1.ガイドラインの目的及び適用範囲
1-1)目的
2.検査精度の確保及び試験方法の標準化のための方策
(1) | 核酸抽出を行う場所 可能な限り独立した施設ないしは設備を用いて行うこと。 |
(2) | 試薬の保管場所及び試薬の調製場所 可能な限り独立した施設ないしは設備を用いて行うこと。 |
(3) | 核酸増幅を行う場所 可能な限り独立した施設ないしは設備を用いて行うこと。 |
(4) | 増幅産物の検出を行う場所 増幅前の試料を取り扱う部屋と増幅産物を取り扱う部屋とを区別すること。 |
また、NATでは、感染性のある標準品や陽性試料を取り扱うことから、試験・検査は、製造区域とは明確に区別された場所で行うことが必要である。 |
(1) | 検体の移送・保管に関する事項 検体の移送あるいは保管中の温度等がNATの結果に与える影響についてあらかじめ評価をしておくこと。また得られた結果に基づいて、移送や保存中の温度等について条件設定をしておくこと。 また凍結保存を行う場合には、凍結融解がNATの結果に及ぼす影響について評価しておくこと。 |
(2) | 試薬の保管・管理に関する事項 核酸の抽出やNATに用いる試薬について、後述する品質確保の他、保存期間中の安定性について評価を行いその実測値に基づいて保存条件を決めておくこと。 市販キットを使用する場合は、試薬製造メーカーのデータをもって代えることができる。(*2) |
(1) | 抽出に関する事項 スパイク実験等により、用いる抽出法について評価を行うこと。 市販の試薬を用いる場合には、試薬メーカーによる解析結果をもって代えることができる。 |
(2) | プライマー及びプローブに関する事項 プライマー及びプローブ(以下「プライマー等」という。)は核酸検出系の中心的役割を果たしており、その品質がNATの重要な要素となっている。このため、選択したプライマー等の科学的合理性を説明できることが必要であり、プライマー等の大きさ、GC含量、Tm値、想定されるヘアピン構造や2次構造についての情報を明らかにしておくとともに、次のような情報も明らかしておくこと。 |
・ | 目的とするウイルス遺伝子(亜)型(ジェノタイプ)等(*5)への対処として、採用しようとしているNATが目的とするウイルスについてできる限り多くのサブタイプ/バリアントを検出できるようにデザインされていることを示す情報。 |
・ | 検出しようとするウイルス遺伝子の最も共通する配列の選択等、どのように複数のサブタイプ/バリアントを検出できるようにしているのかを説明する情報。 |
・ | 使用濃度等の条件設定に関する情報 市販の試薬を用いる場合には、試薬メーカーによる解析結果をもって代えることができる。 |
(3) | プライマー等の純度、ロット間差等の品質の確保に関する事項 プライマー等の純度について適切な測定法を用いて解析し、解析結果を示すとともに、必要に応じてその規格値を定めておくこと。さらに、プライマー等の最適量について、段階的希釈法での検出能を指標とするなどして解析するとともに、ロット間の一定性についての情報や、複数のロットの合成プライマー等の特性解析結果やイールド等についての詳細な情報を明らかにしておくこと(*3)。なお、プライマー等の化学修飾を行う場合には、その詳細に係るデータを含む説明資料を作成しておくこと。 市販の試薬を用いる場合には、試薬メーカーによる解析結果をもって代えることができる。 |
(4) | 使用する酵素の品質の確保に関する事項 NATに用いるすべての酵素について、その由来と機能を明らかにしておくこと。酵素の純度、力価,比活性について受入れ規格を定めておくこと。調製した酵素について、エクソヌクレアーゼ活性、DNA及びRNA依存性のポリメラーゼ活性等を明らかにしておくこと。市販の試薬を用いる場合には、試薬メーカーによる解析結果をもって代えることができる。 |
(5) | 受入れ基準の設定 試薬や反応液の受入れ規格を、適切な評価に基づいて作成しておくこと。 |
(1) | 特異性の確認(目的とする遺伝子の検出) NATにおける特異性とは、試料中に共存すると考えられる物質の存在下で、目的とする核酸を確実に検出する能力をいう。NATの特異性は、プライマー等の選択、プローブの選択(最終産物の検出に関する)、試験条件の厳密さ(増幅及び検出工程の両方)に依存している。プライマー等をデザインする際には、用いるプライマー等が目的とするウイルス遺伝子のみを検出できるとする根拠を示せること。 さらに、検出しようとする核酸の配列については、遺伝的によく保存されている配列が用いられる。検出しようとする核酸の配列、GC含量の程度、さらには長さなどについて科学的合理性を説明できる必要がある。また、複数種のジェノタイプを検出できる根拠を、説明できること。定量的なアッセイを行う場合には、プライマー等のデザインと定量のための標準品の性質について説明できること。(*4) |
(2) | 交差反応性(非特異的反応)の除去 類似ウイルスへの交差反応性の可能性についても特に注意すること。この場合、公開されているデータバンクにより、選んだ全ての配列をデータ検索する方法が有効である。さらに、解析に用いたソフト、解析条件についても説明できること。なお、多くの場合、通常プライマー等を設計する際には、遺伝的によく保存されているウイルス遺伝子の領域が用いられる。(*4) |
