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参考資料2

中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会の
検討状況の中間的な取りまとめについて(全員協議会報告)


(平成12年3月24日中央最低賃金審議会了承)


 本全員協議会は、平成11年4月の中央最低賃金審議会総会において現行目安制度の見直しについて付託を受け、その後11回にわたって、近年における経済社会の変化を踏まえ、できる限り中長期的な視点も考慮に入れつつ、主として(1)ランク振分け等ランク区分の見直し、(2)表示単位期間のあり方、(3)表示方法のあり方、(4)参考資料のあり方、(5)経済情勢等を踏まえた目安の決定のあり方を中心に検討を行ってきた。
 これらについては、地域別最低賃金制度の運用の基本に関わる問題でもあり、未だ十分審議を尽くしていないところであるが、ランク区分については、平成7年4月の中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告(以下「平成7年全協報告」という。)において今後5年ごとに見直しを行うこととされていること、また、経済情勢等を踏まえた目安の決定のあり方についても、平成12年度の目安審議が開始される前に一応の整理を行っておくことが必要と考えられること等から、これらの点を中心に下記のとおり中間的な取りまとめを行ったので報告する。




1 ランク振分け等ランク区分の見直しについて

(1)  総合指数の全体的な動向

 平成7年全協報告においては、各都道府県の経済実態に基づきランク区分を見直すこととし、具体的には、所得・消費に関する指標(5指標)、給与に関する指標(10指標)及び企業経営に関する指標(5指標)の20の指標の直近5年間の数値の平均値をとり、当該平均値を総合化した総合指数に基づいて見直しを行った。そして、今後5年ごとに、この総合指数に基づいて見直しを行い、その間の各都道府県の経済実態の変化が反映されるようにすることが重要であるとされている。
 そこで、今回の見直しに当たっては、別紙1のとおり基本的に20の各指標について平成6年から10年までの数値の平均値をとり、当該平均値に基づく指数を算出の上、単純平均により新しい総合指数を算出することとした。その結果、新しい総合指数は別紙2のとおりとなった。
 新しい総合指数について、平成7年全協報告において示された総合指数と比較すると、以下のような特徴がみられる。
 バブル崩壊後の経済成長についてみると、大都市圏、特に東京都と比較してその他の道府県の伸びが相対的に高かったことなどが影響して、東京都を100とした場合の各道府県の指数は平均値で2.4ポイント上昇し、全体として東京都と他の道府県との格差は縮小している。
 指数が上昇し、東京都との格差が縮小した道府県の数は43に及ぶ一方、指数が下降した府県の数は3に止まっている。総じて、地方圏の方が大都市圏よりも指数の伸びが高くなっている。

(2)  新しい総合指数に基づく各都道府県の各ランクへの振分け

 ランク区分の具体的な見直しの検討に当たっては、今後の目安制度の円滑な運用を図るためには、昭和53年度以降制度として定着している面もある現行のランクとの継続性に留意する必要があるとともに、目安が法定労働条件としての最低賃金に関わるものであることにかんがみ、その法的な安定性という面も考慮しなければならないことを踏まえつつ検討を行い、次の結論を得た。
 ランク数については、上記の考え方を十分踏まえ、従来と同様4つとすることが適当である。
 各都道府県の各ランクへの振分けに当たっては、平成7年全協報告を踏まえるとともに、昨今の経済情勢等にかんがみ、今回は特に以下の考え方に基づき、別紙3のとおり、4県について適用される目安のランクを変更することが適当である。
(1)  総合指数を順番に並べ、指数の差が比較的大きいところに着目する
(2)  上記の考え方を十分踏まえ、個々の都道府県のランク間の移動や各ランク毎の都道府県の数の変動を極力抑える
(3)  加えて、特にB、Cランクについては、各ランクにおける総合指数の分散度合をできる限り小さくすることにも留意する

