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(社) 全国脊髄損傷者連合会としての考え方
―― 支援費と介護保険の整合性について ――
平成16年5月22日
社団法人 全国脊髄損傷者連合会第3回総会



1. 支援費と介護保険整合性については、厚労省より介護保険と統合された場合の具体的な内容を盛り込んだ案の提示がない限り、全脊連としての判断材料がない。
従って、現行の支援費制度(制度発足後1年)をより発展させることこそが重要である。

2、 制度が発足後1年で制度の変更をすることは、あまりにも拙速であり、制度として3300市町村に浸透する時間と、1年間実施された内容を検証するための時間が必須であることを勘案すると、3年から5年程度の検討期間が必要である。

3、 このように発足して間もないため未だに地域(市町村)に浸透していない現時点で一般財源化をするには無理があり、一般財源化は反対である。

4、 現在の支援費制度の欠陥である在宅サービスの財源については、予算制度上、在宅サービスは「裁量的経費(国庫補助金)」、施設サービスは「義務的経費(国庫負担金)」となっているためで、在宅サービスについても施設サービスと同様に「義務的経費(国庫負担金)」とする必要がある。

(注) 平成15年度からの10年間にわたる「障害者基本計画」および最初の5ヵ年の目標である「重点施策実施5カ年計画(新障害者プラン)」を定めている。
この計画の中で、「障害者が地域において自立し安心して生活できることを基本に」「入所施設は、地域の実情を踏まえて、真に必要なものに限定」と掲げられている。




平成16年6月18日
社会保障審議会障害者部会 ヒアリング用資料(資料A)

社団法人 全国脊髄損傷者連合会
副理事長 大濱 眞

「財源の在り方と信頼の原則について」
1、「社会保障審議会」とは、また「あり方検討委員会」とは、一体何の目的で開かれてきたのか? 平成8年6月10日 身体障害者福祉審議会(意見具申より)
 
(1) 障害者施策が公の責任として公費で実施すべきとの関係者の認識が強い点
(2) 身体障害者以外の障害者施策が一元的に市町村で行われていない点
(3) 障害者の介護サービスの内容は高齢者に比べて多様であり、これに対応したサービス類型を確立するには十分な検討が必要であること
(4) 保険移行に当たっては、障害者の介護サービスをはじめとして現行施策との調整が必要と思われる点、
この時点での課題について、昨年3月まで何等検討すらされずに放置されており、現段階でもこれら課題が積み残されたままである。
 この課題を積み残しのままで、公の責任として公費で実施すべきか保険で実施すべきかについての判断は現段階では無理である。

2.昨年(H15年)末の在宅サービスの予算が不足であるとの事態において、厚生労働省、政治家、障害者団体が共同で予算確保ための活動(財務省より省内予算の流用が認められる)をした結果、予算を確保したとの大臣説明まであった。
 しかし、現実の予算配分において、居宅でのホームヘルプサービスだけが予算不足となった。しかも、福祉水準の高い都市部(東京、大阪、札幌など)に偏った削減であり、この削減の手法は、
 
(1) 「障害者基本計画」と「重点施策実施5カ年計画(新障害者プラン)」より
『平成15年度からの10年間にわたる「障害者基本計画」および最初の5ヵ年の目標である「重点施策実施5カ年計画(新障害者プラン)」を定めている。この計画の中で、「障害者が地域において自立し安心して生活できることを基本に」を無視した配分である。
(2) 「骨太の方針2004」より
障害者の雇用・就業、自立を支援するため、・・・・・・・・・・・・・・地域生活支援のためのハード・ソフトを含めた基盤整備等の施策について法的整備を含め充実強化を図る。
この法的整備の充実強化の方針からも逸脱している。

3.私たち多くの障害者及び障害当事者団体として望むこと
 
(1) 地域で障害者が普通に暮らせることは
「地域で障害者が普通に暮らせること」であり、障害や難病の程度がどのように重度であろうと一人の人として社会に認められ地域で自立することを支援することこそ国の役割です。今求められている公平とはこのことです。介護にかかる金額の多寡によって公平であるかないかではなく人として公平に扱われるかということです。
 このように人権、生存権が守られるかどうかが公平の基準原則です。
上記で述べたように省内予算の流用が認められたにもかかわらず、一部の高福祉の地域を切るという施策は厚生労働省としての役割放棄である。
 このような基本的な役割を「これが限界です、判ってください」はない。予算不足の際の昨年末のように、何故一緒に交渉しましょうとの提案がなかったのでしょうか。

