第17回社会保障審議会医療保険部会 | 参考 資料 |
平成17年7月29日 |
1. | 医療保険制度体系に関する改革の基本的考え方 |
(1) | 安定的で持続可能かつ給付と負担の関係が透明でわかりやすい制度 人口構成、就業構造等の構造変化に柔軟に対応し、経済・財政とも均衡のとれた安定的で持続可能な医療保険制度を構築し、将来にわたり国民皆保険制度を堅持する。また、給付と負担の関係が透明でわかりやすく、かつ、医療費適正化の取組や高齢者医療制度の運営に対して関係者が関与できるなど、関係者の負担への理解や納得が得られやすい制度とする。 |
(2) | 国民の生活の質(QOL)の向上を通じた医療費の適正化 生活習慣病の予防や質の高い効率的な医療サービスの提供により、国民の生活の質(QOL)の向上を図ることを通じて医療費の適正化を推進する。具体的には、次のような取組を推進する。 |
(1) | 若齢期からの保健事業の積極的な展開により生活習慣病の発症を抑制する。 |
(2) | 医療機関の機能の分化・連携を推進し、急性期から回復期、療養期、在宅療養へという患者の流れを促進することにより、平均在院日数を短縮する。 |
(3) | 在宅(多様な居住の場)における介護サービスと連携した医療サービスの充実を図る。 |
(3) | 都道府県単位を軸とした制度運営 保険者については、保険財政の運営を適正な規模で行うこと及び保険料水準をそれぞれの地域の医療費水準に見合ったものとすることを基本として、都道府県単位での再編・統合を推進する。 また、都道府県を軸として、地域の関係者(保険者、医療機関、地方公共団体等)が連携して、医療の地域特性を踏まえた質の高い効率的な医療を提供できるような取組を推進する。 |
2. | 現行高齢者医療制度の現状 |
(1) | 老人保健制度の現状
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(2) | 退職者医療制度の現状
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資料1
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資料2
制度運営について、費用を負担している被用者保険の保険者が給付に関与できない仕組みとなっている。 |

資料3
被用者保険と市町村国保との間の異動状況の推移 |
近年の被用者保険と市町村国保との異動状況を見ると、異動数は増加傾向にあり、特に被用者保険から市町村国保への異動が急増している。平成14年度では被用者保険から市町村国保に約500万人、市町村国保から被用者保険に約310万人が異動するなど被用者保険加入者と市町村国保加入者との境目は流動的となっている。 |
(単位:万人)
( )内は平成4年度を100とした場合の指数 出典:国民健康保険事業年報 |
資料4
年齢別の国保被保険者の増減の状況 |
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6年度 | 7年度 | 8年度 | 9年度 | 10年度 | 11年度 | 12年度 | 13年度 | 14年度 | |
0歳~4歳 | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
5歳~9歳 | △1.5 | △0.6 | 0.0 | 0.6 | 1.4 | 2.0 | 2.2 | 2.6 | 3.1 |
10歳~14歳 | △2.4 | △1.4 | △0.6 | △0.0 | 0.6 | 1.2 | 1.6 | 2.0 | 2.6 |
15歳~19歳 | △3.9 | △2.7 | △1.8 | △1.0 | △0.2 | 0.7 | 1.3 | 1.8 | 2.5 |
20歳~24歳 | △8.8 | △6.9 | △5.4 | △4.2 | △2.8 | △1.4 | △0.0 | 0.9 | 2.3 |
25歳~29歳 | △2.4 | △1.4 | △0.2 | 0.6 | 1.5 | 2.2 | 2.5 | 3.0 | 4.0 |
30歳~34歳 | △1.0 | △0.1 | 0.5 | 1.1 | 1.9 | 2.5 | 2.8 | 3.1 | 3.7 |
35歳~39歳 | △1.7 | △0.7 | △0.0 | 0.5 | 1.1 | 1.8 | 2.1 | 2.5 | 3.2 |
40歳~44歳 | △2.1 | △1.2 | △0.4 | 0.2 | 0.9 | 1.6 | 2.0 | 2.4 | 3.1 |
45歳~49歳 | △2.0 | △1.2 | △0.4 | 0.2 | 0.9 | 1.6 | 2.2 | 2.7 | 3.4 |
50歳~54歳 | △1.5 | △0.8 | △0.0 | 0.7 | 1.4 | 2.2 | 2.9 | 3.5 | 4.5 |
55歳~59歳 | 2.1 | 2.6 | 3.2 | 3.9 | 4.9 | 5.9 | 6.9 | 7.6 | 8.4 |
60歳~64歳 | 13.3 | 14.5 | 15.9 | 17.4 | 19.6 | 21.6 | 22.9 | 24.0 | 25.1 |
65歳~69歳 | 8.0 | 9.4 | 11.3 | 13.1 | 14.9 | 16.5 | 17.8 | 18.9 | 20.0 |
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資料5
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● | 前期高齢者の加入医療保険制度・市町村国保における前期高齢者の世帯主の就業状態構成割合(一般)(平成14年度) |
