第17回社会保障審議会医療保険部会 参考
資料
平成17年7月29日


高齢者医療制度について



1. 医療保険制度体系に関する改革の基本的考え方

(1)  安定的で持続可能かつ給付と負担の関係が透明でわかりやすい制度
 人口構成、就業構造等の構造変化に柔軟に対応し、経済・財政とも均衡のとれた安定的で持続可能な医療保険制度を構築し、将来にわたり国民皆保険制度を堅持する。また、給付と負担の関係が透明でわかりやすく、かつ、医療費適正化の取組や高齢者医療制度の運営に対して関係者が関与できるなど、関係者の負担への理解や納得が得られやすい制度とする。

(2)  国民の生活の質(QOL)の向上を通じた医療費の適正化
 生活習慣病の予防や質の高い効率的な医療サービスの提供により、国民の生活の質(QOL)の向上を図ることを通じて医療費の適正化を推進する。具体的には、次のような取組を推進する。
   (1) 若齢期からの保健事業の積極的な展開により生活習慣病の発症を抑制する。
   (2) 医療機関の機能の分化・連携を推進し、急性期から回復期、療養期、在宅療養へという患者の流れを促進することにより、平均在院日数を短縮する。
   (3) 在宅(多様な居住の場)における介護サービスと連携した医療サービスの充実を図る。

(3)  都道府県単位を軸とした制度運営
 保険者については、保険財政の運営を適正な規模で行うこと及び保険料水準をそれぞれの地域の医療費水準に見合ったものとすることを基本として、都道府県単位での再編・統合を推進する。
 また、都道府県を軸として、地域の関係者(保険者、医療機関、地方公共団体等)が連携して、医療の地域特性を踏まえた質の高い効率的な医療を提供できるような取組を推進する。


2. 現行高齢者医療制度の現状

(1)  老人保健制度の現状
  ・ 高齢者は、被保険者として国保・被用者保険各保険者に属し、それぞれの制度の下で保険料を負担する一方、老人保健制度の加入者として市町村から給付を受ける。
  ・ 老人保健拠出金の財源として高齢者の保険料と若人の保険料は区別できない。
  ・ 高齢者の保険料は高齢者の医療費のみに充てられるのではない一方、若人の保険料についても若人自身の医療費に充てられる部分と高齢者の医療費に充てられる部分に区別できない。

(2)  退職者医療制度の現状
  ・ 退職者医療制度の対象者については、国保の被保険者として国保の保険者から給付を受ける一方、その給付費の全額を退職者自身の保険料と被用者保険の保険者が負担する。
  ・ 退職者医療制度の対象者は、厚生年金等の被保険者期間が20年以上、又は40歳以後の厚生年金等の被保険者期間が10年以上の者とされている。



資料1

老人保健制度における医療費の負担構造の問題点

制度運営の責任主体が不明確であり実施主体である市町村に医療費適正化の動機づけが働きにくい仕組みとなっている。
また、高齢者の医療費について誰がどれだけ負担しているかが不明確となっている。

老人保健制度における医療費の負担構造の問題点の図



資料2

退職者医療制度における医療費の負担構造の問題点

制度運営について、費用を負担している被用者保険の保険者が給付に関与できない仕組みとなっている。

退職者医療制度における医療費の負担構造の問題点の図



資料3

被用者保険と市町村国保との間の異動状況の推移

近年の被用者保険と市町村国保との異動状況を見ると、異動数は増加傾向にあり、特に被用者保険から市町村国保への異動が急増している。平成14年度では被用者保険から市町村国保に約500万人、市町村国保から被用者保険に約310万人が異動するなど被用者保険加入者と市町村国保加入者との境目は流動的となっている。

(単位:万人)
年度 平成4 10 11 12 13 14
被用者→市町村国保 (1) 288
(100)
402
(139)
434
(150)
436
(151)
458
(159)
491
(170)
498
(173)
市町村国保→被用者 (2) 295
(100)
288
(97)
274
(93)
275
(93)
304
(103)
306
(104)
305
(103)
(1)−(2) ▲7 114 160 162 154 185 192

