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第6  障害者の自立支援の推進と生活保護制度の適正な実施

 障害者施策については、障害者の地域における自立した生活を支援する体制を整備するため、制度の抜本的な見直しを行う。また、発達障害者に対する支援体制を整備するほか、精神障害者の保健福祉施策や、障害者の雇用・就労支援と職業能力開発の充実を図る。
 さらに、生活保護受給者の自立・就労を支援するため、自立支援プログラムの導入を推進する等、生活保護制度の適正な実施を図る。

 障害者の地域生活を支援するための施策の推進
6,577億円(6,154億円)

(1) 居宅生活支援サービス等の推進
 3,887億円
   障害者が身近な地域で自立した生活を送れるよう、ホームヘルプ、グループホーム等の居宅生活支援サービス等の推進を図る。
  (平成16年度)   (平成17年度)  
 居宅生活支援費 602億円 930億円 (328億円増)
 施設訓練等支援費 2,871億円 2,902億円 ( 30億円増)

(2) 発達障害者に対する支援
 7億円
   発達障害者の乳幼児期から成人期までの各ライフステージに対応する一貫した支援を行うため、都道府県等に発達障害の検討委員会を設置、障害保健福祉圏域において個別支援計画の作成等、支援の体制整備をモデル的に実施するとともに、自閉症・発達障害支援センターの拡充を図る。

(3) 社会参加等の促進
 276億円
   障害のある人が社会の構成員として地域で共に生活できるよう、身体障害者補助犬育成事業や情報・コミュニケーション支援事業などの障害者自立支援・社会参加総合推進事業及び補装具給付事業等を推進する。

 精神障害者保健福祉施策の充実
956億円(806億円)

(1) 精神障害者の社会復帰対策の推進
 257億円
   精神障害者の社会復帰を促進するため、退院後の地域生活支援の拠点として、グループホームをはじめとする居宅生活支援サービス及び社会復帰施設の充実を図る。

(2) 良質かつ適切な精神医療の効率的な提供
 617億円
   在宅の患者に身近な地域において良質かつ適切な精神医療を提供するため、通院医療公費負担を行うほか、現行の輪番制による精神科救急に加え、精神科救急医療センターの整備を図る。

(3) 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療体制の整備
 82億円
   心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対する適切な医療を実施するとともに、指定医療機関の運営に必要な経費の負担、医療従事者等の養成研修を行うなど医療体制の整備を図る。

 障害者の雇用・就労支援と職業能力開発の充実
261億円(239億円)

(1) 精神障害者に対する雇用対策の強化
 6.3億円
 ○  精神障害者に対する総合的雇用支援の実施(新規)
 2.9億円
   精神障害者の復職・雇用促進、在職精神障害者の雇用継続に取り組む事業主に対し、総合的・体系的な支援を行うとともに、精神障害者の職業生活への移行を円滑に図るための支援技法を開発する。

(2) 多様な形態による障害者の就業機会の拡大
 65億円
 ○  ITを活用した在宅就労支援事業者(バーチャル工房)への支援(新規)
 1.5億円
   在宅の障害者に対して情報機器やインターネットを活用し、在宅で就労するための訓練の支援を行う事業者(バーチャル工房)に対する補助事業を創設するとともに、同工房に対する技術指導等にかかる支援を実施する。

 ○  障害者試行雇用事業の拡充
 9億円
   事業主に障害者雇用のきっかけを提供するとともに、障害者に実践的な能力を取得させ、常用雇用へ移行するため短期間の試行雇用を実施して、障害者雇用を推進する。
対象者数 4,200人 → 6,000人

(3) 雇用と福祉の連携による障害者施策の推進
 11億円
 ○  地域における福祉的就労から一般就労への移行の促進(新規)
 66百万円
   ハローワーク、福祉施設、地域障害者職業センター等の関係機関の緊密な連携の下に、授産施設等の福祉施設で就労している障害者の一般就労への移行を支援する事業を創設する。

 ○  障害者就業・生活支援センター事業の拡充
 10億円
   障害者に対する就業及び日常生活に係る相談、助言等を実施する「障害者就業・生活支援センター」の設置箇所数を拡充する。
80箇所 → 90箇所

(4) 福祉部門における就労支援の充実
 108億円
   小規模作業所への支援を充実強化する事業を創設し育成等を図るとともに、地域での障害者の就労支援を促進させる。

