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平成16年7月7日
医薬食品局血液対策課

「血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的とした核酸増幅検査(NAT)の実施に関するガイドライン(案)」に対して寄せられた意見について


 「血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的とした核酸増幅検査(NAT)の実施に関するガイドライン(案)」について、平成16年6月7日から6月21日まで厚生労働省のホームページを通じて御意見を募集したところ、のべ3通(32件)の御意見をいただきました。

 お寄せいただいた御意見とそれらに対する当省の考え方につきまして以下のとおり御報告いたします。とりまとめの都合上、いただいた御意見は適宜集約しております。今回、御意見をお寄せいただきました方々の御協力に厚く御礼申し上げます。

<総論>
 本ガイドラインの目的にあるように、NATをスクリーニング検査として用いる場合、精度管理が適切に行われることが極めて重要であり、そのために管理方法を標準化しておくことが不可欠であることには全く異論はありません。しかし一方で、NAT技術が導入されて以降、各国又は各社においては精度管理においてそれぞれ独自のノウハウも蓄積してきております。従って、NATの精度管理が適切か否かの評価を行う場合、ケースバイケースで評価を行うことも多々起こり得るものと推測されます。
 このような背景を踏まえて、本ガイドラインの運用に際してはつぎの点に特にご留意下さいますようお願い致します。
1)  各社のNAT精度管理に関する評価と行政指導を行う場合、特に国内と国外による扱いの違い又は差別等がないよう公平かつ透明にお願いしたい。
2)  欧米の会社の精度管理について評価するときには、その国の規制当局の考え方との整合性にも配慮した判断をお願いしたい。
 なお、NATによるスクリーニング検査は安全性を確保する上で重要な対策ではありますが、この検査はあくまで数多くの安全対策うちの一つですので、血漿分画製剤としての安全性の評価を行う際には、常に原料から完成品までを総合的に評価するようお願いしたい。
 御指摘の点については、今後十分考慮して対応して参りたいと考えます。


<各論>
1.ガイドラインの目的及び適用範囲
 1-2)適用範囲
 ○  1行目:適用範囲をより明確にするため、原料血漿を「血漿分画製剤」とすべきではないか(生物由来原料基準において輸血 用血液製剤に対比しての使用名称)。
 御指摘のとおり修正いたします。

 ○  3行目:「工程内管理試験」としてのNATはどのような状況を想定しているか。
 (ICH-GL: 生物薬品「バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来製品」の規格及び試験方法の設定)で微生物類の混入を適切な工程管理試験として規格値/適否の判定基準を設けて適正に管理する必要性が述べられています。

 ○  4行目:親GLの3.3で「最終製品のウイルス検査を行う。」としていることから、「最終製品のウイルス検査としてNATを行う場合」との記載が適切と考える。
 御指摘のとおり修正いたします。


2.検査精度の確保及び試験方法の標準化のための方策
 ○  16行目:「同様の組成の試料」のあとに「)」を挿入するべき。
 御指摘のとおり修正いたします。

 ○  18行目:3倍量のウイルススパイクで頑健性を担保できる根拠はどのように考えるべきか。
 FDAやEMEAのGLとの調和、あるいは国際的にこのような設定が妥当と考えられていることについては、別途、Q&A又は解説等で明示いたします。


 2-1)施設・設備の整備等に関する事項
 ○  ウイルス等の感染性及び取扱い条件についてバイオセーフティーの規制にも対応しなければならないため、NATに関する限定的な解釈としてウイルスの種類によるバイオセーフティーのクラス分けを明確にしていただきたい。加えて、具体的なウイルスの取扱いも記載いただきたい。
 バイオセイフティレベル等については、別途、Q&A又は解説等で明示いたしたいと考えております。


