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労災保険制度の在り方に関する研究会における論点
(二重就職者関係)


 通勤の範囲について
(1) 現状
 通勤災害として労災保険の保護を受ける「通勤」は「労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復すること」に限定されているため、二重就職者の事業場間の移動については保護の対象とされていない。
(2) 論点
 現在でも二重就職者は82万人存在し、ワークシェアリングの推進や企業の副業解禁の動き等から、今後一層の増加が見込まれることとともに、二重就職者の事業場間の移動は業務と密接な関連を有するものと評価できるものであり、通勤災害として保護することが必要なのではないか。

 二重就職者に係る給付基礎日額について
(1) 現状
 二重就職者は、2つの事業場で働き、賃金を受け取っているものであるが、二重就職者が業務災害にあった場合には、業務災害の発生した事業場から支払われていた賃金をもとにして平均賃金が算定され、原則としてそれが保険給付の額の基礎となる給付基礎日額となる。通勤災害についても、現行制度で保護されるものは住居と就業の場所の往復に限定されるので、業務災害の場合と同様、当該通勤に係る事業場から支払われていた賃金をもとにして平均賃金が算定され、原則としてそれが給付基礎日額となる。
(2) 論点
 労災保険制度は、労働者が被災したことにより喪失した稼得能力を填補することを目的としているが、二重就職者が被災して労働不能になった場合に、実際には双方の事業場からの賃金で生計を立てていたとしても、労災保険からは片方の事業場の賃金に見合うものしか給付されないとすると、稼得能力の喪失が給付額に的確に反映されているとはいえないのではないか。

 上記の二重就職者に係る論点のほか、単身赴任者の赴任先住居及び帰省先住居間の移動を通勤災害保護制度の対象とすべきか等についても、論点として検討している。

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