(5) 障害者に対する職業能力開発の推進
 70億円
 ○  公共職業能力開発施設における障害者訓練の推進
 55億円
   障害者職業能力開発校が設置されていない地域において、職業能力開発校に知的障害者等を対象とした訓練コースを設定し、障害者の職業訓練の全国的な体制整備を図る。
実施県 15県 → 23県

 ○  事業主や社会福祉法人等の民間を活用した実践的な職業訓練の推進
 15億円
   企業、社会福祉法人等の多様な委託訓練先を開拓し、精神障害者をはじめとする様々な障害の態様に応じた職業訓練を推進する。
委託訓練対象者数 5,000人 → 6,000人

 年金を受給していない障害者への特別給付金の支給
101億円

 ○  特定障害者に対する特別障害給付金の支給
 101億円
   (I 平成17年度予算のポイントに掲載)

 生活保護制度の適正な実施
1兆9,366億円(1兆7,489億円)

(1) 自立支援プログラム導入の推進
   生活保護受給者の実情に応じた自立・就労支援のため、ハローワークとの連携も図りつつ、自立支援プログラムの導入を推進する。

(2) 生活保護基準の見直し
 ○  生活扶助費
   国民の消費動向や社会経済状況などを総合的に勘案し、前年度同額とする。

 ○  母子加算等生活扶助基準の見直し
   16〜18歳の子どものみを養育するひとり親世帯について、母子加算の支給対象外とし、支給額を3年間で段階的に廃止する。また、多人数世帯(4人以上)の生活扶助基準額の適正化等の見直しを行う。

 ○  高校就学費用の給付
   生活保護を受給する有子世帯の自立を支援する観点から、新たに高等学校への就学費用を給付する。

 ○  老齢加算の段階的廃止(2年目)
   平成16年度からの3年間で段階的に廃止する。

  ※  生活保護費負担金については、三位一体改革の政府・与党合意(平成16年11月26日)において、「生活保護費負担金の補助率の見直しについては、地方団体関係者が参加する協議機関を設置して検討を行い、平成17年秋までに結論を得て、平成18年度から実施する」こととされた。


第7  安心・安全な職場づくりと公正かつ多様な働き方の実現

 経済環境が著しく変化する中で発生している重大な災害を防止するとともに、過重な労働による労働者の健康障害防止やメンタルヘルス対策を行う。また、賃金不払残業の解消など誰もが安心して安全に働ける職場づくりを推進する。
 さらに、多様な働き方が広がる中で、労働者個人の生活に配慮した働き方を実現できる環境の整備を行うとともに、男女雇用機会均等の確保など公正な働き方を推進する。

 安心して安全に働ける環境づくり
310億円(336億円)

(1) 重大災害の発生を防止するための安全対策の推進
 20億円
   事業主が自主的に事業場の危険・有害要因の低減を図るため、事業主自らが計画を作成する「労働安全衛生マネジメントシステム」の普及を推進し、労働災害のより一層の防止を図る。

(2) 過重労働による健康障害防止対策、メンタルヘルス対策の推進
 30億円
   労働者の過重労働による健康障害の防止に向けて事業主が留意すべき事項をまとめた手引きを作成し周知・啓発する。また、事業主に対してメンタルヘルス関係の専門家による指導を行うなど、過重労働による健康障害防止対策及びメンタルヘルス対策を促進する。

(3) 石綿等有害物質に係る健康障害防止対策の推進
 3.9億円
   建築物の解体作業等において、事業主が行う石綿含有の有無の分析等によるばく露防止対策の充実や作業計画の作成などの取組を促進する。

(4) 賃金不払残業の解消に向けた取組等の推進
 255億円
   「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」の周知・啓発により労使の自主的な改善を進めるとともに無料電話相談窓口を引き続き開設し、賃金不払残業の解消に向けた取組を促進する。
 また、企業倒産により賃金が未払のまま退職させられた労働者に対する未払賃金立替払制度について、迅速かつ適正な運営を行う。

 多様な働き方を選択できる環境整備
19億円(20億円)

(1) パートタイム労働者と正社員との均衡処遇の推進
 4.8億円
   パートタイム労働者と正社員との均衡の確保に向けた先駆的な取組を行う事業主を支援すること等により、パートタイム労働者と正社員との間の均衡処遇の浸透・定着に向けた環境整備を図る。