(2) 重度障害者の地域生活
 私たち障害者の基本的視点は、「重度のベンチレーター使用者たち、たとえばこの新聞報道(資料2参照)にあるセイヤ君が将来どこの市町村に住んでいても、一人で自立し普通に暮らせる制度設計が介護保険制度の中でできるのでしょうか?」ということです。
 そこに要する介護時間は一日30時間から40時間必要となることもあろう。このベンチレーター使用者や重度の四肢麻痺者が人として生きるためには、24時間以上の介護時間が必要であり、そこではケアマネの手法では無理であり(4頁目3参考資料1の事例参照)、ましてやボランティアをお願いすることは、命の危険が伴い不可能です。ボランタリーな精神でこのような命にかかわる部分の介護はできません。この様に重度要介護者にとっては共助に頼ることはできません。

「障害保健福祉施策ついて」と「介護保険制度との関係」
1.障害者福祉と高齢者福祉について
(1) 高齢者福祉
要介護度4、5以上の人は、ベッドに寝たきりで人生最後のライフステージを家族介護では家族が崩壊してしまうためのレスパイトの意味合いが強い福祉。
―――>
  このような全く異なる福祉をユニーバーサル介護という言葉で、同時平行的に福祉論を論じることには、言葉のごまかしである。
(2) 障害者福祉
要介護度5以上の人が自立して社会で生きてこそ価値がある。このようなライフステージにある人がベッドに寝たきりでなく、車椅子やストレッチャー等を使ってでも社会参加するための福祉。

2.三位一体の改革、一般財源化について(介護保険との整合性について)
「三位一体の改革、一般財源化」の基本的趣旨は、小さな政府と地方分権の確立であることは言うまでもない。
 このことは各省庁も民間の会社のようにリストラするということです。このように考えると、国の役割として残るのは、外交、防衛や生命にかかわる部分であろう。
 この命に関わる部分として現行の「高齢者の介護保険」を考察した場合、この制度を30年40年まもりつづけようと言う姿勢だと、現在の年金のような事態が起こりかねない。ここについては、むしろ現行の要介護度4〜5の人については国が責任を持ち、ここの部分はすべての納税者で支える。一方では、若い世代や高収入の人達は民間の保険に誘導することが責務なのではないでしょうか?(効率的であり、民活にもつながる。)また現行の応益負担も応能負担の姿が望ましいであろう。
 このことは数日前の報道で、「社会保険庁の民営化視野に改革」に入れるとの報道がなされたことでも明らかであろう。
 これに対して、「障害者の介護制度」を考察した場合、
(1) そのライフステージがあまりにも広いことと、障害特性により介護内容が多岐、多様であること。
(2) 重度障害、重度難病の場合、介護サービスとその内容で命の関わる部分が直接的に関係していること。
このようなことを勘案した場合、どんな障害があろうとも人として地域で普通に生き、生活していくために必要な介護はその予算規模(下記及び資料3参照)を配慮しても、国庫による負担金でと言うことがその本来的なありようではないだろうか。
 すなわち国が負担し保障する命を守る分野でありこの国庫補助金は、一般財源化の対象外とすべきであろう。その他の保険分野のように最低標準(ミニマムスタンダード)の保障では無理である。

《障害予算規模》
高齢者の費用と障害者の費用について
 高齢者人口は、H17年度に20%、その後、伸び率は増加一途となりH32年度には28%と推定されている。一方、障害者数は現在の400万は今後むしろ減少傾向を示すと予測される。これに伴い費用の増加も比例するであるろうと予測され、今後、地域生活障害者が増加しても、居宅生活支援費は、現行の600〜700億円の倍である。1200〜1500億円の範囲内に納まるであろうと予測される。この予算割合は、平成37年の介護保険は20兆円と予測に対し、障害者支援費は、在宅サービスの伸びが中心であることを考慮すると、障害者の高齢化や雇用機会の増加等もあり総額でも5000億〜6000億円の予算規模(支援費/介護保険1/30)で十分であろう。

3.地域移行している障害者の現状(介護保険統合で難しくなる地域移行)
   一人暮らしの地域生活を障害者が増加することによりヘルパー制度は毎年、各市町村で、徐々にではありますが確実に制度が伸びています。
 しかし今現在は24時間介護の重度障害者が1人で暮らせない市町村がほとんどである。今後も制度が各地で伸び続ける環境が必要です。先進各国では24時間以上の介助が得られるのは普通の事です。
 現在の障害保健福祉部でいわれている白紙状態に近い抽象的な介護保険と障害ヘルパー2階建て統合方式には、以下の問題があるため反対といわざるを得ない。
 その理由は別紙資料1「介護保険統合で難しくなる障害者の地域移行」を参照
 現段階での2階建てヘルパー制度では、今後より良い方向へ制度の改善がなされることがない。つまり、「日本のほとんどの市町村では長時間介護が必要な(身体・知的・精神)障害者は施設・病院から2度と地域に自立できない国になる」という大きな問題が発生します。