 ( )内は平成4年度を100とした場合の指数
 出典:国民健康保険事業年報



資料4

年齢別の国保被保険者の増減の状況

過去の傾向を見ると、55歳以上の退職年齢に相当する層については、市町村国保への異動が一貫して徐々に増加している。
他方、20歳台から40歳台の年齢層については、以前は被用者保険等へ異動していたが、最近では市町村国保へ異動している。

  6年度 7年度 8年度 9年度 10年度 11年度 12年度 13年度 14年度
0歳〜4歳
5歳〜9歳 △1.5 △0.6 0.0 0.6 1.4 2.0 2.2 2.6 3.1
10歳〜14歳 △2.4 △1.4 △0.6 △0.0 0.6 1.2 1.6 2.0 2.6
15歳〜19歳 △3.9 △2.7 △1.8 △1.0 △0.2 0.7 1.3 1.8 2.5
20歳〜24歳 △8.8 △6.9 △5.4 △4.2 △2.8 △1.4 △0.0 0.9 2.3
25歳〜29歳 △2.4 △1.4 △0.2 0.6 1.5 2.2 2.5 3.0 4.0
30歳〜34歳 △1.0 △0.1 0.5 1.1 1.9 2.5 2.8 3.1 3.7
35歳〜39歳 △1.7 △0.7 △0.0 0.5 1.1 1.8 2.1 2.5 3.2
40歳〜44歳 △2.1 △1.2 △0.4 0.2 0.9 1.6 2.0 2.4 3.1
45歳〜49歳 △2.0 △1.2 △0.4 0.2 0.9 1.6 2.2 2.7 3.4
50歳〜54歳 △1.5 △0.8 △0.0 0.7 1.4 2.2 2.9 3.5 4.5
55歳〜59歳 2.1 2.6 3.2 3.9 4.9 5.9 6.9 7.6 8.4
60歳〜64歳 13.3 14.5 15.9 17.4 19.6 21.6 22.9 24.0 25.1
65歳〜69歳 8.0 9.4 11.3 13.1 14.9 16.5 17.8 18.9 20.0

(注) ある年齢層の者の5年前の国保加入割合との変化をみたもの(コーホート別)
(例:平成元年度15〜19歳27.5%→平成6年度20〜24歳18.7%(△8.8%)と変化)
出典:国民健康保険実態調査



資料5

前期高齢者の加入医療保険制度及び就業状態

前期高齢者の約1割は被用者保険の本人、約1割は被扶養者であり、約2割が市町村国保の退職被保険者等、約6割が市町村国保の一般被保険者である。
市町村国保の一般被保険者のうち世帯主の就業状態を見ると、無職が約21%、自営業や被用者として就業している者が約12%となっている。
このように、前期高齢者の就業状態は様々である。

前期高齢者の加入医療保険制度・市町村国保における前期高齢者の世帯主の就業状態構成割合(一般)(平成14年度)
(単位:千人)
65〜74歳人口 13,585
被用者保険 市町村国保 その他
被保険者 被扶養者 退職被保険者等 一般被保険者
635
(5%)
1,140
(8%)
1,451
(11%)
2,662
(20%)
7,698
(57%)
世帯主
4,524(33%)
世帯主以外
3,174(23%)
就業者(12%) 無職 不明
農林
水産業
その他の
自営業
被用者 その他
319
(2%)
625
(5%)
467
(3%)
151
(1%)
2,846
(21%)
116
(1%)
出典:健康保険被保険者実態調査、国民健康保険実態調査等より



3. 基本方針に示されている改革の基本的方向

   (1) 個人の自立を基本とした社会連帯による相互扶助の仕組みである社会保険方式を維持する。

   (2) 65歳以上の者を対象とし、75歳以上の後期高齢者と65歳以上75歳未満の前期高齢者のそれぞれの特性に応じた新たな制度とする。

   (3) 老人保健制度及び退職者医療制度は廃止し、医療保険給付全体における公費の割合を維持しつつ、世代間・保険者間の保険料負担の公平化及び制度運営に責任を有する主体の明確化を図る。

   (4) 現役世代の負担が加重なものとならないよう、増大する高齢者の医療費の適正化を図る。


4. 基本方針に示されている改革の具体的な方向とそれに対応する主要な論点案

 (1) 後期高齢者医療制度
   (1) 基本的な枠組み
   (基本方針)
    ・ 後期高齢者については、加入者の保険料、国保及び被用者保険からの支援並びに公費により賄う新たな制度に加入する。
    ・ 高齢者については、現役世代との均衡を考慮した適切な保険料負担を求める。