(2) 在宅就業対策等の推進
 1.8億円
   在宅就業のための知識・技術の到達度や仕事の適性等を自己確認できるような能力評価システムを開発するとともに、各種情報提供、相談援助を行う。あわせて、在宅勤務による健康面、社会的効果や労働条件への影響についての調査を行う。

(3) ワークシェアリングの普及促進
 2.2億円
 ○  多様就業型ワークシェアリング導入モデル開発事業の実施
 2.1億円
   多様な働き方の選択肢を拡大するため、短時間正社員制度等の導入に向けたモデルの開発を進めるとともに、多様就業型ワークシェアリングに関する普及啓発を行う。

(4) 生活に配慮し、多様な働き方に対応した環境整備
 10億円
   多様な働き方が広がる中で、労働者個人の生活に配慮した労働時間管理に関する労使の自主的取組を推進し、長期休暇制度の普及促進を図るなど労働環境の整備を図る。

 公正な働き方の推進
18億円(17億円)

(1) 男女雇用機会均等確保対策の推進
 3.3億円
   男女雇用機会均等法の適正な施行に努めるとともに、いわゆる「コース別雇用管理」制度の適正な運用に向けた周知徹底と行政指導の一層の強化を図る。
 また、男女雇用機会均等政策研究会報告を受け、男女双方に対する差別の禁止や妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの問題への対応等、均等施策の更なる推進に向けた検討を行う。

(2) 個別労働紛争対策の総合的な推進
 14億円
   増加する個別労働紛争の実情に即した迅速かつ適正な解決を図るため、都道府県労働局での紛争解決制度を着実に推進するとともに、新たに企業内での紛争の自主的解決の促進に向けた人材育成に対する支援を図る。

(3) 労働分野におけるCSR(企業の社会的責任)の推進(新規)
 10百万円
   企業の労働における社会的責任の取組を推進する支援策のあり方について検討を行う。


第8  安心で質の高い医療の確保等のための施策の推進

 医療に対する国民の信頼を高め、安全で安心な医療が提供されるよう、医療安全対策を総合的に推進するとともに、医療のIT化や、医師の臨床研修制度の円滑な推進等を図る。また、救急医療の充実など質の高い効率的な医療提供体制の構築を図るとともに、医療保険制度の安定的な運営を確保する。
 また、SARS等の感染症対策の充実を図るともに、肝炎対策、エイズ対策等を推進する。

 安心で質の高い医療提供体制の充実
498億円(537億円)

(1) 医療安全対策の総合的推進
 13億円
 ○  診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業(新規)
 1億円
   医療の質と安全性を高めるため、医療機関から診療行為に関連した死亡等の調査依頼を受け付け、法医学者・病理学者合同で解剖を実施するとともに、専門医による事案調査も実施し、それらの結果に基づき、因果関係及び再発防止策を総合的に検討するモデル事業を実施する。

 ○  医療事故に関する情報の収集・分析・提供事業の推進
 1.1億円
   医療事故の発生予防・再発防止のため、「第三者機関」において医療機関等から幅広く事故に関する情報を収集し、これらを総合的に分析した上で、その結果を医療機関等に広く情報提供する事業の充実を図る。

 ○  医薬品表示コード化による医療事故防止対策の推進
 40百万円
   医薬品の名称や外観の類似により生じる製品取り違えの医療事故を防止するため、医薬品コード表示に必要なコード体系データベースを整備する。

(2) 救急医療の充実をはじめとする地域医療の確保
 363億円
   救急医療体制の計画的かつ体系的な整備を図るため、救命救急センター等の整備を進めるとともに、災害時に迅速な派遣が可能な災害派遣医療チーム(DMAT)の研修を実施する。
 へき地・離島の診療所とへき地医療拠点病院等を結ぶテレビ会議システム等を整備するとともに、医療機関を退職した医師に対し、再就業のための再教育を行い、へき地・離島の診療支援体制の整備を図る。

(3) 医療のIT化の着実な推進
 10億円
   電子カルテシステムの普及を図るため、地域の中心的役割を果たしている医療機関にWeb型電子カルテシステムを導入し、セキュリティを確保したインターネットを介して、周辺の連携医療機関が電子カルテの活用を図るネットワークを構築するための事業等を行う。

