供血者発の遡及調査により、輸血用血液製剤でHEV(E型肝炎ウイルス)
感染が疑われた事例
(10月26日報告)について

1.経緯
  平成17年10月26日、供血者発の遡及調査により供血者のHEV個別NAT陽性が判明し、当該血液に由来する輸血(人血小板濃厚液)を受けた症例でHEV感染の疑い事例があったとの報告が、日本赤十字社からあった。

2.事例
  患者は、平成17年9月21日に心臓外科手術のため、輸血を受けた70歳代の男性。輸血後の平成17年10月1日の血液検査でHEV−RNA陽性(但しHEV抗体はIgM, IgG共に陰性)が確認され、その後の経過においてウイルスコピー数が上昇した。
 患者は、10月20日までの経過において抗体も陽転していないものであり、ALT値の顕著な上昇もなく、肝炎は発症していない。

3.感染についての状況
 (1) 輸血された血液製剤について
(1) 当該患者に投与された人血小板濃厚液の供血者数は1人(9月20日採血)。
(2) 当該供血者と同一の供血者に由来し、同時に製造された原料血漿は確保済み。
 (2) 供血者個別NAT
 供血者個別NATは陽性。供血者と患者のHEV塩基配列の相同性は確認中。
 (3) 供血者に関する情報
(1) 供血者の海外渡航歴はなく、喫食歴についてはブタホルモン、レバーを喫食した経験があった。
(2) 供血者のALT値は、献血時には正常範囲内。
(3) 当該供血者の供血時の試行的なミニプールHEV-NATが陽性となり、個別NAT陽性を確認。血小板製剤の有効期間が72時間と極めて短時間であることから、NATの結果が出る前に出荷されたものである。

4.E型肝炎の状況
 (1) E型肝炎は通常は経口感染が主な感染経路である。潜伏期間は2〜9週間である(平均6週間)。また、感染初期にウイルス血症を起こすため、輸血による感染を起こすおそれがあり、国内での輸血による感染が3例報告されている(平成14年、16年及び平成12年当時の保管検体の調査研究による例(平成16年報告))。
 (2) 現在厚生労働科学研究班(主任研究者:三代俊治東芝病院研究部長)において、E型肝炎の疫学調査を進めている。

5.今後の対応
 (1) E型肝炎は通常は経口感染が主な感染経路であることから、豚由来の食品や野生動物の食肉は十分に加熱調理を行うよう営業者及び消費者に対し、再度周知徹底する通知が食品安全部から発出されている(平成16年11月29日)。
 (2) 当該患者の臨床経過を注意深くフォローする。
 (3) HEV-NATの迅速な実施のため、機械化・自動化に向けて取り組むこととしている。また、献血における問診強化・HEV検査の北海道での試行的な対策の効果及び疫学調査の動向を踏まえ、これらの対策の拡大を検討しているところ。

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