戻る  前ページ  次ページ

(7)免疫アレルギー疾患予防・治療研究経費
事務事業名 免疫・アレルギー疾患研究経費
担当部局・課主管課 健康局 疾病対策課
関係課 大臣官房厚生科学課

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
事業内容(新規・一部新規)
 喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症等のアレルギー疾患やリウマチ・膠原病等の免疫疾患は症状が長期にわたり持続することで健康を脅かす。そこでこれらの病気にかかりやすい体質と生活環境などの関係を明らかにすることで、疾病の予防、診断、治療法に関する新規技術を開発するとともに、既存の治療法を評価・整理すること等により、適切な医療の提供を目指す。
 本事業においてはこのような行政上必要な研究について公募を行い、専門家、行政官による評価により採択された研究課題について補助金を交付する。また、得られた研究の成果は適切に行政施策に反映される。

予算額(単位:百万円)
H12 H13 H14 H15 H16要求
646 746 1,309 1,137 1,194

(3)問題分析
 (現状分析)
 免疫疾患、アレルギー疾患は、国民の30%が罹患しているといわれており、さらに増加傾向にある。また、その重症化も進み、日常生活に著しい支障を慢性的にきたすことから、国民の健康上重大な問題となっている。
 (原因)
 これらの疾患の発症と環境因子、遺伝性素因との関係は十分解明されていない。そのため、予防、診断、治療法に関する新規技術、治療の効果を予測する技術の開発、既存の治療法の評価等が求められている。
 (問題点)
 免疫・アレルギー疾患の悪化機序等は多くの要因が複雑に絡んで起こっている。そのため、研究によって得られた最新知見を着実に、臨床の現場に反映し、より適切な医療の提供が実現されることを目指す必要がある。
 (事務事業の必要性)
 免疫・アレルギー疾患について、患者のQOLの向上を図るため、疾患の状況把握と診断・治療指針の整備に関する研究、疾患遺伝子等の技術を駆使した実践的な予防・治療法開発に関する研究等を重点的・効率的に行う。そして、本事業では、必要な研究について公募を行い、研究を推進する。また、得られた研究の成果は適切に行政施策に反映することを想定している。

(4)事務事業の目標
 専門家、行政官による事前評価委員会を設置し、評価を行い、研究課題を採択する。また、中間評価、事後評価については、中間・事後評価委員会を設置し、専門家、行政官による事後評価を行う。

2.評価結果
(1)必要性(行政的意義(厚生労働省として実施する意義、緊急性等)、専門的・学術的意義(重要性、発展性等)、目的の妥当性等)
 喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症のアレルギー疾患やリウマチ・膠原病などの免疫疾患は症状が長期にわたり持続することで健康を脅かす。
 免疫・アレルギー疾患の病態の解明、治療法の開発を進めるためには、これらの病気にかかりやすい体質と生活環境などの関係を明らかにすることで、疾病の予防、診断、治療法に関する新規技術を開発するとともに、既存の治療法を評価・整理すること等により、適切な医療の提供を実現する必要がある。
 本事業は、疾患克服に関して行政上必要な研究課題について公募を行い、採択課題に対し補助金を交付し、その研究成果を施策に反映させるものであるため、事業全体を外部に委託することは困難であるが、事務的な手続きを外部へ委託することは可能である。また、補助金を受けた研究者が調査や資料の解析を外部に委託することは現状でも行っている。

