(1) | 調査研究に関する業務内容 平成15年度においては、当研究所の目的である国民の健康の保持、増進に資するための調査研究等の業務を、行政ニーズ及び社会ニーズに即して着実に実施している。 社会的ニーズの把握については、研究所、大学等の専門機関に加え、ジャーナリズム関係、健康づくり団体等と意見交換会が行われた。また、独立行政法人国立健康・栄養研究所認定栄養情報担当者制度(NR)については、国民の健康づくりに資するものと期待されるが、NRの社会的役割についてのモニタリングや評価まで責任を持って行う必要がある。 重点的調査研究については、国内外の論文の系統的レビューやより精度の高いエネルギー消費量の測定・解析のためのヒューマンカロリーメーター及び二重標識水法によるエネルギー消費量のデータ収集、健康増進法に基づく国民健康・栄養調査に対応した栄養素摂取等の評価に必要なデータベースの構築や集計解析方法の開発、いわゆる健康食品及び栄養補助食品の生理的有効性や安全性の評価等が行われるとともに、国内規格や基準の策定や改変等のための基礎資料の作成・提供がなされた。 基盤的研究については、生活習慣病の遺伝子要因と食事・運動との関連など所内公募による発展性のある課題研究の推進、生活習慣改善のための自己学習システムの開発,「健康日本21」推進のための地方計画データベース作成などを進める一方、「健康食品等の安全性情報ネットワーク」を適切に構築し、国民に対するいわゆる健康食品による危害の防止、健全な食生活構築のための観点から、的確な情報提供を行っている。今後は、「健康日本21」地方計画データベースや自己学習システムのより効果的な活用方法の検討や、重点調査研究と基盤的研究との課題の整理が必要である。 平成14年度実施の栄養改善法に基づく国民栄養調査の集計業務については、糖尿病実態調査の同時実施による集計項目の大幅増加にかかわらず的確に処理が行われた。 職員の資質の向上については、所内研究員及び外部講師によるセミナーが行われた他人事院主催の研修など必要な対応を行っている。 このほか、行政上の重要な課題に関し、審議会等の委員として研究員を派遣する等、行政との連携が図られている。 また、外部評価委員会を設置し、研究課題はじめ業務・組織全般について年度の事前・事後の評価が実施され、結果が業務運営に反映されるとともに、公開されている。 |
(2) | 調査研究成果の普及及び活用 平成15年度においても、調査研究成果の普及・活用について着実に実施し、所期の目的を達成していると考えられる。 学会発表、論文発表数等については、中期目標を大幅に上回っており、研究員一人当たりの発表数等の密度が高く、特にインパクトファクターの高い欧米誌への掲載が多いなど、水準も高い点が高く評価できる。 国民に対する情報の発信については、引き続きホームページの活用、機関誌の発行の他、研究員のテレビへの出演や雑誌への情報提供等マスコミ等を通じた多面的な情報発信がなされ、講演会等への講師派遣も積極的に行っている。今後は、ホームページの効果をさらに上げるための双方向型の活用について研究を行う等、一層国民のニーズに応えるよう工夫が必要である。 講演会の開催や研究所の一般公開等については、一日移動研究所の開催など工夫が見られるものの、さらなる戦略に基づく普及方策を考え、産業界、消費者団体、一般国民への普及を推進していくことが期待される。 知的財産権の取得等については、研究分野からして特許の取得は難しいという制約があるが、寄附研究部の設置、学会発表内容の「スクリーニング」制度を立ち上げるなど積極的な取組はなされており、今後大きな成果を期待したい。 |
(3) | 外部機関との協力の推進 平成15年度においても外部機関との協力の推進を着実に実施している。 提携大学院を発足させるなど、若手研究者の育成に積極的であり、今後の研究所自体にとっても活力源となっている点が評価できる。今後は、大学との連携による具体的な成果を期待する。 研究協力については、アジア地域の研究者を招聘してアジアネットワークを構築するためのシンポジウムを開催する等、招聘事業規程を作成してネットワーク作りを推進し、アジア地域の人たちの健康・栄養改善を図る努力をしている点、これらにより、アジア太平洋地域において初めての栄養関連のWHO協力センターも視野に入れた取組及び産業界との連携を重視した積極的な取組を行っている点を評価する。 |