(単位:千人)
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3. | 基本方針に示されている改革の基本的方向 |
(1) | 個人の自立を基本とした社会連帯による相互扶助の仕組みである社会保険方式を維持する。 |
(2) | 65歳以上の者を対象とし、75歳以上の後期高齢者と65歳以上75歳未満の前期高齢者のそれぞれの特性に応じた新たな制度とする。 |
(3) | 老人保健制度及び退職者医療制度は廃止し、医療保険給付全体における公費の割合を維持しつつ、世代間・保険者間の保険料負担の公平化及び制度運営に責任を有する主体の明確化を図る。 |
(4) | 現役世代の負担が加重なものとならないよう、増大する高齢者の医療費の適正化を図る。 |
4. | 基本方針に示されている改革の具体的な方向とそれに対応する主要な論点案 |
(1) | 後期高齢者医療制度 |
(1) | 基本的な枠組み |
・ | 後期高齢者については、加入者の保険料、国保及び被用者保険からの支援並びに公費により賄う新たな制度に加入する。 |
・ | 高齢者については、現役世代との均衡を考慮した適切な保険料負担を求める。 |
(論点)
ア | 被保険者 |
・ | 高齢者の生活実態、経済的地位、心身の特性は前期高齢者と後期高齢者とでは異なるのではないか。 |
・ | 平成14年改正により、老人保健法の対象年齢を70歳以上から75歳以上に引き上げた趣旨は、制度創設当時と比較した高齢化の進展や高齢者の心身の特性及び経済的地位の変化を踏まえ、拠出金を通じた調整対象範囲の重点化を図り、支え手を増やすということであるが、こうした改正の趣旨は新たな制度でも共通ではないか。 |
資料6
(平成16年度)
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(単位:万人)
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資料7
(平成12年の所得)
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資料: | 厚生労働省大臣官房統計情報部「平成13年 国民生活基礎調査」(大規模調査年)の個票データにより、厚生労働省保険局調査課において集計 |
注1) | 国民生活基礎調査による所得であり、雇用者所得、事業所得、農耕・畜産所得、家内労働所得、公的年金・恩給、家賃・地代の収入、利子所得等のほか、仕送りなどを含む実質的な収入である。 |
2) | 「所得なし」には所得額の記載のない者を含む。 |
資料8
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![]() ![]() 出所)厚生労働省大臣官房統計情報部「患者調査」(平成14年) |
![]() ![]() 出所)厚生労働省大臣官房統計情報部「患者調査」(平成14年) |
![]() ![]() 出所)厚生労働省大臣官房統計情報部「患者調査」(平成14年) |
資料9
1人当たり医科診療費を見ると、前期高齢期までは入院より入院外(外来)の方が比率が高いが、後期高齢期に入るとその比率が逆転する。 |
(医療費計) | (医科診療費) |
![]() |
入院医療費について、三要素(受診率、1件当たり日数、1日当たり医療費)に分解して見ると、後期高齢期に入ると受診率が急増するとともに、1件当たり日数が世代間で最も高くなる一方、1日当たり医療費は減少する。 |
受診率 | 1件当たり日数 | 1日当たり医療費 |
![]() |
入院外医療費について、三要素(受診率、1件当たり日数、1日当たり医療費)に分解して見ると、年齢が上がるごとに増加していた受診率が、後期高齢期に入ると減少する。 |
受診率 | 1件当たり日数 | 1日当たり医療費 |
![]() |
資料10
平成14年改正において老人保健法の対象年齢を70歳から75歳に引き上げた理由は、高齢化の進展の状況、高齢者の心身の特性等で見ると、老人保健法制定時(昭和57年)の70歳以上の者は、現在(改正時)では75歳以上の者に相当するというもの。 |
(昭和57年) | (平成12年) | |||
70歳以上人口 |
6.1% |
→ |
75歳以上人口 7.1% |
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平均寿命 | 男 74.22歳 | → | 77.64歳 +3.42歳 | |
女 79.66歳 |
→ |
84.62歳 +4.96歳 |
||
老齢年金受給権者平均年金月額 | ||||
厚生年金 | 113,040円 | → | (65歳以上) | 178,696円 |
(全受給権者) | (75歳以上) | 172,647円 | ||
国民年金 | 25,621円 | → | (65歳以上) | 51,370円 |
(全受給権者) | (75歳以上) | 39,137円 |
イ | 高齢者の保険料水準 |
・ | 後期高齢者の給付費については、公費で賄うほか、高齢者の保険料及び国保又は被用者保険からの支援金により賄うこととなるが、このうち高齢者の保険料と支援金の負担割合については、明確なルールを決定すべきではないか。 |
・ | 高齢者の保険料と支援金の負担割合のルールを決定するに当たっては、世代間の公平という観点を基本としつつ、現行制度からの円滑な移行という観点を考慮すべきではないか。 |
資料11