(4) 質の高い看護の提供
 113億円
 ○  訪問看護ステーション多機能化に向けた検討(新規)
 1.3億円
   患者が訪問看護ステーションに通所し、集中的に効率的な看護の提供を受ける「通所看護」機能などの訪問看護ステーションの多機能化に向けた検討を行うなど、訪問看護事業の拡充を図る。

 ○  新人助産師に対する医療安全推進モデル研修事業(新規)
 78百万円
   医療安全の確保に向け新人助産師に対し、十分な教育体制(専任の指導者等)と研修プログラムに基づき研修を実施する医療安全推進モデル研修事業を行う。

 新臨床研修制度の円滑な推進
200億円(188億円)

 ○  医師臨床研修の推進
 182億円
   平成16年度より必修化された医師臨床研修について、引き続き、適切な指導体制の下での研修を実施するため、研修を行う病院に対し、必要な支援を行う。

 ○  歯科医師臨床研修の推進
 11億円
   平成18年度からの歯科医師の臨床研修必修化に向け、所要の準備を進める。

 感染症・疾病対策の推進
1,839億円(1,801億円)

(1) 感染症対策の充実
 76億円
 ○  動物由来感染症対策の推進
 1.8億円
   「動物の輸入届出制度」の施行に向けて、検疫所における届出の受理・審査体制を整備するほか、制度の普及啓発、電子申請システムの開発等を行い、動物由来感染症対策の推進を図る。

 ○  新興・再興感染症対策に関する研究の推進
 19億円
   SARS、新型インフルエンザ等の診断法・治療法など、新興・再興感染症に関する研究を推進する。

(2) 肝炎対策の推進
 51億円
   C型肝炎等緊急総合対策に基づき、老人保健事業における肝炎ウイルス検診など各種健康診査の場を活用した肝炎ウイルス検査の実施、肝炎ウイルス感染者に対する保健指導や肝炎に関する正しい情報提供等を引き続き実施するとともに、特に肝炎・肝硬変・肝がん等の予防及び治療法の研究について一層の推進を図る。

(3) 移植対策の推進
 27億円
 ○  臓器移植対策の推進
 5.2億円
   臓器移植に対する理解を深めるため、公共広告機構の協力を得て、テレビ、新聞等のメディアを活用した普及啓発の一層の推進を図る。

 ○  造血幹細胞移植対策の推進
 18億円
   既存の骨髄ドナー登録者の意識啓発を図るとともに、ドナー登録窓口体制の充実により、骨髄ドナー登録者の確保を図る。また、より移植に適した細胞数の多いさい帯血の確保を図る。

(4) 難病対策の推進
 1,115億円
   難治性疾患に関する調査・研究の推進により、治療法等の確立と普及を図るとともに、難病相談・支援センター事業等の充実により、地域における難病患者の療養生活支援の一層の推進を図る。

(5) ハンセン病対策の推進
 468億円
   ハンセン病療養所入所者の療養を確保するとともに、退所者に加え、ハンセン病療養所に入所歴のない者の社会生活に対する支援を新たに行う。また、ハンセン病資料館の拡充など、ハンセン病に関する正しい知識の啓発普及の充実を図る。

(6) エイズ対策の推進
 87億円
   エイズ発生動向を踏まえ、青少年や同性愛者等に対する啓発普及や、大都市における休日・夜間の検査・相談体制を充実する。また、平成17年7月に我が国で開催予定のアジア・太平洋地域エイズ国際会議を支援する。

(7) リウマチ・アレルギー対策の推進
 11億円
   リウマチ、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギーなど免疫アレルギー疾患の病因・病態の解明、治療法の開発等の研究を推進するとともに、正しい情報の普及啓発を図る。

(8) シックハウス対策の推進
 3.6億円
   シックハウス症候群の原因分析、診断・治療法の研究等を活用し、関係省庁と連携しつつ、総合的な対策を推進する。

 安定的で持続可能な医療保険制度運営の確保
8兆723億円(8兆1,238億円)

 ○  政府管掌健康保険、国民健康保険、老人保健制度等に係る医療費国庫負担
 8兆723億円


第9  国民の安全のための施策の推進

 医薬品安全対策については、従来の製薬企業等を通じた事後的な対応のみならず、学会、医療機関、企業等との連携による予測・予防型の積極的な副作用対策を実施するとともに、医療機器審査の充実・強化や血液対策等を推進する。
 また、国民の健康保護の観点から、残留農薬基準の策定や食品添加物の安全性確認、消費者等との食品安全に関するリスクコミュニケーションの充実、輸入食品、健康食品の安全対策の強化など食品安全対策を引き続き推進する。
 あわせて、健康危機管理体制の強化、医薬品・医療機器産業の国際競争力の強化を図る。

