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薬食発第0218004号
平成16年2月18日

各都道府県知事 殿

厚生労働省医薬食品局長


米国産のウシ等由来物及びウシ等のせき柱骨等を原材料として製造される
医薬品、医療用具等に関する品質及び安全性の確保について

 ウシ及びその他類縁反芻動物(以下「ウシ等」という。)由来物を原材料(以下「ウシ等由来原材料」という。)として製造される医薬品、医療用具、医薬部外品及び化粧品(以下「医薬品、医療用具等」という。)については、平成13年10月2日付け医薬発第1069号厚生労働省医薬局長通知(以下「第1069号通知」という。)及び平成15年4月14日付医薬発第0414004号厚生労働省医薬局長通知(以下「第0414004号通知」という。)をもって、製造業者、輸入販売業者及び外国製造承認取得者の国内管理人(以下「製造業者等」という。)において品質及び安全性確保対策を講ずるよう通知したところである。せき柱骨、頭骨、三叉神経節及び背根神経節(以下「せき柱骨等」という。)の取扱いについては、平成16年1月13日に伝達性海綿状脳症対策調査会を開催し、せき柱骨等を含有する医薬品、医療用具等について、その取扱いの検討を行ったところである。また、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)において牛海綿状脳症(以下「BSE」という。)感染牛の発生を受け、平成15年12月25日付け薬食発第1225005号厚生労働省医薬食品局長通知(以下「第1225005号通知」という。)をもって製造業者等に対し、米国産のウシ等由来原材料を使用して製造される医薬品、医療用具等について当分の間新たな製造等を差し控えるとともに、当該原材料の使用状況・切り替え状況に係る自己点検を指示したところである。
 今般、ウシ等由来原材料を使用する医薬品、医療用具等に対する品質及び安全確保対策を強化するため、今後、下記の予防的な措置を講ずるものであるので、貴管下関係業者に対して指導方お願いする。



第1 せき柱骨等関係

1. せき柱骨等の取扱いについて

(1) せき柱骨等については、原産国(ウシ等が誕生した地域並びにウシ等の飼育又はと殺を行う地域をいう。以下同じ。)に関わらず医薬品、医療用具等の原材料としての使用を禁止すること。
(2) せき柱骨等骨由来の原材料を用いたゼラチン及びゼラチンより製するコラーゲン(以下「ゼラチン等」という。)を使用する医薬品、医療機器等で、別表1に掲げる国を原産とする原材料を用いて製造される医薬品、医療機器等については当分の間、別表2に掲げる国を原産とする原材料を用いて製造される医薬品、医療機器等については平成17年9月30日までに製造されるものまで、せき柱骨等の使用を禁止する措置を猶予するものであること。なお、米国のせき柱骨等を使用したゼラチンの取扱いについては、第2の規定に従うものとする。
(3) 従前のとおり、過酷な処理条件の下で製造される脂肪酸、グリセリン、脂肪酸エステル、アミノ酸及び合成オリゴペプチドといった高度精製原料については、本規定は適用しないこととするが、原材料の牛脂原油においては、せき柱骨等の危険部位が混入しないよう製造業者等の責任において確認すること。
(4) 上記のせき柱骨等の使用禁止については、生物由来原料基準(平成15年厚生労働省告示第210号)を改正し、反芻動物に関する原料基準のうち、医薬品、医療用具等の原材料として使用を禁止する部位にせき柱骨、頭骨、三叉神経節及び背根神経節の4部位を加える予定であること。

2. せき柱骨等を使用した製品に係る承認審査等の取扱いについて

(1) ウシ等由来原材料について、生物由来原料基準の改正前であっても、せき柱骨等を使用した製品を製造及び輸入しないこととし、当該ウシ等由来原材料からせき柱骨等を可及的速やかに除くこと。ゼラチン等についても、速やかにせき柱骨等の除去、原材料の切替え等の対応を実施すること。
(2) 本措置についての一部変更承認申請は不要であるが、切り替え等を行った場合は、各製造業者等において当該医薬品、医療用具等原料からせき柱骨等の除去が行われていることを確認するとともに、当該記録を入手すること。
(3) (1)に規定する措置を講じることが出来ない場合には、承認整理届の提出等所要の手続きを行うこと。

3. その他
(1) 医薬品、医療用具等に用いられる皮由来の原材料から製するゼラチン等については、ウシ等の皮のBSEリスクに係る科学的知見や国際的な規制を踏まえ、BSEに係る原産国規制の対象から除外するものであること。
(2) 上記については、せき柱骨等に係る生物由来原料基準の改正の施行時から適用するものであること。

