献血者健康被害の救済に関する主な論点(案)



1 現行体制の問題点
 ・現行制度では、献血者の健康被害に対して見舞金制度で対応しているが、献血者への支払いが血液センターごとの判断に委ねられており、透明性、公平性の確保が図られているとは言えない。
 ・献血者の健康被害について採血事業者の過失を明らかにすることが困難な場合が多く、十分な救済が受けられていない現状にある。特に長期・重症者については、十分な補償がなされていない可能性がある。

2 新たな救済制度の基本的な考え方
 ・献血者に健康被害が生じた場合は、献血者の請求に基づいて迅速かつ公正に、事実確認、因果関係の有無に係る判定を行い、一定の基準に該当する者に対しては、軽症者であれば治療費・交通費程度を支払い、長期・重症者に対しても、障害年金等の給付を行う必要があるのではないか。

3 救済の責務
 ・採血事業者は、直接採血行為を実施する立場にあり、健康被害の対応に当たっても中心的な役割を果たすべきという社会的責任を担っていることから、新たな制度は採血事業者を中心として設計されるべきではないか。
 ・国は、血液製剤に関し国内自給が確保されることとなるように必要な措置を講ずるよう努めることとされており、献血者が安心して献血に参加できるよう、救済制度においても、判定基準の作成、判定状況の監視等一定の役割を果たす必要があるのではないか。

4 救済の対象者
 ・過失による健康被害については、民事的手続きにより採血事業者に対して損害賠償請求ができることから、公的な救済制度の対象者は、事業者の過失責任が明らかでない場合あるいは無過失の場合に限られるのではないか。
 ・あるいは、採血事業者の過失・無過失を問わず、救済制度の対象とするか。その場合、事業者が無過失責任を負うことを法令上明記し、我が国の民事責任の体系を修正することとなるが、そうした法的論拠があるか。

5 救済給付の仕組み
 (1)申請
 被害者の給付請求の申請は、3の考え方を踏まえ、採血事業者が受理して処理すべきではないか。
 (2)因果関係(蓋然性)の判定(6参照)
 (3)給付
 上記判定に基づき、申請を受け付けた採血事業者又は第三者機関が給付を行う。

6 判定の在り方
 ・救済措置を適用するか否かは、献血と健康被害の発生の間に因果関係があるかどうかの判断によることとしてはどうか。
 ・因果関係の判定については、誰がどのように行うべきか。
(1)採血事業者自ら(又はその委託を受けた保険会社、採血事業者が設置する第三者委員会等)が判定を行う
透明性・公平性はどのように確保するか。
採血事業者において統一的な判断を行うことができるような基準を国が示すことができるか。
(2)国又は第三者機関が、採血事業者において判定困難な事案に限定して、判定を行う
限定するとすれば、どのような基準が適当か。
(3)国又は第三者機関が、給付申請のあった全ての事案について、判定を行う。
迅速性はどのように確保するか。

7 給付内容
 ・過失がない場合の救済は、損害の完全な補填ではなく、一定額を限度とした給付であるが、本制度においても同様の給付とするか。
 ・他の行政上の救済措置の例(たとえば、医薬品副作用被害救済制度など)では、給付項目として(1)医療費、(2)医療手当、(3)障害年金、(4)遺族年金及び一時金、(5)葬祭料などがあるが、本制度の給付内容はどのようなものとするか。
 ・献血者の健康被害において入院や長期通院を要する例は稀であることから、(1)給付対象を入院相当以上とした場合、多くの事案が給付対象外になること、(2)他の行政上の救済制度と同様の水準で医療手当を支給すると払いすぎになる可能性があること等についても考慮する必要があるのではないか。

8 費用負担
 ・献血者の健康被害救済のための拠出金は、特別犠牲の考え方に立ち、受益者たる患者が負担することが適当ではないか(具体的には、採血事業者が血液製剤の売り上げの一定割合を救済の資金に充てる。国内献血由来製剤の製造業者にも一定の拠出を求めることも考えられる。)

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