 医薬品・医療機器の安全対策等の充実
122億円(128億円)

(1) 安全対策の充実・強化
 5.5億円
 ○  重篤副作用疾患の早期発見、早期対応の推進(新規)
 44百万円
   重篤な副作用の早期発見、早期対応のため、関係学会等と連携の上、初期症状、典型症例、診断法等を包括的にとりまとめた「重篤副作用疾患別適正対応マニュアル」(4年間で120疾患)を作成し、医療機関や患者等に情報提供する。
 また、計画的にリスク因子の解明と副作用の発生機序研究を推進することにより、将来的には副作用の発生を低減した新薬開発を可能とするなど、医薬品の安全対策について、これまでの事後対応型に加え、予測・予防型の積極的な副作用対策を展開する。

 ○  小児に対する薬物療法の質の向上(新規)
 66百万円
   小児用の適応・用法用量等に関する情報が必要な医薬品について、学会や医療機関等と連携して、処方情報や文献情報を収集・解析し、使用法の評価、整理を行い、製薬企業に承認申請等を指導する(5年間で約100薬剤)。

 ○  妊婦のためのクスリ情報センターの設置(新規)
 48百万円
   新たに設置する「妊婦のためのクスリ情報センター」(国立成育医療センターに設置)において、服薬の影響を心配する妊婦からの相談業務を通じ、妊婦の服薬情報とその後の出生児への薬の影響の有無に関する情報を収集・蓄積・データベース化し、服薬相談や添付文書の改訂に活用する。

(2) 医療機器審査の充実・強化
 1.4億円
   IT、バイオテクノロジーなど多様な最先端の技術を用いた医療機器を医療の場に迅速に提供するため、医療ニーズが高く実用可能性のある次世代医療機器(5分野)について、審査時に用いる技術評価指標等を予め作成し、公表することにより、製品開発の効率化及び承認審査の迅速化を図る。

(3) 血液対策の推進
 8億円
   輸血医療の一層の安全性を確保するため、健康な献血者を確保し、検査目的での献血を防止する観点から、献血者情報システムの整備、献血時の問診強化、複数回献血クラブの設立などを推進する。

(4) 薬剤師の資質向上対策の推進
 1.1億円
   医療の担い手としての質の高い薬剤師を養成するため、薬学教育6年制の移行に伴う実務実習に必要な指導薬剤師の養成や、4年制卒薬剤師に対する知識・経験の更なる向上のために研修の充実強化を図る。

 国民の健康保護のための食品安全対策の推進
157億円(159億円)

(1) 食品衛生法に基づく基準の策定等の推進
 17億円
 ○  食品添加物の安全性確認の計画的な推進
 13億円
   長い食経験等を考慮して使用が認められている既存添加物について、毒性試験等の安全性確認を計画的に推進する。
 さらに、国際的に安全性が確認され、かつ、広く用いられている食品添加物について、必要な場合には国が指定のための安全性確認を行う。

 ○  残留基準未設定の農薬等の基準策定の計画的な推進
 3.3億円
   残留基準が設定されていない農薬、動物用医薬品等の食品中への残留を禁止する措置(ポジティブリスト制)の導入(平成18年5月までに導入)に向けて、基準等の設定を計画的に推進する。

 ○  食品汚染物質の安全性検証の推進
 46百万円
   長期にわたる摂取による健康への影響が懸念される食品中の汚染物質のうち、重金属について、各食品別の濃度や摂取量を調査し、安全性の精密な検証を推進する。

(2) 消費者等への情報提供の充実
 36百万円
 ○  食品安全に関する情報提供や意見交換(リスクコミュニケーション)の充実
 28百万円
   食品安全に関する施策についての国民の理解や信頼を構築するため、的確な情報提供や消費者等との意見交換会を行うなど、リスクコミュニケーションの取組を充実する。

