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II 用語の定義等

1.個人情報(法第2条第1項)
 「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日、その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。「個人に関する情報」は、氏名、性別、生年月日等個人を識別する情報に限られず、個人の身体、財産、職種、肩書き等の属性に関して、事実、判断、評価を表すすべての情報であり、評価情報、公刊物等によって公にされている情報や、映像、音声による情報も含まれ、暗号化されているか否かを問わない。
 また、例えば診療録には、患者について客観的な検査をしたデータもあれば、それに対して医師が行った判断や評価も書かれている。これら全体が患者個人に関する情報に当たるものであるが、あわせて、当該診療録を作成した医師の側からみると、自分が行った判断や評価を書いているものであるので、医師個人に関する情報とも言うことができる。したがって、診療録等に記載されている情報の中には、患者と医師等双方の個人情報という二面性を持っている部分もあることに留意が必要である。
 なお、死者に関する情報が、同時に、遺族等の生存する個人に関する情報でもある場合には、当該生存する個人に関する情報となる。
 本指針は、医療・介護関係事業者が保有する医療・介護関係個人情報を対象とするものであり、診療録カルテ等の形態に整理されていない場合でも個人情報に該当する。

(例) 下記については、記載された氏名、生年月日、その他の記述等により特定の個人を識別することができることから、匿名化されたものを除き、個人情報に該当する。(医療・介護関係法令において医療・介護関係事業者に作成・保存が義務づけられている記録例は別表1参照)

 ○医療機関等における個人情報の例
 診療録、処方せん、手術記録、助産録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、紹介状、退院した患者に係る入院期間中の診療経過の要約、調剤録 等

 ○介護関係事業者における個人情報の例
 ケアプラン、介護サービス提供にかかる計画、提供したサービス内容等の記録、事故の状況等の記録 等

2.個人情報の匿名化
 当該個人情報から、当該情報に含まれる氏名、生年月日、住所の記述等、個人を識別する情報を取り除くことで、特定の個人を識別できないようにすることをいう。顔写真については、一般的には目の部分にマスキングすることで特定の個人を識別できないと考えられる。なお、必要な場合には、その人と関わりのない符号又は番号を付すこともある。
 このような処理を行っても、事業者内で医療・介護関係個人情報を利用する場合は、事業者内で得られる他の情報や匿名化に際して付された符号又は番号と個人情報との対応表等と照合することで特定の患者・利用者等が識別されることも考えられることから、法においては、「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるもの」についても個人情報に含まれるものとされており、匿名化に当たっては、当該情報の利用目的や利用者等を勘案した処理匿名化を行う必要があり、あわせて、る。また、当該利用について本人の同意を得るなどの対応も考慮する必要がある。
 また、特定の患者・利用者の症例や事例を学会で発表したり、学会誌で報告したりする場合は、氏名等を消去することで匿名化されると考えられるが、症例や事例により十分な匿名化が困難な場合は、本人の同意を得なければならない。
 なお、当該発表等が研究の一環として行われる場合にはI9.に示す取扱いによるものとする。

3.個人情報データベース等(法第2条第2項)、個人データ(法第2条第4項)、保有個人データ(法第2条第5項)
 「個人情報データベース等」とは、特定の個人情報をコンピュータを用いて検索することができるように体系的に構成した個人情報を含む情報の集合体、又はコンピュータを用いていない場合であっても、紙面で処理した個人情報を一定の規則(例えば、五十音順、生年月日順など)に従って整理・分類し、特定の個人情報を容易に検索することができるよう、目次、索引、符号等を付し、他人によっても容易に検索可能な状態においているものをいう。
 また、「個人データ」とは「個人情報データベース等」を構成する個人情報をいう。
 「保有個人データ」とは、個人データのうち、個人情報取扱事業者が、開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有するものをいう。ただし、(1)その存否が明らかになることにより、公益その他の利益が害されるもの、(2)6ヶ月以内に消去する(更新することは除く。)こととなるものは除く。
 診療録カルテ等の診療記録や介護関係記録については、媒体の如何にかかわらず個人情報データに該当する。
 また、検査等の目的で、患者から血液等の検体を採取した場合、それらは個人情報に該当し、利用目的の特定等(III1.参照)、利用目的の通知等(III2.参照)等の対象となることから、患者の同意を得ずに、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて検体を取り扱ってはならない。また、これらの検査結果については、診療録カルテ等と同様に検索可能な状態として保存されることから、個人データに該当し、第三者提供(III5.参照)や開示(III7.参照)の対象となる。

4.本人の同意
 法は、個人情報の目的外利用や個人データの第三者提供の場合には、原則として本人の同意を得ることを求めている。これは、法の基本となるOECD8原則のうち、利用制限の原則の考え方の現れであるが、医療機関等については、患者に適切な医療サービスを提供する目的のために、当該医療機関等において、通常必要と考えられる個人情報の利用範囲を施設内への掲示(院内掲示)により明らかにしておき、患者側から特段明確な反対・留保の意思表示がない場合には、これらの範囲内での個人情報の利用について同意が得られているものと考えられる。(III5.(3)(4)参照)
 また、患者・利用者が、意識不明ではないものの、本人の意思を明確に確認できない状態の場合については、意識の回復にあわせて、速やかに本人への説明を行い本人の同意を得るものとする。
 なお、これらの場合において患者・利用者の理解力、判断力などに応じて、可能な限り患者・利用者本人に通知し、同意を得るよう努めることが重要である。

5.家族等への病状説明
 法においては、個人データを第三者提供する場合には、あらかじめ本人の同意を得ることを原則としている。一方、病態によっては、治療等を進めるに当たり、本人だけでなく家族等の同意を得る必要がある場合もある。家族等への病状説明については、「患者(利用者)への医療(介護)の提供に必要な利用目的(III1.(1)参照)と考えられるが、本人以外の者に病状説明を行う場合は、本人に対し、あらかじめ病状説明を行う家族等の対象者を確認し、同意を得ることが望ましい。この際、本人から申出がある場合には、治療の実施等に支障の生じない範囲において、現実に患者(利用者)の世話をしている親族及びこれに準ずる者を説明を行う対象に加えたり、家族の特定の人を限定するなどの取扱いとすることができる。
 一方、意識不明の患者の病状や重度の痴呆性の高齢者の状況を家族等に説明する場合は、本人の同意を得ずに第三者提供できる場合と考えられる(III5.(2)(2)参照)。この場合、医療・介護関係事業者において、本人の家族等であることを確認した上で、治療等を行うに当たり必要な範囲で、情報提供を行うとともに、本人の過去の病歴、治療歴等について情報の収集を行う。本人の意識が回復した際には、速やかに、提供及び収集した個人情報の内容とその相手について本人に説明するとともに、本人からの申出があった場合、収集した個人情報の内容の訂正等、病状の説明を行う家族等の対象者の変更等を行う。
 なお、患者の判断能力に疑義がある場合は、意識不明の患者と同様の対応を行うとともに、判断能力意識の回復にあわせて、速やかに本人への説明を行い本人の同意を得るものとする。


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