窓口と児童相談所が重層的に対応しており、効率的な児童家庭相談を進める上では、「区」を第一義的な相談窓口して活用することを検討すべきである。その際、児童相談所においても、区を支援する専門部署(区の啓発、研修、個別支援などを担当)を置くことも検討すべきである。

<実践例>
 横浜市においては、各区の児童家庭相談の中核を担う保健師が、児童相談所の支援により「『不適切な養育』気づきと支援マニュアル」を作成している。これは、母子保健事業の中から「虐待探し」ではなく、養育者の抱える問題や子どもの育てにくさなどに、気づきと共感の姿勢で支援するためのチェックリストであり、危険性が高いと判断されたものは児童相談所が対応し、それ以外は区が対応することとしている。


(8) 個人情報保護との関係
 都道府県や市町村が、個々の児童家庭相談に係る各種の調査を進めるに当たって、個人情報保護法を盾に調査を拒否する機関や個人が存在するとの指摘が少なからずある。しかしながら、個人情報の保護に関する法律では、「児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」(法第16条第3項第3号、第23条第1項第3号)は、個人情報の利用目的による制限や第三者の提供の制限から除外していることから、こうした場合には個人情報保護法上、許容されていることを、国において周知すべきである。

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