   (論点)
    ア  被保険者
    ・ 高齢者の生活実態、経済的地位、心身の特性は前期高齢者と後期高齢者とでは異なるのではないか。
    ・ 平成14年改正により、老人保健法の対象年齢を70歳以上から75歳以上に引き上げた趣旨は、制度創設当時と比較した高齢化の進展や高齢者の心身の特性及び経済的地位の変化を踏まえ、拠出金を通じた調整対象範囲の重点化を図り、支え手を増やすということであるが、こうした改正の趣旨は新たな制度でも共通ではないか。



資料6

高齢者の就業状態
(平成16年度)


労働力調査(総務省統計局)によれば、65歳以上75歳未満の者のうち27.6%が就業している。
他方、75歳以上の者で見ると就業している者は9.0%に過ぎない。

(単位:万人)
  65〜74歳 75歳以上
人口 1,383 1,111
うち就業者 382
(27.6%)
100
(9.0%)
  自営業主 139
(10.1%)
49
(4.4%)
家族従業者 56
(4.0%)
21
(1.9%)
雇用者 186
(13.4%)
30
(2.7%)
出典:「労働力調査」(総務省統計局)



資料7

世帯員の年齢・所得別に見た個人が得ている所得金額
(平成12年の所得)


75歳以上の者の平均所得は、全年齢の平均所得に対し約7割の水準に過ぎない。
これに対し65歳以上75歳未満の者の平均所得は、全年齢の平均所得の水準を上回る。
所得分布を見ても、所得なし又は所得100万円未満の者の割合は、65歳以上75歳未満の者では約38%であるのに対し、75歳以上の者では約52%と半数を超えている。

世帯員の年齢・所得別に見た個人が得ている所得金額(平成12年の所得)のグラフ

資料: 厚生労働省大臣官房統計情報部「平成13年 国民生活基礎調査」(大規模調査年)の個票データにより、厚生労働省保険局調査課において集計
注1) 国民生活基礎調査による所得であり、雇用者所得、事業所得、農耕・畜産所得、家内労働所得、公的年金・恩給、家賃・地代の収入、利子所得等のほか、仕送りなどを含む実質的な収入である。
2) 「所得なし」には所得額の記載のない者を含む。



資料8

高齢者の心身の特性(疾病特性等)

疾病全体で見ると、外来は壮年期から又は加齢に伴い増加するが、入院受療率は後期高齢期になって増加する傾向にある。
疾病の中でも、生活習慣病のうち高血圧性疾患、虚血性心疾患、脳梗塞については、こうした傾向が顕著に現れている。
また、生活習慣病のうち血管性及び詳細不明の認知症やアルツハイマー病は、外来・入院とも後期高齢者になって顕著に増加する傾向がある。

年齢階級別の受療率・外来のグラフ年齢階級別の受療率・入院のグラフ
出所)厚生労働省大臣官房統計情報部「患者調査」(平成14年)


高齢者の心身の特性(疾病特性等)(2)

年齢階級別の受療率・外来のグラフ年齢階級別の受療率・入院のグラフ
出所)厚生労働省大臣官房統計情報部「患者調査」(平成14年)


高齢者の心身の特性(疾病特性等)(3)

年齢階級別の受療率・外来のグラフ年齢階級別の受療率・入院のグラフ
出所)厚生労働省大臣官房統計情報部「患者調査」(平成14年)



資料9

年齢階級別1人当たり医療費(年額)

1人当たり医科診療費を見ると、前期高齢期までは入院より入院外(外来)の方が比率が高いが、後期高齢期に入るとその比率が逆転する。

(医療費計) (医科診療費)
年齢階級別1人当たり医療費(年額)のグラフ


年齢階級別 三要素(入院)

入院医療費について、三要素(受診率、1件当たり日数、1日当たり医療費)に分解して見ると、後期高齢期に入ると受診率が急増するとともに、1件当たり日数が世代間で最も高くなる一方、1日当たり医療費は減少する。

受診率 1件当たり日数 1日当たり医療費
年齢階級別 三要素(入院)のグラフ


年齢階級別 三要素(入院外)

