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乳癌の術後化学療法におけるCcyclophosphamide(CPA)の投与量について

 乳癌の術後化学療法の標準的レジメンであるAC(Doxorubicin(DOX)/CPA)療法におけるCPAの投与量について、stage II、腋窩リンパ節転移陽性乳癌の術後に、DOX60mg/m2、3週間隔x4コースに加え、CPA600mg/m2、3週間隔x4コース(CPA600群)、CPA1,200mg/m2、3週間隔x2コース(CPA1,200群)、CPA1,200mg/m2、3週間隔x4コース(CPA2,400群)を併用する3群(2,305例)の第III相試験では、CPAの1回投与量を600mg/m2以上増量しても、無増悪生存期間(5年無増悪生存率は、それぞれ、62%、60%、および64%、CPA600vs1,200:p=0.48、CPA600vs2,400:p=0.48)、および生存期間(5年生存率は、それぞれ、78%、77%、および77%、CPA600vs1,200:p=0.98、CPA600vs2,400:p=0.86)の延長は認められなかった(J Clin Oncol 15:1858, 1997)。さらに、DOX60mg/m2、3週間隔x4コースに加えて、CPA1,200mg/m2x4コース、CPA2,400mg/m2x2コース、CPA2,400mg/m2x4コースを併用する3群(2,548例)の第III相試験が行われたが、CPA増量による治療効果の向上は認められなかった(J Clin Oncol 17:3374, 1999)。なお、乳癌の術前、あるいは術後におけるAC療法について、4コースを越える治療コース数に関する比較試験は行われていない。以上の検討より、現時点では、乳癌の術後化学療法におけるAC療法の標準的な用法・用量は、DOX60mg/m2およびCPA600mg/m2、3週間隔を4コースと考えられている。
 また、乳癌の術後化学療法におけるCPAとEpirubicin(EPI)の併用については、腋窩リンパ節転移陽性の乳癌術後を対象とした6コースのCEF療法(CPA500mg/m2、および5-fluorouracil(5-FU)500mg/m2、3週間隔投与)におけるEPI1回投与量50(278例)と100mg/m2(268例)の比較試験では、5年無再発生存率、および生存率は、それぞれ、CEF50群54.8%、および65.3%、CEF100群66.3%(p=0.03)、および77.4%(p=0.007)で、CEF100群が有意に優れていた。さらに、腋窩リンパ節転移陽性の乳癌術後を対象とした6コースのCMF療法(255例)と8コースのEC60(EPI60mg/m2/CPA500mg/m2、3週間隔投与、267例)、およびEC100(EPI100mg/m2/CPA830mg/m2、3週間隔投与、255例)の比較試験(J Clin Oncol 19:3103, 2001)では、EC100群とCMF群の無再発生存期間、および生存期間に有意な差は認められなかった(3年無再発生存率:EC100群80%、CMF群78%、p=0.8、および3年生存率:EC100群92%、CMF群91%、p=0.87)。一方、EC60群はEC100群と比較して、無再発生存期間、および生存期間が劣っていた(3年無再発生存率:EC100群80%、EC60群72%、p=0.04、および3年生存率:EC100群92%、EC60群89%、p=0.05)。また、これらの比較試験では、EPIの1回投与量を増量することにより骨髄抑制、悪心・嘔吐、および粘膜炎の頻度、および重篤度が高くなることが示されたが、EPI100mg/m2の治療コンプライアンスが低用量と比べて特に劣っていなかった。今まで行われた臨床試験の結果より、CEF療法の標準的な用法・用量はCPA500mg/m2/EPI100mg/m2/5-FU500mg/m2(1日目投与)、3週間隔投与であり、さらにEC療法の標準的な用法・用量はEPI100mg/m2/CPA600mg/m2(1日目投与)と考えられる。
 乳癌の術前、あるいは術後におけるEPIの1回投与量が100mg/m2のCEF、およびEC療法について、治療コース数に関する比較試験は行われていない。乳癌術後に対するAC療法x4コースとCMF療法x6コースの比較試験(J Clin Oncol 8: 1483, 1990、J Clin Oncol 19: 931, 2001)、およびCEF療法とCMF療法の比較試験(J Clin Oncol 16:2651, 1998)、および転移性乳癌に対するDOXとEPIの比較試験(J Clin Oncol 6: 679, 1988、J Clin Oncol 6:976, 1988、J Clin Oncol 9:2148, 1991)より、乳癌に対してEPIはDOXとほぼ同等の効果を有していると考えられること、より、乳癌術後に対するCEF、およびEC療法の標準的コース数は4〜6コースと考えられる。
 以上の検討より、現時点では、乳癌の術後化学療法におけるEC療法:EPI100mg/m2およびCPA600mg/m2(1日目投与)、3週間隔投与、およびCEF療法:CPA500mg/m2、EPI100mg/m2および5-FU500mg/m2(1日目投与)、3週間隔投与、それぞれ、4〜6コースが標準的な用法・用量と判断される。


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