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別添2

研修歯科医の処遇について



I 研修歯科医の処遇について

II 複合型臨床研修施設群で研修を行う場合の雇用関係について


I 研修歯科医の処遇について

 研修歯科医の処遇に関する基本的考え方

 (1)労働者性について

  ○ 労働基準法第9条「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下『事業』という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」

 ○ 労働基準法第9条の労働者であるかどうかは、

(1) 具体的な仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対する諾否の自由の有無

(2) 業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無

(3) 時間的・場所的な拘束性の有無

(4) 報酬の労務対償性

等を総合的に勘案し、個別具体的に判断されることになる。

 (2)研修歯科医の処遇に関する基本的考え方

  ○ 研修歯科医については、教育的側面も有するが、一般的には、労働者性が認められると考えられる。

  ○ 研修歯科医が臨床研修に専念し、研修内容を的確に身につけることができるよう、労働基準法等労働関係法令に規定される労働条件に相当する処遇が確保されることが必要である。


 研修歯科医の処遇に関する基準

 研修歯科医が臨床研修に専念できるよう、労働基準法等労働関係法令に規定される労働条件に相当する以下の処遇を確保すること。

 (1) 研修条件の明示(労働基準法第15条関連)

 臨床研修施設は、研修契約の締結に際して、研修歯科医に対して、
  ・研修契約の期間
  ・研修の場所及び業務
  ・研修手当
  ・研修時間、休日及び休暇
  ・時間外・休日研修及び当直
  ・社会保険の加入の有無
  ・宿舎の有無
  ・歯科医師賠償責任保険の加入の有無
  ・健康診断等の健康管理体制
その他の研修条件を明示すること。

 (2) 研修手当

 臨床研修施設は、最低賃金額以上の研修手当を支払うこと。
 臨床研修施設は、当該施設における勤務医の初任給との均衡に考慮した研修手当を支払うこと。
 医師臨床研修医の処遇にかんがみ、相当の処遇が確保されることが望ましいこと。

 (3) 研修時間、休憩、休日、時間外・休日研修、割増研修手当、年次有給休暇及び当直(労働基準法第32条、第34条、第35条、第36条、第37条、第39条、第41条関連)

 研修時間は、原則として、1週40時間、1日8時間を超えないこと。なお、指導歯科医の行う臨床の見学や文献の勉強等の教育を時間外に実施することについては、就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく、自由参加のものであれば、時間外の研修にはならない。

 臨床研修施設は、研修時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間、自由に利用することのできる休憩時間を研修時間の途中に与えること。

 臨床研修施設は、毎週少なくとも1日の休日又は4週間を通じ4日以上の休日を与えること。

 臨床研修施設は、時間外及び深夜(午後10時〜午前5時)の研修には2割5分以上の割増研修手当を、また、休日研修には3割5分以上の割増研修手当を支払うこと。

 臨床研修施設は、研修開始の日から6か月間継続して研修し、全研修日の8割以上出勤した研修歯科医に対して10日以上、その日からさらに1年間研修し8割以上出勤した研修歯科医に対して11日以上の年次有給休暇を与えること。

 医療法第16条等に基づく当直業務を、労働基準法第41条に基づく宿日直勤務により行う場合には、許可基準(通常の労働の継続延長ではなく、常態としてほとんど労働をする必要のない勤務であること等)に則った所轄労働基準監督署長による宿日直勤務の許可が必要であること。
 なお、この許可を得ている場合に、救急患者に対する診療等の通常業務に稀に従事することがあっても、直ちに許可が取り消されるという取扱はされないこととされているが、その場合には、通常の時間外労働として、割増賃金の支払い等を行うことが必要であること。
 また、当直業務において、常態として診療行為等の通常業務が行われるものについては、労働基準法第41条に基づく宿日直勤務には該当しないものであるので、通常の時間外労働として、管理することが適当であること。

 (4) 産前産後の休業(労働基準法第65条関連)

 臨床研修施設は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を研修させてはならない。

 臨床研修施設は、産後8週間を経過しない女性を研修させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた研修を行うことは、差し支えない。

 臨床研修施設は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な研修に転換させなければならない。

 (5) 健康診断(労働安全衛生法関連)