(3) | 増幅産物が特異的である確認 増幅した産物は、ネスティド・プライマーによる増幅、制限酵素による解析、シークエンシングあるいは特異的なプローブによるハイブリダイゼーション等の方法によって確実に同定できることを示すこと。 NATにより目的とするウイルスの種々の遺伝子型を検出できる能力はプライマー等、反応条件に依存する。これは適当な参照パネルを使用することによって証明すること。 分析法の特異性をバリデートするために目的とするウイルスについて陰性の血漿又はミニプール血漿を少なくとも100検体を試験し、陰性であることを確認し、記録を保存しておくこと。 ・ウイルス遺伝子(亜)型(ジェノタイプ)等(*5)に対する検出感度 複数のジェノタイプ等のウイルスパネルを用いて試験を行い、各ジェノタイプ等に対してどれほどの検出能があるか評価しておくべきである。ウイルスパネルの選択にあたってはウイルスの分布と流行に関する地理的な疫学データ等を参照すること。(*4) |
(1) | 検出感度 検出感度とは、試料中に含まれる目的ウイルス遺伝子の検出可能な最低の量で、定量できるとは限らない量のことをいう。NATによるウイルス否定試験は通常定性試験であって、結果は陰性か陽性のいずれかである。NATでは95%の確率で検出される検体一定量あたりのウイルス遺伝子の最低量である陽性カットオフ値を検出感度として設定する。検出感度は、検体中のウイルス遺伝子の分布や酵素の効率のような因子により影響され、個々のウイルスNATでそれぞれの検出感度が存在する。 | |||||||||
(2) | 検出感度の求め方 ・希釈系列の作製 標準品の希釈系列を作製すること。希釈液の数を処理しやすい数にするためには、予備試験(例えば指数段階的に希釈を作製するなど)を行い予備的な陽性検出感度値(すなわち陽性シグナルが得られる最大希釈倍率)を決定する。希釈範囲は、予備的な検出感度値付近を選択する(希釈液として陰性血漿を用い、希釈率として0.5logまたはそれ以下を使用する。)。あるいはバリデートされた定量的NATを用いることも可能である。95%の確率で検出されるウイルス遺伝子の量は適切な統計学的な手法等により算出し、その妥当性について説明できること。 NATにおいては、各試験の精度や感度を管理するためには標準品あるいは標準物質(参照品)が必須である。通常、NATの開発過程における、ウイルス濃縮、遺伝子の抽出、増幅、ハイブリダイゼーション、定量、汚染をモニターするための標準品又は参照品、ランコントロールを用いた解析を行う必要がある。 ランコントロールにおいては、95%の確率で検出される検出感度の3倍量のウイルスを含む陽性コントロール(strikethrough:標準検体)を用いることが推奨される。試験では、この陽性コントロール(strikethrough:標準検体)は必ず陽性にならなければならない。このように陽性コントロール(strikethrough:標準検体)を用いることにより、各試験の成立をモニターすることが可能となる。 ・3回以上の独立した試験の実施 少なくとも3つの独立した希釈系列を用い、充分な回数の試験を繰り返し、各希釈段階での総試験回数が24になるように試験を実施する。例えば、3つの希釈系列を別々の日に8回行う、4つの希釈系列を別々の日に6回行う、6つの希釈系列を別々の日に4回行うなどである。これらの結果は試験法の日差変動を示す役目も果たしている。 交叉汚染が防止できていることを示すために、陰性プール血漿と高い濃度で目的とするウイルスをスパイクした陰性プール血漿(濃度としては95%の確率で検出されるウイルス量の100倍量以上)を、少なくとも20検体をランダムに配置するなどして、試験することにより確認しておくこと。(*6) ・使用する標準品
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(1) | 陽性及び陰性の判定基準の文書化 陽性及び陰性の判定基準を文書化しておく必要がある。 |
(2) | 再試験を行う時の基準及び判定基準の文書化 再試験を行うときの基準、再試験での判定基準についても文書化しておく必要がある |
(1) | 作業手順の標準化と作業手順書の作成 NATのような試験は、分析法のバリデーションや試験結果そのものが種々の要因の影響をうけ易いので、試験操作法を標準化し、正確な作業手順書を作成すること。作業手順書は以下の項目を含むものとする。
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(2) | 検査従事者を対象とした教育・訓練、技能検査の実施 NATの恒常性を担保するには検査従事者の教育と技能向上が非常に重要である。NAT従事者に対して教育・訓練を行うとともに必要に応じて定期的にその技能検査を行うことが推奨される。 | ||||||||||||
(3) | 作業記録の作成、保管・管理 作業記録を作成し、必要に応じ照会できるよう必要な期間にわたって適切に保管・管理を行うこと。 |
(1) | 試験操作中の器具などを介した汚染の防止策 試験操作中において器具などを介した汚染の防止策を講じておく必要がある。 |
(2) | 着衣、履物等を介した汚染拡大の防止策 着衣、履物等を介した汚染の防止策を講じておく必要がある。 |
(3) | 増幅産物の飛散等による汚染の防止策 増幅産物の飛散による汚染の防止策を講じておく必要がある。 |