 なお、この総合指数は、中央最低賃金審議会においてランク区分の見直しのための基礎データとして用いたものにすぎず、地方最低賃金審議会において総合指数の順位を踏まえて最低賃金額の順位を是正すべく措置されることを予定するものではないことに留意する必要がある。


2 経済情勢等を踏まえた目安の決定のあり方等について

(1)  検討の経緯

 近年における厳しい経済情勢を反映し、毎年6月に行われている賃金改定状況調査における賃金引上げを実施しない事業所(以下「凍結事業所」という。)の割合がこのところ急激に増加しており、平成11年においては43.2%と過去最高の値を示している。こうした状況を反映し、同調査における凍結事業所を含めた全調査対象労働者の平均賃金上昇率も0.9%と過去最低の水準となったところである。そこで、こうした事態を含め、経済社会の変化を十分踏まえた目安の決定のあり方等について検討を行ったものである。

(2)  目安の審議に当たっての賃金改定状況調査の位置づけと基本的な考え方

 これまで、目安の審議に当たっては、賃金改定状況調査、なかんずく同調査による賃金上昇率を重要な参考資料としてきており、そうしたことを前提に平成7年全協報告においても同調査の必要な見直しが行われたこと等を踏まえると、今後とも、同調査を重要な参考資料とする取扱いを基本とすべきである。
 他方、経済社会の全体的な状況をみると、これまでの経済社会とは大きく異なり、経済のグローバル化による競争の激化、右肩上がりの経済から低成長経済への移行など構造的な変化が進んでおり、ますます複雑で多様な様相を呈している。上記の凍結事業所割合の増加や賃金上昇率の低下といった事態も、まさにその現れといえよう。
 こうしたことから、当該調査結果を重要な参考資料としつつも、これまで以上に、その時々の状況を的確に把握の上、総合的に勘案して目安を審議し、決定していくことが求められる。

(3)  凍結事業所割合の状況の取扱い

 このように、目安については、中央最低賃金審議会においてその時々の状況を総合的に勘案しつつ審議されるべきであり、審議が形骸化しないようにすることが望ましいものと考えられる。また、凍結事業所割合の増加という状況と低賃金層の賃金動向との関係が必ずしも明確でないこと等をも考慮すると、その割合に応じて目安額を調整し、又は凍結するというような形で目安の決定ルールを作るとの考え方を直ちに採用することは困難である。しかしながら、特に昨今の厳しい経済情勢を踏まえると、こうした状況についても、最低賃金をめぐる諸情勢に係る諸指標の一つとして、目安の審議に当たって勘案していくことが必要である。
 したがって、各年毎に、公労使の各委員による真摯な意見交換を通じて、凍結事業所割合の状況を含む各種の経済社会情勢に係る指標について、十分検討を加え、その時々の状況に応じた適切な目安を示していくことが重要である。
 今後の目安審議においては、こうしたことを念頭におきつつ、十分審議を尽くしていくことが適当である。

(4)  目安と地方最低賃金審議会における審議の関係

 以上の考え方により、中央最低賃金審議会としては目安を決定し、地方最低賃金審議会に示すものであるが、目安は、地方最低賃金審議会が審議を進めるに当たって、全国的なバランスを配慮するという観点から参考にされるべきものであって、地方最低賃金審議会の審議決定を拘束するものではないという従来からの取扱いを堅持すべきである。
 したがって、地方最低賃金審議会での最低賃金の改定に当たっては、目安を参考としつつ、賃上げの実施状況等の地域の事情を踏まえ、実態に即した自主的な判断を下し得るものであり、今後とも、地方最低賃金審議会での自主性の発揮を一層期待するものである。


 今後の取扱いについて

 本全員協議会のこれまでの検討から得られた考え方を整理すれば以上のとおりであるが、この他の審議事項である表示単位期間及び表示方法のあり方等については、未だ十分に審議を尽くしていないことから、今後はこれらの問題についてより具体的な検討を行い、本年中を目途に取りまとめを行っていくことが適当と考える。


 <別紙1、別紙2、別紙3 略>


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