入院外医療費について、三要素(受診率、1件当たり日数、1日当たり医療費)に分解して見ると、年齢が上がるごとに増加していた受診率が、後期高齢期に入ると減少する。

受診率 1件当たり日数 1日当たり医療費
年齢階級別 三要素(入院外)のグラフ



資料10

平成14年改正における老人保健法の対象年齢引上げの理由

平成14年改正において老人保健法の対象年齢を70歳から75歳に引き上げた理由は、高齢化の進展の状況、高齢者の心身の特性等で見ると、老人保健法制定時(昭和57年)の70歳以上の者は、現在(改正時)では75歳以上の者に相当するというもの。

(昭和57年)   (平成12年)
70歳以上人口

6.1%

 →

 75歳以上人口 7.1%

平均寿命 男 74.22歳  →  77.64歳 +3.42歳
女 79.66歳

 →

 84.62歳 +4.96歳

老齢年金受給権者平均年金月額
 厚生年金  113,040円  →  (65歳以上)  178,696円
(全受給権者)    (75歳以上)  172,647円
 国民年金 25,621円  →  (65歳以上) 51,370円
(全受給権者)    (75歳以上) 39,137円



    イ  高齢者の保険料水準
    ・ 後期高齢者の給付費については、公費で賄うほか、高齢者の保険料及び国保又は被用者保険からの支援金により賄うこととなるが、このうち高齢者の保険料と支援金の負担割合については、明確なルールを決定すべきではないか。
    ・ 高齢者の保険料と支援金の負担割合のルールを決定するに当たっては、世代間の公平という観点を基本としつつ、現行制度からの円滑な移行という観点を考慮すべきではないか。



資料11

介護保険の保険料の老若配分

介護保険においては、給付費について、その5割を公費で負担し、残りの5割を高齢者(65歳以上の者)と若年者(40歳以上65歳未満の者)の数に応じて負担する仕組みとなっている。

(介護保険における老若の負担関係)
  65歳以上の者 40〜64歳の者
加入者数 2400万人 4300万人
40歳以上の者に占める割合 36% 64%
給付費に対する負担割合 18% 32%

グラフ



資料12

老人医療費の負担構造
(平成19年度推計)


現行老人保健制度では、一定以上所得者(現役並みの所得がある者)の給付費を除き、給付費 の5割を公費で負担し、残りを老健拠出金により賄っている。
老健拠出金のうち後期高齢者の保険料で賄っている部分は、平成19年度時点で約8,000 億円、給付費の約7.3%と推計される。

老人給付費 11.1兆円 (100.0%)
 公費 5.1兆円 (46.5%)
 老健拠出金 5.9兆円 (53.5%)
  うち公費 1.4兆円 (12.7%)
保険料 4.5兆円 (40.8%)
  うち75歳未満の者の負担分 3.7兆円 (33.5%)
うち75歳以上の者の負担分 0.8兆円 (7.3%)
(注) 平成14年12月「厚生労働省試案」に基づく推計値である。



資料13

高齢者人口の比率

全人口に占める75歳以上人口の比率は、平成19年では約9.7%、平成27年では約12.5%、平成37年では約16.7%と推移する。
仮に、公費5割を除いた後期高齢者の給付費を後期高齢者と後期高齢者以外の者とで人口の比率に応じて負担する場合、その比率の2分の1を負担することとなる。

  平成19年 平成27年 平成37年
(1) 全人口に占める75歳以上人口の比率
9.7% 12.5% 16.7%
   上記の比率の2分の1 4.9% 6.2% 8.4%
(2) 全人口に占める65歳以上人口の比率
21.1% 26.0% 28.7%
   上記の比率の2分の1 10.6% 13.0% 14.3%
(3) 20歳以上人口に占める75歳以上人口の比率
11.9% 15.1% 19.9%
   上記の比率の2分の1 6.0% 7.6% 10.0%
(4) 20歳以上人口に占める65歳以上人口の比率
25.9% 31.5% 34.2%
   上記の比率の2分の1 13.0% 15.7% 17.1%
(5) 0〜64歳人口と75歳以上人口の比率
11.0% 14.4% 19.0%
   上記の比率の2分の1 5.5% 7.2% 9.5%



