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資料4

「ALS以外の在宅療養患者に対する家族以外の者によるたんの 吸引の取り扱いについて」報告書案に対する意見

山路憲夫

たんの吸引について「医行為」であるという前提に立ち、在宅のALS患者と同様の条件で家族以外の者がたんの吸引をするのを認めるのは無理がある。それは以下の理由による。

 (1) 家族以外の者、例えばヘルパー職がたんの吸引をする場合は、条件つきで認めたとしても、あくまで本来の業務として認められないために、家族とヘルパー個人との間で、私的な依頼に基づく業務外の仕事にならざるを得ない。ヘルパーにとって特別な報酬があるわけでもない。「ALS通知」後、たんの吸引をするヘルパーがそれほど増加してはいないこと、地域によっては関係機関の認識が不十分などの理由で吸引が実施できないケースもある(報告書)。
 しかもヘルパーの属する民間居宅事業者によっては、事業所責任者が拒否するケースもある(日本ALS協会近畿ブロック調査)という。これはヘルパーが吸引をすることが本来の業務以外の仕事という位置付けが変わらない以上、改善されないのは、当然と考える。

 (2) 事業主がヘルパーに研修を義務付けることも難しい。

 (3) 「報告書」案は、療養環境の管理を今回の措置の条件としているが、実際にはそうしたメディカル・コントロール(かかりつけ医の下で、定期的に医師や看護師がチェックする)を制度として位置付けなければ実効性がない。「ALS通知」後、療養環境の管理が進んだという調査もない。

⇒[結論]
 今後、訪問看護の充実が望まれるが、その早急な改善はなかなか難しい中で、家族の負担を軽減するという「ALS検討会」や今回の検討会の大きな目的を実現させるためには、以下の2つの方策を将来(それほど遠くはない時期)の課題として付言したい。

 (1) 一つは今検討会で出されたように、たんの吸引などについては医行為と切り離し生活援助行為として位置付け、その技術修得に付いては研修あるいは現在の介護福祉士の養成カリキュラムの中に含める。

 (2) あるいはそうした考えとは別に、たんの吸引など在宅でケアしていく場合に日常的に必要とされるプライマリーな医行為ができる資格を設ける。例えばドイツの老人介護士など他の国にもあるような資格を養成するコースを高校卒業後3年制で設けることも検討すべきではないか。これについてはALS検討会のメンバーの平林・國學院大學教授らが主張している考えである。

 以上の2点のような改革をしない限り「報告書」のような「当面の措置」だけでは、増え続ける在宅ケアに対応できない。

以上


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