第2 米国で発生したBSE関係

1. 米国産ウシ等由来原材料の扱いについて

(1) 平成15年12月24日に米国においてBSEに感染したウシが確認されたことから、米国でのBSE発生に伴う予防的な品質及び安全性確保の措置として、米国を原産国とするウシ等由来原材料を医薬品、医療機器等の製造に原則使用してはならないことし、米国産ウシ等由来原材料を使用した製品については、別表3に掲げる区分に従い、以下の取扱いとするものであること。
(1) 区分A: 速やかに米国産ウシ等由来原材料を別表1又はに掲げる低リスク国を原産国とする原材料等に切り替え、平成16年9月30日までに製品の切り替えを実施すること。
(2) 区分B1: 本通知の施行後6ヶ月以内を目途に速やかに米国産ウシ等由来原材料を別表1又はに掲げる低リスク国を原産国とする原材料等に切り替え、遅くとも、平成17年3月31日までに製品の切り替えを実施すること。
(3) 区分B2: 速やかに米国産ウシ等由来原材料を別表1又はに掲げる低リスク国を原産国とする原材料等に切り替え、遅くとも、平成17年3月31日までに製品の切り替えを実施すること。
(4) 区分C: 米国産ウシ等由来原材料を別表1又はに掲げる低リスク国を原産国とする原材料等に切り替えることに努めるものとするが、当該製品のBSEに係る相対的なリスクからみて、当分の間、切り替えを猶予するものであること。
(5) 第1069号通知の記の2の(1)の(1)及び(2)に掲げる条件を満たすものは低リスク国を原産国とする原材料等と同じ扱いにするものであること。
(2) 昭和61年以前に採取されたウシ等由来原材料については、本措置の対象としないこと。
(3) 生物由来原料基準を改正し、反芻動物に関する原料基準のうち、医薬品、医療用具等の原材料として使用することができるウシ等由来原材料の原産国から米国を削除する予定であること。

2. 米国産ウシ等由来原材料に係る承認審査等の取扱いについて

(1) 米国においてBSEの発生が確認された現時点においても、医薬品、医療用具等として通常使用される範囲では公衆衛生上のリスクは回避されていると考えられることから、米国を原産国とするウシ等由来原材料を使用して既に製造された製品については、市場回収の必要はないものであること。
(2) 医薬品、医療用具等の承認審査の扱いについては、次のとおりとすること。
(1) 区分Aの製品については、原材料の変更を行ったことに係る一部変更承認申請を平成16年9月30日までに行うこと。
(2) 区分B1の製品については、ウシ等由来の骨原材料から他の動物由来の原材料、ウシ等その他動物の骨以外の原材料に切り替える場合は、改正薬事法第14条第10項に基づく承認事項の軽微な変更(以下「軽微変更」という。)に係る届出を平成17年4月30日までに行うこと。
(3) 区分B2の製品については、原材料の変更を行ったことに係る一部変更承認申請又は軽微変更の届出を平成17年4月30日までに行うこと。
(4) 区分B1及びB2の製品については、切り替えが完了するまでの期間においても、原料動物が動物性飼料を用いて飼育されていないことの確認に努めること。
(5) 区分Cの製品については、ウシ等由来原材料の切り替え等を行った場合には、平成17年4月30日までに一部変更承認申請又は軽微変更の届出を行うこと。
(6) 製造業者等がウシ等由来原材料を他の原材料等に自主的に転換するための承認申請については、当分の間、平成18年3月30日までに申請された場合は、優先審査の取扱いとすること。なお、平成16年9月30日までに申請された場合は、区分A及びBに係る上記(1)から(3)に規定する対応を適用しないものとすること。
(7) 各区分において、改正予定の生物由来原料基準に適合する限りにおいては、一部変更承認申請等による承認書の原産国等の記載変更に先立って原材料の原産国等を変更することは差し支えないこと。ただし、原材料を変更したことに係る記録を入手すること。
(3) (2)に規定する原材料の変更等の措置を講ずることができない場合には、承認整理届の提出等所要の手続きを行うこと。
(4) 第1069号通知の記の2の(1)の(1)及び(2)に掲げる条件を満たす原材料の確認には、一部変更承認申請等を要するものであること。

第3 通知の改正等

1. 第1069号通知の記の2の(3)に規定する使用してはならないウシ等由来原材料の部位に、せき柱骨、頭骨、三叉神経節及び背根神経節を加えることとすること。
2. 第1069号通知の別表1のBSE発生国の項に「米国」を加え、別表2のBSEリスクの低い国の項から「米国」を削除することとすること。

第4 施行期日

 本通知は、公布日から施行するものとすること。


(別表1)
アルゼンチン、オーストラリア、ボツワナ、ブラジル、チリ、エルサルバドル、ナミビア、ニュージーランド、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、シンガポール、スワジランド、ウルグアイ、バヌアツ※、ニューカレドニア
バヌアツ、ニューカレドニアについては別途原料基準の改定を行い、使用可能国となる予定