    ウ  支援金の負担方法
    ・ 国保又は被用者保険が負担する支援金について、国保と被用者保険の間は、共通の所得捕捉が困難である現状を考慮すれば、加入者数に応じた負担とせざるを得ないのではないか。
    ・ 現行老人保健制度では、拠出金の負担が重い保険者に対しその負担を調整する制度があるが、新制度における支援金の負担調整についてどう考えるか。



資料14

75歳未満の者の制度別加入者数
(平成19年度推計)


75歳未満の者の制度別加入者数を見ると、被用者保険全体64.0%、うち政管健保30.3%、健保組合25.7%、共済組合7.9%、市町村国保32.6%となっている。

  75歳未満の加入者数 (構成割合)
全制度計 11,500万人 (100.0%)
 被用者保険計 7,300万人 (64.0%)
  政管健保 3,500万人 (30.3%)
健保組合 2,900万人 (25.7%)
共済組合 900万人 (7.9%)
 市町村国保 3,700万人 (32.6%)
(注1) 65〜74歳の者のうち、老人保健制度の対象となっている者を除いている。
(注2) 平成14年12月「厚生労働省試案」に基づく推計値である。



資料15

老人保健制度における負担調整の仕組み

老人保健制度では、老健拠出金が保険者の自立的財政運営に与える影響を考慮して、拠出金負担を調整する仕組みがある。

 老人医療費拠出金の持出し額が、法定給付費や老人医療費拠出金等各保険者の義務的な支出に比して著しく過大となる保険者の老人医療費拠出金のうち、その著しく過大となる部分について、拠出金額に応じ全保険者で公平に再按分する措置が設けられている。
 具体的には、老人医療費拠出金の持出し額が義務的支出の原則25%を超える場合に、超過額を全保険者で再按分している。

  ※  負担調整の基準率が原則25%であることは、
老人医療費拠出金の額が保険者の義務的支出の半分を超え、
かつ、老人医療費拠出金のうち当該保険者の老人医療費を超える部分が半分を超えるという状態は、各保険者の自立的な財政運営に影響を与えるとの考えによる。

老人保健制度における負担調整の仕組みの図



   (2) 保険料の賦課方法
   (基本方針)
    ・ 高齢者については、現役世代との均衡を考慮した適切な保険料負担を求める(再掲)。
    ・ 国保及び被用者保険からの支援については、別建ての社会連帯的な保険料により賄う。

   (論点)
    ア  高齢者に対する保険料の賦課方法
    ・ 保険料の具体的賦課方法については、後期高齢者個人を被保険者とすることを基本としつつ、後期高齢者は国保加入者が大半を占める現状からの円滑な移行を考慮し、個人単位で、応益・応能バランスのとれた賦課方式とすることが適当ではないか。
    ・ この際、低所得者に対しては、現行国保制度における保険料の軽減割合並びに現行老人保健制度及び介護保険制度の低所得者の範囲を考慮して、適切な負担軽減措置を講ずる必要があるのではないか。



資料16

現行制度における後期高齢者の1人当たり保険料額
(平成19年度推計)


現行制度において、後期高齢者は、国保と被用者保険を通じた平均では、平成19年度で6.3万円(年間)の保険料を負担すると推計される。

(年間)
国保 7.3万円
被用者保険 2.9万円
 (被保険者) (26.0万円)
 (被扶養者) (0万円)
制度計 6.3万円

(注) 1. 「健康保険被保険者実態調査」「国民健康保険実態調査」等により保険局調査課において推計。
2. 必要保険料額(給付費等から公費負担を控除し保険料負担が必要な額)ベースである。
3. 平成14年12月「厚生労働省試案」に基づく推計値である。



資料17

国保制度における保険料賦課の仕組みと保険料の負担状況

保険料賦課の基礎は個人単位であり、応益保険料と応能保険料を半々とするのが基本となっている。
また、所得の低い者については、応能保険料を課さず、応益保険料について最大7割を軽減している。
この結果、後期高齢者は、平成14年度において、世帯当たり平均では7.5万円、1人当たり平均では6.2万円、所得のない者でも平均1人当たり2.3万円の保険料(年間)を負担している。