(3) 輸入食品等の安全対策の強化
 126億円
 ○  輸入食品の監視等の強化
 19億円
   輸入食品の過去の違反状況、危険情報等を踏まえた輸入食品監視指導計画に基づき検疫所で行うモニタリング検査の充実を図るとともに、輸入食品監視支援システムの改善を行うことにより、検疫所における業務の効率化を図る。
 さらに、食品衛生法に基づく包括的輸入禁止規定の発動が検討されている輸出国に対して、食品衛生全般における衛生状態及び管理状態を確認し必要な措置を求めるなど、輸入食品の安全対策を強化する。
モニタリング検査計画件数 平成17年度 76,682件

 ○  健康食品対策の充実・強化
 73百万円
   消費者が健康食品を適切に選択できるよう、正確かつ十分な情報提供の方策を講じるとともに、食品の健康保持増進効果等に関する虚偽・誇大な広告に対する監視強化を図る。
 さらに、健康影響が懸念される安全性が疑わしい健康食品については成分分析等を行うなど、健康被害を未然に防ぐための対策の充実を図る。

 ○  食肉の安全確保対策の推進
 33億円
   と畜場におけるBSE検査の実施について、引き続き特例措置として、検査キットに対する国庫補助を行う。

(4) 食品安全に関する研究の推進
 14億円
   食品リスク分析による衛生管理手法の開発、先端科学を融合・応用した検出技術の開発や健康影響についての科学的根拠に基づいた安全性に係る調査研究など、食品安全に関する研究を推進する。

 安全で良質な水の安定供給
902億円(965億円)

 ○  水道施設の整備
 900億円
   すべての国民に安全で良質な水道水の供給を行うとともに、地震・渇水時においても安定的な給水を確保するなど、平成16年6月にとりまとめた「水道ビジョン」の実現に向けた取組を推進する。

 麻薬・覚せい剤等対策の推進
9億円(14億円)

 ○  青少年に対する薬物乱用防止の普及啓発(新規)
 20百万円
   近年増加傾向にあるMDMA等錠剤型合成麻薬や大麻の乱用に対応するため、薬物乱用による危険性の周知、薬物犯罪に対する規範意識の醸成等を目的とした啓発資材を作成し、薬物乱用の一層の浸透が懸念される青少年層を対象とした予防啓発活動を展開する。

 ○  取締体制の強化
 5.7億円
   インターネットの利用等により潜在化・広域化する薬物密売等に対処するため、取締体制を強化する。

 医薬品・医療機器産業の国際競争力の強化
179億円(56億円)

(1) 基礎研究の推進
 63億円
 ○  先端的医療の実用化、治験等の臨床研究の推進
 20億円
   基礎研究成果について実用化の可能性を探り、患者に有用な医薬品・医療技術等を提供する機会を増加させるための探索的な臨床研究、先端技術の臨床応用に関する研究を推進する。あわせて、医師主導の治験を促進するための環境整備についても拡充を図る。

 ○  効果的医療技術、萌芽的先端医療技術の確立研究の推進
 33億円
   小児分野の標準的医療技術の確立及び医薬品の適正使用を推進する。また、民間企業との連携のもと、トキシコゲノミクス技術やナノテクノロジーを活用した、より安全かつ効率的な医薬品・医療機器の開発に資する研究を推進し、更にゲノム研究の成果を活用してゲノムレベルでの個人差を踏まえた医薬品の効果及び副作用を事前に予測するシステムの開発により、最適な処方を可能とする研究を推進する。

 ○  身体機能の解析・補助・代替のための機器開発の推進
 10億円
   ナノテクノロジー、IT、バイオテクノロジー等の先端的要素技術を効率的に組み合わせて、生体機能を立体的・総合的に解析し、補助・代替する機能を持つ、新しい医療機器の開発を推進する。

(2) 独立行政法人医薬基盤研究所設立による創薬基盤研究等の推進
 116億円
   平成17年4月に設立される独立行政法人医薬基盤研究所において実施されるゲノム科学、たんぱく質科学等を活用した基盤的研究、生物資源研究及び研究開発振興の推進により、画期的新薬の開発に結びつく創薬基盤の整備を図る。

 健康危機管理体制の強化
2.1億円(72百万円)

 ○  国際健康危機管理ネットワークの推進
 72百万円
   SARS等の新興感染症、生物剤等によるテロ事案による国民の健康被害を最小限にするため、ネットワーク強化研究事業及び健康危機管理の人材養成・効率的人材活用に関する研究を推進する。