 臨床研修施設は、研修歯科医を受け入れたときは、当該研修歯科医に対し健康診断を行うこと。また、研修2年目にも健康診断を行うこと。

 (6) 社会保険(健康保険法、厚生年金保険法、労働者災害補償保険法、雇用保険法等関連)

 臨床研修施設は、原則として、研修歯科医を社会保険(健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険等)に加入させること。


研修条件通知書(イメージ)

平成 年 月 日

__________殿

病院名 ◯◯◯病院
所在地 ◯県◯市◯町◯丁目◯番◯号
病院長氏名 ◯◯◯

研修期間 平成◯年◯月◯日〜◯月◯日の1年間
研修の場所 ◯◯◯病院及び◯◯◯診療所
従事すべき業務内容 歯科医師業務
始業・終業の時刻、休憩時間及び時間外研修・休日研修・当直の有無
 始業・終業の時刻((1)又は(2)の該当するものに○を付けること。)
 (1)始業(午前8時00分)、終業(午後5時00分)
 (2)変形労働時間制又は交代制:次の研修時間の組み合わせとする。
始業:  時 分、終業:  時 分(適用日     )
始業:  時 分、終業:  時 分(適用日     )
始業:  時 分、終業:  時 分(適用日     )
 業務上必要なときには、これを繰り上げ、又は繰り下げることがある。詳細は、就業規則第○条。
 休憩時間:60分
 時間外研修・休日研修の有無(有・無)
 当直の有無(有・無) (有の場合、研修方法について(1)〜(4)の該当するものに○を付けること。)
(1)宿日直勤務による
(2)時間外労働による
(3)両者の組合せによる
(4)その他
休日 土曜日及び日曜日
休暇
 年次有給休暇
 6ヶ月継続勤務した場合:10日
 継続勤務6ヶ月以内の年次有給休暇(有・無):○ヶ月経過で○日
 その他の休暇
 有給:慶弔休暇
 無給:生理日の休暇、産前産後の休業、傷病休暇、公民権行使のための休暇、育児・介護休業
 詳細は、就業規則第○条
研修手当
 基本研修手当((1)〜(3)の該当するものに○を付けること。)
 (1)月給: ◯◯◯◯円
 (2)日給:
 (3)時間給:
 諸手当
 (1)通勤手当:通勤にかかる費用
 (2)当直手当:(1)当直手当◯◯◯◯円
(2)時間外割増研修手当の支払い
 (3)時間外割増研修手当:基本研修手当の2割5分増
 (4)休日割増手当:基本研修手当の3割5分増
 (5)深夜割増手当:基本研修手当の2割5分増
3 研修手当締切日:毎月末日
4 研修手当支払日:毎月10日。支払日が休日にあたる場合は、その前日に支払う。
 研修手当の支払方法(                     )
退職に関する事項
 退職事由
(1) 研修契約期間が満了したとき
(2) 死亡したとき
(3) 自己の都合により退職を申し出て受理されたとき
 自己都合退職の手続:退職する30日前に届け出ること。
 解雇事由
(1) 精神又は身体の障害により業務に耐えられないと認められるとき
(2) 勤務成績又は能力が著しく劣るとき
(3) 欠勤が引き続き1か月以上に及んだとき
(4) やむを得ない業務上の都合によるとき
(5) 病院の名誉、信用を害するなど懲戒事由に該当するとき
(6) その他やむを得ない事由があるとき
 解雇手続:30日前の解雇予告又は30日分の平均賃金の支払いを行う。
 ※ 詳細は、就業規則第○条。
その他
 社会保険の加入状況
 (1)健康保険(有・無)
 (2)厚生年金保険(有・無)
 (3)雇用保険(有・無)
 (4)労災保険(有・無)
 歯科医師賠償責任保険(病院単位で加入・個人加入を推奨・無)
 宿舎(有・無)
 健康診断:毎年1回行う。


II 複合型臨床研修施設群で研修を行う場合の雇用関係について

 ○ 複数の臨床研修施設をローテートする場合に、研修歯科医と各臨床研修施設の間でどのような雇用関係を形成するかについては、当事者間の契約に委ねられるが、その一例として以下の形態が考えられる。

 ○ 国立病院等が関与するローテートについては、職務専念義務、定員、予算などの問題がある。


<在籍型出向により、複数の施設をローテート>

 ○ 出向元と出向先で出向契約を締結し、出向労働者が、出向元との労働契約を維持したまま、出向先とも労働契約を締結し、出向先において、相当期間継続的に勤務する労働形態。(出向元は、出向労働者の同意を得ることが必要。)

