【目的】
障害者の介護ニーズを判定するための指標として、現行の要介護認定基準の有効性を評価するため、福祉サービスを利用している障害者(2,468人)を対象に認定基準調査を実施
【結果】
(身体障害者)
○ | 身体障害者については、要介護認定における一次判定結果と、障害程度 区分(生活関連動作支援項目)、介護支援専門員からみた要介護度との間 に高い相関を示した。
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(知的障害者)
○ | 知的障害者については、要介護認定における一次判定結果と、障害程度区分(生活関連動作支援項目)、HoNOS、介護支援専門員からみた要介護度との間に比較的高い相関が認められた。
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(精神障害者)
○ | 精神障害者については、他の障害と比較して、要介護認定の一次判定結果と、その他の指標との間にあまり高い相関は得られなかった。
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○ | 一次判定結果が「要支援」以上であった群は、「非該当」であった群との比較において、障害程度区分、GAF、IADL、ケア必要度等他の指標の多くにおいて、重度またはケアの必要性が有意に高かった。 |
【結論】
○ | 現行要介護認定基準は、身体介護等の介護サービスに相当するサービス、グランドデザインで言うところの「介護給付」に相当するサービスの必要度を測定する上では、障害者においても有効と考えられた。 |
○ | ただし、障害者に対する支援においては、自立を目的とした機能訓練や生活訓練、就労支援等も重要であり、これらの支援の必要度の判定には、「介護給付」に相当するサービスの判定に用いられるロジックとは別のロジックが必要と考えられた。 |
1 | 目的 障害者の介護ニーズを判定する指標として、現行の要介護認定基準の有効性を評価する。 |
2 | 方法
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3 | 結果 [身体障害者]
[知的障害者]
[精神障害者]
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4 | 考察 [現行要介護認定基準の適用可能性] 現在、客観的な指標に基づき介護の必要度を判定するものとして、我が国で制度的に用いられているものは、介護保険における要介護認定基準しか存在しない。 現行の要介護認定基準は、高齢者の加齢による介護ニーズに対し、身体介護等の介護サービスの必要度を予測する指標として開発されたものであるが、今回の調査において、身体障害者及び知的障害者の身体介護を中心とした介護サービスの必要度を測定する上でも有効であることが認められた。 一方、精神障害者については、「非該当」と判定された群と「要支援以上」と判定された群の2群間の比較では、GAF等他の指標の大半において、「要支援以上」の群が「非該当」の群と比べて重度またはケアの必要性が高いという有意差が認められ、要介護認定基準が精神障害者においても身体介護等の介護サービスの必要度を反映していることが示唆された。 精神障害者について、今回のデータでは、要介護認定の一次判定結果と、介護支援専門員が判断した要介護度、障害程度区分、GAF、BPRS等他の指標との高い相関は得られなかったが、これは、(1)調査対象者の半数について「要支援」又は「要介護1」が大半であり、残りの半数も「非該当」という結果であったこと、(2)介護支援専門員の判断する要介護状態区分が比較的低いレベルに分布していること、(3)障害程度区分(日常生活支援項目)の点数も低いレベルに分布していること、から統計的な相関が高くは得られなかったと考えられる。 なお、精神障害者が実際に利用しているサービスは、その大半が、グランドデザインでいうところの「訓練等給付」に相当する授産施設等のサービスであり、「介護給付」に相当するサービスとは異なっているが、これは、精神障害者では身体障害者や知的障害者と比べて身体介護等の支援を必要とする者が、相対的に少ないという実態を反映しているものと考えられた。 |
5 | 結論 現行要介護認定基準は、身体介護等の介護サービス、グランドデザインで言うところの「介護給付」に相当するサービスの必要度を測定する上では、障害者においても有効と考えられた。 ただし、障害者に対する支援においては、自立を目的とした機能訓練や生活訓練、就労支援等も重要であり、これらの支援の必要度の判定には、「介護給付」に相当するサービスの判定に用いられるロジックとは別のロジックが必要と考えられた。 |
6 | 今後の研究方針 今回の調査結果では、障害者に対しても、「介護給付」に相当するサービスの必要度を判定する指標として、介護保険制度で用いられている要介護認定基準は有効性をもつことが認められたが、今後、これを出発点として、より精確で加齢による要介護状態、障害による要介護状態双方により有効な指標の開発を進めていくことが必要である。そのためには、介護保険の要介護認定基準策定の際に行われたようなタイムスタディの実施が不可欠であり、平成18年度にも実施できるよう、障害福祉サービスにおけるケアコードの開発等の準備を行う必要がある。 なお、障害者に対する支援は、精神障害に関する今回の調査結果からも明らかなように、訓練、就労支援など身体介護以外のサービスが必要であり、こうしたサービスの必要度を判定するための指標の開発をあわせて進めていくことが必要と考える。 |