4.ケアマネのシステムについて
   介護保険のケアマネージャーのシステムには大きな問題がある。都道府県の訪問介護事業所向け実地指導では、ケアマネがまったく対応できない人工呼吸器利用のALSなどの重度障害者に対しても、「現実では利用者の希望で介護計画を作れない仕組みとなっている。利用者に対してプロであるケアマネの作ったプランで訪問介護を行うように」(つまりケアマネ=プロ、利用者=ケアマネの下)という指導が行われている。病院での教育を受けたケアマネは、患者を管理するのが正しいという教育を受けており、利用者が自分で介護計画を作ることに不機嫌になる傾向が多い。地域で自立したい障害者は管理を望んでいません。情報提供と自分でプランが作れるようになるまでの側面支援がほしいだけです。
 また、たとえば、2人介護や同居家族がいる場合の家事援助の利用にもケアマネの理由書が必要になるなど、介護保険制度では年々(当初理念の)自分でサービス内容を決めるという理念は消えていく改正が行われている。利用者が自分でプランを作り、市町村に提出する自己プラン制度もありますが、点数計算など複雑な内容のため、都市部でも1つの市に利用者が0か1人というところがほとんどという現状である。また、自己プランの提出を拒否する市町村も多くあるとさえ聞いています。

5.補装具や日常生活用具について
   補装具の車椅子などは、介護保険のレンタルに入っているため、介護保険開始時にそれまでのオーダーメイドの車椅子の生産は全国で半分に減りました。
 障害者の場合、各種の障害特性により自分の特性に合った車椅子を作る必要があり、これらの車椅子以外では、さまざまなかたちで体に不具合が生じ2次的障害の発生や、外出等の社会参加に不具合が生じる。したがって、ほとんどの障害者は、既製品のレンタル範囲内で適応することは不可能である。
 市町村から自治体負担の少ない介護保険のレンタルを使うように強制され、体に合わない車椅子を使わざるを得なくなって、ジョクソウができたり、外出ができなくなった障害者がいる。
 また現行の日常生活用具の給付は、各種障害者が日常生活を送る上で最低必須な用具が支給されているに留まりこれらの一般財源化や削除はありえない。

