総合科学技術会議生命倫理調査会報告書
  「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」(抜粋)


第4.制度的枠組み
2.制度の内容
(1)ヒト受精胚の研究目的での作成・利用
 当面は国のガイドラインとして整備すべきであるが、当ガイドラインの遵守状況等を見守りつつ、国は新たな法整備に向けて、今後とも引き続き検討していくものとする。なお、ヒト受精胚の研究目的での作成・利用は、前述した未受精卵の使用・採取という極めて重い問題を伴っている。
 ヒト受精胚の生殖補助医療研究における作成・利用については、新たにガイドラインを整備する必要がある。具体的なガイドラインの内容としては、本報告書の基本的考え方に基づいて基準を設け、これに基づいて、個別の研究について審査した上で実施を認める枠組みが必要である。
 本報告書の基本的考え方に基づいたヒト受精胚の取扱いのための具体的な遵守事項として、研究に用いたヒト受精胚を臨床に用いないこと、未受精卵の入手制限及び無償提供、ヒト受精胚や未受精卵の提供の際の適切なインフォームドコンセントの実施、胚の取扱い期間の制限、ヒト受精胚を取扱う研究についての記録の整備、研究実施機関の研究能力・設備の要件、研究機関における倫理的問題に関する検討体制の整備及び責任の明確化、ヒト受精胚や未受精卵等の提供者の個人情報の保護、研究に関する適切な情報の公開等を定める必要がある。
 このうち特に、未受精卵の入手については、提供する女性への不必要な侵襲を防止するとともに、提供への同意に心理的圧力がかかることがないよう、女性の保護を図る必要があるため、既に述べたとおり、個々の研究において必要最小限の範囲に入手を制限するとともに、自由意志によるインフォームドコンセントの徹底等を義務付ける必要がある。
 この際、国は、生殖補助医療研究のためにヒト受精胚の作成・利用を計画している研究がガイドラインの定める基準に適合するかを審査するための適切な枠組みを整備する。  文部科学省及び厚生労働省は、これらを踏まえてガイドラインの具体的な内容を検討し、策定する必要がある。

(2)人クローン胚の研究目的での作成・利用
 今回、人クローン胚の研究目的の作成・利用を限定的に容認するに当たっては、このクローン技術規制法に基づく特定胚指針を改正するとともに、必要に応じて国のガイドラインで補完することにより、本報告書の基本的考え方を踏まえて必要な枠組みを整備すべきである。
  このうち特に、未受精卵の入手制限については、生殖医療の現場における知見も踏まえ、文部科学省及び厚生労働省において、具体的な手続きの検討に当たるべきである。

トップへ