 ○  国立感染症研究所における危機管理体制の強化
 1.4億円
   国立感染症研究所において、危機管理能力の強化を図るため、国内外での未知の感染症等発生時にWHO等を枠組みとする積極的・広範な疫学調査チームへの参加、対応及び調整を行うとともに、病原体のゲノム情報の蓄積、データベース化や科学的解析を推進する。


第10  その他

 国際社会への貢献
269億円(271億円)

(1) 国際機関を通じた国際的活動の推進
 179億円
 ○  世界保健機関(WHO)等を通じた活動の推進
 106億円
   世界保健機関(WHO)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)への拠出等を通じ、SARSや鳥インフルエンザ等の新興・再興感染症、エイズ、結核等への対応や食品の安全対策の国際的な活動を推進する。

 ○  国際労働機関(ILO)を通じた活動の推進
 70億円
   国際労働機関(ILO)への拠出等を通じ、労働者の基本的な権利の実現、人材育成等の国際的な活動を推進する。

(2) 開発途上国に対する国際協力等の推進
 39億円
   ASEAN諸国等の開発途上国に対し、保健医療、福祉分野への支援、労使関係の安定化、人材養成に関する支援などの協力を積極的に行う。

 戦傷病者・戦没者遺族の援護等(戦後60周年関係事業の実施)
570億円(607億円)

 ○  戦没者等の遺族に対する特別弔慰金の支給(支給事務経費)
 4億円
   戦後60周年という機会をとらえ、国として弔慰の意を表すため、戦没者等の遺族に対する特別弔慰金(額面40万円の10年償還の国債)を支給する。

 ○  戦傷病者等の労苦継承事業(仮称)の実施
 6億円
   戦傷病者及びその妻等が体験した労苦を後世代に伝えることを目的とした「戦傷病者史料館」(仮称)を設置・運営する。

 ○  戦没者遺児による慰霊友好親善事業の拡大
 3.2億円
   戦没者遺児が旧主要戦域の住民との友好親善を図りつつ、広く戦争犠牲者の慰霊追悼などを行う事業について、戦後60周年を迎える平成17年度は参加する遺族と対象地域を拡大する。

 ○  全国戦没者追悼式にかかる国費による参列遺族数の拡大
 1.2億円
   毎年8月15日に実施する全国戦没者追悼式について、平成17年度は戦後60周年を迎えることもあり、国費による参列遺族数を拡大する。

 中国残留邦人等の支援
16億円(17億円)

 ○  自立支援通訳の派遣期間の拡充
 41百万円
   永住帰国した帰国者等への自立支援通訳を、医療・介護を受ける場合には、5年目以降も派遣する。

 原爆被爆者の援護
1,566億円(1,571億円)

 ○  保健、医療、福祉にわたる総合的な施策の推進
 1,566億円
   原爆被爆者に対する健康診断の実施、医療の給付及び諸手当の支給のほか、在外被爆者に対する支援、調査研究及び国立原爆死没者追悼平和祈念館の運営等を行う。

 生活衛生関係営業の指導及び振興の推進
17億円(18億円)

 ○  生活衛生関係営業の振興のための支援
 17億円
   経営の健全化、衛生水準の維持向上を図るため、全国生活衛生同業組合連合会等における経営革新、消費者サービスの向上や健康増進のための自主的活動を支援、促進するとともに、国民生活金融公庫(生活衛生貸付)の融資内容の充実等を図る。

 「食育」の推進
5億円(5.6億円)

 ○  国民健康づくり運動を通じた「食育」の推進
 4億円
   糖尿病の予防に重点を置いた栄養指導マニュアルの策定やボランティアによる食生活改善等を推進する。

 ○  「健やか親子21」による母子保健運動を通じた「食育」の推進
 23百万円
   食を通じた子どもの健全育成をねらいとした乳幼児栄養調査の実施など調査研究の推進を図る。

 ○  消費者等とのリスクコミュニケーションを通じた「食育」の推進
 72百万円
   食品の安全性に関するシンポジウムの開催など消費者と双方向のコミュニケーション等を通じて、食品の安全性の確保に関する知識と理解を深める。

 ホームレスの自立支援等基本方針を踏まえた施策の推進
32億円(30億円)

 ○  自立支援事業の充実等
 31億円
   ホームレスの自立を支援するため、総合相談推進事業や技能講習事業等を実施するとともに生活相談・指導、職業相談、健康診断等を行う自立支援事業の充実を図る。