 2-3)(被験)検体の移送・保管、試薬の保管・管理に関する事項
 ○  親GLの6.3の項で「・・・現在、核酸増幅法(NAT)検査には標準的な方法が確立されておらず、施設ごとに異なった方法で実施 されている。標準化された核酸増幅法(NAT)検査を導入するにあたっては、適切な試薬、標準品等を用いた特異性、検出感度、再現性精度の同等性などを検証するために施設間での共同研究を行い、将来的には国内の全施設において共通の水準で実施できるような核酸増幅法(NAT)検査の開発に資することが期待される。」とあり、ウイルスNATに関しての具体的な試験法のガイドラインとすべきではないか。
 海外においても、ウイルス検出のためのNATとしてPCR法以外にも、TMA法等、全く異なる原理による手法も承認されています。また、NATの周辺技術を含め、その技術進歩はめざましいこともあり、統一した手法を提示することが妥当とは思えません。
 また、小委員会や調査会を通じて、統一した手法の提示は望ましくないとの結論を出しております。さらに、小委員会でHCV、HBV、HIVのそれぞれの国内標準品を作成しており、これらの標準品を用いることによりその検出感度等の担保を目指しており、そういった観点からは共通水準でNATを実施できる体制は確立されつつあると理解しております。このような標準品を用いた制度管理を行うこともすでに小委員会・調査会の結論となっております。


 2-4)核酸の抽出・増幅及び増幅産物の検出に関する事項
  (2)  プライマー及びプローブに関する事項
  ○  4行目:ヘアピン構造や2次構造を明らかにすべき目的は何か。
 複数のプライマー候補から目的とするプライマーの選択に当たっては、どのようなヘアピン構造や2次構造をとるかを見ながら設計していくと思われます。

  ○  7〜10行目:「目的とするウイルス遺伝子〜情報。」の意図されている情報とは何か。
 別途、Q&A又は解説等で明示いたします。

  ○  8、9、12行目:ジェノタイプ、バリアント、サブストレイ ンの定義について用語集で記述していただきたい。
 ウイルスごとにジェノタイプ、サブタイプ等様々な呼称が用いられていますが、本ガイドラインで述べようとしている点は、ジェノタイプやサブタイプ等を区別することではなく、バリエーションのあるウイルス遺伝子をプライマーやプローブをどのようにデザインして検出しようとしているのかを明らかにすることです。わかりやすくするために用語の統一を図る目的で修正を加えます(「ジェノタイプ、バリアント」→「サブタイプ/バリアント」、「サブストレイン」→「サブタイプ/バリアント」へ変更)。


 2-5)試験の最適化と特異性の確認、非特異的反応の除去に関する事項
  (3)  増幅産物が特異的である確認
  ○  5行目:「適当な参照パネル」とあるが、注意事項等として具体的に最低限を例示いただくとともに、参照パネルの例として配付できるような体制を整えて頂きたい。
 国内的には、厚生労働科学研究費補助金にて作成されようとしているHCV、HBV、HIVパネルが使用可能となると思われますが、海外からの輸入製剤にもそれが適応できるのかは不明です。なぜならば、ガイドラインにもあるように「ウイルスパネルの選択にあたってはウイルスの分布と流行に関する地理的な疫学データを参照すること」と書かれているように、どの様なパネルを選択するかは製造業者が、その妥当性も含めて説明責任があると考えられます。また、地理的な疫学データ等は時間とともに変化するものであり、その点についても製造業者は常に細心の注意を払うことが求められると思います。

  ○  7、8行目:「ウイルスについて陰性の血漿」や当該「100検体」についての供給は、どのような体制がとられるか(日赤や感染研から入手可能か)。
 各メーカーの要望を聞いて、対応が必要な場合は、別途考慮したいと考えます。

  ○  8行目:「少なくとも100検体」の根拠を注意事項等でお示し頂きたい。
 別途、Q&A又は解説等で明示いたします。

  ○  11行目:「複数のジェノタイプ等のウイルスパネル」が兼ね備えるべき最低限を例示いただきたい。また、ここで指定されている「標準検体」とはどのようなものを指すか。5行目の「参照パネル」との関係を明確にしていただきたい。
 御指摘を踏まえて、以下のとおり修正します。
 「複数のジェノタイプ等のウイルスパネルに対して標準検体を作製して用いて試験を行い」

  ○  13行目:外国において一部のパネル血漿は販売されているが、本項でいう「ウイルスの分布と流行に関する地理的な疫学データ等を参照」したものの入手は困難であると考える。
 別途、Q&A又は解説等で明示いたします。


 2-6)検出感度に関する事項
  (1)  検出感度
   ○  3行目:用語の統一のため「NAT検査」を「NAT」に改 める(「NAT検査」という語句を使用しているのはここだ けである)。
 御指摘のとおり修正いたします。


  (2)  検出感度の求め方
   ・ 希釈系列の作製
   ○  7行目:「適切な統計学的な手法」について、注意事項等に手法の例や文献、書籍等を紹介して頂きたい。
 別途、Q&A又は解説等で明示いたします。

