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資料

(案)




医道審議会歯科医師分科会
歯科医師臨床研修検討部会意見書

(平成16年9月28日)


医道審議会歯科医師分科会
歯科医師臨床研修検討部会員名簿

部会長

黒﨑 紀正 東京医科歯科大学歯学部附属病院長

委員

石井 拓男 東京歯科大学千葉病院長

石上 和男 新潟県福祉保健部健康対策課長

伊藤 公一 日本大学歯学部付属歯科病院長

蒲生 洵 日本歯科医師会専務理事

柬理 十三雄 日本歯科大学新潟歯学部教授

住友 雅人 日本歯科大学歯学部附属病院長

田中 義弘 神戸市立中央市民病院歯科部長

辻本 好子 NPO法人ささえあい医療人権センターCOML代表

仲西 修 九州歯科大学附属病院長

野口 俊英 愛知学院大学歯学部附属病院長

原 宜興 長崎大学医学部・歯学部附属病院副病院長

吉澤 信夫 山形大学医学部歯科口腔外科教授


医道審議会歯科医師分科会歯科医師臨床研修検討部会意見書

平成16年9月28日


 我が国の保健・医療・福祉を取りまく環境は、高齢化に伴う疾病構造の変化や国民のニーズの多様化、患者の権利をより尊重するための患者と歯科医師とのコミュニケーションの在り方の変化等によって大きな変貌を遂げている。一方、歯科医療技術はますます高度化・専門化し、より質の高い歯科保健・医療を国民に提供するために、歯科医師に求められる医療人としての基本的な知識、態度及び技術は増加してきている。
 このような背景から、患者に必要な情報を十分に提供し、患者が安心し納得した上で医療を受けられるよう十分なコミュニケーションを図り、予後を踏まえた診療計画を立てることが、これからの歯科医療に望まれる。さらに、口腔の疾病治癒・機能回復のみを目指すのではなく、口腔に関係した全身管理を含めた健康回復・増進を図るという総合性が求められる。
 こうした状況を踏まえ、平成12年の歯科医師法改正により、平成18年4月から歯科医師臨床研修が必修化されることとなった。この改正は、研修歯科医が歯科医師としての基盤形成の時期に、(1)臨床研修に専念できる環境を整備すること、(2)診療に従事する歯科医師として患者中心の全人的医療を理解した上で、歯科医師としての人格を涵養すること、(3)総合的な歯科診療能力を身につけ、臨床研修を生涯研修の第一歩とすることを目的としている。
 さらに、厚生労働省は平成15年8月に、「医療提供体制の改革のビジョン」を公表し、21世紀における医療提供体制の改革の将来像と施策を提示し、質が高く効率的な医療の提供を実現するために医師、歯科医師等の医療を担う人材の確保と資質の向上は重要な柱の一つであるとして位置づけている。歯科医師臨床研修の必修化は、この柱の一翼を担い、歯科医師の資質の向上に大きく寄与するものである。
 歯科医師臨床研修の必修化に当たり、平成13年9月より歯科医師臨床研修必修化に向けた体制整備に関する検討会において、研修プログラムや研修歯科医の処遇及び研修施設の基準等の新たな歯科医師臨床研修制度の体制整備につき調査及び基準作成が行われ、平成16年3月に報告書が公表されたところである。
 これを受け、平成16年8月より本部会による審議を開始し、検討会報告書を元に検討をすすめてきた結果、今般、新たな歯科医師臨床研修制度の運用に関し、以下のとおり意見をとりまとめたのでここに報告する。

 歯科医師臨床研修施設の指定基準等について

 歯科医師臨床研修を行う施設(以下、「臨床研修施設」という。)は、別添1「歯科医師臨床研修必修化に向けた体制整備に関する検討会報告書」に示す指定基準等により指定を行うことが適当である。

 歯科医師臨床研修施設の指定基準の運用について

 歯科医師臨床研修は、別添1「歯科医師臨床研修必修化に向けた体制整備に関する検討会報告書」に示す指定基準の運用に則り実施されることが適当である。

 研修歯科医の処遇について

 臨床研修施設は、別添2「研修歯科医の処遇について」に示す研修歯科医の処遇に関する基本的考え方及び基準に則り、研修歯科医の処遇を確保することが適当である。

 歯科医師臨床研修の到達目標について

 臨床研修施設は、別添1「歯科医師臨床研修必修化に向けた体制整備に関する検討会報告書」に示す到達目標を達成するために、各々の施設の実情に即したより具体的な到達目標を掲げた研修プログラムを作成し、その研修プログラムに則り臨床研修を実施することが適当である。

 指導歯科医の養成について

 質の高い歯科医師臨床研修を実施するためには、指導者である指導歯科医の養成が重要であることは言うまでもない。現在、指導歯科医の養成については財団法人歯科医療研修振興財団主催の指導歯科医講習会及び大学等が主催する「歯科医師の臨床研修に係る指導歯科医講習会の開催指針」(平成16年6月17日付け医政発第0617001号)に則った指導歯科医講習会において行われているところである。また、研修プログラム責任者の養成については、財団法人歯科医療研修振興財団主催の指導歯科医ワークショップにおいて行われている。今後も歯科医師臨床研修の質の向上のため、これら講習会のさらなる拡充と講習内容の充実が望まれる。

 研修歯科医の募集・組合せ決定システム(マッチング)について

 臨床研修施設が、公募で研修採用を行う場合、研修希望者が複数の施設に採用希望を出すこととなるが、これに伴い内定辞退による欠員や過剰採用への対応が必要となる。また、研修希望者が複数施設から内定を受けた場合、締め切り日の差異などで、希望の施設と契約を結ぶことができない可能性がある。一方、総数としては募集数が希望者数を上回っていても、一部の研修希望者が複数の内定を受け取ることで募集と実内定者との差が生ずることにより、臨床研修開始時に研修先が決定していない研修希望者が多数残ることが危惧される。この場合、臨床研修施設においては、予定された臨床研修を開始できない恐れがあること、また、研修希望者の側から見れば、歯科医師法上の義務である臨床研修を受ける機会を阻害されることにもつながりかねない。
 こうした非効率を回避するため、全国一斉に、すべての研修希望者と臨床研修施設が合理的かつ効率的に組み合わせを決定できるシステム(マッチング)が求められる。
 臨床研修施設と研修希望者とのマッチングを導入することによって、情報公開を促し、研修希望者と臨床研修施設の双方が全国から希望施設又は希望者を選択し、研修歯科医と臨床研修施設の両者にとって合理的かつ効率的に組み合わせを決定することができる。その結果、研修歯科医が全国に混じり合うことで、研修の一層の質の向上を図る効果が期待できる。
 以上のことから、医師臨床研修におけるマッチングと同様、第三者機関(マッチング実施主体)によるマッチングの運営・実施が望まれる。

 今後の進め方

 新たな歯科医師臨床研修実施後も、5年以内に上記の内容の見直しをはかるため、引き続き調査・審議していくことが必要である。


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