 ○ 在籍出向の場合、労働基準法上の「使用者」の責任は、出向先か出向元かという二者択一ではなく、出向先と出向元との間の出向契約によって定められた権限と責任に応じて、出向先と出向元の双方が「使用者」の責任を負う。

 ○ この場合、社会保険・労働保険の適用については、
(1) 健康保険、厚生年金保険については、使用関係にある施設において適用(2つ以上の事業場において使用関係にある場合には、各事業場での賃金に比例して保険料を納付)

(2) 雇用保険については、主たる賃金の支払元において適用

(3) 労災保険については、労働の実態等に基づき労働関係の所在を判断して、どちらかの施設において適用(通常は労務の提供先)

 ○ 例えば、出向契約において、

(1) 出向元は、賃金の支払い責任(この場合、出向先が、賃金相当額を出向元に戻入することとするのが一般的)

(2) 出向先は、労働時間・休憩・休日・年次有給休暇に関する責任、災害補償に関する責任、安全衛生確保に関する責任を負うというように、「使用者」の責任を分担することが可能。

 ○ この場合、社会保険・労働保険の適用については、

(1) 健康保険、厚生年金保険、雇用保険については、出向元が保険料を納付

(2) 労災保険については、通常、出向先が保険料を納付



<在籍型出向のイメージ>

図


出向契約書(イメージ)


 ○○○病院(出向元。以下「甲」という。)と○○○診療所(出向先。以下「乙」という。)とは、甲の勤務医の出向について、次のとおり契約する。

(出向者)

第1条 甲は、乙に対し、甲の勤務医○○○(出向者。以下「丙」という。)を出向させる。

(出向期間)

第2条 出向期間は、平成○年○月○日から平成○年○月○日までとする。

(指揮命令)

第3条 丙は、甲に在籍のまま、乙の指揮命令に基づき、乙の業務に従事するものとする。

(労働条件)

第4条 丙の労働条件については、特に定めるものを除き、乙の就業規則を適用する。

(年次有給休暇)

第5条 丙の年次有給休暇については、甲に勤務していた期間についても乙に継続勤務していたものとみなした上で、乙の就業規則を適用する。

(時間外勤務)

第6条 乙は、業務上必要なときは、丙に対して時間外勤務を命ずることができる。

(休日勤務)

第7条 乙は、業務上必要なときは、丙に対して休日勤務を命ずることができる。

(当直勤務)

第8条 乙は、業務上必要なときは、丙に対して当直勤務を命ずることができる。

(賃金の支給)

第9条 丙の賃金については、甲の就業規則を適用し、甲が丙に直接支給する。

(賃金の負担)

第10条 時間外・休日・深夜勤務手当、当直手当、通勤手当及び出張旅費を除いた丙の賃金については、乙が○割を負担する。

2 丙の時間外・休日・深夜勤務手当、当直手当及び通勤手当については、乙が全額を負担する。

3 乙が業務の必要に基づいて丙に対して出張を命じたときは、その出張に要する旅費については、乙が全額を負担する。

(健康保険、厚生年金保険及び雇用保険)

第11条 丙の健康保険、厚生年金保険及び雇用保険については、甲における被保険者資格を継続する。保険料のうちの事業主負担分については、甲が負担する。

(労災保険)

第12条 丙に関する労働者災害補償保険については、乙が加入し、保険料を負担する。

(懲戒処分)

第13条 乙は、乙の就業規則に基づいて、丙に対する懲戒処分を行うことができる。

(勤務状況の報告)

第14条 乙は、毎月5日までに、前月の丙の勤務状況を「勤務状況報告書」(別紙)により、甲に報告する。

(負担金の支払)

第15条 本契約によって、乙が負担することになった金額について、乙は、発生月の翌月末日までに甲の指定する口座に振り込む。

(協議事項)

第16条 本契約書に定めのない事項及び本契約書の解釈について疑義が生じたときは、甲乙間において誠実に協議し解決する。



平成 年 月 日
 (甲)○○○病院
      病院長○○○○
 (乙)○○○診療所
      院 長○○○◯


勤務状況報告書


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