国保制度における保険料賦課の仕組み

 1. 保険料
 国民健康保険の保険料は、所得等被保険者の負担能力に応じた負担となる応能部分と、被保険者1人当たりの一定額等となる応益部分によって構成されている。応能部分と応益部分の構成比率は、応能:応益=50:50を標準として定めているが、市町村が実情に応じて運用することとしている。
 2. 徴収
 世帯主から保険料を個別に徴収(普通徴収)する。

図


保険料(税)軽減制度の概要(平成16年度)

 1.  低所得者の保険料(税)負担を軽減する制度
 2.  軽減されるのは保険料(税)のうち被保険者均等割及び世帯別平等割の部分(応益割の部分)
 3.  軽減割合は以下のとおり

軽減基準所得(注1) 軽減割合(注2) 軽減基準所得に該当する年間給与収入
( )内は65歳以上の者の年金収入の場合
33万円 7割 軽減(6割軽減) 98万円
(168万円)
33万円+(24.5万円×
世帯主以外の被保険者数)
5割 軽減(4割軽減) [2人世帯の場合]
122万5千円
(212万5千円)
33万円+(35万円×
世帯に属する被保険者数)
2割 軽減(注3) [2人世帯の場合]
171万7千円
(258万円)

  (注1) 所得とは、地方税法第314条の2第1項に規定する総所得金額等(基礎控除前)である。(65歳以上の年金受給者については15万円の特別控除を適用)
  (注2) 保険料収入に占める応益保険料の割合(応益割合)が45〜55%の場合。なお、括弧内はそれ以外の場合の時。
  (注3) 2割軽減は、市町村長が当該者の前年からの所得の著しい変化等により、軽減を行うことが適当でないと認めるときは行わない。


市町村国保における後期高齢者の保険料の負担状況(平成14年度)

(年間)
  保険料負担額
  応能負担額 応益負担額
   万円  万円  万円
世帯当たり平均 7.5 4.5 3.0
(1世帯当たり1.2人)      
1人当たり平均 6.2 3.7 2.5
所得のない者1人当たり平均 2.3 0.2 2.1
出典:保険局調査課推計



資料18

介護保険制度及び老人保健制度における低所得者の範囲

介護保険制度と老人保健制度では、いずれも住民税非課税世帯を基礎とした低所得者対策を講じている。

介護保険制度(見直し後)
所得区分(保険料段階)
第6段階 本人の合計所得金額が200万円以上
第5段階 本人の合計所得金額が200万円未満
第4段階 本人が市町村民税非課税
低所得者
(住民税非課税)
第3段階 世帯全員が市町村民税非課税
第2段階 年金収入80万円以下の者
第1段階 老齢福祉年金受給者、生活保護受給者
 
老人保健制度
所得区分
一定以上所得者 課税所得124万円以上
一般 課税所得124万円未満
低所得者
(住民税非課税)
I 世帯全員が市町村民税非課税
II 世帯全員が収入65万円以下の者
※平成17年8月から145万円



    イ  社会連帯的な保険料の賦課方法
    ・ 国保又は被用者保険の保険者が被保険者に賦課する社会連帯的な保険料については、現行の老健拠出金や退職者医療拠出金を賄うための保険料同様、「社会連帯」及び「受益者負担」の観点から、負担すべきものではないか。
    ・ 社会連帯的な保険料については、通常の国保又は被用者保険の保険料とは別建てとすることとされているが、その具体的な賦課方法については、同じく別建ての保険料である介護保険の2号保険料の在り方を考慮すべきではないか。



資料19

老健拠出金及び退職者医療拠出金の負担の考え方

老健拠出金と退職者医療拠出金は、いずれも、保険者が負担する根拠は「社会連帯」と「受益者負担」の考え方を基本としている。

老健拠出金 退職者医療拠出金
「老人保健法の趣旨が、全国民の連帯の精神に基づいてということが書いてございますが、国、地方公共団体、各保険者、これが共同で財源を負担する」
(衆議院社会労働委員会(昭和56年10月22日))



負担根拠は、各保険者が従前の制度において70歳以上の加入者等に対して行っていた医療の給付が事実上市町村長によって肩代わりされることになるから各保険者に受益が生じる点にあり、このような意味で拠出金は広義の受益者負担に該当する。
(資料出所:老人保健法の解説)
自営業者等の場合は、若年の自営業者等が医療費のかかる中高年の自営業者等の医療費の一部を負担し、医療保険における費用負担の面で世代間の扶養が行われているが、被用者保険グループについても同様に世代間の連帯の理念に基づき、現役の者が退職者等の医療費についてその一部を負担すべきものである。

