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2.うつ病を知る
1)うつ病の一般的症状
 うつ病は、気分がひどく落ち込んだり何事にも興味を持てなくなったりして強い苦痛を感じ、日常の生活に支障が現れるまでになった状態である。こうした状態は、日常的な軽度の落ち込みから重篤なものまで連続線上にあるものとしてとらえられていて、原因についてはまだはっきりとわかっていない。
 うつ病の基本的な症状は、強い抑うつ気分、興味や喜びの喪失、食欲の障害、睡眠の障害、精神運動の障害(制止または焦燥)、疲れやすさ、気力の減退、強い罪責感、思考力や集中力の低下、死への思いであり、他に、身体の不定愁訴を訴える人も多く、被害妄想などの精神病症状が認められることもある(厚生労働省地域におけるうつ対策検討会作成の保健医療従事者マニュアル参照)。

うつ病の危険因子
性別、年齢
つらい被養育体験
最近のライフイベンツ(ストレスとなった出来事)
心の傷(トラウマ)になるような出来事 など

うつ病を疑うサイン−自分が気づく変化
1. 悲しい、憂うつな気分、沈んだ気分
2. 何事にも興味がわかず、楽しくない
3. 疲れやすく、元気がない(だるい)
4. 気力、意欲、集中力の低下を自覚する
(おっくう、何もする気がしない)
5. 寝つきが悪くて、朝早く目がさめる
6. 食欲がなくなる
7. 人に会いたくなくなる
8. 夕方より朝方の方が気分、体調が悪い
9. 心配事が頭から離れず、考えが堂々めぐりする
10. 失敗や悲しみ、失望から立ち直れない
11. 自分を責め、自分は価値がないと感じる など
うつ病を疑うサイン−周囲が気づく変化
1. 以前と比べて表情が暗く、元気がない
2. 体調不良の訴え(身体の痛みや倦怠感)が多くなる
3. 仕事や家事の能率が低下、ミスが増える
4. 周囲との交流を避けるようになる
5. 遅刻、早退、欠勤(欠席)が増加する
6. 趣味やスポーツ、外出をしなくなる
7. 飲酒量が増える など

(2)発症の要因:危険因子
 1 )性別、年齢
 女性は男性の2倍程度、うつ病になりやすい。うつ病が女性に多いことは、世界的な傾向である。男女差の原因としては、思春期における女性ホルモンの増加、妊娠・出産など女性に特有の危険因子や男女の社会的役割の格差などが考えられている。また、うつ病は一般には若年層に高頻度にみられるが、うつ病の経験者は若年層と中高年層の2つの年齢層に多く、中高年層にも心理的な負担がかかっている可能性がある。

 2 )その他の要因
 つらい被養育体験、最近のライフイベンツ(離婚、死別、その他の喪失体験というようなストレスとなった出来事)、心の傷(トラウマ)になるような出来事(虐待、暴力など)がうつ病の危険因子として、また社会的支援がうつ病の防御因子として報告されている。うつ病の特別な遺伝子はみつかっていないが、遺伝を脳内の神経伝達物質の代謝や受容体の遺伝子多型によって説明しようとする研究が急速に進んでいる(保健医療従事者マニュアル参照)。

(3 )発生頻度
 最近の国内調査では、DSM-IV(米国の診断基準)による大うつ病性障害の12ヶ月有病率(過去12ヶ月間に診断基準を満たした人の割合)は2.2%、生涯有病率(調査時点までに診断基準を満たしたことがある人の割合)は6.5%、ICD-10(世界保健機関の分類)診断によるうつ病の12ヶ月有病率は2.2%、生涯有病率は7.5%であり、これまでにうつ病を経験した人は約15人に1人、過去12ヶ月間にうつ病を経験した人は約50人に1人であるという結果となった。


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