医学研究分野における個人情報保護に係る検討について

1 検討の経緯について

 ○ 本年4月の個人情報保護法の全面施行に向けて、厚生科学審議会 科学技術部会に「医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会」(委員長:垣添忠生 国立がんセンター総長)を昨年6月に設置した。

 ○ 委員会では、昨年12月までに10回にわたり議論を行い、昨年12月24日付けで研究に関する指針の見直し内容及び個人情報保護のための格別の措置について意見書をとりまとめた。

 ※ 必要に応じ、文部科学省「ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝情報の取扱い等に関する小委員会」及び経済産業省「個人遺伝情報保護小委員会」と合同で検討。


2 当面の取組方針について

 医学研究分野においては、現在策定されている研究に関する指針の改正など以下のような個人情報を保護するための格別の措置を講じる。

(1)研究に関する指針の改正について

個人情報保護の視点から規定を抜本的に強化する見直しを実施
(1) 個人情報保護法に規定されている個人情報の保護のための措置を原則としてすべて盛り込む

(2) 個人情報保護法に上乗せした措置(例:死者の情報の保護のための安全管理措置、取り扱う個人情報の数が5,000件以下の者も対象)について指針に規定する
などの改正を行った(平成16年12月28日告示)。

(2)指針の実効性を担保するための措置について

指針の実効性を担保するための措置を実施
(1) 指針の遵守を研究費補助・助成の要件として規定
(2) 大学・公益法人等に対して、所管省庁の監督権限の中で指針の遵守を指導
(3) 指針の遵守状況をフォローアップし、その結果に基づき、必要に応じて法制化を含めた措置を実施

 私立大学・公益法人等の行う学術研究については、個人情報保護法の適用除外となっている。
 行政機関や独立行政法人等については、それぞれ個人情報の保護のための法律の対象となる(学術研究等への適用除外なし)。



(参考1)
医学研究に関する指針の概要


「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」
平成13年4月に文部科学省・厚生労働省・経済産業省の共同告示として策定。
趣旨:ヒトゲノム・遺伝子解析研究においては、特に慎重な対応が求められるヒト遺伝情報等を取扱うことを踏まえ、研究者等が遵守すべき事項を定め、研究の適正な推進を図る。
内容:倫理審査委員会による審査、個人情報保護、インフォームド・コンセント等の徹底、遺伝カウンセリングの実施 等

「遺伝子治療臨床研究に関する指針」
平成14年3月に文部科学省・厚生労働省の共同告示として策定。(平成6年2月の厚生省告示を全面改定)
趣旨:遺伝子治療臨床研究に使用される遺伝子やベクター等の有効性、安全性、品質及び生体への投与方法の安全性の確保等を図る。
内容:
(1)審査委員会の設置、個人情報保護、インフォームド・コンセント等の徹底 等
(2)実施施設の長が実施計画書を厚生労働大臣に提出して意見を求め、特に新規性のあるものについては、厚生科学審議会の意見を聴いて、意見を述べる。

「疫学研究に関する倫理指針」
平成14年6月に文部科学省・厚生労働省の共同告示として策定。
趣旨:疫学研究においては、多数の研究対象者の心身状態や周囲の環境、生活習慣等についての具体的な情報を取り扱うことを踏まえ、研究者等が遵守すべき事項を定め、研究の適正な推進を図る。
内容:倫理審査委員会による審査、個人情報保護、インフォームド・コンセント等の徹底 等

「臨床研究に関する倫理指針」
平成15年7月に厚生労働省告示として策定。
趣旨:人を対象とする医学系研究全般について、個人の尊厳、人権の尊重等の観点から、臨床研究に携わる関係者が遵守すべき事項を定め、研究の適正な推進を図る。
内容:倫理審査委員会による審査、個人情報保護、インフォームド・コンセント等の徹底 等



(参考2)
医学研究に関する各種指針の見直しについて


1.全ての指針に共通の事項

 個人情報保護法の趣旨を踏まえ、個人情報の保護のために以下のような規定を追加

 利用目的による制限
 あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。

 安全管理措置
 その取り扱う個人情報の漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。

 第三者提供の制限
 あらかじめ本人の同意を得ないで、個人情報を第三者に提供してはならない。

 個人情報の開示
 本人から、当該本人が識別される個人情報の開示を求められたときは、本人に対し、書面の交付による方法等により、当該保有個人情報を開示しなければならない。

※原則、個人情報保護法で求められる事項を網羅


2.ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針のみに関する事項

 研究の進展に対応するため以下のような規定を追加

 国内における複数機関による共同研究
 国内において複数の機関が参画する共同研究の場合に、主たる研究を行う機関の倫理審査委員会において研究計画全体の審査を行うことにより、他の共同研究機関は迅速審査を行うことができる。

 透明性の確保
 地域や集団を対象とした研究における透明性の確保のため、説明と対話の必要性を規定した。

  ※ 他の指針については個人情報保護の視点からのみ見直しを行った。研究の進展に伴う見直しについては、それぞれの指針の見直し規定に基づき随時行う予定。


3.施行期日
  平成17年4月1日

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