 ○  ホームレス就業支援事業(仮称)の創設(新規)
 1.2億円
   野宿生活を余儀なくされているホームレスのうち自立の意思がある者を対象に地方公共団体と民間団体が連携を図りつつ、就業機会の確保を図る事業を創設する。



平成17年度厚生労働省予算案の主要事項一覧表

(単位:百万円)
項目 主要事項 平成16年度
予算額
平成17年度
予算案
第1   生涯にわたり元気で活動的に生活できる「明るく活力ある社会」の構築〜健康フロンティア戦略の推進
 「働き盛りの健康安心プラン」による生活習慣病対策等の推進
4,940
 「女性のがん緊急対策」による女性の健康支援対策の推進
4,349
 「介護予防10カ年戦略」による効果的な介護予 防対策の推進
69,762
 「健康寿命を伸ばす科学技術の振興」
23,633
第2   次世代育成支援対策の更なる推進
 地域における子育て支援対策の充実
316,980 343,706
 多様な保育サービスの推進
345,626 341,015
 子育て生活に配慮した働き方の改革
2,714 3,649
 児童虐待への対応など要保護児童対策等の充実
11,311 11,649
子どもの健康の確保と母子保健医療体制等の充実
28,066 25,755
 母子家庭等自立支援対策の推進
311,563 335,137
第3   若年者を中心とした「人間力」強化の推進
 若者人間力強化プロジェクトの推進
12,633 17,728
 若者自立・挑戦プランの推進
18,988 19,458
 企業ニーズ等に対応した職業能力開発の推進
24,301 22,798
 キャリア形成支援のための条件整備の推進
4,896 4,927
第4   雇用のミスマッチ の縮小のための雇用対策の推進
 地域の雇用創造に取り組む市町村等に対する総合的な支援の実施
1,876 368
 地域に密着した産業雇用の再生・強化
14,882 13,697
 民間や地方公共団体との共同・連携による効果的な職業紹介、情報提供の推進
1,914 3,121
 求職者の個々の状況に的確に対応したハローワーク等の就職支援の充実
35,348 39,676
第5   高齢者が生きがいを持ち安心して暮らせる社会の実現
 持続可能な介護保険制度の構築と関連施策の推進
2,053,535 2,090,044
 高年齢者等の雇用・就業対策の充実
87,607 85,419
 持続可能で安心できる年金制度の構築
5,824,632 10,703,153
 安定的で効率的な年金制度の運営の確保等
<加入適用、保険料徴収、年金給付及び年金相談の実施等>
566,667 532,362
第6   障害者の自立支援 の推進と生活保護 制度の適正な実施
 障害者の地域生活を支援するための施策の推進
615,350 657,661
 精神障害者保健福祉施策の充実
80,609 95,561
 障害者の雇用・就労支援と職業能力開発の充実
23,904 26,057
 年金を受給していない障害者への特別給付金の支給
10,101
 生活保護制度の適正な実施
1,748,858 1,936,570
第7   安心・安全な職場づくりと公正かつ多様な働き方の実現
 安心して安全に働ける環境づくり
33,641 31,000
 多様な働き方を選択できる環境整備
1,969 1,900
 公正な働き方の推進
1,741 1,823
第8   安心で質の高い医療の確保等のための施策の推進
 安心で質の高い医療提供体制の充実
53,701 49,819
 新臨床研修制度の円滑な推進
18,824 19,981
 感染症・疾病対策の推進
180,121 183,908
 安定的で持続可能な医療保険制度運営の確保
8,123,766 8,072,313
第9   国民の安全のための施策の推進
 医薬品・医療機器の安全対策等の充実
12,794 12,198
 国民の健康保護のための食品安全対策の推進
15,881 15,703
 安全で良質な水の安定供給
96,522 90,171
麻薬・覚せい剤等対策の推進
1,442 924
 医薬品・医療機器産業の国際競争力の強化
5,559 17,893
 健康危機管理体制の強化
72 213
第10   その他
 国際社会への貢献
27,100 26,866
 戦傷病者・戦没者遺族の援護等(戦後60周年関係事業の実施)
60,702 57,025
 中国残留邦人等の支援
1,655 1,572
 原爆被爆者の援護
157,090 156,641
 生活衛生関係営業の指導及び振興の推進
1,770 1,707
 「食育」の推進
559 497
 ホームレスの自立支援等基本方針を踏まえた施策の推進
3,018 3,197


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