(別表2)
コロンビア、コスタリカ、インド、ケニア、モーリシャス、ナイジェリア、パキスタン


(別表3)
 製品類別 リスク分類表
区分   類別 ウシ原料使用方法 投与
経路
リスク
合計値
         
    リスクの目安 : 感染動物のリスクの高い部位 脳内 +7
         
区分A 遺伝子組換え・細胞培養医薬品 細胞培養等(*1) 注射 +2
遺伝子組換え・細胞培養医薬品 親和性カラム(*1) 注射 -2
成分抽出製剤 抽出成分 注射
植込み用具 成分・組織 植込 -1
区分B 経口製剤(ゼラチン) カプセル等 経口 0〜−4
注射剤(ゼラチン) 安定剤 注射 0〜−4
区分B 成分抽出製剤 抽出成分 経口 -3
低分子製剤(*2) 成分粗原料 注射 -4
菌培養医薬品/ワクチン 培養 注射 -4
区分C 10 細胞培養医薬品 MCB/WCBのみ 注射 −4
11 菌培養医薬品/ワクチン シードのみ 注射 -6
12 菌培養医薬品/ワクチン 培養 経口 -7
13 低分子製剤(*2) 成分粗原料 経口 -7
14 外用製剤 基材、成分等 経皮 <−4
リスクは、製品中のLog ID50/gの期待値に一定の安全マージン(長期使用を前提として2Log分)を見込んだ合計値
 脚注
  ※ 上記のリスク計算は、原材料の中にプリオンが仮に存在した場合、プリオンが失われずに製品まで至ると仮定したもの。(平成15年7月開催伝達性海綿状脳症調査会資料を元に計算)
  ※ (*1)は製造工程で原材料の濃縮の可能性がある工程を含むもの
  ※ (*2)製造工程の一定のリスク減少効果が認められているもの


(参考)製品の区分について
区分A(1) 細胞培養医薬品・培養・注射
 遺伝子組み換え技術等により製造される医薬品等であり、主として、その製造工程中の細胞の培養等の工程においてウシ等由来原材料(例えば血清、インスリン及び血しょうタンパク等。)を使用しているもの。また製品の投与経路が注射又はそれに準じる方法によるもの。
  例: 遺伝子組み換え製剤等
区分A(2)細胞培養医薬品・アフィニティーカラム・注射
 アフィニティークロマト等の製品の精製工程において、ウシ等由来原材料から作成される原料を用いるもの。また製品の投与経路が注射又はそれに準じる方法によるもの。
  例: 遺伝子組み換え製剤等、血液製剤等
区分A(3)成分製剤・抽出成分・注射
 ウシ等由来原材料を有効成分又は添加剤として含有する製剤で、投与経路が注射又はそれに準じる方法によるもの。
  例: 血栓溶解剤等、コンドロイチン硫酸製剤(注射・点眼)
区分A(4)植込み用具・成分・組織・植込
 ウシ等由来原材料を用いて製造される、組織修復等のために身体中に埋め込まれる医療用具
  例: 組織補填用コラーゲン、ウシ心のう膜

区分B1 (5)経口製剤・カプセル・経口
(6)注射剤・安定剤(ゼラチン)・注射
 製剤中に骨由来のゼラチンを含み、その投与経路が経口又は注射又はそれに準じる方法によるもの。
  例: カプセル製剤等
区分B2(7)成分製剤・抽出成分・経口
 製剤の有効成分又は添加剤としてウシ等由来原材料を用いる製剤で、投与経路が経口等によるもの。
  例: 胆汁末等製剤、コンドロイチン硫酸製剤等
区分B2(8)低分子成分製剤・成分粗原料・注射
 ウシ等由来原材料を原材料として用いるが、その原料製造工程において一定のプリオン不活化が認められる低分子成分を含有又は製造工程中で使用する製剤で、投与経路が注射又はそれに準じる方法によるもの。
  例: ウルソデオキシコール酸製剤等
区分B2(9)菌培養医薬品/ワクチン・培養・注射
 細菌の培養により製造する製品で、その培養液等の成分としてウシ等由来原材料を用いるもの。また、その投与経路が注射又はそれに準じる方法によるもの。
  例: ワクチン類、ステロイド製剤

区分C(10)細胞培養医薬品・MCB/WCBのみ・注射
 細胞培養により製造される医薬品等であって、そのマスターセルバンク又はワーキングセルバンクにのみウシ等由来原材料を使用しているもの。また、製品の投与経路が注射又はそれに準じる方法によるもの。
  例: 遺伝子組み換え製剤等
区分C(11)菌培養医薬品/ワクチン・シードのみ・注射
 細菌培養により製造される医薬品等であって、種培養工程にのみウシ等由来原材料を使用しているもの。また、製品の投与経路が注射又はそれに準じる方法によるもの。
  例: ワクチン等
区分C(12)菌培養医薬品/ワクチン・培養・経口
 製品の製造工程中に細菌培養工程があり、その培養液等の成分としてウシ等由来原材料を用いるもの。また、製品の投与経路が経口によるもの。
  例: ワクチン類、ステロイド製剤
区分C(13) 低分子成分製剤・成分粗原料・経口
 ウシ等由来原材料を成分として用いるが、その原料製造工程において一定の不活化が認められる成分を含有又は製造工程中で使用する製剤で、投与経路が経口によるもの。
  例: ウルソデオキシコール酸製剤等
区分C(14)外用製剤・基剤、成分等・経皮 外用に用いられる製剤
  例: 貼付剤、クリーム剤等


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