退職者は保険給付の必要性の比較的少ない現役時代に被用者保険に保険料を拠出し、保険財政の安定に寄与してきており、現役の被保険者および事業主はその貢献に報いる必要がある。

近年、中高年において疾病の大半を占める慢性疾患については、当該疾病について現役時代から医療を受けると否とにかかわらず、その原因は現役時代からの日常生活の積み重ねによるものと考えられる。このように原因が退職前まで遡り得る疾病が大半を占めると考えられることからも、被用者保険が退職者等の医療費の一部を負担すべきものである。
(資料出所:国民健康保険法の解釈と運用)



資料20

介護保険制度における2号保険料の賦課方法

医療保険者は、賦課された介護給付費納付金の納付のため、一般保険料(通常の医療保険料)とは別建てで介護保険料を賦課徴収する。被用者保険であれば一般保険料と同様、標準報酬に定率で賦課するのが原則である。

社会保険診療報酬支払基金

────→
  介護給付費納付金の賦課
各医療保険者

──────────────────→
  保険料の賦課  

〈被用者保険の被保険者〉
 各被用者医療保険の保険料の
算定ルールにより、原則として
被保険者の標準報酬に定率で賦課

〈国民健康保険の被保険者〉
 各市町村の国民健康保険料の
算定ルールにより、所得割、
資産割、均等割、平等割で賦課
第2号被保険者
(40歳以上65歳未満)



   (3) 公費負担
   (基本方針)
    ・ 後期高齢者に公費を重点化するという改正法の考え方を維持する。

   (論点)
    ・ 基本的には、現行老人保健制度の公費負担の仕組みを維持すべきではないか。
    ・ 公費のうち一定割合については、保険者間の財政力等の格差を調整するための財源に充てることが必要ではないか。



資料21

現行老人保健制度における費用負担構成
(平成19年度推計)


現行老人保健制度では、一定以上所得者(現役並みの所得がある者)に係る給付費を除き、給付費に対し5割の公費負担がなされている。

老人給付費 11.1兆円 (100%)
  公費 5.1兆円 (46.5%)
老健拠出金 5.9兆円 (53.5%)
  うち公費 1.4兆円 (12.7%)
うち保険料 4.5兆円 (40.8%)
(注) 平成14年12月「厚生労働省試案」に基づく推計値である。



資料22

国保制度における財政調整交付金の概要

国保の財政調整交付金は、市町村の医療費水準と所得水準に応じて財政調整を行う仕組みとなっている。

国保制度における財政調整交付金の概要の図



資料23

国保加入者のうち老人医療受給対象者の1人当たり所得の都道府県別比較

国保加入者のうち老人医療受給対象者について、都道府県別に所得水準を比較すると、最高は東京都の約115.6万円、最低は秋田県の約34.2万円、全国平均は約66.5万円であり、最高と最低とで約3.4倍の格差がある。

(単位:万円)
北海道 54.5
青森県 42.1
岩手県 43.8
宮城県 55.1
秋田県 34.2
山形県 45.5
福島県 47.5
茨城県 54.8
栃木県 58.5
群馬県 55.1
埼玉県 88.1
千葉県 76.0
東京都 115.6
神奈川県 103.1
新潟県 47.4
富山県 60.0
石川県 63.9
福井県 59.2
山梨県 57.9
長野県 51.0
岐阜県 59.0
静岡県 81.4
愛知県 83.5
三重県 54.4
 
滋賀県 59.9
京都府 63.2
大阪府 70.2
兵庫県 63.1
奈良県 77.9
和歌山県 47.7
鳥取県 48.7
島根県 46.2
岡山県 46.5
広島県 61.9
山口県 48.8
徳島県 45.9
香川県 52.3
愛媛県 47.4
高知県 46.0
福岡県 56.2
佐賀県 51.1
長崎県 43.2
熊本県 44.3
大分県 41.3
宮崎県 37.2
鹿児島県 36.1
沖縄県 62.2
全国平均 66.5

注: 国民健康保険実態調査(平成14年度)よる市町村国保の旧ただし書き課税標準額(平成13年)である。

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