介護保険においては、給付費について、その5割を公費で負担し、残りの5割を高齢者(65歳以上の者)と若年者(40歳以上65歳未満の者)の数に応じて負担する仕組みとなっている。 |
(介護保険における老若の負担関係)
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資料12
(平成19年度推計)
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老人給付費 | 11.1兆円 | (100.0%) | ||
公費 | 5.1兆円 | (46.5%) | ||
老健拠出金 | 5.9兆円 | (53.5%) | ||
うち公費 | 1.4兆円 | (12.7%) | ||
保険料 | 4.5兆円 | (40.8%) | ||
うち75歳未満の者の負担分 | 3.7兆円 | (33.5%) | ||
うち75歳以上の者の負担分 | 0.8兆円 | (7.3%) |
(注) | 平成14年12月「厚生労働省試案」に基づく推計値である。 |
資料13
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平成19年 | 平成27年 | 平成37年 | |||
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9.7% | 12.5% | 16.7% | ||
上記の比率の2分の1 | 4.9% | 6.2% | 8.4% | ||
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21.1% | 26.0% | 28.7% | ||
上記の比率の2分の1 | 10.6% | 13.0% | 14.3% | ||
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11.9% | 15.1% | 19.9% | ||
上記の比率の2分の1 | 6.0% | 7.6% | 10.0% | ||
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25.9% | 31.5% | 34.2% | ||
上記の比率の2分の1 | 13.0% | 15.7% | 17.1% | ||
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11.0% | 14.4% | 19.0% | ||
上記の比率の2分の1 | 5.5% | 7.2% | 9.5% |
ウ | 支援金の負担方法 |
・ | 国保又は被用者保険が負担する支援金について、国保と被用者保険の間は、共通の所得捕捉が困難である現状を考慮すれば、加入者数に応じた負担とせざるを得ないのではないか。 |
・ | 現行老人保健制度では、拠出金の負担が重い保険者に対しその負担を調整する制度があるが、新制度における支援金の負担調整についてどう考えるか。 |
資料14
(平成19年度推計)
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75歳未満の加入者数 | (構成割合) | ||
全制度計 | 11,500万人 | (100.0%) | |
被用者保険計 | 7,300万人 | (64.0%) | |
政管健保 | 3,500万人 | (30.3%) | |
健保組合 | 2,900万人 | (25.7%) | |
共済組合 | 900万人 | (7.9%) | |
市町村国保 | 3,700万人 | (32.6%) |
(注1) | 65~74歳の者のうち、老人保健制度の対象となっている者を除いている。 |
(注2) | 平成14年12月「厚生労働省試案」に基づく推計値である。 |
資料15
老人保健制度では、老健拠出金が保険者の自立的財政運営に与える影響を考慮して、拠出金負担を調整する仕組みがある。 |
○ | 老人医療費拠出金の持出し額が、法定給付費や老人医療費拠出金等各保険者の義務的な支出に比して著しく過大となる保険者の老人医療費拠出金のうち、その著しく過大となる部分について、拠出金額に応じ全保険者で公平に再按分する措置が設けられている。 |
○ | 具体的には、老人医療費拠出金の持出し額が義務的支出の原則25%を超える場合に、超過額を全保険者で再按分している。 |
※ | 負担調整の基準率が原則25%であることは、
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(2) | 保険料の賦課方法 |
・ | 高齢者については、現役世代との均衡を考慮した適切な保険料負担を求める(再掲)。 |
・ | 国保及び被用者保険からの支援については、別建ての社会連帯的な保険料により賄う。 |
(論点)
ア | 高齢者に対する保険料の賦課方法 |
・ | 保険料の具体的賦課方法については、後期高齢者個人を被保険者とすることを基本としつつ、後期高齢者は国保加入者が大半を占める現状からの円滑な移行を考慮し、個人単位で、応益・応能バランスのとれた賦課方式とすることが適当ではないか。 |
・ | この際、低所得者に対しては、現行国保制度における保険料の軽減割合並びに現行老人保健制度及び介護保険制度の低所得者の範囲を考慮して、適切な負担軽減措置を講ずる必要があるのではないか。 |
資料16
(平成19年度推計)
現行制度において、後期高齢者は、国保と被用者保険を通じた平均では、平成19年度で6.3万円(年間)の保険料を負担すると推計される。 |
(年間)