(2)有効性(計画・実施体制の妥当性等の観点)
 本事業においては、これまでも多くの知見を得ている。また、これらは行政施策への貢献度も高い。
(食物アレルギー研究班)
・改正食品衛生法において主要アレルギー物質含有食品の表示が義務化されたが、その表示義務品目の設定に際し、食物アレルギーの発生原因別頻度等の疫学調査の結果が利用された。
(リウマチ研究班)
・「慢性関節リウマチに対する治療のガイドライン」を作成。日本リウマチ財団による診察ガイドラインと合わせて「慢性関節リウマチの診察・治療マニュアル」として、(財)日本リウマチ財団を通じて医療機関等へ周知することにより、適切な診断・治療方法の普及啓発に努めてきた。
・「関節リウマチに対する生物製剤使用のためのガイドライン」を、現在予定されている関節リウマチ向け生物製剤の認可に先立ち作成。生物製剤の適正使用と有害事象の防止に有用となることが期待される。
(喘息研究班)
・「喘息予防・管理ガイドライン」を作成し、医療機関等へ周知することにより、適切な予防方法及び治療方法の普及啓発に努めてきた。
(アトピー性皮膚炎研究班)
・「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」を毎年定期的にリニューアルし、医療機関等へ周知することにより、適切な予防方法及び治療方法の普及啓発に努めてきたところ。
・全国におけるアトピー性皮膚炎の疫学調査を、小児及び成人を対象に実施したが、(1)成人のアトピー性皮膚炎についての総合的な疫学調査は本邦では他に類を見ない、(2)簡便なアンケート調査法でなく班員による直接の問診による調査であり、アトピー性皮膚炎の患者実態の正確な把握の一助となっている。
(花粉症研究班)
平成14年度から開始した環境省の「花粉観測予測システム」に参加し、花粉の飛散状況を定点において体系的に観測することにより、花粉の飛散予測が可能となった。
(アトピー性皮膚炎研究班、花粉症研究班班)
各種民間療法の医学的検証を行い、不適切な民間療法等の実態を明らかにした。

 このような研究の評価方法についても外部の評価委員で構成される評価委員会が、多角的な視点から評価を行い、その結果で研究費の配分が行われており、効率的に事業を進めている。

(3)効率性(目標の達成度、新しい知の創出への貢献、社会・経済への貢献、人材の養成等の観点から)
 リウマチ・アレルギー分野における10年間の研究の成果と、今後の対策の課題・展望を、『リウマチ・アレルギー研究白書』として平成14年5月にとりまとめ、地域における保健施策等の参考とするべく、関係機関へ配布した。また、リウマチ、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症の四疾患についての地域相談体制を整備するため、保健師等従事者を対象とした四疾患相談員の養成研修会を開催しているところであるが、講師として研究班長等を活用し、またカリキュラムの策定にあたっては、各分野における一般的な知見と併せて、研究成果を踏まえた最新の知見を盛り込む等の工夫を講じている。
 また、花粉症対策に関しても、関係省庁(厚労・文科・環境・林野・気象)で連絡会議を定期的に開催しているが、花粉症研究についても、各省それぞれの研究分野に関しての情報交換等により、内容の連携を図るとともに、環境省「花粉観測予測システム」に、研究事業の範囲内で15年度より一部参加するべく、準備を進めているなど社会への貢献度も高い。

(4)その他
 本事業では、これまでに、免疫・アレルギー患者の医療環境の向上に寄与してきたが、今後も目標の達成に向けた取組みを予定としており、
・花粉症に関するDNAワクチンのヒトへの応用を目指した研究
・喘息、食物アレルギー等の難治性アレルギー疾患に対し細胞表面分子をターゲットとした遺伝子治療の開発
・遺伝子診断による予知・予防に関する研究環境因子、遺伝素因の解明に基づくアレルギー疾患の予防、根治的療法の確立
・リウマチ、膠原病に対する治療反応予測技術の確立
・免疫反応を制御する機構の解明に基づくリウマチ、膠原病の新規治療法の確立
 といったテーマを中心に研究を推進し、その成果を行政に反映していく。

(5)特記事項
 特になし

3.総合評価
 アレルギー疾患については、アトピー性皮膚炎、花粉症、喘息、食物アレルギー等、疾患が多岐にわたり、またその病態については、長期にわたり慢性的に持続し、不適切な治療法の結果により予後の悪化をもたらす等、患者は様々な問題を抱えており、総合的な取組みが必要とされているところである。
 リウマチ疾患についても、高齢化社会の進行に伴い、その患者数は増加の一途にあり、またその病態は、特に運動障害となって現れることから、個々の患者のQOLのみならず、社会における労働力・生産力の低下等経済的な視野からも様々な問題が生じているところである。しかるに免疫・アレルギー疾患予防・治療研究事業は、小児(アトピー性皮膚炎・小児喘息等)から高齢者(リウマチ性疾患等)までを対象としており、少子高齢社会を迎えた本国が行政として抱える問題志向と一致しているところであり、引き続き事業を推進する必要があると考えられる。


トップへ
戻る  前ページ  次ページ