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5.適切な診断・治療のために
 うつ病に対する適切な医療を提供できる環境を確保するために、地域の医師会等の医療関係機関との連携が重要である。
 特に精神科医等の専門家に対しては、うつ病に関する研修会の講師などを依頼するなど、うつ対策への協力を依頼できることが多い。また、特にうつ病に関心がある医療機関を募り、うつ病診療を積極的に行う医療機関のネットワークを作ったり、地域におけるうつ病の啓発活動に協力してもらえる医師グループを作ることもできる。
 うつ病にかかっている人の多くが一般診療科を受診することから、うつ対策における一般診療科の医師の役割は大きい。医療機関の外来において、一般住民向けのうつ病啓発パンフレット配布することも有効である。また、一般診療科の医師に対するうつ病に関する研修の実施や、一般診療科と精神科とが連携できる連絡体制づくりも医師会等と協力して実施したい。

 治療経過中、継続した情報提供が重要である事項。
(1) うつ病の正しい知識(脳の神経伝達物質に関する問題であって、性格や考え方の問題ではないこと)
(2) 第一に薬物療法と休養が必要であること
(3) 適切な服薬指導(再発予防のため、改善後も一定期間服薬が必要であり早めの薬物中止は再発のおそれが高いこと、薬の副作用についてなど)
(4) ある程度改善した後にもストレスを軽減するため、思考法やリラクゼーション、気分転換の方法を身につける必要があること
(5) 症状が遷延した場合、治療を継続するために役立つ福祉制度などの社会資源について知ってもらうこと
 うつ病の治療中の者から相談を受けた場合には、こうした内容について情報提供を行うとよい。また、慢性的な経過をとるうつ病の中には、現在の治療方針で正しいのだろうかとか、自分は本当にうつ病なのだろうかなど、現在の主治医の診療方針に疑問を抱く者もいる。こうした相談をうけた場合には、まず、現在の主治医に納得できるまでよく相談することを勧めるのがよいであろう。
 特に、精神医療に対する偏見が強い地域や、精神科の医療機関の少ない地域では、その地域の中心的な精神科医療機関のスタッフがうつ病の啓発や相談窓口にも参加するようにし、地域が一体となってうつ病の課題に取り組む体制を印象づけることも効果的である。


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