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(注) | 1. | 「健康保険被保険者実態調査」「国民健康保険実態調査」等により保険局調査課において推計。 |
2. | 必要保険料額(給付費等から公費負担を控除し保険料負担が必要な額)ベースである。 | |
3. | 平成14年12月「厚生労働省試案」に基づく推計値である。 |
資料17
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● | 国保制度における保険料賦課の仕組み |
1. | 保険料 国民健康保険の保険料は、所得等被保険者の負担能力に応じた負担となる応能部分と、被保険者1人当たりの一定額等となる応益部分によって構成されている。応能部分と応益部分の構成比率は、応能:応益=50:50を標準として定めているが、市町村が実情に応じて運用することとしている。 |
2. | 徴収 世帯主から保険料を個別に徴収(普通徴収)する。 |

● | 保険料(税)軽減制度の概要(平成16年度) |
1. | 低所得者の保険料(税)負担を軽減する制度 |
2. | 軽減されるのは保険料(税)のうち被保険者均等割及び世帯別平等割の部分(応益割の部分) |
3. | 軽減割合は以下のとおり |
軽減基準所得(注1) | 軽減割合(注2) | 軽減基準所得に該当する年間給与収入
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33万円 | 7割 軽減(6割軽減) | 98万円 (168万円) |
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33万円+(24.5万円× 世帯主以外の被保険者数) |
5割 軽減(4割軽減) | [2人世帯の場合] 122万5千円 (212万5千円) |
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33万円+(35万円× 世帯に属する被保険者数) |
2割 軽減(注3) | [2人世帯の場合] 171万7千円 (258万円) |
(注1) | 所得とは、地方税法第314条の2第1項に規定する総所得金額等(基礎控除前)である。(65歳以上の年金受給者については15万円の特別控除を適用) |
(注2) | 保険料収入に占める応益保険料の割合(応益割合)が45~55%の場合。なお、括弧内はそれ以外の場合の時。 |
(注3) | 2割軽減は、市町村長が当該者の前年からの所得の著しい変化等により、軽減を行うことが適当でないと認めるときは行わない。 |
● | 市町村国保における後期高齢者の保険料の負担状況(平成14年度) |
(年間)
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資料18
介護保険制度と老人保健制度では、いずれも住民税非課税世帯を基礎とした低所得者対策を講じている。 |
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イ | 社会連帯的な保険料の賦課方法 |
・ | 国保又は被用者保険の保険者が被保険者に賦課する社会連帯的な保険料については、現行の老健拠出金や退職者医療拠出金を賄うための保険料同様、「社会連帯」及び「受益者負担」の観点から、負担すべきものではないか。 |
・ | 社会連帯的な保険料については、通常の国保又は被用者保険の保険料とは別建てとすることとされているが、その具体的な賦課方法については、同じく別建ての保険料である介護保険の2号保険料の在り方を考慮すべきではないか。 |
資料19
老健拠出金と退職者医療拠出金は、いずれも、保険者が負担する根拠は「社会連帯」と「受益者負担」の考え方を基本としている。 |
老健拠出金 | 退職者医療拠出金 | ||||||||||
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資料20
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(3) | 公費負担 |
・ | 後期高齢者に公費を重点化するという改正法の考え方を維持する。 |
(論点)
・ | 基本的には、現行老人保健制度の公費負担の仕組みを維持すべきではないか。 |
・ | 公費のうち一定割合については、保険者間の財政力等の格差を調整するための財源に充てることが必要ではないか。 |
資料21
(平成19年度推計)
現行老人保健制度では、一定以上所得者(現役並みの所得がある者)に係る給付費を除き、給付費に対し5割の公費負担がなされている。 |
老人給付費 | 11.1兆円 | (100%) | ||
公費 | 5.1兆円 | (46.5%) | ||
老健拠出金 | 5.9兆円 | (53.5%) | ||
うち公費 | 1.4兆円 | (12.7%) | ||
うち保険料 | 4.5兆円 | (40.8%) |
(注) | 平成14年12月「厚生労働省試案」に基づく推計値である。 |
資料22
国保の財政調整交付金は、市町村の医療費水準と所得水準に応じて財政調整を行う仕組みとなっている。 |

資料23
国保加入者のうち老人医療受給対象者について、都道府県別に所得水準を比較すると、最高は東京都の約115.6万円、最低は秋田県の約34.2万円、全国平均は約66.5万円であり、最高と最低とで約3.4倍の格差がある。 |
(単位:万円) |
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注: | 国民健康保険実態調査(平成14年度)よる市町村国保の旧ただし書き課税標準額(平成13年)である。 |