   ○  15、16行目:ここでの「標準検体」とは、いわゆる「陽 性コントロール」の意味か。
 御指摘のとおり修正いたします。


   ・ 使用する標準品
   ○  【用語集】の「標準品」や「標準物質」の項と説明が重複している。本文中ではこれを参照する表記で十分ではないか。
 用語集では標準品(公的機関によって定められた物)と標準物質/参照品の定義を明確にしております。一方、本文ではどの様な標準品を用いて良いかを示しており意図が異なっております。

   ○  3行目:標準物質(参照品)設定の参考資料に資するため、国内標準品設定時の国際標準品との「データの互換性の保証」資料を開示願いたい。
 報告として発表する予定です。

   ○  少なくとも標準品に関し、表示「IU」と「コピー」又は「ゲノム当量」の関係については明確にすべきではないか。
 国際標準品についても明示されていません。

   ○  3行目:「自社」はin house の主旨と解されるが、GLとしては不要ではないか。
 御指摘を踏まえて、以下のとおり修正します。
 「自社標準物質


 2-8)従事者の技術の標準化と向上に関する事項
 ○  8行目:前段の2−6)(2)では95%検出の3倍量のものを標準検体とされており、ここでは、「95%の確率で検出される量の3倍量」の間違いではないか。
 御指摘を踏まえて、以下のとおり修正します。
 「95%の確率で検出される標準検体量の3倍量の標準品あるいは標準物質等をスパイク(添加)」

 ○  12行目:「全て陽性」であることでは標準化にならないのではないか(検体間汚染があっても全て陽性となる)。
 この試験は交叉汚染の防止が成立していることを前提としております。


(付録)
注意事項*2
 1行目等:他との整合性から「製造メーカー」は「試薬製造メーカー」と表記すべきではないか(複数箇所)。
 御指摘のとおり修正いたします。

 9行目:「ドラッグマスターファイルの」を「ドラッグマスターファイルに」との表記にすべき。
 御指摘のとおり修正いたします。


注意事項*4
 6行目:「代えることも可能な場合があるかもしれない。」は「代えることも可能である。」と表記すべき。
 御指摘のとおり修正いたします。


注意事項*7
 2行目:「検出感度の設定に当たってコピー数での表示を求めるものではない。」について、「IU」、「コピー」、「ゲノム当量」の使用は許容されると考えてよいか?
 作成した国内標準品も、そのもととなった国際標準品もIU表示であり、このような標準品を用いて検出感度等を明らかにすることを本ガイドラインでは求めています。これらの標準品を用いてそのコピー数、ゲノム当量を明らかにし、その値を用いて採用しようとするNATの検出感度等を説明することは可能と思われますが、コピー数やゲノム当量で表示する意義があるとは考えておりません。


注意事項*8
 新4課長通知ではHBV、HCV、HIVともプール血漿で100IU/mLでの精度管理を求めており、このHCVについての5000IU/mLの位置 づけが不明である。また、「通知されている」とあるが、どの書面にて通知されているのかお教え願いたい。
 新4課長通知で、HBV、HCV、HIVでの検出感度として求めている100IU/mLという数値は、製造用のプール血漿での値であり、スクリーニング試験としてのミニプール血漿での検出値を表しているものでないと考えます。本数値を準用することも可能かもしれませんが、別途調査会あるいは部会等での議論が必要と思われます。

 「検出限界はプール前で5000IU/mL」とあるが、50プール検体を100IU/mLの検出感度で測定した場合の検出限界と考えてよいの か。
 HCVについて原血漿で5000IU/mLとする議論を行った際は、当然プール数についても考慮しましたが、必ずしもプール数のみではありません。もし、プール後の血漿として100IU/mLの検出感度を求めるとすると別途議論が必要と思われます。HIV及びHBVについても議論をする必要がありますので、その際に再度議論をすることとしたいと思います。

 「測定法自体の検出感度」と「検体のプール数を考慮したときの検出感度」の二つについて記載されているため、区別して記載していただきたい。
 「測定法自体の検出感度」は本文の「検出感度」の項に書かれているとおりです。「検体のプール数を考慮したときの検出感度」といわれているのは、必要とされる注意事項8の項での議論の点と思われますが、上記のコメント同様、本文にありますように「別途に示す」とされる中で明確にされるものと理解しております。


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