以上



資料1 介護保険との統合で難しくなる障害者の地域移行

 この数10年間、一人暮らし地域生活障害者が増加することでヘルパー制度は毎年、各市町村で、徐々にではあるが確実に介護時間が伸びてきた。
 それでも今現在、24時間介護の必要な重度障害者が1人で暮らせない市町村がほとんどであるが、今後も地域で重度障害者でも普通に暮らせる環境になるような制度設計がこれから本当に必要となる。先進各国では24時間以上の介助が得られるのは普通のことです。
 現在の障害保健福祉部の抽象的な案でいわれている介護保険と障害ヘルパーの2階建て式には、以下の問題があるので反対と言わざるを得ない。
(1)現在の障害ヘルパー制度は最重度の障害者でも健常者家族と同居していれば、ほとんどの市町村では、介護保険の給付水準よりは低くなっています。介護保険給付水準より高い障害ヘルパー制度を受けているのは、ほとんどが1人暮らしや両親の入院などの家族の介護を受けられない重度障害者です。この現状を前提に介護保険を1階にし、障害ヘルパーを2階にすると、(3300市町村のほとんどでは、1人暮らし等の重度障害者がいないため、現在介護保険給付水準以上の障害ヘルパー利用者がいませんので)、ほとんどの市町村では、1階の介護保険だけで充足してしまい、2階部分の利用者がいないということになる。
 したがって、このような市町村では障害ヘルパー予算はゼロになる。(ガイドヘルプもほとんどの市町村で行われていないので横出し予算もゼロになる)。
 この様な結果、現在行われている単純な2階建て論になると、日本の介護制度は、介護保険制度だけの市町村(9割近いと推定)となる。介護保険に障害ヘルパーを上乗せ利用できる地域は、都市部中心の一部の市町村だけとなってしまう。
 しかし現実問題として、毎年、重度障害者の親の入院や、新たな1人暮らし重度障害者がどこの市町村でも発生します。1度1階部分の介護保険制度だけになってしまった多くの市町村では、急に1人暮らしの24時間介護の必要な重度障害者が出たとしても、障害ヘルパーの支給決定が行えません。障害ヘルパー係も予算科目も消滅したあとのため、その復活には、予算も含め新らたな開始手続きを行う必要があり1〜2年かかることが予測される。その間に施設に入所となってしい、障害ヘルパー制度は実現せず、施設から出ることができなくなってしまう可能性すらあります。
 これに対し、現在は過疎地の町村でも障害ヘルパーの予算があり、急に1人暮らしの24時間介護の必要な重度障害者が出たとしても、まず緊急に支給決定を行い、そのあとで次回の議会で補正予算を組むことが可能です。
 実際に、現行制度下では、このようにして介護保険水準以下の利用しかなかった町村でも、長時間の障害ヘルパーが徐々に一人暮らしをしている。このような仕組みが残らない限り、長時間介護の必要な重度障害者は施設から自立して地域生活ができません。
(2)上記の問題を解決するために、かりに全国一律の強制力のある2階部分の障害ヘルパー時間数決定基準を作り、すべての市町村で、健常者の家族と同居している場合でも2階部分のヘルパーを受けられるようにしたとしても、問題が残る危険性が高い。全国一律の基準は、財務省との関係もあり、現状の介護が高水準な自治体の制度の水準には及ばないものとなる。今現在ある程度、予算余裕のある介護保険制度ですら、身体介護ヘルパー3時間/日が上限です。全国一律基準では、この水準を大きく超えることは不可能である。市町村で親の死亡などで8〜24時間の介護の必要な1人暮らしの障害者が出たとしても、市町村は国の基準を超えた障害ヘルパーの介護を認めることはない。国の基準は、一度作ってしまうと、最低基準であっても、事実上の最高基準となっています。
 このように現在言及されている抽象的な2階建てヘルパー制度では、今後とも制度改善がされる可能性が極めて低い。むしろ、「日本のほとんどの市町村では長時間介護が必要な(身体・知的・精神)障害者は施設・病院から2度と地域に自立できない国になる」という大きな問題が発生する可能性の方が高い。 (3)厚生労働省は2階部分のヘルパー制度の時間数基準などがどうなるかの回答が出せるのは、予算の関係上、財務省の承認後にしか決まらないとし、障害を統合した場合、その内容については介護保険法改訂後、来年末(H17)の政府予算が確定するまで内容を示せないとする可能性が高い。
 命のかかっている介護制度で、現在のような信頼関係も考慮すると、多くの障害者は、このような危険な賭けをするわけにはいかないであろう。



資料2 (PDF:170KB)



資料3

高齢者と障害者の状況

  単位(人) 割合(%) 支援費利用者数÷
高齢者人口(%)
支援費利用者数÷
介護保険利用者数(%)
  16年度費用
(億円)
支援費費用÷
介護保険費用(%)
高齢者  
第一号被保険者(65歳以上高齢者) 23,930,000 100.0 100%        
要介護認定者 3,444,000 14.4     540,000 100%
介護保険利用者 2,789,000 11.7   100%    
施設サービス利用者 731,000 3.1        
居宅サービス利用者 2,058,000 8.6        
 
障害者  
障害者(身体・知的・児童) 3,975,000 100.0 16.6        
支援費支給決定者 396,697 10.0 1.7      
施設支援費支給決定者(利用者数) 204,935 5.2 0.9 7.3% 5,742 10.6%
居宅支援費支給決定者 191,762 4.8 0.8 6.9%    
居宅支援費利用者(検討会第10回資料) 116,953 2.9 0.5 4.2% 1,204 2.2%
支援費利用者(施設決定者+居宅利用者) 321,888 8.1 1.3 11.5% 6,946 12.9%

*増加が予想される支援費の居宅の利用者は介護保険利用者のわずか4%、費用は2%である。
(入所施設新設はないので、今後の増加は在宅のみである)
*介護保険の総費用は現在の5兆4000億円が2025年には20兆円に増える(270%増)と予想されている

高齢者の人口比率増加(%)  
H12年  17.4
H17年 19.9
H22年 22.5
H27年 26.0
H32年 27.8
  高齢者の人口比率増加(%)のグラフ

(高齢者人口増加資料は国立社会保障・人口問題研究所H14年1月推計より)
(高齢者の利用者数は(社保審介護保険部会第2回資料「2003年3月高齢者の状況」より)
(障害者の利用者数は(社保審障害者部会第2回資料「2004年4月障害者の状況」より)


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